古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:憲法9条

 古村治彦です。

 

 今回は、安倍首相による憲法変更に向けた動きに関する記事をご紹介します。世論調査では、憲法9条を変更すべきという考えの人とすべきではないという考えの人の割合が拮抗しつつ、わずかに変更すべきという人の割合が多いが、安倍晋三首相の下での変更に反対の人が半数を少し超える割合でいるということをまず紹介しています。

 

 憲法9条の変更は、大袈裟ではなく、「国論を二分する」大きな問題です。安倍首相は、憲法九条の第一項と第二項に変更を加えることなく、第三項に自衛隊の存在を明記するという方向での変更を考えていることを明らかにしました。しかし、これはかなりアクロバティックな、困難な作業になると思われます。もし第三項を加えるのなら、第一項、第二項に何らかの変更を加えねば成立させることはかなり難しいと思います。それでも日本のその世代最高の頭脳と努力体質を持つ官僚たちが集まって、知恵を絞って理屈を考え出すことでしょう。

 

安倍首相は、自衛隊が違憲の存在ではない、ということを明記する、違憲の存在であるという考えが出ないようにする、という主張を行っています。はっきり言って、実態は、国民の大部分は自衛隊を違憲ではないと考えているでしょう。しかし、自衛隊の専守防衛、自衛権のための存在であるとまでは認めても、自衛隊が他国で援助目的以外の活動を行うことには反対が多いでしょう。

 

 安倍首相は2020年には変更した憲法を施行したいと述べました。そのためには残された時間は大変短いものです。この期間に、国会での熟議、国民一人ひとりの考えの醸成、国民投票を行わねばなりません。そのためには、月並みな言い方ですが、私たちが自分の問題として、この時代に国民投票に参加できる年齢になっていたことの巡り合わせを噛み締めながら、よく考えてみることが必要となります。

 

 私は、憲法の変更は必要ではないと考えますし、現状以上に自衛隊がその役割拡大することも必要ではないと考えます。

 

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日本は平和憲法の変更に向かっているのか?(Is Japan Moving to Revise Its Pacifist Constitution?

 

エミリー・タムキン筆

2017年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/05/01/is-japan-moving-to-revise-its-pacifist-constitution/

 

日本の平和主義を打ち出した憲法は今週水曜日に70周年を迎えた。記念日を前に、日本国民が憲法の変更を望んでいるのかどうかを知るために郵送のアンケートが実施された。そして、日本国民の約半分がそれを望んでいるという結果が出た。

 

日本国民の半数近くが憲法変更を望んでいる。憲法9条は戦争放棄を規定している。調査対象の約49%が憲法9条を変更しなくてはならないと考えている一方で、47%は変更すべきではないと答えた。しかし、過半数は今すぐの変更を望んでいない。51%の人々は安倍晋三首相の下での憲法変更を望んでいない。安倍首相は月曜日、憲法の歴史的な変更を人々に訴えた。

 

 しかし、アンケートに答えた人々は全員、ほんの数年前とは軍事力との関係が大きく変化した国に既に暮らしている。憲法変更を行うことなしに、安倍晋三首相は、第二次世界大戦以降、日本の軍事力を縛ってきた制限を慎重に緩め、世界の安全保障に対してより大きな役割を果たそうとしてきた。

 

安倍首相は既に、憲法9条を破らない形で集団的自衛権の行使ができる諸法律を可決させた。そして武器輸出禁止を解除した。日本は、東南アジア諸国連合との更なる安全保障関係の強化を主導している。東南アジア諸国連合は中国についての懸念を募らせている。月曜日、日本政府は、日本の領海内を航行するアメリカの輸送艦一隻に同行させるために自衛隊が保有する最大級の戦艦一隻を派遣した。

 

アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・オースリンは、「安倍首相は既に、日本を軍事と防衛を重視する“普通の国”にするという希望を叶えるために目的を達成した」と述べた。

