古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:安倍晋三

 古村治彦です。

 菅義偉総理大臣が誕生した。安倍政権からの継続を旗印に、自民党役員や主要閣僚に大きな変更はない。大臣の横滑りや再登板も多く、目下の急務である新型コロナウイルス感染拡大と経済対策の両輪を回す政策を実行していくことになるだろう。新内閣の目玉は行政改革で、河野太郎前防衛大臣が行政改革担当大臣に横滑りとなった。河野大臣は若手の時は「ごまめの歯ぎしり」などと言っていたが、今やすっかりポスト菅、光景総理総裁の有力候補である。祖父河野一郎、父河野洋平が果たせなかった総理総裁(父洋平は自民党総裁までは達成した)に手が届く位置まで来た。

 下に掲載する記事は、アメリカが新型コロナウイルス感染拡大に対応するために、大規模な財政出動を行い、財政赤字を更に積み上げる、そうなると、ドルの価値が下落する、そして、相対的に円の価値が上がる(円高になる)、その結果として日本の輸出に影響が出る、という内容だ。アベノミクスで円安基調になって輸出が堅調であったものがそうではなくなると、菅新総理大臣は厳しい状況に直面することになる、ということだ。

 子の論稿から考えると、安倍晋三前首相は経済の難しいかじ取りをする前に政権を投げ出したのではないか。菅氏は行政改革やデジタル化という2000年からの20年でいまだに達成されない、お題目を唱えているだけだ。菅内閣の特徴は停滞と惰性となるだろう。安倍首相が再登板する際には、経済と外交が目玉だった。安倍内閣の功罪について分析も反省もないまま、とりあえず「継承」という言葉で糊塗しているが、実際は惰性と停滞だ。菅氏は警鐘を唱えている以上、アベノミクス、安倍政権下の財政政策と金融政策は堅持されることになる。麻生太郎副総理兼財務大臣(デフレ脱却担当とはお笑い草だ)が留任ということで、菅氏は麻生氏に経済のことは任せることになる。そうなれば今のまま何も変わらない。

 安倍晋三前首相は良い時に辞めたということになる。これから経済の悪化がどんどん明らかにされていくが、それに対応するのは菅新政権だ。安倍晋三氏は大きな傷を負わずに、政権から退くことができて政治的な力を温存し、細田氏から派閥の領袖の地位を引き継いで、これから自民党内政治に大きな影響力を持っていく。キングメイカーとしてはもちろんだが、自分が再びキングとして登場するということも視野に入れているだろう。

 アメリカでもそうだが、日本でも新型コロナウイルス感染拡大対策と景気対策は車の両輪で、どちらもバランスよく行うべきだということになる。アメリカでじゃぶじゃぶとマネーが供給され続けるようになれば、ドル安ということになり、日本は円高となる。輸出業にとっては新型コロナウイルス感染拡大によって世界各国で内需が冷え込んでいるということも相まって厳しい状況となる。円高になれば輸入品の値段は下がる。それによって内需が拡大すればよいが、物価は上がりづらい。そうなれば政府と日銀のインフレ2%目標の達成は難しくなる。今年いっぱいは厳しい状況は続くし、来年はさすがに今年のようなことはないだろうが、回復は難しいだろう。

(貼り付けはじめ)

菅氏は継続性を約しているが、それを実現することはかなり難しい(Suga Promises Continuity. But on Economics, He Can’t Possibly Deliver.

-円の価値が上がると、日本の新首相は輸出を守るために何か新しいことをしなければならなくなるだろう

クリス・ミラー

2020年9月15日

『フォリーン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/09/15/suga-abenomics-yen-weak-exports-strong-quantitative-easing/

日本憲政史上最長の在任期間となった安倍晋三首相が辞任を発表した時、それは一つの時代の終わりのようであった。安倍首相は日本政治をほぼ10年近く支配した。与党自民党内の様々な派閥を巧妙に動かし、野党からのプレッシャーをかわした。様々な汚職事件と影響力を行使したスキャンダルをほぼ無傷で乗り切った。最も印象的だったことは、アメリカのドナルド・トランプ大統領との関係をうまく維持した。トランプ大統領は大統領就任後しばらくの間アメリカ側が主導権を握るために日本を攻撃してばかりだったことを考えると、安倍首相の仕事は簡単なものではなかった。

安倍首相の後継首相である菅義偉は言ってみれば、大きな靴に自分の足を合わせねばならないことになった。安倍首相と同じく、菅氏も自身のキャリアのほぼ全てを政治の世界で過ごしてきた。これまでの8年間は安倍内閣の官房長官を務めた。しかし、安倍首相とは違い、菅氏は政治界一族の出身ではない(安倍首相の父は外務大臣を務めた)。菅氏は地味な農家の出身である。

安倍首相と菅氏が長年にわたり一緒に仕事をして来たという事実から考えると、これが2人の指導者の間で政策が継続されるという予測が立つ理由となる。菅氏は安倍政権の政策を立案するにあたり一定の役割を果たしたのだ。日本のメディアは、財務大臣と外務大臣を含む主要閣僚の多くは、菅氏が首相になっても留任すると報じている。

菅氏に対する最大の疑問は日本経済についてである。それは、新型コロナウイルス感染拡大によって深刻な景気後退に直面するであろう世界各国と同じである。日本は高い幹線レヴェルからは脱しているが、経済は深刻な打撃を受けている。菅氏にできることは何か?

安倍首相は「アベノミクス」と名付けた経済プログラムで人気を確立した。アベノミクスには3本の矢があった。それらは、金融緩和、財政出動の拡大、市場開放のための構造改革であった。実際には、安倍首相は彼自身が約束したほどには財政出動を行わず、その代わりに均衡予算を追求した。財政赤字は減少し(今年になるまで)、税金は上がった。しかし、もし他の人々が首相であったら、税金をもっと早く上げていただろう。構造改革に関して言えば、安倍首相は貿易のために更に日本を開くためにいくつかの方策を行った。しかし、安倍首相は勇ましい言辞ほどには革命的ではなかった。安倍首相は日本の中央銀行である日本銀行に圧力をかけて、新たな更なる金融緩和政策を実験的に実施させた。しかし、ここ数年、更なる急進的な方法は実行されていない。

菅氏は自身も立案に関与したアベノミクスの遺産に対しての意義を唱える様子は見せていない。しかし、アベノミクスは正反対の政策が同居する矛盾したセットになっている。菅氏が継続性を公約しても、アベノミクスは政策の方向性を示すものではない。コロナウイルス感染拡大に関連する景気後退に苦しむ企業や個人を支援するために日本政府がこれからも資金を投入するということについてはほぼ疑いようがない。菅氏は構造改革についても発言している。しかし、政治家にとって改革を約束することはたやすいが、それを実現することは困難である。

