古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:政治資金

 古村治彦です。

 

 アメリカ政治で動くお金は膨大な額になります。アメリカの政治家たちが集める政治献金額は桁外れです。全米規模の大統領選挙となれば、選挙運動のための移動や事務所設置、更にはテレビコマーシャルのためにお金はいくらあっても足りません。

 

 今回は2019年第二四半期の政治献金額についての記事をご紹介します。注目は2019年4月末に出馬宣言を行ったジョー・バイデン前大統領がどれほどの政治献金を集めるかという点にありました。結果としては二カ月強で2150万ドルを集めたのでさすがということになりますが、期待外れだったという声をもあります。

 

 民主党の候補者の中で最高額を集めたのはインディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジで2480万ドルでした。ブティジェッジは2019年3月末からメディアの注目を集め始め、CNNでのタウンホールミーティング形式の番組での当意即妙かつ丁寧なやり取りが評判となり、支持率ゼロの無名候補から一気に支持率上位の有力候補に駆け上がりました。献金額も有力候補にふさわしいものとなりました。


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 バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)とエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は1人からの多額の政治献金や企業などからの献金を断る姿勢を打ち出し、「草の根」レヴェルでの資金集めにこだわっています。それでもそれぞれ1800万ドル、1900万ドルの資金を集めているのはさすがということになります。

 

 カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は1200万ドルの政治献金を集めたということですが、1回目の討論会の後に24時間で200万ドルを集めたということで、討論会での出来不出来が政治献金集めに大いに関係してくるということになります。

 

 アメリカでは政治家が演説や有権者とのやり取り、他の候補者たちの討論でうまくやればお金が集まるという形になっています。アメリカの政治家たちは言葉を武器にして戦っているということが明白に分かります。日本でこれに匹敵するのは山本太郎氏くらいでしょう。後の大政党の政治家たちで言葉を武器にして人々の支持とお金を集めることが出来る人というのは残念ながら日本には見当たりません。

 

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政治献金レースでブティジェッジがトップとなっているがウォーレンがレースを激化させている(Warren heats up 2020 money race as Buttigieg tops field

 

マックス・グリーンウッド筆

2019年7月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/452078-warren-heats-up-2020-money-race-as-buttigieg-tops-field

 

インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジと前副大統領ジョー・バイデンが2019年第二四半期の政治献金レースでトップとなることが確実となった。しかし、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は草の根レヴェルでの献金で注目を集めている。その結果、支持率上位の候補者たちの間での政治献金レースが白熱したものとなっている。

 

大統領選挙民主党予備選挙候補者たちは2019年第二四半期の政治献金について2019年7月15日までに連邦選挙管理委員会に報告しなければならない。候補者の中には、報告期限よりも早く政治献金額を発表しようとしている。これは自分の政治献金の基盤を誇示し、今年後半の政治献金集めを拡大しようという狙いがある。

 

ブティジエッジが2019年第二四半期の政治献金レースでトップになると見られている。ブティジエッジの選対は今月(7月)初めに、2019年第二四半期で29万4000名から2480万ドルを集めたと発表した。この額は2019年第一四半期の献金額の3倍以上となった。

 

民主党系のストラティジストで、2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントン元国務長官の側近を務めたアダム・パークホーメンコは、「今年の1月の時点で多くの人々が予想したよりも多くの資金をピート市長は手にしているということは明白だ。彼は選挙戦において自分の立場を確立した」と述べた。

 

一方、バイデン選対は、バイデンが4月末に正式出馬表明をして以降、2150万ドルの献金を集めたと発表した。結果としてバイデンは2019年第二四半期において政治献金の面でトップ2に入ることになった。しかし、献金者の中にはバイデンは2500万ドル弱を集めるだろうと予測していたが、それよりも少ない額となった。

 

しかし、ウォーレンとバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は草の根レヴェルでの政治献金の分野で話題を独占している。

 

先週、サンダース選対は2019年第二四半期で100万名以上の献金者から1800万ドルを集めたと発表した。2019年第一四半期で集めた1820万ドルとほぼ同じ額を集めた。サンダースは他の選挙運動の口座からの600万ドルを加えて2400万ドルを集めたと報告することになると見られている。

 

サンダース陣営の責任者ファイズ・シャキールは先週、サンダース派2019年7月15日の報告期限での報告の際に、手元に3000万ドルを持っていると報告することになると述べた。

 

