古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:安倍晋三

今回は、古い記事であるが、安倍晋三前首相が退任を発表した直後に、アメリカ人識者によって発表された安倍政権の分析と評価を行った論稿を紹介する。マイケル・オースリンは、アメリカの首都ワシントンにある右派のシンクタンクであるアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)の上級研究員兼日本部長を務めている。

 この論稿の中で、オースリンは、安倍首相の経済政策はうまくいかなかったが、外交政策と安全保障政策においては成功を収めたと分析している。この「成功」とはずばり、対中国強硬路線だ。中国と対峙するために、インド、オーストラリア、東南アジア諸国との関係を深化させ、防衛協力も進めたとしている。安倍首相の「成功」とは、アメリカにとっての成功であって、日本の国益にかなっていたかどうか、ということは別の視点から見なくてはならない。

 この論稿の中で、オースリンは、この時点でははっきり決まっていなかった自民党の次期総裁(日本の首相)については数人の候補者を挙げるにとどまっていた。そして、オースリンは一つの懸念を表明している。それは、「安倍首相のようにうまく日本を統治しながら、アメリカとの同盟関係に深く献身できる(属国化を推進する)人物が出てくるのかどうか」ということだ。安倍首相時代、アメリカは日本について懸念を持つ必要はなかったが、これからはそうはいかない、これからは「安倍時代は良かったな(中国にとっては良くなかったな)」と思う日々がやってくると書いている。

 これを裏返して考えて見ると、「安倍首相のように、何でもアメリカの言いなりで、自ら進んで属国化を進める、そんな政治家はいない、いくら何でもそこまでする奴は常識外れのバカだ」ということになる。普通に考えれば、安倍首相がやったようなことはしないし、できないということだ。

 この論稿は安倍前首相の外交政策と安全保障政策を評価しているが、視点を考えれば「ほめ殺し」そのものだ。

 結局、日本の新しい首相には菅義偉前官房長官が選ばれた。官房長官時代に単独でアメリカ訪問をし(内閣の番頭格、首相の女房役という点からかなり異例)、マイク・ペンス副大統領との面談を行った。アメリカ側としては、こいつでいいや、安倍程期待できるか分からないが、安定しそうだし、安倍路線の継承と言っているのだから、ということになる。国会で施政方針演説を行う前に、ドナルド・トランプ大統領に早速お電話を差し上げて、ご挨拶もした。「菅はなかなか愛(う)い奴」ということになる。

 安倍路線とは日本の属国化論戦そのもので、アメリカを喜ばせるだけのことだ。

(貼り付けはじめ)

安倍時代は終焉し、中国は元気づけられ、アメリカ政府は懸念を持つ(The Abe Era Ends, Cheering China, Concerning Washington

アメリカはほぼ10年間、日本について懸念を持つ必要はなかった。これからは懸念が始まってしまうことだろう。

マイケル・オースリン筆

2020年8月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/08/28/abe-japan-resignation-united-states-ally/

タイミングは偶然だっただろうが、安倍晋三首相が日本の首相の中で最長の在任記録を打ち立てた週に辞任を発表した。辞任の理由は2007年、最初の首相を短期間で辞任することになった原因と同じだ。それは慢性の潰瘍性大腸炎だ。支持率の低下、一向に改善しない経済状態、2016年に大阪の学校への土地売却をめぐるスキャンダルなどはあったが、安倍首相は2012年に権力の座に返り咲いてから、日本政治を支配した。そして、10年近くにわたり、安倍首相は日本をアメリカにとっての忠実な同盟国としての立場を堅持した。米中間の地政学的な競争がヒートアップしている中で、日本との同盟関係を失うことは、アメリカ政府にとっての懸念の種である。誰が安倍首相の後任になるか、日本が政治的な麻痺状態もしくは不安定状態に入るかどうか、後任が安倍首相と同等の外交政策と安全保障政策に対する熱意を持っているのか、これらの疑問は日本においてだけではなく、同盟諸国と競争相手にとって重要な疑問である。

首相として3期連続で人気を務め、約8年間にわたり日本政治のトップであったが、安倍氏が2012年に再び首相の座を手にしてした時、以下に日本が酷い状態であったかを思い出すのは難しい。安倍氏が2007年に一度目の首相を辞任してから、5名以上の首相が就任したが誰もが1年ほどで退任した。この時代には安倍氏が属する自由民主党が1955年の結党以来、初めて権力の座から滑り落ちた(1990年代初めに短期間野党に転落したことはあった)。首相として1期も持たずに退任するという失敗から、安倍氏は、1970年代と1980年代の日本でパワーブローカーであった田中角栄と中曽根康弘に匹敵する、日本における実力政治家となった。

安倍氏の父は外相を務め、祖父は岸信介であった。岸信介はアメリカによってA級戦犯として投獄されたが、1957年から1960年にかけて日本の首相となった。岸はそれから数十年間続くことになる自民党の選挙での優位性を作り上げた設計者の一人である。安倍氏は2012年以降、経済成長と外交・安全保障政策分野での積極性を通じて、彼の地位を固めた。安倍氏は日本の政治家特有の控えめなイメージを覆し、彼の経済政策についてアメリカ式のスローガンを打ち出した。安倍首相が首相の座に返り咲いた際、彼は「アベノミクス」をぶち上げた。有名な「三本の矢」という言葉も使われた。これは通貨発行の拡大、財政刺激、構造改革を指している。

アベノミクスは多くの目標を達成できなかった。2%のインフレーション・ターゲット、デフレーションの終息といったことは達成できなかった。それでも、安倍首相は環太平洋連携協定交渉に参加し、けん引すること、法人税の引き下げ、電力などの重要分野の規制緩和、日本における外国人労働者の増加、女性の勤労者数の増加(「ウイメノミクス」として知られる)で新しい地平を開いた。

