古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:孫崎享

 古村治彦です。

 2023年1月28日に副島隆彦・孫崎享著『世界が破壊される前に日本に何ができるか』(徳間書店)が発売になります。

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世界が破壊される前に日本に何ができるか

 対談者の孫崎享氏は、ウズベキスタン駐箚特命全権大使、外務省国際情報局局長、イラン駐箚特命全権大使など要職を歴任したエリート外交官です。著書『戦後史の正体』『アメリカに潰された政治家たち』がよく知られています。

 以下に、はじめに、目次、おわりを貼り付けます。是非手に取ってお読みください。

(貼り付けはじめ)

はじめに

孫崎享氏は偉い人なのだ

 この本は、外務省の高官(国際情報局長)であった孫崎享(まごさきうける)氏と私の初めての対談本である。内容の中心は、最新のウクライナ戦争の分析と、日本外交の真実を孫崎大使に語っていただいたことである。

 大使(アンバサダー)という言葉は、元々ヨーロッパで、国王(王様)のお友達という意味だ。大使が手袋を脱()いでテーブルに叩(たた)きつけたら、戦争の合図となる。日本でも、大使は天皇の勅任官(ちょくにんかん)であって、ひとりひとりが外国に対して日本を代表する。一度でも大使になった人は一生、大使(アンバサダー)を公称できる。

 しかし日本にはこの習慣はないので、私は孫崎氏()と呼ぶ。それでも本書の中で、私は時々、孫崎大使と呼んでいる。孫崎氏は私より10歳上である。

 孫崎氏は本当は偉い人なのだ。その偉さを日本人は誰も理解しない。何が偉いのかと言うと、私は氏のご自宅で対談していて、驚いた事実がある。

 孫崎氏が外務省に入って(1966年、23歳)、すぐにイギリス陸軍の言語(げんご)学校(アーミー・スクール・オブ・エデュケイション)に派遣された。この学校は、どう考えてもイギリスの高級な国家情報部員(国家スパイ)の養成学校である。私はここはイギリス陸軍大学の一部だと思う。

 孫崎氏は、この言語学校(敵国の言語であるロシア語を教える)で13人の同期生と学んだ。その中に、ケント公 Duke(デューク) of(オブ) Kent(ケント)(プリンス・マイケル・オブ・ケント)がいたという。その他、風変わりなイギリス貴族たちが、孫崎氏のご学友である。その中のひとりの変人は、孫崎氏の御自宅に泊まったそうだ(P220)。この人物は英国家情報部M(エム)(アイ)(シックス)の副長官になった。

 もうひとりの変人は、2003年からのイラク戦争(War in Iraq)でWMD(ダヴリューエムディー)(大量破壊兵器。核と生物兵器)がイラクで見つからなかったことで、アメリカ政府(子ブッシュ政権)が追い詰められた時の主導者である。これ程(ほど)の人物でなければ、アメリカ政府を揺さぶることはできない。

 イギリス貴族かつ高官の中の、正義の変人たちは、これぐらいの奇妙な人々である。アメリカが大嫌いなのだ。それでもイギリス支配階級の中で堂々と生きている。孫崎氏が、日本国内で変人外交官扱いされるのは、これ程の高貴な精神をイギリスで叩き込まれ、涵養(かんよう)して来たからである。孫崎氏の反米精神の神髄はここで育(はぐく)まれた。

 孫崎氏は、日本の言論界で、今では陰謀論者(コンスピラシー・セオリスト)扱いされていると、私は聞いている。私が「孫崎先生は、外務省で対米自立派(アメリカの言いなりにならない人たち)、即(すなわ)ち、冷()や飯(めし)()いですよね」と言ったら、孫崎氏は否定もせず、同意する様子だった。こんな失礼なことを、これまで面と向かって言われたことがないのだ。

 本当は、自分たち対米自立派(アジア重視派)が、ずっと外務省の主流であって、アメリカにヘコヘコする対米追随(ついずい)派よりも、ずっと誉(ほまれ)高いのだ、という強い信念をお持ちである。

 孫崎大使が所属しているアメリカ何するものぞ、の対米自主派の重厚な伝統は、本書第4章P182以下で出てくる坂本重太郎(さかもとじゅうたろう)や谷野作太郎(たにのさくたろう)の連綿(れんめん)と続く、日本外務省の内部の激しい争いの苦闘である。孫崎氏はこの考えを深く受け継いでいる。

 本書の第4章で、戦後の日本外務省の大きな骨格を初めて外側に明らかにした。大変重要である。

 前述したケント公爵と付き合いができる日本人は希有(けう)の存在である。ヨーク公アンドリュー王子(故エリザベス2世の次男。少女売春で悪評判)や、エセックス公ヘンリー王子(アメリカ黒人のメーガン・マークルと結婚して王室から追放)と、グロスター公くらいしか英公爵(デューク)はいないのだ、ということを日本人は知識層でも知らない。

