古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:希望の党

 古村治彦です。

 

 今回は少し遅くなりましたが、ヘリテージ財団のブルース・クリングナー上級研究員による先月の総選挙の結果に関する分析をご紹介します。

 

 クリングナーの分析を要約すると次のようになります。総選挙の結果、何も変化がなく、現状維持となり、安倍晋三政権が続投となった。良いタイミングで選挙ができたが、これは小池百合子東京都知事が失速したからである。アメリカにとって安倍晋三首相の勝利は歓迎すべきものであった。安倍首相は日本の海外における軍事的役割の増大を追求し、それに向けた改革を行っている。しかし、日本国民の抵抗もあって改憲は難しいと思われる。安倍政権は日米間の二国間の経済協力に関する合意でドナルド・トランプ大統領との関係を良好なものとしている。

 

 今回のトランプ大統領のアジア歴訪は日本から始まりました。日本では霞が関カンツリーでのゴルフとハンバーガーの昼食、ピコ太郎を招いた夕食会などが話題になりました。トランプ大統領は日本に対して対米貿易黒字(アメリカ側から見れば対日貿易赤字)の解消を迫る、そのために「日本の自動車会社にアメリカで自動車を作ってもらいたい」「日本の安全のために、アメリカから大量に武器を購入してもらいたい」と述べました。アメリカ大統領がここまで露骨に「武器のセールスマン」「死の商人」になったのは初めてのことでしょう。

 

 アメリカの貿易赤字の約半分は対中国で、対日は10%です。これも大きな数字ですが、1980年代の時の貿易戦争の時とは違います。それでも更なる貿易赤字縮小を目指して、アメリカの製品を買うように求めていますが、アメリカ製で日本が必要とするものは、農産物と武器くらいのものです。そして、アジア地域で不安定が続く限り日本は永久にアメリカから武器を買い続けなければなりません。そのような状態を脱するためには、アジア地域の安定を自分たちで実現することが必要ですが、そのように動けば邪魔をしてくるのがアメリカです。

 

 属国の悲哀、それをまた今回のトランプ大統領訪日でも痛感させられました。

 

(貼り付けはじめ)

 

日本の選挙結果がアメリカと東アジア地域に持つ意味(What Japan’s Election Outcome Means for the U.S., East Asia

 

「ヘリテージ財団」

2017年10月24日

ブルース・クリングナー(Bruce Klingner、北東アジア担当上級フェロー)

http://www.heritage.org/asia/commentary/what-japans-election-outcome-means-the-us-east-asia

 

●要点(KEY TAKEAWAYS

 

1.日本から遠く離れたアメリカからの視点からすると、日曜日に投開票された日本の総選挙は何も変化が起きなかった。

 

2.安倍首相の選挙の勝利は印象的なもので、日本の外交政策と安全保障政策にほぼ変化はないであろうが、選挙の結果はアメリカにとってありがたく、素晴らしいものであった。

 

3.アメリカは、固い決心を持つ日本の指導者安倍晋三氏の政権が継続することを歓迎する。安倍首相は北朝鮮に対する圧力を強めるうえで緊密なパートナーとしてやってきた。

 

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日本から遠く離れたアメリカからの視点からすると、日曜日に投開票された日本の総選挙は何も変化もなかった

 

日本の指導者は政権を維持し、与党は議会の絶対的過半数を維持し、日本の諸政策には何の変化も起きないだろう。

 

日本の有権者は現状維持の継続を選択した。しっかりとした経済成長の道筋を変更させたり、北朝鮮の脅威がこれまでになく高まっている中で試練を経ていない人物を新しい指導者に選んだりといったリスクを避けたのだ。

 

これは安倍晋三首相の支持者たちに安堵をもたらすことになるだろう。安倍首相の解散総選挙の決断は当初拙かったと考えられていたからだ。

 

安倍氏は今年初めから支持率の低下に苦しんでいた。それは、汚職に関する一連のスキャンダルと海外における日本の軍事的役割の拡大を許容するための憲法の変更を追求することが理由であった。

 

北朝鮮の好戦的な態度に対して安倍首相は決然とした態度を取っている。安倍首相は北朝鮮の核兵器とミサイル能力を向上させていることに対してより強力な手段を取ることを主張している。これによって支持率は改善しつつある。

 

安倍首相は、後ではなくこのタイミングで解散することはリスクが低いという結論を出した。このタイミングを逃すと支持率はさらに下がり、野党に共闘体制を築く更なる時間を与えることになった。

 

選挙に先立ち、小池百合子東京都知事は新党の創設を発表した。新党は与党と安倍氏に対する大きな挑戦として姿を現した。小池氏は次の選挙で総理大臣になる可能性があるとまで語られていた。

 

しかし、小池氏の輝きはすぐに消え去った。小池氏は選挙の結果を受けて、「今回の結果は完敗であるということを明確に述べたいと思います」という声明を発表した。

 

安倍首相の選挙の勝利は印象的なもので、日本の外交政策と安全保障政策にほぼ変化はないであろうが、選挙の結果はアメリカにとって素晴らしいものであった。安倍氏が長期政権を維持していることで安定をもたらしている。安倍首相以前の最近の首相は短期で後退していたので、安倍首相の長期政権は歓迎されている。

 

安倍首相は、国連安全保障理事会の決議を継続的に違反している北朝鮮に対しての圧力を高めることを信念固く主張し続けている。

 

