古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:感染拡大

 古村治彦です。

 今回は、新型コロナウイルス感染拡大を抑えるためのロックダウン、経済閉鎖には負の側面があることを忘れてはいけないという内容の記事を紹介する。

 簡単に言えば、ロックダウンによって経済が動かなくなれば、失業者数が増加する。それによって自殺者が増えるというものだ。また、ストレスからアルコール中毒や薬物乱用ということも引き起こされる。ストレス由来の別の病気も増える。

 また、アメリカでは、新型コロナウイルスへの恐怖感から病院に行かない、ということも起きており、そのために病気の治療が中断されたり、病気の診断が遅れてしまったりして、病気が深刻化することで治療ができずに死亡者が増加しているということもある。

 経済活動の低下による景気後退と新型コロナウイルスへの恐怖感からの医療忌避や医療が受けられないことによるアメリカ国内の死亡者は、新型コロナウイルスによって引き起こされる疾病による死亡者の数を超えるものと推定される。

 新型コロナウイルスに関しては、高齢者や基礎疾患(糖尿病や高血圧など)を持っている人々はリスクが高い。そうした人々を守りながら、同時に経済活動や社会活動を行わねば、全体が干上がってしまう。日本では経済活動や社会活動が再開されつつある。どこまで再開すればどうなるかということを手探りの状態で進んでいくということになる。バランスが重要なのは当然であるが、感染初期に言われた「正しく怖がる」ということをもう一度思い出して、自分たちができることを淡々と進めていくしかない。

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COIVD-19(新型コロナウイルス)の封じ込めはアメリカ人の人生数百年分を犠牲にするだろう(The COVID-19 shutdown will cost Americans millions of years of life

スコット・W・アトラス、ジョン・R・バージ、ラルフ・L・ケネディ、アレクサンダー・リプトン筆

2020年5月25日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/healthcare/499394-the-covid-19-shutdown-will-cost-americans-millions-of-years-of-life

わが国の政府は、新型コロナウイルス緩和政策として社会的ロックダウンを採用し、疾病の拡散の封じ込めに集中してきた。そのためにあらゆる犠牲を払ってきた。「流行曲線の平坦化」と病院内の過剰な混雑などよりもまずは拡散の封じ込めに集中してきた。善意によって行われてきたことではあるが、ロックダウンは、感染拡大の直接的な影響以上の、より深刻な結果を考慮することなく課されることになった。

ロックダウン政策は歴史上最も深刻な経済的崩壊をもたらしている。失われた経済的利益は何兆ドル規模にも上っている。これら経済上の損失をただ経済の上のことだけとして語るのは間違っている。そうではなく、アメリカ国立衛生研究所、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)、労働省労働統計局の公開している膨大な論文や統計データ、その他のデータを使って、私たちは、アメリカのロックダウン政策は、破壊的な非経済的な結果をもたらすことを計算して出した。その結果として、アメリカ国内において数百万年分の人々の人生が犠牲になるということを示している。これはウイルスそのものがもたらした損失の年数をはるかに超える数字である。

ウイルスや疾病の感染拡大は歴史を通じて人類を苦しめてきた。疾病の感染拡大によってローマ帝国、東ローマ帝国、中世ヨーロッパ、中国、そしてインドは崩壊した。医療の進歩にもかかわらず、この苦難は現在も続いている。

20世紀では、アメリカ国内でも10万人以上の死者を出した疾病の世界的な大流行が3度起きた。1918年から1919年にかけて「スペイン風邪」では世界規模で2000万人から5000万人、アメリカ国内で67万5000人の死者が出た。1957年から1958年にかけての「アジア風邪」では世界規模で110万人、アメリカ国内では11万6000人の死者が出た。1968年から1972年にかけての「香港風邪」では、世界規模で100万人、アメリカ国内で10万人の死者が出た。新型コロナウイルス感染拡大については現在のところ、アメリカ国内での死者はほぼ10万人となっているが、ほぼ完全な経済的ロックダウンはこれまでにない規模となった。

アメリカ一国のみの経済的利益損失は、経済的シャットダウンの期間、1か月でGDPの5%にあたる11兆ドル(約120兆円)と推定されている。失業と基礎的な生活物資供給を求める圧力が自殺、アルコール中毒、薬物中毒、ストレスによって引き起こされる疾病が増加する中で、収入が失われることは人々の生命が失われることに直結する。こうした影響は、特に低所得の人々に深刻である。それはそうした人々は仕事を失いやすく、そもそも低所得の人々の死亡率は大変に高いからである。

統計的に見て、アメリカ人1人が死亡するとアメリカ全体の収入が1000万ドルから2400万ドル分も失われることになる。この影響の一つは失業によって現れる。失業によって死亡率は少なくとも60%上昇する。3600万人のアメリカ人が新たに失業した中で毎月7200人の生命が失業によって失われるという計算になる。この3600万人のうち、40%以上は再就職の見込みがない。加えて、小規模なビジネスのオーナーの多くは、資金的にほぼ崩壊状態にある。資産の喪失は死亡率を50%引き上げる。一人の生命の喪失は1700万ドル分の収入喪失につながると推定されるが、そうなると、経済封鎖によって毎月アメリカ国内で6万5000人分の生命が失われるという計算になる。

収入喪失によって失われる生命に加えて、社会閉鎖によって医療の遅滞や無視と、患者の間に新型コロナウイルスに対する恐怖感が広がることでも、生命は失われる。筆者たちは個人的に脳神経外科医たちに話を聞いたのだが、患者の半分が病気の治療のために病院に来ることを放棄している、ということだ。病気を治療せずに放置しておくと、脳内出血、麻痺、死亡のリスクが高まる。

私たちの計算に基づいて、医療を受けない、受けないことに関する例を挙げていく。脳出血の緊急検査の数は40%減少する。アメリカ国内で化学療法を受けている65万人のがん患者のうち、半分が治療を受けられないと推定される。アメリカ国内では毎月15万人の新たながん患者が発見される。その大部分が、世界各地と同様に、診断されていないし、日常のがん検診の3分の2から4分の3がなされていない。それは閉鎖政策と人々の間の新型コロナウイルスに対する恐怖感のためだ。昨年の同時期に比べて、生体間内臓移植の約85%がなされないようになっている。加えて、子供たちへのワクチン接種の半分以上がなされていないが、これは将来の公衆衛生において大きな脅威となるだろう。

新型コロナウイルスを別にして、医療を受けることが遅れる結果、経済閉鎖の期間において毎月8000人が死亡することが推定される。この人々の推定される残りの人生の年数を足すと約12万年分となる。脳出血への治療がなされないことで毎月10万年分の人生年数が喪失している。がんの診察が遅れることで毎月25万年分の人生年数が喪失している。生体間内臓移植がなされないことで毎月5000年分の人生年数が喪失している。ワクチン接種の10%がなされなければ、毎月2万4000年分の人生年数が喪失している。

医療を受けない、受けられないということで起きる意図しない結果は、毎月50万年分以上の人生時間が失われるということである。これは他の要素は含まれていない。

経済閉鎖による失業に関連しての死亡だけで考えても、少なくとも毎月7200人が生命を喪失していることになる。アメリカ国内の現在の死亡率のデータの年齢別の割合をそのまま適用し、男性と女性との間で死亡率が同じだと仮定すると、経済閉鎖期間において毎月20万年分以上の人生年数が失われるということになる。

実際には、新型コロナウイルスで死亡する人々はその圧倒的大多数が高齢者であり、特に老人ホームに入所していたり、基礎疾患を持っていたりする人々だ。これら新型コロナウイルスによる疾病にかかった患者たちの余命と死亡者の40%が老人ホームの入所者であることを考慮すると、新型コロナウイルスによる疾病はこれまでに合計で80万年分の人生を奪っているということになる。ロックダウン政策によって引き起こされる不十分な医療提供と失業だけでも考えてみると、全国規模のロックダウンによって失われる人生の年数の合計は控えめに見積もって毎月70万年分、合計すれば約150万年分となり、既に新型コロナウイルスによって失われた年数の合計を凌駕している。

新型コロナウイルスの影響と戦っている政治家たちは自分たちの決定がもたらす影響の全体を認識し、考えねばならない。経済の大きな部分を閉鎖することで人々の生命が失われているという、破壊的な影響についても認識する必要がある。ロックダウンによる取り返しのつかない不都合に政策立案者たちが遅ればせながら気づくことだけでは十分とは言えない。政策立案者たちは、深刻な結果について明確にかつ広く人々に知らせる必要がある。社会の再開は正当であるということを強く主張することで、生活の全ての側面に関する懸念を払しょくさせねばならない。

経済的ロックダウンによる生命の喪失を終わらせるために、消毒など公衆衛生学による対策を強化し、リスクの高い人々に対しての科学に基づいた防御を施しつつ、ビジネス、小中高、公共交通、公園やビーチは、徐々にではあるが確実に再開しなければならない。アメリカの大部分の地域にとって、経済活動の再開は、恐怖感に基づいた不必要な制限を取り払い、今すぐに行うべきだ。恐怖感に基づいた制限の大部分は証拠の軽視という誤りを繰り返している。全ての可能な行動と結果私たちを最終的に認識する思慮に満ちた分析に従うことで、アメリカ人の人生数百万年分を救うことができるのだ。

次の世界的な疾病拡大が発生することは不可避だ。もし疾病拡大が発生した場合、私たちはこれらの教訓を思い出し、初期段階から全てのアメリカ国民の生命を考慮する政策を実施する必要がある。