 ケント公爵というのは、日本で言えば、今も続く徳川公爵家(尾張名古屋で徳川氏の宗家(そうけ))のような人なのだ。または近衛家(このえけ)を筆頭とする藤原摂関(せっかん)家、あるいは、水戸光圀(みとみつくに)(黄門(こうもん)さま。三代将軍家光(いえみつ)の従兄弟(いとこ))のような立場の高貴な人なのだ。だから「下()ろうども下がりおろう」というような人だ。今でも英連邦(コモンウェルス。カナダ、オーストラリア、インドを含む)では、英国王の叔父と知られ畏(おそ)れられる。

 今の日本は、天皇家(皇室)以外はアメリカによって消滅させられたので、私たちは貴族を実感で分からなくなった。

 なぜ、孫崎氏が風変わりな外交官で変人扱いされているのに、本人が全く気にしない理由を私は、ハッと分かった。日本外務省の権威なんか、はるかに超えている人なのだ。

 孫崎氏は、日本外務省がイギリスに送り込んで、最高級の国家スパイとして育てられた特別な人材なのだ。たかがアメリカの子分になり、アメリカの手先をやっている日本人学者や、ジャーナリストであるお前たちなんかとは、格(クラス)がちがうのだ。

 イギリス貴族は、長い歴史からアメリカを見下(みくだ)す。この精神が孫崎氏に深く、びっしりと転移している。孫崎氏の言論は、外務省を離れて解き放された。そして、ただひらすら日本国民に帰依(きえ)すると決めた。

 孫崎氏のこの複雑な経緯(けいい)と心理は、特異なイギリス仕込(じこ)みの国家スパイ教育を受けたことからにじみ出ていると私は分かった。孫崎氏の言論を軽くみて、ケナしている程度の者たちなど、氏は高見(たかみ)から嗤(わら)い蹴散(けち)らしてしまう。

 本書中の孫崎氏の発言は、全く表面的な過激さはない。読者は飽()きてしまうだろう。だが、氏の発するコトバには、日本を背負って外交の現場で、その国家機密の中を、長年泳いで来た人間としての重みがある。

 本書P149で、中国を代表する学者の発言が出てくる。ここに出演する各団の代表は、おそらく、孫崎氏と同じような各国の、上に突き抜けた変人学者たちであろう。このレベルになると、それこそ何を言ってもいい。自国政府の見解や態度と異なっても構わない程の論客たちであるようだ。

 その日本代表が、まさしく孫崎氏なのである。だから孫崎氏が、世界政治言論の中に選ばれている独特の地位を、私たちは知るべきなのである。

 中国を代表する学者が言った。「日本は(中国とアメリカの)どっちに付くんだ」という激しい直截(ちょくせつ)の問い詰めをした。国内の言論人である私たちは、こんな厳しい質問を突きつけられたら、まともに答えることはできない。ヘラヘラと言(げん)を左右にするしかない。

 中国は、アメリカと決定的に対決すると決めたようなのである。アメリカとの戦争までも準備している。そのために習近平の独裁に近い体制づくりをした。中国共産党第20回大会(20大(だい))の翌日、2022年10月23日に決まった7人の新指導部「チャイナ・セブン」の強い決断である。まず金融と経済(貿易)面で、アメリカからどれだけ痛めつけられても中国は、もう後(うし)ろに退()かない。

 私たち日本人は、まだ甘い考えをしている。私は孫崎氏のさりげない言葉から、世界の最先端の大きな動きを悟った。

 孫崎氏が、ここで日本を代表する外交官の言論人として世界と立ち向かっている。このことを私たちは知るべきだ。世界水準にある人物たちは、それぞれの国がもつ限界を上(うわ)()なれることで、初めて最高水準の人間たちの交(まじわ)りとなる。この水準に到達した有資格者はなかなかいない。

 たかが、アメリカの手先、子分をやっている分際(ぶんざい)で、孫崎氏を見下せると思うな。

 外務省には大使をやった高官たちが山ほどいるだろうが、みんな御身(おんみ)大事で大勢に抗(あらが)うことをせず、停年後の自分の生活の利()(とく)をかき集めることに窮々(きゅうきゅう)とする。

 本書の一番重要な問題である、プーチンは果たして核兵器を本当に使うか、の問題に関して、私は孫崎氏に率直にぶつけた。

「孫崎先生。私は、もうあまりに西側(欧米勢力)が、ヒドい謀略(ブチャの虐殺の捏造(ねつぞう)とか)をロシアに仕掛けるので、怒(いか)りました。もういい。プーチン、核兵器を以下の4つに射ってくれ、と書きました。人類の諸悪(しょあく)の根源であるローマ・カトリック教会の総本山のヴァチカンに1発。イギリス国教会(アングリカン・チャーチ)の総本山のウェストミンスター大聖堂(カテドラル)(その裏側が英議会)。オランダのハーグにある国際司法・刑事両裁判所に1発(ここは戦術核でいい)。そして4つめが、ニューヨークだ。この4発をプーチン射ってくれ、とまで言ってるのです」と、私は言った。

