古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:日本

 古村治彦です。

 2020年8月28日、安倍晋三内閣総理大臣が辞任の意思を表明した。午後2時過ぎにマスコミ各社がほぼ一斉に「安倍首相辞任へ」「体調の悪化のために国政に迷惑をかけられない」という速報を出した。昨日は元々午後5時に安倍首相による久しぶりの記者会見が予定されていた。この記者会見をめぐっては、体調悪化のことを説明しつつ、新型コロナウイルス感染拡大と経済対策について発言がある、という憶測や、いや首相辞任の発表だという憶測が飛び交っていた。結局、昨日の記者会見は新型コロナウイルス感染拡大対策のパッケージの概要の説明が冒頭にあり、その後、首相辞任の意思表明が行われた。

 安倍首相は17歳の頃に、潰瘍性大腸炎を発症したということだ。現在65歳であるので、約50年間にわたり、この病気と向き合い、対処してきたということになる。その間にはアメリカ留学、神戸製鋼への就職、父安倍晋太郎議員の秘書への転進、父の地盤を受け継いでの国会議員、小泉純一郎内閣での官房長官、首相を二度務めるという経歴だ。この50年の間には大腸の全摘出も検討されたこともあったそうだが、薬剤の劇的な進歩もあり、コントロールをしながら、仕事や社会生活を営むことができたようだ。この点は、レガシーとして日本社会に定着して欲しい。持病がある人でも、通院しながら、仕事や社会生活を積極的に行える社会になって欲しい。これは甘すぎる考えかもしれないが、病気の治療や検査のために、時に休みを取る、もしくは通院のために1週間のうちに半日でも休みが取れる、それが当然のようになって欲しい。

 安倍首相、安倍政権に関して、私は全く支持してこなかった。選挙のたびに安倍首相が退陣するような結果になることを期待したが、結局国政選挙は6連勝という形で終わった。安倍首相を選挙の結果によって退陣に追い込めなかったのは、安倍首相を支持しない人々や野党にとっては敗北である。今回の辞任表明を私は素直に喜ぶことができない。

 安倍首相は昨日の会見で「政治は結果だ」と述べた。その結果であるが、惨憺たるものだ。一言で言えば、アメリカによる属国化がますます深まり、東アジアの平穏を乱す要因が日本ということになり、北方領土が返還される見込みはほぼなくなり、経済を見ると、実質賃金は上がらず、GDPは拡大せず、中国にはますます置いていかれ、ドイツには迫られる、格差は拡大し、少子高齢化に歯止めがかけられなかったということになる。安倍首相は在任中に雇用を生み出したとは述べたが、デフレ脱却には至らなかったと反省の弁を述べた。8年間でできることは限られていると言えばそれまでだが、好転する兆しすら見えなかった。安倍首相は自著のタイトルにした「うつくしい国」を実現したとは思えない。

 安倍首相の長期政権についてはこれから様々な分析がなされるはずだ。功罪様々なことが言われるだろう。私が思う安倍長期政権のレガシーは「忖度」と「私物化」であり、安倍政権が長期にわたって続いたのは、「惰性」であったと思う。「忖度」と「私物化」はセットである。森友学園問題(安倍晋三記念小学校開学問題)、加計学園岡山理科大学獣医学部開設に絡む問題、公文書保存に関する問題、など、権力の私物化とその後始末のために官僚たちに無駄に労力と気遣いを使わせた形になった。なぜそこまでして安倍政権を守らねばならなかったのか、守られることになったのか、政治史を少しでもかじった人なら不思議であっただろう。全く有能ではなく、成果も挙げていない、そんな人物が何度もスキャンダルや危機をうやむやな形ではあったがやり過ごしてきた。自民党内から反対の動きも出ることなく、国民も無関心という状況が続いたこれまでの8年間だった。

 それはやはり、「現状のままで良いや」「安倍首相以外には考えられない」という「惰性」が続いた結果である。そのために、安倍首相も辞め時を逸したという感さえある。安倍政権下では、成果よりも「道半ば」「うまくいっているがまだ全体に行きわたっていない」という言葉が強調され続けた。「やっていてある程度の成果は出ているが、目指している結果には達していない」ということを言い続けた。それならば、安倍政権が続いていくしかない。しかし、安倍政権が続いても、それらの結果を得ることは不可能である。そのために「道半ば」「いまだ遠し」ということになって、だらだらと政権が続いていくことになった。何かしらの成果が出れば、その時点で辞めるというのは日本のこれまでの首相の身の引き方の一つのモデルである。「一内閣で一つの課題」解決ということだ。しかし、安倍首相は、何事もなさなかったが故に、身を引く機会もなかったということになる。