※スコット・W・アトラス:内科医、スタンフォード大学フーヴァー研究所上級研究員

※ジョン・R・バージ:シカゴ大学ブースビジネススクール教授

※ラルフ・L・キーニー:デューク大学ビジネススクール名誉教授、サウスカロライナ大学工学部教授

※アレクサンダー・リプトン:イェルサレム・ヘブライ大学イェルサレムビジネススクール招聘教授兼学部長付研究員

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 今回は、「米ドルの供給(US dollar supply)が増大すると、実物資産、特に食糧価格が急騰する。食糧ショック(food shock、食糧価格の急騰)が社会不安(social unrest)を引き起こす」という内容の記事をご紹介する。著者たちの主張の証拠となるのが、2008年のリーマンショックからの国際的な金融危機(global financial crisis)と2010年からの「アラブの春(Arab Spring)」からの相関関係である。アラブの春は民主化(democratization)を求めた人々の動きと言うのが一般的な理解であるが、これはアメリカ、アメリカ国務省が主導した。このことは拙著『アメリカ政治の秘密』で詳しく説明した。

 しかし、このアラブの春は別名「空腹・飢餓の革命(Hunger Revolution)」とも呼ばれている。食糧価格の急激な変動は人々の生活を苦しめ、その不安の高まりもあり、暴動や内戦にまで発展したということである。食糧価格の推移と世界各地での抗議活動やデモの数の推移を示したグラフが下の記事に示されているが、相関関係はあるようだ。

 日米欧、特に日本はデフレーション(deflation)の状態である。給料も下がれば物価も下がる、だから景気が悪い、という状態だ。デフレとは簡単に言うと、供給(supply)は多が、需要(demand)が少ないという状況だ。だから物価が下がる、そして企業や個人の売上が下がれば給料も下がる、そうなると、家計の消費は減っていくということになる。

 ここで日本にとって怖いのは、「コストプッシュ・インフレーション(cost-push inflation)」だ。景気が悪く、給料が上がらない中で、食糧価格が高騰すると、生活は苦しくなる。食糧や石油について日本では輸入に頼っているが、それらの価格が高騰すると、日本でも物価高ということになるが、景気が良くなっている中での物価高ならば給料も上がっていくが、給料が下がっているのに物価が上がっていくということになれば、生活が苦しくなる人は多く出る。

 新型コロナウイルス感染拡大によって世界経済は大きく減速している。その規模は2008年の国際金融危機を超えるものだとも言われている。その時と同様、アメリカの中央銀行である連邦準備制度(Federal Reserve)は経済の安定化のために、ドル供給を行う。そうなれば、食糧価格が高騰し、世界各地で社会不安が起きるという、こういう図式である。日本もまた他人ごとではないが、主には発展途上国を襲うことになる。ハンガー・れヴォルーションが再び起きるということになるのだろう。

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食糧価格の急上昇と社会不安:連邦準備制度(アメリカの中央銀行)の危機との戦いの暗い側面(Food Price Spikes and Social Unrest: The Dark Side of the Fed’s Crisis-Fighting

―緊急金融政策は意図しない結果を生み出す:世界規模での食糧価格の上昇

オレ・コーレン、W・キンドレッド・ワインコフ筆

2020年5月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/05/20/food-price-spikes-and-social-unrest-the-dark-side-of-the-feds-crisis-fighting/

2010年12月の初め、国際連合食糧・農業機関は政策短観を発表した。その中には次のように書かれていた。「世界的な農産物市場における極端な価格の不安定さは、世界の食糧に関する安全性に大きな脅威を及ぼすことになる」。それから数日後の12月17日に、チュニジアの露天商ムハンマド・ブアジジは自分の体に火をつけた。警察がブアジジのフルーツの屋台を没収した。その後にブアジジは自殺した。フルーツの屋台は彼にとっての唯一の生活費を稼ぐ手段だった。ブアジジの自殺はそれ以降、十数件の焼身自殺を引き起こした。そして、大規模な抗議運動が発生した。その大部分は上昇し続ける食糧価格が原因であった。そして、抗議運動は中東と北アフリカに急速に拡大していった。

社会の大混乱の頻発は西側のメディアでは「アラブの春(Arab Spring)」として知られるようになった。しかし、この地域の活動家たちは、アラブの春を「空腹の革命(Hunger Revolution)」だったと描写した。一連の混乱がアラブ世界にだけ限定されなかったということを考慮すると、空腹の革命の方がふさわしい名前ということになる。一連の大混乱は一国の国境内に限定されるものではなかった。リビアとシリアへと飛び火した内戦状態は特に国際化されたものである。シリア内戦による2015年の難民ショックは、ポピュリズム・ナショナリズムの政治運動の台頭をもたらした。こうした政治運動は、最初にヨーロッパで起き、やがて世界中に伝播した。

コロナウイルス危機によって、手頃な価格で食糧を手に入れることができるだろうかという懸念が大きくなっている。特に発展途上諸国でこの懸念が高まっている。今月初め、国際連合総会議長ティジャニ・ムハンマド=バンデは、感染拡大がもたらす食糧危機に警告を発した。一方、国連食糧計画は、感染拡大が起きる前の水準に比べて、急激な食糧不足が2倍の水準に達することになると予測している。近年の農業生産高は堅調に推移してきたが、公的機関や各国政府の幹部たちは、世界規模の食糧供給チェイン(網)のもろさ、食糧買い占め、食糧に関する保護主義について懸念を持っている。食糧不足が顕著化する中で、抗議活動、大衆行動、暴力・非暴力を問わない大規模な反政府デモといった政治に対する争いに関するエピソードが世界各地に広がっていく可能性も大きくなっている。

これらの出来事全てが広範囲な社会的秩序の動揺をもたらす訳ではないが、その中のいくつかは社会秩序を動揺させる。その結果は深刻なものとなるだろう。手頃な価格の食糧へのアクセスを求める抗議活動は政治掲載においては定期的に起きる現象である。2007年から2008年にかけてこうした抗議活動の波が発生した。2010年末に起きたアラブの春よりも前の現象である。より一般的に言えば、食糧ショックに対応する社会運動は、近代史を形作りにあたり重要な役割を果たした。急速に上昇する物価はフランス革命を引き起こした。1848年の革命は、ヨーロッパ諸国で続いた干ばつのために起きた食糧価格の上昇によって引き起こされた。食糧を求める抗議活動はソヴィエト連邦を生み出した1917年のロシア革命だけではなく、歴史的な皮肉と言うしかないが、ソヴィエト連邦の終焉をももたらした。最近で言えば、食糧危機によって、1998年にはインドネシアのスハルト政権が倒された。

これら歴史的な出来事の多くには干ばつのような自然現象も含まれていた。自然現象はマルサス流の力学を始めさせ、悪化させた。食糧の供給可能性は人々が食糧を求める需要のために脅威に晒されることになる。特に都市部での急激な人口増加が伴うと、食糧需要が急速に高まり、供給が脅威に晒されることになる。しかし、これとは別の要素が国際的な食糧価格、そして政治の安定に大きな影響を与えている。その要素とは国際的な通貨システムの変化である。

食糧の国際的な取引は拡大し続けている。その結果、食糧に関しては米ドルで示される国際価格が出るようになっている。その理由は米ドルが国際的に最も使用されている通貨であるからだ。米ドルの価値の変化は世界各地での、その中には食糧価格も含まれるが、物価の変動をもたらす可能性が高い。そして、米ドルの価値は、連邦準備制度の行動に最も影響を受ける。

連邦準備制度は、アメリカ政府から、アメリカ経済において完全雇用、低く安定したインフレーション率、金融の安定の維持を達成するように求められている。連邦準備制度は、様々な政策を利用して、上記の目的を達するために、ドル供給を拡大したり、縮小したりする。連邦準備制度が持つ手段とは、金利の変更、資産購入(別名「量的緩和」)である。通貨供給量の変化は物価に影響を与える。そして、ドルは最も国際的に使われている通貨であるので、物価の変動は国際的なものとなる。

農産物や鉱物資源などの実物資源の価格は特にアメリカの金融政策の影響を受ける。在庫量、分配ネットワークの機能、世界的な需要のレヴェルといった他の諸要素もまた重要な役割を果たすことになる。他の全ての要素がそれまで同様だった場合に、米ドルの供給拡大が実物資源価格の高騰につながるのが典型的な反応だ。食糧価格の変動は世界中での社会の安定に強力な影響力を持つことになる。

このことが示されたのは2007年に始まった世界金融危機の時期だった。アメリカ経済が減速し始め、崩壊した時、連邦準備制度は金利をわずか1年の間に5.25%からゼロに引き下げた。主要な政策金利をゼロにするということは前代未聞だった。しかし、金融部門で崩壊が始まった時、ゼロ金利はアメリカ経済を安定させるためには不十分であったことを示した。2008年秋から、連邦準備制度は一連の量的緩和を開始した。連邦準備制度はドルを他の資産に変えた。資産の多くは政府債券と不動産担保証券で、これで各種金融市場を安定化させ、経済を回復させようとした。2008年から2014年にかけて、連邦準備制度の資産は1兆ドル弱から約4兆5000億ドルに増加した。これもまた前代未聞のことであった。これらの行動の効果は、ドル貨幣供給の増加を招き、2008年から2014年にかけて約50%増加した。

下のグラフが示しているように、食糧価格の急騰と共にみられる極端な動きは、毎月の米ドル供給の変化(これには標準的なM2法を用いる。これは銀行が持つ現金と金融市場の預入額の合計である)と毎月の国際的な食糧価格の変化(こちらのデータは国連食糧・農業機関のものだ)を同時に示したものである。2007年から2011年にかけての食糧ショックの各段階に先だったのは、ドル供給に影響を与える金融政策の変化であった。しかし、連邦準備制度の政策だけが危機をもたらしたと非難することは間違いであろう。石油価格の上昇のような連邦準備制度の政策以外の要素も影響を与えた。しかし、これらの諸要素にしても金融政策の変化に関連して変化するものである。国際金融システムの中核における極端な金融政策は実物資産の急激な価格変動を生み出したのだ。