ウォーレンは政治献金を受け付ける際に最も厳しい制限を設けている。2019年第二四半期の政治献金について最新の報告者となった。月曜日、支持者たちへのEメールの中で、4月以降の政治献金の総額は1900万ドルだと報告することになると述べた。この額は第一四半期の3倍以上となった。

 

支持率トップ5の候補者の最後となっているのが、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)で、金曜日に2019年第二四半期で約1200万ドルを集めたと発表した。

 

ハリスは他の有力候補者たちに後れを取っているが、先月の討論会で好印象となったために2019年第二四半期の最後の方になって政治献金額が急増した。討論会においてハリスは支持率トップのバイデンに対して、1970年代に連邦上院議員時代のスクールバス問題についての姿勢を非難した。

 

ハリス選対は、討論会の後の24時間でインターネットを通じて200万ドルの献金があり、その州の週末には更に120万ドルの献金があったと発表した。

 

政治献金額は民主党の指名候補になるまでの長期の選挙運動に必要不可欠な資金をどの候補者が持っているかについて私たちにヒントを与えることになる点で重要なものである。

 

しかし、政治献金額に関しての戦略はそれぞれで変わってくる。バイデンの場合は、民主党を古くから支援してきた大口献金者たちのネットワークの深いつながりを利用しようとしている。

 

一方、サンダースとウォーレンは政治における大口献金を警戒している。ウォーレンは高額の政治資金集めを行わないと宣言している。サンダースは高額な参加費が必要なイヴェントを開催せず、「草の根資金集め」と呼ばれるイヴェントを開催している。このイヴェントの参加費は低額となっている。サンダース選対は、2019年5月にサンフランシスコで開催したイヴェントでは総額8万ドルを集めたと発表した。

 

他方、ブティジエッジは大口献金者からの献金を求める努力と草の根の献金との間にある分裂をつなげようとしている。ブティジエッジは2019年第二四半期で高額の資金集めイヴェントを約50回開催した。一方で、ブティジェッジは約30万名の献金者から平均47ドル42セントの献金を集めている。

 

少なくとも2つの陣営の幹部たちは高額の献金を求めることにはリスクがあると述べている。個人は予備選挙において1人の候補者につき最大で2800ドルまでの献金をすることが認められている。限度額ぎりぎりの高額献金を行う献金者たちは短期間で金額を増加させるのには役立つが、政治資金の安定したソースとなる訳ではない、と幹部たちは述べている。

 

サンダース陣営の上級顧問ジェフ・ウィーヴァ―は先週次のように語った。「候補者たちの多くは手渡される2800ドルの小切手に過剰に依存している。2800ドルの小切手は一度きりの献金だ。より低額の献金に依存するモデルの場合、長い期間を通じて献金を促すことが出来る」。

 

トランプ大統領の集めた政治献金額に近い額を集めた民主党の候補者は誰もいないと見られている。トランプ選対は先週、大統領の共同資金集め委員会と共に、5400万ドルを集めたと発表した。

 

他の候補者たちの政治献金額はより少なくなるだろうと見られている。

 

モンタナ州知事スティーヴ・バロックは2019年第二四半期200万ドルを集めたが、彼は5月に出馬宣言をしたばかりで、他の有力候補者たちに比べて資金集めのための時間は少なかった。

 

そして、マイケル・ベネット連邦上院議員(コロラド州選出、民主党)は5月2日に出馬宣言をしてから350万ドルを集めた。その中には連邦上院議員選挙で残った70万ドルも含まれている。

 

多くの候補者たちの選対は2019年第二四半期の政治献金総額をまだ発表する必要はない。そして、ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)のような、政治献金集めに熟練している候補者が順調に集めているか、それとも後れを取っているのかということがまだ分からない状況であり、こうした候補者たちはまだ支持率上位の候補者についていっている段階なのである。

 

ヒラリーの側近だったパークホーメンコは、他の候補者たちにも討論会でのパフォーマンが受けて政治献金を増やす人たちが出てくるだろう、フリアン・カストロ前住宅・都市開発長官やコーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)などにはその可能性があると述べている。

 

パークホーメンコは次のように述べている。「政治献金に関しては、あまり重要ではない程度の問題だと私は考えている。あまりに早く白熱すべき種類のものではない。多くの人々はレイバーディ(9月第一日曜日)の頃まで政治献金について関心を持つことはないだろう」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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隠された十字架 江戸の数学者たち

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 古村治彦です。

 

 アメリカの一部で「トランプが選挙資金を使って自分の会社の利益になるようにするに違いない」という批判がこれまでもあったということを不明ながら今頃になって知りました。そして、これについての具体的な内容が出てきました。

 