日本は、北朝鮮が軍事力を増強し、日本政府が朝鮮半島有事の際にアメリカを炎暑するならば核兵器を使用すると繰り返し脅迫をしていることに対して、深刻な懸念を持っている。

 

北朝鮮は日本を飛び越えるミサイルを複数回発射した。これに対して日本は何もしなかった。これはこれまでと同じ対応だ。北朝鮮のミサイル発射によって日本においてミサイル防衛に関する議論が促進された。

 

安倍首相は防衛に対して様々な改革を行っている。これによって国際的な安全保障上の問題に対して日本の役割を拡大することができるようになった。これまでの防衛改革の中で最も素晴らしいものは集団的自衛政策を採用し、日本を防衛する米軍を日本が防衛することができるようになったことだ。

 

更に進めて、安倍首相は第二次世界大戦後の平和憲法を見直すための選挙を求めることになるだろう。しかし、改憲に対しては政治の世界と一般の人々の間に根強い反対があり、安倍首相はそれに直面している。安倍首相は彼が作り出した新たな現状維持を成文化させたいと思っているのか、それとも日本の海外での軍事的役割の拡大を追求したいと思っているのかは明確ではない。

 

安倍首相は、日本の人々の過半数がこのような変化に抵抗しているので、彼の意向に反して、大きな変化をもたらすことはできないだろうと思われる。

 

日本の近隣諸国もまた日本の海外における安全保障に関する役割が増大していることに懸念を持っている。これらの国々は日本の軍国主義的な過去が復活することに恐怖感を持っている。しかしながら、そのような恐怖感は、太平洋戦争後の日本の安全保障に対する姿勢に関する誤解から生じている。

 

北朝鮮がもたらす安全保障上の脅威は深刻化している。これに対して日本と韓国はより緊密に協力するようになっている。北朝鮮の脅威によって、両国は過去に関する論争を止め、現在の脅威を最重要課題とするようになっている。

 

安倍首相はドナルド・トランプ大統領と個人的、職務上の強固な関係を構築している。安倍氏は他の世界の指導者よりも緊密な関係をトランプ大統領と構築している。トランプは長年にわたり日本の制限された安全保障上の役割と貿易慣習に対して批判してきた。安倍首相はトランプ大統領からの批判を乗り越えることができた。安倍首相はアメリカの雇用と輸出を生み出す、大胆な内容の二国間の経済合意を提案した。これで批判をかわすことができた。

 

マイク・ペンス副大統領と麻生太郎副総理が主導した合意は、エネルギー分野と社会資本(インフラ)部門における協力を推進するというものだ。

 

アメリカは、固い決心を持つ日本の指導者安倍晋三氏の政権が継続することを歓迎する。安倍首相は北朝鮮に対する圧力を強めるうえで緊密なパートナーとしてやってきた。

 

安倍氏の再選はアジア地域のアメリカの同盟諸国の間で不安が広がっている中で行われた。同盟諸国は北朝鮮に対するアメリカの先制攻撃によって、自分たちが戦争に巻き込まれるのではないかという懸念を深めており、北朝鮮がアメリカを攻撃できる核弾頭を開発したら、アメリカは自分たちを捨てるのではないかという不安を持っている。

 

11月に行われるアジア歴訪中、トランプ大統領はアジアに関するより大きな戦略を明確に示すべきだし、日本と韓国に対して、アメリカが両国を防衛する責務を負っているということを再び確信させるべきだ。

 

※ブルース・クリングナー:北東アジア担当上級フェロー、朝鮮半島と日本を専門とする

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)









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 古村治彦です。

 

 昨日、自由党の小沢一郎代表が立憲民主党の枝野幸男代表と会談を持ちました。昨日は立憲民主党が党本部をお披露目した日でした。

 

 自由党の小沢代表は明日の国会で行われる総理大臣指名選挙で枝野氏に投票すると決め、その旨を枝野代表に伝えました。

 

 今回の総選挙において、小池百合子東京都知事によって希望の党が結党され、民進党の前原誠司代表が民進党全員による合流という提案を行い、そこから野党が分立する形となり、民進党は、希望の党、立憲民主党、無所属の会(民進党の党籍を持つ衆議院議員)、民進党(参院議員)に分裂しました。選挙戦も野党分立となり、結果として、自公に勝利を許す結果となりました。

 

 希望の党結党からの動きに関しては、小沢一郎氏も関与しているという話も伝えられました。そして、自由党や小沢氏に近い人々が希望の党から立候補するということにもなりました。しかし、これらの人々は選挙間近での国替えを求められ、全く活動したことのない地域での選挙戦を余儀なくされ、落選することになってしまいました。

 

 希望の党の結党に小沢氏が関与していた、シナリオを書いていたという主張に関して、私は本当だろうかという疑問を抱いていました。もしかしたら、小沢氏は名前を利用されただけで関与していないのではないかと私は考えています。

 

 小沢氏は今回の総選挙で野党共闘によって安倍政権を退陣させるという目標をもって活動してきました。そのために、民進党、共産党、社民党と話し合いを続けていました。そして、野党共闘が成立しかけていた訳ですが、希望の党が結党され、この枠組みは崩壊することになりました。希望の党は公明党や日本維新の会に秋波を送りながら、立憲民主党の候補者が立候補した選挙区にことごとく候補を立てました。

 