■食糧ショックとドル供給

米国通貨(ドル)供給と食糧価格指標(複数の農産物を一緒にした国際価格の月単位での変化)

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食糧価格の上昇は政治に大きな影響を与える。下のグラフが示しているように、世界における食糧を求める暴動の件数(マーク・ベレマレのデータによる)は、食糧価格の急上昇に対応して、2005年から2011年にかけての期間の平均に比べて250%も急激に増加している。現在も続いている市民的不服従運動の件数(非暴力・暴力運動とその結果3.0データによる)は、2010年1月の13件から2011年12月の28件に増加している。こうした多くの人々が動員される運動は、リビア、シリア、イエメンで現在まで長引いている内戦状態を生み出した。そして、エジプトでは新しい独裁政権を生み出した。更には、イスラム国の台頭をもたらした。

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現在はその時のような状態になって、私たちはその中に生きていると言えるだろう。新型コロナウイルス感染拡大は別の経済危機を引き起こしている。今年の3月中旬以降、連邦準備制度は大規模な金融政策を実施している。その規模は最近の歴史にないほどのものだ。2016年に政策金利が少しそして中庸に上昇したが、それ以降はゼロ金利に戻っている。更に重要なのは、連邦準備制度の積極的な資産購入のペースは、2008年から2014年にかけての量的緩和プログラムを小さく見せてしまうほどのものだ。中央銀行の総資産は2月末の4兆2000億ドル(約450兆円)から4月末には約7兆ドル(約750兆円)に膨れ上がっている。

いくつかの食糧価格は既に上昇している。上記のグラフが示しているように、食肉価格は歴史上2番目の高さに達している。一方、供給は少しずつ減少している。更に重要なのは、穀物(小麦、トウモロコシ、米)の価格である。穀物は発展途上諸国においては基礎食品を構成しており、摂取カロリーの最大部分を占める。2007年から2008年、2010年から2011年にかけての抗議運動は穀物価格の急激な動きに深く関係していた。最近の米価は近年になく高い状態になっているが、他の穀物の価格の動きは激しくない。それは供給が高いレヴェルを維持しているからだ。連邦準備制度の諸政策はアメリカの食糧生産に大きな影響を与える可能性が高い。アメリカはトウモロコシの世界最大の輸出国であり、小麦と大豆に関しては世界2位の輸出国である。

これら複数の金融政策、特に大規模な資産購入(これは“無制限の量的緩和”と呼ばれる)は、急速な需要縮小に見舞われているアメリカ経済(そして世界経済)を安定させるために、経済的に必要となるだろう。しかし、更なる金融的な介入が少量価格の不安定化を招く可能性が高い。食糧価格の極端な動向の10年を過ぎて、食糧価格が落ち着くまでにはさらに4年間かかった。こうした価格の変動の政治的な結果はより深刻となるだろう。更に言えば、コロナウイルスによるロックダウンから社会が再開し始め、人々がこれから数カ月でレストランに戻ると、各種物価は上昇する結果になるだろう。

どういった国々が最もリスクに晒されているだろうか?下に掲載している地図は国際食糧安全保障指標に基づいて作られている。国際食糧安全保障指標は、食糧購入能力、供給能力、質を1つの安全保障の指標にまとめられている数字である。数字が大きいということは、より安全性が高いということになる。全ての国のデータが利用できる訳ではないが、一般的に言って、これらの側面に関するデータがないことは、全ての状況がうまくいっていると考えるべきではないことを示している。これが示しているのは、現在の食糧安全保障が低い国々のリストは、2000年代のリストとほぼ同じだ。サハラ砂漠以南のアフリカ、中東、北米の国々だけでなく、中央アジアと南アジアの一部、ヴェネズエラ、中央アメリカもリストに入っている。

国際食糧安全保障指標

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この結果は究極的には、最も強力な経済部門である連邦準備制度は、その行動が国際的な影響を持ちながら、究極的な国内的な政策権限を持つという事実から生み出されている。発展途上諸国は国際機関を通じて実物資産価格の安定化を長年にわたり求め続けてきた。それは現在も同じだ。国連は発展途上諸国への支援のために2兆5000億ドル規模の金融支援を求めている。国連のムハンマド=バンデ事務総長は「国際協力と協調は、食糧市場の安定を促進し、突然の価格ショックを防止するために極めて重要だ」と述べている。

しかし、こうした請願は各国政府によってほぼ無視されてきた。アメリカ型局主義を否定し、ヨーロッパ連合が動揺し、中国が国際的な公共財のコストの支払いを渋っている現在、国際協調主義は不足傾向にある。しかし、各国政府の国際協調といった試みなどを組み合わせることで、世界各地での社会不安と暴動を生み出す食糧ショックを防止することができるだろう。国際協調に加えて、国際的な金融機関(世界銀行と国際通貨基金)の寛大な行動も必要となるだろう。連邦準備制度は最も遠くまで国際的な影響を与えながら、最も反対を受けづらい機関である。連邦準備制度の緊急安定化プログラムはアメリカ財務省が発行する債券を支援し、国際機関と諸外国の政府に資金を供給することに使われ、少量価格の急騰から国際市場を守ることができる。もちろん、そのためにはトランプ政権が現在よりも国際問題についてより大きな関心を持つようになる必要がある。

世界の政治と経済は複雑な形で相互依存している。世界ネットワークの中核部分で取られた行動はシステム全体に影響を与える。アメリカ連邦準備制度の金融政策は世界の食糧価格に影響を与える。主要食料品の価格の急騰を引き起こすことになる。食糧価格の高騰によって抗議運動や暴動、不服従運動、大規模なデモが起こり、そこから国家の崩壊や内戦にまで進んでしまう場合もある。

前回食糧を求める暴動の波が起きて10年が過ぎた。しかし、その影響を今でも認識することができる。シリアでは内戦状態が続いている。レバノン(大規模なデモの回数が増えている)、トルコ、ヨーロッパ、その他の地域に逃げているシリアからの難民の経済的、政治的影響は今でも感じられている。結果として、ポピュリズムとナショナリズムを扇動する政治家たちに、自分たちの主張のプロパガンダにとっての効果的な道具を与えることになる。こうした政治家たちは食糧危機を、権力を掌握し、民主政治体制を掘り崩すために使う。この複雑さを人々が理解しないということになれば、同様のシナリオが間もなく繰り返される可能性がある。

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 古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大はアメリカと中国の争いの最前線となっている。アメリカは「中国が初期対応を誤ったために世界中に感染拡大してしまった、責任を取れ」「国際調査団に中国のウイルス学研究所の徹底調査をさせろ」ということを主張している。中国政府は新型コロナウイルスが実験室などで人の手によって造られたものではないと主張し、また、中国が発祥ということはないと反発している。

 「新型コロナウイルスはアメリカが作った、いやいや中国が作った」という討論がずっと続いている。そうした中で、アメリカのドナルド・トランプ大統領とトランプ政権は中国に対して厳しい姿勢を維持している。その急先鋒は、マイク・ポンぺオ国務長官だ。ポンぺオ国務長官は最近になってトーンダウンしたが、「新型コロナウイルス発祥は中国だという証拠はたくさんある」と述べ、世界的な感染拡大の責任は中国にあると述べてきた。

 2020年5月24日の段階で、世界中で約540万の感染者、死者数が34万3000、回復者数が約225万となっている。アメリカは感染者数約167万、死者数が約9万8000、回復者数が約45万となっている。日本は感染者数約1万6500、死者数は808、回復者数は約1万3000となっている。アメリカは感染者数、死者数で世界の約30%を占めている。新型コロナウイルスは今年初めには中国、特に武漢市で猛威を振るったが、今や欧米、特にアメリカで猛威を振るっていると言ことになる。トランプ政権の初期対応の誤りによってアメリカが最大の感染者数年者数を出すということになったという批判もなされている。そうした批判をかわすためにもトランプ政権としては、中国に責任を押しつけたいということになる。

 マイク・ポンぺオという人物が中央政界で知られるようになったのは、2010年の連邦下院議員選挙からだ。2008年にバラク・オバマが大統領選挙で勝利した直後から、アメリカでは保守派の草の根運動としてティーパーティー運動が始まった。小さな政府を標榜し、国民皆保険を目指すオバマケアに反対する、「納税者」の運動を展開した。この運動の資金源は、世界的な大富豪であるコーク兄弟であった。ポンぺオはティーパーティー運動に参加し、2010年の中間選挙で連邦下院議員に当選した。その後、4期連続で当選した。トランプ政権のマイク・ペンス副大統領とポンぺオ国務長官はそれぞれ連邦下院議員の経験があるが、その時のスポンサーだったのはコーク兄弟だった。

 2016年の大統領選挙でドナルド・トランプが勝利を収めると、アメリカの情報・諜報機関CIAの長官に就任した。2018年にレックス・ティラーソンがトランプ大統領のツイッターでの書き込みによって解任された後、ポンぺオが国務長官に就任した。

 マイク・ポンぺオという人物はコーク兄弟の後ろ盾を受けて、中央政界に進出し、CIA長官を務め、現在は最重要閣僚である国務長官を務めている。ポンぺオはコーク兄弟の代理人だ、という記事もあったが、現状を見ればそれはとても甘い見方であったことが分かる。コーク兄弟をはじめとするリバータリアンは対外戦争に反対だ。しかし、ポンぺオの言動や行動はとても危なっかしい。中国やロシアとはいつでもやってやるぞという姿勢だし、トランプ大統領が始めた北朝鮮との直接交渉にしても、北朝鮮側から「ポンぺオ国務長官を外して欲しい」という要請をされてしまうほどだ。

