古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:大統領

 古村治彦です。
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 2021年9月に入り、ジョー・バイデン大統領の支持率が低下している。各種世論調査で支持率が5割を切り、第一期目の大統領としては低いレヴェルに入った。以下のグラフの通りだ。

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 バイデン政権は新型コロナウイルス感染拡大対策を最優先テーマと掲げている。3月の段階では対策への支持も高かったが、バイデンが事業所などでのワクチン義務化を発表すると、支持は下がった。また、「アメリカを団結させる」というバイデンの公約についても、実現していないと考えている有権者が多いことも分かった。
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 ピュー・リサーチセンターの詳細な調査結果で興味深かったのは、バイデンに「精神的な元気(mentally sharp)」な様子がないと考えている人が6割近くいるということだ。バイデンは史上最高齢でアメリカ大統領に初当選した人物であり、日本で言えば後期高齢者である。自民党所属の麻生太郎副総理兼財務相、二階俊博幹事長と同じ世代であるが、背負っている責任や仕事はけた外れに多い。アメリカ大統領は激務であり、就任して1年もしない段階で既にへばっているということになるだろう。

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 そこで考えられるのは、バイデンが大統領職を一期だけで退くということだ。人気はまだ3年以上も残っているので、途中でギヴアップ(病気などで)ということも考えられる。来年の中間選挙の結果いかんではバイデンの二期目という話はなくなってしまうだろう。普通であれば、副大統領が後継として出てくることが考えられるが、カマラ・ハリスの人気も低い。元々支持率が5割を切っていて、現状はそのままなので、バイデンの支持率急落が目立つが、元々人気がないというところがカマラ・ハリスの根本的な問題だ。

 新型コロナウイルス感染対策とアフガニスタンからの撤退によって、バイデンの支持率は大幅に下がっている。共和党支持者からの支持はほとんどない状況であり、拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で指摘したように、「アメリカ国内の分断」は深刻化する一方だ。

(貼り付けはじめ)

ピュー・リサーチセンターの最新の世論調査の結果では、バイデンの支持率は44%に下落(Biden approval sinks to 44 percent in new Pew poll

モーガン・チャルファント筆

2021年9月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/573668-biden-approval-sinks-to-44-percent-in-new-pew-poll

ピュー・リサーチセンターが発表した最新の世論調査の結果によると、アメリカの成人の44%がバイデン大統領の大統領としての仕事ぶりを評価している一方で、53%は評価していないということが分かった。7月から支持率は急落している。

2カ月前のピュー・リサーチセンターの世論調査の結果は、バイデンの仕事ぶりを55%が評価し、43%が評価しないというものだった。バイデンの民主党員や民主党支持者の間での支持率は、7月の88%から75%となり、13ポイントも下落した。共和党員や共和党支持者の間での支持率は17%から9%に下落した。

まとめると、民主、共和両党の選挙で選ばれた政治家たちの支持率は下落している。今回のピュー・リサーチセンターの世論調査は9月13日から19日にかけて実施され、調査対象者は1万371名のアメリカの成人であった。

ピュー・リサーチセンターの調査では、今年4月以降、連邦議会共和党への支持率は5ポイント低下したが、連邦議会民主党への支持率は11ポイントも下落した。

バイデンは、新型コロナウイルスワクチン接種を受けていない何百万人ものアメリカ人の間でコロナウイルスが再流行していることや、アフガニスタンからのアフリカ軍撤退から混乱が起きていることから、大統領としての難しい局面を迎えています。

ホワイトハウスはまた、バイデン大統領の経済政策を議会で可決させるために、連邦議会民主党をまとめようとしているが、政策パッケージの内容や規模、時期をめぐって穏健派と進歩派が対立しているため、困難さが増しているのが現状だ。

今回の世論調査の結果には、バイデンにとって良いニュースもいくつか含まれている。彼の経済提案については多くの人々に支持されており、それは過去の世論調査の結果と変わらない。ピュー・リサーチセンターの今回の世論調査によると、連邦上院が可決した1兆2000億ドル(約132億円)規模の超党派のインフラ整備法案を51%が支持している。反対は20%だ。残りの29%は「分からない、知らない」と答えた。

一方、3兆5000億円(約385億円)規模の経済対策案には49%が賛成し、反対派25%、「分からない、知らない」と答えたのは25%だった。

共和党側はバイデンの税制提案について批判しているが、今回の世論調査では、66%が大企業への増税に賛成し、所得が40万ドル(約4400万円)以上の世帯への増税に61%が賛成している。

個別の問題では、バイデンの新型コロナウイルス対応への支持が3月の65%から最新の四調査では51%に下落している。それでもまだ過半数の支持を得てはいる。経済政策については48%が「ある程度」もしくは「強力に」支持していると答えている。51%が「全く」「それほど」支持していないと答えた。

外交政策については、45%が「ある程度」もしくは「強力に」支持すると答え、54%が支持しないと答えた。そして、バイデンがアメリカをより団結させるかという質問には、34%だけが「ある程度」もしくは「強力に」そう考えると答え、66%が躁は考えてないという結果となった。アメリカをより団結させるというのはバイデンの主要な選挙公約の一つだった。

ピュー・リサーチセンターの世論調査は、今週初めのギャロップ社の世論調査に続いて結果発表となった。ギャロップ社の調査でバイデンの支持率は43%となり、これは大統領一期目の支持率としては、同社の歴史で最も低い数字となった。

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ギャロップ社の世論調査で、バイデンの支持率が43%となり、記録的な低さとなった(Biden approval rating drops to record low 43 percent in Gallup polling

セリーヌ・キャストロヌオヴォ筆

2021年9月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/573367-biden-approval-rating-drops-to-record-low-43-percent-in-gallup

