古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:新型コロナウイルス感染拡大

 古村治彦です。

 今年11月にアメリカで中間選挙が実施される。連邦上院の一部の議席と連邦会の全議席が選挙の対象となる。大統領選挙と大統領選挙の間に行われるので中間選挙(midterm elections)と呼ばれる。アメリカの大学では楽器の中間試験(midterm exams)をミッドターム(midterm)と略して呼ぶ。11月の選挙は現職大統領と所属政党にとっての中間試験となる。就任後の2年間の仕事ぶりを採点されることになる。歴代政権を見てみると、中間試験の結果はあまり芳しくない人たちが多かった。現在のジョー・バイデン大統領にとっても厳しい採点が下ることになるだろう。ジョー・バイデン大統領の支持率は40%台前半に低迷している。アメリカの有権者は基本的に厳しい。

 現在のところ、中間選挙に関する各種予想では、連邦上院は接戦、連邦下院は共和党が過半数を奪取するということになっている。以下のグラフや図をご覧いただきたい。
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 政党の支持率(赤:共和党、青:民主党)
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 中間選挙に向けて、バイデン政権は学生ローンの徳政令を打ち出してきた。これで多少、大統領に対する支持率が持ち直し、民主党の巻き返しが図れると期待されている。この学生ローン徳政令、具体的には卒業後に学生時代に借りたローンの返済に苦しむ人々が多く(借り手は約4300万人)、そうした人々に徳政令で返済免除とする(あくまで連邦政府の運営しているローンのみ)ということだ。この全国民が対象にならない徳政令については、民主党内部にも反対意見がある。一方、民主党内部の進歩主義派は、「学生ローン返済免除は、自分たちが長年訴え、大統領に働きかけてきた。その成果が出た」と喧伝している。しかし、進歩主義派は民主党内部の予備選挙では勝てておらず、「政策で勝って、選挙で負けている」と評されている。共和党側は学生ローン徳政令については反対している。

今年の11月の中間選挙で、連邦下院で過半数を握ると見られる共和党では、ドナルド・トランプ前大統領が支持・推薦する候補者たちが共和党内部の予備選挙に勝利している。本選挙で勝利すれば連邦議会内で議席を得ることになる。トランプ派は「MAGA派」とも呼ばれている。これはトランプのスローガンである「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」のそれぞれの単語の頭文字を取った言葉だ。連邦下院で過半数を掌握する共和党内部でMAGA派が勢力を拡大するということになる。

 アメリカの有権者は、経済、特に物価高であり、その原因となっているウクライナ戦争と新型コロナウイルス対策に関心を持っている。これから秋から冬へと移っていく。ウクライナ戦争がその時期まで長引けば、エネルギー高や食料価格の高騰の状態のままで、寒い冬を乗り切らねばならない。人々の不安が中間選挙の結果に反映される。バイデン政権と民主党は思い切った手段を取らねばならないが、それができるかどうかは不透明だ。

(貼り付けはじめ)

オピニオン:2022年中間選挙に向けた有権者の意気込みとその理由(Opinion: Voters are really fired up about the 2022 midterms -- and for good reason

SE・カップ筆

2022年8月25日

CNN

https://edition.cnn.com/2022/08/25/opinions/midterm-elections-critical-future-united-states-cupp/index.html

CNN発。2022年の中間選挙が目前に迫っているが、これほど重大な選挙はないだろう。当然のことながら、アメリカの有権者たちの関心は異常に高い。

ギャラップ社の最新の世論調査によると、アメリカの成人の約半数が2022年の選挙について「かなり」考えていると答えている。1998年から2014年までの全ての選挙に先立つ夏の間の平均は、わずか37%だった。

ギャラップが「関心の強度(intensity)」と呼ぶこの指標は、有権者の熱意を示している。そして、アメリカの有権者の半数は、通常よりも投票に熱心だということになる。

もし、あなたがこのような有権者でないなら、あなたとあなたの生活に直接影響を与える可能性のある選挙をよく見てみるべきかもしれない。今、政治から目を逸らすには、あまりにも多くの緊急課題がこの国に突きつけられている。

インフレイションから景気後退の可能性、ロウ対ウェイド裁判判決の転換と多くの州における人工妊娠中絶へのアクセスの後退、銃乱射事件と銃の改革、国境での移民問題、ロシアとウクライナの戦争、新型コロナウイルスの影響など、アメリカの有権者はこの重要な選挙期間に考慮しなければならない問題を数多く抱えている。

メディアは世論調査から社内外の調査まで、多くの有用なリソースを手にしていますが、有権者がどのように投票するかについては、投票前にしか分かりません。今年は「ロウ対ウェイド裁判判決」が投票率を押し上げると予測することもできるが、一方で、この不安定な経済状況では、民主党が本当に困ってしれない。そこで、我々はその源に直行する。

CNNオピニオン」は新シリーズ「アメリカの未来は今始まる」を開始し、アメリカの有権者の皆さんに意見を求めている。

大統領選挙ばかりに目が釘付けになりがちだが、こうした問題の多くを誰がどのように解決するのかを決めるのは連邦議会選挙である。来る11月の選挙は、少なくとも今後数年間の税制、銃規制、中絶法などの運命を文字通り決定する可能性がある。

「ロー対ウェイド」裁判の判を覆して中絶を事実上禁止している州の民主党は、中絶アクセスを成文化するのに十分な人数を確保できるだろうか?

フロリダ州のような州の共和党は、公立学校に影響を与える反スピーチ法をもっと通すようになるのだろうか?

あなたの州では、銃の安全性に関する法律は廃止されるのか、あるいはさらに前進するのか?