日本の指導者としては大胆な施策であった、安倍首相の経済政策は、考慮が足りなかった、安倍首相の在任期間における二度にわたる消費税税率の引き上げと世界的な新型コロナウイルス感染拡大によって打撃を受けた。消費税引き上げは経済回復の航海から必要な推進力となる風を奪い取った。東芝やルノー・日産などで起きた企業統治に関する数々のスキャンダルは、ひとたびは「ジャパン・インク(日本株式会社)」と呼ばれたシステムの改革がいかに難しいかを改めて示すものとなった。ルノー・日産のスキャンダルでは、実業家カルロス・ゴーンの批判を巻き起こした逮捕とそれに続く日本からの脱出行で世界に知られることになった。しかし、多くの失敗はあったが、安倍首相は唯一、総合的な日本の経済改革計画を持つ人物であった。そして、彼は信頼性の高い他の選択肢がない中で、基本に立ち戻ることができた。

安倍首相の経済政策が世界的な基準によって比較的過激さを失わされることになったが、安倍首相は戦後の日本の指導者たちの中で、外交政策と安全保障政策をこれまでになく進めた。彼は平和主義の第9条を日本国憲法から取り除く形で憲法を変更しようと望むこと、また日本の戦争犯罪についての解釈について疑問を呈することで悪名を高めた。憲法9条では、日本は伝統的な軍事力の構築を禁止されている。それでも安倍首相は第二次世界大戦における日本の役割に関してこれまでになく明確な謝罪を表明し、パールハーバーを公式訪問し、広島にバラク・オバマ大統領を迎えている。

より具体的に言えば、安倍首相は日本の戦後の手かせを脱ぎ捨てた。彼は日本と同盟諸国との間の協力、日本企業が防衛生産と協調することを妨げてきた様々な法律を改定、もしくは廃棄した。そして、国家安全保障会議を創設し、毎年防衛予算を増額し続けた。安倍首相の在任期間中、日本は第二次世界大戦井以来の空母建設計画を立て、アメリカに次いで、世界第二位のF-35保有数を達成した。また、中国軍から遠隔の島嶼部を防衛するために陸海共同の部隊を新たに創設した。

アジア地域において、安倍首相は日本の外交関係を深化させた。特にインドとの関係を強化した。安倍首相とインドのナレンドラ・モディ首相は協力関係を構築した。安倍首相は、オーストラリア、更に東南アジア諸国との関係も強化した。安倍首相の前政策の基盤にあるのは、中国の台頭である。中国は日本にとって最大の経済的パートナーであるが、同時に日本の国益にとっての明白な脅威でもある。多くの場面を通じて、安倍首相がアジア諸国に送ったメッセージはシンプルなものだ、それは、日本は「非中国」であり、皆さんと貿易を行うことができ、地域における規範とルールを維持するために協力でき、皆さんを虐めたりしません、というものだった。

安倍首相が権力の座に返り咲いた時期に、中国で習近平国家主席が権力を掌握したということもまた偶然の産物ということになる。両者は8年間にわたりつば競り合いを続けた。中国は日本が海外開発支援を通じて、経済関係と外交関係を拡大していることを注意深く観察してきた。これは習近平の進めている一対一路計画に対抗するものである。最近になって、安倍首相は、新型コロナウイルス感染拡大終息後のための基金をスタートさせた。これは、日本企業に対して中国を拠点にしている活動を移転させるためのものだ。世界規模の貿易における中国の役割を変更させるために制限された中国の分離を加速させる。

中国政府にとっての特別な脅威となったのは、安倍首相が進めた軍事力の近代化であった。安倍首相は領有権をめぐる争いがある尖閣諸島(釣魚島)周辺海域に対する中国の日常的な侵入を防衛した。それだけではなく、安倍首相はオーストラリア、インドとの安全保障協力関係を深化させた。そして、台湾との関係も表立ってではないが、緊密さを維持した。安倍首相の退任に中国政府はほっと一息つくであろうことは疑いようがない。そして、彼の後任が彼ほどのエネルギーを持っていないこと、インド太平洋地域、もしくは世界における日本の役割の拡大という彼の考えを共有していないことを願っていることだろう。

安倍首相の外交政策の中核はアメリカとの同盟関係であった。彼はオバマ政権と協力して日米同盟に関するガイドラインの見直しの成功を主導した。更にはその深化にも成功した。しかし、安倍首相はアメリカのドナルド・トランプ大統領と緊密に協力した点で人々の記憶に残ることになる。彼はトランプ大統領と独自の緊密な関係を構築した。安倍首相は日本のナショナリストというレッテル貼りをされたが、安倍首相は日本の安定と繁栄のためにはアメリカ政府との協力が致命的に重要であることを理解していた。安倍首相のトランプ大統領へのアプローチは、中国への対抗、アメリカがこれからも日本を北朝鮮から守り続けること、トランプ大統領が環太平洋連携協定からのアメリカの撤退を決めてからの血の二国間の関税引き下げを行うための二国間交渉といった点から行われた。

安倍首相は辞任を発表した記者会見の中で、領有に関して争いがある北方領土をロシアに返還させること、北朝鮮から拉致された人々の期間を確実なものにすることができなかったことについて後悔の念を表明した。北方領土は第二次世界大戦中にロシアに占領された島々である。安倍首相は憲法の変更ができなかったことについても言及した。彼はまた常に不完全な経済改革についても残念に思っているだろうし、デジタル金融、5G、サイバーセキュリティの面で日本が遅れていることにも懸念を持っているだろう。しかし、全体的に見て、この8年間、安倍首相はアジア地域で最も有能で成功を収めた指導者であった。安倍首相の最後の1年において、日本は新型コロナウイルス感染拡大危機に見舞われたが、安倍氏が首相に返り咲いた2012年に比べて、日本は国際社会において存在感を増し、アジア地域とその他の各地域でより重要な役割を果たすようになっている。

日本にとって最も重要な疑問は、誰が安倍氏の後継者となるか、彼の政策のうちの何を引き継ぐのかというものだ。自民党は国会で絶対多数を確保しており、石破茂元防衛大臣、岸田文雄元外務大臣、現職の河野太郎防衛大臣と菅義偉官房長官といった有力候補者たちから次の指導者を選ぶことになる。これからの数週間で、選挙で人々を惹きつけることができるか、そして安倍首相の政策を引き継げるかということがテストされることになる。