 また、安倍首相を支える人々はそれぞれ65歳の安倍首相よりも年上、70代後半の麻生太郎財務大臣兼副首相であり、二階俊博自民党幹事長、70代前半の菅義偉官房長官である。以前であれば、それぞれの派閥内部で内部闘争が起き、跡目相続や現在の領袖の追い落としがあった。しかし、長期政権を支える、惰性を言い換えた「安定」のために、これらの人々は世代交代の恐れを抱くことなく、権力をふるうことができた。そして、自分たちの派閥を大きくすることに成功した。しかし、結果として、自民党内部にはニューリーダーは育たず、世代交代もうまくいっていない。また、急激に議員数が増えたために、いわゆる入閣適齢期と言われる議員たちが60名もいる状態で、沈滞ムードである。自民党も日本も惰性の中で、ある種の安眠を貪り続け、活気と成長力を失った。

 安倍首相は総理の座からは退くが、国会議員は続けるという意向を示した。キングメイカーとして影響力を残すということが一般的に考えられるが、まだ65歳ということを考えると、再登板ということも視野に入れているのではないかと思う。今回は「政権投げ出し」という批判が起きないように、きちんと病気について説明した。病気が絡むと批判がしにくくなることも狙ってのことだろう。心身ともにボロボロになってどうしようもなくなっての退陣という感じは昨日の会見からは受け取れなかった。余力を持って辞めることで、キングメイカー、上皇として院政を敷く、また、再登板も狙うということもある。自民党内部の世代交代が成功しておらず、人材も育っていない現状もある。

 次期自民党総裁、首相選びについては、党員票の比率が高い総裁選挙方式なのか、議員票の比率が高い両院議員総会方式なのか、で割れている。下の記事にあるように、二階幹事長は両院議員総会方式を考慮している

(貼り付けはじめ)

●「自民、後継首相を15日にも選出へ 両院議員総会の方向 石破氏は31日に出馬表明へ」

8/28() 19:58配信 産経新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/8c178f5e2968c38ad65ecba56e4ffc9e201f5367

 自民党は安倍晋三首相(党総裁)の後継を選ぶ総裁選について、手間のかかる党員・党友らの直接投票は行わず、国会議員らの投票で決める両院議員総会で選ぶ方向だ。党幹部は、15日の投開票を軸に調整していることを明らかにした。党内では、首相を一貫して支えてきた菅義偉官房長官の登用を求める声があるほか、知名度の高い石破茂元幹事長は31日に出馬表明する方向だ。首相が本命視してきた岸田文雄政調会長も出馬準備を進めている。

 総裁選の方法は、9月1日の総務会で正式決定する見通しだ。二階俊博幹事長は、今月28日のTBSの番組収録で、「そのときの状況によって緊急の手段を講じていく」と述べ、両院議員総会での選出もあり得るとの見方を示した。

 党則では、総裁が任期中に辞任した場合は、両院議員総会での選出が認められ、選挙人は国会議員と都道府県連の代表3人とされている。任期は前任の期間を引き継ぐ。今回のケースは来年9月までとなる。

 党員投票まで含めた総裁選は、候補者による大規模な全国遊説を行うことが通例で、準備にも一定の時間を要する。逆に、両院議員総会で選ぶ場合は簡素化が可能で、平成20年の総裁選では、福田康夫首相(当時)の辞任表明から麻生太郎新総裁(同)の選出までを約3週間で済ませた。

 ある党幹部は新型コロナウイルス対策も念頭に「党員投票まで含めた総裁選をする余裕はない」と語る。

 後任は、新型コロナ対策に継続性を持たせるため「菅氏をワンポイントリリーフとして登板させればいい」(閣僚経験者)との声がある。岸田氏も、前回の30年総裁選で出馬を見送っただけに、今回は不退転の決意で手を挙げる考えだ。

 ただ、石破派(水月会)幹部は、石破氏が世論調査で高い支持を得ていることから「党員投票も含めた総裁選を行い、堂々と勝った人が首相をやるしかない」と両院議員総会での選出に異論を唱えた。

(貼り付け終わり)

 現在のところ、次期総理総裁の候補者としては、岸田文雄自民党政調会長、石破茂元自民党幹事長、河野太郎防衛大臣の名前が挙がっている。二階氏が主導して両院議員総会方式でということになれば、派閥の意向が大きく影響することになる。現在、自民党の最大派閥は、細田派(実質安倍派)、麻生派、竹下派、二階派、岸田派、石破派、石原派という順番になっている。細田派、麻生派、二階派で岸田氏を擁立して両院議員総会で決めるということが考えられる。石破氏は国民的人気の高さから党員票の割合が高い総裁選挙方式を主張している。麻生氏と二階氏が話しをつけて、両院議員総会で岸田氏選出という形が今のところ考えられる。岸田氏は人と喧嘩をするタイプではなく、派閥の岸田派、宏池会も伝統的に「お公家様集団」と呼ばれるように武闘派は少ない。そうなれば、麻生氏と二階氏の院政ということになる。そうなれば国民的な支持を得られないということになる。そのような古臭い決め方では国民が納得しないだろう。