しかし、おそらくこれらの個々の政策問題よりももっと重要なのは、民主政治体制そのものという大きな問題である。NBCニューズの最新の世論調査によると、有権者の多くが11月に優先させたいことの上位に民主政治体制への脅威が挙げられている。2021年の連邦議会議事堂での暴動、2020年の選挙が盗まれたといまだに主張する前大統領、ジョー・バイデンを違法な大統領と信じる有権者の大部分、選挙は不正操作されているという嘘を主張しながら選挙戦を戦う何十人もの政治家候補、これら全てがこの中間選挙への賭けがこれ以上ないほど高いことを意味している。

ギャロップ社によると、インフレイション、食料価格の高騰、景気後退の危機などが大きくクローズアップされている今年、当然のことながら、経済が最優先課題となっているということだ。次いで銃政策、中絶、移民、税制、ロシアのウクライナ戦争、そして気候問題という順になっている。

しかし、それは選挙の投票率の実態に比べれば少しは整然としている。投票所での感情的な、時には非合理的な、動機付けを定量化することは不可能であり、過小評価されることもある。

例えば、どれだけの有権者が、ある1つの問題を他の全ての問題よりも優先しているのだろうか? 例えば、中絶か移民か、どちらを重視して投票するかという二者択一をしているだろうか?

右派のうち何人が、政策よりも、文化戦争的な衝動、「社会的正義のために進むこと(wokeness)」との戦いや「リベラル派を動揺させ敗北させる(owning the libs)」に突き動かされて投票しているか?

ドナルド・トランプ前大統領が選んだ共和党の候補者たちを議会から締め出すことに、より意欲を燃やしている左派の人々は何人いるだろうか?

2020年の大統領選挙が盗まれたという嘘に基づいて投票に行くのは誰だろう? そして、Qアノンや他の過激派グループが押し付ける他のおかしな陰謀論に基づいて投票するのは誰だろうか? 決して少なくない数だろう。

今年は何が有権者を振り向かせるのか、それはあまり意味をなさない。ある予備選挙を考えてみると、かつてワイオミング州のお気に入りだった共和党の娘であるリズ・チェイニーが、トランプが支持する2020年大統領選挙否定派のハリエット・ヘイグマンと対戦した。

連邦下院議員として93%の割合でトランプに好ましい投票し、間違いなく最も保守的な議員の1人であるリズ・チェイニーは共和党から追放された。この出来事は彼女の政策ではなく、トランプに対抗しようとしたことが原因である。

リズ・チェイニーは、2021年1月6日にトランプがもたらした損害について率直な意見を述べ、その数週間後にトランプ弾劾に投票し、1月6日事件に関する連邦議会委員会の役職に就いたことで、彼女は多くの共和党関係者から忌み嫌われる存在になった。実際、2021年、ワイオミング州共和党は、弾劾票を投じたリズ・チェイニーに対して問責決議し、その後、チェイニーを共和党員として認めないことにした。

昨年2月、連邦下院共和党は彼女を共和党所属連邦下院議員会会長の座から外そうとして秘密投票を行った。その結果はチェイニーにとってはつかの間の勝利だったが、61人の共和党議員が彼女を追い出す投票を行い、145人が彼女の残留を支持した。しかし、5月になると、20分足らずの音声投票によって、彼女は永久に追い出された。

最終的に、トランプが選んだヘイグマンからの挑戦に直面したチェイニーは、2016年に彼女を議員に圧倒的に投票した州での予備選で、その時とほぼ同じ差で敗退したのだ。

ワイオミング州の連邦下院議員共和党予備選にもう1つの奇妙なねじれを生じさせたのは、推定で数千人のワイオミング州の民主党員がチェイニーに投票するために党籍を切り替えたことだ。この行動について言えば、その理由はおそらく彼女の政策への支持ではなく、トランプを再び選挙で勝たせないという彼女の公約に対する支持ということになる。

ワイオミング州は確かに特殊なケーススタディだが、これは、一部の有権者がトランプに対する感情よりも政策によって2022年の中間選挙に臨む方法の縮図のようなものであるとも言える。

しかし、他の人々にとっては、トランプ前大統領はそれほど動機づけにならないようだ。例えば、ジョージア州、ノースカロライナ州、アイダホ州、ネブラスカ州では、トランプが選んだ候補者の何人かが他の共和党候補者に負けた。

民主党の予備選挙では、多くの場合、進歩主義派が穏健派候補に敗れており、おそらくバイデンの中道への回帰が再確認されたのであろう。もし彼らが多くの有権者と同じ問題意識を持っているとすれば、バイデンのインフレイションに対するアプローチを諦めず、銃規制、インフラ支出、税金、気候に関する彼の勝利を支持しているのだろうと思われる。

しかし、通常大統領選挙を含む総選挙の年よりもかなり投票率が低い中間選挙において、何が正確に投票率を押し上げるのかは、特に今年は常に定量化が困難となっている。

フロリダ州では、ロン・デサンティス州知事が提出した「教育における親の権利」法案(批判派からは「ゲイと言うな」法案と呼ばれる)が、民主、共和両党をそれぞれ支持する有権者にとって大きな動機づけになる可能性がある。

ロウ対ウェイド裁判判決の転覆によって中絶が事実上禁止された州では、この問題が大きくクローズアップされるかもしれない。

テキサス州やニューヨーク州のように、ユヴァルデやバッファローで起こった恐ろしい銃乱射事件が家族や地域社会にトラウマを与えた各州では、銃政策の行方は多くの有権者にとって一つの争点となり得るだろう。

しかし、他の選挙サイクルのような明確な指標がない以上、私たちは優れたジャーナリズムを発揮し、単純に問うことが肝要だ。「あなたにとって何が重要か、それはなぜか?」

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は膠着状態に入り、欧米諸国はロシア軍の戦争犯罪を糾弾する姿勢を取っている。アメリカのジョー・バイデン大統領は「ロシアのウラジミール・プーティンは虐殺者であり、戦争犯罪人なので裁判を受けさせる」と述べている。どのような形の裁判を行うのかということは全くの不明確だが、国際刑事裁判所(International Criminal CourtICC)に提訴する意図があるがもしれないが、アメリカはICCによるアメリカ国民の訴追に反対し、基本法となるローマ条約に署名していない。一体どうやろうというのか。