 トランプの選挙支出約1億1900万ドル(約120億円)のうちの7%ほど、約820万ドル(約8億4000万円)がトランプ関連の会社に支払われたそうです。トランプタワーの事務スペースの賃貸料、トランプの会社の社員たちが選挙の手伝いをした分の報酬などがそれにあたるということです。

 

 トランプの選挙支出約120億円は大変な額のようですが、ヒラリーの支出額は約3億500万ドル(約310億円)と、トランプの2.5倍に達します。選挙資金では、ヒラリーはトランプに圧勝しています。トランプは選挙戦に自己資金約5400万ドル(約55億円)を投じていますが、ヒラリーは約120万ドル(約1億3000万円)しか投じていません。

 

 トランプが5400万ドルの自己資金を投じ、それに対して、選挙資金の820万ドルをトランプの会社に支払ったとなると、単純に言えば、約4600万ドル分の「赤字」ということになります。ただ、トランプが使っているお金の額と現在の情勢を考えると、トランプの方が「効率的、効果的」におカネを使っていると言うことが出来ます。ただ、最後に勝たなければ意味はありませんが。

 

 今回の記事は埋め草程度の内容でしたが、今回の大統領選挙の資金について調べる契機になったという点では興味深い内容でした。

 

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分析:トランプ選対はトランプの会社に800万ドルを支出(Analysis: Trump campaign has paid $8 million to his businesses

 

ジェシー・バイルネス筆

2016年9月22日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/297193-analysis-trump-campaign-has-paid-his-businesses-82m

 

最新の分析によると、ドナルド・トランプの選対は、トランプ一族の企業に対して820万ドル以上を支払っていることが分かった。

 

『ポリティコ』誌は、木曜日に選挙資金報告を引用しながら、トランプ陣営がこれまで使った選挙資金は総額で1億1900万ドルであり、トランプ一族の企業に支払った金額はそのうちの約7%を占めていると報じている。

 

ポリティコ誌の報道によると、トランプ選対は、トランプの企業に対して、選対の各地事務所の賃貸などで130万ドル、会合や選挙イヴェントの食事や装備に54万4000ドル、選挙活動に対する会社の社員たちの手伝いに33万3000ドルを支出していることが分かった。

 

共和党大統領選挙候補者トランプはこれまで、自分の会社の不動産やサーヴィスを選挙戦に利用することに関して、人々の関心を集め、精査されてきた。人々は、「トランプが選挙資金を使って、自分の会社に利益を与える、もしくは自分の持っている高級なホテルなどで選挙イヴェントを行うのではないか」という疑念を持っている。トランプは先週、ワシントンに新たにオープンさせた自分のホテルで豪華なパーティーを開いた。

 

ポリティコ誌によると、トランプ選対の支出の大部分の約600万ドルは、「タグ・エアー」に支払われていたということだ。この会社は、トランプのプライヴェートジェットの運航会社で、トランプはプライヴェートジェットを使って、選挙イヴェントのために全国を飛び回っている。

 

ポリティコ誌によると、連邦選挙管理委員会(FEC)が出している連邦選挙資金報告書には、トランプ自身の会社の社員と賃貸にかかった50万ドル分はトランプ選対に寄付という形で処理されているということだ。

 

民主党大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンは今年6月に、トランプに対して「彼の乏しい選挙資金を自分自身に使っている、今年の夏初めの報告書によると、数百万ドルの選挙資金を彼自身の会社の製品とサーヴィスに支出していた」と批判した。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)

アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22





 

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 古村治彦です。


 今回から数回に分けて、アメリカ大統領選挙のお金の面を見ていきたいと思います。具体的には、民主党の大統領選挙候補者に内定したヒラリー・クリントン、共和党の大統領選挙候補者に内定したドナルド・トランプの選挙資金について見ていきます。アメリカの非営利団体「応責政治追求センター(Center for Responsive Politics)」のウェブサイトの数字を参考にします。

 

※「応責政治追求センター(Center for Responsive Politics)」のウェブサイトのアドレスは以下の通りです↓

https://www.opensecrets.org/

 

 今回は、大まかな金額や各候補者の政治献金の特徴について見ていきたいと思います。民主、共和両党では2016年1月からアメリカ各州やワシントンDCなどで予備選挙を行い、民主党はヒラリー・クリントン、共和党はドナルド・トランプが選挙を勝ち抜き、両党の大統領選挙候補者に内定しました。