 ポンぺオは複数の勢力とつながり、利用してここまでやってきたと考えることが妥当だろう。それはマイク・ペンス副大統領にも言えることだ。その勢力の中には、アメリカを対外戦争に引きずり込もうという勢力もある。表面ではネオコンや人道的介入派として出ている勢力であるが、その裏がどうなっているのか分からないが、かなり恐ろしい勢力がいるのではないかと私は考えている。トランプ政権は反中央政府、反ワシントン既成政治を旗印に誕生したが、更に一回り大きな勢力に利用されているのではないかと私は危惧を持っている。

(貼り付けはじめ)

●「沈黙のバットウーマン 武漢の研究者、コロナで先駆  米中対立の火種に」

2020/5/20   日経新聞   北京=多部田俊輔、編集委員 滝順一

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59338010Q0A520C2EA1000/

 中国の湖北省武漢市で世界で初めて感染が確認された新型コロナウイルスの発生源を巡って、米中の対立が止まらない。武漢ウイルス研究所が発生源だと主張する米国側に対し、中国側は「捏造(ねつぞう)」だと否定する。真相のカギを握るとみられているのが同研究所の石正麗氏だ。コウモリ由来のウイルス研究者の石氏は「バットウーマン(コウモリ女)」の異名も持つが、このところ動静が途絶えている。

「石氏が家族とともに1千ページに及ぶ秘密文書を持って欧州に逃亡した」。5月はじめ、武漢研究所「発生源」説がくすぶる中、こんな情報が米欧を駆け巡った。すぐに中国メディアは石氏が中国のSNS(交流サイト)に「国を裏切り亡命したとのデマはありえない」と投稿したと報じ、亡命説を否定。しかし石氏は表に出てこない。

「新型コロナウイルスは自然が人類に与えた懲罰であり、自分の命をかけて研究所か

らの流出はない」。石氏は2月初旬に中国のSNSで友人らにこのような趣旨の投稿をしてから、新型コロナの発生源に関して発言を控えている。

石氏は1964年生まれ。大学で遺伝学を学んだ後、政府直属の最高研究機関「中国科学院」傘下の武漢ウイルス研究所に入った。医学などの研究で名門とされる仏モンペリエ大学で2000年にウイルス学の博士号を取得し、武漢に戻った。

石氏が有名になったのは0203年に中国で流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の発生源究明での実績だ。各地の洞窟で野生コウモリを捕まえて体液を分析し、SARSウイルスの起源がコウモリだと証明した。13年に英科学誌ネイチャーで発表し、「バットウーマン」と呼ばれるきっかけにもなった。

15年には今回の新型コロナを予言したともいえる研究成果も、米ノースカロライナ大学のラルフ・バリク教授と共同で公表していた。バリク氏はコロナウイルス研究の第一人者。2人はコウモリのコロナウイルスが変異すると、SARSウイルスの治療薬が効かない新種のウイルスが生まれる恐れがあると、ネイチャー姉妹誌で公表した。

さらに石氏らの研究チームは1月に湖北省政府から新型コロナの研究を命じられると、22月初旬にいち早く、新型コロナもコウモリ由来の可能性が高いと発表していた。

一方、トランプ米大統領やポンペオ米国務長官は武漢ウイルス研究所が新型コロナの発生源だと主張する。最も危険性の高い病原体を扱える「バイオセーフティーレベル(BSL―4」の施設で、最初に感染者が出たとされる野生動物を売買する市場からも約30キロしか離れていない。

米ワシントン・ポストによると、18年に同研究所を視察した米当局者が「コロナウイルスの研究をしているが安全対策が不十分」と警告する公電を米国へ送っていた。ポンペオ氏は研究所の立ち入り検査を求めている。

ただウイルスが意図的に研究所から漏れたとみる専門家は少ない。米メディアによると、カリフォルニア大学の感染症専門家のジョナ・マゼット氏は新型コロナの感染が始まる前に「石氏の研究所には新型コロナウイルスはなかった」と指摘。武漢研究所が発生源だとする米政権の主張に反論する。実情を知る石氏は口を閉ざしたままだ。

大統領選を控えるトランプ政権は「中国たたき」が得票につながるとみて強硬姿勢に傾く。習近平(シー・ジンピン)指導部はポンペオ氏を標的に「人類共通の敵」などと対米批判を繰り返す一方、国内では研究者を含めた情報統制を強める。

「共産党の指導が厳しく愛国的なテーマを掲げないと研究が難しくなっている」。中国の有力大学で教える外国人専門家は漏らす。関係者によると、新型コロナも研究者らが自由に発信することは許されない。コロナ禍の克服には変異を繰り返しながら感染を広げるウイルスの正体を突き止めることが必要だ。中国の情報開示が問われている。

(北京=多部田俊輔、編集委員 滝順一)

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●「ポンペオ氏、新型コロナ発生源は「不明」 武漢研究所説から転換」

2020.05.18 Mon posted at 10:15 JST CNN

https://www.cnn.co.jp/usa/35153896.html

ワシントン(CNN) ポンペオ米国務長官は新型コロナウイルスが中国・武漢のウイルス研究所から発生したとの説から方向転換し、発生源は不明との立場を示した。米ニュースサイト、ブライトバートが16日に配信したインタビューの中で語った。

ポンペオ氏はこの中で、新型ウイルスの発生源を特定するため、支援チームの派遣を繰り返し要請してきたと述べた。

同氏はまた、ワクチン開発に取り組む研究者らにとって、発生源を知ることは重要な「鍵」になると強調。そのうえで中国の対応は透明性を欠くと改めて非難し、米国による制裁の可能性に言及した。

ただし制裁の具体的な手段については、トランプ大統領が十分な説明を受けたうえで決断を下すことを望むと述べた。

ポンペオ氏はこれまで、新型ウイルスが武漢のウイルス研究所から発生したと主張。今月初めのインタビューでは「大量の証拠」があると述べたが、その後「確信はない」と軌道修正していた。

トランプ氏も同様に「証拠を見たことがある」と主張したが、研究者らや国際情報共有網からは「可能性は極めて低い」との見解が出され、米情報機関は両方の可能性を検討中と述べていた。

中国政府は研究所説を、トランプ氏の再選に向けた中傷作戦だと批判している。

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ポンぺオ国務長官が険悪な雰囲気の記者会見の中で武漢の実験室をめぐる主張を擁護した(Pompeo defends Wuhan lab claims in combative press conference

ロウラ・ケリー筆

2020年5月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/496356-pompeo-defends-wuhan-lab-claims-in-combative-press-conference

マイク・ポンぺオ国務長官は水曜日、記者たちと言い争いを行った。中国のある実験室から新型コロナウイルスの感染拡大が始まったのかどうかという疑問についてやり合った。こうした主張は情報諜報機関の幹部や衛生の専門家たちから否定されている。

ポンぺオはBBCの記者バーバラ・プレット・アッシャーからのウイルスの起源に関する諜報について質問に対して次のように答えた。「バーバラ、バーバラ、いったん落ち着きましょう。」

Your efforts to try and find — just to spend your whole life trying to drive a little wedge between senior American officials … it's just false,”

ポンぺオは、中国の武漢ウイルス学研究所でウイルスに接したことで新型コロナウイルスの感染が始まったという理論を主張している。中国の武漢ウイルス学研究所である科学者がウイルスに接触したことが始まりという話だ。こうした主張を基にして、アメリカ政府は感染拡大に関して中国政府が国際的な調査団による中国国内の調査を許可すること、世界規模の拡大に責任を取ることを求めている。

ポンぺオは日曜日に行ったあるインタヴューの中で、「武漢という中国の都市にあるある実験室からウイルスが流出したことを示す“多くの証拠”が存在する」と述べた。しかし、この発言に対しては政府高官と衛生の専門家たちから否定されている。

米統合参謀本部議長であるマーク・ミリー大将は火曜日、ウイルスの発生は自然なものであり、実験室から偶然にもしくは意図的に流出したことを示す「決定的な証拠」は存在しないと述べた。

世界的な科学者たちの合意は、今回の新型コロナウイルスはある動物の中に発生して、人間に感染したというものだ。アメリカ国立アレルギー・感染症研究所所長でホワイトハウスの対コロナウイルスのタスクフォースの主要メンバーであるアンソニー・ファウチは、ウイルスはある実験室から流出したものという主張を否定し、この疾病は野生から出てきたと述べた。

国務省は「多くの証拠」を肯定する新しい情報を得ているのかと問われ、ポンぺオは、アメリカ政府はウイルスがある実験室から発生したのかどうか、そして証拠があるのかどうかについて関知していないと答えた。

ポンぺオ国務長官は「これらの噺はどちらも全体として首尾一貫しています」と述べた。

ポンぺオは次のように述べた。「あなたが分からないことについて私も確実なことは何も言えないのですよ。新型コロナウイルスがある実験室から発生したという主張には確実性はなく、明らかな証拠もありません。ウイルス発生の起源と証拠についてのアメリカ政府の声明はどちらも正しい可能性があります。渡したこれら2つの主張を行います。政権幹部も同様に2つの主張を行います。これらはすべて真実です」。

先週、アメリカの情報機関の幹部たちは公開声明を発表した。これは極めて珍しいことだ。この声明の中で、幹部たちは今回の新型コロナウイルスはある動物の中で発生したという世界的な科学者たちの合意に同意したが、ある実験室での事故で発生した結果であるのかどうかについて調査を継続しなければならないと主張した。

中国は昨年12月末に世界保健機関(WHO)に対して肺炎の「奇妙な」ケースの発生を報告した。そして同時に、武漢市の海鮮市場での販売員と消費者のクラスターが発生したとも報告した。

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中国との言論戦の中で、ポンぺオが先鋒として登場(Pompeo Emerges as Point Man in War of Words With China

―ポンぺオを批判する人々は、ポンぺオは感染拡大に対する世界規模での対応のために強調するよりも中国攻撃に狂奔していると述べている。ポンぺオを支持する人々は、ポンぺオは中国の責任追及をしているのだと述べている。