最近になっていくつかのトラブルがあったが、安倍氏は日本で最も人気のある政治家だった。そして、彼ができたレヴェルで権威を行使することができる人物もいなかった。中国政府、北朝鮮政府は共に安倍首相の後任は有名ではなく、地味で、アメリカ大統領とはそこまで緊密な関係を築くことがない人物になって欲しいと願っている。市場は次期首相がすでに実現している改革から後退し、日本の産業面での競争力を増加させるための方策を実施しないのではないかという懸念を持っている。

アメリカ人にとっても、日本における統治の安定に慣れ過ぎてしまっている。この安定はサプライズである。アメリカ政府が、日本の指導者が日米同盟に献身するのかどうか、国会において安定的に過半数を維持できるのか、世界第3位の経済大国という地位に見合った世界における役割を果たすための計画を持っているのか、について懸念することになるのはほぼ10年ぶりのことだ。日本国内で、そして海外の同盟諸国の中で、安倍時代は良かったと懐かしがられるようになるのはすぐであろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 菅義偉総理大臣が誕生した。安倍政権からの継続を旗印に、自民党役員や主要閣僚に大きな変更はない。大臣の横滑りや再登板も多く、目下の急務である新型コロナウイルス感染拡大と経済対策の両輪を回す政策を実行していくことになるだろう。新内閣の目玉は行政改革で、河野太郎前防衛大臣が行政改革担当大臣に横滑りとなった。河野大臣は若手の時は「ごまめの歯ぎしり」などと言っていたが、今やすっかりポスト菅、光景総理総裁の有力候補である。祖父河野一郎、父河野洋平が果たせなかった総理総裁(父洋平は自民党総裁までは達成した)に手が届く位置まで来た。

 下に掲載する記事は、アメリカが新型コロナウイルス感染拡大に対応するために、大規模な財政出動を行い、財政赤字を更に積み上げる、そうなると、ドルの価値が下落する、そして、相対的に円の価値が上がる(円高になる)、その結果として日本の輸出に影響が出る、という内容だ。アベノミクスで円安基調になって輸出が堅調であったものがそうではなくなると、菅新総理大臣は厳しい状況に直面することになる、ということだ。

 子の論稿から考えると、安倍晋三前首相は経済の難しいかじ取りをする前に政権を投げ出したのではないか。菅氏は行政改革やデジタル化という2000年からの20年でいまだに達成されない、お題目を唱えているだけだ。菅内閣の特徴は停滞と惰性となるだろう。安倍首相が再登板する際には、経済と外交が目玉だった。安倍内閣の功罪について分析も反省もないまま、とりあえず「継承」という言葉で糊塗しているが、実際は惰性と停滞だ。菅氏は警鐘を唱えている以上、アベノミクス、安倍政権下の財政政策と金融政策は堅持されることになる。麻生太郎副総理兼財務大臣(デフレ脱却担当とはお笑い草だ)が留任ということで、菅氏は麻生氏に経済のことは任せることになる。そうなれば今のまま何も変わらない。

 安倍晋三前首相は良い時に辞めたということになる。これから経済の悪化がどんどん明らかにされていくが、それに対応するのは菅新政権だ。安倍晋三氏は大きな傷を負わずに、政権から退くことができて政治的な力を温存し、細田氏から派閥の領袖の地位を引き継いで、これから自民党内政治に大きな影響力を持っていく。キングメイカーとしてはもちろんだが、自分が再びキングとして登場するということも視野に入れているだろう。

 アメリカでもそうだが、日本でも新型コロナウイルス感染拡大対策と景気対策は車の両輪で、どちらもバランスよく行うべきだということになる。アメリカでじゃぶじゃぶとマネーが供給され続けるようになれば、ドル安ということになり、日本は円高となる。輸出業にとっては新型コロナウイルス感染拡大によって世界各国で内需が冷え込んでいるということも相まって厳しい状況となる。円高になれば輸入品の値段は下がる。それによって内需が拡大すればよいが、物価は上がりづらい。そうなれば政府と日銀のインフレ2%目標の達成は難しくなる。今年いっぱいは厳しい状況は続くし、来年はさすがに今年のようなことはないだろうが、回復は難しいだろう。

(貼り付けはじめ)

菅氏は継続性を約しているが、それを実現することはかなり難しい(Suga Promises Continuity. But on Economics, He Can’t Possibly Deliver.

-円の価値が上がると、日本の新首相は輸出を守るために何か新しいことをしなければならなくなるだろう

クリス・ミラー

2020年9月15日

『フォリーン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/09/15/suga-abenomics-yen-weak-exports-strong-quantitative-easing/

日本憲政史上最長の在任期間となった安倍晋三首相が辞任を発表した時、それは一つの時代の終わりのようであった。安倍首相は日本政治をほぼ10年近く支配した。与党自民党内の様々な派閥を巧妙に動かし、野党からのプレッシャーをかわした。様々な汚職事件と影響力を行使したスキャンダルをほぼ無傷で乗り切った。最も印象的だったことは、アメリカのドナルド・トランプ大統領との関係をうまく維持した。トランプ大統領は大統領就任後しばらくの間アメリカ側が主導権を握るために日本を攻撃してばかりだったことを考えると、安倍首相の仕事は簡単なものではなかった。

安倍首相の後継首相である菅義偉は言ってみれば、大きな靴に自分の足を合わせねばならないことになった。安倍首相と同じく、菅氏も自身のキャリアのほぼ全てを政治の世界で過ごしてきた。これまでの8年間は安倍内閣の官房長官を務めた。しかし、安倍首相とは違い、菅氏は政治界一族の出身ではない(安倍首相の父は外務大臣を務めた)。菅氏は地味な農家の出身である。

安倍首相と菅氏が長年にわたり一緒に仕事をして来たという事実から考えると、これが2人の指導者の間で政策が継続されるという予測が立つ理由となる。菅氏は安倍政権の政策を立案するにあたり一定の役割を果たしたのだ。日本のメディアは、財務大臣と外務大臣を含む主要閣僚の多くは、菅氏が首相になっても留任すると報じている。

菅氏に対する最大の疑問は日本経済についてである。それは、新型コロナウイルス感染拡大によって深刻な景気後退に直面するであろう世界各国と同じである。日本は高い幹線レヴェルからは脱しているが、経済は深刻な打撃を受けている。菅氏にできることは何か?