 ウクライナ戦争によって世界規模で物流が混乱し、食料やエネルギー不足の懸念が高まっている。ロシアやウクライナで多く生産される小麦の生産や輸入が減少すればしぜんとそういうことになる。農業生産は1年で2倍に増やすというようなことはできない。原産は可能であるが増産は困難である。アメリカではロシア製の肥料が手に入らない状況でさく付け状況が悪くなるということが予想されている。

 そうした中で、興味深い動きを見せているのが中国だ。中国は最近になって、世界の動きと逆行するかのように、新型コロナウイルス感染拡大を理由にして都市のロックダウンを始めている。しかし、その数を見てみると、絶対数で見てみても人口比で見てみても、ロックダウンが必要な数字とは思われない。過剰な反応のように思われる。

 しかし、ここで「戦時体制への移行」という補助線を引くと分かりやすい。中国ではこれからの大動乱に向けて、戦時体制への移行が始まっている。食料は配給制になり、厳しくカロリー計算に基づいた制限がなされ、「過食」「飽食」「食料廃棄」が制限されるようになるだろう。そのためのスタートとして最大都市である上海でロックダウンを開始し、食糧配給の「訓練」が始まっていると見ることができる。食料価格の高騰が懸念される中で、一部の富裕層に食料が集中しないように、公平に食料を分配するということが実施されるだろう。

 中国はロシアからの食糧やエネルギー輸入を止めないので西側諸国のように急激な影響を受けることは少ないだろう。しかし、中国まで巻き込まれるような大動乱が起きる可能性はある。中国政府最高幹部クラスはそのように考えているのだろう。私たちも大動乱に備えて長期保存可能な食料をある程度備蓄しておくというような自衛策を取ることが必要になるだろう。

(貼り付けはじめ)

●「ロックダウンの上海 中国共産党が異例の闘争指示」

4/7() 16:09配信 テレビ朝日

https://news.yahoo.co.jp/articles/1780c3af782e6373e733d196e05b73b573dbb68a

 中国共産党が上海市の感染拡大を抑え込むため、「不屈の闘志で最前線に立て」と一般の共産党員に呼び掛ける異例の文書を公開しました。

 文書は「上海市内のすべての共産党員へ」と題しています。

 「上海は中国共産党の誕生の地」だとし、一般の共産党員に対して率先してコロナ対応にあたるよう呼び掛けています。

 文書は「コロナと戦う人物や感動的な話を積極的に広める」よう指示しているほか、「感染拡大のための施策をかく乱し、破壊する行為に対しては剣を抜いて戦え」として、SNS上で発信される偽情報を追及し、事実を明らかにするよう求めています。

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●「「物資が欲しい!」住民の“叫び”…ロックダウンの上海市で配給不足」

4/6() 17:36配信 テレビ朝日

https://news.yahoo.co.jp/articles/15aee31704d30481c1b5ba5c10d115acda6bfd53

 中国の上海市で、ロックダウンが始まってから6日で10日目となります。一部の住宅では食料が届かないなどの問題が起こっています。

 マンション住人:「物資が欲しい!物資が欲しい!私たちは物資が欲しい!」

 住民たちが食料を求めて叫ぶ動画。上海市北部の隔離されている住宅で撮影されました。

 上海市では先月28日から市の東部でロックダウンが始まり、現在もほぼ全域で都市が封鎖されたままです。

 上海市では政府などが主導し、食料の配給などが行われていますが、一部の地域では人員不足で物流が滞り配給が届かないなどの問題が起きています。

 今月5日の上海市の新規感染者は過去最多の17077人で、当局は再び全市民に対しPCR検査か抗原検査を行うと発表しています。

=====

●「「食料をください!」“ロックダウン”延長で住民は… 中国・上海」

4/5() 20:42配信 日テレNEWS

https://news.yahoo.co.jp/articles/5842e6f145d29f81748b1432b678020956516542

事実上のロックダウンが続く中国の上海では、新たな感染者が過去最多になるなど、拡大に歯止めが掛かっていません。こうした事態を受けて制限が延長されましたが、外出禁止が続き、市民生活に影響が広がっています。

   ◇

「食料をください!」「食料をください!」

中国・上海で、夜の団地に響き渡るのは、食料を求める大勢の叫び声です。

「食べ物がほしい! おなかがすいた、餓死してしまう!」

感染対策のため、この団地では、もう10日以上外出が禁止されています。住人たちは食料などが足りず、ベランダから助けを求めていました。

3月末から事実上のロックダウンを始めた中国・上海市。市を東西2つのブロックに分け、それぞれ4日間ずつ住民の外出禁止や交通機関の運行停止など大規模な封鎖を行うとしていました。

しかし、市のほぼ全域で封鎖が継続されることになったのです。

記者(中国・上海、5日)

「当初の予定ではきょうの午前3時に封鎖が解除される予定でしたが、今も封鎖は続いています」

封鎖の終わりが見えない中、市民にも影響が広がっています。

封鎖エリアの住民

「市に電話してもずっとつながらない。食べ物がない」

この女性は、その後、SNSで窮状を訴えたことがきっかけで食べ物を送ってもらうことができたといいます。

   ◇

封鎖が解除されなかった理由が、止まらない感染の拡大です。

実は大規模な封鎖が始まる前、326日に確認された感染者は2676人でしたが、44日に全市民を対象にPCR検査を行った結果、新規感染者は13354人と初めて1万人を上回る事態になりました。

医療機関がひっ迫しているため、市内には感染者を隔離する施設や臨時の病院が次々と建設され、軍や周辺の街から医療従事者など3万人以上が応援に入っているということです。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大によって世界各国、特に発展途上国で厳しい状況になっているようだ。以下に紹介する記事は世界銀行が発表した報告書を基にしているが、それによると、世界規模で、経済格差が広がっているということだ。それまでいくつかの点で改善が見られていたのに、それが逆行しているということだ。