 今回の小沢氏の枝野氏との会談は、小沢氏の凄みを示しています。民主党が政権交代を実現させたのは小沢一郎氏の功績です。しかし、党内の争いのために小沢氏グループは離党し、民主党は衰退の一途をたどることになりました。この党内の争いには当時の執行部であった枝野氏も関与していると思います(ご自身はレッテル貼りだと言われています)。

 

 しかし、選挙後、新たな野党共闘に向けて、恩讐を捨てて枝野氏と会談を持ち、枝野氏に投票するということを言える小沢氏はやはり大人物です。希望の党の立ち位置がいまいちはっきりしない中で、まずは野党第一党である立憲民主党と協力関係を築き、自分たちを接着剤として共産党、社民党とつなげていく、そして、無所属の会や希望の会とも連携していくというところまで、小沢氏の視野に入っていることでしょう。

 

 小沢氏は、自分の置かれた状況の中で、悲憤慷慨も有頂天になることもなく、「今自分がすべきことは何か」を把握し、それを淡々と行うことができる、日本人では稀有な存在です。おそらく政治生命が尽きる時(それが肉体的な生命が尽きる時と同じになる可能性が大いにあります)まで、自分がやるべきだと思ったことを淡々と実行していく人でしょう。

 

 この点では、小沢氏は西郷隆盛とよく似た人物と言えるでしょう(ご自身は大久保利通のほうが尊敬できる部分があると述べていたように記憶しています)。

 

 安倍政権退陣と自民党の傲慢さの解消のために、野党共闘2.0がこれから始動し、機能することを願うばかりです。この時には失敗をしても停滞があっても、我慢をして続けることが重要なのだろうと思います。そして、それができる粘り強さを持つのが小沢一郎氏なのだと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

総理指名選挙 自由党は立憲・枝野代表に投票へ

10/30() 23:38配信 テレ朝 news

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20171030-00000057-ann-pol

 

 立憲民主党の枝野代表と自由党の小沢代表が会談し、自由党は来月1日に行われる総理大臣指名選挙で枝野氏に投票する方針を伝えました。

 

 立憲民主党・枝野代表:「首班指名で私の名前を書いて頂けると。大変光栄ですので、お礼を申し上げました」「(Q.小沢さんと枝野さんはかつて確執も?)それはマスコミが貼っているレッテルですから」

 

 会合は、小沢代表からの呼び掛けで行われ、立憲民主党からは枝野代表と福山幹事長が出席しました。枝野代表は、今後の自由党との連携について「今の政治状況を変えなければならないというのは同じ思いだ」と述べたうえで、「共通の目的があるので緊密に意見交換をしていきたい」と野党で連携して安倍政権と対峙していく考えを強調しました。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)








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  小池百合子東京都知事が公務でパリを訪問し帰国後に、希望の党の両院議員懇談会が開催されました。その場では今回の総選挙で当選した議員たちから小池氏の責任を問う声や代表辞任を求める声が出ました。そのほとんどが民進党出身の議員たちですから、「民進党の時もそうだったが、何かあると人のせいにする」というような批判が出ています。

 

 民進党出身者からすれば、民進党の看板では戦えないから、小池氏の人気に便乗して、民進党所属議員全員で出馬して頑張る、ということになっていたのに、それがご破算になってしまい、また、小池氏という数年前まで自民党の幹部議員として民進攻撃をし、自分たちは反対した実質改憲の安保法制を推進してきた人の下で戦うという苦渋の選択をしたのに、頼みの小池さんの人気が落ちてしまい、逆風まで吹くことになってしまった、ということで恨み言の一つでも言いたくなる気持ちは分かります。落選者はもっと言いたいことがあるでしょう。民進出身で当選してきた人たちはもともと地力があって、民進の看板でも当選できた可能性がある人たちが多いですから、「希望の党とは何だったのか」ということになります。

 

 そもそも今回の総選挙では、野党共闘で戦う準備が進められていました。その軍師は、自由党の小沢一郎共同代表でした。小沢一郎氏は、共産党も含めた野党共闘で安倍一強状態を打破するという「オリーブの木」構想を練りました。新潟では小沢氏に近い森裕子参議院議員をはじめ多くの方々が努力し、野党共闘が実現し、「新潟サプライズ」とも言うべき、野党側の勝利、自公側の敗北という結果が出ました。これが全国に拡大していれば、一強状態を崩すことは可能であったと思います。朝日新聞の報道では、野党共闘ができていれば約60の選挙区で結果が野党勝利になっていたという結果が出ています。しかし、野党共闘についていえば、希望の党が出てきたために、ご破算となりました。希望の党に関しては、小沢一郎氏も絡んでいたということでしたが、小沢氏が絡んでいて、こんな稚拙なことをするだろうか、野党共闘を崩すようなことをするだろうかと私はずっと疑問に思っています。民進党の前職を受け入れて立ち上げるところまでは話ができていたのに、それ以降、小池氏が出馬をして首相になるかどうかの決断を遅らせ、受け入れの民進前職の数を減らし、自由党系の人たちを冷遇、切り捨てた頃には、既に小沢氏は排除されていたのではないかと思います。

 

 これは私の勝手な考えですから笑って聞き流していただきたいのですが、小池氏は自公と野党側と両天秤をかけて、「どちらがより自分に有利な条件を出してくれるのか」ということを測っていたのではないかと思います。9月末の時点で敗北必至であった自公側は、野党分断という戦術の有効性を熟知していますから、小池氏にかなりいろいろな誘いをかけたと思います。「今のままなら小池さんが希望の党を率いて出てきたら、大勢力になる。そこで、安倍さんの改憲に協力してくれたら、ポスト安倍はあなたですよ。だけどそのためには民進党全員はまずいでしょうね。今ならずぶの素人新人でもあなたの勢いで通りますよ」くらいのことを言われてそれに乗ってしまったんでしょう。しかし、結局、失敗した、自公の口車に乗せられて失敗した、ということではないかと思います。これは私の想像ですから、「馬鹿な話だ」と笑って捨ててくださって構いません。