 私はここで無視されるか、あきれられ、あまりの非常識を非難されると思った。

 ところが。孫崎氏は何と、「それでいいんですよ。副島さんがプーチンに命令して、核を射てと言ったのですから。それでいいんですよ」と言ってくれた。どうも、それはお前の意見で、主張だから勝手に自由に言っていいという意味らしい。

 私は、この孫崎氏の全てを突き抜けた、高いレベルの議論の仕方が、世界最高水準の知識人たちの間には有るのだとハタと気づいた。これぐらいのことを言えないようでは、知識人としては、世界で通用しない。

 私が孫崎享氏を、日本最高の国際人材(世界で通用する)だ、と厳格に判定した理由は、以上のとおりである。

 あとは皆さん、本書を読んでください。

2023年1月

副島隆彦 

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『世界が破壊される前に日本に何ができるか』 もくじ

はじめに──孫崎享氏は偉い人なのだ  副島隆彦 1

第1章 「安倍処分」の真相

安倍晋三を殺したのはアメリカだ

山上は安倍殺しの単独犯ではない …… 20

殺害をめぐる不可解な謎 …… 24

安倍暗殺はアメリカの怒りが原因だった …… 29

竹島をめぐる韓国からの工作資金 …… 33

アメリカ政治を汚した統一教会 …… 35

キッシンジャーたちが「安倍処分」を決めた …… 40

大転換する世界の行方

台湾海峡に出ている日本の巡視船の危うさ …… 46

ゼレンスキーと安倍晋三はどちらもネオナチ …… 49

AOCとアメリカ左翼勢力の限界 …… 54

国家分裂するアメリカとウクライナ …… 58

アメリカの戦費の半分は日本が拠出した …… 64

アメリカ支配から脱すると世界は安定する …… 68

自家撞着に陥るEUの危機 …… 72

日本は島国に立てこもって生き延びればいい …… 75

第2章 ウクライナ戦争の真実

なぜプーチンは嵌められたのか

「ブチャの虐殺」は捏造だった …… 82

NATOの東方拡大がすべての原因 …… 85

ひっくり返された従来の対ロシア戦略 …… 88

プーチンは米英の周到な罠に落ちた …… 90

仕掛けたのはヌーランド国務次官とネオコン …… 95

国際社会の変化とロシア軍の勝利 …… 99

プーチンは国際秩序に挑戦した …… 104

核戦争まで発展するのか …… 107

ネオナチとウクライナ戦争の特殊事情

ウクライナは特殊な国 …… 109

ナチズムはいかに生まれたのか …… 112

アメリカ・NATOの狙いは長期・泥沼化 …… 116

プーチンが抑えている核戦争の危機 …… 120

「プーチンよ、核を撃て」 …… 123

第3章 崩れた世界のパワーバランス

アメリカ一極支配の終焉

天然資源のロシアか、ドル体制のアメリカか …… 130

世界の歴史を変えたG20の衝撃 …… 134

崩れていくアメリカの一極支配 …… 138

アメリカがすべて正しいのか …… 142

国際秩序と世界政治の真相 …… 146

世界経済をリードする中国と新興大国

日中露のオンライン会談で分かったこと …… 149

購買力平価ベースで中国は世界一 …… 152

ドル覇権の終わりと世界の二分裂 …… 154

第4章 日米外交の正体

外務省と対米追随の戦後史

かつての外務省はアメリカ一辺倒ではなかった …… 158

独自外交だった奇跡の短期間 …… 160

外務省の組織と日米関係 …… 162

ニクソンショックとパナマ侵攻が与えた打撃 …… 166

軍事同盟になった日米関係 …… 169

半導体交渉と自動車交渉の攻防 …… 172

アメリカが仕掛けたノーパンしゃぶしゃぶ事件…… 174

最後の抵抗「樋口レポート」 …… 178

外務省の対米追随派と自主派の対立

尊敬すべき外務省の自主派官僚 …… 182

エズラ・ヴオーゲルの裏の顔 …… 185

谷内正太郎とジャパン・ハンドラーズたち …… 187

歴代の外務次官を評価する …… 191

第5章 スパイと日本外交のリアルな話

ロシアとスパイの過酷な世界

スパイの書いた本は国際情勢の把握に役に立つ …… 202

命を簡単に捨てるロシア人の不思議 …… 206

二重スパイにするのがスパイの仕事 …… 209

大使を狙うハニートラップの罠 …… 211

怪しいニューヨークのジェトロ事務所長 …… 213

日本外交のリアルと大使のお仕事

イギリス軍ロシア語学校の華麗な同級生たち …… 217

日本人は過去の日本を背負っている …… 220

世界水準の情報と侵攻事件 …… 222

日本外交の現実 …… 227

戦わない屈辱は一時期で終わる …… 230