 経済格差が拡大し、生活が苦しい、もしくは生活ができないという人の割合が高まっていけば、社会は不安定になる。社会の規範、ルールや法律を守ろうという意識がなくなっていく。それは社会学的に言えば、「急性アノミー(acute anomie)」となる。そうした社会になるコストを考えれば、政府による再分配や支援によって社会の安定を維持するコストの方が安くつくと思われる。

 アメリカでは高インフレーションが続き、生活に困窮する世帯も多く出ている。多くの場合、そうした世帯は貧困層に含まれており、低賃金の仕事に甘んじなければならない。また、雇用形態も不安定だ。そうした中で、インフレーション率を超えるほどの賃上げもないとなると、生活は苦しくなる。家賃やガソリン価格の高騰というのは生活に直接かつ深刻な悪影響を与える。民主党のバイデン政権にとっては、自分たちの支持基盤であるこうした人々の生活を何とかしなければ今年の中間選挙では敗北を喫するということになる。

 そのために、大型支出法案を連邦下院(民主党が僅差ではあるが過半数)で可決させたが、連邦上院(民主共和で50対50、ハリス副大統領の投票でかろうじて民主党が過半数)では、ジョー・マンチンの反対表明によって前途が厳しくなっている。民主党内の進歩主義派と中道派の争いも激しい。この法案が可決成立しなければ大型支出ができないということになる。そうなれば中間選挙で敗北は必至となり、連邦上下両院で共和党が過半数を握るということになる。そうなれば、政権運営は厳しさを増す。そうなれば、2024年の大統領選挙で、バイデンの再選は難しくなり(元々年齢もあって難しいところもある)、それどころか民主党が敗北して、ホワイトハウスを共和党に渡すということになる。

 2022年前半は世界全体で正念場ということになりそうだ。

(貼り付けはじめ)

報告:新型コロナウイルス感染拡大が世界規模の貧富の差の改善が逆行(Pandemic reversing gains in wealth gap globally: report

レクシ・ロナス筆

2022年1月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/589334-pandemic-reversing-gains-in-wealth-gap-globally-report

世界銀行が火曜日に発表した報告書によると、コロナウイルスの感染拡大により、世界規模の貧富の差についての改善が逆行しているということだ。

世界銀行は世界規模での収入格差は新型コロナウイルス感染拡大期間中に増大し、過去20年間で達成したいくつかの進歩を逆行させていることを発見した。

報告書によると、極度の貧困率(extreme poverty rates)が上昇し、低所得者層に偏って、重大な影響を及ぼしているということだ。

この貧富の差の拡大は、新型コロナウイルス感染拡大によって低技能労働者や低所得者の雇用と収入が失われたことに起因している。多くの雇用は、政府が義務付けた操業停止により、中小企業が休業や営業時間の短縮を余儀なくされたために失われた。

世界銀行は、過去数十年間に見られた他の感染症に比べれば、各国内の格差の拡大は小さいと述べている。この格差の影響は、より長期に及ぶ可能性がある。

新型コロナウイルスは、特に低所得世帯において、子どもたちが遠隔学習に適応しなければならないため、教育に混乱をもたらし、所得と教育の関連性から、何世代にもわたって後退する可能性があると報告されている。

世界的に見て、先進諸国の方が発展途上諸国より早く回復することになるだろうと報告書は述べている。

世界銀行グループ会長デイヴィッド・マルパスは次のように述べている。「"世界経済は新型コロナウイルス感染拡大、インフレーション、政策の不確実性に同時に直面しており、政府支出や金融政策は未知の領域に入っている。格差の拡大や安全保障上の課題は、特に発展途上国にとって有害だ。より多くの国々を好ましい成長軌道に乗せるためには、協調的な国際行動と各国の包括的な政策対応が必要である」。

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インフレーションが1982年以降で最高水準に(Inflation rises to highest level since 1982

アリス・フォーリー筆

2022年1月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/589333-inflation-rises-to-highest-level-since-1982

1年の終わりとなる12月に消費者物価は7%も上昇した。水曜日にアメリカ労働省は子の上昇は1982年以来最高水準を記録したと発表した。

アメリカ労働省が発表する消費者物価指数(consumer price indexCPI)は消費財とサーヴィスのインフレーション率を測定するものであるが、12月の1カ月間だけで0.5%の上昇となった。

複数の政府高官は、家賃、中古車、トラックの価格上昇を 「季節調整済み全品目上昇の最大の要因 」と位置づけた。食品価格の上昇もまた、インフレーションの重要な原因として今回の最新報告書に記されたが、先月の0.5%の上昇率はここ数ヶ月に比べれば小さいものとなった。

家具・業務用品、アパレル、新車、医療の価格も12月に上昇したが、自動車保険と娯楽に関する価格は前月と同様に低下した。

エネルギー価格は、上昇が続いた後、12月に0.4%下落した。ガソリンと天然ガスの価格も低下した。

しかし、食料とエネルギーを除いた全品目の物価は先月0.6%上昇した。11月は0.5%上昇していた。労働省によると、12月はでこれらの物価が0.5%上昇したが、この9カ月間で少なくとも0.5%上昇したのは6回目であった。

バイデン政権は、物価上昇に直面する中、新型コロナウイルス感染拡大からの回復が進む中で、経済の力強い前進を誇示しようとしてきたが、今回のインフレレポートは、バイデン大統領が直面する課題のリストに問題が追加されることになった。

水曜日に発表した報告書は、年間インフレーション率が30年ぶりの高水準に達したことを示した11月の報告以来のものである。

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バイデンが、政権は物価上昇率の上昇を緩やかにするために「いくつか進歩を達成」していると発言(Biden says administration 'making progress' slowing rate of price increases

モーガン・チャルファント筆

2022年1月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/589385-biden-says-administration-making-progress-slowing-rate-of-price-increases?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ジョー・バイデン大統領は水曜日、インフレーションに関する最新のデータから、バイデン政権が「物価上昇率の鈍化において前進している」と発言したが、アメリカの各世帯のコストを下げるために更なる取り組みが必要であることを認めた。