 安倍首相は記者会見の中で、次の方が決まるまではしっかりとやれるということを述べていた。臨時代行(麻生副総理)を置くことなく、最後までやると明言した(この点から私は安倍首相が余力を持って辞めるという印象を受けた)。また、次期総裁選びについても、時間をかけて制作孫朗をしても大丈夫、その間は私がきちんとやれるという発言もあった。私はこの発言から、安倍首相は麻生氏と二階氏をけん制していると感じた。ポスト安倍の動きにおいて、安倍首相自身が影響力を保持しようとしているとも感じた。

 長期政権となった安倍政権と安倍首相を総括すると、惰性という言葉しかない。その間に日本が酷い状況になったが、「安定」という惰性の裏返しの言葉のために、安倍首相は存在し続けた。全くもって無意味な8年間であった。

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 日本は「戦前」と「戦後」の区別ははっきりとしている。太平洋戦争における敗北がその分岐点だ。日本は敗戦を受け入れ、アメリカ軍を中心とした連合諸国の占領(ほぼアメリカ軍だが)を経験した。1945年の敗戦からは日本にとっては「戦後」だ。一方、アメリカではそのような区別はない、なぜならばそれ以降も幾度も戦争を繰り返しているからだ、という話を聞いた。

確かに冷戦期においては朝鮮戦争とヴェトナム戦争で大きな犠牲を払っている。また、湾岸戦争も2回実施された(1991年と2003年)。日本の「戦後」である75年の間に10年以上は戦争をしているということになる。

 今回ご紹介する論考は、この75年間にアメリカが戦った戦争は、日本との戦争とは大きく異なり、完全勝利もその後の敗戦国の体制転換ももたらさなかった、ということから、マッカーサーが使った「偉大な勝利」はなかった、ということを論じている。アメリカ国民には受け入れがたいほどのコストがのしかかりながら、完全勝利を得ることはできなかった、その子で国民は苦しみ、不満を持ってきたということだ。
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 1945年9月2日に東京湾のアメリカ戦艦「ミズーリ号」(現在はパールハーバーに展示されている)の艦上での降伏文書調印式が実施された。この時の写真や映像は残っており、今でもテレビで放映されたり、雑誌に掲載されていたりする。しかし、これ以降、このような完全な勝利による、敗戦国側がおずおずと儀式に出てきて降伏文書に調印するというような戦争をアメリカは経験していない。言われてみれば、アメリカ側が得意の絶頂になって、勝利を見せつけるということができたのは、太平洋戦争が最後だ。

 このような完全勝利(日本の無条件降伏)ならば、アメリカ国民もある程度の犠牲やコストを甘受しただろう。しかし、その後はこのような完全勝利を得られるどころか、コストに結果が伴わないということが続いている。しかし、無敵アメリカ軍、という印象や日本の降伏と民主化という「幻影」に縛られている。イラク戦争が一応の終結を見た後に、ポール・ブレマー連合国暫定当局(CPA)代表をダグラス・マッカーサーと比べる記事や日本の民主化についての記事がアメリカでも多く出たが、とても成功したとは言えない。

 大成功を収めた後ほど怖い、という処世訓がある。アメリカの場合はこの庶民の私たちが持つ処世訓通りの75年間を過ごしてきたことになる。

(貼り付けはじめ)

日本の無条件降伏がもたらした危険な幻想(The Dangerous Illusion of Japan’s Unconditional Surrender

-これまでの数十年間、アメリカの外交政策は第二次世界大戦を終わらせた方法によって、かえってよくない方向に捻じ曲げられてきた

マーク・ガリッキオ筆

2020年8月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/08/13/vj-day-the-dangerous-illusion-of-japans-unconditional-surrender/

1945年8月15日の夜明けを迎える少し前、国営放送は日本国民に対してその日のうちに天皇からのメッセージがあるので注意するように求める放送を行った。日本全国で、人々は不安の中で、初めて耳にする「玉音(the jeweled voice)」を待った。ほとんどの国民は、天皇が最後まで戦い抜くことを求めるメッセージを発するものと考えていた。国民が耳にしたのは、甲高い、早口の古い日本語で書かれたメッセージであって、国民の多くには理解できなかった。玉音放送の後に解説者が出てきて、天皇は降伏に同意したと説明し、そこでやっと国民は戦争が確かに終わったことを知った。

このニュースがワシントンに達した時、すぐにお祝いが始まった。しかし、戦争を終結させるための正式な儀式は9月2日の日曜日まで待たねばならなかった。日本の正式な敗北はアメリカ海軍戦艦ミズーリ号の艦上で発効した。降伏文書は連合国と日本の代表者によって署名された。この文書は大日本帝国大本営と日本の管理下にある全ての武装勢力が無条件降伏(unconditional surrender)することを宣言した。降伏文書には、天皇と日本政府の権威はアメリカのダグラス・マッカーサー大将の指揮下に入り、全ての文官と軍人はマッカーサーに従うように命じた。調印式の最後に、マッカーサーはマイクの前に立ち、世界中の聴衆に向かって来示を通じ得ての演説を始めた。現在では有名になっている演説は次のように始まった。「本日、銃は静まった。大規模な悲劇は終わった。大きな勝利が勝ち取られた(A great victory has been won)」。