水曜日に発表されたギャロップ社の世論調査の結果によると、大統領就任から8カ月経過してのバイデン大統領の支持率は43%に下落した。この数字はギャロップ社が調査を開始して以降、第一期目の大統領の数字としては最低レヴェルとなった。

ギャロップ社の調査は2021年9月1日から17日にかけて実施され、バイデンの大統領としての仕事ぶりに対して、初めて過半数が不支持という結果になった。アメリカの成人の53%が彼の大統領としての仕事ぶりにマイナスの評価をすると答えた。

バイデンの支持率は民主党支持者の間では、今月は90%とこれまで最低の数字となったが、それでも高いレヴェルを維持した。共和党支持者の間での支持率は、今月は6%にとどまった。それでもこれまで最も高い数字となった。

無党派の有権者の間では、バイデン政権発足以来最低の数字となる37%の支持率を記録した。就任して1カ月の数字である61%から大幅の下落を記録した。

最新のギャロップ社の世論調査は、アフガニスタンからのアメリカ軍の撤退の後に実施された。バイデンはアフガニスタンからのアメリカ軍の完全撤退を行おうとした。アフガニスタンはタリバンの急速な権力掌握の中にある。20年前、アメリカ軍はこの軍事力を持ったグループを追い落としたが、彼らは再び権力を掌握した。

バイデンは、アメリカ人とアフガニスタン国内で危険に晒される可能性の高いアフガニスタン人の退避で混乱を起こしたとして、民主、共和両党から批判を受けた。特に、イスラム国のアフガニスタン国内のグループがカブール空港で爆弾による自爆テロを実行し、13名のアメリカ軍将兵と少なくとも169名のアフガニスタンの一般市民が殺害された事件の発生後に批判の声が高まった。

バイデン大統領は8月31日までにアメリカ軍の完全撤退を完了するとした自身の決断は正しかったと擁護し続けている。アフガニスタン国内に残っているアメリカ人とアフガニスタン人の協力者たちの退避の努力は続けられており、外交的手段によってそれらの対比はより安全に実施されるだろうとバイデンは主張している。

ギャロップ社による調査が実施されている期間中、バイデンは複数のワクチンの義務化計画について発表し、いくつかの州の共和党所属の指導者たちによって批判された。100名以上が雇用されている事業所は労働者全員に新型コロナウイルスワクチン接種か毎週の検査を義務付けると発表したが、それに対して批判が起きた。

共和党の政治家たちや経済団体からは義務化は、政府による行き過ぎ(government overreach)だと非難した。また、先週、共和党に属する24州の州司法長官が、被雇用者に対するワクチン義務化を行うならば、バイデンに対して訴訟を提起すると反撃した。

ギャロップ社の世論調査の結果でバイデンへの支持率が低いことが分かったが、先週発表されたキュニピアック大学の世論調査の結果では支持率は42%だった。そして、50%が不支持だった。

加えて、月曜日に発表されたハーヴァード大学CAPS・ハリス社共同世論調査の結果では、アメリカの有権者の間でのバイデンとトランプ副大統領の好感度は同率となった。

水曜日に発表されたギャロップ社の調査は、無作為に抽出された1000名以上のアメリカの成人を対象に実施された。誤差は4ポイントだ。

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最新の世論調査の結果で、バイデンの支持率は42%に下落(Biden approval rating slips to 42 percent in new poll

モニーク・ビールス筆

2021年9月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/572235-biden-approval-rating-slips-to-42-percent-in-new-poll

最新の世論調査の結果、アメリカの成人の半数がバイデンに対して不支持を表明している。バイデンが大統領に就任して以来、初めて、「マイナス領域」に入った。

本日、アメリカの成人を対象に実施した、キュニピアック大学の世論調査の結果が発表された。調査に参加した人の42%がバイデンの大統領としての仕事ぶりを評価し、50%が評価しなかった。

新型コロナウイルス対策については複雑な結果となった。バイデンは幅広いワクチン義務化を課そうとしている中で、対策への支持が48%、不支持が49%となった。

アフガニスタンからのアメリカ軍撤退を受けて、バイデンの外交政策についての支持率は大幅に下がった。

バイデンの外交政策への支持率は34%にとどまり、59%が不支持と答えた。8月の時点では、支持率と不支持率はそれぞれ44%だった。

今回の世論調査の結果によると、6割以上人たちが、アメリカ軍はアフガニスタンに戻らねばならないと答えた。しかし、7割の人たちがアフガニスタンからのアメリカ軍撤退は正しい決定だと考えている。

気候変動対応についてはバイデンの支持・不支持はだいたい半分となっている(支持率は42%、不支持率は44%)となっている。一方で、経済対応についてはマイナスの評価(支持率は42%、不支持率は52%)となっている。

キュニピアック大学は2021年9月10日から13日にかけてアメリカの成人1210名を対象に世論調査を実施した。誤差は2.8ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2021年5月29日に発売になった最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)を是非お読みください。

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悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 ジョー・バイデン大統領の世論調査の結果についての記事をご紹介する。全体では支持率60%ということになる。下の記事に掲載されているより詳しい結果を見ていただくと、性別、人種別、地方別、住んでいる場所の種類別、年収別、学歴別、支持政党別のより詳しい数字が出ている。性別では男性の方が女性よりも支持率が高い。人種別では非白人(アフリカ系、アジア系、ヒスパニック系)の方が白人よりも支持率が高い。地方ではアメリカ西部(太平洋沿岸)、住んでいる場所では都市部、年収では7万5000ドル以上、学歴では4年制大学卒以上でバイデン支持が高い。支持政党別では、民主党支持で94%、共和党支持では23%であった。女性の人気が低い理由はどうしてなのかが分からない。
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 政策分野別では、経済対策では57%の支持、雇用対策で57%、テロリズム対策で56%、移民対策で49%、外交で53%、政府の運営で59%、新型コロナウイルス感染対策で68%だった。新型コロナウイルス感染対策は評価が高いが、外交政策では評価が低いという結果になった。最も評価が低いのは移民対策ということで、カマラ・ハリス副大統領を責任者に任命した。概して国内政策の方が外交政策に比べて評価が高いが、これは、国内政策会議委員長に任命したスーザン・ライスの功績ということになるだろう。スーザン・ライスについては拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で詳しく取り上げている。