バイデンは水曜日に発表した声明の中で次のように述べている。「「本日の報告書は、ガソリン価格と食品価格の下落により、主要なインフレーション率が先月より大幅に低下したことを示しており、物価上昇率の鈍化に向けた前進を実証している。同時に、この報告書は、物価上昇率が依然として高く、家計を圧迫していることから、我々がまだやるべきことがあることを強調している」。

労働省が発表した新しいデータによると、2021年12月の消費者物価は前年同月比で7%上昇し、1982年以来最も急速な上昇率を記録したとのことだ。最も物価が上昇したのは、家賃、中古車、トラックのカテゴリーであることが報告されている。

しかし、今回の報告書によると、12月のインフレーション率は11月より0.5%上昇し、前2カ月より低い数値となった。ホワイトハウスはこの統計を、物価上昇率が緩和され始めている兆候と強調している。

データによると、食料品の価格上昇率は前月より小さく、ガソリンと天然ガスのコストは低下しました。

この新しいデータは、予想されたことではあるが、バイデンにとっては難題ということになる。バイデン大統領は、コロナウイルスの感染拡大が続く中でも、雇用の増加は力強い経済回復の証拠であると賞賛しているが、物価の高騰に対するアメリカ人の懸念を和らげるのには苦労している。一方、共和党は、インフレーションを次の中間選挙の主要な争点にしようとしている。

バイデンは水曜日に発表した声明の中で次のように述べている。「インフレーションは、世界規模の景気低迷から脱却した先進国のほぼ全てで発生している問題である。アメリカは幸運にも、アメリカン・レスキュー・プランのおかげで、最も急速に経済が成長している国の一つであり、このことが物価上昇に対処し、強力で持続可能な経済成長を維持することを可能にしている。これが私の目標であり、日々その達成に向けて努力している」。

バイデン政権は、コストを抑えるために、港湾やトラックにおけるサプライチェインのボトルネックを緩和する措置をとっている。

水曜日の朝、CNNに出演したホワイトハウス経済諮問委員会のメンバー、ジャレッド・バーンスタイン氏は、政権の取り組みが成果を上げている証拠として、港で待機中のコンテナの減少と輸送コストの減少を挙げた。

2021年11月、バイデンはエネルギー関連コストの高水準と戦うために、5000万バレルの石油をアメリカ戦略的石油備蓄(Strategic Petroleum Reserve)から放出するという方策も実施した。

複数のホワイトハウス高官たちは、バイデンが主導している気候・社会政策法案、ビルド・バック・ベター法案の可決によって、アメリカの各世帯の医療費、育児費、その他のコストを下げることに貢献するとして、法案可決を促している。

しかし、ビルド・バック・ベター法案は現在連邦上院でとどまっている状態であり、立法化にむけての前途は明確になっていない。

(貼り付け終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大による経済不安のために、金(きん)価格が高騰している。下の記事にあるように、金の地金を扱う田中貴金属、徳力、石福金属興業、三菱マテリアル、日本マテリアルは緊急事態宣言を受けて、店頭での近似崖の売買を停止した。電話での購入注文は受け付けてきた。田中貴金属では、5月18日からは店頭での買取を再開している。しかし、売渡は行われないようだ。

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直近1カ月間の金価格の動き 

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直近5年間の金価格の動き

 貼り付けてあるグラフが示しているように、金(きん)価格は上がっている。金を資産として保有している、準備が良くできている人たちは、生活資金や事業資金のために金の売却ができる。それで一息つける人も多く出るだろう。「備えあれば患いなし(有備無患)」という言葉は漢文の授業で最初に習う言葉であるが、まさにこの言葉の通りだ。

 金の先物を買っている金融業者は、地金の引き取りを要求し、それに応えられない業者は、金融業者に先物で購入した分の資金に現金をプラスして支払っているということだ。金の先物取引とは、たとえば、「半年後に金1グラム4000円で買う(売る)」という取引だ。現在では金価格が上昇していることもあり、金地金が足りない、準備ができないと実物を渡せないので、差金決済でしか応じないということが起きているそうだ。買金地金が足りないということもあって、日本の金地金商でも、客からの買取を先に行い、売渡は後ということになる。実物を持っていることが強い、ということになる。

 新型コロナウイルス感染拡大の経済への悪影響はこれからも続く。不況、デフレということになる。こういう時には現金と現金に換えられる実物を持っていることが何よりも強いということになる。

(貼り付けはじめ)

●「金などの店頭売買、相次ぎ停止 田中貴金属など地金商 コロナ禍対応で 機動的な売買できず」

日本経済新聞 2020/4/20 17:25

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58267330Q0A420C2QM8000/

国内地金商最大手の田中貴金属工業は20日、全国の直営店と特約店の店頭で金など貴金属商品の取引を停止すると発表した。新型コロナウイルスの感染防止と従業員の安全の確保が狙い。他の地金商も既に店舗での対面売買をやめており、一時的に貴金属の機動的な売買ができなくなる。

田中貴金属は、地金やコインといった資産用の貴金属商品の売買や貴金属製品の買い取りサービスなどを56日まで停止する。停止期間中は直営店全店を休業するが、電話での地金・コインの購入注文は受け付ける。

徳力本店や石福金属興業など大手地金商も既に56日まで店舗での対面売買を中止。三菱マテリアルや日本マテリアル(東京・千代田)も同様の対応をしている。

換金などの速やかな売買ができなくなり、現物市場の流動性が落ちる見込み。マーケット・ストラテジィ・インスティチュートの亀井幸一郎代表は「事態が長期化すれば、業界として流動性を確保するための対応策が必要になる」と指摘する。

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●「金先物価格が6,000円台に、新型コロナ終息でも安心できない世界経済」

小菅努 | マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

5/18() 9:37

https://news.yahoo.co.jp/byline/kosugetsutomu/20200518-00179032/

金価格の上昇が続いている。東京商品取引所(TOCOM)の金先物価格は、518日の取引で1グラム=6,000円台に乗せ、取引開始以来の高値を更新した。年初の5,303円に対して、新型コロナウイルスの感染拡大で投資環境が極端に不安定化した3月には一時4,876円まで下落していたが、その後はほぼ一本調子で値位置を切り上げる展開になっている。

