古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:日本

 古村治彦です。

 

今回は「ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)」が世界各国で行ったサーヴェイ・リサーチの結果の中で、特に日本に関するものを読んで、その内容を簡単にご紹介したいと思います。記事のアドレスは以下の通りです。ピュー・リサーチ・センターは様々な世論調査を行っているアメリカのシンクタンク、研究所です。

 

http://www.pewglobal.org/2017/10/17/japanese-divided-on-democracys-success-at-home-but-value-voice-of-the-people/

 

サーヴェイ・リサーチというのは、人々に多くの質問をしてそれに答えてもらうものです。日本ではアンケートと言いますが、英語ではクエスチョナリーと言います。その際に回答者の年齢、性別、職業、学歴、居住地域なども記録されます。名前は出ません。今回の調査では日本では1000名ほどの人々が調査に協力したようです。調査は2017年3月8日から4月2日まで行われたようです。このサーヴェイ・データを使って、たとえば、年齢と投票率の関係や学歴と支持政党の関係などを調査することができます。そして、ある事象に対する因果関係に関する仮説を立て、統計学を使って調べることができます。

 

 今回の記事では、日本の回答者におけるアメリカへの信頼感の低下が特徴として取り上げられています。ジョージ・W・ブッシュ元大統領時代に約60%であったものが、バラク・オバマ大統領時代に約70%、最高値85%をつけていたのですが、ドナルド・トランプ大統領時代になって72%から57%になりました。それでも過半数は維持しています。アメリカの大統領への信頼感はブッシュ時代で3割台、オバマ時代が7割台でしたが、トランプ時代には2割台となってしまいました。アメリカへの好意とアメリカ大統領への信頼感は連関があるようですが、トランプ大統領時代になってアメリカへの好意が少し低下してしまっているようです。大変興味深いのは、年代別で見ると、若年層では、トランプ大統領へのマイナス評価の割合が低くなるという結果が出たことです。日本の若年層は、トランプ大統領をそこまで嫌っていないということになります。その理由については書かれていませんが、ああいう型破りなスタイルはやはり若い人たちには受け入れられやすいのだろうかと思います。11月にトランプ大統領が訪日しますが、若い人たちは歓迎するのでしょう。しかし、もちろんオバマ大統領に比べれば人気は全くないということになりますが。

 

 日本人の自国の民主世辞体制についての評価は私にとって興味深いものでした。現在の日本の民主政治体制はきちんと機能していると答えた人が50%で、そうではないと答えた人が47%という結果が出ました。現在の状況を好意的にとらえていない人が多くいるということが分かります。そして、日本にとって、「代議制民主政治体制」「直接民主体制」が良いと答えた人はそれぞれ77%、65%を超え、「専門家による支配」には49%、「強力な指導者による支配」には31%、「軍部による支配」には15%が良いと答えました。

 

 日本人の半分は現在の民主政治体制に満足しているが、しかし、47%は不満を持っている、そして、強力な指導者による支配には69%が良くないと答えた、ということになります。これは、現在の日本政治の状況、安倍一強状態に不満を持っている人たちが多いということになると思います。そして、アメリカに対する好感度の低下は、安倍首相のなんでもかんでもアメリカ追従、従米路線に対する嫌気も影響しているのだろうと考えられます。ただ、全体として10代、20代は50代以上に比べて、現状に満足し、専門家(官僚)による支配を支持しているという結果も出ました。失われた20年の中で成長した若い人たちは、現状を受け入れながら生きていく術を身につけ、年齢が高い人たちは日本の良い時代を知っているので現状に対して不満を持ちながら生きている、ということになるのではないかと思います。

 

 経済については、現状に多くの人々が満足していますが、将来もこのような状態が続くのかどうか、子供たち世代が自分たちよりも良い暮らしができるかということについては不安を持っているという結果が出ました。日本の経済規模、世界で第3位ということを考えると、生活水準が全体で急激に低下するということは考えにくいですが、一人一人の生活実感では、このまま世界の先進国としてやっていけるのだろうか、生活を維持できるのかということを不安に思っている人たちが多いようです。

 少し心配なのは、57%の人が「多様性は日本社会を悪くする」と答え、24%の人が「良くする」と答えたことです。日本人らしさ、日本の伝統ということを過度に強調すると、日本という国全体が息苦しくなるのではないかと思います。

 

 北朝鮮問題について、北朝鮮が核兵器を保有することについて3分の2の人が大変懸念を持っている、という結果が出ました。これは韓国の結果(59%)よりも高い数字となりました。そして、61%が北朝鮮に対する経済制裁を強化することを支持し、25%が北朝鮮との関係を進化させることを支持するという結果が出ました。若い人たちの41%と50代以上の21%が関係強化を支持しました。日本国民は、経済制裁をすることで交渉のテーブルに出てこさせようということを考えているようです。それでは武力行使までエスカレートさせるのが良いとまでは考えていないと思います。

 

 中国に対しては、否定的な答えが多くなっていますが、中国の経済成長だけは過半数の人々が評価している、望ましいと答えています。中国の世界GDPに占める割合は14%を超え、日本の2倍以上となっています。中国の経済成長率が6.9%であったと発表されましたが、日本が追いつくには二けた中盤の経済成長率が必要ですが、それは全く持って不可能な話です。ですから、日本国民の多くは、感情で中国は嫌だなぁと思っても、合理的に、経済で恩恵を受ければよいと考えているようです。ロシアに関しては脅威だと感じている人たちが多く、歴史的な経緯からロシア恐怖症やロシア嫌悪は拭い去れないということが分かります。

 

 今回の結果発表を読むと、若い人たちにはある種の諦観と周囲と争いたくないという感情があるようで、これは、高度経済成長を知らない若者たちの守りの姿勢を示していると思います。ですから、「世界の中心で輝く」とか何とか勇ましいことを言っても受けないのではないかと思います。低成長時代の先進国・日本のシュリンクした姿が見えてくるように私には感じられました。