 バイデン政権は600兆円規模の予算を提案し、雇用と経済浮揚を目指している。しかし、これには赤字国債とインフレの問題が付きまとう。「ある程度のインフレ率まで国債発行しそれを財源に回しても構わない」というMMT理論については、賛否両論ある。現在の日本はMMT理論を実践しているという状態であるが、物価上昇率は目標の2%に遠く及ばない。アメリカではインフレ懸念が高まっているが、建材が回復しきらないうちにインフレになるということは人々の生活に大きな負担を強いるということになる。ここの見極めが重要だ。

 バイデン大統領はかなりリベラル派、進歩主義派に近い政策を実行しているが、民主党内部の保守派(ブルードッグ)や共和党側とどのように折り合いをつけるか、その政権運営が注目される。

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世論調査:大統領としてのバイデンの仕事ぶりに60%が承認を与えた(Poll: 60 percent approve of Biden's job as president

ガブリエラ・シュルト筆

2021年5月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/hilltv/what-americas-thinking/554855-poll-60-percent-approve-of-biden-as-president

最新の『ザ・ヒル』誌・ハリスX社の共同世論調査の結果によると、バイデン大統領のホワイトハウスでの働きについて10名の内6名が認めているということが分かった。

2021年5月17日から19日にかけて、登録済の有権者を対象に実施された世論調査の結果では、60%が大統領としてバイデンの働きぶりを認めている。4月26日から28日にかけて実施された世論調査の結果とほぼ同じだった。

今回の世論調査の結果では、バイデンの新型コロナウイルス感染拡大対応に対して最も高い支持が与えられているが、移民対策については最も低い支持しか与えられていない。新型コロナウイルス感染拡大には68%が支持を与え、移民対策については49%が支持を与えた。

59%がバイデンの政権による統治の仕事ぶりを認めた。

経済対策と雇用創出に対しては57%、テロリズム対策には56%が支持を与えた。

イスラエルとハマスとの間での暴力衝突が発生して以降に今回の世論調査は発表されたが、バイデンの外交対応についての支持率は56%から53%に微減であった。

両者の停戦合意は木曜日に発表された。

最新の『ザ・ヒル』誌・ハリスX社の共同世論調査は1889名の登録済の有権者を対象に実施された。誤差は2.25ポイントである。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 本ブログの更新が滞りまして申し訳ございません。年度末ということ、更に5月末にアメリカ政治に関する単著を刊行することになり、その準備にも追われておりました。第一稿が完成しましたので、余裕を持つことができるようになりました。

 私の友人(というのはおこがましいのですが)の藤森かよこさんの最新刊が出ました。『優しいあなたが不幸になりやすいのは世界が悪いのではなく自業自得なのだよ』という、これまでの本よりもより過激なタイトルになっています。興味がある方は是非お読みください。

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優しいあなたが不幸になりやすいのは世界が悪いのではなく自業自得なのだよ

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 今回ご紹介するのは、アメリカの共和党内部の亀裂についての記事だ。具体的にはトランプ派対反トランプ派の戦いということになる。トランプはホワイトハウス退去後、比較的静かに過ごしている。しかし、その存在感は共和党内部で維持されている。トランプに協力的な議員たちは彼からの推薦支持(endorsement)を望んでいる。トランプがこれを与えることで2022年の選挙での勝利が近づくという計算がある。

 トランプ派はより具体的に言えばポピュリズムである。既成の政治の枠組みや汚れたワシントン政治に対する人々の怒りがその原動力だ。一方で反トランプ派は、バイデン政権との協力を目指している。その割には経済政策などでバイデン大統領とは対立しているが。

 共和党がトランプの党になるかどうか、だが、その支持基盤がどうなるかが影響する。つまり、有権者の動向が決めることだ。反トランプ派の議員たちが多く選挙で落選するということになれば、必然的にトランプの党になる。選挙が近づいて、「あの議員はよくない、落選させよう」という呼びかけが出ればそれだけで現職議員の敗北の可能性は高まる。トランプの力はいまだに健在なのだ。

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トランプの早々の支持表明は共和党内部の亀裂を示している(Trump's early endorsements reveal GOP rift

アレクサンダー・ボルトン筆

2021年4月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/547483-trumps-early-endorsements-reveal-gop-rift

トランプ前大統領は最近、ロン・ジョンソン連邦上院議員(ウィスコンシン州選出、共和党)、ランド・ポール連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)、マルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)に対する推薦支持(endorsement)を表明した。この出来事は、トランプ時代を過去のものにしたい共和党員(Republicans who want to leave the Trump era behind)と、勝利の方程式としてトランプの保守主義におけるポピュリストとしてのブランドを考えている共和党員(those who see his populist brand of conservatism as a winning formula)との間の亀裂を露わにしている。

中間選挙の投開票日までおよそ20カ月を前にして、トランプは一部の連邦上院議員たちに対して連続して支持表明を行った。このことによって、トランプは、共和党所属の連邦議員たちの議論に割って入ることになった。議員たちは党としての先行きをどのようにしたいか、バイデン大統領とどの程度の協力関係を築くかということを議論している。