ウズベキスタンの日本人墓地 …… 232

大使の仕事とは何なのか …… 234

重要なのはインテグリティと判断力 …… 237

第6章 戦争しない国日本の戦略

日本が戦争しないために出来ること

戦争しないことを最優先にする …… 240

日本は世界の嵐から身を守れ …… 244

中国の台湾侵攻と日本の有事 …… 246

アメリカ一辺倒から脱すること …… 250

世界で大きな地殻変動が起きている …… 254

社会のため、国のために立ち上がる …… 258

すべての紛争は外交で解決できる …… 261

おわりに── 孫崎享 265

歴代外務次官年表 …… 196

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おわりに

「武力行使反対」を唱えるだけでなく、和平の道を提示せよ

 私は今、日本は極めて危険な所に来ていると思う。もはや、「正当な民主主義国家」に位置しないのでないかとすら思う。

「正当な民主主義国家」であるためには、言論の自由が不可欠である。しかし、日本は言論の自由のある国ではなくなった。

「国境なき記者団」が毎年、世界の報道の自由度のランキングを発表している。2022年、日本は71位である。G7の国では、ドイツ(16位)、カナダ(19位)、イギリス(24位)、フランス(26位)、アメリカ(42位)、イタリア(58位)で、日本はG7の最劣等である。

 日本の周辺を見てみよう。エクアドル(68位)、ケニア(69位)、ハイチ(70位)、キルギスタン(72位)、セネガル(73位)、パナマ(74位)である。

 報道の自由度で同じような国で7カ国連合を作るのなら、日本はG7ではなくて、エクアドル、ケニア、ハイチ、キルギスタン、セネガル、パナマと作るのが妥当だ。

 なぜこんなことになっているのか。権力の圧力を、日本では、「忖度(そんたく)」という格好いい言葉で表現されているが、権力に対抗する発言を主要報道機関ができなくなっているという状況による。

 確かに日本では、言論人が殺されるという事態は少ない。しかし、彼らの発言が一般の人に届かぬように、次々と手段を打ってくる。

 いつから言論人の排斥が起こったのか。それは小泉政権(2001年4月26日―2006年9月)であろうが、2003年、安倍晋三氏が自民党幹事長になってからではないか。

 典型的な例は、マッド・アマノ氏が自民党のポスター「この国を想い、この国を創る」をパロディにして、「あの米国を想い、この属国を創る」とした時のこと。これに対して、安倍幹事長が「上記ホームページ上の本件改変図画を削除されるよう併せて厳重通告いたします」と言ったのが、外部に出た最初の事件ではなかったか。

 そうして、政府批判をする識者は次々と言論界から消えていった。

 2022年、11月29日、次のニュースが流れた。

「宮台真司(みやだいしんじ)さんは東京都立大学・人文社会学部教授で、現代社会や戦後思想など幅広い分野を論評する論客。警視庁によりますと、きょう午後4時半前、東京・八王子市の東京都立大の南大沢キャンパスで、都立大の中で男性が顔を切られた、と目撃者の男性から110番通報がありました」

 たぶん、この宮台氏襲撃事件の真相は明らかにならないだろう。だが、このような進展は当然予想された。

 政府・自民党は、反対の見解を持つ者を自らが排斥しただけではなく、世論工作でこうした人々への憎悪を掻()き立てる支援をした。その氷山の一角が次の報道に表れている。

「一般市民を装って野党やメディアを誹謗(ひぼう)中傷するツイッターの匿名アカウント〝Dappi(だっぴ)〟発信元企業が、自民党東京都支部連合会(自民党都連)から昨年も業務を受けていたことが、17日、東京都選挙管理委員会が公表した2022年分の政治資金収支報告書でわかりました」

〝Dappi〟のようなサイトで憎悪を掻()き立てられた者が、最後には殺人まで犯すのは十分予測されたことである。

 こうして言論人が次々姿を消す中、政府を厳しく非難する副島隆彦氏が生き残っているのは凄(すご)いことだ。それは確固とした副島ファンを確立したことにある。その力量には、自らの力不足を痛感するにつれ敬服するばかりである。

 そうした中、せっかくの場所の提供をいただいたので、私が今、発言したいことを次に記す。

 日本は今、国会では9条を主体に、憲法改正に賛成する勢力が3分の2を占めている。防衛費の増大を当然のことのように議論している。

 他方において、公的年金の実質的目減りを当然のようにしている。安保三文書、「国家安全保障戦略(NSS)」「防衛計画の大綱(大綱、「国家防衛戦略」と名称変更)」「中期防衛力整備計画(中期防、「防衛力整備計画」と名称変更)」が成立しようとしている。明らかに戦争をする国に向かって動いている。