 

(終わり)



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




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 古村治彦です。

 

 今回はアジア地域におけるもう一つの核問題であるプルトニウム生産問題についての論稿をご紹介します。この記事の著者たちは、北朝鮮の核兵器の脅威と同様に、日中韓3か国のプルトニウム生産について懸念をもっています。プルトニウムは原子力発電所で使用した燃料を再処理することで出てきます。そして、プルトニウムは核兵器の燃料となるものです。ですから、プルトニウムを大量に生産し、貯蔵することは核兵器開発にとって必要不可欠の前提条件となります。

 

 日本でプルトニウムを生産しても、核兵器を製造することはできません。非核三原則がありますし、アメリカも許さないでしょう。ドナルド・トランプ大統領は選挙期間中、日本と韓国の核武装について言及しましたが、これをすぐに許可することはないでしょう。しかし、プルトニウムが貯蔵されるということは核兵器開発につながるのではないかという懸念を諸外国に持たせることになります。実際には中国が日本に対して懸念を表明しています。

 

 プルトニウム生産について懸念を払しょくする最善の方法は生産しないことだ、と著者たちは述べています。自民党と官僚の一部には、日本の核武装を目指す勢力がいるでしょうから、プルトニウムの生産と貯蔵をやめることはないと思われますが、それが果たして日本の安全保障につながるのかということを考えてもらいたい。諸外国の懸念と恐怖を引き起こして、割に合わないことになると考えられます。何よりもアメリカに疑念を持たせることが一番の問題ということになります。

 

今回ご紹介した論稿で重要なのは、河野太郎外務大臣の存在に焦点を当てている点です。河野太郎外相は外相就任以前から日本の原子力政策に批判的でありながらも建設的な提案をしている数少ない政治家の一人でした。今回の内閣改造で重要ポストである外務大臣に、一言居士の河野太郎氏の起用ということになり、人々は首をひねりました。どうして河野氏が外務大臣になったのか、と。対中国、対韓国の関係改善ということが理由で挙げられています。日本の原子力政策に批判的な河野氏を外相に起用したのは、今回の論稿のテーマであるプルトニウム生産問題について、安倍晋三首相が米中韓の各国にメッセージを発したのだと解釈することも可能です。

 

 このように考えると、河野太郎氏の外務大臣起用はより国際政治とリンクした重要な意味を持つものなのだと言うことができると思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

日本政府とアメリカ政府はもう一つの核にかかわる問題を抱えている(Tokyo and Washington Have Another Nuclear Problem

 

ヘンリー・ソコルスキー、ウィリアム・トビー筆

2017年817

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/08/17/tokyo-and-washington-have-another-nuclear-problem-china-korea/

 

今週、日本の外務大臣・河野太郎と防衛大臣・小野寺五典はワシントンで、アメリカ側の担当者である国務長官レックス・ティラーソンと国防長官ジェイムズ・マティスと会談を持つ。彼らは最近の北朝鮮による挑発行為に日米両国はどのように対処すべきかを議論する。今回の会談は素晴らしいものだ。日本や韓国と緊密に協力し、また中国と共同行動を取る時にのみ、アメリカは北朝鮮が与えている核兵器の脅威に効果的に対処できる。

 

北朝鮮問題は重要であるが、日米両国の担当者たちは、より長期的な、潜在的に深刻なもう一つの核に関する脅威について考慮しなければならない。そのもう一つの脅威とは、日本、中国、そしておそらく韓国におけるプルトニウムの生産量の増加である。この問題は複雑であるが、私たちが協力的に行動しても解決は存在しない。その論理構成は次の通りだ。

 

日本は、膨大な使用済み核燃料を処理するための再処理施設を2018年秋に六ヶ所村に開設する計画を持っている。六ヶ所村の再処理施設は核兵器に利用できるプルトニウムが8000キロ生産されることになる。これは年間1000発以上の核爆弾を製造できる量である。この再処理施設開設の表向きの理由は、再処理された燃料を発電用原子炉と高速炉に供給するためとされている。ここに一つの問題が存在する。現在、日本で稼働している原子炉は5つのみであり、唯一存在した高速炉は廃止されたばかりだ。つまり、これからプルトニウムが貯蔵されるはずもないのに、六ヶ所村の再処理施設を稼働させる必要はないのだ。

 

一方、中国はフランスから六ヶ所村の再処理施設の同規模の施設を購入することに合意した。最初に計画された施設に対しては大規模な反対運動がおこり、中国政府は建設を断念した。中国は再処理施設の稼働を2030年までに開始したいと望んでいる。そして、2040年から2050年にかけてこの施設から生産されたプルトニウムを利用する高速炉を稼働させる計画だ。繰り返しになるが、問題はこれから10年以上続くことになる。中国は核爆発用のプルトニウムを年間約8000キロ生産することになるだろう。

 

これがどうして問題になるのだろうか?中国はすでに数百発の核兵器を保有し、更なる核兵器製造のために必要なプルトニウムを貯蔵していると推定されている。この数字は実態に沿ったものであろう。しかし、中国がロシアやアメリカと対抗したいと望むのならば、中国は更なる数千発の核兵器用の燃料をさらに貯蔵する必要に迫られている。中国政府が核兵器用の燃料を軍事的な野心を露わにしない形で貯蔵したいと望むなら、「平和的」な高速炉プログラムの形を取ることになる。

 

韓国について見てみる。韓国は長年にわたりアメリカ政府に対して不満を表明してきた。アメリカは日本に対して核燃料を与え、その再処理を認めているが、韓国には認めていない。この点を韓国は不満に思っている。韓国の新大統領である文在寅は原子力発電所建設に反対し、米韓民生用原子力協定の下でプルトニウム生産の権利を求めない可能性がある。文大統領は大統領選挙で40%の得票率で当選した。文大統領の政敵たちは権利の存在を確認している。野党の政治家たちの中には韓国の核武装について公の場で主張している人たちが出てきている。