 

カーネギー財団のジム・ショフは、しかし、安倍首相は、日本の安全保障関連のいくつかの法律の変更を憲法に成文化するために十分な支持を得るために努力を続けねばならない、と述べた。そのためには、変更された健保9条の内容がどのようなものとなるか、拘束を解かれた日本の軍隊がどのような形になるかということを人々が理解しなければならない。ショフは、これが「階段における次の大きなステップ」だと語る。

 

憲法の変更は議論の内容次第であるし、多くの国民の支持を必要とするのが現状だ。そして、日本を取り囲む変化し続ける環境を反映したものとなる。日本は一貫性のない北朝鮮、方向性を予測しがたい韓国、拡大を続ける中国に囲まれている。中国は南シナ海、そして日本により近い東シナ海で拡大を続けている。こうした状況に対処するために、日本の指導者たちはここ数年、アメリカとの関係を再検討しようとしている。彼らは、アメリカ政府への過度の依存は急激な変化についていけなくなる可能性があると懸念を持っている。

 

オースリンは、日本国民は現在も平和主義的なのだと語る。防衛力の向上は、世界へ、もしくはアジアへの介入の意欲を持っているということを意味するものではない。

 

このことを忘れて、日本の拘束を解かれた軍事力を介入主義的な政策に使おうとする指導者は、その地位を追われるという形で、人々から厳しい教えを受けることになるだろう。

 

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(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22


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 古村治彦です。

 

 憲法記念日に日本会議が開催した集会に安倍晋三首相が自民党総裁の肩書でビデオメッセージを寄せました。この中で安倍首相は変更した日本国憲法を2020年に施行したいと述べました。

 

2019年に国民投票を行うことになるでしょう。そのためには、前段階として、国会の発議が必要となります。国会発議から国民投票までは3カ月から6カ月を必要とし、その間に賛成、反対の投票運動が行われます。国会の発議には衆議院、参議院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要となります。国会の発議のための真偽も必要となると、2018年の間に国会で改憲の発議の審議が始まることになるでしょう。改憲はまだ先の話という考えが頭の片隅にありましたが、いよいよ待ったなしという状況になってきました。

 

 私たちはこうした重要な状況の中で偶然にも生まれて、判断をするということになります。これは私たちの前の世代、過去の世代の先輩たち、そして未来の世代に対して、きちんと責任を果たさねばならないめぐりあわせになってしまったということになります。

 

 安倍晋三首相は憲法9条の変更を行う考えのようです。憲法9条に自衛隊の存在を書き込むことで、「自衛隊が違憲ではないか」という考えが存在できないようにするということのようです。

 

 日本国憲法第9条の1項は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とあり、2項は「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」となっています。

 

 第2項の「前項の目的を達するために」という言葉を衆議院帝国憲法改正案委員小委員会の芦田均委員長が入れた(芦田修正)ために、個別自衛権のための防衛力、自衛戦力を保持することは可能になったという解釈がなされています。ですから、自衛隊の存在が合憲か、違憲かということは、難しい問題ですが、違憲ではないという判断を下すことができています。

 

 安倍首相は自衛隊の存在を憲法9条に書き込むと言っていますが、彼が狙っているのは、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という部分の変更だと思います。自衛隊を自衛のための戦力であり、かつこれを戦争に用いない(戦争はできないのだから)、国際問題の解決には使用しない、という現在の状況を大きく変更することは必要ありません。

 

 しかし、アメリカからの日本に対する「応分」の安全保障の負担、ということを考えると、自衛隊の海外派遣において、より積極的なアメリカに対する「貢献」を行うためには、上記の部分が邪魔になります。ですから、自衛隊の存在を書き込むというとにかこつけて、この部分の変更を行うであろうということは容易に想像できます。

 