 

 こう書いては何ですが、各小選挙区でだいたい2万票あると言われている公明票を自民党が利用して勝利している、それならば、野党側は、多くいところで2万票、少なくとも1万票ある共産党の支持票を使わせてもらって、何とか自公に競り勝ちたい、これまでは非共産の野党と共産が協力してこなかったが、この枠組みが作れたら、自公に迫れるのではないかということだと思います。その成果はあったと思います。野党共闘は機能するということが証明されたと思います。

 

 しかし、希望の党を立ち上げた元民進メンバーたちは共産党との共闘に懐疑的、民進党の前原誠司代表も共産党となんか組めるか、という考えでした。今回の総選挙後、テレビに出た細野豪志氏や前原氏は共産党批判を展開しました。希望の党が野党共闘の枠組みを吹き飛ばして、いきなり野党第一党になろうとしたということです。しかも代表に小池百合子東京都知事を担いで、です。小池氏は2015年の安保法制、実質改憲の時は自民党所属の衆議院議員で、安保法制を推進した人物です。また、改憲に関しては安倍首相と同じ考えの人です。その人を支持するということは、実質改憲である安保法制に賛成し、この法律に合わせた憲法改悪に賛成するということになります。

 

 最近の世論調査を見ても、安倍首相が主張している改憲案に対して、賛成反対が拮抗しつつ、やや反対が多いという結果が出ています。そうなると、小池氏は改憲については安倍首相と考えが同じで協力できると述べているのですから、小池氏に対して反対する有権者の数は多くなります。確かに「排除」や「サラサラ」などの言葉や、小池氏のヘラヘラした態度が人々の反感を買ったということはあるでしょうが、これらだけが希望の党に逆風が吹いた理由ではなく、小池氏のこれまでの主張を人々が見聞きして、危険だ、安倍さんと一緒だということを認識したことも大きな理由となったと私は考えます。

 

 候補者がサインした政策協定書には、「2、現下の厳しい国際情勢に鑑み、現行の安全保障法制については、憲法にのっとり適切に運用する。その上で不断の見直しを行い、現実的な安全保障政策を支持する。4、憲法改正を支持し、憲法改正論議を幅広く進めること」と言った文言が見られます。第2条に関しては、「憲法違反である可能性がある安保法制を廃止も含めて見直す」野田から民進党と変わらない、ということになっています。しかし、民進党は「安保法制は憲法違反だ」と述べて反対したと思います。違憲の法律を「憲法にのっとり運用」するということができるのでしょうか。また、第4条の「憲法改正を支持し」とありますが、これはどういうことでしょうか。誰が主張する内容の憲法改正を支持するのでしょうか?小池氏は安倍首相と会見に関しては考えが同じですから、これについては、「小池氏が主張する、安倍首相と同じ内容の憲法改正の内容を支持する」と考えるのが自然です。これは民進党と同じことなのでしょうか。民進党は安倍晋三首相の下での会見は反対ではなかったでしょうか?

 政策協定書の文言については、小池氏と民進出身者両方が合意できる内容になっている、ということですが、そもそも、安倍氏の改憲と同じ考えで、かつ実質改憲である安保法制に賛成した小池氏と、それらに反対した民進党出身の人々との間で「合意」できる内容の文書というのは、「こうも読める、ああも読める」という霞が関文学のようなものです。頭の良い官僚や法曹関係出身の民進系の人が、ナイフのように切れ味鋭い頭脳で、「こうも読めるから民進党の時と同じ内容です」と言ったところで、「それじゃ、小池さんは考えを変えて民進党の政策を支持することになったんですか?」ということになります。「憲法改正を支持し」という文言で人質に取られても、「いやこれは決して憲法を変えることを意味しない」と言うでしょう。そういうところが有権者の支持を失った理由であると思います。

 

 希望の党に関しては、小池氏が後ろに下がって、民進党右派の人々が国会では主導権を握ることになるでしょうし、安保法制や改憲については小池氏よりも慎重な姿勢を取ると思います。そうなれば、より積極的な野党連携も可能であると思います。また、これから、日本の各政党がどのように動くかをこれからしっかりと見ていかねばならないと思います。

 

 これから、各政党、各政治家がどのように行動するかを自分ができる範囲で監視することが重要です。安倍一強状態を作り出したのは野党に責任がありますが、同時に私たち有権者にも責任があります。製造責任というか、そういうものがあると思います。

 

 衆議院は解散がありますが、参議院は3年おきに選挙があります。次は2019年です。国政に自分の考えを反映させるには次の2019年ということになります。長いようで短いものです。ですから、この時まで何が起きているか、何が自分の考えと違うかということを考えておくと、次の機会に投票しやすくなります。

 