菅氏は金融政策において厳しい選択に迫られることになるだろう。日本は超金融緩和政策の多くを始めたが、これらは今や世界規模で実施されるようになっている。例えば、中央銀行による金融財産の大規模購入である量的緩和は2001年に日銀が始めた。アメリカ政府が2007年から2008年にかけての金融危機に対応するために子の量的緩和を試したのはそれから約10年後のことだった。日本銀行はマイナス金利、政府の借り入れコストのコントロールという実験を続けた。これらは長期的な超低金利を保証するものである。

金融緩和政策を採用し続けて20年が過ぎた。日本銀行は更なる資金投入は不可能だと確信している。しかし、アメリカ連邦準備制度は金融緩和を始めたばかりで、コロナウイルス感染拡大による景気後退を戦うための金融における道具立てを劇的に拡大するものである。アメリカの赤字は戦争をしていない時代としては前代未聞のレヴェルにまで達しつつある。この結果としてドルの価値が下がることが予想される。そして相対的に円の価値が上がる。通貨価値が上がることは日本にとっては良いことのように思われるが、菅氏に対しては大きな挑戦となる。通貨政策は日本においてこれまで議論が沸騰する問題であり続けた。日本では輸出大企業をはじめとする輸出業者が政治的な影響力を及ぼしてきた。アベノミクスの財政政策と金融政策は円の価値を下げた。それによって日本の輸出業者は利益を得た。ドルの価値が下がり続け、円の価値が上がり続け、日本の輸出業者の競争力が落ちる場合、菅氏は難しい選択を迫られることになるだろう。菅氏は安倍首相の政策の継続を約することはできる。しかし、菅氏がそのような約束をしたからといって、安倍首相と同じ結果をもたらすことができるという保証はない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 2020年8月28日、安倍晋三内閣総理大臣が辞任の意思を表明した。午後2時過ぎにマスコミ各社がほぼ一斉に「安倍首相辞任へ」「体調の悪化のために国政に迷惑をかけられない」という速報を出した。昨日は元々午後5時に安倍首相による久しぶりの記者会見が予定されていた。この記者会見をめぐっては、体調悪化のことを説明しつつ、新型コロナウイルス感染拡大と経済対策について発言がある、という憶測や、いや首相辞任の発表だという憶測が飛び交っていた。結局、昨日の記者会見は新型コロナウイルス感染拡大対策のパッケージの概要の説明が冒頭にあり、その後、首相辞任の意思表明が行われた。

 安倍首相は17歳の頃に、潰瘍性大腸炎を発症したということだ。現在65歳であるので、約50年間にわたり、この病気と向き合い、対処してきたということになる。その間にはアメリカ留学、神戸製鋼への就職、父安倍晋太郎議員の秘書への転進、父の地盤を受け継いでの国会議員、小泉純一郎内閣での官房長官、首相を二度務めるという経歴だ。この50年の間には大腸の全摘出も検討されたこともあったそうだが、薬剤の劇的な進歩もあり、コントロールをしながら、仕事や社会生活を営むことができたようだ。この点は、レガシーとして日本社会に定着して欲しい。持病がある人でも、通院しながら、仕事や社会生活を積極的に行える社会になって欲しい。これは甘すぎる考えかもしれないが、病気の治療や検査のために、時に休みを取る、もしくは通院のために1週間のうちに半日でも休みが取れる、それが当然のようになって欲しい。

 安倍首相、安倍政権に関して、私は全く支持してこなかった。選挙のたびに安倍首相が退陣するような結果になることを期待したが、結局国政選挙は6連勝という形で終わった。安倍首相を選挙の結果によって退陣に追い込めなかったのは、安倍首相を支持しない人々や野党にとっては敗北である。今回の辞任表明を私は素直に喜ぶことができない。

 安倍首相は昨日の会見で「政治は結果だ」と述べた。その結果であるが、惨憺たるものだ。一言で言えば、アメリカによる属国化がますます深まり、東アジアの平穏を乱す要因が日本ということになり、北方領土が返還される見込みはほぼなくなり、経済を見ると、実質賃金は上がらず、GDPは拡大せず、中国にはますます置いていかれ、ドイツには迫られる、格差は拡大し、少子高齢化に歯止めがかけられなかったということになる。安倍首相は在任中に雇用を生み出したとは述べたが、デフレ脱却には至らなかったと反省の弁を述べた。8年間でできることは限られていると言えばそれまでだが、好転する兆しすら見えなかった。安倍首相は自著のタイトルにした「うつくしい国」を実現したとは思えない。

 安倍首相の長期政権についてはこれから様々な分析がなされるはずだ。功罪様々なことが言われるだろう。私が思う安倍長期政権のレガシーは「忖度」と「私物化」であり、安倍政権が長期にわたって続いたのは、「惰性」であったと思う。「忖度」と「私物化」はセットである。森友学園問題(安倍晋三記念小学校開学問題)、加計学園岡山理科大学獣医学部開設に絡む問題、公文書保存に関する問題、など、権力の私物化とその後始末のために官僚たちに無駄に労力と気遣いを使わせた形になった。なぜそこまでして安倍政権を守らねばならなかったのか、守られることになったのか、政治史を少しでもかじった人なら不思議であっただろう。全く有能ではなく、成果も挙げていない、そんな人物が何度もスキャンダルや危機をうやむやな形ではあったがやり過ごしてきた。自民党内から反対の動きも出ることなく、国民も無関心という状況が続いたこれまでの8年間だった。

 それはやはり、「現状のままで良いや」「安倍首相以外には考えられない」という「惰性」が続いた結果である。そのために、安倍首相も辞め時を逸したという感さえある。安倍政権下では、成果よりも「道半ば」「うまくいっているがまだ全体に行きわたっていない」という言葉が強調され続けた。「やっていてある程度の成果は出ているが、目指している結果には達していない」ということを言い続けた。それならば、安倍政権が続いていくしかない。しかし、安倍政権が続いても、それらの結果を得ることは不可能である。そのために「道半ば」「いまだ遠し」ということになって、だらだらと政権が続いていくことになった。何かしらの成果が出れば、その時点で辞めるというのは日本のこれまでの首相の身の引き方の一つのモデルである。「一内閣で一つの課題」解決ということだ。しかし、安倍首相は、何事もなさなかったが故に、身を引く機会もなかったということになる。