トランプはまた来年の選挙で共和党内の予備選挙での挑戦者たちから同盟者である現職の議員たちを守ることができるのだというシグナルを送っているということになる。

共和党系のストラティジストであるジム・マクローリンは「挑戦者となるであろう人たちを排除するということは極めて有効な予防的措置となります」と述べた。また、マクローリンは、トランプが、連邦上院共和党選挙対策本部長のリック・スコット連邦上院議員(フロリダ州選出)との間で、「極めて良好な関係」を維持していると指摘した。

マクローリンは、2022年の選挙に早い段階で介入するということは、共和党員に対して、共和党はバイデンの政策に対して戦う必要があるというメッセージを送ることになると述べた。バイデンはトランプ前政権の政策を破棄することを目的としている。

スーザン・コリンズ(メイン州選出)、リサ・マコースキー(アラスカ州選出)、ミット・ロムニー(ユタ州選出)のような一部の共和党所属の連邦上院議員たちはバイデンとの協力を望んでいると公に発言している。今名前を挙げた議員たちは、今年の2月初めにバイデン大統領と会談を持った議員たちの一部だ。この議員たちは大統領との間で、新型コロナウイルス感染拡大対策における経済対策での妥協を模索してバイデンと会談を持った。しかし、バイデンは共和党議員たちの提案を全く不十分だとして即座に退けた。

その結果、共和党所属の連邦議員の中で、バイデンが提案した1兆9000億ドル規模の「アメリカン・レスキュー・プラン」に賛成票を投じた議員は一人も出なかった。

共和党所属の連邦議員たちの一部は、ホワイトハウスからトランプが追い出されたことについて、共和党連邦上院議員会で特に不人気だった特定の政策の破棄する機会となると考えている。連邦上院共和党の中で不人気だったトランプの政策派、貿易関連と外交政策関連のものだった。

共和党所属の連邦議員たちはトランプの貿易政策と関税を放棄するかどうか決定していない。そして、バイデンは現在のところトランプの政策を続けている。

外交政策については、バイデン政権のNATOの同盟諸国との関係改善を行うという決定について共和党連邦上院議員会から大きな反撃は出ていない。今年2月バイデンは「一国に対する攻撃は全加盟国対する攻撃である。これは私たちの確固たる誓いである」と宣言し、アメリカのNATOへの関与を再び強く推進するという決意を示した。

しかし、その他の共和党の政治家たちにとっては、トランプが大統領を退任したことで、自分たちのキャリアを伸ばし、労働者階級の有権者たちの間に共和党の支持基盤を拡大するための機会となる。共和党系のストラティジストたちは、ジョンソン、ポール、ルビオは全員がトランプからの推薦支持を得たいと望んでいた。

ジョシュ・ホーリー連邦上院議員(モンタナ州選出、共和党)はトランプのポピュリズムを支持し、ポピュリズムを共和党の将来に進むべき道だと考えている数少ない議員の一人だ。

ホーリーは今週中に「21世紀のためのトラスト解消のための政策提案」を行うと述べた。その主眼は「ジョージア州についてのバイデンの大きなウソを報じ続ける巨大企業」に集中したものだとしている。

そのような政策主張は保守派全員には受け入れがたいものだ。

共和党系のストラティジストであるブライアン・ダーリンは次のように語っている。「反自由市場(anti-free market)的な政策を主張するその心情は理解できます。共和党が抵抗すべき一点は自分たちとは同意できない巨大企業に反撃するために反トラスト法を使えと促すことです」。

ホーリーは昨年、共和党連邦上院議員会での決定のほとんどに反対しその決定とは異なる行動をした。昨年12月連邦議会では9000億ドル規模の経済支援策、2000ドルの経済刺激のための小切手配布が決定した。共和党連邦上院議員会はこの妥協に反対したが、ホーリーは賛成に回った。トランプ大統領も2000ドルの小切手配布に賛成していたが、共和党の連邦議員たちの多くはこのアイディアに反対した。

もう一方の側にいるのがマコースキーだ。マコースキーは共和党がレーガン大統領時代の共和党のように「大きなテント(big tent)」のような政党に戻って欲しいと願っている。

マコースキーは今年1月、「共和党がトランプの党であり続けるなら、私は共和党に適しているかどうか自信を持つことはできません」と発言した。

金曜日、マコースキーは新たな支援を得た。連邦上院少数党(共和党)院内総務ミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)とつながっているスーパーPACの連邦上院リーダーシップ・ファンドは、2022年の選挙でのマコースキーの再選に推薦支持を表明した。

連邦上院リーダーシップ・ファンドの会長を務めているスティーヴン・ラーは「アラスカ州は経験豊富な代表を出す必要がある。リサ・マコースキーはアメリカ合衆国上院でその役割を担っている」と述べている。ラーは以前マコーネルの首席補佐官を務めた人物だ。

トランプがバイデンに敗れてから、マコーネルはトランプとの関係を切った。共和党の指導者であるマコーネルは昨年12月中頃にトランプと話すことを止め、今年2月、16日に連邦議員たちが選挙人の投票を承認しようとしているそのときにトランプ支持者たちが連邦議事堂に進入したが、この事件についてトランプの示唆があったと激しく非難した。

今年1月上旬にツイッター社から投稿禁止処分を受けて以降、トランプは比較的静かである。しかし、彼の大統領退任後の事務所と「セイヴ・アメリカ」PACからの一連の声明と支持表明が出されていることで、ここ最近、共和党政治において存在感が高まっているように感じられる。

「セイヴ・アメリカ」はトランプに忠実な政治家たちのために8500万ドルを集めている。このことは、トランプが政治の世界で力を持ち続ける意思があることを共和党員や共和党支持者たちに印象付けるものだ。

先週、トランプは、ジョンソン、ポール、ルビオへ支持表明を行った。この3名は連邦上院の中で最もとランプに忠実な議員たちで来年に再選のための選挙が控えている。ジョンソンは、ハンター・バイデンのウクライナのエネルギー企業に招聘されていたことについての調査を主導していた。このハンターの件はトランプの好むものであった。ジョンソン自身は3期目を目指すかどうかまだ発表していない。