日本の降伏後、日本の非武装化、経済、政治、社会のそれぞれの機構の改革、新憲法の制定、中国と東南アジアに展開していた戦闘では敗れていなかった日本軍の降伏と言ったことが続いた。これらすべては天皇に対するアメリカの影響力によって実行されたものだ。天皇は日本軍に無条件降伏を命令した。飛行機が上空を飛び交い、米第三艦隊所属の200以上の艦船が東京湾を埋め尽くす中で、アメリカの力が全ての場所で誇示された。アメリカ人が戦争における完全な勝利の中にいて、征服した敵に対して自分たちの意思を押し付けることができるということがこの時をもって最後になるなど、この時に参加していた人々は誰も知らなかった。東京湾における軍事力の誇示は日本国民を畏怖させる意図で実施された。しかし、それだけではなく、軍事力によって達成できるものについての誤った印象を増進させることにもなった。

19世紀以降、社会的な発達と技術的な発達によって、戦争は高いコストがつくものとなった。軍事力を通じて国家目的を達成することは政治的に受け入れがたいほどのコストが発生するリスクが大きくなった。近代戦争において国民が総動員されることは、交戦諸国に対して大きなプレッシャーとなり、勝利国であっても極限での犠牲が大きくなってしまうことになった。アメリカが日本と戦争状態に入った時、アメリカの戦略家たちは、日本本土を孤立させ、幸福を促すために、主に海軍力を使うことでそうした運命に陥らないようにすることを望んだ。この目的のために最初に必要なことは日本帝国海軍の艦隊を壊滅することだった。1945年春までに、アメリカ空軍による日本の諸都市への繰り返しの爆撃によって日本の絶望状態が進んだ。それにもかかわらず、日本政府はアメリカ側が受け入れられる条件を出すことを拒絶した。戦争は継続した。

1945年8月までに、アメリカ陸軍は、太平洋戦争において最も厳しい戦いを経験の少ない新兵が補充された、疲れ切った師団で戦うための準備を行っていた。苛立ちを募らせた国民と批判的な政治指導者たちは、日本の無条件降伏と同義とされた勝利が受け入れ可能なコストで達成されるのかどうか疑問を持った。2発の原子爆弾とソヴィエトの対日参戦はそのような議論を終わらせ、誰も想像しなかった素早い決定がなされた。運命の突然の逆転は、後の世代が、日本の抵抗とアメリカ国内の分裂のためにアメリカの戦略がどれほど混乱したかが分からなくなってしまった。また東京湾上での降伏文書調印儀式は、後の世代に、「戦争の終わりはこうであらねばならない」、そして「これは再現できることなのだ」という考えを植え付けた。

アメリカの次なる戦争は、時期と場所だけが太平洋戦争のパターンにそっくりなものとして出てきた。朝鮮戦争は奇襲攻撃から始まった。この奇襲攻撃によって、アメリカと同盟軍は後退を余儀なくされ、国連による攻勢によって体勢を立て直すに至った。仁川(インチョン)の二正面による上陸作戦の成功は、マッカーサーが第二次世界大戦において行ったニューギニア北部で行った飛び石作戦を思い出させるものとなった。この成功によって、北朝鮮への侵攻と完全勝利への期待が高まった。中国人民解放軍の介入によってこれらの希望は打ち砕かれた。そして、国連は長期にわたる、徐々に人々からの支持を失っていった戦争を戦うことになった。そして、戦争目的は限定的なものとなった。朝鮮戦争においては、アメリカの戦艦の艦上で敵の降伏を受け入れるということもできないものとなった。戦争は板門店のテントの中で、厳しい停戦交渉の末に実現した。

アメリカがヴェトナムに直接介入する時までに、戦闘における核兵器の使用は不可能だという戦略的分析が既になされていた。特にアジアにおいてはそうだとされていた。広島で核兵器が使用されてからの10年間、アメリカの戦略家たちは、アジア地域における核兵器の使用について、使用してしまうと、地域に住む人々に対して「地域の人々の声明についてアメリカ人は無関心なのだ」という認識を与えてしまうという結論を出した。核抑止力の短所を埋めるために、アメリカの軍事思想家たちは、許容できるコストで勝利を生み出すための最善の方法として、機動性と戦術的な空軍力使用を強調する制限戦争という戦略を主張した。アメリカは限定的な目的を設定した。それは非共産主義のヴェトナムの防衛であった。朝鮮半島における中国の介入がまた繰り返されることを恐れて、政府高官たちは、北ヴェトナムに対する地上戦を排除したが、敵の戦争継続能力を破壊することを究極の戦争目的とする軍事戦略を採用した。アメリカは個々の戦闘では常に勝利したが、戦争の勝利は朝鮮戦争の時よりも曖昧なものとなった。