 また、安倍首相を支える人々はそれぞれ65歳の安倍首相よりも年上、70代後半の麻生太郎財務大臣兼副首相であり、二階俊博自民党幹事長、70代前半の菅義偉官房長官である。以前であれば、それぞれの派閥内部で内部闘争が起き、跡目相続や現在の領袖の追い落としがあった。しかし、長期政権を支える、惰性を言い換えた「安定」のために、これらの人々は世代交代の恐れを抱くことなく、権力をふるうことができた。そして、自分たちの派閥を大きくすることに成功した。しかし、結果として、自民党内部にはニューリーダーは育たず、世代交代もうまくいっていない。また、急激に議員数が増えたために、いわゆる入閣適齢期と言われる議員たちが60名もいる状態で、沈滞ムードである。自民党も日本も惰性の中で、ある種の安眠を貪り続け、活気と成長力を失った。

 安倍首相は総理の座からは退くが、国会議員は続けるという意向を示した。キングメイカーとして影響力を残すということが一般的に考えられるが、まだ65歳ということを考えると、再登板ということも視野に入れているのではないかと思う。今回は「政権投げ出し」という批判が起きないように、きちんと病気について説明した。病気が絡むと批判がしにくくなることも狙ってのことだろう。心身ともにボロボロになってどうしようもなくなっての退陣という感じは昨日の会見からは受け取れなかった。余力を持って辞めることで、キングメイカー、上皇として院政を敷く、また、再登板も狙うということもある。自民党内部の世代交代が成功しておらず、人材も育っていない現状もある。

 次期自民党総裁、首相選びについては、党員票の比率が高い総裁選挙方式なのか、議員票の比率が高い両院議員総会方式なのか、で割れている。下の記事にあるように、二階幹事長は両院議員総会方式を考慮している

(貼り付けはじめ)

●「自民、後継首相を15日にも選出へ 両院議員総会の方向 石破氏は31日に出馬表明へ」

8/28() 19:58配信 産経新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/8c178f5e2968c38ad65ecba56e4ffc9e201f5367

 自民党は安倍晋三首相(党総裁)の後継を選ぶ総裁選について、手間のかかる党員・党友らの直接投票は行わず、国会議員らの投票で決める両院議員総会で選ぶ方向だ。党幹部は、15日の投開票を軸に調整していることを明らかにした。党内では、首相を一貫して支えてきた菅義偉官房長官の登用を求める声があるほか、知名度の高い石破茂元幹事長は31日に出馬表明する方向だ。首相が本命視してきた岸田文雄政調会長も出馬準備を進めている。

 総裁選の方法は、9月1日の総務会で正式決定する見通しだ。二階俊博幹事長は、今月28日のTBSの番組収録で、「そのときの状況によって緊急の手段を講じていく」と述べ、両院議員総会での選出もあり得るとの見方を示した。

 党則では、総裁が任期中に辞任した場合は、両院議員総会での選出が認められ、選挙人は国会議員と都道府県連の代表3人とされている。任期は前任の期間を引き継ぐ。今回のケースは来年9月までとなる。

 党員投票まで含めた総裁選は、候補者による大規模な全国遊説を行うことが通例で、準備にも一定の時間を要する。逆に、両院議員総会で選ぶ場合は簡素化が可能で、平成20年の総裁選では、福田康夫首相(当時)の辞任表明から麻生太郎新総裁(同)の選出までを約3週間で済ませた。

 ある党幹部は新型コロナウイルス対策も念頭に「党員投票まで含めた総裁選をする余裕はない」と語る。

 後任は、新型コロナ対策に継続性を持たせるため「菅氏をワンポイントリリーフとして登板させればいい」(閣僚経験者)との声がある。岸田氏も、前回の30年総裁選で出馬を見送っただけに、今回は不退転の決意で手を挙げる考えだ。

 ただ、石破派(水月会)幹部は、石破氏が世論調査で高い支持を得ていることから「党員投票も含めた総裁選を行い、堂々と勝った人が首相をやるしかない」と両院議員総会での選出に異論を唱えた。

(貼り付け終わり)

 現在のところ、次期総理総裁の候補者としては、岸田文雄自民党政調会長、石破茂元自民党幹事長、河野太郎防衛大臣の名前が挙がっている。二階氏が主導して両院議員総会方式でということになれば、派閥の意向が大きく影響することになる。現在、自民党の最大派閥は、細田派(実質安倍派)、麻生派、竹下派、二階派、岸田派、石破派、石原派という順番になっている。細田派、麻生派、二階派で岸田氏を擁立して両院議員総会で決めるということが考えられる。石破氏は国民的人気の高さから党員票の割合が高い総裁選挙方式を主張している。麻生氏と二階氏が話しをつけて、両院議員総会で岸田氏選出という形が今のところ考えられる。岸田氏は人と喧嘩をするタイプではなく、派閥の岸田派、宏池会も伝統的に「お公家様集団」と呼ばれるように武闘派は少ない。そうなれば、麻生氏と二階氏の院政ということになる。そうなれば国民的な支持を得られないということになる。そのような古臭い決め方では国民が納得しないだろう。

 安倍首相は記者会見の中で、次の方が決まるまではしっかりとやれるということを述べていた。臨時代行(麻生副総理)を置くことなく、最後までやると明言した(この点から私は安倍首相が余力を持って辞めるという印象を受けた)。また、次期総裁選びについても、時間をかけて制作孫朗をしても大丈夫、その間は私がきちんとやれるという発言もあった。私はこの発言から、安倍首相は麻生氏と二階氏をけん制していると感じた。ポスト安倍の動きにおいて、安倍首相自身が影響力を保持しようとしているとも感じた。

 長期政権となった安倍政権と安倍首相を総括すると、惰性という言葉しかない。その間に日本が酷い状況になったが、「安定」という惰性の裏返しの言葉のために、安倍首相は存在し続けた。全くもって無意味な8年間であった。

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 先月、ドナルド・トランプ大統領が新しい駐日米国大使にケネス・ワインスタイン(Kenneth R. Weinstein、1961年-、59歳)を指名したというニュースが流れた。前任のビル・ハガティは今年のテネシー州選出連邦上院議員選挙に出馬のために、2019年7月に辞任し、離日した。それ以降は正式な大使は空席で、代理大使はジョセフ・ヤング米国大使館首席公使が務めている。
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ワインスタインと安倍晋三

 ワインスタインはシカゴ大学で学士号、パリ政治学院で修士号(ソヴィエト連邦・東欧研究)、ハーヴァード大学で政治学博士号を取得している。学者として立派な経歴だ。思想としてはネオコン派に分類される。1991年にハドソン研究所でのキャリアをスタートさせ、2011年に所長に就任した。ハドソン研究所はワシントンDCにある保守系のシンクタンクだ。日本では、元NHKのワシントン特派員で作家の日高義樹氏が研究員をしていることでも一部で知られている。ドナルド・トランプ大統領とも関係が深く、貿易政策や貿易交渉に関する顧問委員会のメンバーにもなっている。