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 アメリカの国土は約962万平方キロメートルで、日本の約25倍(約38万平方キロメートル)です。全米50州とワシントンDCで数か月にわたって予備選挙が行われましたが、実質的な選挙は昨年(2015年)後半から既に始まっていました。各候補者たちは、全米各地を飛び回り、演説をしたり、有権者たちと触れ合ったりしました。スタッフを雇い、移動する、これだけでも多額な費用が掛かります。また、テレビやラジオの宣伝にもお金がかかります。

 

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候補者たちが訪問した都市を追跡して出来た地図(予備選挙の最初のアイオワ州とニューハンプシャー州内を細かく訪問していることが分かる)

http://www.theatlantic.com/politics/archive/2016/06/mapping-the-america-political-candidates-actually-care-about/487166/?utm_source=atltw

 

 ここでスーパーPACと呼ばれる組織について説明したいと思います。アメリカでは、労働組合や企業、団体が直接政治家や政党に献金することが禁止されています。そこで、労働組合や企業は政治行動委員会(Political Action Committee)と呼ばれる政治資金団体を作り、そこを通して献金します。こうした政治家や政党に対する献金は個人で年間最高5000ドル(約50万円)までという上限が決められています。

 

 しかし、2010年にCitizens UnitedSpeechhow.orgという団体が連邦選挙管理委員会を訴えた裁判の最高裁判決で、政治家や政党、他のPACに献金しないのであれば、そのPACに対する献金額の上限はない、という判決が出ました。政治活動と言論活動の自由はアメリカ憲法で守られており、選挙の候補者や政党に献金するなどの活動をしなければ、その活動の自由は保障され、その活動に資金的な制限を加えることはおかしいということになりました。

 

これによって、スーパーPACと呼ばれる組織がたくさんできました。ちなみに、スーパーPACは、「独立した支出のみの委員会("independent-expenditure only committees")」とも呼ばれています。このスーパーPACは、候補者や政党とは直接関係ない存在として、側面から候補者や政党を支援する活動を行うことになります。主には、対立候補を誹謗中傷するテレビCMを流すなどの活動を行います。スーパーPACであれば献金に上限はありませんから、数億円単位でお金を出す人たちも出てきます。こうした人たちは、メガドナー(mega donor)と呼ばれます。

 

 アメリカ大統領選挙の候補者の場合、①自分の選挙委員会(campaign committee)に集まって使われるお金(candidate committee money)と、②自分を側面から支援してくれるスーパーPACに集まって支出される「外部資金(outside money)」の2つに分かれます。②の外部資金は候補者個人に流れることはありません。「スーパーPACは、志のある第三者が勝手にやっている」ということになります。

 

①企業、組織、団体(政治行動委員会を作る)・個人―(献金)→政党・候補者

 ※献金の上限は年間5000ドル

 

②企業、組織、団体、個人―(献金)→スーパーPAC

 ※表現の自由を根拠にして献金は無制限

 

 それではこれから、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの政治資金について見ていきたいと思います。


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各候補者の選挙資金(薄い色が①、濃い色が②) © Center for Responsirve Politics

 

ヒラリー・クリントンは、①の選挙委員会に集まったお金が2億2930万ドル(約240億円)、②の外部資金が8481万ドル(約88億円)となっています。①、②共にだんとつの資金量です。ドナルド・トランプは、①の選挙委員会に集まったお金が6300万ドル(約67億円)、②の外部資金が329万ドル(約3億5000万円)です。ヒラリーとトランプを比べると、①のお金が4倍、②の外部資金が10倍となっています。

 

ちなみに、ヒラリーを最後まで苦しめたバーニー・サンダースを見てみると、①の選挙委員会に集まったお金が2億2222万ドル(約230億円)、②の外部資金が61万ドル(約6400万円)となっています。①の政治献金だけ見ると、トランプをかなり上回っています。共和党予備選挙は2016年5月3日のオハイオ州での予備選挙で、テッド・クルーズ連邦上院議員とジョン・ケーシック・オハイオ州知事が撤退を表明した時点で勝負がつきました。一方、民主党予備選挙はバーニー・サンダースが最後まで勝負を捨てませんでした。その結果、6月まで続きました。そのために、民主党側に政治資金が集まり、これだけの多額になったということは考えられます。

 

 トランプの政治献金で特筆すべきは、「これだけの金額で激戦の共和党予備選挙を勝ち抜いたことの凄さ」です。クルーズやマルコ・ルビオ連邦上院議員といった、大口献金者たちに人気のあったライヴァルたちを、表現は悪いですが、たったこれだけの資金で打ち倒したというのは、凄いことです。「お金をかけなくても選挙は勝てる、人々が何を求めているかをつかみ、タイミングを見極め、メディアをうまく使えば」ということになります。これは、ビジネスでも同じ事なのだろうと思います。トランプのビジネスの才能がいかんなく発揮されたのだと考えます。