安倍首相は「アベノミクス」と名付けた経済プログラムで人気を確立した。アベノミクスには3本の矢があった。それらは、金融緩和、財政出動の拡大、市場開放のための構造改革であった。実際には、安倍首相は彼自身が約束したほどには財政出動を行わず、その代わりに均衡予算を追求した。財政赤字は減少し(今年になるまで)、税金は上がった。しかし、もし他の人々が首相であったら、税金をもっと早く上げていただろう。構造改革に関して言えば、安倍首相は貿易のために更に日本を開くためにいくつかの方策を行った。しかし、安倍首相は勇ましい言辞ほどには革命的ではなかった。安倍首相は日本の中央銀行である日本銀行に圧力をかけて、新たな更なる金融緩和政策を実験的に実施させた。しかし、ここ数年、更なる急進的な方法は実行されていない。

菅氏は自身も立案に関与したアベノミクスの遺産に対しての意義を唱える様子は見せていない。しかし、アベノミクスは正反対の政策が同居する矛盾したセットになっている。菅氏が継続性を公約しても、アベノミクスは政策の方向性を示すものではない。コロナウイルス感染拡大に関連する景気後退に苦しむ企業や個人を支援するために日本政府がこれからも資金を投入するということについてはほぼ疑いようがない。菅氏は構造改革についても発言している。しかし、政治家にとって改革を約束することはたやすいが、それを実現することは困難である。

菅氏は金融政策において厳しい選択に迫られることになるだろう。日本は超金融緩和政策の多くを始めたが、これらは今や世界規模で実施されるようになっている。例えば、中央銀行による金融財産の大規模購入である量的緩和は2001年に日銀が始めた。アメリカ政府が2007年から2008年にかけての金融危機に対応するために子の量的緩和を試したのはそれから約10年後のことだった。日本銀行はマイナス金利、政府の借り入れコストのコントロールという実験を続けた。これらは長期的な超低金利を保証するものである。

金融緩和政策を採用し続けて20年が過ぎた。日本銀行は更なる資金投入は不可能だと確信している。しかし、アメリカ連邦準備制度は金融緩和を始めたばかりで、コロナウイルス感染拡大による景気後退を戦うための金融における道具立てを劇的に拡大するものである。アメリカの赤字は戦争をしていない時代としては前代未聞のレヴェルにまで達しつつある。この結果としてドルの価値が下がることが予想される。そして相対的に円の価値が上がる。通貨価値が上がることは日本にとっては良いことのように思われるが、菅氏に対しては大きな挑戦となる。通貨政策は日本においてこれまで議論が沸騰する問題であり続けた。日本では輸出大企業をはじめとする輸出業者が政治的な影響力を及ぼしてきた。アベノミクスの財政政策と金融政策は円の価値を下げた。それによって日本の輸出業者は利益を得た。ドルの価値が下がり続け、円の価値が上がり続け、日本の輸出業者の競争力が落ちる場合、菅氏は難しい選択を迫られることになるだろう。菅氏は安倍首相の政策の継続を約することはできる。しかし、菅氏がそのような約束をしたからといって、安倍首相と同じ結果をもたらすことができるという保証はない。

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 古村治彦です。

 2020年8月28日、安倍晋三内閣総理大臣が辞任の意思を表明した。午後2時過ぎにマスコミ各社がほぼ一斉に「安倍首相辞任へ」「体調の悪化のために国政に迷惑をかけられない」という速報を出した。昨日は元々午後5時に安倍首相による久しぶりの記者会見が予定されていた。この記者会見をめぐっては、体調悪化のことを説明しつつ、新型コロナウイルス感染拡大と経済対策について発言がある、という憶測や、いや首相辞任の発表だという憶測が飛び交っていた。結局、昨日の記者会見は新型コロナウイルス感染拡大対策のパッケージの概要の説明が冒頭にあり、その後、首相辞任の意思表明が行われた。

 安倍首相は17歳の頃に、潰瘍性大腸炎を発症したということだ。現在65歳であるので、約50年間にわたり、この病気と向き合い、対処してきたということになる。その間にはアメリカ留学、神戸製鋼への就職、父安倍晋太郎議員の秘書への転進、父の地盤を受け継いでの国会議員、小泉純一郎内閣での官房長官、首相を二度務めるという経歴だ。この50年の間には大腸の全摘出も検討されたこともあったそうだが、薬剤の劇的な進歩もあり、コントロールをしながら、仕事や社会生活を営むことができたようだ。この点は、レガシーとして日本社会に定着して欲しい。持病がある人でも、通院しながら、仕事や社会生活を積極的に行える社会になって欲しい。これは甘すぎる考えかもしれないが、病気の治療や検査のために、時に休みを取る、もしくは通院のために1週間のうちに半日でも休みが取れる、それが当然のようになって欲しい。

 安倍首相、安倍政権に関して、私は全く支持してこなかった。選挙のたびに安倍首相が退陣するような結果になることを期待したが、結局国政選挙は6連勝という形で終わった。安倍首相を選挙の結果によって退陣に追い込めなかったのは、安倍首相を支持しない人々や野党にとっては敗北である。今回の辞任表明を私は素直に喜ぶことができない。

 安倍首相は昨日の会見で「政治は結果だ」と述べた。その結果であるが、惨憺たるものだ。一言で言えば、アメリカによる属国化がますます深まり、東アジアの平穏を乱す要因が日本ということになり、北方領土が返還される見込みはほぼなくなり、経済を見ると、実質賃金は上がらず、GDPは拡大せず、中国にはますます置いていかれ、ドイツには迫られる、格差は拡大し、少子高齢化に歯止めがかけられなかったということになる。安倍首相は在任中に雇用を生み出したとは述べたが、デフレ脱却には至らなかったと反省の弁を述べた。8年間でできることは限られていると言えばそれまでだが、好転する兆しすら見えなかった。安倍首相は自著のタイトルにした「うつくしい国」を実現したとは思えない。