結果は異なっているが、日本との戦争、朝鮮戦争、そしてヴェトナム戦争の間には共通点も見られる。その一つは、アメリカ軍に対して多大な死傷者を強いる一方で、敵は想像を絶する損失に苦しむことを自ら進んで行ったというものだ。もう一つは、アメリカ国民、特にビジネス界と政界の指導者たちが長期戦に伴う犠牲を受け入れ難く考えていたことだ。

歴史的に見て戦争は優柔不断の方向に引きずられてしまうということの証拠としてこれらの共通点を見ることができる。その代わりに、軍事専門家たちは、朝鮮戦争とヴェトナム戦争は、アメリカ人が限定戦争には向いていないことだけを証明したと結論付けた。その救済策はパウエル・ドクトリン(Powell Doctrine)だった。これは1990年代初めのアメリカ軍統合参謀本部議長の名前にちなんでつけられた。この新しい考え方は、二度とヴェトナム戦争のようなことが起きないためとするものだった。その内容は、アメリカはこれから勝てる戦争しか戦わないというものだった。コリン・パウエルはこの考えを1991年に実行に移した。1991年、アメリカと同盟諸国はイラク軍からクウェートを解放した。「砂漠の嵐」作戦は、サダム・フセインをイラクに押し戻すことに成功した。しかし、その目的が達成された後、パウエルはそのままイラクに侵攻すれば、ヴェトナム戦争の時同じ泥沼にはまるのではないかという恐怖感を持った。そこで、攻撃を停止した。軍事上の成功に対する祝意は、失望に変わった。それはサダム・フセインが権力の地位にとどまったことで、アメリカ人には不完全な勝利ということになり、不満が残った。

それから10年後、デジタル革命とそれに付随する武器の進歩によって、新しい世代のアメリカの政治指導者たちは、軍事面での革命を実現したのだと考えるようになった。戦争の新方式の主導者たちは、いわゆる「戦場の全方位における優越(full-spectrum dominance of the battlefield)」を確信しており、これによってアメリカはより低いコストで大きな勝利を得ることができると考えた。軍事に関する革命についての最初のテストは、パールハーバー奇襲攻撃を思い出させることになる911事件のテロリスト攻撃の後に実行された。

911事件の首謀者たちを標的とする限定的な攻撃によって対応する代わりに、アメリカは拡大されたテロリズムに対する世界規模の戦争に乗り出した。第一段階は2001年10月に「不朽の自由」作戦として、アフガニスタンへの侵攻で始まった。第二段階は、「イラクの自由」作戦として2003年3月に始まった。両作戦は共に、中東地域への民主政治体制の拡散のためのより大規模な戦役の計画が実現されたものだった。

2002年10月、ジョージ・W・ブッシュ政権はイラク侵攻を真剣に検討した。軍事面の計画立案者たちは日本占領をイラク侵攻についてのガイドと考えていた。ドイツとは逆に、日本は最も望ましいモデルであった。それは、日本は占領期間中に分裂することなく、統一を保ち、アメリカが非西洋国に民主政治体制を植え付け育てることができることを証明したということが理由であった。しかし、イラクは日本のようにはいかなかった。少なくともブッシュ政権が想像したようにはいかなかった。

2003年4月1日、アメリカのイラク侵攻が始まって2週間後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官はイラクの政権の無条件降伏を求めると宣言した。2007年8月、アメリカ軍はイラクでまだ戦闘を続けていた。戦闘が長引くようになり、ブッシュ大統領は、自分の父親たちの世代が獲得した勝利と同様の勝利で「テロとの戦争」は勝利するだろうと語りかけた。対外戦争従軍復員軍人会の会合に出席し、ブッシュはたとえ話から演説を始めた。ブッシュは演説を次のように始めた。「ある良く晴れた日の朝、数千のアメリカ人が奇襲攻撃で殺害され、私たちを世界中に進出させることになる、戦争に私たちの国は入ることになりました」。

ブッシュは続けて次のように述べた。「私が述べている敵とはアルカイーダのことではありません。奇襲攻撃は911事件のことではありません。帝国はオサマ・ビン・ラディンが夢想する急進的なカリフが統治する帝国のことではありません。私が述べているのは、1940年代の日本帝国による戦争マシーン、日本帝国によるパールハーバーへの奇襲、日本帝国による東アジア地域への帝国の拡大、ということです。」中東地域での民主政治体制の拡散という試みと努力を無駄だとする批判者たちを非難するために、ブッシュは、聴衆たちに対して、日本の民主化については当時の専門家たちも疑念を持っていたことに注意するようにと述べた。

ブッシュ大統領が演説をした時までに、アメリカ国民は既に中東での十字軍遠征に対する熱意を失っていた。1945年夏のアメリカ国民と同様、アメリカ国民は怒りに任せて始めた戦争についてすでに過去のこととして関心を失い、国内問題に関心を集めるようになっていた。ほとんどのアメリカ国民にとって、中東での完全勝利の代償はその価値を超えるものとなっていた。