 

不思議なのは、バーニー・サンダースにヒラリーに負けないほどの政治資金が集まったことです。スーパーPACの活動資金(②です)は、ヒラリーには全くかないませんが、直接の政治献金(①です)ではほぼ互角でした。サンダースは、社会主義者を自認し、多額の政治献金など集まらないのではないかと考えてしまいます。それが集まったのはどうしてなのかについては、大統領選挙の候補者ではないですが、後ほど見ていきたいと思います。

 

 それでは、次に個別の候補者たちの政治資金の特徴を見ていきたいと思います。


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ヒラリー・クリントンの選挙資金の内訳
© Center for Responsirve Politics


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ドナルド・トランプの選挙資金の内訳 © Center for Responsirve Politics

 

 ヒラリーの政治資金の特徴は、自己資金はゼロということです。そして、個人やPACの献金が占める割合が90%になっています。少額の献金者からの献金が21%、多額の献金者からの献金が79%となっています。トランプの政治資金の特徴は、自己資金が72%を占めるということです。そして、政治献金が占める割合は27%ですが、少額の献金者からの献金が20%、多額の献金者からの献金が7%です。トランプが「政治資金を受け取って、資金を出した人の言いなりになることはない」と常々言っていますが、その通りの結果になっています。そして、ヒラリーは大口献金者の言いなりだ、ウォール街の言いなりだという批判がなされますが、それをまた裏付けている結果です。

 

 次に面白い数字を見ていきたいと思います。「どの州の住む人々、本拠を置く企業や組織、団体から多く献金を受けているか」というものです。ヒラリーは、「カリフォルニア州(24%)、ニューヨーク州(22%)、イリノイ州(7%)、フロリダ州(6%)、その他(41%)」、トランプは、「カリフォルニア州(14%)、テキサス州(12%)、ニューヨーク州(11%)、フロリダ州(11%)、その他(51%)」となっています。


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ヒラリー・クリントンの選挙資金の内訳 © Center for Responsirve Politics


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ドナルド・トランプの選挙資金の内訳 © Center for Responsirve Politics

 

ヒラリーは連邦上院議員をしていた時の地盤であるニューヨーク州から多くの献金を受けています。これはウォール街の金融資本家たちからの献金であることは明白です。また、カリフォルニアのリベラルな金持ちたちから献金を受け取っています。トランプは自分が生まれ育ち、ビジネスで成功を収めたニューヨークは3番目となっています。トランプはテキサス州から多くの献金を受けているのが特徴的です。保守的な層からの支持を集めているということが出来ます。

 

カリフォルニア州、フロリダ州、ニューヨーク州、テキサス州、イリノイ州はそれぞれ、ロサンゼルスとサンフランシスコ、マイアミとオーランド、ニューヨーク、ヒューストンとサンアントニオとダラス、シカゴといった大都市を抱え、富裕層が多く居住しています。そうした人々が政治献金を出していること、富裕層が大きな影響をアメリカ政治に与えていることが分かります。

 

 次にどのようなビジネス分野からの献金が多いかということを見てみます。


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ヒラリー・クリントンの選挙資金の内訳 © Center for Responsirve Politics


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ドナルド・トランプの選挙資金の内訳 © Center for Responsirve Politics


 ヒラリーは、投資・証券の分野がトップです。2番目に退職者が来ます。6番目に非営利組織、7番目に労働組合が来ます。こういうところは民主党の候補者としての特徴ということになります。16番目に「親イスラエル」と出てきます。これは、イスラエルを支持する組織や団体からの献金です。ヒラリーはこれまで一貫してイスラエル支持を明らかにしてきました。中東和平でも、イスラエルを擁護する立場を貫いてきました。

 

トランプの場合は、退職者がトップにきます。トランプ支持者は保守的な姿勢の高齢者が多くいることを示しています。2番目にトランプと同業者の不動産がきて、3番目と4番目に医療系や様々な商売関係が来ています。これらは、人々を直接相手にするビジネスで、いわば裸一貫叩き上げの創業者が多くいます。そういう人たちからトランプが支持されていることが分かります。そして、ヒラリーはウォール街の影響を受けているという批判をまたここでもはっきり示すことになります。

 

 次回は、更にヒラリーとトランプの政治資金について詳しく見ていきます。また、バーニー・サンダースについても簡単に見ていきたいと思います。

 


(終わり)










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