古村治彦です。

 ジョー・バイデン大統領の支持率が低迷しているということはこのブログでも何度もご紹介した。今年の中間選挙では民主党が連邦上下両院での過半数を失うのではないかという見通しもご紹介している。また、2024年の大統領選挙については「トランプが出馬してくるのではないか、そうなるとバイデンでは勝てない」という考えが広がっている。

ヒラリー・クリントンが色気を出してきて、「自分が読むはずだった2016年大統領選挙の勝利演説」を読むという前代未聞の、錯乱しているとしか思えない行動をし、『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムニストであるトーマス・フリードマンは「バイデンが大統領候補となり、副大統領候補には共和党のリズ・チェイニー連邦下院議員がなるべきだ」などと馬鹿なことを言い出している。このこともブログでご紹介した。皆口をそろえて異口同音に、「民主政治体制(デモクラシー)の危機だ」などと言っているが、自分たちがデモクラシーの破壊を行っていることに気付かない。

 それもこれもバイデンの支持率が低迷していることが原因であるが、それでは、どうしてバイデンの支持率が低迷しているのか、ということになるが、それを以下の記事では、「バイデンができないことを過度に約束してしまい、現実にはできていないことばかりで、人々の期待を裏切っている。人々はバイデンについて物足らないと思っている」と分析している。

 ドナルド・トランプ前大統領時代に始まった新型コロナウイルス感染拡大について、すぐに求められるかのような幻想を人々に与えて当選してみたものの、結果は期待外れであった。経済面で言えば、現在アメリカは高いインフレーション率に苦しんでいる。国内での不満を外に逸らすというこれまで多くの国家が採用してきた常套手段をバイデン政権も使い、人々の不満を対ロシアとの戦争直前までの緊張関係に向けさせようとしている。本当にぶつかる前に寸止めで終わらせようとしているのかもしれないが、突発的、偶発的に何かが起きれば、制御不可能な状態になることも考えられる。

 お膝元の民主党内部の対立も激しく、せっかく上下両院で過半数を握っているうちに目玉法案のビルド・バック・ベター法案を可決させたいと思っていたら、民主党内から反対者(ジョー・マンチン連邦上院議員)が出たために、先行きは不透明になっている。バイデンの置かれている状況は厳しさを増すばかりだ。

 2024年まで彼自身の健康状態が持つのかどうかということも含めて、これから注目していかねばならない。

(貼り付けはじめ)

バイデンの過度に約束した問題(The Memo: Biden's overpromising problem

ナイオール・スタンジ筆

2022年1月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/589478-the-memo-bidens-overpromising-problem

バイデン大統領が抱える問題は、一つの大きな問題に集約されつつある。それは、彼が実際に達成したこと以上のことを約束してしまったという人々の認識だ。

バーニー・サンダース上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)のような左派が、バイデンはフランクリン・デラノ・ルーズヴェルト以来最も進歩的な大統領になるだろうと予測した時期もあったが、それはとうに過ぎ去ってしまったようだ。

バイデン自身が、6ヶ月前に新型コロナウイルス感染拡大を打ち負かす寸前まで来ていると主張したが、これもまた全くの時代錯誤に聞こえるようになってしまった。

マサチューセッツ大学アマースト校・YouGovが火曜日に発表した共同世論調査の結果では、成人の55%がバイデンについて「期待以下だ」と感じているということだった。2021年4月の段階での調査の数字36%から上昇している。

状況が好転する気配は全くない。バイデンが掲げる最優先課題は困難に陥っている。いや、もっと悪い状況になっている。

この数十年の間で最大の社会的セーフティネットの拡充を実現しようとするバイデンの努力は、Build Back Better計画として示されているが、この計画は何とか命脈を保っているという厳しい状況にある。最終的にビルド・バック・ベター法案が通ったとしても、かつて想定されていたものよりはるかに小規模なものになるだろう。

デルタ変異株とオミクロン変異株に出現によって、新型コロナウイルスは打ち負かされつつあるという考えは現在消え去ってしまった。

これまでバイデン政権を擁護する傾向にあった論客たちも、検査やマスクのガイドライン、コミュニケーション戦略に対する行政のアプローチに批判的な見方を示し始めている。火曜日には、アンソニー・ファウチが、「ほぼ全ての人が」いずれコロナウイルスに感染すると予測した。

バイデンは投票権補償法案を守ろうとする動きを見せているが、多くの民主党所属の連邦議員たちは、バイデンが戦う意志を示しているだけで、成功のための現実的な戦略を練っている訳ではないのではと疑っている。

投票券保護活動を行っている活動家たちの多くは、火曜日にアトランタで行われたバイデンの大規模な演説に出席することを拒絶した。拒絶した活動家の中で最も注目されているのは、ジョージア州知事選挙候補者ステイシー・エイブラムスだ。彼女はスケジュールの都合を理由にして欠席した。