 

日中韓のプルトニウム生産計画はアジア地域における恐怖感と対立を高めている。日本政府の高官は非公式の場で、韓国はプルトニウムの再利用する必要はないと主張している。彼らはまた中国のプログラムについても懸念を持っている。一方、中国政府は、日本政府のプルトニウム生産計画がもたらす核兵器開発の脅威について公の場で避難している。中国政府はまた、アメリカが韓国に対してプルトニウム生産を許可するかもしれないということについて懸念を持っている。

 

このような危機的状況に関しては、簡単な解決法がある。トランプ政権はプルトニウムを燃料とする反応炉を製造する技術に対して政府補助金をゼロにすると決定した。トランプ政権は日本、中国、韓国に対して再処理施設計画を取りやめるように促すべきだ。どうしてそのようなことをすべきなのか?それは、日中韓が再処理施設計画を取りやめることで、資金を浪費するだけで実効性の乏しい核エネルギーの形態である再処理にお金を使わないで済むのだ。政治的にもこれは意味があることだ。中国政府は再処理施設建設を国民に説得できないでいるし、韓国は原子力開発計画をスローダウンさせたいとしている。アメリカ政府が対処に苦しんでいる北朝鮮問題について、同盟諸国や中国との間の協力関係は同氏も必要となる。一方、日本のプルトニウム生産プログラムは技術的にも経済的にも割に合わないものである。

 

今回の日本の代表団のワシントン訪問に話を戻す。今回の代表団には河野太郎外務大臣も参加している。河野大臣は日本国内において、日本のプルトニウム生産プログラムに対する最も厳しい批判を行ってきた人物である。昨年、安倍晋三首相は河野に対して日本政府の予算を削減する方法を質問した。河野は高速増殖炉「もんじゅ」の廃止を主張した。そして、安倍首相は河野の主張に合意した。

 

河野外相は就任後初の記者会見の場で、日米原子力協力協定が2018年7月に自動更新される前に専門家に諮問されるべきと考えるかと質問された。河野外相は諮問されるべきだと答え、日本のプルトニウム生産プログラムが示す安全保障上の諸問題について話し合われるべきだと述べた。今年初め、河野はこれよりさらに踏み込んだ行動をとった。それは、「日本政府は六ケ所村の再処理施設開設を取りやめること、原子力協力協定についてアメリカ政府と話し合うこと、プルトニウムの商業的生産の一時停止についてアメリカ、韓国、中国と協力すること」を内容とする共同宣言に河野は署名したのだ。

 

北朝鮮は重要な問題である。しかし、北東アジア地域における唯一の核に関する脅威ということではない。アメリカ、中国、日本、韓国がプルトニウム生産レースを回避できれば、北朝鮮の核の脅威に対して共同歩調を取ることは難しいことではないし、将来に発生しうるより深刻な脅威を防ぐこともできるだろう。ティラーソン国務長官とマティス国防長官はこのことを十分に考慮すべきだ。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





 古村治彦です。

 

 今回は、ヘンリー・キッシンジャーによる北朝鮮問題の分析記事をご紹介します。北朝鮮は金正恩委員長の指導の下、ICBMを開発し、アメリカの領土を射程に捉えたという報道がなされています。ICBMは第二次世界大戦中にドイツが開発したV(報復)1ロケット(イギリス国内を攻撃した)がその原型と言われています。世界大戦から72年も経過し、その当時、最先端技術であった原子爆弾も長距離攻撃ミサイルも作ろうと思えばどの国でも作ることが可能なものとなりました。

 

 北朝鮮はアメリカとの交渉を求めています。6か国協議という枠組みはありますが、北朝鮮は多国間協議の枠組みには何も決める力がないのだから、アメリカとの直接交渉しかないと考えています。韓国や日本、ロシアや中国を無視している状況です。一方、アメリカはトランプ大統領が激しい言葉遣いをしていますが、ティラーソン国務長官は交渉最優先という立場を取っています。

 

 北朝鮮とアメリカは両国ともに交渉を求めていますが、北朝鮮はアメリカとの直接交渉、アメリカは中国に北朝鮮への対応を求めつつ交渉は6か国協議で、とそれぞれ異なる主張を行っています。

 

 ヘンリー・キッシンジャーがトランプ政権の外交指南役であることはすでにこのブログでも数度にわたってご紹介しました。キッシンジャーの考えはトランプ政権の外交に反映されるのですから、彼の考えを知っておくことは重要です。

 

キッシンジャーは北朝鮮の「非核化(denuclearization)」を目的としています。そのためには武力行使という選択肢を完全に排除しないとしながらも、交渉を優先するという立場を取っています。そして、キッシンジャーは北朝鮮の体制転換を求めず、核兵器を放棄した場合に、その機に乗じて北朝鮮を攻撃しないということを国際社会が約束することを条件にすべきだと述べています。

 

キッシンジャーは中国の存在と思惑を考慮しながら、アメリカと中国が衝突することなく、非核化(北朝鮮だけでなくアジア地域全体)という共通の目的を達成すべきだとしています。

 

私は北朝鮮という国家は、力の空白の中に存在する稀有な国であると考えています。野球で打球が野手の間に落ちてしまうということがありますが、野手の一人が無理をすれば打球をキャッチできるのに、誰も怖くて無理をしないために結局キャッチできない、ということになります。北朝鮮はまさにこのような打球であると考えます。

 

北朝鮮が存在することで、中国はアメリカと直接陸上で対峙しなくて済むという状況にあります。ロシアも同様です。長年中国の圧力を受けるという歴史を経験してきた朝鮮半島の国家である韓国からすれば、逆のことが言えます。そうした中で、どの国も「北朝鮮は存続して欲しいが、核兵器は持ってほしくない」と考えることになります。

 