新型コロナウイルスの感染被害に関しては、世界的に終息傾向にあり、経済活動の正常化が打診される環境になっている。中国や韓国などで感染被害の第2波も観測されているが、日本も含めた各国で外出・移動規制の緩和・撤廃が進んでおり、経済活動は最悪の状態を脱した可能性が高くなっている。このため、株価や資源価格には下げ一服感がみられるが、こうした環境下で安全資産である金価格が急伸し始めている。

■金融政策と財政政策がフル稼働に

背景にあるのは、景気低迷が長期化するのではないかとの警戒感だ。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は513日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、米経済は「長期」にわたって成長が低迷する可能性を指摘した。4月の米雇用統計では非農業部門就業者数が前月から2,050万人減少し、失業率が前月の4.4%から14.7%まで跳ね上がったが、過去最大規模の経済的ショックによって、回復が勢いづくまでは一定の時間が掛かる可能性を指摘している。

特に公衆衛生上のリスクが長引く事態に強い警戒感を示しているが、新型コロナウイルスの感染抑制に向けた取り組みと同時に、政府と中央銀行の積極的な対応の必要性について言及している。

FRBに関しては、既にゼロ金利政策の導入と無制限の量的緩和政策を実施しており、過去最大規模の金融策を展開している。トランプ米大統領の主張するマイナス金利導入に金融当局は慎重だが、現行政策の縮小・停止を議論できる状況にはなく、追加緩和策の導入を迫られるのではないかとの警戒感が強い。

一方、米議会は既に第14弾の新型コロナウイルス対策法案を成立させ、総額3兆ドルという異例の規模の財政政策を展開している。米国内総生産(GDP)の15%に近い規模だが、議会では民主党が更に3兆ドル規模の追加対策を要請するなど、第5弾、更には第6弾の対策法案の議論も始まっている。

■ドルと米国債に対する信認にリスク

金市場の視点では、FRBの積極的な金融緩和策は、金利低下を通じて金の保有コスト軽減につながることになる。金は原則として金利や配当を発生させることがないため、金利低下局面で買われる一方、金利上昇局面では売られる傾向にある。また、FRBが国債や社債などのリスク性のある資産を購入し続けることで、国際基軸通貨ドルの信認問題も浮上している。ジャンク債と言われる高利回り債も購入しているが、仮に企業のデフォルトなどが大量発生すると、FRBのバランスシートが毀損されることになり、それは必然的にドルの信認に傷を付けることになる。

一方、国債の信頼は財政政策に強く依存するが、当初は1兆ドル規模と予想されていた2020会計年度の財政赤字は、議会予算局の推計では3.4兆ドル規模に膨れ上がる見通しになっている。財政環境の持続性については、ここ数年は「財政の崖」といった形で金市場の関心事になったが、新型コロナウイルス対策で過去に経験したこのない財政出動を迫られる中、財政赤字は一気に拡大し、公的部門の累積債務も急増することになる。財政収支と金価格との間には逆相関関係が認められているが、膨張する財政赤字に対する警戒感も、金価格を強く刺激している。

これらの問題は、直ちにドルや米国債が急落することを意味するものではない。しかし、新型コロナウイルス対策で財政拡張が進み、民間部門で吸収しきれない国債をFRBが積極的に購入する仕組みに対しては、不安を感じる投資家も多い。仮にパウエルFRB議長の認識が正しければ、こうした有事対応は数か月ではなく数年単位の議論になる見通しであり、投資家の不安心理の受け皿として金が再注目されている。

あくまでも一時的な有事対応との見方もある。しかし、前回の世界同時金融危機の際にもこれに近い政策が採用されたが、その後に累積債務の大規模な削減が始まった訳でも、FRBの保有資産売却が本格化した訳ではない。仮にこの政策を正常化しようとすれば、2013年の「バーナンキ・ショック」以上のテーパー・タントラム(量的緩和縮小の示唆に伴う市場の動揺)に見舞われる可能性も高い。

■米中関係の緊迫化も

しかも、この最悪のタイミングで米中関係が再び緊迫化している。トランプ政権内では、新型コロナウイルスへの対応、更には米中通商合意の履行状態について、対中批判の声が強くなっている。トランプ大統領も14日に中国との「断交」断交の可能性を検討しており、中国の習近平・国家主席と現在は会いたくないと発言している。

この流れの中で、米商務省は17日、中国のファーウェイに対する半導体輸出規制の措置を発表し、中国商務省はアップルなど米ハイテク企業に対する報復の可能性を警告している。トランプ大統領の発言一つによって、米中関係が一気に緊迫化する可能性があり、新型コロナウイルスによるダメージからの立ち直りを打診する世界経済が、米中対立のショックを乗り切ることができるのか、高まる不安心理が金相場を押し上げている。

世界経済の低迷、大規模な財政出動と金融緩和政策、米中対立の激化と、新型コロナウイルスは感染被害が終息した後も、投資環境に大きなリスクをもたらすことになる。金価格が改めて上昇傾向を強めていることは、新型コロナウイルスによって生じたショックの後処理には、課題が山積しているとの危機感を反映したものと言えよう。世界同時金融危機後の値動きをみても、金価格の高騰はこれから年単位で展開される可能性が高まっている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 副島隆彦先生の最新刊『もうすぐ世界恐慌 そしてハイパー(超)インフレが襲い来る』が発売される。今回の新型コロナウイルス感染拡大を受けて緊急発売される。よろしくお願いいたします。

mousugusekaikyoukou001

もうすぐ世界恐慌 そしてハイパー(超)インフレが襲い来る

(貼り付けはじめ)