アメリカ人が日本との戦争終結75周年を記念する際、2発の原子爆弾とソヴィエトの参戦によって日本の無条件降伏は促されたということを思い起こすことになるだろう。偉大な勝利が勝ち取られた。短い間、ほんの短い間、アメリカは歴史の法則から自由になった。そして、国民が受け入れられるコストで勝利を得ようと苦闘する他の国々の運命からも免れた。そのような瞬間は二度と戻ってこない。また、そのようなことが実現できると期待すべきではないのである。

※マーク・ガリッキオ:ヴィラノヴァ大学歴史学教授。『無条件:第二次世界大戦における日本の降伏(Unconditional: The Japanese Surrender in World War II)』著者

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 昨日、色々な記事を読んでいたら、日米の人口に関する研究結果に関する記事が出ていた。その前に人口に関するいくつかの言葉を整理しておきたい。まずベビーブーム世代(baby boomers)だが、この世代は第二次世界大戦終結前後から1964年くらいまでに生まれた人たちのことを指す。日本では「団塊の世代」とも呼ばれる。その子供たちの世代(1960年代後半から1980年くらいまでに生まれた人たち)をアメリカでは「X世代(Generation X)」と呼ぶ。日本では1970年代前半に生まれた、団塊の世代の子供たち世代を「団塊ジュニア世代(第二次ベビーブーム世代)」と呼ぶ。

 「X世代」の次に来る世代は、アメリカでは「ミレニアル世代(Millennials)」と呼ぶ。1981年から1996年くらいまでに生まれた、現在25歳から40歳くらいまでの人たちだ。その下の世代で現在大学生くらいから下の世代を「Z世代(Generation Z)」と呼ぶ。上からまとめて挙げていくと次の通りだ。

アメリカ         日本

・ベビーブーム世代    ・団塊の世代

X世代         ・団塊ジュニア

・ミレニアル世代

Z世代
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日本の人口ピラミッド
2019populationpyramidusa
アメリカの人口ピラミッド
 人口ピラミッド(population pyramid)という年齢別の人口数を表す図がある。子だくさんだが平均寿命が短い発展途上国型では三角形(下にアフリカ諸国の総計を示した図を掲載する)、子供の数が減少する先進諸国では釣鐘型、日本のように極度な少子高齢社会だと頭でっかちの逆三角形に近い形となっていく。下の記事にあるが、アメリカでは40代以下の世代が人口の半分を占めるという形になっているが、日本の場合は40代以上の世代が人口の半分以上を占めるようになっている。日本は人口減少時代に入り、昨年はおおよそ85万人が新たに生まれ、135万人が亡くなるので、50万人も減っている。人口の減少率が1%以上という都道府県も増えている。日本以上のペースで子供が生まれにくく、高齢者(65歳以上)が人口に占める割合が急激に増加している国は他にはない。人類の大いなる実験場だ。
2019populationpyramidafricancountries001

アフリカの人口ピラミッド
 アメリカの研究結果で興味深いのは、アメリカの若い人たちの間で、白人が過半数を割るということだ。ベビーブーム世代は4人に3人は白人であり、現在はまだ白人が過半巣を占めているが、数十年後には過半数を割るようになる。また、若い人たちはリベラルな考えを持つ人が多く、政府が諸問題解決のために大きな役割を果たすべきだと答える割合が高いということだ。若い世代を代表する政治家としてはアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)がいる。「ミレニアル社会主義(Millennial Socialism)」という言葉も生まれているほどだ。日本の若者層に関しては、いくつかの研究結果で、自民党支持が多いということとは対照的だ。

 「人口ボーナス(demographic dividend)」という現象がある。これは「総人口に占める働く人の割合が上昇し、経済成長が促進される」ということだ。アジアでは、インドネシアやマレーシアなどがこれから人口ボーナス期を迎える。一方、日本は2005年の段階で人口ボーナス期を終了している。そのために経済成長が鈍化している、ということになる。これからは人口ボーナス期の果実を食いつぶしていくことになる。

 人口動態は社会や経済、政治に大きな影響を与える。人口学(demography)、歴史人口学(historical demography)は実は重要な学問だ。

(貼り付けはじめ)

ミレニアル世代が現在、アメリカの人口で最大のシェアを占める(Millennials now largest share of US population

リード・ウィルソン筆

2020年8月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/state-watch/510478-millennials-now-largest-share-of-us-population

ミレニアル世代とそれ以降に生まれた人々の人口が史上初めてアメリカの人口の過半数を占めることになった。しかし、より年上の世代はまだアメリカの有権者の過半数をまだ占めている。

ブルッキングス研究所所属の人口学者ウィリアム・フレイの新しい研究によると、1981年から1996年の間に生まれたミレニアル世代の数はアメリカの人口の22%を占めるようになっている。