ロビー・グラマー筆

2020年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/05/01/coronavirus-trump-pandemic-pompeo-attack-china/

最近の数週間、マイク・ポンぺオ米国務長官は、トランプ政権の強硬な対中国戦略の顔として出てきている。コロナウイルス感染拡大に関して中国非難のメッセージの拡散のために保守系メディアに依存している。多くのフォックスニュースや保守系のラジオのトークショーで中国叩きが行われており、ポンぺオはそれらに依存している。

ポンぺオはダン・“オックス”・オクスナーに対して「私たちの姿勢は明確であり、それは中国共産党は特別の責任を負っているというものだ」と述べた。オクスナーは保守系のラジオのトークショーの司会者であり、ポンぺオは木曜日だけでこうしたラジオのトークショー4番組に出演した。その中にオクスナーの番組も含まれていた。「このウイルスは武漢で発生しました。中国は世界とデータ、情報を共有する特別な責任を持っています。そして、透明性を確保する必要があります」。

外交分野以外の人々と元外交官たちにとっては、ポンぺオ国務長官のメディアを使った大規模な宣伝によって保守派の人気を高めている。これはドナルド・トランプ大統領の支持基盤を活性化するように見える。感染拡大によるロックダウンによって世界経済は減退し、アメリカ国内の失業数は急増している。このような状態の中で、保守派の活性化は2020年の選挙にとって重要である。批判者たちは、ポンぺオ国務長官が感染拡大に対する世界的な反応を協調させることではなく、政権による攻撃の急先鋒になっていると述べている。ポンぺオ国務長官の支持者たちはこうした批判を党派性の強い情報操作(spin)に過ぎないとしている。

中国はポンぺオ国務長官に反撃をしている。先週、中国は国営メディアを使って、通常では考えられない規模で個人攻撃を行った。この時、中国政府は、「中国がウイルスの感染拡大の初期段階で対応を誤り、世界規模で感染が拡大した」というアメリカからの批判をかわそうと躍起になっていた。中国共産党機関紙『人民日報』紙のある論説には次のような一節があった。「ポンぺオのような政治家の頭の中には、偏見、憎悪、個人の利益しか存在しない。ポンぺオの発言や行動は人々を困惑させている。そのようないじめと荒唐無稽な発言で“アメリカを再び偉大にできる”などと彼は考えているのか、と」。

今年の4月だけで、ポンぺオ国務長官は90以上のアメリカ国内と外国の報道機関のインタヴューに応じた。これは感染拡大初期と比べると大きな変化である。4月、ポンぺオ国務長官は米国務省内でほぼ定期的な記者会見も開いていた。様々な報道機関からの記者たちが彼に質問をすることができる機会だ。加えて、国務省は、感染拡大やその他の問題についての国務省の対応について、国務省の幹部職員たちにほぼ毎日電話でのブリーフィングを行ってきた。

外交官出身者の中には、ポンぺオ国務長官が特定の政治的志向を持つ選ばれた国内の聴衆に集中し過ぎていると批判している。ポンぺオ国務長官が一対一のインタヴューやトークショーに出演しているが、その多くは保守系メディアである。国務省は一般の人々にも利用できるように、ポンぺオと報道機関のインタヴューの文字起こしを発表している。複数の元外交官たちは本誌の取材に対して、ポンぺオ国務長官がトランプを擁護しているメディアにこだわっているのは、こうしたメディアにばかり出ることで、厳しい質問を受けることがないからだ。また、外国メディアからのインタヴュー受ける代わりに保守系メディアのインタヴューを受けている。外国メディアの取材に応じることは、アメリカの政策について諸外国の人々により良く説明する機会となるがそれを放棄している。

職業外交官出身で、バラク・オバマ大統領時代のホワイトハウスで国際社会関与担当の部長を務めたブレット。ブラエンは次のように述べた。「ポンぺオ国務長官は、トランプ政権が採用している政策の理由について世界とコミュニケーションするためにほとんど時間を使っていません。彼は、国務長官の役割をより党派性の強いものにしてしまいました。歴史的に見て、国務長官は争いから超然としていようとしてきました。私が現在の政権の政策に同意できないにしても、国務長官の仕事は、世界各国のメディアに対して、アメリカ政府の政策の正当性を説明することであり、そのために最前線に立つことなのです」。

アメリカ国務省は、感染拡大によって民間航空のキャンセルが相次ぎ、渡航禁止などを実施する外国が増えている中で、海外で足止め状態になっている数万単位のアメリカ国民の帰国というこれまでにない仕事を実行しなければならなくなっている。そうした中で、ポンぺオ国務長官は国内のメディアにばかり登場しているのはこれらの仕事の実行に役立たないと指摘している人々もいる。世界各国に置かれているアメリカ大使館と領事館は今年1月以降、これまでに7万人以上のアメリカ国民の帰国を援助している。国務省の幹部たちは、在外公館は民間航空とチャーター機を使ってアメリカ国民を帰国させていると述べている。

ポンぺオ国務長官がメディアに頻繁に登場しているのは、トランプ政権のより大枠の戦略である、中国が感染拡大への対応を誤ったのかどうかについての独立機関による調査を求めることとウイルスの起源について疑問が多く出ている中で国際機関による調査官たちに中国国内のウイルス研究施設の調査を許可するように中国政府に圧力をかけること、この2点に沿った動きなのである。トランプ政権はまた、世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の世界的な感染拡大への対応における役割について非難している。WHOは中国からの圧力に屈ししていると攻撃している。トランプ政権を批判している人々は、政権が感染拡大に対する対応が遅れたことを隠すために批判を行っていると述べている。アメリカ国内では110万以上の感染者数を確認し、死者は約6万5000名に達している。

トランプ政権は、世界保健機関が中国の圧力に屈しているかを調査するために、しばらくの間予算供与を停止すると発表した。

民主党所属の連邦議員たちはこのような手段を批判している。彼らは、確かにWHOは失敗をしたが、アメリカからの支援を必要としている、と発言した。連邦上院少数派(民主党)院内総務チャック・シューマー連邦上院議員、連邦上院外交委員会で民主党側の最上位のメンバーであるボブ・メレンデス連邦上院議員、その他の連邦上院議員たちは4月20日付で書簡をポンぺオ国務長官に送付した。その中で次のように述べている。「感染拡大への対応と封じ込めに関しては複雑さを増している。そうした中で、国際的な対応を強調させるためには更なるアメリカの指導色が必要となる。WHOにおける中国の影響力の増大に対する解決策は、アメリカの指導力と関与であって、アメリカが不在となることではない」。

水曜日の記者会見でポンぺオは次のように述べた。「アメリカは世界保健機関に最大の資金提供を行っています。世界保健機関は目的達成に失敗しました。きちんとした結果を得るためにアメリカの納税者のお金をどのように使うべきかを把握するために調査を行っています。私たちは“健康(保健、health)”を名前につけているある故草木機関が実際に私たちが必要としている結果をもたらしていると言いつくろいながら、ウソをつくようなことをすべきではないのです」。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌の外交と国家安全保障担当記者

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 アメリカで新型コロナウイルス感染拡大の最前線で指揮を執っているのは各州の知事だ。ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ(民主党)やミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)は厳しい制限や在宅命令を出したが、支持率は上がっている。ドナルド・トランプ大統領も毎日記者会見を行い、感染拡大への対処をアピールしている。

 そうした中で、トランプ大統領の心配事は「経済活動の再開」だ。今年のイースター(2020年4月12日)までに経済活動を再開させることを目指していた。そのために連邦政府はガイドラインを出し、アメリカ国民に対して、ソーシャル・ディスタンシングや大人数での集会の禁止を推奨した。しかし、残念ながら、現在のところ経済活動の再開は実施されていない。

 各州の知事たちによる在宅命令やビジネスの閉鎖などの厳しい措置に対して、反発する声も出ている。実際に、「厳しすぎる」「自分たちの生活のことは自分たちで決める」「私の体は私のものだ」という主張を掲げて、抗議のデモ活動が各州で行われている。アメリカでも失業などによって経済不安が増大している。これに対しては各州の知事は憂慮を表明したが、トランプ大統領は「各州を“開放する(LIBERATE)”」ことへの支持をツイッター上で表明した。このトランプ大統領の支持表明に対して、各州の知事たちは、「自分たちで出したガイドラインに反することを人々が行うことを促しており、意味不明な行動だ、違法な行動だ」と反発している。トランプ大統領は特にミシガン州での抗議活動を支持しているが、これはウイットマー知事がトランプ大統領に対して批判的であることに対する攻撃であり、かつ今年の大統領選挙でミシガン州が重要な位置を占めていることを示している。トランプ大統領は何とかミシガン州で勝利を収めたいが、現在のところはウイットマー知事の人気もあり、厳しい状況であり、それを何とか挽回したいと考えている。そのために、自分が出したガイドラインに反する抗議活動であっても支持を表明するという矛盾した行動を取っている。トランプ大統領は矛盾の塊のような人物である。

 日本でも安倍晋三首相による緊急事態宣言が日本の全県に出されて以降、デパートやコーヒーショップチェインの休業が行われ、人々の生活は厳しいものとなっている。また、経済活動の停滞によって、景気後退の不安が大きくなっている。人々の接触を「8割減らす」というとてつもない(ほぼ実現不可能な)目標を掲げて、あと2週間を過ごさねばならない。その間に経済状況がどれほど厳しいものとなるか見当もつかない。現状は、新型コロナウイルス感染拡大防止と経済活動・社会活動との間のバランスが崩れている、と私は思う。手洗いやうがいの励行、マスクの着用、ソーシャル・ディスタンシングは実行しながら、何とか現在の経済活動・社会活動の範囲を少しでも広げられないかどうかを検討すべきではないかと思う。

 リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人たち(恥ずかしながら私もその中の一人だ)の感染防止と重篤化防止が第一である。それでも経済活動ができなければ更に多くの人々が路頭に迷うということにもなる。ここは専門家の知見を利用しながら、何とか少しでも経済活動ができるようにしなければならない。新型コロナウイルスは既に日本国内に入ってしまって、根絶をさせることは不可能だ。これから特効薬やワクチンができるまで現在のような状況を続けることは難しい。それならば個人でできることをやりながら、何かしらの「ウイルスとの共存の」ための方策を考えるしかないと私は思う。

 アメリカ国内でトランプ支持派が経済活動を再開させろと主張している。そのためには連邦政府のガイドラインでは、感染者数が2週間減少を続けなければならないとされている。そして、この数をきちんと把握するためには十分な検査がされねばならないとされている。そのための資源が足りないと各州の知事たちは、連邦政府とトランプ大統領を批判し、支援を求めている。

確かにこのような重大な決定を下すためには正確なデータがあることが大前提だ。日本でも感染者数の減少が見られるようになれば、現在の流れも変わっていくだろうが、そのためには正確なデータがなければ正しい判断はできない。そのためにはある程度のサンプルを抽出し、検査をして統計学的に確からしさの高い結果を得る必要がある。

 慎重に行動することは良いことだが、過度な悲観も過度に楽観することは何事においても禁物だ。また、政府による更に厳しい手段を国民が求めるということも考え物だ。そのためには淡々と自分ができるだけのことをやるという単純なことしかない。ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』や「惨事便乗型資本主義」については本ブログでも既に紹介した。今回のコロナ禍についても、既に政府による監視や制限の強化が私たちの恐怖心を利用して導入されようとしている。ここで私たちが、「その方が楽で良い、そもそも何も悪いことをしていないのだから」と簡単に監視や制限を受け入れてしまえば、これはどんどんエスカレートする。
 また、現在は政府や地方自治体による「自粛要請」であり、本来であれば「自分で決める」べきもので、営業を行う店があっても良い。しかし既に警察や官吏ではなく、一般国民が「民間警察」「自警団」になって、貼り紙をしたり電話をしたりして、営業している店に対する妨害行為を行っている。これは過度な反応である。安倍首相や専門家会議がこのようなことが起きないように慎重な表現を選ばなければならないのに、あたかもそれを推奨するかのように、あまりにも危険を煽っていると私は思う。
 専門家会議は、一般の人々が「自分は新型コロナウイルスに感染したのではないか」と不安に思った場合には、まず「体温が37.5度以上が4日間続いたら医療機関に連絡せよ」という「お達し」を出した。これは医療機関に人々が殺到しないための措置であったはずだ。しかし、この「様子見」期間で症状が悪化して亡くなる人のケースが出ると、「そのような意図で述べたのではない」とし、「積極的に受診してください」という意味だった、と「受け取る方の受け取り方が悪い」「誤解だった」ということを言い出す。訳の分からない横文字を使い、このようなどうとでも意味が取れる表現を使うようでは、専門家たちの信頼性は薄らいでいく。「8割減」も本当か、できると思っているのか、ということになる。

 私が驚いたのは、知り合いの医者に「免疫力を挙げることだよ、そのためには食物繊維を取って腸内環境をよくすることだ」と言われたことだ。あんなに難しい勉強をしても、医学博士でございと威張ってみても、今回の騒ぎで私にできる助言がその程度でしかない。薬やワクチンがなければ医者でもこれくらいしか言うことがないのだ。それならば自分ができることをやりながら、淡々と日常を過ごしていくしかない。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領:コロナウイルスに関する制限において州知事の中には行き過ぎの者がいる(Trump: Some governors have gone too far on coronavirus restrictions

ブレット・サミュエルズ筆

2020年4月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/493601-trump-some-governors-have-gone-too-far-on-coronavirus-restrictions

日曜日、トランプ大統領は、全米各州でコロナウイルスの感染拡大の速度を弱めるための制限を設けているが、「やり過ぎている」州知事たちも中に入ると述べた。

ホワイトハウスでの記者会見の中で、トランプ大統領は、抗議活動を行っている人々に対して反対する考えを持っていないと述べた。抗議活動を行っている人々は、ソーシャル・ディスタンシングに関するガイドラインに反対し、各種の制限に対する肥満を表明している。各種の制限によって事業は閉鎖され、失業数が急増している。

トランプ大統領は次のように発言した。「中には行き過ぎている者たちがいる。州知事の中には行き過ぎている者たちがいる。これまでに起きていることの中には適切ではないことが含まれている。最終的には問題にはならないだろうと思う。何故なら私たちは各州の経済活動や日常活動を再開させつつあり、各州でそれらはうまくいくだろうからだ」。

トランプ大統領は続けて次のように述べた。「講義をする人々に関して言えば、私はあらゆる種類の事柄について講義する人々を見てきている。私は全ての人々と共にいる。私は全ての人々と共にいる」。

トランプ大統領は最初のうちは行き過ぎていると考えている知事の名前を挙げることを拒絶していたが、その後、ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)とヴァージニア州知事ラルフ・ノーザン(民主党)の名前を挙げた。特にノーザンについては新しい銃規制に関する州法に署名したことについては抗議されるに値すると示唆した。

トランプ大統領は次のように述べた。「ミシガン州を例にとると、ミシガン州では必要とではない、もしくは適切ではないと私が考える物事が実行されている。これは全ての人々が分かっているはずだ。ミシガン州知事とはとてもうまくやっているし、そのことは知事も恐らく分かっていると思う」。

ウイットマーについては、今年の大統領選挙で民主党の副大統領候補として取りざたされるようになっているが、それによってトランプ大統領にとっては大きな攻撃目標となりつつあるようだ。

トランプ大統領はここ数日の間、全米各州において数百人単位で集まっている抗議行動を行っている人々に対して同情的である。抗議活動している人々はホワイトハウスがウイルス感染拡大に対処するために発表したソーシャル・ディスタンシングに関するガイドラインを無視している。このガイドラインは、アメリカ国民に対して10名以上の集まりを行わないように促している。

金曜日、トランプ大統領はミネソタ州、ミシガン州、ヴァージニア州で抗議活動を行っている人々への支持を表明した。抗議活動を行っている人々は、ウイルスの拡大を弱めるための在宅命令とその他の制限に反対するデモを行った。こうした人々はこれらの各州を「開放する」と主張している。これら3つの州は民主党所属の知事たちが運営している。

ここ数日の間で小規模の抗議活動がミシガン州、オハイオ州、ヴァージニア州、ミネソタ州、テキサス州、そしてフロリダ州で行われた。その他にもこれからの数週間で抗議活動が全米各地で計画されている。抗議活動参加者の中には、トランプ大統領の名前が入った旗を振り、名前の入ったTシャツを着ている人たちがいた。

トランプ大統領はマスコミの報道で抗議活動を見たと認め、抗議活動に参加している人たちは「私たちの国への愛」を示しているのだと述べた。

各州の知事たちは、トランプ大統領による解放を求める動きに対して懸念を表明している。知事たちはトランプ大統領の言動によって人々の間で不満を高め、デモ活動を激化させることになるだろうと心配している。公衆衛生の専門家たちは多くの人々が集まることによってウイルスの感染がさらに進むことになると警告を発し、ソーシャル・ディスタンシングの必要性をさらに強調した。

ジョンズ・ホプキンズ大学のデータによると、日曜日の夜までに全米で75万5000名以上がウイルスに感染し、4万名以上が亡くなった、ということだ。

ホワイトハウスはアメリカ経済を段階的に再開する方針で、各州の知事たちにソーシャル・ディスタンシングに関するガイドラインをいつの時点で撤回できるかについて最終的な目標時期を設定するように求めている。しかし、トランプ大統領が抗議活動を受け入れていることで、州知事たちに対する敵意を煽動する危険性が高い。

ペンス副大統領は日曜日の記者会見で、「アメリカ国民は自分の住む州政府と地方自治体に注意を向けねばなりません」と述べた。

トランプ大統領は経済を再開する必要性について断固とした態度を示している。経済の再開は彼の再選を目指す選挙戦にとって中心的な柱となっている。しかし、トランプ大統領は日曜日、制限の撤回は安全を第一に考えねばならないと述べた。

トランプ大統領は次のように述べた。「多くの素晴らしいそして偉大な出来事が起きています。そして、私たちは私たちの国を開き始めようとしています。これは美しいパズルのようです」。

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抗議活動と検査に対する主張について知事たちがホワイトハウスに反撃(Governors push back against White House on protests, testing claims

ザック・バドリック筆

2020年4月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/sunday-talk-shows/493557-governors-push-back-against-white-house-on-protests-testing-claims

民主、共和両党に所属する知事たちは日曜日、トランプ大統領の在宅命令に対する抗議活動への明確な支持と全米でのコロナウイルスの検査は十分に行っているという主張に対して反撃した。

ワシントン州知事ジェイ・インスリー(民主党)は、ABCの「ディス・ウィーク」に出演し次のように述べた。「トランプ大統領はツイッターを通じて多くの州を“解放”するように抗議活動を行っている人々に訴えたが、これは“違法行為”を促進するものです。アメリカ大統領が人々に対して法律を破るように促しているのです。私はこの国で生まれ育ちましたが、このようなことが起きたことなど全く記憶にありません」。

インスリーは「これは本当に危険なことです。なぜなら人々の生命を救うことができる行為について人々に無視させることにつながるからです」と述べた。

ワシントン州はアメリカ国内において早い段階でウイルス感染拡大の中心地となった。ここ数週間、インスリーはカリフォルニア州知事ゲヴィン・ニューサム(民主党)とオレゴン州知事ケイト・ブラウン知事(民主党)といった西海岸の各州知事と協定を結び、地域の経済活動再開に向けての計画を作成しているところだった。州都オリンピアにあるワシントン州議会の建物の前での州知事の厳しい方策に対する抗議デモは日曜日に開催予定となっている。