 安倍首相の長期政権についてはこれから様々な分析がなされるはずだ。功罪様々なことが言われるだろう。私が思う安倍長期政権のレガシーは「忖度」と「私物化」であり、安倍政権が長期にわたって続いたのは、「惰性」であったと思う。「忖度」と「私物化」はセットである。森友学園問題(安倍晋三記念小学校開学問題)、加計学園岡山理科大学獣医学部開設に絡む問題、公文書保存に関する問題、など、権力の私物化とその後始末のために官僚たちに無駄に労力と気遣いを使わせた形になった。なぜそこまでして安倍政権を守らねばならなかったのか、守られることになったのか、政治史を少しでもかじった人なら不思議であっただろう。全く有能ではなく、成果も挙げていない、そんな人物が何度もスキャンダルや危機をうやむやな形ではあったがやり過ごしてきた。自民党内から反対の動きも出ることなく、国民も無関心という状況が続いたこれまでの8年間だった。

 それはやはり、「現状のままで良いや」「安倍首相以外には考えられない」という「惰性」が続いた結果である。そのために、安倍首相も辞め時を逸したという感さえある。安倍政権下では、成果よりも「道半ば」「うまくいっているがまだ全体に行きわたっていない」という言葉が強調され続けた。「やっていてある程度の成果は出ているが、目指している結果には達していない」ということを言い続けた。それならば、安倍政権が続いていくしかない。しかし、安倍政権が続いても、それらの結果を得ることは不可能である。そのために「道半ば」「いまだ遠し」ということになって、だらだらと政権が続いていくことになった。何かしらの成果が出れば、その時点で辞めるというのは日本のこれまでの首相の身の引き方の一つのモデルである。「一内閣で一つの課題」解決ということだ。しかし、安倍首相は、何事もなさなかったが故に、身を引く機会もなかったということになる。

 また、安倍首相を支える人々はそれぞれ65歳の安倍首相よりも年上、70代後半の麻生太郎財務大臣兼副首相であり、二階俊博自民党幹事長、70代前半の菅義偉官房長官である。以前であれば、それぞれの派閥内部で内部闘争が起き、跡目相続や現在の領袖の追い落としがあった。しかし、長期政権を支える、惰性を言い換えた「安定」のために、これらの人々は世代交代の恐れを抱くことなく、権力をふるうことができた。そして、自分たちの派閥を大きくすることに成功した。しかし、結果として、自民党内部にはニューリーダーは育たず、世代交代もうまくいっていない。また、急激に議員数が増えたために、いわゆる入閣適齢期と言われる議員たちが60名もいる状態で、沈滞ムードである。自民党も日本も惰性の中で、ある種の安眠を貪り続け、活気と成長力を失った。

 安倍首相は総理の座からは退くが、国会議員は続けるという意向を示した。キングメイカーとして影響力を残すということが一般的に考えられるが、まだ65歳ということを考えると、再登板ということも視野に入れているのではないかと思う。今回は「政権投げ出し」という批判が起きないように、きちんと病気について説明した。病気が絡むと批判がしにくくなることも狙ってのことだろう。心身ともにボロボロになってどうしようもなくなっての退陣という感じは昨日の会見からは受け取れなかった。余力を持って辞めることで、キングメイカー、上皇として院政を敷く、また、再登板も狙うということもある。自民党内部の世代交代が成功しておらず、人材も育っていない現状もある。

 次期自民党総裁、首相選びについては、党員票の比率が高い総裁選挙方式なのか、議員票の比率が高い両院議員総会方式なのか、で割れている。下の記事にあるように、二階幹事長は両院議員総会方式を考慮している

(貼り付けはじめ)

●「自民、後継首相を15日にも選出へ 両院議員総会の方向 石破氏は31日に出馬表明へ」

8/28() 19:58配信 産経新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/8c178f5e2968c38ad65ecba56e4ffc9e201f5367

 自民党は安倍晋三首相(党総裁)の後継を選ぶ総裁選について、手間のかかる党員・党友らの直接投票は行わず、国会議員らの投票で決める両院議員総会で選ぶ方向だ。党幹部は、15日の投開票を軸に調整していることを明らかにした。党内では、首相を一貫して支えてきた菅義偉官房長官の登用を求める声があるほか、知名度の高い石破茂元幹事長は31日に出馬表明する方向だ。首相が本命視してきた岸田文雄政調会長も出馬準備を進めている。

 総裁選の方法は、9月1日の総務会で正式決定する見通しだ。二階俊博幹事長は、今月28日のTBSの番組収録で、「そのときの状況によって緊急の手段を講じていく」と述べ、両院議員総会での選出もあり得るとの見方を示した。

 党則では、総裁が任期中に辞任した場合は、両院議員総会での選出が認められ、選挙人は国会議員と都道府県連の代表3人とされている。任期は前任の期間を引き継ぐ。今回のケースは来年9月までとなる。

 党員投票まで含めた総裁選は、候補者による大規模な全国遊説を行うことが通例で、準備にも一定の時間を要する。逆に、両院議員総会で選ぶ場合は簡素化が可能で、平成20年の総裁選では、福田康夫首相(当時)の辞任表明から麻生太郎新総裁(同)の選出までを約3週間で済ませた。

 ある党幹部は新型コロナウイルス対策も念頭に「党員投票まで含めた総裁選をする余裕はない」と語る。

 後任は、新型コロナ対策に継続性を持たせるため「菅氏をワンポイントリリーフとして登板させればいい」(閣僚経験者)との声がある。岸田氏も、前回の30年総裁選で出馬を見送っただけに、今回は不退転の決意で手を挙げる考えだ。

 ただ、石破派(水月会)幹部は、石破氏が世論調査で高い支持を得ていることから「党員投票も含めた総裁選を行い、堂々と勝った人が首相をやるしかない」と両院議員総会での選出に異論を唱えた。

(貼り付け終わり)

 現在のところ、次期総理総裁の候補者としては、岸田文雄自民党政調会長、石破茂元自民党幹事長、河野太郎防衛大臣の名前が挙がっている。二階氏が主導して両院議員総会方式でということになれば、派閥の意向が大きく影響することになる。現在、自民党の最大派閥は、細田派(実質安倍派)、麻生派、竹下派、二階派、岸田派、石破派、石原派という順番になっている。細田派、麻生派、二階派で岸田氏を擁立して両院議員総会で決めるということが考えられる。石破氏は国民的人気の高さから党員票の割合が高い総裁選挙方式を主張している。麻生氏と二階氏が話しをつけて、両院議員総会で岸田氏選出という形が今のところ考えられる。岸田氏は人と喧嘩をするタイプではなく、派閥の岸田派、宏池会も伝統的に「お公家様集団」と呼ばれるように武闘派は少ない。そうなれば、麻生氏と二階氏の院政ということになる。そうなれば国民的な支持を得られないということになる。そのような古臭い決め方では国民が納得しないだろう。