民主党の支持層の多くは、気候変動や警察改革など、他の重要な目標もないがしろにされていると感じている。気候変動は活動家が望むほど広範囲に及んでおらず、警察改革については可能性が全くなくなってしまったように見える。

これらを総合すると、進歩主義的な政治家たちと支持者たちは苦悩し、一般国民はバイデンに幻滅している。この結果は驚くにはあたらないだろう。

サンダースは最近の『ガーディアン』紙とのインタビューで、「重要な軌道修正」を呼びかけ、民主党が「労働者階級に背を向けている」と非難した。

今週初め、コーリー・ブッシュ連邦下院議員(モンタナ州選出、民主党)は本誌の取材に対して次のように述べた。「選挙に勝つということは、見栄えを良くすることではない。善良であり正直であることだ。進むべき道は、痛みが存在しないふりをするのではなく、国中で人々が感じている痛みに対処する政策を実際に制定することだ」。

著名な公民権運動家であるジョネッタ・エルジーは、バイデンの投票権に関する取り組みは「確実に遅れている」、もっと前から「最優先事項」として認められるべきだった、と本誌に述べている。

より広い視野で見ると、バイデンは、連邦上院議員時代30年間に特徴的だった穏健な漸進主義に回帰している、とエルジーは評した。これは、2020年の民主党予備選の過程で左派がバイデンを非常に警戒したのと同様だ。

エルジーは、2020年大統領選挙に向けて、バイデンは「実際よりも進歩的であるということを示すある種のパフォーマンス」を行ったと主張した。穏健派のバイデンに戻っただけで、進歩的な政策はその変わり身の完全に道連れになりそうだ、と述べた。

人々が持つそういう感情は、大統領にとって大きな問題だ。

中間選挙まであと10ヶ月となった。バイデンは、支持率が低迷していること、新大統領の政党が最初の中間選挙で議席を失うという強力な歴史的傾向があることを考えると、厳しい逆風に直面している。

そのような運命を避けるために、あるいは民主党の敗北を破滅的でないレベルに抑えるために、バイデンは何とかして一般国民を味方につけ、彼の基盤を活性化させ続ける必要がある。

若者向けの進歩主義的な団体であるサンライズ・ムーヴメントの全国広報担当者ジョン・ポール・メヒアは、「もし民主党が、“私たちは努力しました、もう一度努力するから私たちに投票して下さい”というメッセージで中間選挙に臨んだら、彼らは負けるだろう」と述べた。若者向けの進歩主義的な団体であるサンライズ・ムーヴメントの全国広報担当者であるジョン・ポール・メヒアは、「民主党はこれから、アメリカ国民の多数派に本当に約束を果たすことができることを示す責任がある」と述べた。

ホワイトハウスは、これらの批判に対して精力的に反撃している。

ここ数週間、ホワイトハウスのロン・クレイン首席補佐官やジェン・サキ報道官などの側近の補佐官たちは、バイデンの大統領就任1年目に600万以上の雇用を創出したことを含む経済実績を強調してきた。

バイデン政権擁護派はまた、バイデンの2つの大きな立法成果である、昨年3月に可決された新型コロナウイルス感染救済法案と11月に可決されたインフラ法案は重要だと主張している。

前者は何百万人ものアメリカ人に必要な救済を提供し、後者はここ数十年で最も大規模な投資であり、これらを合わせると約3兆ドル規模にもなる。

しかし、問題はバイデンが何もしていないことではない。彼に投票した人々の多くが、もっと多くのことを望んでおり、その期待を彼自身の言葉で裏切ってしまったことが問題だ。

投票権に関する法案について、このパターン(期待を裏切る)を再現する危険性が高そうだ。

バイデンはアトランタでの演説で、連邦上院のフィリバスター(議事妨害)に対する阻止行動を支持した。また、南北戦争や1950年代から1960年代にかけての人種差別との戦いなど、過去の世代の画期的な闘争と法案をめぐる闘争を比較した。

しかし、民主党の主要な連邦上院議員たちは、阻止行動の可能性は低いと考えられる。ジョー・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、民主党)とカーステン・シネマ連邦上院議員(アリゾナ州選出、民主党)は、フィリバスター改革への反対から離脱することを示す公のサインは出していない。

投票権法案の進行は混迷を深めている。

「バイデンは交渉まとめ役として立候補したが、これまでのところ、彼がやったことは、自分の計画のために、持っていた影響力を低下させることだけだ」とメヒアは述べている。

中道派の民主党議員たちは、このような批判は不当であり、バイデンが議会のわずかなリードを保っている多数派に関して、数学の法則に逆らうことができるという考えを前提にしていると主張する。

しかし、公平であろうとなかろうと、「バイデンは物足りない」という疑念が忍び寄ることは、政治的に致命的な結果を招きかねない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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