 なぜこうなったのか。

 申し訳ないが、私はリベラル勢力、護憲グループの怠慢によると思う。

 平和的姿勢を貫くには、① 武力行使に反対と、対立があれば「平和的」手段を貫くという政策の両輪が必要である。平和的な帰結が行われるためには、常に当事者双方の妥協が必要である。

 妥協が成立するためには、過去の経緯、双方の主張、妥協点の模()(さく)をなさねばならない。前者だけで後者がないとすると、どうなるか。

 ウクライナ問題を見てみよう。

 2022年2月28日、英国ガーディアン紙は「多くがNATO拡大は戦争になると警告した。それが無視された」という標題で、「ロシアのウクライナ攻撃は侵略行為であり、最近の展開でプーチンは主たる責任を負う。だがNATOのロシアに対する傲慢(ごうまん)で聞く耳持たぬとの対ロシア政策は同等の責任を負う」と述べた。

 この間、日本では溢(あふ)れるばかりのウクライナに関する報道があったが、こういう報道を知っていますか。

 日本等はロシアに対する経済制裁を主張した。しかし、これは有効に働かない(西側はロシア原油の購入を止める動きをしたが、中国、インドが輸入し、他方原油価格の高騰でロシアの石油収入は逆に増大した)。「糾弾」と「制裁」の主張は、結果として武力行使、武装の強化にいく。

 日本が平和国家なら、当然、和平をまず考えるべきである。日本のどの政党が、どの政治家が和平案を提示したか。

 世界を見れば、トルコ、イスラエル、インド、インドネシア、中国は和平を、ロシア、ウクライナの両国に呼び掛けた。米国統合参謀本部議長ですら、「和平で解決する時になっている」と主張している。なぜ日本は、それができないのか。

 かつて夏目漱石は日露戦争について、短編『趣味の遺伝』(1906年)の中で、「陽気のせいで神も気違(きちがい)になる。『人を屠(ほふ)りて餓えたる犬を救え』と雲の裡(うち)より叫ぶ声が、逆(さか)しまに日本海を撼(うご)かして満洲の果まで響き渡った時、日人と露人ははっと応(こた)えて百里に余る一大屠場(とじょう)を朔北(さくほく)の野()に開いた」と書いた。「神も気違(きちがい)になる」と表現した。

 同じくトルストイは「知識人が先頭に立って人々を誘導している。知識人は戦争の危険を冒(おか)さずに他人を煽動(せんどう)することのみに努めている」と書いた。

 繰り返すが、今日の政治混乱の一端は、日本のリベラル勢力、護憲勢力の怠慢による。

「武力行使反対」を唱えるだけでなく、和平の道を提示しなければならないのだ。

2023年1月

孫崎 享 

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は、最近読んで勉強になった本2冊を皆様にご紹介いたします。3月も中旬を過ぎ、暖かい日が続くようになりました。行楽にお出かけになる方も多いと思いますが、数時間でも本をお読みになる時間があり、「それじゃ何を読もうかな」と思う時に、是非読んでいただきたい本たちです。

 

 現在は多くの方々が通販で本を購入されると思います。大田が書店でも閉店を余儀なくされるところも出てきております。お目当ての本を探しに行くついでに、1冊でも2冊でも心惹かれる本に出会う場所である書店にもぜひ足を運んでいただきたいと思います。私もこの2冊を買いに書店に行きまして、見つけることが出来ましたが(自分の本は「在庫なし」であったのは悲しいですが)、他にも何冊か本に出会うことが出来ました。この2冊を買っても1800円もしません。映画を見るようなつもりで是非お買い求めください(宣伝を頼まれたわけではありませんよ、私は自腹で買いました。某映画監督じゃないですが、「こちとら自腹じゃ」です)。

 

①副島隆彦著『余剰の時代』(ベスト新書、2015年)

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 帯には「人類最大の解けない問題―それは余剰(サープラス)。最後に余ったのは“人間”。つまりあなたのことだ!」とあります。これがこの本を貫く主張です。それでも最後には、「生き延びる思想10カ条」(202―203ページ)があります。「余った人間である私」を自覚し、それでも「生きにくい現実」を生きていく、それだけで実はたいしたことなんだろうと思います。

 

 最近、ソーシャル・ネットワーク・サーヴィス(SNS)であるツイッターやフェイスブックが盛んです。そこには、「幸せそうな家族の肖像」「自分の豊かな生活のさりげない自慢」「友人たちとの“絆”を再確認するためのイベント」の写真が溢れかえり、惨めな我が身を振り返り、暗澹たる気持ちになります。「自分はどうしてこの人たちのように幸せではないんだろう」「生まれ変わったらこんなことにならないようにしよう(来世で本気を出そう)」という「後ろ向きな」「ネガティヴ」な感情、更にねたみそねみのような「劣情」を抱いてしまいます。