メリーランド州知事ラリー・ホーガン(共和党)はより弱いトーンではあるが一連のツイートを批判した。CNNの番組「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」に出演し、「デモを推奨することは有益なことだとは思いません。また、大統領自身の政策に反対するためにデモをすることを人々に推奨することも良いことではありません」と述べた。

ホーガンは経済活動の即座の再開を求めることは、トランプ大統領自身が発表した連邦政府のガイドラインに反することになると指摘した。ガイドラインによれば、経済活動再開のプロセスは、その地域でウイルス感染拡大が14日間にわたって減少するまでは開始されるべきではないとされている。

ホーガンは続けて次のように述べている。「従って、木曜日に、自分が作った推奨ガイドラインに即した計画に対して人々に抗議活動に参加するように促すことは、全く訳が分からないということになります。州知事と人々に対しては完全に矛盾しているメッセージを発しているのです。連邦政府の政策と推奨を無視するように求めているのです」。

オハイオ州知事マイク・デワイン(共和党)は、デモ参加者たちは抗議する権利を持っていると述べ、自分としては、参加者たちに対してソーシャル・ディスタンシングについてのガイドラインを尊重するように求めるだけだと述べた。

デワインはNBCの「ミート・ザ・プレス」に出演し、次のように述べた。「私たちは自分が正しいと考えることを行うだけのことです。それは、経済を再開しようとすることです。しかし、そのためには多くの人々を死に追いやることがないようにとてもとても注意深く実行する必要があります。しかし、私たちは経済や日常生活を再開させねばなりません。そして、私はその目標を5月1日に置いているのです」。

ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)もまた、彼女が出した在宅命令の正当性を擁護した。この命令はアメリカ国内でも厳しい命令の一つとなっている。ウイットマーはその成果は既に上がりつつあると述べた。

ウイットマーはCNNの「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」に出演し、次のように述べた。「ミシガン州は現在死亡者数の点において全米で第3位となっています。私たちの州の人口は全米で10番目です。こうした事実からミシガン州では独自の厳しい問題が起きているということが導き出されるのです。州の規模に比べて死者数が多いという問題が起きており、そのために私たちは人々を守るために独自のより積極的な行動を取る必要があるのです」。

ウイットマーは続けて次のように述べた。「現在、感染者数は徐々に兵站になってきつつあります。これが意味するところは、私たちは人々の生命を救っているということです」。ミシガン州の州都ランシングの州議会の建物の前での抗議活動に対して、トランプ大統領は特に支持を表明している。

ペンス副大統領は、フォックス・ニュースのキャスターであるクリス・ウォレスに質問された際に、トランプ大統領のツイートに直接言及はしなかったが、抗議活動について次のように述べた。「数百万のアメリカ国民はソーシャル・ディスタンシングに関するガイドラインを守ってくれていると思いますよ。人々が犠牲を甘受しているのは、各州の知事たちに経済の再開を、責任をもって安全に行える方法を見つけて欲しいと願っているからです」。

ペンス副大統領は「フォックス・ニュース・サンディ」に出演し、「アメリカ国民は全て、このアメリカ国内においてドナルド・トランプ大統領以上に経済活動や日常活動を再開させたいと望んでいる人間などいないことをよく分かっています」と述べた。

ホワイトハウスは各州には必要な検査を実施する能力がありと主張しているが、各州の知事たちはこの主張に反論している。ヴァージニア州知事ラルフ・ノーザムはこのような主張は「激しい思い込み」に過ぎないと指摘している。

ノーザムはCNNの「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」で次のように述べた。「検査だけのことではないんです。信じていただけるか分かりませんが、私たちには十分な綿棒さえないのです」。

ノーザムはトランプ大統領の一連のツイートに触れ、次のように述べた。「私たちの大統領は検査能力を向上させることができていません。そして、今は抗議活動に注目することを選んでいます。しかし、今は抗議活動をする時ではありません」。

ノーザムは続けて次のように述べた。「現在は分裂し、いがみ合う時ではありません。立ち上がり、人々に共感をもたらす指導力を発揮する時です。今回の感染拡大で私たちの国でいったい何が起きているのかを理解できる指導者が必要な時です。そして、今は真実を述べるべき時で、人々をまとめる時なのです」。

専門家たちはアメリカの経済活動を再開するためには十分な検査能力が必要だと述べている。そして、検査ができなければ感染者数が実際に減少しているのかどうかを正確に判断することは不可能だと繰り返し強調している。

メリーランド州知事ホーガンは州の検査能力についての決めつけは「完全な誤り」だと述べた。

ホーガンは日曜日に「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」に出演し次のように述べた。「検査能力についてとりわけ強調し、各州には十分な検査能力があり、それを使うべきだとし、それなのに州知事たちは自分たちの仕事をしていないと主張することは、全くの誤りと言うしかありません」。ホーガンは、メリーランド州では先月だけで検査能力を5000%増させたが、各種事業を再開させることができるレヴェルにまではまだ到達していないとも述べた。

オハイオ州知事デワインは食品・医薬品局(FDA)が更なる行動を実行することが必要だと発言した。デワインは更なる支援があれば、「オハイオ州では一晩のうちに検査能力を倍増することは高い確率で可能であり、三倍増にすることも可能かもしれません」と述べた。

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(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大が続くアメリカで支持を集めているのは最前線での司令官である各州知事や市長たちだ。特に感染拡大の規模が大きいニューヨーク州では、アンドリュー・クオモ知事の支持率が高くなっている。民主党にとっては4年後の大統領選挙の重要な候補者となるだろう。

アンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo、1957年-、62歳)は2011年からニューヨーク州知事を務めている。1997年からは二期目のビル・クリントン政権で住宅・都市開発長官を務めた。父であるマリオ・クオモ(Mario Cuomo、1932-2015年、82歳で死去)1983年から1994年までニューヨーク州知事を務めた。

アンドリューは、ジョン・F・ケネディ元大統領の姪で、JFKの弟ロバート・ケネディ元司法長官の娘であるケリーと結婚していたが後に離婚している。クオモ家はニューヨーク民主党の名門ということになる。マリオ・クオモはレーガン大統領が席巻した1980年代のアメリカ政治において民主党の大物として存在感を示した。2015年1月1日に亡くなったが、その時のことを本ブログでも紹介している。

※「元ニューヨーク州知事マリオ・クオモが亡くなりました。彼の1984年の演説は今の日本の状況を話しているかのようです」(2015年1月3日)↓
http://suinikki.blog.jp/archives/19838549.html

連邦政府やトランプ大統領の対応を手厳しく批判し、ホワイトハウスやトランプ大統領から罵られているグレッチェン・ウィットマー(Gretchen Whitmer、1971年―、48歳)は2019年からミシガン州知事を務めている。それまではミシガン州で検察官を務め、後にミシガン州下院議員、ミシガン州上院議員を務めた。カリフォルニア州のゲヴィン・ニューサム知事を筆頭に民主党系の州知事たちは早めの対応を行った。しかし、以下の記事にあるように、アメリカ南部に多い共和党系の知事たちは、トランプ大統領と同様に対応が後手に回った。

 民主党系の知事たちが行っているのは実態把握と思い切った施策、補償だ。日本でもそれを目指して実施しようとしているが、州知事たちほど徹底しているとは言えない。日本でも成功していると評価されているのは検査を徹底して実態把握を行った和歌山県のケースだ。

 リーダーの資質はなかなか分からないものだ。立派な経歴や平時での立派な業績は緊急時には役に立たないことが多い。しかし、緊急事態に強いというアピールはするが、解決策を自ら考えられず、無茶な目標設定をして、自分の責任を下に押し付けて、無理難題を押し付けるだけで成功とする日本的リーダー像ということもここでもう終わりにしなければならない。今回の出来事で私たちはリーダーとはどうあるべきか、ということを考える機会を得たということになる。

 日本には「責任を取ればいいというものではない」と放言する指導者がいる。自分の失敗を下にかぶせて自分はのほほんとしている、信頼を損なうことをしておいて店として恥じない指導者がいる。そうした中でクオモ知事は「責めるなら自分を責めて欲しい、私が責任者だ」と述べた。これだけの指導者を日本人はついに得ることはできなかった。それは私たちが常に指導者や責任について考えこず、旧態依然としたパワーハラスメント型の指導者像しか持ち得てこなかったからだ。その不幸は、上は国政、下は日常の仕事や生活の面にまで貫かれている。日本は不幸な国である。

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各州の知事たちがコロナウイルス感染拡大への対応で評価を高め、トランプ大統領をしのいでいる(Governors win high marks for coronavirus response, outpacing Trump

リード・ウィルソン筆

2020年4月2日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/state-watch/490825-governors-win-high-marks-for-coronavirus-response-outpacing-trump

アメリカ国民は、全米で21万6000人以上の感染者が出ているコロナウイルス感染拡大への対応で州の対応をリードする州知事たちに高い評価を与えている。

同時に、各種世論調査によると、トランプ大統領に対する考えを変えるアメリカ国民の数はより少ないということも分かってきた。大統領は連邦政府のコロナウイルス感染拡大への対応について毎日新しい情報を発信するために提示に記者会見を行っている。いくつかの調査の結果によると、各州の知事たちが物資の供給と支援の不足について警告を発するようになり、連邦政府の対応に対して不満を抱くアメリカ国民の数は増えている。

AP通信に依頼されてナショナル・オピニオン・リサーチ・センターが実施した世論調査の結果では、アメリカ国民の57%が自分たちの住む州の州政府によるウイルス感染拡大への対応について評価しているということが分かった。一方、連邦政府の対応について評価したのは38%にとどまった。