「俺が投票に行くくらいに政治に関心を持たせろ(俺は投票に行っていない)」という芸能人がいました。彼は逆説的に政治に関心を持ってもらおうとしているのだという解釈をする人もいました。そうかもしれませんが、投票に行っていないということは実質的には与党支持、自公支持であることを述べていることと同じです。投票しないで野党支持ということはできないので、それだけでも与党に有利です。「持たせろ」という言葉は、お客様、消費者様の目線があります。「お客様は神様だろ、だから無理なことをしろ」と言っているのと同じです。デモクラシーにはお客様は想定されていません。政治家になろうとする人もそうではない有権者も参加者です。

 

 お客様の立ち位置を取ることで、自分が決めたくない、責任を取りたくないという気持ちがあるのだろうと思います。「お客様デモクラシー」になれば政治家は喜ぶでしょう。「お客様は何もしなくて結構ですよ、私たちでやりますから」ということになって、監視がなくなってやりたい放題、それでも選挙には通って議員の地位を確保できるということになります。そうなればお客様が一番損をするということになります。

 

 デモクラシーとはかくも難しい制度なのかということを改めて認識しています。

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12







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 古村治彦です。

 

 台風21号の接近、上陸の中、第48回総選挙の投開票が行われました。台風のために投票所の閉鎖時刻が早まる場所や、離島からの投票箱が届けられずに開票ができない場所が出てきました。このような状況では投票所の一時閉鎖と翌日の再開といった対処が必要ではないかと思います。台風のために参政権を行使することができない人がいるならば、その行使に全力を挙げるのが民主国家であると思います。

 

 選挙結果は、自公大勝ということになりました。現在のところ、自民党は公示前の勢力を維持、公明党は5議席減少、ということでほぼ公示前勢力を維持することに成功しました。自公だけで総議席の3分の2を獲得しました。自公に関しては、9月の段階では、勝敗ラインは過半数の233、その後、情勢調査が出て、絶対安定多数の261という話が、安倍晋三首相の側近・萩生田光一代議士から出ていましたから、まさに大逆転ということになりました。

 

 希望の党は公示前から8議席を失い、50議席前後、日本維新の会は4議席失い、10議席は確保、という結果になりました。立憲民主党は公示前15議席から約40議席を伸ばして54議席、共産党は21議席から9議席を減らして12議席、社民党は1議席は確保していますが、比例でどうなるか、分からない状況です。今回、民進党から無所属で出馬した候補者は20名以上が当選しました。比例復活がない中で当選してくるのは地盤が強いということになります。

 

 選挙速報の中で、共同通信や時事通信は、自民、公明、希望、維新を「改憲勢力」としてまとめ、この勢力で310議席を超えたという速報を打ちました。確かにこれら4つの政党で465議席中370議席という大きな数字を占めることになりました。希望を抜いても自公維で310議席以上320議席に迫る数字となっています。

 

 自公大勝、改憲勢力大勝ということになりました。野党は惨敗という結果になりました。しかし、9月から10月の初めにかけて、この言葉は、自公惨敗、希望大勝となるはずでした。安倍首相が解散を決断し、総選挙の投開票日が10月22日とされたころを思い出してみれば、安倍首相には森友学園小学校や加計学園岡山理科大学獣医学部の新設に絡む問題が付きまとい、安倍政権の支持率は下がっていました。そうした中で選挙をして、自民党は大丈夫なのか、過半数割れもあるという話になっていました。実際に9月末の状況では、自公で250議席を確保するのではないか、と言えば、「お前の予測は甘い、自公は過半数割れするのだ」という叱責を受けることさえありました。この時、私は自公で250、希望で150、それ以外で65ということになるのではないかと考えていました。かなりおおざっぱですが、希望が勝つだろうと思っていました。自公が公示前よりも40も50も減らせば、安倍首相の責任問題になって政権は持たないだろうし、それ以上の数字となれば倒閣運動が起きるのではないかと考えていました。

 

 しかし、私は同時に希望の党に懐疑的、批判的でありました。それは、このブログでも書きましたが、小池百合子東京都知事が安倍晋三首相と思想的に何の違いもないことやアメリカのジャパン・ハンドラーズとも関係が深いことを挙げて、希望の党は本当に自民党と対抗する野党なのだろうかということを書きました。小池都知事は、首班指名に関して、公明党の山口那津男代表の名前を挙げてみたり、維新との連携を図ってみたり、自民党との選挙後の連携、特に安全保障政策について連携する可能性に言及するなどの行動や言動を行いました。そして、選挙の候補者名簿を見てみれば、公明党が重視し候補者を出している小選挙区、日本維新の会(大阪の選挙区)、自民党・石破茂代議士に近い議員の選挙区には候補者を擁立せず、立憲民主党に対しては律儀なほどに対抗馬を立ててきました。

 

 思い出していただきたいのは、希望の党の結党から10月10日頃まで、希望の勢いは大したもので、立憲民主党は酷いものでした。「立憲民主?なんじゃそりゃ?潰してやるよ」という鼻息の荒さでした。希望の党は15議席も守れないだろうなというのが、10月10日に大宮駅西口での枝野幸男代議士の演説を聞いていた時の私の感想でした。同じ日の数十分前には小泉進次郎代議士が来ていて、その時の人の集まり具合を見ていたので、やはりそれよりも少ない人数でしたので、特にそう思ったのかもしれません。

 

 選挙戦が始まってみれば、安倍政権に対する支持率は上がらないが、自公が300議席をうかがう勢いという情勢調査の結果が出てきて、驚かされました。289の小選挙区の情勢を丹念に調査していけば、ある程度確度の高い分析ができるのでしょうが、それでもいくら何でも300は、と驚かされました。そして、希望の党の失速もまた驚くばかりのものでした。都知事選挙や都議会議員選挙の時の勢いはなくなっていました。