 

 しかし、私はこの『余剰の時代』を読んで、程度の差はあれ、生きにくに現実を誰もが引き受けて生きているということが隠されているのだ、それが「楽観主義(optimism)」なのだと分かりました。「あるべき姿(最適解、optimal)こそが幸せ」という「幻想」に私たちは縛られて生きています。だから「あるべき姿」との距離で「自分の幸せ」を計測し、絶望してしまうのです。

 

 このオプティミズムを生み出したのが西洋近代の啓蒙主義であり、それは危険だと言ったのがヴォルテールであり、ニーチェであることがよく分かりました。

 ヴォルテールの著作『キャンディード』は英語のcandidにつながる言葉だそうです。candidはありのままのとか率直なという意味になります。私の尊敬する作家・小林信彦氏の著作に、「日本のテレビ局が作る番組ドッキリカメラは、元々アメリカのテレビ局がやっていたcandid cameraから来ている」と会ったように記憶しています。日本の「予定調和的な」ドッキリではなく、アメリカのものは人間の本性を暴くことに主眼が置かれています。日本ではキャンディッドであることはとても難しいし、前近代的な日本人には困難なことだと思います。すぐにただの中傷や罵倒に堕してしまうからです。 

 

 こういう読み方が正しいのか分かりませんが、「現実を引き受けて、少し背をかがめて生きていく、そして死が迎えに来たら、まぁ仕方無いんじゃい、生きるって死ぬまでの暇つぶしだしなと思って、出来るだけ痛くないようにしてもらって目を閉じる」のが人生じゃないか、それで良いじゃないか、それ以上は「余禄」なんだと思えるようになりました。

 

 

②孫崎享著『カナダの教訓 超大国に屈しない外交』(PHP文庫、2013年)


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 この本はベストセラー『戦後史の正体』を書いた元外交官(外務省国際情報局長)である孫崎享氏の著作です。1992年に出された『カナダの教訓――「日米関係」を考える視点』(ダイヤモンド社)を一部改題、加筆訂正などして文庫化した本です。この本で述べられているのは、「アメリカと喧嘩をしないようにしながら、毅然とした態度を保ちつつ、両国の利益を追求する外交の仕方をカナダから学ぶ」ということです。

 

 カナダについては、「アメリカの隣にあって、正直言えばアメリカの一部みたいな国なんじゃないの」というのがこれまで私が持っていた意識です。しかし、元々が北米植民地の王党派がアメリカを嫌ってできた国であり、19世紀にはアメリカが「解放」のために戦争を仕掛けてくるなど、生々しい歴史を持っている国なのだそうです。

 

 アメリカに対して、時に高圧的な外交姿勢を取って失敗してみたり、アメリカ国内の勢力争いに巻き込まれてしまったりしながら、カナダは自国の国益を実現するために、「アメリカに影響を与える方法」を体得していきます。「無駄に対決姿勢を鮮明にしたり、すぐに諦めてしまったりする子供みたいなことをしない」で、「アメリカという大きな子供をうまく導く」という方法を採っているようです。こう書いては何ですが、アメリカと対処するには、不合理な子供に対処するような気持ちでいることが肝心なのかもしれません。

 

 今月初め、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がアメリカ連邦下院のジョン・ベイナー下院議長(オハイオ州選出、共和党)の招きで、連邦議会の上下両院合同の場で演説を行いました。これに対して50名以上の民主党所属の連邦議員たちが欠席し、バラク・オバマ大統領、ジョー・バイデン副大統領、ジョン・ケリー国務長官もネタニヤフ首相と会談を行いませんでした。ネタニヤフ首相は、オバマ大統領が進めているイランとの核開発を巡る交渉を批判しました。

 

 この本で勉強になったのは、このようなことが昔もあったということです。ヴェトナム戦争中、アメリカは北ヴェトナムに対する本格的な爆撃(北爆)を行いました。これに対して、レスター・ボールズ・ピアソン・カナダ首相がアメリカのフィラデルフィアにあるテンプル大学で講演を行い、その中で北爆に対する反対を表明しました。これに対して、リンドン・ジョンソン大統領は激怒し、ピアソンをキャンプ・デイヴィッドに「呼び出し」、1時間以上にわたって、詰問しました(私はどうも「手も出てしまった」んじゃないのかと思います)。

 