トランプはジョンソンに対して、「出馬だ、ロン、出馬だ!」と促した。民主党側は、ジョンソンが共和党の候補者になれば民主党側の勝利の可能性が高まるだろうと考えている。

民主党系のストラティジストであるベン・ナックルスは2018年の選挙でウィスコンシン州知事トニー・エヴァースの勝利に貢献した人物である。ナックルスは次のように述べている。「ジョンソンに出馬して欲しいと願っています。そうすれば民主党側がより簡単に議席を奪取できますからね。ジョンソンは多くの問題について、あまりに急進的で、あまりにも無茶なことを言ってきました。もしジョンソンが出馬するならば、民主党が議席を奪取するのはより容易なことになるでしょう」。

ウィスコンシン州を地元して活動している共和党系ストラティジストであるブランドン・ショルツは、民主党側は2020年の選挙で使用した反トランプ戦術と言葉遣いを再び持ち出すだろうと述べている。

ショルツは、トランプからの支持は、2020年と同じ選挙を再現しようとしている民主党に有利に働くことになる、大統領選挙で反ドナルド・トランプ活動を展開したが、それを連邦上院議員選挙でもやり反ロン・ジョンソン活動をやろうとするだろうと述べた。

ショルツは、2020年の選挙で民主党はウィスコンシン州では課題や問題を取り上げることを中心の選挙戦を展開することはなく、トランプの性格や行動に焦点を当てて選挙活動を行った。

ショルツは「民主党はドナルド・トランプを憎悪していました。これが選挙活動の中心でした。私は、民主党がこの選挙活動を再現しようとしていると考えています」とお述べた。

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 ジョー・バイデン政権の閣僚(cabinet members)人事で重要なのは、国務長官や財務長官といった重要閣僚の人事ではない。私が注目しているのは気候変動問題担当大統領特使(U.S. Special Presidential Envoy for Climate)ジョン・ケリー(John Kerry、1943年-、77歳)とアメリカ国際開発庁(USAID)長官(administrator)のサマンサ・パワー(Samantha Power、1970年-、50
歳)だ。今回はサマンサ・パワーを取り上げる。
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バイデン(左)とサマンサ・パワー

 私は著書『アメリカ政治の秘密』の中で、サマンサ・パワーを取り上げた。彼女は2008年の大統領選挙でオバマ選対に入り、民主党予備選挙でヒラリー・クリントン陣営と激しい戦いをする中で、イギリス・スコットランド地方の新聞のインタヴューを受けた際に、ヒラリーを「彼女は怪物よ、もちろんこれはオフレコでお願いね(She is a monster, too—that is off the record)」と発言したことが、そのまま掲載されたために、選対を離れることになった。オバマ政権では国家安全保障会議のスタッフになり、オバマ政権二期目には、閣僚級の米国国連大使に任命された。

 パワーは1990年代に、20代でジャーナリストとなり、民族紛争が激化していた当時のバルカン半島を取材した。そして、2002年に最初の著作『集団人間破壊の時代(A Problem from Hell": America and the Age of Genocide)』を出版した。これが2003年にピューリッツァー賞 一般ノンフィクション部門を受賞する。そこで高い知名度を得た。

 USAIDの予算規模は2016年の時点で272億ドル(約2兆9000億円)、人員は約4000名だ。「庁(Agency)」となっているが、「省(Department)」クラスの規模だ。ここに人道的介入主義者(humanitarian interventionist)のサマンサ・パワーを長官に持ってくる。その意味は重たい。

更に言えば、バイデン政権から、USAID長官も国家安全保障会議(National Security Council、NSC)にも出席できるようにする、ということになった。ここが重要ポイントだ。国家安全保障会議は縦割りの弊害をなくし、大統領の許で、外交や国家安全保障政策を一元化するための会議であり、アメリカにとっても世界にとっても最重要の会議である。議長は大統領であるが、実際の差配は国家安全保障問題担当大統領補佐官(National Security Advisor)が引き受ける。もっと細かいことは国家安全保障問題担当次席大統領補佐官(Deputy National Security Advisor)が行う。国務長官や国防長官、財務長官などは出席する。これまでの正式な出席メンバーは以下の通りだ。

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●議長:大統領、●法的参加者:副大統領、国務長官、国防長官、エネルギー長官、●軍事アドバイザー:統合参謀本部 (JCS) 議長、●情報関係アドバイザー:国家情報長官、●定期的参加者:国家安全保障問題担当大統領補佐官、首席補佐官、国家安全保障問題担当次席大統領補佐官、●追加参加者:財務長官、司法長官、国土安全保障長官、ホワイトハウス法律顧問、アメリカ合衆国国家経済会議委員長、米国国連大使、アメリカ合衆国行政管理予算局局長

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省の長官(Secretary)でも出席できないものが殆どであるのに、国務省の傘下にあるUSAIDの長官(administrator)が出席できるようになった。これは、「アメリカの海外援助を国家安全保障政策や外交政策と同格に扱う」ということ、歴代政権もぼやかしてきたことを、初めて明確にしたのである。私たちは海外援助と言えば、井戸を掘ったり、農業技術の支援をしたり、学校や道路、橋を建設したり、ということをイメージする。困っている人たちを助ける、ということを想像する。

 しかし、アメリカの海外援助はそうではない。そんなただでお金をくれてやる、そんな無駄なことはしない。海外援助を「ターゲットにした国の体制転換(regime change)のために」使うということなのである。私はその実態を『』の中で書いている。そのために、人道的介入主義派(humanitarian interventionism)のリーダーである、サマンサ・パワーをUSAID長官に持ってきた。更に、サマンサ・パワーがホワイトハウスでの国家安全保障会議に出席できるようにした。バイデン政権は海外介入をやる気満々だ。