 

それはマスコミが面白おかしく報道したこともあるでしょうが、そのような報道をさせる隙を作ったのは小池都知事と希望の党であるし、何より、希望の党の曖昧さというか、どこか信じられないというところが有権者にあったと思います。小池都知事にマスコミは何度も総選挙への出馬はないかということを質問しました。私はどうしてそう何度も質問するのだろうか、小池さんは出馬は100パーセントない、と述べているのに、と思っていました。このパーセントを使った表現に関しては、小池さんにかわいそうな面があって、橋下徹氏が選挙に出る、出ないというときに%という表現を使って出馬はないと述べたが、結局出馬したということもあって、パーセントを使ってしまうとどうしても信用できないという印象が持たれやすくなっている状況もあって、これは小池さんには気の毒なことでした。しかし、彼女の煙に巻くような、少しすかした、馬鹿にしたような発言や行動は他にもあって、それが報道されて、希望の党への支持が伸びなかったということもありましょう。

 

 私は希望の党が無理やり過半数の233人の立候補者を立てたことに疑問を持ちました。そして、その中身を見て、憤りを覚えました。選挙はやはり勢いや風ではうまくいきません。国政選挙、特に総選挙では有権者は特に慎重になります。日頃から地道な活動をしているから応援してやろうということになります。どうしてもそうなります。それなのに、その選挙区から代議士となっている人、代議士となった経験がある人、選挙に備えて地道に活動してきた人たちに対して、選挙区の変更が指示されました。自由党に属していた人や小沢一郎代議士に近いと言われている人たちからそのような人が多く出て、私はどうしてそんなことをするんだと憤りを覚えました。

 

樋高剛氏という人物がいます。樋高氏は小沢一郎代議士の秘書として研鑽を積み、生まれ育った神奈川で代議士を目指し、3回の当選を経験した人物です。義父は平野貞夫元参議院議員で、小沢氏の側近と言える人物です。2012年、2014年に苦杯をなめましたが、地道に活動を続けていました。しかし、樋高氏は今回千葉県の選挙区から立候補し、落選しました。いきなりの国替えで、名前を覚えてもらうところから始めてよく3万6000票も獲得できたものだと思いますが、これでは人材の無駄遣いです。このような例はほかにもあります。そして、立憲民主の候補者がいる場所には律義に広報車を立てて、自民批判票を分割して共倒れ、希望の党のほうが獲得票数が多い小選挙区が少なく、立民支持者からは「希望が本当に邪魔だったなぁ」という嘆き節が出てくる始末でした。

 

 しかし、このような嘆き節が出るはずではなかったのです。希望が少なくとも100議席は獲得、うまくいけば150議席だ、ということになっていたを思い出すと、どうしてこうなったのかということを今更ながらに思います。そして、小池都知事の振りまいた幻影と風が今回の総選挙では自公を利しました。小池都知事の吹かせた風が逆風となって希望の党に吹き付け、前進を阻んだということになります。小池氏が自民党を助けるために、希望の党を作って野党を分断したということまでは言いたくありませんが、結果としてはそうなってしまいました。意図してそうしたかどうかは分かりませんが、外形上そうなってしまいました。

 

 野党、安倍政権批判勢力が大敗したことは間違いありません。野党が分立し、しかも野党の核となるであろうと考えられていた希望の党に逆風が吹く中ではいかんともしがたいということになりました。立憲民主党は現有から40議席伸ばしましたが、これを喜ぶことは当然ですが、浮かれてはいけないと思います。支持者で浮かれている人は少ないでしょう。希望、民進系無所属、共産、社民といった野党、維新という「ゆ党(野党でも与党でもない)」、自公という与党の中で、自分たちの立ち位置を確かめ、これから支持を拡大していくという作業が必要になります。参加しているプレイヤーが多くなるとどうしてもその作業は複雑なものとなります。ここで失敗すると順風から逆風になりますし、その変化の速さは希望の党が今回示しました。

 

 総投票数、各政党の獲得票数といったことをこれから見ていかねばなりませんが、自民党に対する票数が全投票数に占める割合は、議席に占める割合である約60%を大きく下回っているでしょう。野党が分立してさえいれば、漁夫の利で自公が勝利する、ということを2012年からずっと見せられてきました。野党共闘の枠組み作りが全国各地で進められてきましたが、結局それはうまくいかないということになりました。

 

 前原誠司・民進党代表は野党共闘路線ではなく、希望に全員合流して、一気に巨大政党を作り上げることをもくろんだのでしょう。しかし、希望の党の結党メンバーには民進党のリベラル派が嫌で離党した人々が多く、とても全員が合流できる状態ではありませんでした。また、安保法制であれだけ反対していたのに、希望の党から出るということは、その時との整合性を問われるということになります。自公からそのような戦いを強いられたら、厳しい戦いになったことは間違いありません。また、小池氏は自分の子飼いを増やすということもあったでしょうから、民進系は厳しい処遇をされたことでしょう。自由党から言った人たちに対する扱いを見ればそのように思わざるを得ません。

 