 ハドソン研究所では2019年に日本部(Japan Chair)を創設し、日本部長として、HR・マクマスター元国家安全保障問題担当補佐官(ドナルド・トランプ政権、2017-2018年)を招聘した。マクマスターは陸軍中将から現役のままで補佐官となったが、最終的にはトランプから更迭された。その際に大将への昇進を見送られるという屈辱もあった。ハドソン研究所は軍事研究も盛んで、軍や軍需産業とも関係が深いので、マクマスターは招聘されたということになる。安倍晋三首相や小泉進次郎環境大臣といった日本側の要人もワシントンDC訪問の際にはハドソン研究所に立ち寄り、講演を行っている。
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H・R・マクマスター
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ワインスタインと小泉進次郎
 トランプ大統領の日本に対する考え方は、「あいつらは不公平な貿易慣習や制度を用いてアメリカから金を奪っている。アメリカの対日貿易赤字を何とかしなければならない。そのためにはアメリカ製品を買わせるに限る。しかも大きいものをだ。それには戦闘機やミサイルなど兵器が一番だ」というものだ。ワインスタインはそのための代理人ということになる。

 新型コロナウイルス感染拡大の収束の時期が不明であり、ワインスタイン氏の連邦上院による人事承認もいつできるか分からない。承認は簡単に降りるだろうが、その時期が不透明となると、日本にやってくる時期も分からないということになる。日本の感染拡大が落ち着かないと来られないということになると、今年中は無理ということも考えられる。そうこうしているうちに11月の大統領選挙でトランプ大統領がジョー・バイデン前副大統領に敗れるということになれば、ワインスタイン氏もさすがに日本に来ないまま辞任することはないだろうが、短期間で駐日大使を終えるということも考えられる。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領は駐日本米国大使にケネス・ワインスタインを正式に指名(Trump formally nominates Kenneth Weinstein as ambassador to Japan

タル・アクセルロッド筆

2020年3月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/487540-trump-formally-nominates-kenneth-weinstein-as-ambassador-to-japan

トランプ大統領はケネス・ワインスタインを駐日本米国大使に正式に指名した。金曜日午後、ホワイトハウスが発表した。

ワインスタインはワシントンDCにある保守派のシンクタンク「ハドソン研究所」の会長であり、最高経営責任者である。また、米国通商代表部に助言を行う貿易政策・交渉に関するアドヴァイザリー委員会の委員も務めている。

ハドソン研究所の責任者を務めている期間、ワインスタインはハドソン研究所の日本部長職を発足させ、HR・マクマスターを日本部長に起用した。マクマスターはトランプ大統領の安全保障問題担当大統領補佐官を務めた。

連邦上院から承認を得なければならないが、ワインスタインはビル・ハガティの後任の大使となる。ハガティは昨年大使を辞任した。そして、引退するラマー・アレクサンダー連邦上院議員(共和党)に代わって今年のテネシー州連邦上院議員選挙に出馬する。

トランプ大統領が就任直後に日本との不公平な貿易に関する合意について批判する発言を行ったことで、アメリカ政府と日本政府との関係に高い関心が集まった。しかし、トランプ大統領は日本の安倍晋三首相との良好な関係をアピールしている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 日本の安倍晋三政権とアメリカのドナルド・トランプ政権との間で貿易交渉が行われ、アメリカ側に得るところが多く、日本側に得るところがほとんどない内容で合意がなされた。日本側はアメリカ側の農産品に対する関税を段階的に引き下げる一方、アメリカの自動車輸出に関して関税引き上げをしないというアメリカ政府からの確固とした言質を取ることに失敗した。
usjapantradeagreements2019001

アメリカはTPPから脱退したが、TPPに入っていた場合と同等の日本への悪説のしやすさ(関税の引き下げ)を手にすることができた。日本の完敗ということになる。安倍晋三首相が何とかしようとアメリカのドナルド・トランプ大統領から何とか妥協を引き出そうと媚態を駆使していたことは外側から見るとよく分かるようだ。
donaldtrumpabeshinzo110

 下の記事は、日米交渉について網羅されている。貿易交渉と共に日本駐留の米軍に対する日本政府からの「思いやり予算」の4倍増(20億ドルから80億ドル)の話も絡めて書かれている。簡単に言えば、日本側はアメリカら押されっぱなしということである。アメリカ政府は韓国政府に対しても、駐留経費負担の増額を求めたが、韓国政府は明確に拒絶した。

 日本にとっての生命線は自動車輸出だ。アメリカへの輸出の20%を占めているし、自動車会社が支えている人々の数を考えると、まさに日本経済を支える柱だ。トランプ政権は、日本からの自動車輸出を「国家安全保障上の脅威」と言い出し、だから関税を引き上げることもありうると日本側に脅しをかけている。その脅しに屈した形だ。貿易合意の中で、確固とした文書で関税引き上げを行わない、という一札を入れさせることができなかった。と言うことは、これからも貿易交渉があれば、自動車への関税引き上げを脅しとして使われることだろう。

 また、日本側からの思いやり予算の4倍増もアメリカから脅されて無理やりにでも飲まされることになるだろう。6000億円の増額ということになる。日本周辺の脅威を過剰に煽り立ててアピールすることで、日本側から金を引き出すという、チンピラまがいのやり方をアメリカ側はしている。アメリカも昔ほど余裕はなくなり、背に腹は代えられないとばかりにこうした脅しをしてくる。

 こうした脅しに対しては、粘り強く交渉を長引かせるということが大事だ。そうしたことが1980年代まではできていたが、今では日本側の交渉担当者が一体どちらの味方なのか分からないという状況になっている。脅しに対しては「柳に風」「気に入らぬ風もあろうに柳かな」という態度で接するべきだろう。しかし、今の日本の状況ではそういうことができる人材もいないし、最高指導者層もとうに諦めているし、こうした上級国民がアメリカの手先となっている。年末に来年のことを話してももう鬼が笑うこともないだろうが、日本の将来はますます暗くなるということだけは確かだ。

(貼り付けはじめ)

日本は貿易に関してトランプ大統領を信頼して後悔している(Japan Regrets Trusting Trump on Trade

―貿易交渉によって日本政府はより多くを与え、より少なく手に入れた

ウィリアム・スポサト筆

2019年12月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/12/05/tokyo-abe-japan-regrets-trusting-trump-on-trade/