私は最近、韓国の大学教員の方と話をしました。北朝鮮について質問すると、「韓国と北朝鮮は、言葉は同じだが、全く異質の国同士となってしまった。これを急に統一することはかえって危険である。韓国には急激な統一に耐えられるほどの経済力もない。また、国民の中にも北朝鮮と統一したいと考える人はそう多くない」と答えました。

 

私の中には、朝鮮半島の分断状態は良くないことなので出来るだけ早く統一すべきだという考えが前提にありましたが、「二国共存状態(two-state solution)」ということも考慮しなければならないのだと考えを改めました。

 

北朝鮮としてはアメリカに対して、体制保障と不可侵を求めています。そのための交渉のカードとして核兵器やICBMを開発しています。朝鮮半島問題について考える場合に、「朝鮮半島は統一されるべきだ、それも韓国に吸収される形でというのが望ましいし、それ以外は無理だ」という考えが前提となりますが、統一ではなく、まずは二国共存で、北朝鮮をより開放された、中国のような国にすると考えると選択肢が広がり、短期的には危機が回避されるではないかと思います。

 

(貼りつけはじめ)

 

「北朝鮮危機をどのように解決するか」

―アメリカ政府と中国政府との間の理解が不可欠の前提条件である。日本政府と韓国政府もまた重要な役割を果たすことになる

 

ヘンリー・A・キッシンジャー筆

『ウォールストリート・ジャーナル』紙

2017年8月11日

https://www.wsj.com/articles/how-to-resolve-the-north-korea-crisis-1502489292

 

30年以上にわたり、国際社会は北朝鮮の核開発プログラムに対して、非難と有罪判決宣告の引き伸ばしという矛盾した対応を取ってきた。

 

北朝鮮政府の無謀な行為は強く非難されている。核兵器開発に向けた動きは受け入れられないという警告が国際社会から発せられている。しかし、北朝鮮の核開発プログラムは加速される一方だ。

 

2017年8月5日に国連安全保障理事会によって北朝鮮に対する制裁決議が満場一致で可決された。これは大きな前進を意味する。もっとも、合意されるべき決議はまだ議論されたままで残っている。しかし、大きな一歩は踏み出された。

 

しかし、北朝鮮は大陸間弾道ミサイルの発射実験を成功させた。これによって、更なるごまかしを行う余地が失われることになった。

 

金正恩が中国とアメリカによる反対と国連安保理の満場一致の制裁決議があるにもかかわらずに核開発プログラムを推進するならば、重要なプレイヤーである諸大国間の地政学的な関係を変化させることになるだろう。

 

国際社会が困惑している間に北朝鮮が全面的な核攻撃能力の開発を完成させてしまったら、アジア地域、特にアメリカの同盟国である日本と韓国におけるアメリカの核の傘の信頼性を一気に失わせるという深刻な事態を招来することになるだろう。

 

北朝鮮は長年にわたり核開発を行ってきた。そして、北朝鮮による核の脅威がアメリカの領土に到達するということになり、北朝鮮の核兵器が存在することによる無秩序が生み出される可能性も出てきている。北朝鮮が実用に耐えるICBMを持つには、弾頭の小型化、ミサイルへの弾頭の設置、複数のICBMの製造が必要であり、これにはしばらく時間がかかる。

 

しかし、アジア諸国は、北朝鮮が既に開発している短距離、中距離のミサイルによる攻撃という脅威に直面している。

 

この脅威が増していくと、ヴェトナム、韓国、そして日本といった国々において自国の防衛のために核兵器を開発するという動機が急速に大きくなっていくだろう。これは、アジア地域や世界全体にとって良くない転換点ということになる。

 

北朝鮮が既に開発した核技術から後退させることは、更なる開発を防ぐことと同じく重要になる。

 

アメリカ単独、もしくは複数の国による対北朝鮮外交はこれまで成功していない。それは主要諸国の目的を一本化させることができないためだ。特に中国とアメリカとの間で北朝鮮の核兵器開発を実際にどのように阻止するかという点で合意が形成されていないためだ。

 

アメリカは北朝鮮に対して核開発プログラムを終了することも求めている。しかし、アメリカからの要求は何らその効果を示していない。軍部を含むアメリカの指導者たちは、軍事力の行使には消極的だ。ジム・マティス国防長官は朝鮮半島における戦争は「破滅的なものとなる」という見通しを述べた。

 

北朝鮮では数千本の大砲が韓国に向けて据えられている。それらは韓国の首都ソウルを射程内に捉えている。これは、ソウルと周辺地域に住む3000万人の人々を人質にとるという北朝鮮の戦略を反映している。

 

アメリカ単独による先制軍事行動は中国との衝突を引き起こすという大きなリスクをはらんでいる。中国は一時的にはアメリカの軍事行動を許容するだろうが、それでも中国の鼻先でアメリカが決定的な結果をもたらそうとする戦略を実行することを我慢して受け入れることはないであろう。1950年代の朝鮮戦争において中国は戦争に介入したという事実は中国がアメリカと衝突する可能性があることを示している。

 

軍事力の使用は注意深く分析されねばならない。そして、軍事力使用に関する言葉遣いもまた抑制的でなければならない。しかし、軍事力の行使の可能性を排除することはできない。

 

これまで述べたような考えを前提にして、トランプ政権は中国に対して、北朝鮮の非核化を実現するための外交的な努力を行わせようと試みている。こうした努力はこれまでのところ、部分的にしか成功していない。

 

中国はアメリカが持つ核兵器の拡散に関する懸念を共有している。実際のところは、中国こそは北朝鮮の核兵器によって最も影響を受ける国なのである。しかし、アメリカは北朝鮮の非核化という目的を明確に示しているのに対して、中国は北朝鮮の非核化がもたらす政治的な結果に直面することを嫌がっている。

 

北朝鮮は核兵器開発プログラムに国の資源の多くの部分を投入している。その割合は国力に釣り合わないものだ。そうした中で、核兵器開発プログラムの放棄、もしくは実質的な削減や後退は北朝鮮国内で政治的な混乱を引き起こし、更には体制転換にまで至る可能性がある。