 あと、私が気になったのは、安倍首相が2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催について、「日本人共通の大きな目標」と述べている点です。私は東京オリンピック・パラリンピックの現状での開催には反対です。ですから、開催に関して、法律を犯してまで反対することはしませんが、積極的に協力することはありません。従って、少なくとも私にとっては、東京オリンピック・パラリンピック開催は「日本人共通の大きな目標」ではありません。

 

 近代的な民主政治国家においては国家目標に反対する自由は保障されていますし、全員が一致して同じ方向に向かうことを強制されることはありません。ですから、私は近代的な民主政治体制を採用している日本に住む国民として、反対の意見を表明します。もちろん、オリンピック・パラリンピックに向けて努力している方々の努力を蔑ろにするつもりはありません、某元総理大臣をはじめとする無能な最高幹部、選手を蔑ろにしている競技団体のたち以外は、ですが。

 

 オリンピック・パラリンピックは都市開催が原則であり、過度なナショナリズムを煽るようなことに利用されるべきではありません。戦前のベルリン・オリンピックがナチスに利用されたことを考えると、「日本人共通の目標」という言葉は大変危険であると言わざるを得ません。

 

 安倍首相は、2020年を自分の政治人生のハイライト、花道にするつもりです。日本国憲法の改変と東京オリンピック・パラリンピックの開催を花道に引退するつもりでしょう。これらができれば日本の歴史に名前を残す大政治家となると考えていることでしょう。大叔父である佐藤栄作元首相のように、ノーベル平和賞までも狙えるとも思っているでしょう。

 

 安倍首相は1964年の東京オリンピックのことを念頭に置いて2020年の東京オリンピック・パラリンピックについて語っています。しかし、私は現在状況を考えると、2020年の東京オリンピック・パラリンピック前の状況は、1940年の幻となった東京オリンピックの頃の方がよく似ているのではないかと考えます。国民生活の苦しさ、ナショナリズムと排外主義、政党の堕落といった点は同じではないかと思います。ですから、2020年は安倍さん個人にとっては輝かしい未来が待っていると思えるかもしれませんが、残念ながら私にはそう思えないのです。

 

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憲法改正「2020年に施行したい」 首相がメッセージ

 

朝日新聞デジタル 5/3() 14:17配信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170503-00000034-asahi-pol

 

 安倍晋三首相は3日、憲法改正を求める集会にビデオメッセージを寄せ、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明した。首相は改正項目として9条を挙げて「1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方は国民的な議論に値する」との考えを示した。

 

 18年秋の自民党総裁選での3選を前提に、自らの悲願である憲法改正の実現に意欲を示した。野党の反発は必至だ。

 

 首相がメッセージを寄せたのは、日本会議が主導する美しい日本の憲法をつくる国民の会などの改憲集会。

 

 首相はメッセージで「憲法改正は自民党の立党以来の党是」とした上で、「憲法を改正するか否かは最終的には国民投票だが、発議は国会にしかできない。私たち国会議員は大きな責任をかみしめるべきだ」と強調。20年に東京五輪・パラリンピックが開催されることについて「日本人共通の大きな目標。新しく生まれ変わった日本がしっかり動き出す年」として20年に改正憲法の施行を目指す考えを示した。

 

 憲法9条について、首相は「多くの憲法学者や政党には自衛隊を違憲とする議論が今なお存在する。あまりにも無責任だ」として、自衛隊の根拠規定を9条に追加すべきとの考えを強調。さらに「改憲勢力」と位置づける日本維新の会が改正項目に掲げる教育無償化についても「一億総活躍社会を実現する上で教育が果たすべき役割は極めて大きい」と前向きな姿勢を示した。

 

 首相のメッセージに対して、米ハワイ・ホノルルを訪問中の自民党の二階俊博幹事長は2日午後(日本時間3日午後)、「総理がそういうことを熱烈に希望しているなら、安倍内閣を支持している以上、積極的に支持、協力していくことが当然ではないか」と同行記者団に語った。(藤原慎一、ホノルル=山岸一生)

 

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