日本は、アメリカ大統領ドナルド・トランプと交渉をしようとする際のリスクを人々に改めて思いをいたさせる。日本側はアメリカのドナルド・トランプ大統領との交渉を使用とする場合のリスクについて気づくことができなかった。しかし、日本は交渉を行い、合意に達した。日本はアメリカとの貿易交渉で何も獲得しないままで合意に達したように見えたが、日本政府は今になって更に駐留アメリカ軍基地の特権に対する支払いについて交渉を行うように求められている。

貿易と駐留米軍基地に関して、日本は切り札が少ない中でできるだけ努力をしなければならないという難しい仕事をこなさねばならなかった。貿易に関する合意の中で、日本はアメリカからの農産物輸入に門戸を開放した。これによって門戸が閉ざされてきた市場(訳者註:日本)にアクセスできることでアメリカの農業従事者たちにとって利益となる。この市場(訳者註:日本)では消費者たちは平均よりも高い値段を払っていた。一方、日本は何も持ち帰ることがなかった。アメリカ政府が日本からの自動車の輸入を国家安全保障上の脅威とはとらえないと明言して欲しいと日本側は望んでいたが、曖昧な約束がなされただけだった。アメリカ政府は日本の自動車輸出を国家安全保障上の脅威と捉え、懲罰的に25%の関税をかけることを検討している。

一方でアメリカは満足して交渉の場を後にした。テーマとなった多くの物品において、アメリカ国内の製造業者たちは12か国による環太平洋経済協力協定(Trans-Pacific PartnershipTPP)内と同様のアクセスを確保できることになった。トランプ大統領は就任直後にTPPからの離脱を決定した。今回の貿易合意は牧場経営者たちにとって恩恵となった。彼らは中国との貿易戦争に苦しんだが、日本の国内産牛肉よりもより低いコストを武器にすることができる。アメリカ側は低い関税率は年に70億ドル分の農産物にかかることになると述べている。しかしながら、利益はすぐに出る訳ではない。牛肉にかかる関税はこれからの15年間で現在の38.5%から段階的に9%にまで引き下げられることになる。ブドウ園にとっては、ワインに対しての関税率が2025年までに現在の15%が撤廃されることで牛肉農家よりもより大きな利益を得ることになる。

他方、日本にとっての利益はアメリカに比べてかなり不透明だ。蒸気タービン、楽器、自転車のようないくつかの特定の製品の関税引き下げは別にして、日本の安倍晋三首相が日本国内に示すことができるものは多くはない。

日本側からの主要な要求は、トランプ大統領が日本からの自動車輸出に対して関税を引き上げるという脅迫を実行しないという保証を得るというものだった。今年5月にトランプ政権は日本とヨーロッパからの自動車輸入はアメリカにとって国家安全保障上の脅威となるという決定を下した。従って、関税引き上げの可能性は消え去っていない。日本側にはトランプ政権に対する疑念が存在する。しかし、長年にわたり日米安全保障関係は最強のものだということは考えられてきた。

日本からアメリカへの自動車輸出は1986年の段階に比べて半分程度になっている。1986年の段階では日本の自動車各社は北米で巨大な生産設備を備えていなかった。日本からアメリカへの自動車輸出は、日本からアメリカへの輸出の20%を占めている。トランプ大統領が引き上げると脅している関税率のレヴェルになってしまうと、日本からアメリカへの輸出には大きなダメージとなる。

日本側はこの微妙なテーマについて確固とした内容の文書を得ることができなかった。ただ、「日米両国はこれらの合意の精神に反する手段を取ることはしない」というあいまいな文が書かれているだけだった。日本の茂木敏光外務大臣が交渉を監督していた。茂木外相は記者団に対して、トランプ大統領は安倍首相に対して「合意内容が真摯に実行される限りにおいて」関税引き上げを行うことはしないという口頭での約束を与えたと述べた。

トランプ大統領やアメリカ側への信頼感が低下していく中で、多くの疑問が出てきている。日本のマスコミは、安倍首相がトランプ大統領の歓心を買うために配慮を行ったがそれで日本側に利益がもたらされたのかどうかという疑問を呈している。安倍首相はトランプ大統領をいち早く支持し、少なくとも表面上は忠実な支持者であり続けてきた。トランプ大統領の予想外の選挙での勝利の後、安倍首相は外国の指導者の中で最も早く面会した。それから少なくとも10回は2人で会談を持った。今年5月、日本の徳仁天皇が即位して最初に会談を持った外国の指導者という名誉をトランプ大統領は与えられた。

このことは日本国内で議論を巻き起こした。日本のリベラル派はポピュリスト的でナショナリスティックな政策を強く主張している。日本の保守派はトランプ政権の反移民、反中国政策により共感を持っている可能性はあるが、しかし同時に、こうした人々は日本の指導者が公の場で媚びへつらう姿を見せることを目撃することを嫌う。

トランプ大統領は安倍首相のごますりを額面通りには受け取っていないようだ。2018年、トランプ大統領は次のように警告を発した。「私は日本の安倍首相やそのほかの人々と会談を持つ。安倍首相は素晴らしい人で、私の友人だ。彼らの顔には笑いはほとんど出てこないだろう。そして、彼らが笑う時は“アメリカを長い間利用して自分たちの利益を得ることはできないと確信した、そんな日々はこれで終わりだ”と感じる時だ」。

そして予想された通り、トランプ政権はギアをすぐに入れ替え、貿易問題から、アメリカ軍将兵と基地への日本側の支払いという微妙なテーマに重点を移した。アメリカ軍は5万4000名の将兵を日本に駐留させている。その約半分は沖縄に駐留している。沖縄本島の18%を使用している。沖縄の住民たちから長年にわたり怨嗟の声が上がっているのは当然のことだ。

アメリカ軍の大型駐留は日米軍事同盟の大きな部分である。日米軍事同盟は1960年に公的に成立し、定期的に更新され、範囲が拡大している。日米同盟によって、日本側にはアメリカによる防護が与えられる約束が与えられている。それには核の傘が含まれている。これは日本の平和主義憲法を保ち、核武装の意図を放棄するための重要な要素である。

アメリカにとって、日米軍事同盟の意義は、ロシア、中国、北朝鮮といった核武装している近隣諸国の中で裏切る可能性のない同盟国を獲得したということになる。加えて、日本側は米軍基地の土地を提供したが、これらの基地は朝鮮戦争やヴェトナム戦争にとって便利な場所になった。そして現在、アメリカが中国を次の軍事上のライヴァルと捉えている中で戦略上の恩恵となっている。しかしながら、トランプ大統領にとっては、韓国国内同様、日本国内の米軍基地はコストであり、これをアメリカのバランスシート上の利益に変えたいと望む存在である。