まえがき

 この本は、大きくは以下の7つのことを、書いて(予言して)説明している。

 読者によっては、他のことはもうどうでもいいから、第2章の6.「金(きん)がもうすぐ買えなくなる。急いで金を買いなさい」をまず読むべきだろう。

1.新型コロナウイルスの所為(せい)で、3月に、株の世界的大暴落が、連続して起きた。とりわけ3月16日(月)にNY(ニューヨーク)の株が、1日で2997ドル(瞬間では3068ドル)下落した。歴史に残る大暴落だ。そして3月24日から、一旦は下げどまった。各国の政府が協調して買い支えて、暴落を喰い止めた。政府と中央銀行が株を買いまくるのだから権力者相場である。とても自由主義国がやることではない。恥を知るべきだ。

 3月コロナ大暴落は、明らかに2.世界大恐慌(ワールド・グレイト・デプレッション)への突入の合図、前兆(ぜんちょう)である。それは、本格的には、いつ起きるのか。それをこの本で書いた。

2.の大恐慌突入は、3.ハイパー(超)インフレ(ーション)を誘発する。超インフレは、ただの消費者物価高騰として現われるのではない。生活物資は、あり余るほどの過サープラス・プロダクティヴィティ剰な生産設備によって支えられている。

 今度のハイパー・インフレは金融秩序(マネタリー)と政府の財政(ファイナンス)の、この2つの崩壊として現われる。その予兆と証拠は、この本の冒頭見開きの、「新札[しんさつ]渋沢栄一の新一万円札』に2024年に切り替わる」である。この図をじっくりと見て下さい。このとき、新一万円は、1000円に、「通貨単位の変更」、即ちredenominationデノミネイション」が断行されるだろう。私は金融予言者としての全能力を賭けて、断言する。

 3.のハイパー(超)インフレを阻止するために、国家(政府)はこれをやる。このとき、米ドルの信用は世界中で暴落して、1ドル=10円にまで大下落しているだろう。

 新札切り替えと同時の、4.預金封鎖[よきんふうさ](バンク・アカウント・クランプダウン)も同時に行われる。おそらくそのとき、「一つの世帯(家族)で、月に一回、500万円しか引き下おろせません。これは生活費です」となるだろう。このとき金融恐慌はすでに起きている。富裕層(金持ち)に打撃がくる。

 だから6.の「今のうちに急いで金(きん」を買いなさい」なのである。

5.世界中の原クルード・オイル油価格の暴落(3月9日)が、株の大暴落を誘発した。今、原油は1バーレル(158リットル)=20ドルである。原油の暴落が、ハイイールド債ポンド(ジャンク債ポンド。ボロくず債。サギ師の山師[やまし]たちの資金源)の暴落につながった。

この「ハイリスク(高危険)ノーリターン債(さい)」のリターン=儲(もう)けは、元々パーだから初めからない。「マリリン・モンロー・ノー・リターン」である(笑)。こんなものを死ぬほど買わされてきた(途中に仕組[しく]み債という投資信託[ファンド]を、咬(か)

ませてある、農林中金(のうりんちゅうきん)始め日本の地銀や生保たちは、今度の株ストック式(及び債券[ボンド])コロナ大暴落で、ヒドい大損害を出した。またやってしまった農中(のうちゅう)は、もう立ち直れないだろう。

この5.原油暴落発(はつ)の、ハイイールド債(さい)崩れが、各国の国債の信用をこれから突き上げる。P33の図を参照のこと。これが、政府の財政崩壊(ファイナンシャル・カタストロフィー)につながり、2.の大恐慌に連結する。これで、この8年間続いた“ABE  Asset  Bubble Economy(アベ・アセット・バブル・エコノミー)”「資産バブル経済」が終わった。

 そして、最後に7.今度の「中国武ウー漢ハンに発生した新型コロナウイルスは、アメリカ軍の中の強硬派が撒いた(去年10月に)」論を、私は、徹底的に書いた。フニャフニャ、グチャグチャ、訳わけの分からんことを言い合っているんじゃない。一冊の本は、気合いを込めて、激烈に、大きな真実をガツンと暴き立てて言い切らなければいけない。「ああでもない、こうでもない」で、一いっ国こくを率ひきいるだけの優れた言論は成り立たない。

 この副島隆彦が、一体誰に遠慮すると言うのか。大きな真実をドカーンと明確に書いて初めて本物の国民的言論人である。

 くだらない、こんな人工、人造のコロナウイルス程度で、「キャーキャー、コワイ、コワイ」と騒ぐんじゃない。こんなもので誰が死ぬか。全部ヤラセだ。安倍首相が、4月8日から発令した「緊急事態宣言」(3月8日の特別措置[そち]法の改正に基づく)なんか、民衆(国民)を脅おどかして、恐怖に陥れて、それで自分たち権力者、支配者が新しい国家統制体制に移行しようとしている。その予行演習(ドリル)だ。

 2.の世界大恐慌突入を目前にして、統制経済(コントロール・エコノミー)に移行する準備だ。これを「ショック・ドクトリン」“Shock Doctrine”と言う。「大災害のショック(恐怖)で、民衆(ピーポー)の脳を支配せよ」という悪(ワル)の統治(とうち)技術だ。この別名を“disaster capitalism”「ディザスター・キャピタリズム」と言って、「大惨事(だいさんじ)便乗型(びんじょうがた)資本主義(しほんしゅぎ)」と言う。このことを最後の第5章で目(め)いっぱい書いた。 

 さあ、これだけのことを一冊の本に詰め込んだので、私は本望(ほんもう)である。あとは読者が、それぞれ自分で判断して下さい。とんでもない奴やつだ、でも何でもいいから。

副島隆彦

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もうすぐ世界恐慌──[目次]

