古村治彦です

 

 トランプ政権の閣僚に誰がなるか、が現在の注目の的となっています。

 

 アメリカでは大統領府に属する閣僚級の幹部と、連邦政府を構成する各省のトップである長官(セクレタリー)が、政権最高幹部ということになります。江戸時代の例で考えると、将軍に直属する「御側」「御用取次」「側用人」が「奥の役人」、「三奉行(寺社・江戸町・勘定)」「大目付」「若年寄」「老中」が「表の役人」と呼ばれました。大統領府に属する政権幹部は奥の役人、行政府の閣僚は表の役人ということになるでしょうか。江戸時代は、奥の役人は政治に直接かかわることは、建前上は禁止されていましたが、現在のアメリカでは奥の役人は大統領に属し実際の政策立案に閣僚たちと共に関わり、閣僚たちは、官僚を指揮してその政策を実行するということになります。

 

 しかし、表遠くの役人同士で争いが起きるのは古今変わらないようです。五代将軍徳川綱吉の寵臣、柳沢吉保(元々は保明という名前だったが、綱吉からを賜り吉保と改名)は側用人でした。十代将軍徳川家治の側用人は、有名な田沼意次でした。側用人が権勢をふるうということはよくありました。私たちも日本史の授業で、「側用人政治」と言う言葉を習いました。

 

側用人とよく似て、大統領首席補佐官(Chief of Staff)が大統領執務室前に陣取って、大統領のスケジュールや面会の管理をするので、力を持つ場合があります。オバマ政権初期の大統領首席補佐官ラーム・エマニュエル(現シカゴ市長)はそうでした。

 

また、国家安全保障問題担当大統領補佐官(National Security Advisor)は大統領に直属し、毎日、国家安全保障と外交に関して助言を行うことをしており、大変重要なポジションです。国家安全保障会議という大変重要会議にも出席します。ジミー・カーター政権時代、イランでイスラム革命が起き、アメリカ大使館が学生たちに占拠され職員たちが多数人質にされるという事件が起きました。この時、人質救出の方法を巡って、ズビグニュー・ブレジンスキー国家安全保障問題担当大統領補佐官とサイラス・ヴァンス国防長官の間で対立が起きました。ブレジンスキーが軍のエリートによる突入、ヴァンスはそうした強硬策に反対しました。そして、ブレジンスキーが勝ち、ヴァンスは国防長官を辞任しました。

 

 また、沖縄返還に関しては、佐藤栄作首相の意向を受けて密使として交渉にあたった、若泉敬・京都産業大学教授(当時)の著書『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』には、交渉相手として、リチャード・ニクソン大統領国家安全保障問題担当補佐官として、若泉の友人であったウォルト・ロストウとロストウの後任のヘンリー・キッシンジャーが出てきます。

 

 以下の記事2本では、これまでトランプを支えてきた人物たちの名前が出てきています。選対本部にいて選挙を取り仕切った人たちはスタッフとして大統領府に入ることが予想されていますが、どのような配置になるか、こちらもまだ決まっていません。

 

 以下の記事では出てきませんでしたが、国家安全保障問題担当大統領補佐官には軍人出身のマイケル・フリンの名前が挙がっています。また、国防長官の名前として、ジョージ・W・ブッシュ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官スティーヴン・ハドリーの名前が挙がっています。

 

 記事を読むと、今回の人事に関する考え方として、「ワシントンの連邦政府(行政府)を変えるために連邦議会(立法府)からその分野に精通した人物を登用する(ジェフ・セッションズやボブ・コーカー)」というものと、「これまでの共和党政権(主に前回のジョージ・W・ブッシュ政権)での経験を持っている人を登用する(ジョン・ボルトンやスティーヴン・ハドリー)」というものの2つがあるようです。

 

 日本関係で重要なのは、国務長官や国防長官とその下の副長官、次官、次官補、国家安全保障問題担当大統領補佐官、国家安全保障会議アジア部長、国務省日本部長、国務省政策企画局長といったポジションです。こういったポジションにどういう人たちが就任するのか、更に言うと、トランプに反対していた、マイケル・グリーンさんがどういう地位に就かれるのかが注目です。

 

(貼り付けはじめ)

 

準備段階での名簿がトランプ政権の閣僚候補者たちの名前を示す(Preliminary list shows potential Trump Cabinet picks

 

ニキータ・ヴラディミロフ筆

2016年11月9日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/305354-buzzfeed-obtains-preliminary-list-of-trump-cabinet-picks

 

ドナルド・トランプの政権移行ティームは、彼が率いる次期政権の閣僚になる可能性がある人々の名簿を用意している。

 

ウェブサイト「バスフィード・ニュース」が入手した名簿には、ベン・カーソン、ニュージャージー州知事クリス・クリスティ、マイク・ハッカビー、ニュート・ギングリッジなどの名前が挙げられ、その中には一人の人物が複数のポジションの候補者になっている人もいる。

 

名簿には全部で41名の人物の名前と14の行政を構成する各省が記載されている。名簿を提供した人物は、バズフィードの取材に対して、この名簿は最終版ではなく、変更される可能性が高いと語った。

 

司法長官の候補者として、クリス・クリスティ、ジェフ・セッションズ、そしてルディ・ジュリアーニの名前が挙げられている。

 

国務長官の候補者として、ニュート・ギングリッジ、ジョン・ボルトン、ボブ・コーカーの名前が出ている。

 

大統領首席補佐官(首席スタッフ)の候補者には共和党全国委員会委員長レインス・プリーバスの名前しか挙げられていない。大統領府に属する行政管理予算局長として、セッションズの名前が出ている。

 

商務長官候補には、クリスティとハッカビー、教育長官にはベン・カーソンの名前が挙げられている。

 

国土安全保障長官としてクリスティの名前が、保健福祉長官としてカーソン、ギングリッジ、フロリダ州知事リック・スコットの名前が挙がっている。

 

サラ・ペイリンの名前が名簿に出ているのはサプライズであった。ペイリンは、内務長官の候補者の一人として名前が挙がっている。

 

=====

 

トランプは複数の共和党所属の連邦議員たちを閣僚に起用している(Report: Trump eyeing GOP lawmakers for Cabinet posts

 

ハーパー・ニーディグ筆

2016年11月9日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/305348-report-trump-eyeing-gop-lawmakers-for-cabinet-posts

 

水曜日、『ブルームバーグ・ポリティックス』誌は、マイケル・マコール連邦下院議員(テキサス州選出、共和党)、ボブ・コーカー連邦上院議員(テネシー州選出、共和党)、ジェフ・セッションズ連邦上院議員(アラバマ州選出、共和党)が次期ドナルド・トランプ政権の閣僚の候補者となっていると報じた。

 

トランプの考えをよく分かっている人に取材をし、ブルームバーグ誌は、連邦下院国土安全保障委員会委員長マコールは、国土安全保障長官に最有力候補だと報じた。

 

連邦上院外交委員会委員長のコーカーと、ジョージ・W・ブッシュ政権で国連大使を務めたジョン・ボルトンは、国務長官候補として名前が挙がっている。

 

セッションズは国防長官になるだろうと言われている。トランプはこれまで繰り返し、アラバマ州選出の上院議員であるセッションズを閣僚に起用するだろうと述べている。

 

ブルームバーグ誌によると、元ニューヨーク市長ルディ・ジュリアーニは司法長官の最有力候補だと報じている。

 

これまでに名前が挙がっている人々は全てトランプ支持者である。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)