古村治彦です。

 古い記事で恐縮だが、オバマ・バイデン政権における外交政策と安全保障政策は失敗だったとする記事をご紹介する、記事の著者はトランプ支持者であり、バイデンに対して徹底的に批判的だ。その骨子は次の通りだ。「(1)バイデンは上院議員時代に中国のWTO加盟を推進し、中国の経済成長を促し、結果としてアメリカの失業を増やした。(2)上院議員時代にアフガニスタン戦争とイラク戦争に賛成票を投じた。両戦争での米軍の戦死者数7037名、負傷者数5万3117名、浪費された戦費6兆4000億ドル(約704兆円)となった。(3)オバマ・バイデン政権時代にテロリスト組織の数は増加し活動は活発化した。(4)ロシアのクリミア併合を発生させた。(5)リビアで誤った政策(カダフィ大佐の追い落としと殺害)を行ったことでアメリカ外交官が殺害され、リビアは党勢の取れない破綻国家となった。(6)イスラム国の勢いを止められなかった。(7)中国のサイバー上での窃盗行為を許し、盗まれた情報が対アメリカ攻撃に使われた」。

 記事の著者の主張に対しては全ての点で同意できないが、オバマ・バイデン政権の8年間の分析内容はなるほどと思わせるものがある。バイデンはこうした批判もあって、対中、対ロシア強硬姿勢を取っているのだろうと思う。弱腰だと批判されて、今度はその反対の強硬姿勢を取るというのは、馬鹿がやることである。本当に頭が良くて、慎重な人間は常に最悪を想定して、そうしたことにならないように、中間的かつ現実的な態度を取る。

(貼り付けはじめ)

アメリカは、オバマ・バイデン路線の外交政策に戻る準備ができているか?(Is America ready to return to the Obama-Biden foreign policy?

フレッド・ゲドリッチ筆

2020年10月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/national-security/522480-is-america-ready-to-return-to-the-obama-biden-foreign-policy

ジョー・バイデンは連邦上院議員と副大統領として、44年もの間、アメリカ政治に関わってきた。この間、バイデンは外交政策と国家安全保障の分野で多くの仕事をしてきた。連邦上院議員として行った複数の重要な採決での投票と副大統領としての仕事ぶりを精査すれば、バイデンが大統領になることに心から賛成するということはできない。賛成するどころではない。バイデンの仕事を調べれば、彼の投票と決断によって、アメリカ経済、アメリカの国家安全保障、国際的な平和と安全には悪影響が及ぼされたのではないかという深刻な疑問がいくつも出てくる。

2008年、民主党大統領選挙候補者バラク・オバマは、バイデン連邦上院議員(デラウェア州選出、民主党)を副大統領候補に選んだ。オバマは、この時点で36年にわたり連邦上院議員を務めていたバイデンを、外交政策についてトップクラスの権威である考えた。確かに、バイデンは12年にわたり、連邦上院外交委員会の幹部委員そして委員長を務めていた。オバマ政権の8年間、オバマ大統領はバイデン副大統領を、重要な安全保障にかかわる諸問題のほとんどで最高責任者に指名した。

アメリカ国民の多くは、オバマとバイデンが、ジョージ・W・ブッシュ政権とブッシュ政権を疲弊させたアフガニスタンとイラクでの戦争から、変化をもたらすだろう、この変化は好ましものとなるだろうと確信していた。オバマとバイデンは、世界の解決困難な諸問題の解決のために、国連や他の国際機関の利用を更に進める意向を示した。

オバマ政権で国防長官を務めたロバート・ゲイツは、バイデンの安全保障問題での判断について深刻な疑問をいくつも提示した。2014年にゲイツは『責務:戦時の長官として(Duty: Memoirs of a Secretary at War)』を出版した。その中で、ゲイツは「この4年間、彼(バイデン)はほぼすべての外交政策と国家安全保障問題で間違いを犯してきたし、現在もまた犯している」と書いている。

2000年、バイデンは、中国との貿易関係を正常化し、2001年の世界貿易機関への中国の加盟を促すというクリントン大統領の政策を支持し、それらに賛成票を投じた。中国の経済成長によって、約6万のアメリカの工場が閉鎖となった。

経済政策研究所(The Economic Policy Institute)は これらの決定によって、アメリカの370万件の雇用が失われ、それらのほとんど製造業部門における雇用だったと報告している。