現在、新型コロナウイルス感染拡大が問題になっている。バイデン政権は感染症対策のために、このUSAIDの海外援助を利用しようとしている。中国が世界各国に対して支援を行っているが、アメリカもそれに遅れてはならじ、ということであろう。しかし、新型コロナウイルス感染拡大が一番深刻なのはアメリカである。まずは自国のことからしっかりやれよ、そのためにUSAIDの予算を削減して国内対策に回せ、と私は考える。

 人道的介入主義とネオコンは同根である。「アメリカの理想や価値観を世界中に広めて、それで統一すれば戦争は起きない、平和な世界になる」という何とも思い上がった思想を共有している。そのためにターゲットにされる国にとっては災難であり、厄災である。バイデン政権誕生を喜んでいる人間は何ともおめでたい人たち、なのだ。

(貼り付けはじめ)

バイデンは元米国国連大使をUSAIDのトップに指名し、アジア担当スタッフを強化(Biden Names Former U.N. Envoy to Head USAID, Beefs Up Asia Staff

-元米国国連大使サマンサ・パワー(Samantha Power)はトラブルを抱えた政府機関を立て直すことになるだろう。一方、オバマ政権に参加したヴェテラン、カート・キャンベル(Kurt Campbell)とイーライ・ラトナー(Ely Ratner)をアジア担当のトップの地位に就く

ジャック・デッツ、アイミー・マキノン筆

2021年1月13日

『ザ・ヒル』誌

https://foreignpolicy.com/2021/01/13/biden-names-former-u-n-envoy-to-head-usaid-beefs-up-asia-staff/

大統領選挙当選者ジョー・バイデンは元米国国連大使サマンサ・パワーを米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)に指名している。著名なジャーナリストだったパワーを外国向け支援担当政府機関の責任者にすることになる。USAIDは過去4年間に予算削減と運営管理の失敗によって動きが取れなくなってしまっている。

パワーがUSAID長官に指名されるという報道を初めて行ったのは、NBCニュースであった。アイルランドからの移民であったパワーの名前が最初に世間に知られるようになったのは、大虐殺に対するアメリカの反応についての研究でピューリッツァー賞を受賞したことがきっかけだった。パワーのUSAID長官への指名を政権移行ティームが事実だと認めた。今回の人事は、新型コロナウイルス感染拡大への対応で、外国への支援が重要だと、来るべきバイデン政権が考えていることを示している。バイデン政権はUSADI長官を国家安全保障会議の参加メンバーに引き上げる。

バイデンは国家安全保障会議(NSC)に、調整役ポジションを新たに作った。このポジションは世界のより広範な地域や重要な地域を担当することになる。これらの地位はすぐに埋まった。バイデンはキャンベルとラトナーを指名したが、この人事は中国との戦略的競争に集中することを示している。

水曜日、『フィナンシャル・タイムズ』紙は次のように報じた。オバマ政権下で国務省において幹部を務めたカート・キャンベルをインド太平洋担当コーディネイターに指名した。キャンベルはオバマ政権下でアメリカは太平洋地域に集中すべきだと主張した人物である。また、ブルッキングス研究所の研究員ラッシュ・ドシーを中国担当部長に指名したフィナンシャル・タイムズ紙はまた、バイデンの副大統領時代に次席国家安全保障担当副大統領補佐官だったイーライ・ラトナーがインド太平洋問題担当国防次官補(assistant secretary)に就任すると報じた。インド太平洋問題担当国防次官補は、国防省の職位の中で、アジアに関して、連邦上院の人事同意を必要とする、最も高い地位である。

 こうした人事を発表する中で、バイデンはパワーを「世界的な賞賛を受けている、両親と道徳的明確性を主張する声のような存在」と称賛している。そして、パワーは尊厳と人間性のために立ち上がる人物だと評している。

バイデンは声明の中で次のように述べている。「パワーは、彼女自身が提起した、原理に基づいたアメリカの関与に対して、比類のない知識と疲れを知らない努力を行っていることを知っている。USAIDの世界の舞台でのリーダーという役割を再び果たすようになるためには、パワーの専門性と考えが必要不可欠である」。

国連大使として、パワーは国連において、シリアにおける化学兵器による攻撃、ロシアによるクリミア侵攻、エボラ出血熱危機などの諸問題に対するアメリカの対応を主導した。パワーは理想主義者を自称しているが、1990年代のバルカン半島においてジャーナリストとしての取材経験が大きな影響を彼女自身に与えている。バルカン半島において最初にプレスパスを得る際には、若いパワーは本誌『フォーリン・ポリシー』誌の推薦状を得た。この推薦状はカーネギー国際平和財団を通じてもたらされたものだが、当時、パワーは同財団でインターンをしていた。

オバマ政権で、パワーはシリアとリビアで起きている人道上の危機の深刻化を止めるためにはアメリカの力が必要だと声高に主張した。2019年に出版した回顧録『ある理想主義者の教育(The Education of an Idealist)』の中で、パワーは、2013年にホワイトハウスのシチュエーションルームで激しいやり取りがあったと書いている。オバマ大統領は、パワーに向かって、「サマンサ、私たちは皆、君の本を読んでいるんだよ」と述べた。

USAIDはトランプ政権下で脇にどかされ、士気が下がっていた。パワーはそのUSAIDを率いることになる。USAID長官に政治任用された人物が就任することになり、USAIDの士気は上がるだろう。2020年の大統領選挙の翌日、ホワイトハウスは、連邦上院の人事承認が必要なUSAID副長官ボニー・グリックを解任した。その日は、USAIDの臨時長官ジョン・バルサの任期の最終日(連邦欠員法の定めによる)であった。そして、バルサはグリックの後任として副長官になり、USAIDのトップの地位を維持した。