それぞれの州で知事たちの多くは毎日メディアと住民向けに記者会見を行っているが、そのために評価が高まっている。

マーケット大学法科大学院が先週実施した世論調査によると、ウィスコンシン州に住む有権者の65%がトニー・エヴァース知事(民主党)の仕事ぶりを評価しており、1カ月でその数字が14ポイントも増加した。エヴァースのパンデミックへの対応を76%の有権者が評価しているという結果が出た。同時に、トランプ大統領の支持率は48%で1カ月前に比べて変化はなかった。そして、大統領のウイルス感染拡大への対応を評価したのは51%にとどまった。

マーケティング・リソース・グループが実施した世論調査の結果では、ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)の仕事ぶりへの評価は60%にまで高まった。評価しないと答えたのは22%にとどまった。ミシガン州は大統領選挙の激戦州であるが、ここでウィットマーの支持率はトランプ大統領の支持率の数字に比べて15ポイントも高いという結果が出た。ウィットマー知事が連邦政府からの支援の欠如について不満を述べた際、トランプ大統領はウィットマーについて「ミシガン州のあの女」と否定的に述べた。

ニューヨーク州では、州在住の有権者3分の2がアンドリュー・クオモ知事(民主党)は素晴らしい仕事をしていると評価している。シエナ・カレッジの実施した世論調査で、クオモ自身にとってこれまでで最高の数字を記録した。87%の有権者がウイルスをコントロール下に置くためにクオモ知事が行っている仕事を評価すると答えた。一方、トランプ大統領の仕事を評価すると答えたのは41%にとどまった。

ボールドウィン・ウォレス大学、オークランド大学、オハイオ・ノーザン大学が実施したヨロ調査の結果によると、オハイオ州に住む有権者の80%が、マイク。デワイン知事(共和党)のウイルス感染拡大を止めるための行動を評価しているが、トランプ大統領の仕事を評価していると答えたのは58%にとどまった。

ニューハンプシャー州の有権者の約75%、民主党支持の有権者の61%も含まれているが、クリス・スヌヌ知事(共和党)の対応を評価していると答えた。しかし、トランプ大統領の仕事を評価すると答えたのは41%にとどまった。ニューハンプシャー大学の世論調査の結果で明らかとなった。

カリフォルニア大学サンディエゴ校政治学部長のサッド・コウシアーは次のように述べている。「深刻な自然災害の後に私たちが良く目にしている状況と同じで、各州の知事たちは広範な支持を集めています。それはCOVID-19への政府の対応において知事たちが顔となっているからです」。

それぞれの州で実施した世論調査の結果では、ワシントン州知事ジェイ・インスリー(民主党)、ペンシルヴァニア州知事トム・ウルフ(民主党)、ノースカロライナ州知事ロイ・クーパー(民主党)の行った対応を60%以上の州の有権者は支持している。ワシントン州とペンシルヴァニア州では、トランプ大統領の支持率は40%台で、ノースカロライナ州では53%が大統領の感染拡大への対応を評価すると答えた。

専門家たちは、素早くかつ決然と行動した知事たちは有権者に対して、この状況で有権者を最優先にしているという印象を与えているが、連邦政府はそうではない、と指摘している。

マーケット大学の世論調査担当者チャールズ・フランクリンは次のように述べている。「感染拡大についての懸念と不安が拡大している時期、明確な行動は強力な肯定的な反応を生み出します。ホワイトハウスはその行動とメッセージの点で、より明確さを失っていました」。フランクリンはエヴァース知事の支持率の急上昇を発見した。

知事たちは、連邦政府レヴェルの政治家や役人に比べてより党派性が薄いと見られるという点でも優位性を持っている。有権者はアメリカの首都倭信徒でのトランプ政権と民主党が過半数を握っている連邦下院との間の争いに比べて、州都での党派争いについてはあまり認識をしていない。

各州政府は連邦政府に比べて、有権者からの信頼を得ている。特に極度に党派分裂が激しくなっている時代である現在、州政府の方が信頼されている。トランプ大統領は記者会見をして高い視聴率を稼ぎだしているが、ファクトチェックが必要な不正確な情報が記者会見で出てくることで、信頼を損なうことになっている。

グリンネル・カレッジの世論調査はアイオワ州を拠点とする世論調査専門家アン・セルザーが実施した。この世論調査の結果では、72%が自分たちの住む州の知事たちは情報の信頼できる発信元であると答えている。トランプ大統領を信頼できる情報の発信元だと答えたのは46%にとどまった。

トランプ大統領の支持率は通常であれば40%台中盤であったが、ここ数週間で50%に近い水準にまで上がっている。アメリカ人は危機の時期には大統領を中心にしてまとまる。しかし、トランプ大統領は過去の大統領に比べて党派分裂の激しい、党派性の強い大統領である。911事件の後、民主党支持者たちがジョージ・W・ブッシュ大統領を中心にしてまとまったようには、トランプ大統領の場合にはいっていない。

前述のコウシアーは次のように語っている。「州知事たちは党派で見られることが少ないのです。今回の危機が起きる前でも、知事たちは反対党を支持する有権者たちから支持を受ける傾向がありました。特に現在の大統領になってからはそうです。有権者たちは元々州知事たちへの信頼を持っていたのです」。

このポイントは、知事の中には選挙に何とか当選した人たちでも現在高い人気を誇っている人たちがいる、自身の所属政党を支持していない有権者からも人気を得ている、ということで明らかになっている。ウィスコンシン州のエヴァース知事、ニューハンプシャー州のスヌヌ知事、ノースカロライナ州のクーパー知事といった人たちは、選挙は接戦で、何とか勝利した。それが今や高い人気を誇っている。

州知事の中には、ウイルスの感染拡大を阻止するために医療衛生関係の役人たちが実施を求めた劇的な方法を採用することを控えた知事たちもいる。フロリダ州、ジョージア州、ミシシッピ州の知事たちは全員共和党に所属しているのであるが、水曜日になってようやく州民たちに対して在宅することを命じた。その数週間前にはカリフォルニア州のゲヴィン・ニューサム知事(民主党)は全米で最初にこのような徹底した方策を実施した知事となった。

しかし、各種世論調査によると、このような思い聞いた方策は多くの人々の考えから外れたものではないということが分かった。NORCAP通信の共同世論調査の結果では、アメリカ国民の4分の3以上が人々に在宅することを求め、バーやレストランの閉店を支持している。80%以上のアメリカ国民が海外からアメリカに入国した人々の強制的な隔離、人々の集まりの制限、学校の休校措置を支持している。

フランクリンは、悲劇的なパンデミックから経済の落ち込みが起きるということが明らかになれば、状況は変化するだろうと指摘している。有権者たちは決定的な行動を取っている知事たちを支持している。

フランクリンは次のように述べている。「死者数が増加し、同時に経済に対する警鐘が鳴り響く中で、人々の意見がどのように変化するかを予測することは困難です。しかし、現在のところ、知事たちは正しいことをしていると見られています」。

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バイデンはウィットマーを副大統領候補として考えていることを認める(Biden confirms he's considering Whitmer for VP

タル・アクセルロッド筆

2020年4月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/490570-biden-confirms-hes-considering-whitmer-for-vp

ジョー・バイデン前副大統領は今週、ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)について、自身が大統領選挙の民主党候補者となる場合に副大統領候補に指名する可能性を持つ女性の一人であり、その可能性について考慮していることを認めた。

バイデンは既に女性を副大統領候補にすると明言し確約している。木曜日の夜、ウィットマーについてここ数か月、副大統領候補に指名する可能性について考慮していると発言した。しかし、同時にバイデンは10名ほどの女性たちについて可能性について考慮しているとも述べた。

バイデンはMSNBCの番組に出演し、司会者のブライアン・ウィリアムズに対して次のように語った。「ウィットマー知事を候補者リストに加えたのは2か月前のことです。彼女はそのままリストに残り続けています。いいですか、ブライアン、私は今、副大統領候補になりうる人物のバックグラウンドチェックを行う組織を構成する準備をしています。この組織は4月中旬までに作ります。4月の第2週か3週までにはできます」。

バイデンは続けて次のように述べた。「私は大統領になる準備ができていると考えている女性たちについて考えてきました。そして、私はこうした人たちと協力して仕事を進めることができるし、こうした人々も喜んで協力してくれると思います。こうした女性は6人から10人いますよ」。

ウィットマーは民主党の政治家として人気を急上昇させているスターだ。2018年にミシガン州知事に就任した。これまでバイデンの副大統領候補として考えられていた。ウィットマーは11月にトランプ大統領を倒すために民主党がどうしても奪還しなければならないミシガン州を運営している。そして先月ミシガン州で予備選挙が実施される前にバイデン支持を表明した。バイデンはミシガン州でサンダースに2桁の差をつけて圧勝した。

ウィットマーは全米のマスコミから関心を集め、民主党や民主党支持の有権者からの拍手喝采を受けたのは、ウィットマーがトランプ大統領のコロナウイルスの全国的感染拡大に対して批判を行い、彼女の発言に対してホワイトハウスが叱責を行ったからだ。

バイデンはウィットマーを擁護する内容の声明を発表した。その中で次のように述べた。「今回のパンデミックで、ドナルド・トランプはリーダーシップを放棄することで国家を危機に直面させているが、グレッチェン・ウィットマー知事はミシガン州の各家庭のために勇敢に戦い続けている。ドナルド・トランプはウィットマー知事からいくつかのことを学ぶことができる。スピードが大事、細部が大事、そして、人々が大事、ということだ」。この声明が出たことで、ウィットマーが民主党の副大統領候補になるのではないかという憶測が更に出るようになっている。

ウィットマー以外にも、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、エイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)、ヴァル・デミングス連邦下院議員(フロリダ州選出、民主党)とジョージア州下院少数党(民主党)院内総務を務めたステイシー・エイブラムスなどがバイデンの副大統領候補として名前が挙がっている。

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