『フォーリン・ポリシー』誌で既に報じられているように、アメリカ政府は日本側からの貢献額を20億ドルから8億ドルへと4倍増するように求めている。これに加えて、日本は間接的なコストの支払いをしているが、その額は推定で12億ドルだ。それは基地建設のコストも入っている。日米両国政府はコストの詳細な内容を発表していないが、日本がこれ間に支出したのは推定で全コストの75%に上ると推定されている。これが意味するところは、貢献額の4倍増はアメリカ側にとっては素晴らしい利益となるということだ。米軍関係者が日本からの利益からのボーナスを受け取ることが出来るかどうかという問題は置いていても、より明確になったのは、アメリカ外交は取引でいかようにも変わる性質を持っているということだ。

ドル(もしくは日本円)によって動かす外交は日本側にとって新奇な概念ではない。日本側は外交を経済的な利益を拡大するために長年にわたり利用してきた。貿易交渉の中で、媚びへつらう態度を取ることが日本の自動車会社を守るための低コストの方法であることを示している。安倍首相はアイゼンハワー政権のチャールズ・E・ウィルソン国防長官の国家と資本主義を結合させることについての有名な(しかし誤って引用されている)発言を引用し、トヨタにとって良いことは日本にとって良いことだと結論付けた。この文脈の中で、自分をゴルフ友達だと卑下することに終始した不快な時間はどんな意味を持つだろうか?

貿易交渉において、日本側は「吠えなかった犬(訳者註:あって当然のものがないことを重要視する)」について重点を置くことが可能だった。トランプ大統領にアメリカの農業従事者の利益について自慢させながら、日本側は日本円の価値について何も言及していないという事実について沈黙を守った。

2012年に安倍首相が就任して以来、日本銀行は貨幣量の拡大を通じて経済を再膨張させるという前代未聞の施策を実行してきた。これによって日本円の価値は極めて低くなった。安倍首相が就任当時には1ドルが86円だったものが現在では109円になっている。

日本政府はこれについて様々な形で正当化をしている。日本銀行の施策は25年も続く経済におけるデフレーションと戦っていると主張している。同時に、円の価値低下は輸出業者にとっては追い風となっている。これによってトヨタをはじめとするその他の輸出企業がアメリカの輸出する際に価格を24%引き下げることができるようになった。

日本側は将来の自動車輸出への関税についての明確な約束を得ることに失敗したが、関税引き上げが行われる可能性をとにかく低くすることはできた。ここ3年間でトランプ大統領について1つ明確になっていることは、その瞬間の状況に合わせることに躊躇しないということだ。最終的に、交渉力は政策の公平性よりも重要だということになる。

日本にとってより不気味なことは、日米両国は交渉を継続することに合意していることだ。そこで日本政府は自分たちが良く知っているゲームを再び行うことになるだろう。それは交渉の相手側がうんざりするか、交渉のテーマとなった問題が亡くなるまで交渉を長引かせるという日本側得意の戦略を再び持ち出すことだ。モトローラ社の携帯電話を日本で販売できるかという問題は1980年代を通じて長く続いた問題となった。これは長年続いた交渉の後に、歴史的な補足となって日本側に残った。日本の経済産業省の官僚たちは、どんな合意も最終的なものではなく、長くゆっくりと続く交渉買い手の準備をするという考えを持っていた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 11月下旬となるとスポーツの話題としてプロ野球選手の契約更改が良く取り上げられる。ストーブリーグとも呼ばれ、活躍した選手は大幅アップ、そうでもなかった選手は減俸となり、中には減俸額を抑えようと何度も交渉をするような選手も出てくる。プロ野球選手が活躍すれば年俸は大幅アップとなる。新聞紙上には倍増だ、3倍だ、4倍だ、という言葉が躍るし、昔イチロー選手が彗星のように登場した時には10倍ということもあった。何とも景気が良い話だ。

 アメリカのトランプ政権が日本政府に対して、日本に駐留する米軍に対する費用(host nation’s support、ホスト・ネイションズ・サポートと言う)を4倍にしろ、現在の約2200億円(年間)を約8800億円にしろと要求しているという報道が出た。プロ野球選手の年俸ではあるまいし、国家予算に関わることで気軽に4倍などという数字を言い出すトランプ政権には驚くばかりだ。

 もっともこれはトランプ流の交渉術なのだろう。高く吹っ掛けておいてそれから金額を下げていく。2倍で合意できれば御の字というところだろう。それ以上で合意できれば儲けもの、4倍を日本側が呑んだら、「あいつらはバカだ」と言って大喜びだろう(トランプは酒もたばこもやらないのでシャンパンで乾杯、とはいかないだろうが)。

 ちなみにホスト・ネイションズ・サポートを「受け入れ国からの支援」ではなく、「思いやり予算」と訳したのは金丸信だ。金丸は、ワーテルローの戦いでナポレオンを破った、初代ウェリントン公爵アーサー・ウェルズリーの言葉「偉大なる将軍はただ良いだけではなく、兵士の靴のことまで思いやるものだ」から思いやり予算という言葉を思いついたという話が残っている。日本はウェリントン公爵の立場ではなく、思いやられる方の兵士の立場だと思うが、それを目くらましするための金丸流の言葉遊びと実態隠しの表現が「思いやり予算」だ。実態は米軍が贅沢するためのショバ代、カツアゲ代である。

 日本の防衛予算は対GDP比1%以内を堅持してきた。大体5兆円以内に収まってきたが、第二次安倍政権下では大幅な伸びを示し、5兆円を突破している。GDPが伸びれば防衛予算も伸びるのだが、これから縮小し続ける日本ではGDPも減っていくので、1%以内という数字を堅持すると、防衛予算も減っていかざるを得ない。防衛予算を維持もしくは増加させるには対GDP1%を突破しなければならない。トランプ政権としては日本には、ヨーロッパ先進諸国並みの2%から3%の間にまで増額させたいと考えている。そうなると、アジアの周辺諸国やロシアは日本を警戒するようになる。

 日本の防衛予算と思いやり予算を増額させて、アメリカの軍事産業からの買い付けを増加させて、日本の対米貿易黒字を減らしたいというのがアメリカ政府、そしてトランプ政権の考えだ。日本は防衛装備の9割以上をアメリカら購入している大口の大得意客だ。防衛予算が増額され、思いやり予算が増額となれば、アメリカに貢ぐ金は軽く防衛装備購入と思いやり予算で軽く1兆円を超える規模になるだろう。アメリカ軍にしてみれば死んでも手放したくない夢の国、打ち出の小槌、日本となる。アメリカ軍が外国に駐留して経費の一部でも負担してもらえれば(負担させてやれば)、米軍がアメリカ国内にとどまるよりも安上がりということにもなるようだ。自分の国で養えない軍隊を外国の金で維持するというのは何とも本末転倒であり、ローマ帝国の衰亡でも分かるように、亡国の第一歩と言わざるを得ない。