1月6日の連邦議事堂進入事件の後、USAIDのホワイトハウス担当キャサリン・オニールはトランプ政権で登用された人物だが、事件をきっかけにしてUSAIDの幹部職員たちが次々と辞任していくことを批判した。

バラク・オバマ元大統領が連邦上院議員時代にサマンサ・パワーの文章に注目した。バイデンはトランプ政権と連邦議会によって予算を削られ続けたUSAIDに、知名度の高いパワーをもってきた。トランプ政権は繰り返し海外援助予算を削減しようとし、昨年にはUSAIDの予算を22%削減することを提案した。しかし、小の動きは連邦議会によって阻止された。トランプ政権は、イラクのような緊急性の高い場所でのフルタイムの援助担当職員の数を減らし、最低限の帰還要因だけを残すようにした。

パワーはバイデン、そして国務長官内定者アントニー・ブリンケンと直接の関係を持ち、人権問題に対して熱心に発言してきたという記録は残っているが、国際開発の分野におけるバックグラウンドは持っていない。パワーのUSAID長官指名に到達するまでに、バイデン・ハリス政権以降ティームは、国連世界食糧計画の責任者を務めたエルサリン・カズンやオバマ政権下でUSAIDの幹部職員を務めたジェレミー・コインディアックも候補に挙がった。コインディアックはツイッターなどを通じてトランプ政権の新型コロナウイルス感染拡大への対処を激しく批判したことで有名だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 2020年の一般教書演説(State of the Union Address)はないような大したものは何もなかったが演説外では大変見どころの多いものとなった。ドナルド・トランプ大統領は翌日に連邦上院で弾劾についての評決が行われ、無罪評決となる可能性が高い中で、一般教書演説を行った。演説の中で弾劾について触れるか注目されたが、触れなかった。
2020stateoftheunionaddressdonaldtrump

 トランプ大統領は、昨年弾劾の調査を開始した連邦下院議会の議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)に対しては徹頭徹尾無視する態度に出た。大統領は演壇に進み、後ろの議長席に座るマイク・ペンス副大統領とペロシ下院議長に演説原稿を渡した。ペロシ議長はその際に手を差し伸べて握手しようとしたが、トランプ大統領は完全に無視した。ペロシ議長は笑顔ではあったが目を丸くし、驚愕の態度であった。

 その後も演説でトランプ大統領が自身の業績を誇り、議場で共和党側から大きな拍手を受ける時も首を振り、不同意の態度を示した。

 そして、演説が終わり、トランプ大統領がペロシ議長を無視して演壇から降りる際、笑顔で演説原稿を真っ二つに引き裂いた。演説中も民主党側からの抗議の声が出されることもあった。

 「State of the Union」の「Union」はアメリカという各州が集まって作っている国、まとまりの意味で、その状況を行政府の長である大統領が立法府である議会に説明する、ということだ。三権分立で等しく権力を持つ司法部からは連邦最高裁判所判事たちが出席する。この「Union」という言葉が虚しく響く一般教書演説となった。トランプ大統領は自身の選挙戦のためのサプライズをいくつも用意し、全米中継の中で得放映された。テレビ番組で何回も紹介されることになる。これで大統領を強固に支持する有権者を固めることができた。民主党予備選挙で集計に不手際があったこともあり、これもうまく利用できる形となった。

しかし、まとまりや団結を強調すればするほど、虚しく響くだけのこととなってしまった。連邦上院で弾劾に関する無罪評決が出た後の演説でもトランプ節が炸裂するだろう。これでアメリカの分裂を益々印象付けることになる。

 

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領による緊張を高めた一般教書演説の5つの特徴(Five takeaways from Trump's tense State of the Union address

ブレット・サミュエルズ、モーガン・チャルファント筆

2020年2月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/481555-five-takeaways-from-trumps-tense-state-of-the-union-address?__twitter_impression=true

党派間の激しい争いの中で一般教書演説が行われた。また、共和党が過半数を占める連邦上院における弾劾裁判でトランプ大統領に無罪評決を行われるであろうという時刻の24時間以内に演説が行われたことになる。

一般教書演説は、弾劾訴追に関する共和党が過半数を占める連邦上院で無罪判決が出る可能性が高い日の前日に行われた。

ここで5つの特徴を書いていく。

(1)トランプ・ペロシの緊張関係再び激化(Trump-Pelosi tensions boil over again

今回の一般教書演説は、昨年の10月に不調に終わったホワイトハウスでの会談以来、初めてトランプ大統領とペロシ連邦下院議長が同じ部屋にいる機会となった。10月の会談の後、ペロシ議長がそそくさと外に出て、トランプ大統領はペロシ議長を「三流」の政治家だとこき下ろした。

火曜日の夜、物事は改善しなかった。

トランプ大統領が登壇し、演説原稿をペロシ議長に渡した際、議長は大統領に手を差し伸べ握手をしようとした。しかし、大統領はペロシ議長の行為を無視したように見えた。演説が続く中、ペロシ議長は大統領に目を向けることはなかった。また、大統領が演説の中で健康保険制度と社会保障について話した際には、「ノー」を示すように頭を振った。

トランプ大統領が演説を終えた後、ペロシ議長は演説原稿を真っ二つに引き裂き、注目を集める瞬間を作った。

ペロシ議長は演説の後、記者団に対して、「選択肢を検討した上で行った礼儀にかなった行動です」と述べた。

トランプ大統領がペロシ議長の握手を無視したこと、ペロシ議長が演説原稿を破ったことという2つの場面は、水曜日にトランプへの無罪評決が連邦上院で行われようとしている中でケーブルテレビのニュースで繰り返されることになるだろう。