 

中国はこのことをよく理解している。従って、最近の外交上の大きな成果としては、中国が原則として北朝鮮の非核化を支持しているということを中国が明確に示したことだ。しかし、同時に、北朝鮮国内の分裂や無秩序状態が起きることは、中国にとっての2つの大きな懸念を引き起こす。

 

一つ目の懸念は北朝鮮国内の危機が、中国の政治と社会に与える影響である。中国の1000年に及ぶ歴史で繰り返された出来事が再び繰り返されるのではないかという懸念である。

 

二つ目の懸念は北東アジア地域の安全保障に関するものだ。中国は北朝鮮の非核化に貢献する誘因が存在する。そして、中国としては北朝鮮の非核化から朝鮮半島全体の非核化を行いたいと考えている。現実には韓国には現在のところ、核兵器開発プログラムは存在しない。計画の発表すらない。しかし、国際的な核兵器開発禁止は別の問題となる。

 

中国は非核化につつく北朝鮮の政治的な発展についてもある程度の利害関係を持っている。それは、朝鮮半島において二国共存状態を維持するか、統一を行うか、といことであり、北朝鮮地域における軍事力の展開に制限をするかどうか、ということでもある。

 

これまでのところ、トランプ政権は中国に対して北朝鮮へ圧力をかけるように求めてきた。アメリカは自国の目的のために中国を下請け業者のように扱ってきた。より良い、唯一実現可能なアプローチはアメリカと中国両国の努力と試みを一本化し、共通の立場に立ち、他の国々の参加を求めていくということだ。

 

「我々の目的は北朝鮮を利害関係諸国が参加する会議に出席させることだ」とアメリカ政府は何度も発表している。こうした発表は、交渉こそがアメリカの目的だという前提の存在を反映している。交渉は自国の都合の良いタイミングで行われ、交渉に相手を引きずり出す圧力とは関係なく、交渉は最終的な合意まで続けられるべきだとアメリカは考えている。

 

しかし、アメリカの外交は、過程ではなく、結果によって最終的に判断される。アジア地域の安全保障構造は危機に瀕していると考える国々とって、アメリカが「我々は自国のみの利益を求めない」と繰り返し主張するだけでは不十分なのだ。

 

どの国が、何について交渉すべきなのか?朝鮮半島の非核化にとってアメリカと中国との間の理解と同意は必要不可欠な条件となる。皮肉な展開なのは、現時点の中国がアジア諸国の会兵器開発を阻止することについて、アメリカよりもより大きな関心を持っているかもしれないということだ。

 

中国は「北朝鮮に対する圧力が不十分だ」と非難されてアメリカとの関係を悪化させてしまうという危険に直面している。北朝鮮の非核化には持続した協力が必要である。経済的な圧力だけで非核化を実現することは不可能だ。米中間の非核化以後の事態、特に北朝鮮の政治的な発展と北朝鮮領土内の軍事力展開の制限に対する共通理解と対策が必要だ。このような共通理解がなされても、既存の日本や韓国との間の同盟関係を変化させてはならない。

 

半世紀に及ぶ歴史に照らしてみると逆説的に見えるかもしれないが、このような理解こそが朝鮮半島における行き詰まりを打開する最良の方法なのである。

 

米中が目的を明確とする共同声明を発表し、暗黙の裡の行動を行うことで、北朝鮮は孤立を痛感し、非核化という結果を守るために必要な国際的な保証の基礎が確立することになる。

 

韓国と日本はこの過程において重要な役割を果たさねばならない。韓国以上に北朝鮮の核開発に最初から関与してきている国は存在しない。韓国はその置かれている地理的な位置とアメリカとの同盟関係によって、政治的な結果に対して大きな発言力を持っている。

 

韓国は外交における解決によって最も直接的な影響を受けることになるだろう。また、軍事的な不測の事態が起きた際には最も危険な状態に陥ることになるだろう。アメリカとその他の国々の指導者たちが、北朝鮮の非核化を利用することはないと宣言することは重要だ(訳者註:核兵器を放棄した北朝鮮を攻撃しないという宣言を行うこと)。韓国はより包括的で正式な考えを表明することになるだろう。

 

同様に、日本は歴史的に朝鮮半島とは1000年以上のかかわりを持っている。日本の安全保障に関する基本的な概念に照らすと、日本が自国で核兵器を所有する状態にない中で、核兵器を持つ国家が朝鮮半島に存在することを許容することはないだろう。アメリカとの同盟関係に対する日本による評価は、アメリカの危機管理において日本の懸念をどの程度考慮してくれるかということにかかっている。

 

アメリカと北朝鮮の直接交渉という代替案も魅力的ではある。しかし、アメリカの直接交渉の相手である北朝鮮は、非核化の実行について最も利益を持たず、米中間を離反させることに最大の関心を持つ。

 

アメリカが中国との間で理解を共有するためには、最大限の圧力と実行可能な保証が必要となる。そして、北朝鮮は最終的な国際会議に出席することができるようになる。

 

核兵器の実験の凍結によって最終的な非核化に向かうための一時的な解決が出来ると主張する人々がいる。この主張の通りに行うことは、アメリカとイランとの間で結ばれた核開発を巡る合意という過ちを繰り返すことになるだろう。アメリカとイランの合意は、技術的な側面のみに限定して地政学的な戦略における問題を解決しようというものだ。これが間違いだったのだ。両国の合意は、「凍結」の定義がなされ、調査手続きが確立されたが、核開発放棄の引き伸ばしに対する口実を与えることになる。同じことが米朝間の合意でも起きるだろう。

 

「北朝鮮は手続きに時間をかけて、彼らの真の目的を隠す戦術を取っている。それは、言い逃れや引き延ばし工作をして長年の悲願を達成しようとしている」という印象を持っている人も多いだろう。北朝鮮はこのような印象を人々に持たせるのは得策ではない。段階的なプロセスを踏むということは考慮するに値するアイディアかもしれないが、それはあくまで北朝鮮の核兵器能力と研究プログラムを短期間のうちに実質的に削減することにつながるものである場合に限られる。