 安倍首相は記者会見の中で、次の方が決まるまではしっかりとやれるということを述べていた。臨時代行(麻生副総理)を置くことなく、最後までやると明言した(この点から私は安倍首相が余力を持って辞めるという印象を受けた)。また、次期総裁選びについても、時間をかけて制作孫朗をしても大丈夫、その間は私がきちんとやれるという発言もあった。私はこの発言から、安倍首相は麻生氏と二階氏をけん制していると感じた。ポスト安倍の動きにおいて、安倍首相自身が影響力を保持しようとしているとも感じた。

 長期政権となった安倍政権と安倍首相を総括すると、惰性という言葉しかない。その間に日本が酷い状況になったが、「安定」という惰性の裏返しの言葉のために、安倍首相は存在し続けた。全くもって無意味な8年間であった。

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 先月、ドナルド・トランプ大統領が新しい駐日米国大使にケネス・ワインスタイン(Kenneth R. Weinstein、1961年-、59歳)を指名したというニュースが流れた。前任のビル・ハガティは今年のテネシー州選出連邦上院議員選挙に出馬のために、2019年7月に辞任し、離日した。それ以降は正式な大使は空席で、代理大使はジョセフ・ヤング米国大使館首席公使が務めている。
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ワインスタインと安倍晋三

 ワインスタインはシカゴ大学で学士号、パリ政治学院で修士号(ソヴィエト連邦・東欧研究)、ハーヴァード大学で政治学博士号を取得している。学者として立派な経歴だ。思想としてはネオコン派に分類される。1991年にハドソン研究所でのキャリアをスタートさせ、2011年に所長に就任した。ハドソン研究所はワシントンDCにある保守系のシンクタンクだ。日本では、元NHKのワシントン特派員で作家の日高義樹氏が研究員をしていることでも一部で知られている。ドナルド・トランプ大統領とも関係が深く、貿易政策や貿易交渉に関する顧問委員会のメンバーにもなっている。

 ハドソン研究所では2019年に日本部(Japan Chair)を創設し、日本部長として、HR・マクマスター元国家安全保障問題担当補佐官(ドナルド・トランプ政権、2017-2018年)を招聘した。マクマスターは陸軍中将から現役のままで補佐官となったが、最終的にはトランプから更迭された。その際に大将への昇進を見送られるという屈辱もあった。ハドソン研究所は軍事研究も盛んで、軍や軍需産業とも関係が深いので、マクマスターは招聘されたということになる。安倍晋三首相や小泉進次郎環境大臣といった日本側の要人もワシントンDC訪問の際にはハドソン研究所に立ち寄り、講演を行っている。
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H・R・マクマスター
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ワインスタインと小泉進次郎
 トランプ大統領の日本に対する考え方は、「あいつらは不公平な貿易慣習や制度を用いてアメリカから金を奪っている。アメリカの対日貿易赤字を何とかしなければならない。そのためにはアメリカ製品を買わせるに限る。しかも大きいものをだ。それには戦闘機やミサイルなど兵器が一番だ」というものだ。ワインスタインはそのための代理人ということになる。

 新型コロナウイルス感染拡大の収束の時期が不明であり、ワインスタイン氏の連邦上院による人事承認もいつできるか分からない。承認は簡単に降りるだろうが、その時期が不透明となると、日本にやってくる時期も分からないということになる。日本の感染拡大が落ち着かないと来られないということになると、今年中は無理ということも考えられる。そうこうしているうちに11月の大統領選挙でトランプ大統領がジョー・バイデン前副大統領に敗れるということになれば、ワインスタイン氏もさすがに日本に来ないまま辞任することはないだろうが、短期間で駐日大使を終えるということも考えられる。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領は駐日本米国大使にケネス・ワインスタインを正式に指名(Trump formally nominates Kenneth Weinstein as ambassador to Japan

タル・アクセルロッド筆

2020年3月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/487540-trump-formally-nominates-kenneth-weinstein-as-ambassador-to-japan

トランプ大統領はケネス・ワインスタインを駐日本米国大使に正式に指名した。金曜日午後、ホワイトハウスが発表した。

ワインスタインはワシントンDCにある保守派のシンクタンク「ハドソン研究所」の会長であり、最高経営責任者である。また、米国通商代表部に助言を行う貿易政策・交渉に関するアドヴァイザリー委員会の委員も務めている。

ハドソン研究所の責任者を務めている期間、ワインスタインはハドソン研究所の日本部長職を発足させ、HR・マクマスターを日本部長に起用した。マクマスターはトランプ大統領の安全保障問題担当大統領補佐官を務めた。

連邦上院から承認を得なければならないが、ワインスタインはビル・ハガティの後任の大使となる。ハガティは昨年大使を辞任した。そして、引退するラマー・アレクサンダー連邦上院議員(共和党)に代わって今年のテネシー州連邦上院議員選挙に出馬する。

トランプ大統領が就任直後に日本との不公平な貿易に関する合意について批判する発言を行ったことで、アメリカ政府と日本政府との関係に高い関心が集まった。しかし、トランプ大統領は日本の安倍晋三首相との良好な関係をアピールしている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

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 古村治彦です。

 日本の安倍晋三政権とアメリカのドナルド・トランプ政権との間で貿易交渉が行われ、アメリカ側に得るところが多く、日本側に得るところがほとんどない内容で合意がなされた。日本側はアメリカ側の農産品に対する関税を段階的に引き下げる一方、アメリカの自動車輸出に関して関税引き上げをしないというアメリカ政府からの確固とした言質を取ることに失敗した。
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アメリカはTPPから脱退したが、TPPに入っていた場合と同等の日本への悪説のしやすさ(関税の引き下げ)を手にすることができた。日本の完敗ということになる。安倍晋三首相が何とかしようとアメリカのドナルド・トランプ大統領から何とか妥協を引き出そうと媚態を駆使していたことは外側から見るとよく分かるようだ。
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 下の記事は、日米交渉について網羅されている。貿易交渉と共に日本駐留の米軍に対する日本政府からの「思いやり予算」の4倍増(20億ドルから80億ドル)の話も絡めて書かれている。簡単に言えば、日本側はアメリカら押されっぱなしということである。アメリカ政府は韓国政府に対しても、駐留経費負担の増額を求めたが、韓国政府は明確に拒絶した。