1997年から2012年の間に生まれたZ世代と、まだ名前がついていない2013年生まれ以降の世代の数を合わせると、現在40歳以下の人々がアメリカの人口に占める割合は50.7%になっている。

第二次世界大戦後の1946年から1964年の間に生まれたベビーブーム世代は人口の21.8%を占めている。

しかし、ベビーブーム世代は有権者の中で最大のシェア、28.9%を占めている。ミレニアル世代は27%を占めている。X世代は24.8%を占めている。Z世代はやっと投票ができる年齢に到達し始めているが、人口では20.3%を占めているが、有権者の中では10.1%を占めているに過ぎない。

ベビーブーム世代はその政治的な力を使ってこれまで4名の大統領を連続して自分たちの世代から選び出した。今年の選挙でジョー・バイデン前副大統領が大統領になれば5人連続となる。

人口調査の推計によると、ミレニアル世代とそれ以降の人々は2030年までに有権者の中で過半数を占めるようになる。

より若い世代の塊はより年上の世代に比べて、人種の多様性に富み、移民、警察改革、そして環境保護といった諸問題でよりリベラルな態度を取る。

世代の中に白人人口が占める割合はミレニアル世代の60%、Z世代の55.6%に過ぎない。ベビーブーム世代ではその割合は約75%だった。Z世代の下の世代では白人の人口は半分を割っている。アメリカの世代で白人が過半数を割ったのは史上初だ。

昨年ピュー・リサーチ・センターが実施した世論調査の結果では、より若い世代は諸問題を解決するために政府は関与すべきだと答えるようになっている。また、多様性が高まることは社会にとって良いことであると答える。また、より年上の世代に比べて気候変動は人間の活動によってもたらされると考えている。

より若い世代はトランプ大統領の行っている仕事を評価しない傾向にある。最近のエマーソン大学の世論調査の結果では、30歳以下の人の36%、50歳以下の38%しかトランプ大統領の仕事ぶりを評価しなかった。50歳以上の人の過半数はトランプ大統領の仕事ぶりを評価した。

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日本の人口、過去最大50万人減少 12427万人に 東京・神奈川・沖縄以外は減

毎日新聞202085 1804(最終更新 85 1804)

https://mainichi.jp/articles/20200805/k00/00m/040/182000c

 総務省は5日、住民基本台帳に基づく11日現在の人口動態調査結果を発表した。国内の日本人の人口は、前年より505046人少ない124271318人(前年比040%減)と11年連続で減少。減少幅も6年連続で広がり、1968年の調査開始以降で最大となった。一方で、留学生や技能実習生らの増加に伴い、外国人の人口は199516人増の2866715人(同748%増)と6年連続で増え、過去最多を更新した。

 昨年1年間の日本人の出生者数は、前年比54092人減の866908人と4年連続で減少し、79年度に調査項目に加えて以降、最少を更新した。死亡者数は前年より15342人多い1378906人と7年連続で増加。死亡者数が出生者数を上回る「自然減」は511998人と12年連続で拡大した。年齢別の構成比は、65歳以上が2841%(同035ポイント増)と増える一方で、014歳は1230%(同015ポイント減)と減少傾向が続き、少子高齢化に歯止めがかかっていない。

 東京圏・名古屋圏・関西圏の「3大都市圏」に住む日本人は、64479280人と2年連続で減少したが、14年連続で全国人口の半数を占めた。都道府県別で人口が増えたのは、東京、神奈川、沖縄の3都県で、東京は68547人増と21年連続でトップ。減少数が最も多かったのは北海道の42286人で、兵庫県26937人、静岡県25600人と続いた。人口減少率は秋田県152%、青森県136%、山形県127%の順で、東北の減少率が高かった。

 一方、外国人の国内での出生者数は17859人、死亡者数は7306人で、自然増加数は1553人と2012年度に調査を始めて以来、過去最多を更新した。都道府県別では、島根県を除く46都道府県で増加。外国人の人口が最も多いのは東京都の577329人(前年比25646人増)で、愛知県274208人(同2700人増)、大阪府252742人(同16765人増)と続いた。全住民に占める外国人の割合は、東京都が417%と最大で、愛知県362%、群馬県305%だった。【堀和彦】

2020年 住民基本台帳に基づく都道府県別の日本人の人口

都道府県  人口    増減数   増減率(%)

北海道  5226066  ▼42286  ▼0.80

 

青森県  1269494  ▼17535  ▼1.36

 

岩手県  1227464  ▼15548  ▼1.25

 

宮城県  2268775  ▼13140  ▼0.58

 

秋田県   981114  ▼15178  ▼1.52

 

山形県  1074351  ▼13774  ▼1.27

 

福島県  1866570  ▼2436   ▼1.08

 

茨城県  2851707  ▼19476  ▼0.68

 

栃木県  1922681  ▼12782  ▼0.66

 

群馬県  1909403  ▼15202  ▼0.79

 

埼玉県  7197793  ▼2400    ▼0.03

 

千葉県  6154626  ▼3059    ▼0.05

 