 韓国も日本と同じく駐留米軍に思いやり予算を支出している。トランプ政権は韓国に対して思いやり予算の5倍増を要求している。米韓は毎年思いやり予算などについて話し合いを持つが、来年度分に関しては交渉が決裂したという報道が出た。韓国政府は何と立派な態度であろうか。米韓同盟は朝鮮戦争で共に共産主義と戦ったということで、対等とまではいかないが、完全に従属的な日米安保体制とは異なるものだ。だから韓国側は言うべきことは言う、という態度に出ることができる。日本側には不可能な態度の取り方だ。

 また、韓国は中国との関係を良好に保つことで、北朝鮮との関係をうまくマネイジメントしている。韓国にとっては北朝鮮に攻撃されないということが重要であるが、その目的のために中国とアメリカをうまく利用している。韓国の経済力は世界トップ10に入るほどのものであり、韓国が北朝鮮から攻撃を受けて経済がダメージを受ければ困るのは米中であり、ロシアということになり、北朝鮮にとっては中露から頭を押さえつけられている格好になる。

 日本は大変守りにくい国だ。昔は海に囲まれており、それが天然の要害ということになったが、戦艦の時代、航空機の時代、ミサイルの時代となっていき、防衛しにくい国になった。防衛予算をいくら増額しても完璧に守り切るということは難しい。それであれば米中韓露の間をうまくマネイジメントして物理的な防衛力に頼らない、経済力と外交力を混合した形で国を守る方策を採らねばならない。

 しかし、にほんがやっていること、やらされていることはアメリカ軍の下請けとなるということだ。アメリカから武器を買わされ、アメリカで訓練を受け、アメリカ軍と共同の司令部を持つ(実態はアメリカ軍の指揮の下に入る)というのは、アメリカ小久保総省が進めるinteroperability(相互運用性)を高めるということであり、2015年の安保法制で自衛隊は世界各地に進出できるようになったことで、アメリカ軍と共に戦うことになる。完全にアメリカ一択の、アメリカの完全な従属国になるという安倍政権の選択は、しかし世界の情勢を見れば何とも馬鹿げた選択だ。リスクヘッジという考え方がゼロなのだ。アメリカと一緒に沈んでいくことを選んでいる。アメリカが沈んでいきつつある証拠は、駐留米軍にかかる経費負担に耐えることができずに、同盟諸国に支払うように求めている態度でも明らかだ。昔は景気が良かったお金持ちが凋落して金をせびって回っているようなものだ。

「沈む船から逃げ出すネズミ」という言葉には肯定的、否定的両方の評価があるが、国際社会で生き抜いていくためには道徳的にはどうであろうと常に逃げ出す準備をしておかねばならない。その準備さえしていないとなると、ネズミ以下の存在ということになる。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領がアメリカ駐屯米軍将兵のための支払いを4倍に増額するように要求(Trump Asks Tokyo to Quadruple Payments for U.S. Troops in Japan

―この動きはトランプ政権のアジア地域の同盟諸国に対して防衛に関して更に予算を割くようにさせようという動きの一環である。韓国に対しても更に支払いをするように求める

ララ・セリグマン、ロビー・グラマー筆

2019年11月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/11/15/trump-asks-tokyo-quadruple-payments-us-troops-japan/

アメリカ政府は北朝鮮政府との非核化交渉を刷新しようとしている中で、ドナルド・トランプ大統領は、北東アジア地域の安定に関して依存してきた長年の同盟国日本政府に対して、日本に駐屯するアメリカ軍にかかるコストを補填するために予算を劇的に増額するように要求している。

トランプ政権は日本政府に対して日本に駐屯する5万人以上の米軍将兵の駐屯にかかるコストを相殺するためにこれまでの4倍を支払うように要求している。この問題について詳しい現役と元のアメリカ政府高官たちは本紙の取材に対して一様に語った。最近まで国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたジョン・ボルトンとこちらも最近まで国家安全保障会議アジア担当部長を務めたマット・ポッティンガーが7月の北東アジア訪問時に日本政府高官たちに予算の4倍増額を要求したとアメリカ政府高官たちは述べている。

アメリカ政府がアメリカ軍の駐屯の継続のためにさらに予算を増額するようにアメリカ政府が求めているのは日本だけではない。他のアジア地域の同盟国にも増額を求めている。アメリカ政府高官たちは、7月の訪問の際に、ボルトンとポッティンガーが同様の要求を韓国に対しても行ったことを認めた。韓国には2万8500名の米軍将兵が駐屯しているが、両者は韓国政府に対して予算の5倍増額を求めた。CNNとロイター通信は以前にもトランプ大統領が韓国政府に対して更なる貢献、予算提供を求めたと報じた。

アジア諸国に対して北東アジア地域の米軍の存在を継続するために必要な予算を出すようにトランプ政権が圧力をかけているが、これはアメリカとアジア地域の同盟諸国との間の緊張を高め、中国や北朝鮮のようなライヴァル陣営にアジア諸国を走らせることになると専門家の中には懸念を表明している人たちもいる。

シンクタンクのヘリテージ財団研究員でCIAの分析官を務めた経験を持つブルース・クリングナーは次のように述べている。「このようなアメリカ政府からの要求は金額が過大過ぎるだけではなく、要求の方法のせいもあり、反米主義を引き起こす可能性が高い。もし同盟関係が弱体化し、抑止力と在留米軍の削減ということになったら、北朝鮮、中国、ロシアにとっての利益となる。これらの国々はこうした状況をアメリカの影響力とアメリカらの同盟諸国への支援の減少につながると考える」。

ある現役の政府高官は更に明確に述べている。「アメリカからの過大な要求は同盟関係の価値を全く分かっていないことが原因であり、ロシアと中国とのいわゆる大国間競争にアメリカが集中するためにこれまでのやり方を変更するというトランプ政権の戦略にとって逆効果になる」。

アメリカ政府が日本政府と韓国政府に圧力をかけているというニュースは、トランプ政権が進めている、同盟諸国に対して圧力をかけて防衛のために更なる予算を支出させる動きの一環である。トランプ大統領は長年にわたりヨーロッパ地域の同盟諸国に対して軍事予算を十分に支出していないとして批判してきた。トランプ大統領の努力は実を結びつつある。来年末までにNATO加盟のヨーロッパ諸国とカナダは2016年に比べて1000億ドル以上も軍事予算を増額することになっている。