 

北朝鮮が一時的にも核兵器能力を保持することは、永続的な危険性を構造化してしまうことになる。その危険性は次のようなものだ。

 

・貧しい状態にある北朝鮮が核技術を他国に販売することになるかもしれない。

 

・アメリカの北朝鮮の非核化に向けた努力が自国の領土を守ることにばかり集中し、実際に北朝鮮の核の脅威に直面しているアジア地域をほったらかしにしているという印象を与えてしまうことになる。

 

・他国も北朝鮮、相互、そしてアメリカに対抗し、抑止するために核兵器開発を行う可能性も出てくる。

 

・非核化交渉が進まないことに対する不満が中国との間に争いを激化させることになる。

 

・核兵器の拡散はその他の諸地域で加速するだろう。

 

・アメリカ国内で行われる議論はより対立的なものとなるだろう。

 

非核化に向けた実効性のある進歩、それも短期間での非核化こそが最もよく考えられた慎重な望ましい方向ということになる。

 

※キッシンジャー氏はニクソン政権とフォード政権で国務長官と大統領国家安全保障問題担当補佐官を務めた。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22

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 古村治彦です。

 

 少し古い記事ですが、『フィナンシャル・タイムズ』紙に掲載された優れた政治分析記事をご紹介します。これは昨年のアメリカ大統領選挙以来の世界的な政治の流れを的確につかんでいる記事だと思います。

 

 昨年の大統領選挙では、共和党のドナルド・トランプと民主党のヒラリー・クリントンの戦いとなりました。日本でも報道されましたが、トランプを支えたのは、ラストベルトと呼ばれるアメリカの工業地帯の白人労働者たちで、元は民主党を支持していた人々です。彼らは民主党の実像に失望し、民主党も含めて既存のワシントン政治を壊して欲しいということで、アウトサイダーであるトランプを応援しました。

 

 共和党は金持ちのための党、民主党は貧乏人や弱い人のための党というのがこれまでのイメージでしたが、これが崩れてしまいました。ヒラリー・クリントンは口を開けばきれいごとばかりでしたが、実際には史上最高額の政治資金を集め、しかもそれは一般国民からの少額のお金が多数集まったものではなくて、大富豪たちからのものでした。エスタブリッシュメントという言葉が日本でも報道されましたが、民主党はきれいごとを言って貧乏人や弱い人たちから票を集めながら、実際にはエリートや大富豪たちの意向が反映される党になってしまった、ということをアメリカの有権者、特に元々民主党を支持していた人々が見抜いてしまったのです。

 

 そうした人々にとっての希望はバーニー・サンダース連邦上院議員でした。サンダースは民主党員ではなく、彼もまたアウトサイダーでした。サンダース支持は広がり続けましたが、それに危機感を覚えたのがエスタブリッシュメントの意向を受けた民主党全国委員会でした。民主党全国委員長がサンダースの躍進に危機感を持って、その阻止のためにウゴていたということが民主党大会の前に暴露されました。これがヒラリー敗北の理由の1つであったと私は考えます。また、民主党の予備選の場合、特別代議員といって、連邦議員や州知事などが特別に代議員になれる制度があり、これもまた民主的ではないとして、顰蹙を買いました。

 

 民主党は敗北すべくして敗北しました。これは2012年の日本の民主党(当時)にも言えることです。「国民の生活が第一」というスローガンを掲げながら、それを裏切り、内紛ばかり起こし、結局、自民党にすり寄るような形になって、民主党政権は崩壊しました。その時の傷はいまだに回復していません。人々の期待を受け止めることができる態勢になっていません。

 

 イギリスの総選挙で労働党が社会主義者を自称するジェレミー・コービン党首の下、躍進を遂げました。サンダースもそうですが、コービンもまた若者たちから支持を集めています。トランプもサンダースもコービンもエスタブリッシュメントに反対する人々の声をうまくすくい上げています。それは、自分たちの生活を少しでも良くしてほしいというものです。彼らは別に国家の威光を高めるとか、外国と戦争をするとかそんなことを望んでいません。そんなことに使う金があったら、自分たちに回して欲しい、そのようになるように既存の政治を変更して欲しいと望んでいます。日本でもそのような声が高まるでしょう。

 

安倍首相に対する逆風が大きくなっていますが、これは森友学園と加計学園の問題や、閣僚たちの相次ぐ不祥事だけでなく、アベノミクスになっても自分たちの生活が良くならないのはどうしてなのか、社会保障の負担だけは上がっていくのに、という不満が根底にあるように思います。

 

 そうした中で、民進党は「国民の生活が第一」路線に戻して、もう一度再分配見直しを主張すべきです。そこで、自民党との違いを打ち出すべきです。そこで参考になるのは、イギリスやアメリカで成功したケースです。

 

 トランプのスローガンで有名になった「アメリカ・ファースト」ですが、これは、「アメリカ国内にある多くの問題の解決を第一にしよう、最優先にしよう。アメリカ国民の生活を第一に考えよう」という意味です。ですから、2009年の民主党はこのことを先取りしていたのです、そして、途中で内部の無能な政治家たちにこのことを放棄させられたのですから、もう一度これを復活させるようにすべきです。そのために、古い革袋に新しい酒を入れるのではなく、新しい革袋に古い酒を入れる、つまり古くからいる執行部の面々の交代が必要だと考えます。

 昨日、民進党の蓮舫代表が辞任を表明しました。野田佳彦幹事長も既に辞任を表明しています。2人の決断に敬意を表したいと思います。民進党が新規まき直しで、自民党を追い込み、自民党に対抗できる受け皿となることを期待しています。野党共闘も含め、これからあらゆる戦術、戦略を駆使して、自公維新と対峙し、憲法改定阻止、そして将来的には政権の座を目指していただきたいと思います。