 日本にとっての生命線は自動車輸出だ。アメリカへの輸出の20%を占めているし、自動車会社が支えている人々の数を考えると、まさに日本経済を支える柱だ。トランプ政権は、日本からの自動車輸出を「国家安全保障上の脅威」と言い出し、だから関税を引き上げることもありうると日本側に脅しをかけている。その脅しに屈した形だ。貿易合意の中で、確固とした文書で関税引き上げを行わない、という一札を入れさせることができなかった。と言うことは、これからも貿易交渉があれば、自動車への関税引き上げを脅しとして使われることだろう。

 また、日本側からの思いやり予算の4倍増もアメリカから脅されて無理やりにでも飲まされることになるだろう。6000億円の増額ということになる。日本周辺の脅威を過剰に煽り立ててアピールすることで、日本側から金を引き出すという、チンピラまがいのやり方をアメリカ側はしている。アメリカも昔ほど余裕はなくなり、背に腹は代えられないとばかりにこうした脅しをしてくる。

 こうした脅しに対しては、粘り強く交渉を長引かせるということが大事だ。そうしたことが1980年代まではできていたが、今では日本側の交渉担当者が一体どちらの味方なのか分からないという状況になっている。脅しに対しては「柳に風」「気に入らぬ風もあろうに柳かな」という態度で接するべきだろう。しかし、今の日本の状況ではそういうことができる人材もいないし、最高指導者層もとうに諦めているし、こうした上級国民がアメリカの手先となっている。年末に来年のことを話してももう鬼が笑うこともないだろうが、日本の将来はますます暗くなるということだけは確かだ。

(貼り付けはじめ)

日本は貿易に関してトランプ大統領を信頼して後悔している(Japan Regrets Trusting Trump on Trade

―貿易交渉によって日本政府はより多くを与え、より少なく手に入れた

ウィリアム・スポサト筆

2019年12月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/12/05/tokyo-abe-japan-regrets-trusting-trump-on-trade/

日本は、アメリカ大統領ドナルド・トランプと交渉をしようとする際のリスクを人々に改めて思いをいたさせる。日本側はアメリカのドナルド・トランプ大統領との交渉を使用とする場合のリスクについて気づくことができなかった。しかし、日本は交渉を行い、合意に達した。日本はアメリカとの貿易交渉で何も獲得しないままで合意に達したように見えたが、日本政府は今になって更に駐留アメリカ軍基地の特権に対する支払いについて交渉を行うように求められている。

貿易と駐留米軍基地に関して、日本は切り札が少ない中でできるだけ努力をしなければならないという難しい仕事をこなさねばならなかった。貿易に関する合意の中で、日本はアメリカからの農産物輸入に門戸を開放した。これによって門戸が閉ざされてきた市場(訳者註:日本)にアクセスできることでアメリカの農業従事者たちにとって利益となる。この市場(訳者註:日本)では消費者たちは平均よりも高い値段を払っていた。一方、日本は何も持ち帰ることがなかった。アメリカ政府が日本からの自動車の輸入を国家安全保障上の脅威とはとらえないと明言して欲しいと日本側は望んでいたが、曖昧な約束がなされただけだった。アメリカ政府は日本の自動車輸出を国家安全保障上の脅威と捉え、懲罰的に25%の関税をかけることを検討している。

一方でアメリカは満足して交渉の場を後にした。テーマとなった多くの物品において、アメリカ国内の製造業者たちは12か国による環太平洋経済協力協定(Trans-Pacific PartnershipTPP)内と同様のアクセスを確保できることになった。トランプ大統領は就任直後にTPPからの離脱を決定した。今回の貿易合意は牧場経営者たちにとって恩恵となった。彼らは中国との貿易戦争に苦しんだが、日本の国内産牛肉よりもより低いコストを武器にすることができる。アメリカ側は低い関税率は年に70億ドル分の農産物にかかることになると述べている。しかしながら、利益はすぐに出る訳ではない。牛肉にかかる関税はこれからの15年間で現在の38.5%から段階的に9%にまで引き下げられることになる。ブドウ園にとっては、ワインに対しての関税率が2025年までに現在の15%が撤廃されることで牛肉農家よりもより大きな利益を得ることになる。

他方、日本にとっての利益はアメリカに比べてかなり不透明だ。蒸気タービン、楽器、自転車のようないくつかの特定の製品の関税引き下げは別にして、日本の安倍晋三首相が日本国内に示すことができるものは多くはない。

日本側からの主要な要求は、トランプ大統領が日本からの自動車輸出に対して関税を引き上げるという脅迫を実行しないという保証を得るというものだった。今年5月にトランプ政権は日本とヨーロッパからの自動車輸入はアメリカにとって国家安全保障上の脅威となるという決定を下した。従って、関税引き上げの可能性は消え去っていない。日本側にはトランプ政権に対する疑念が存在する。しかし、長年にわたり日米安全保障関係は最強のものだということは考えられてきた。

日本からアメリカへの自動車輸出は1986年の段階に比べて半分程度になっている。1986年の段階では日本の自動車各社は北米で巨大な生産設備を備えていなかった。日本からアメリカへの自動車輸出は、日本からアメリカへの輸出の20%を占めている。トランプ大統領が引き上げると脅している関税率のレヴェルになってしまうと、日本からアメリカへの輸出には大きなダメージとなる。

日本側はこの微妙なテーマについて確固とした内容の文書を得ることができなかった。ただ、「日米両国はこれらの合意の精神に反する手段を取ることはしない」というあいまいな文が書かれているだけだった。日本の茂木敏光外務大臣が交渉を監督していた。茂木外相は記者団に対して、トランプ大統領は安倍首相に対して「合意内容が真摯に実行される限りにおいて」関税引き上げを行うことはしないという口頭での約束を与えたと述べた。