 この演説は、実はアメリカ国内の分裂を反映したものでした。ジョンソン大統領に対しては、暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領の実弟ロバート・ケネディが「兄が始めたヴェトナム戦争でアメリカが勝利を得るまでやり抜け」と激しく圧力をかけていました。一方、ハト派もいて、それがハンフリー副大統領やフルブライト連邦上院外交委員長、マンスフィールド連邦上院民主党院内総務でした。彼らは巻き返しのために、「外国の首脳に北爆反対の演説をアメリカ国内でしてもらって、アメリカ国民の世論に影響を与え」ようとしたのでした。ピアソンにしてみればそれで屈辱的な目に遭ってしまったのですが、このような、「外国を利用する」ということが昔からアメリカで行われていたのは興味深いものです。

 

 これ以外にも面白いエピソードが書かれていますが、それは読んでのお楽しみ、です。

 

 以上、2冊の本をご紹介いたします。

 

(終わり)














 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23



 

 古村治彦です。

 

 今回は、明日2015年2月18日に発売となります(都内一部書店で先行販売)、『崖っぷち国家日本の決断 安倍政権の暴走と自主独立への提言』をご紹介いたします。私も編集協力と言う形で少しだけお手伝いしました。

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 本書はベストセラー『戦後史の正体』の著者で外務省国際情報局長を務めた元外交官の孫崎享氏とニューヨーク・タイムズ紙東京支局長マーティン・ファクラーの対談です。少し裏の話をしますと、本書の出版元である日本文芸社は対談ものが得意な出版社であり、私の師である副島隆彦先生も元外交官でベストセラー作家の佐藤優氏と対談本を出しています。

 

 対談本の良いところは、文章が会話形式で分かりやすいところです。今回の本も二人の専門家が日本政治、外交、経済、メディアについて縦横無尽に語り合っています。副島先生や私たち弟子のブログや文章を読んでおられる皆様にしてみれば、話されている内容にそこまでの目新しさはないと思われますが、世界基準(ワールド・ヴァリューズ World Values)ではそのように考えるのか、と言うことを知る上では絶好の本だと思います。

 

 日本のリベラル(と穏健な保守勢力)が日本の政治世界から(民主党が政権与党時代にすでに準備され)排除され、安倍政権が誕生しました。メディアもだんだんリベラル派が呼吸できる空間が少なくなってきました。お二人のお話は一昔前であれば、穏健な保守勢力にとっては当たり前のことが多く、「やや激しいかな」程度であったと思いますが、今の日本の状況であれば、「過激だ、左翼的だ」ということになると思います。

 

 それだけ日本自体が変化してきたということもあるでしょうし、心ある人たちは日本の行く末に大きな懸念を持っているのだと思います。

 

 多くの皆様に、「外側から日本を見る目」を提供してくれる本書をお読みただけますようにご紹介申し上げます。
 

 

(終わり)









 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。


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 今回は、孫崎享・マーティン・ファクラー著『崖っぷち国家 日本の決断』(定価1620円、日本文芸社刊)を皆様にご紹介いたします。本書は元外交官でベストセラー『戦後史の正体』の著者孫崎享氏とニューヨーク・タイムズ紙東京支局長マーティン・ファクラー氏の対談本です。私もほんの少しですが、編集のお手伝いをしました。

 


 本書の発売は2015年2月18日ですが、2015年2月10日から、都内大型4書店、三省堂神保町本店、三省堂有楽町店、丸善丸の内本店、紀伊國屋書店新宿本店で先行発売されます。早くお読みになりたい方は是非お出かけください。

 

 宜しくお願い申し上げます。

 

(貼り付けはじめ)

 

はじめに―日本は今、まさしく「崖っぷち」に立っている  

 

大手マスコミは「真実を伝える」という責任を果たしていない  

 

私は、日本は今、戦後最大の危機にあると思います。  

 

原発は再稼働する。消費税を引き上げて法人税の切り下げを模索する。集団的自衛権の行使で自衛隊を海外に派遣し、結果として日本にテロを呼び込む危険性を高める。格差社会を推進する。「特定秘密保護法」の施行で情報を国民から隠し、民主主義国家から離れていく。  それは、今日の日本の政治をどうこうするという問題にとどまりません。明確に未来の世代に負の遺産を残します。  

 

原発再稼働で事故が起これば、その地域に人が住めなくなります。福島第一原発事故では、アメリカの関係者は東京で人が住めなくなる事態すら想定していました。  

 

TPP(環太平洋経済連携協定)にはISD条項(国家と投資家の間の紛争解決制度)があります。外国の企業が日本に投資し、あるいは取引を行ないますが、その際、日本政府や裁判所が、「生命や健康に不安を与える」、「労働者にマイナスを与える」、「地域振興にマイナスである」などの理由で、外国企業の活動を制限すれば、巨額の賠償金を求められます。  