これら2つの場面は2020年が酷い年になるであろうという雰囲気を作り出すものだった。

(2)連邦議場は党派対立に包まれた―トランプ時代になっても(The chamber was polarized — even for the Trump era

連邦議場において演説の中で共和党側によるスタンディング・オヴェイションが何度も起きた。しかし、民主党側はトランプ大統領の演説時間のほとんどで嫌悪を示した。

そのような行動は一般教書演説ではそこまで珍しいことではない。しかし、この火曜日の一般教書演説では、民主党側はトランプ大統領に対しての否定的な感情を強く示したのは今回の演説が特異であった。

トランプ大統領は演説の中で低い失業率とアフリカ系アメリカ人の間での歴史的に見て低い失業率を自画自賛した。この時でも民主党側は椅子に座ったままだった。

大統領が数百万のアメリカ国民がフードスタンプを必要としなくなったと述べた時には民主党側からはブーイングが出た。大統領が処方薬の薬価を引き下げる法律の必要性を訴えた時、民主党側からは処方薬の薬価に関してペロシ議長が署名した法案である「HR3」を叫ぶ声が上がった。

トランプ大統領は、「急進左派」と「社会主義的」医療制度政策を批判し、不法移民を守る聖域都市(sanctuary cities)の拡大を非難することで厳しい雰囲気を議場にもたらした。

火曜日の夜を特徴づけることになった党派対立から、議場のギャラリー、招待者席も免れることはできなかった。2018年に学校内の銃撃事件で娘を亡くしたフレッド・ガッテンバーグはペロシ議長からの招待を受けてギャラリーにいた。ガッテンバーグは、トランプ大統領が銃保有の権利を守ると公言した際に抗議のために叫び声を上げたために議場から連れ出された。

(3)本領を発揮したトランプ大統領(Trump in his element

トランプ大統領は連邦議会に対する90分間の演説の間でメッセージを発信した。トランプ大統領は自身の政権下での経済、安全保障、移民政策を強調し、自分自身をアメリカの労働者と家族の擁護者だと定義した。

トランプ大統領は様々な方法で選挙戦での集会での発言内容を演説の中で繰り返した。民主党側からの批判はそこまで大きなものではなかった。トランプ大統領はまともだった演説の最初の部分で経済成長と低失業率、特にアフリカ系アメリカ人共同体の低失業率を強調した。

トランプ大統領は演説の最初で次のように述べた。「アメリカの敵は逃亡している。アメリカの幸運は上り調子であり、アメリカの将来は光り輝いている。経済後退の年月は終わった。私が決めていることは、労働者優先、家族優先、成長優先、何よりもアメリカ優先だ」。

トランプの発言は議場で共和党側の座る部分から賞賛され、演説中に弾劾について触れることは避けるようにと主張した共和党側はトランプ大統領の演説に満足した。トランプ大統領の一般教書演説は、2020年という選挙の年に入るにあたり共和党に勢いをつけるものとなった。

(4)トランプの「リアリティショー」だった一般教書演説(Trump’s reality show State of the Union

トランプ大統領はかつてリアリティーテレビ番組の司会者だったことがある。火曜日夜の演説の中で、大統領は彼らしさと司会者らしさを十分に示した。トランプ大統領はテレビが取り上げやすい場面をいくつも作った。

トランプ大統領は保守派のラジオ番組司会者ラッシュ・リンボウの業績を讃えた。リンボウは進行した肺癌と診断され、ホワイトハウスの招待客リストに遅れて加えられた。トランプ大統領は演説の中で、リンボウに大統領自由勲章を授与すると発表し、メラニア・トランプ大統領夫人が勲章をリンボウの首にかけた。

トランプ大統領は演説の中でタウンゼント・ウィリアムズ軍曹の家族に触れた。ウィリアム軍曹はアフガニスタンに派遣されて11か月が経過していた。トランプ大統領はウィリアムズ軍曹の妻と子供たちにサプライズをプレゼントした。大統領は軍曹が帰国し、家族に会うために議場に来ていると発表した。家族は再会を果たし、議場は「USA!」コールに包まれた。

学校選択法制について進めると強調する中で、トランプ大統領はフィラデルフィアに住む小学4年生ジャニア・デイヴィスに「オポチュニティ・スカラシップ」を与えると発表した。これによってジャニアは自分が選ぶ公立学校か私立学校に通えるようになる。

派手な身振りはトランプ大統領特有のもので、マスコミがトップで報じるようなものを作り出すものであった。しかし、同時に刺刺しい雰囲気を和らげるものでもあった。

(5)トランプ大統領は弾劾については別の日に取っておくことにした(Trump leaves impeachment for another day

トランプ大統領の長かった演説では事前にもそしてアドリブ的にも最大の関心事について触れられることはなかった。関心事とは弾劾と共和党が過半数を握る連邦上院で無罪評決が出る見通しについてであった。

ペロシ下院議長が弾劾に関する調査を行うと発表してからの4カ月、トランプ大統領はこれまで選挙集会や公式行事の場において、頻繁に連邦下院民主党が弾劾の調査を行ったことについて非難してきた。そのトランプ大統領が演説の中で弾劾について触れなかったのは驚きであった。

共和党内部には、トランプ大統領が連邦上院で無罪評決を受ける前に、事前の勝利宣言として一般教書演説を使うのではないかと懸念を持つ人々もいた。

共和党所属の連邦議員たちの多くは一般教書演説が近づく数日間は弾劾に集中すべきではないと主張していた。また、大統領に対して演説においては自身の業績を強調するように求めていた。

トランプ大統領は水曜日の午後に連邦上院で弾劾に関する判決の投票がなされた後で演説を行うと見られている。どのような判決になりどのような演説になるかはは明確ではない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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