トランプ大統領やアメリカ側への信頼感が低下していく中で、多くの疑問が出てきている。日本のマスコミは、安倍首相がトランプ大統領の歓心を買うために配慮を行ったがそれで日本側に利益がもたらされたのかどうかという疑問を呈している。安倍首相はトランプ大統領をいち早く支持し、少なくとも表面上は忠実な支持者であり続けてきた。トランプ大統領の予想外の選挙での勝利の後、安倍首相は外国の指導者の中で最も早く面会した。それから少なくとも10回は2人で会談を持った。今年5月、日本の徳仁天皇が即位して最初に会談を持った外国の指導者という名誉をトランプ大統領は与えられた。

このことは日本国内で議論を巻き起こした。日本のリベラル派はポピュリスト的でナショナリスティックな政策を強く主張している。日本の保守派はトランプ政権の反移民、反中国政策により共感を持っている可能性はあるが、しかし同時に、こうした人々は日本の指導者が公の場で媚びへつらう姿を見せることを目撃することを嫌う。

トランプ大統領は安倍首相のごますりを額面通りには受け取っていないようだ。2018年、トランプ大統領は次のように警告を発した。「私は日本の安倍首相やそのほかの人々と会談を持つ。安倍首相は素晴らしい人で、私の友人だ。彼らの顔には笑いはほとんど出てこないだろう。そして、彼らが笑う時は“アメリカを長い間利用して自分たちの利益を得ることはできないと確信した、そんな日々はこれで終わりだ”と感じる時だ」。

そして予想された通り、トランプ政権はギアをすぐに入れ替え、貿易問題から、アメリカ軍将兵と基地への日本側の支払いという微妙なテーマに重点を移した。アメリカ軍は5万4000名の将兵を日本に駐留させている。その約半分は沖縄に駐留している。沖縄本島の18%を使用している。沖縄の住民たちから長年にわたり怨嗟の声が上がっているのは当然のことだ。

アメリカ軍の大型駐留は日米軍事同盟の大きな部分である。日米軍事同盟は1960年に公的に成立し、定期的に更新され、範囲が拡大している。日米同盟によって、日本側にはアメリカによる防護が与えられる約束が与えられている。それには核の傘が含まれている。これは日本の平和主義憲法を保ち、核武装の意図を放棄するための重要な要素である。

アメリカにとって、日米軍事同盟の意義は、ロシア、中国、北朝鮮といった核武装している近隣諸国の中で裏切る可能性のない同盟国を獲得したということになる。加えて、日本側は米軍基地の土地を提供したが、これらの基地は朝鮮戦争やヴェトナム戦争にとって便利な場所になった。そして現在、アメリカが中国を次の軍事上のライヴァルと捉えている中で戦略上の恩恵となっている。しかしながら、トランプ大統領にとっては、韓国国内同様、日本国内の米軍基地はコストであり、これをアメリカのバランスシート上の利益に変えたいと望む存在である。

『フォーリン・ポリシー』誌で既に報じられているように、アメリカ政府は日本側からの貢献額を20億ドルから8億ドルへと4倍増するように求めている。これに加えて、日本は間接的なコストの支払いをしているが、その額は推定で12億ドルだ。それは基地建設のコストも入っている。日米両国政府はコストの詳細な内容を発表していないが、日本がこれ間に支出したのは推定で全コストの75%に上ると推定されている。これが意味するところは、貢献額の4倍増はアメリカ側にとっては素晴らしい利益となるということだ。米軍関係者が日本からの利益からのボーナスを受け取ることが出来るかどうかという問題は置いていても、より明確になったのは、アメリカ外交は取引でいかようにも変わる性質を持っているということだ。

ドル(もしくは日本円)によって動かす外交は日本側にとって新奇な概念ではない。日本側は外交を経済的な利益を拡大するために長年にわたり利用してきた。貿易交渉の中で、媚びへつらう態度を取ることが日本の自動車会社を守るための低コストの方法であることを示している。安倍首相はアイゼンハワー政権のチャールズ・E・ウィルソン国防長官の国家と資本主義を結合させることについての有名な(しかし誤って引用されている)発言を引用し、トヨタにとって良いことは日本にとって良いことだと結論付けた。この文脈の中で、自分をゴルフ友達だと卑下することに終始した不快な時間はどんな意味を持つだろうか?

貿易交渉において、日本側は「吠えなかった犬(訳者註:あって当然のものがないことを重要視する)」について重点を置くことが可能だった。トランプ大統領にアメリカの農業従事者の利益について自慢させながら、日本側は日本円の価値について何も言及していないという事実について沈黙を守った。

2012年に安倍首相が就任して以来、日本銀行は貨幣量の拡大を通じて経済を再膨張させるという前代未聞の施策を実行してきた。これによって日本円の価値は極めて低くなった。安倍首相が就任当時には1ドルが86円だったものが現在では109円になっている。

日本政府はこれについて様々な形で正当化をしている。日本銀行の施策は25年も続く経済におけるデフレーションと戦っていると主張している。同時に、円の価値低下は輸出業者にとっては追い風となっている。これによってトヨタをはじめとするその他の輸出企業がアメリカの輸出する際に価格を24%引き下げることができるようになった。

日本側は将来の自動車輸出への関税についての明確な約束を得ることに失敗したが、関税引き上げが行われる可能性をとにかく低くすることはできた。ここ3年間でトランプ大統領について1つ明確になっていることは、その瞬間の状況に合わせることに躊躇しないということだ。最終的に、交渉力は政策の公平性よりも重要だということになる。

日本にとってより不気味なことは、日米両国は交渉を継続することに合意していることだ。そこで日本政府は自分たちが良く知っているゲームを再び行うことになるだろう。それは交渉の相手側がうんざりするか、交渉のテーマとなった問題が亡くなるまで交渉を長引かせるという日本側得意の戦略を再び持ち出すことだ。モトローラ社の携帯電話を日本で販売できるかという問題は1980年代を通じて長く続いた問題となった。これは長年続いた交渉の後に、歴史的な補足となって日本側に残った。日本の経済産業省の官僚たちは、どんな合意も最終的なものではなく、長くゆっくりと続く交渉買い手の準備をするという考えを持っていた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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