ISD条項での仲裁裁判の決定は、国会の決議や日本の最高裁の判決を上まわる形でくだされます。ですから、TPPは冗談ではなく、国家主権を著しく損なう協定なのです。  集団的自衛権の行使で自衛隊が米軍と一緒に海外で戦えば、イスラム教の原理主義者などからの報復が当然、想定されます。  スペインは2003年3月からのイラク戦争に参加しました。これに反対するテロ活動がスペイン国内に起こり、2004年3月、スペイン列車爆破事件が首都マドリードで起こりました。191人が死亡し、2000人以上が負傷しました。こういう事態が日本でも予測されます。まさしく日本は今、本当に「崖っぷち」に立っているのです。 「崖っぷち」を前にして、われわれは本質をしっかり議論し、それでも原発を再稼働するか、集団的自衛権を行使するか、否か、いずれかの道を選ばなければならないのです。  

 

では、安倍晋三政権は、これらの危険な政策について、しっかり説明したでしょうか。大手マスコミは、しっかり解説したでしょうか。していません。それだけではなく、安倍政権はこれらの政策をと詭弁で推進しようとしています。  

 

大手メディアは、安倍首相の広報機関と化し、進軍ラッパを吹いています。今日の大手マスコミは「真実を伝える」という責任を果たしていません。日本の大手メディアの姿は国際的に見ると、民主主義国家の報道のありようをまったく機能させていません。  

 

このような中で、今回、「ニューヨーク・タイムズ」東京支局長のマーティン・ファクラーさんと対談しました。  

 

この対談は、私には「知的フェンシング」のようなものでした。日本の報道機関がほとんど真実を伝えない中で、私はファクラーさんから本音を引き出し、これを日本国民に知らせたいと思いました。実はファクラーさんとの出会いはこれが初めてではないのです。1回目は『週刊朝日』の対談(2013年5月31日号)でした。  

 

このとき、ファクラーさんが「日本はもっと自主外交をしたらよい」と述べたので、私は、「では具体的に言って欲しい。日本が自主外交をしようとすると、アメリカは必ず潰してきた。今日、アメリカが潰さない自主外交の分野があるなら示してご覧なさい」と言って、正面からぶつかりました。  

 

今回の対談では両名とも常に笑顔を絶やさず、にこやかに話し合いました。しかし、私はファクラーさんが真実を述べる手を緩めるなら、いつでも飛びかかる用意はしていたし、ファクラーさんもそれを十分に承知だったと思います。  

 

今日、世界でもっとも評価されている新聞の一つが「ニューヨーク・タイムズ」紙です。  なんだかんだと言っても、日本は世界第3位の経済大国です。「ニューヨーク・タイムズ」紙が日本の東京支局長にいい加減な人物を派遣することはあり得ません。その人の本音を長時間にわたる対談で知ることができるのは、実にラッキーな機会だと思いました。  

 

この対談を通じて、私に強く残ったファクラーさんの言葉があります。 「私は『ニューヨーク・タイムズ』紙の社員ではない。私は記者である」。「医者や弁護士は社員として働いているのではない。同様に、特殊技術を持つ専門家として記者がいる」。実に、記者としての自負心が垣間見えます。記者には「真実を見極める、真実を国民に伝える」という自負心があるのです。  

 

私の立場は鮮明です。「あなたが真実を見極めることを自分の天命とすると言うのなら、そして、自分は世界でもっとも権威ある新聞の東京支局長であると言うのなら、その真実とやらをここで述べてもらおうじゃないか」ということでした。  

 

ファクラーさんは、イリノイ大学でジャーナリズム修士号を取得、カリフォルニア大学バークレー校でも「東洋史研究」により修士号を取得しています。1996年から「ブルームバーグ」の東京支局記者、1年半後にAP通信社、2003年から「ウォールストリート・ジャーナル」東京支局記者、2005年に「ニューヨーク・タイムズ」社に移籍し、2009年2月から東京支局長の任にあたっています。  

 

この経歴を見ていただければ、「私は『ニューヨーク・タイムズ』紙の社員ではない。私は記者である」という自負心の源がわかると思います。  

 

この対談本を通して、日本の多くの方が「日本は今・崖っぷち・にある」ということを認識し、国民一人一人が、安倍首相に盲従するのではなく、「では何をすべきか」を考える契機になってくれれば幸いです。   

 

2015年1月 孫崎 享 

 

 (今、この「はじめに」を書き終わり、出版を待つ間に、イスラム国による日本人2名の人質拘束と殺害事件が起こりました。この事件の背後には言うまでもなく、安倍首相の失策があります。安倍首相は2015年1月1621日の日程で、エジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナなど中東4カ国を訪問しました。  

その際、エジプトのカイロで安倍首相は「ISIL(イスラム国)と戦う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をする」という約束をしてしまいました。この発言にイスラム国が直ちにテロ活動という形で反応したのです。これから先、日本が集団的自衛権の行使で、自衛隊を海外での戦闘に派遣すれば、必ずそれに対する報復が起こるでしょう)

 

(貼り付け終わり)

(終わり)








 
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