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民主党のポピュリスト左派への旅路(The Democratic journey to the populist left

―サンダースが優勢に立ち、クリントン流の漸進主義は死んだ

 

エドワード・ルース筆

2017年6月21日

『フィナンシャル・タイムズ』紙

https://www.ft.com/content/f69b4b68-55d0-11e7-9fed-c19e2700005f#myft:saved-articles:page

 

バーニー・サンダースが再び中心に戻っている。中道派の民主党員であるジョン・オソフが火曜日に開票されたジョージア州の連邦下院議員補欠選挙で勝利していたら、民主党のクリントン派(Clintonite)が本当の勝利者ということになったであろう。オソフは、「トランプをイライラさせてやる」と公約していた。しかし、結果はトランプを喜ばせることになった。民主党はドナルド・トランプに対して道徳的な勝利を得ようと躍起になっている。しかし、民主党はこれまで勝利を収められないでいる。補欠選挙の結果によって、混乱し、指導者不在の民主党をコントロールするための戦いに民主党が敗れたということが失望感を蔓延させている。t

 

民主党にとって最大の痛手となった攻撃はもちろん昨年11月のヒラリー・クリントンの敗北だ。彼女を支援した人々は今回のジョージアの補選に大量の資金を投入した。投入された資金量はアメリカ史上最高額となった。しかし、資金が情熱の代りをすることはできなかった。オソフが勝利をしていれば、民主党内部の、エマニュエル・マクロン流の実践的な派閥が勝利を得ることができたということになっただろう。そうすれば共和党の議員たちはトランプ大統領から離れる勇気を持つことができたことだろう。オソフが勝利していたら、トランプの健康保険改革は葬り去られていたことだろう。選挙の結果を受けて、健康保険改革法案は可決される可能性が高まった。こうした状況の中で、トランプ大統領は勝利を収め続けている。

 

それでは誰がトランプを止められるか?マクロン流の民主党員たちでないならば、ジェレミー・コービンのようなタイプの民主党員たちであろう。彼らの進む道にある障害物は取り除かれつつある。彼らの主要な協力者はトランプ自身だ。トランプ大統領は民主党に大打撃を与えたが、それと同じくらい共和党を破壊しつつある。トランプは自身の支持基盤からの熱烈な忠誠心と同じくらいのエネルギーを反対者たちからもたらされている。民主党のエスタブリッシュメントは機能不全に陥ったままで、崩壊に瀕している。エスタブリッシュメントの敗北は、トランプによるアメリカ政治の再構築の中で次に起きる重要な出来事ということになるだろう。

 

最近のイギリスの総選挙の結果は、アメリカ国内のコービンと似た人々にとって有益な示唆を与えている。専門家たちは、コービンが労働党にとって最終兵器になるということを理解できていなかった。専門家たちはこの現象を誤解していたようにも思える。アメリカにおけるコービンに匹敵する人物であるサンダースのように、労働党党首コービンは人々を熱狂させる。これは専門家たちの持つ知識や経験を超えるほどのものであった。彼らはその凄まじさを理解できなかった。 私は、強力な労働党が示しているのは、有権者たちが鉄道を再び国有化して欲しいと願っているということだとは思わない。民主党についても同様だ。しかし、私が分かっているのは、コービン重要な選挙で投票率を大幅に上昇させたということだ。対照的に、マクロン率いる政党はフランス史上最低の投票率の選挙で議会の過半数を握った。史上最高額の政治資金を受けたオソフ候補の応援のためにヒラリー・クリントンがジョージア州第六区を訪問しても、彼は勝利できなかった。

 

サンダースは若い人々を元気づけ、動員している。サンダースの存在の素晴らしさを知るためには、2020年の民主党の大統領選挙候補者となり得ると考えられている人々を見ることだ。その多くが若い連邦上院議員たちだ。ニューヨーク州選出のクリスティン・ジルブランドやカリフォルニア州選出のカマラ・ハリスといった人々だ。彼らはまだまだ経験不足であり、大統領選挙の予備選挙に出たことすらない。彼らは政治家であるから、人々の前で演説し、人々を盛り上げようとして腕を振り上げることはある。しかし、これはサンダースのやり方そのものだ。彼らの姿勢はこうしたものの真似だ。大学の学費無償化と国民皆保険は草の根運動の人々の要求だ。クリントン流の漸進主義は敗北したのだ。

 

アメリカのポピュリスト左派の台頭には1つの大きな問題が残っている。サンダースは次の選挙で79歳となる。彼は次の大統領選挙にも再び出馬したいと意欲を見せている。79歳と出馬となると、アメリカ史上最高齢の大統領、二期目終盤のロナルド・レーガンよりも高齢となってしまう。サンダースは彼の支持者の中にいる時と同じく、民主党エスタブリッシュメント1%の大富豪たちの中にいても、自分の持つ情熱を示し続ける。

 

サンダースが民主党の大統領選挙候補者に指名されるような状況ならば、第三党からの出馬ということも起こり得るだろう。前ニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグは2020年にはサンダースよりも少し若い78歳となっている。トランプは74歳で彼らに比べて若い。この三つ巴の戦いとなったら、トランプの再選は固いだろう。

 

現在の政治は気まぐれで移り変わりの激しい状況にある。民主党のエスタブリッシュメントは崩壊に瀕しているのなら、どうしてサンダースを止めようとしないのだろうか。多くの大富豪たちが夢見ていることが、トランプの勝利で現実のものとなった。プロバスケットボールNBAのダラス・マーヴェリックスのオーナー、マーク・キューバンについて考えてみよう。フェイスブックの共同設立者マーク・ザッカーバーグはどうだろう。オプラ・ウィンフリーについてはどうだろう。ゲームのルールがこのような速度で変化し続けている状況で、木の葉がどこに落ちるかなんてことを予測することは無駄なことだ。

 