 希望の党にも行けない、行っても厳しい、当選も難しいという「負け犬」たちが作ったのが立憲民主党です。しかし、この立憲民主党に支持が集まってしまったのです。これは安倍政権もいや、だけど、小池都知事もいやという人たちの受け皿となりました。私はこれまでずっと枝野幸男という政治家に批判的でした。しかし、安倍晋三、小池百合子、枝野幸男と並べられて、誰を支持するかと問われたときに、枝野幸男という選択しかありませんでした。「立民は現有維持できないだろうな、いやできるかもしれない、へー20台獲得という話も出ているのか、倍増の30?本当に?、40台なんてそんな馬鹿な」という感情の変遷がありますので、立憲民主党が50台を獲得できたことはうれしいですが、はたしてこれからどうしていくのか、いけるのかということには不安もあります。

 

 自公は自分たちへの支持が増えなくても、野党が分立してくれれば勝てるという基本戦略を確立しました。それに対しての対抗策は、野党がまとまること(候補者を立てあって潰しあうのを止めること)しかありません。今回の選挙で大きな傷が野党側に残ってしまいました。希望と立民が協力することは難しいかもしれません。また、小池氏が敗北を認めた希望から離脱する議員も出てくるのではないかという話も既に出ています。そうなったときに、元民進党の再合流となる時には、民進党の再興では意味がありません。リベラルから中道右派までを包むアンブレラパーティーになることが重要であると思います。

 

 今回は自公惨敗、となるべき選挙でした。それが野党分立となってしまったことは、野党側に責任があります。自民党を利してしまったという事実は厳然として残ります。そこで、どこが悪い、何が悪いということを言い合うのはありですが、それをいつまでも引きずっても自公を利するだけです。自公政権、安倍一強状況を打ち壊すために何が最善なのかということを考えていかねばなりません。

 

(終わり)



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





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 古村治彦です。

 

今回の選挙ほど序盤と中盤以降で評価が大きく振れた選挙は珍しいのではないかと思います。最初は自公過半数割れという話が出て、その後、中盤以降では自公が300をうかがう勢いという数字が出ています。現在の状況は分かりませんが、アナウンスメント効果とアンダードッグ効果が出て自公の伸びが抑制されていると思います。自民党の伸びは鈍化し、立憲民主党の指示が急速に伸び、希望の党は下落傾向に歯止めがかかっていません。立憲民主党の結党に際して、ダメだろう、日本未来の党の末路を見てみればわかる、という意見もありましたが、まさか、希望の党が日本未来の党のようになってしまうとは誰も予想できませんでした。私は「未来」「希望」のような抽象的な言葉ではなく、「立憲」「民主」というはっきりした言葉を使う潔さと真面目さが有権者に受けたのだろうと思います。

 

 選挙戦では「安倍・自公対小池・希望」の一騎打ちという図式がマスコミでも盛んに喧伝されましたが、有権者もバカではありません。それは表面上だけのことで、本当は対立なんかしていない、安倍・自公も小池・希望も同じじゃないかとなって、「改憲翼賛会(現代版大政翼賛会・米政翼賛会)である自公維希対立憲民主党・共産党・社民党や無所属など」が正しい図式だと理解しています。それは、小池百合子東京都知事の優柔不断さを見てみればわかります。彼女は勢いと風に乗って、民進党の自民党とやっていけそうな前職・元職、そして希望の党プロパーの候補者たちを当選させ、国政に復活するつもりであったと思わざるを得ません。しかし、「安倍晋三首相2号」を国政に送り込むことを、1号にうんざりしている国民が選択することはありません。

 

希望の党は、立憲民主党にはライヴァル候補を擁立し、日本維新の会や公明党には立てなかった、ということで、「ああ、あわよくば自民党の地位に自分たちが入って連立政権を組んで、小池百合子氏が首相になって改憲をしたい(これじゃ安倍晋三氏と違わない)、もしくはこれらの党に気を遣ってうまくいけば自民党と大連立を組みたいのか(結局改憲に協力して、小池氏が次の総理を狙うためか)」ということを国民に看破されてしまったからです。

 

安倍首相と考えが一緒の小池百合子氏を利用して勢力を増やそうとしたと言われる前原誠司代議士(一応まだ民進党代表)と小沢一郎代議士(自由党共同代表)は策士策に溺れる、もしくは、策の弱い部分を小池氏に利用されてうまく騙されて、自分たちはポイ捨てされたということになります。小池氏は民進党の自民党に考えが近い前職に希望の党のプロパー新人候補者を入れて、安倍氏よりもタカ派路線で国政復帰を目指していたのでしょう。そのために前原氏は民進党を供物として差し出す羽目になり、小沢氏は目指していた野党共闘の形を崩壊させる結果になりました。小沢氏の構想力と説得力は日本政界随一でしょう。惜しむらくは、その構想を実現することに貢献できる人物が周囲にいなかったということでしょう。自由党系で希望の党から出馬した人たちはそれぞれ地道に活動していた地元から離れた場所に「国替え」をさせられました。こうした人たちが地元で出ていたらどんなに良かっただろうかと思います。

 

 小選挙区制度を導入して二大政党制を日本に実現する、ということが果たして良かったのかどうか、という問題について、私は問題が多かったと思います。最大の問題は、自民党に対してつけられていた「拘束具」が外されてしまった、ということだと思います。小選挙区制になって、特に小泉政権以降の選挙では、大勝ち、大負けという結果が出るようになっています。得票率に比べて議席数が割高に出てくるのが小選挙区制の特徴で、これを抑えるために、比例代表制も併せて採用していますが、それでも、勝つときは大勝ち、負けるときは大負けとなります。

 