現在、トランプ大統領は中国の軍事力増強と北朝鮮からの脅威の中での太平洋地域の情勢に関心を向けていると考えられる。日本と韓国は数万名規模の米軍将兵の駐屯にかかるコストのために数億ドル規模の予算を支出している。両国はそれぞれアメリカとの二国間の特別措置協定に基づいて支出をしている。これらの協定はこれまで5年おきに交渉がもたれ内容が決定されてきた。

アジア太平洋政策担当国防次官補ランドール・シュライヴァーはマーク・エスパー国防長官のアジア地域訪問に先立つ今週、「トランプ大統領が世界各地で強調してきたように、同盟諸国はさらなる負担を進んで負わねばならない。これは韓国にだけ限ったことではない」と発言した。

2021年3月に期限を迎える現在の日本との特別措置協定の下では、日本政府は54000名の米軍将兵の駐屯にかかるコストを相殺するために約20億ドルを支出している。日本駐屯の米軍将兵の約半数は沖縄にある米空軍基地に駐屯している。3名の国防総省高官経験者たちは、期限を迎える前に、トランプ大統領は予算の増額、300%増額となるおよそ80億ドルの支出を要求していると認めた。

トランプ大統領は韓国政府に対しても同様の予算増額を求めている。しかし、韓国政府との交渉期限は日本政府とよりも早くやってくる。昨年、韓国との5年の特別措置協定が期限を迎えた際に、トランプ大統領は韓国政府に対して50%の増額を求めた。これまでの特別措置協定に基づき、韓国政府は駐留する2万8500人にかかる経費を相殺するために年間約10億ドルを支出している。その後の拡大交渉で、米韓両政府は、韓国側が前年よりも8%増額した額を支出するが、毎年支出額について交渉するということで合意に達した。

元国防総省関係者の1人は、今年中に韓国との協定が期限を迎えることになるが、トランプ大統領は約50億ドルの予算増額を求めており、これは400%増額となることを認めた。

あるトランプ政権幹部は「トランプ大統領は日本や韓国を含む世界中の同盟諸国が更に貢献することができるし、そうすべきだということを明確に期待している」と述べている。

トランプ政権の高官は続けて次のように述べている。「日韓以外の同盟諸国も近い将来に両国に対するのと同じ要求に直面する可能性が高い。

この幹部は「韓国に対する要求は同盟諸国に対するアメリカの要求に関する新たな型板の第一歩ということになる。最初に韓国に適用され、次に日本、そしてアメリカ軍が駐留するほかの同盟諸国に適用されるだろう」と述べている。

日本政府は軍事協定に関する交渉のために韓国政府よりも多くの時間を持つ。そのため日本政府は韓国政府の動向を注視している。アメリカ政府と韓国政府との間の合意の形が、日本政府とアメリカ政府との交渉の形のひな型となると日本政府は考えているだろう。国防総省の元高官は「日本政府は韓国政府よりも少しは有利な立場に立っている。日本政府は“韓国さん、お先にどうぞ。私はあなたと同じ合意を結ぶようにしますからね”と言うだろう」と語っている。

今年9月の貿易協定の合意文書に署名する中で、日本側は影響力を失うことになった。トランプ大統領と日本の安倍晋三首相が9月25日に署名した合意文書で、日本政府はアメリカ産農産物への関税を引き下げることに合意した。

アメリカ政府が同盟諸国に対して防衛支出の増額を要求し続けている中、日本政府は「負担の分担について創造的な考え」をしようとしている。元国防総省高官によると、その具体例としては、日本にある米軍基地内の新しい施設への予算支出や新たにアメリカの地上配備ミサイルを国内に受け入れるといったことになる。

専門家や元政府高官が指摘しているように、次期特別措置協定に関するアメリカ側との予備交渉において、日本側は防衛予算の大幅増額を強調している。日本政府高官たちは、高額なアメリカ製の軍事装備を購入する決定を下したと述べている。その中にはF-35戦闘機やV-22オスプレイ、ティルトローターが含まれている。また、沖縄の米軍基地再編についてスピードアップを図るために更なる予算支出も決めたとも述べている。

元アメリカ政府高官たちは、日本からの米軍撤退は長期的に見てアメリカにとって大きな財政負担を強いることになると指摘している。もちろん特別措置協定に合意がなされなくてもすぐに米軍撤退ということにはならない。

元外交官で現在は日米関係を専門とする非営利組織の笹川平和財団の非常勤研究員を務めるジェイムズ・ズムワルトは次のように述べている。「アメリカ政府が米軍を日本から撤退させ、アメリカ本国に帰還させたならば、アメリカ国民は更なる税金負担を追うことになるだろう。現在、日本政府は米軍基地勤務の軍属2万40000人の給料と米軍将兵家族の光熱費などを支出しているが、それをアメリカ政府が支払わねばならなくなる」。

日本政府と韓国政府は北東アジア地域におけるアメリカ軍の軍事プロジェクトに多額の予算を支出している。連邦議会調査部の2018年の報告書によると、日本政府は第二次世界大戦後におけるアメリカ軍の海外基地建設に関し、最大規模となる3つの基地建設のコストの50%以上を支払っている。それらは、沖縄の普天間基地の代替基地(辺野古、日本政府は121億ドルの経費の100%を支出)、岩国の海兵隊航空基地(日本政府は48億ドルの経費の94%にあたる45億ドルを支出)、グアムの沖縄から4800人の海兵隊員が移動するための施設(日本政府は経費の36%にあたる31億ドルを支出)だ。

韓国政府はハンフリーズ基地の増設費用の93%にあたる100億ドルを支出する。

日本政府も防衛装備の90%以上をアメリカ企業から購入する。連邦議会調査部の資料によると、日本政府はロッキード・マーティン社のF-35戦闘機とボーイング社のKC-46タンカーを購入する。

国防総省元高官は「これは日韓両政府にとって計算の合わない、過大な支出ということにはならない」と述べた。

同盟諸国から駐留米軍のコストを相殺するために更なる予算を分捕ろうというトランプ政権の計画に沿った動きは今回が初めてのことではない。今年3月、トランプ政権は同盟諸国に対して駐留米軍の経費全額を支出することを望んでいるという報道が出て、その後は更に50%をプラスした支出を望んでいるという報道が出た。当時の国防長官代理パトリック・シャナハンは連邦議員たちに対して、トランプ政権は「コスト・プラス・50」計画を進めることはなく、こうした報道は誤ったものだと述べた。

(貼り付け終わり)

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