まえがき─4

第1章 コロナ大暴落に翻弄される世界

予言どおり世界は大恐慌に入るだろう─20

コロナ大暴落で起きたリーマン超えの金融パニック─24

この暴落は大恐慌突入への警告─31

金価格は6倍になるから今こそ金を買いなさい─40

トランプの株の吊り上げ相場が終わった─47

日経平均が1万6000円を割ると仕組み債が紙キレになる─56

世界権力者相場で大手ヘッジファンドが生き延びた─64

第2章 金を買う人だけが生き残る  

もうすぐ金が買えなくなるから急ぎなさい─70

金の市場の混乱からも世界恐慌への足音が聞こえる─78

渋沢栄一の新一万円札が千円になる!─83

まだまだ金は上がるからさらに金を買うべきだ─89

100グラム単位で金を切り分けて売る方法─97

いざというときに金の地金に換えられる金を買う─99

金を売るなら海外に持ち出して売る─102

第3章 世界経済はどこまで破壊されるのか

ついにアメリカもゼロ金利になって成長が止まった─110

カドローNEC委員長が株の吊り上げ担当─115

石油価格の下落が大恐慌の引き金を引く─127

レポ市場が壊れたために中小銀行が危なくなった─146

ドイツ銀行がデフォルトを起こして潰れそうだ─151

世界的な信用収縮が起きている─161

第4章 インチキ経済の化けの皮が剥がされる

コロナ大暴落で資産バブルの化けの皮が剥がれた─166

アリババ株4・5兆円の売却で何とかもちこたえたソフトバンク─173

カルロス・ゴーンの復讐がこれから始まる─180

第5章 コロナウイルス恐るるに足らず

新型コロナウイルスは〝ショック・ドクトリン〟だ─192

恐怖を利用して国民を支配する─198

アメリカではインフルエンザで1万2000人が死んでいる─219

東京オリンピックはトランプが延期を提言─225

新型コロナウイルスを製造して撒いたのはアメリカ─228

コロナ騒動に感じる3・11と同じ後味の悪さ─237

あとがき─240

【特別付録】ドン底で拾う株 厳選15銘柄─244

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あとがき

 この本で、私がずっとガリガリと書いたとおり、3月に「コロナウイルス暴落」が起き

て、これまでのアメリカ主導の世界インチキ経済の化(ば)けの皮が剥(は)がれて、それで世界が大きく変わるようだ。

 私の周(まわ)りが口を揃えてそう言っているから、きっとそうなのだろう。それで、世界はこれから、どう変わるのか。となると、皆さん黙る。「副島さんなら、裏の秘密を知っていて、情報があるでしょう。教えてよ」と電話が架かってくる。ありません、そんなもの。私も皆さんと同じで、コロナ・パニックで、(他の人たちよりは穢[きた]ないガーゼマスクをして。本当は持病の気管支炎用)ボーッと生きています。

「バカ。くだらねえ。何がコロナウイルスだ。こんなもので、誰が死ぬか。みんなヤラセだ」と私がブツブツ言うと、奥さん( 配偶者[スパウス])が、目を剥(む)いて、私に怒り出す。「外から帰ったら、すぐに両手をしっかり30秒間、洗いなさい。これは常識よ。5秒じゃ、ダメー。すぐにお風呂に入りなさい」と。この件についての私の強固な考えは、本書第5章に書いた。

 社会インフラ(鉄道や公共サーヴィス)はすべてきちんと動いている。なのに街(まち)はガラーンとして人がいない(4月末現在)。みんな家に籠(こも)っている。……これが、予想された近(きん)未来か。映画「ブレードランナー」(1982年公開。主演ハリソン・フォード)の世界だ。

 それでも、金融・経済は、私が言ったとおりになってきた。私がずっと本に書いてきたことが、次々に現実のものになっている。私の言論の勝利だ。

「もうすぐ株の大暴落が来る。大恐慌が来る」と、23年間も本に書き続けて、ようやくこうなった。私が3月20日に、たったひとりで勝利宣言をした日に、世界中の指導者、権力者たちは揃(そろ)って青ざめていた。このあと私が「副島隆彦の勝利のお祝い」をしゃれたフランス料理屋でやって、飲んだくれた日(ワインを2本空[]けた。3月24日)、世界の権力者たちは、命懸けの「ナニ、クソ」で、ドーンと株価を押し上げて、暴落の連鎖を喰(く)い(杭[くい] 止(と)めた。これで小康(しょうこう)を得た。これで私も、よかった、よかったである。このあとも、私が、金融予言者業を続けていくのに、「一旦(いったん)は下げどまった」は、大変有難(ありがた)い。大(だい)災害、大(だい)変動、大(だい)恐慌にも、それなりの時間の経過(けいか)というものがある。数年間などあっという間だ。どうせ時間はダラダラとこのまま何なに事ごとも無(な)いかのように過ぎてゆく。それでも何か得え体(えたい)の知れない大変動のさ中なかに、私たちはいる。

 人類の歴史は、どこの国でも、80年に一度の割で、「経済恐慌か、動乱(革命、内乱)か、戦争」だ。大恐慌に突入するのを阻止するために、世界の権力者、支配者たちは、大きな戦争(large war ラージ・ウォー)に、世界を叩たたき込むだろう。それが歴史(学)が私たちに教える知恵だ。

 「まさか、そんな(ことは起こりえない)」が、本当に起きる。私たちが真に賢い人間であるためには、こういう準備と心構えが必要である。

  私は、私の本を、これまでずっと買って読んで下さった皆さまに、何よりも感謝する。一冊の本1600円の、一割の160円をいただいて、私の生活は成り立ってきた。私の人生には、バブルの浮かれ騒ぎはない。と同様に悲観と絶望もない。急に慌あわてて、初めて私の本を読んでくれる皆さんにも、まあ、そうですね、それなりに感謝します。お客さまは神さまです(三波春夫)。

よくもまあ厭(あ)きないで、ずっと私の金融本を作ってくれた徳間書店学芸編集部の力石幸一氏に、感謝します。

  どうせ、あと10年ぐらいの命である。私は自分の人生の最後までずっと書き続ける。他にやりたいことは何もない。若い人たちが大変だ。

2020年4月

副島隆彦

(貼り付け終わり)

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もうすぐ世界恐慌 そしてハイパー(超)インフレが襲い来る

(終わり)

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