これを防いで、与野党伯仲状態を作り出すためには、小選挙区と比例区で別の政党に投票する、与党支持者の場合であれば、小選挙区で与党候補者、比例で野党(できれば野党第一党)に投票する、野党支持者であれば小選挙区、比例共に野党に入れるということをしなければなりませんが、これはこれで大変複雑なことを有権者、特に与党支持者に強いる、お願いすることになりますから、難しいです。やはり応援している政党に勝ってほしいですから。また、無党派層が多いので、それがどちらにふれるか、投票に行くかでも結果が大きく変わります。ただ、国民の多くはあまりに強力な与党の出現は求めておらず、はっきり言って、小選挙区制とその結果としての二大政党制は日本にそぐわないと私は考えます。

 

 大勝ちした政党は本来であれば、民意よりも大きく反映された議席数を与えられたことに畏怖を感じ、権力を行使する際には慎重にかつ協調的に行おうとするものです。しかし、小泉政権以降の自民党政権は少数の例外を除いて、権力をふるうことに畏怖を感じず、やりたい放題ができるという勘違いを基礎にして行動してきました。恐怖を感じ慎重にふるまうためにはこれまでの人類の歴史を知り、人間は愚かなのだから慎重に行動しなければならない、ということを知らねばなりませんが、残念ながら今の自公連立政権は学歴や職歴は超一流でまばゆいばかりですが、そうしたことを忘却している、ネトウヨに実際に権力を持たせたらこうやるだろうなということを実際にやっているにすぎません。

 

 今回の選挙では自民党と公明党の連立枠組みは序盤大変厳しい状況が伝えられました。100議席を失って過半数割れをするのではないか、と言われていました。それは、小池百合子東京都知事が希望の党を結成し、都知事選挙、都議選挙での小池旋風の凄まじさに人々が目くらましをされていたためです。希望の党が出現し、民進党は合流する形になるはずでしたが、全員が希望の党に行けないということになり、小池氏の安倍氏と同じ考えに同調すること(踏み絵を踏む)ということが要求され、民進党合流はなくなりました。この時点で、簡単に言えば民進党は2つに分裂させられました。そして、野党共闘体制も崩壊させられました。自民党に批判的な無党派層有権者の票は分散し、死に票が増え、結果として自民党が漁夫の利を得るということになります。

 

 しかし、希望の党から排除された人々が立憲民主党を創設し、選挙戦に新たな軸を立てました。安倍政治とそれに親和性の高い小池政治とは違う、2本目の対抗軸です。立憲民主党は希望の党のように選挙に多くの候補者を出すことができませんでした。準備が足りませんでした。しかし、今や希望の党を上回る支持を集めているという世論調査の結果も出ていました。立憲民主党が野党再編の軸となって、リベラルから中道へとウイングを広げていく、そのために無所属、希望の民進系で心ならずも公認をもらったという人たち、が協力できる体制づくりが必要でしょう。そうなると、希望の党は分裂してしまう可能性は高いです。希望の党の結党メンバーのうち何人が国会に戻ってこられるか分かりませんが、民進系の大量離脱となると、希望の党は先細りということになるでしょう。そうなれば極端に言えば、彼らは自民党に吸収されてしまうかもしれません。それはそれで彼らのためかもしれません。

 

 今回の民進党の分裂は、自民党内の保守本流である宏池会(池田派を源流とする)の分裂と同じで、分裂が長引けば日本政治に大きなマイナスとなってしまいます。自民党内の保守本流・宏池会は2000年の加藤の乱で崩壊してしまいました。その後、合流ということもなく分かれてしまって、党内における力を落としています。その間に、保守傍流である清和会(岸派を源流とする)が勢力を伸ばし、やりたい放題となって現在に至っています。

 

 「リベラルから中道」をまとめるべき勢力である、自民党内宏池会と民進党が分裂したままで喜ぶのは安倍首相が属する清話会をはじめとする、日本政治の傍流の人々です。ですから、自民党内部の宏池会の復活と立憲民主党を軸とする野党再編、民主党勢力の結集は選挙後の急務です。これらの勢力が伸びねば、安倍首相一強状態を抑制することはできません。
 

 リベラル分断・野党殺しは、2012年のマイケル・グリーンの記事にもあったジャパン・ハンドラーズの安倍首相支援のシナリオです。私は意図的なのかどうかはともかく、小池都知事はこのシナリオに乗った、しかし、今回は日本国民がこのたくらみを見抜いて、リベラルを支援する方向に動いているということだと思います。また、世界的に見れば、アメリカでは民主党のバーニー・サンダース連邦上院議員、イギリスでは労働党のジェレミー・コービンといった指導者たちが人々の支持を集めています。立憲民主党の堅調さはこの世界的な流れの中に位置づけられると思います。

 ですから、立憲民主党が40台後半、民進系無所属が20前後、希望の党の心ある民進系で何とか30、合計で100に近い90台後半を結集させることが今回の選挙では重要であると思います。希望の党の小選挙区の候補者で、希望の党プロパーではない民進系でよさそうな人にはその人に投票、その人が危なそうであれば、比例で希望の党に投票、をお願いしたいと思います。そして、無所属の人の場合には、比例には立憲民主党か共産党、社民党をお願いしたいと思います。自民党支持者や公明党支持派の皆さんも、どうか比例だけでもこの3党にご投票ください。お願い申し上げます。

 

自公政権の議席を1議席でも削り取り、立民共産社民の議席が増えて欲しい、そう願っています。

 

(終わり)



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




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