しかし、これは大変に興味深いことだ。現代は注意欠陥・多動性障害(流動性の大きい)の時代だ。そうした時代にアメリカは人々を楽しませることができる大統領を戴いている。民主党はトランプのそっくりさんを見つけることができるだろうか?当面の間、その人物はサンダースということになる。コービン同様、サンダースは真摯な態度を崩さない。屋根裏部屋に閉じこもっている奇矯なおじさんがそうであるように、彼は聴衆によって話す内容を変えるようなことはしないし、できない。サンダースの経済に関する考えは幼稚で危険なもののように見られるかもしれない。しかし、人々は彼が何のために戦っているのかを知っている。彼が話しているのを聞き始めたら、途中で止めることは難しい。もし読者であるあなたがお若い方なら、彼の理想主義に感銘を受けるだろう。

 

ここでの疑問はアメリカのポピュリスト左派が台頭しているのかどうかではない。誰がそれを主導するのだろうかというものだ。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




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 古村治彦です。

 

 今回は世界のGDPについて、分かりやすい記事をご紹介します。数字の羅列を見てもよく分からなくても、視覚化されると分かりやすくなります。世界各国のGDPの大きさについてよく分かるようになっています。

 

世界のGDPに関しては以下のウェブサイトも参考になります。↓

http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpd.html

 

 世界で、GDP1兆ドル(約110兆円)を超える国は15しかありません。こうして見ると、日本は400兆円以上ある訳ですから、経済大国であることは間違いないところです。日本は1950年代から1970年代まで高度経済成長を経験しました。そのスピードと成長率(毎年10%以上の成長率が10年近く続いた)は「奇跡」と言われました。この奇跡の経済成長について、もう1つ奇跡と言われたのは、不平等、格差が拡大しない経済成長であったという点です。英語ではeconomic miracle without inequality(格差なき奇跡の経済成長)と言います。この富の再分配を成功させたのは、自民党であり、裏で自民党に協力していた社会党という55年体制でした。


 日本は1980年の段階では世界GDPの約10%、1995年には約17%を占めるまで行きましたが、その後、割合はどんどん小さくなっていきます。現在は5.91%ですから全盛期の約3分の1ということになります。それだけ新興経済大国の伸びが大きいということになります。日本は規模が既に大きいので2%、3%の経済成長でもあれば割合を落とすことはなかったように思いますが、失われた20年でかなり落ちてしまったということが言えます。残念ではありますが、日本は落日の経済大国ということになります。

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 2011年に中国はGDPで日本を逆転しました。1968年に日本が西ドイツを抜いて世界第2位になって以来、日本は40年以上世界第2位の地位を守ってきましたが、第3位になりました。それ以降、中国は経済成長率は鈍化していますが、それでも約7%の経済成長率を維持しているので、日本との差は拡大しています。アメリカと比べたら約60%ほどですが、日本と比較すれば2倍以上になっています。人口を考えると、1人当たりのGDPはまだまだ日本が多いですが、これもいつの間にか逆転ということもあり得るでしょう。

 

 ヨーロッパでは、ドイツを筆頭に上位40カ国にだいたいが入っており、EUでちょうどアメリカと同じくらいの割合(約25%)になっているということで、EUでひとかたまりになっていることは経済的にメリットがあるようですが、ドイツが一人勝ち状態では、イギリスの離脱のように分裂に向かう動きも出てくるでしょう。

 

 世界200カ国以上のうち、下位150カ国のGDPは全体の10%くらいしか占めていないということは、経済成長する、経済大国になるということは並大抵のことではないし、ただ援助を与えたら良いということでもないのだということを改めて認識させられます。そうした中で、経済成長のエンジンとなっているアジア諸国は重要な存在になっている訳で、ここで不安定さをもたらすこと(世界の他の地域ででもそうですが)は愚の骨頂であると言わざるを得ません。

 

(貼り付けはじめ)

 

情報を視覚化した表現手段:世界のGDPは如何にして切り分けられているのか(Infographic: Here’s How the Global GDP Is Divvied Up

 

ロビー・グラマー筆

2017年2月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/02/24/infographic-heres-how-the-global-gdp-is-divvied-up/

 

今月、世界銀行は世界経済の現状に関する新しい統計数字を発表した。この統計数字は興味深い物語を語っている。

 

アメリカは現在でもまだ世界経済を支配している。アメリカは世界のGDP(約74兆1000億ドル[約8151兆円])のほぼ4分の1を占めている。世界経済の動きは中国がアメリカを追い越すことは不可避であるという話が持ちきりであるが、アジアの経済面での巨人はアメリカから10ポイント引き離されている、中国は14.84%を占め、一方、アメリカは24.32%を占める。

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2011年にGDPで中国が日本を抜いて世界第2位となった。それ以降、日本は世界のGDPに占める割合を低下させ、5.91%となっている。

 

ここで数字が大嫌いという人たちのために、コスト情報を提供するウェブサイト「ハウマッチ・ドット・ネット」の専門家たちの協力も得て、最新の統計数字を使って、世界経済をパイに見立ててどのように切り分けられているかを示すことができた。

For the non-number junkies out there, the data and market research gurus over at cost information website HowMuch.net put together a helpful diagram using the new numbers to show just who has what slice of the pie in the global economy:

 

最新の2015年の世界経済の発表したデータを基にした情報を視覚化した表現手段によると、世界経済の上位40か国の名前を示している。アジア地域の占める割合はほぼ3分の1で、33.84%を占める。これは地域別で最大の割合である。北米は2番目で27.95%、ヨーロッパは21.37%である。

 

その上昇率は高いものの、新興国の経済が世界のGDPで占める割合はまだ小さい。インドは世界経済の2.83%、ブラジルは2.39%、ナイジェリアは0.65%を占めるに過ぎない。今回のグラフを作った専門家たちが指摘しているように、「残りの国々(155か国が分類されている)」が占める割合は、アメリカと中国の差とほぼ同じ大きさである。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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