2001年と2002年、バイデンはアフガニスタン戦争とイラク戦争に対して賛成票を投じた。この両戦争によってアメリカ軍将兵は7037名が戦死し、5万3117名が負傷した。2001年9月11日の同時多発テロ後の複数の戦争によって、アメリカの納税者の納めた税金6兆4000億ドル(約704兆円)が浪費された。アフガニスタン戦争でのアメリカ軍の死傷者の84%(2万3113名の内の1万9350名)はオバマ・バイデン政権の時期に発生した。一方、イラク戦争でのアメリカ軍の死傷者の95%(3万7041名の内の3万5182名)はブッシュ・チェイニー政権の時期に発生した。トランプ・ペンス政権では、全死傷者数の1%が発生した。同時多発事件以降の戦争で約80万の戦闘員と非戦闘員が亡くなった。約6000万人が居住地から立ち退かねばならなかった。アフガニスタン戦争とイラク戦争の初期段階では、アメリカ国民の多くは支持していたが、やがて人々は両戦争に疲れてしまった。

オバマ・バイデン政権の8年間の後に世界はどのようになったか?

経済学研究所と平和研究所の平和指数が示しているは、全体像としての評価である。平和指数によると、世界全体の平和はここ10年の間で減退し、テロリズムの発生はこれまでで最も高い程度になっており、ここ25年の中で戦闘において死亡した人の数は高くなっている。難民の総数はここ60年の中で最も高くなっている。

米国務省の報告書によると、2009年にオバマ、バイデンが政権の座に就いて以降、外国のテロリスト組織の数は34%増加している。そのうちの75%はイスラム教徒が国民の大多数を占める国々で活動を行っている。

フリーダム・ハウスの報告書によると、2016年の段階で、10年連続で、世界の自由度が下がっている。そして、報道の自由度は12年の間で最も低い程度になっている。世界に住む73億人のうち、40%だけが自由な生活を送っており、13%のみが報道の自由の中で生きているということになる。

オバマ政権の国家情報長官だったジェイムズ・クラッパーは、2016年のアメリカ諜報分野国際規模危機アセスメントでの報告の中で、世界の状況は深刻さを増しているということを認めた。

●オバマ・バイデン政権による外交政策上の重要な厄災は何であったか?

オバマ・バイデン政権は対ロシア政策を変更したが(2009年から2014年までの時期)、それは逆効果であった。2014年にロシアはウクライナからクリミアを奪い、自国に併合した。また、2015年にシリア内戦が発生し、ロシアはシリア国内でロシア軍の空軍基地と海軍基地を獲得する長期にわたる合意を取り付けることに成功した。

オバマ政権はリビア国内で誤った冒険的な政策を行った。それは厄災となった。ベンガジでは4名のアメリカの外交官が殺害され、リビアは破綻国家(failed state)となった。イラクから状況が落ち着く前に、早過ぎる米軍の撤退を行ったために、イラク国内に安全保障上の空白を生み出してしまい、結果としてイスラム国テロリスト・グループを拡大させ、2011年からはイラクとシリア国内において国土の獲得と人々へのテロ行為を許すことになってしまった。

2013年にマンディアント者が発表した報告書はオバマ政権の中国に対する弱腰によって、アメリカの宇宙、エネルギー、衛星、テレコミュニケーション関連技術が盗み出され、そうした情報を、経済、軍事、政治の各分野における妨害活動や戦争に利用されてしまっている、と指摘している。十分な安全対策を施すことに失敗したために、中国のハッカーたちは2015年にアメリカ合衆国人事局の複数のコンピューターに侵入し、2200万人以上のアメリカ人の個人データにアクセスすることに成功した。

トランプ大統領は任期の4年間、「アメリカ・ファースト」路線の外交政策を推進してきた。トランプ政権は、中国のサイバー上の窃盗と不公正な貿易方法に対峙した。また、ロシアからの攻撃から守るために東欧の同盟諸国との関係を強化し、ロシアの不履行を利用にして中距離核戦力全廃条約の一時停止を行った。イランとの核合意を放棄し、イラン革命防衛隊のテロリストたちの指導者を殺害した。イスラム国のカリフを殺害し、テロリストの指導者も殺害した。アラブの二カ国とイスラエルとの間の和平という、歴史的な中東における和平合意の実現に向けて動き出した。また、アフガニスタンとイラクからほぼ全ての米軍の将兵を撤退させるプロセスを開始した。

ジョー・バイデンはアメリカ国民に対して、オバマ政権のグローバリスト的外交政策に戻ることを示している。これらの政策の結果は、自由の後退、テロリズムの激化、終わりのない戦争、数万に及ぶアメリカ国内の工場の閉鎖、数百万人のアメリカ国民の失業ということになった。アメリカ国民がこれらの諸政策に戻りたいかどうかを決めるのは有権者次第ということになる。

フレッド・ゲドリッチ(Fred Gedrich)は外交政策と国家安全保障のアナリストであり、米国務省と米国防総省に勤務した経験を持つ。

(貼り付け終わり)
akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側