東京都  13257596  68547    0.52

 

神奈川県 8981167  4213     0.05

 

新潟県  2217650  ▼24867  ▼1.11

 

富山県  1036503  ▼8528    ▼0.82

 

石川県  1123115  ▼7622    ▼0.67

 

福井県   764795  ▼7052    ▼0.91

 

山梨県   809800  ▼7265    ▼0.89

 

長野県  2049761  ▼16652  ▼0.81

 

岐阜県  1973948  ▼16650  ▼0.84

 

静岡県  3611596  ▼25600  ▼0.70

 

愛知県  7301322  ▼1479   ▼0.14

 

三重県  1758638  ▼15356  ▼0.87

 

滋賀県  1387945  ▼2861    ▼0.21

 

京都府  2481833  ▼13090  ▼0.52

 

大阪府  8596893  ▼16128  ▼0.19

 

兵庫県  5435379  ▼26937  ▼0.49

 

奈良県  1340085  ▼1180   ▼0.75

 

和歌山県  947173  ▼1882   ▼1.14

 

鳥取県   556195  ▼5250    ▼0.94

 

島根県   670468  ▼6783    ▼1.00

 

岡山県  1872421  ▼11505  ▼0.61

 

広島県  2770709  ▼16377  ▼0.59

 

山口県  1352180  ▼14642  ▼1.07

 

徳島県   735974  ▼8547    ▼1.15

 

香川県   967202  ▼7667    ▼0.79

 

愛媛県  1355720  ▼14133   ▼1.03

 

高知県   704396  ▼8610    ▼1.21

 

福岡県  5047263  ▼7915    ▼0.16

 

佐賀県   816605  ▼5838    ▼0.71

 

長崎県  1340026  ▼15197   ▼1.12

 

熊本県  1752215  ▼12553   ▼0.71

 

大分県  1137378  ▼170    ▼0.88

 

宮崎県  1088186  ▼9107    ▼0.83

 

鹿児島県 1618119  ▼14979   ▼0.92

 

沖縄県  1461018   2332    0.16

全国計124271318  ▼505046  ▼0.40

11日時点。増減は前年比。はマイナス

(貼り付け終わり)
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歴史人口学の世界 (岩波現代文庫)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 1990年代から流行したグローバライゼーションは人々を不幸にした。ジョセフ・スティグリッツという経済学者は『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(2002年)を書いて警鐘を鳴らした。しかし、主流派経済学が唱えるグローバライゼーションが日本を含む世界中を席巻した。日本の失われた30年、デフレが進行した時代と重なる。

 グローバライゼーションによって国際的分業が進めば人々の幸福は増進する、という主張は正しくなかった。先進国では製造業が発展途上国、新興工業国との競争に敗れた。その結果として、労働者たちは失業し、賃金は下がり、消費は伸びず、日本ではデフレ・スパイラルに陥り、そこからいまだに脱却できていない。競争に敗れた人間は「努力の足りない敗残者」であり、「非正規雇用になったり、失業したりするのは自己責任」だとして片づけられた。

 しかし、これは正しいことではなかった。主流派経済学者たちは自由市場を信奉し、市場に任せていればすべてがうまくいくという、ナイーブ(馬鹿げた)な「信仰」に基づいて、世界を壊した。そして、主流派経済学者たちの中からそうしたことを反省する人間たちが出てきている。その代表格がポール・クルーグマンだ。私たちはクルーグマンの反省の弁に耳を傾けてみる必要がある。


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経済学という人類を不幸にした学問: 人類を不幸にする巨大なインチキ

(貼り付けはじめ)

「経済学者たち(私も含まれる)がグローバライゼーションについて間違ってしまったこと(What Economists (Including Me) Got Wrong About Globalization)」

―1990年代に発展途上諸国からの輸出が与える影響を測定するために経済学者たちがよく使用していた複数のモデルはどれも雇用と格差に与える影響を過小評価するものだった。

ポール・クルーグマン(Paul Krugman)筆

2019年10月10日

『ブルームバーグ』誌

https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2019-10-10/inequality-globalization-and-the-missteps-of-1990s-economics

※ポール・クルーグマンはニューヨーク市立大学大学院センターで教鞭を執り、『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムニストを務めている。2008年、国際貿易と経済地理学に関する研究でノーベル経済学賞を受賞した。

この論説は『グローバライゼーションに対する様々な挑戦に直面して(Meeting Globalization’s Challenges)』(プリンストン大学出版局)の一つの章を短くまとめたものである。『グローバライゼーションに対する様々な挑戦に直面して』は2017年10月11日に国際通貨基金(International Monetary Fund)が開催した学会で発表した様々な学者たちの論文を集めたものだ。この本は2019年11月4日に発刊される。

グローバライゼーションによる望ましくない効果についての懸念は最近になって出てきたものではない。1980年代、アメリカ国内の収入格差(income inequality)が大きくなり始めた時期、多くの専門家やコメンテイターたちは収入格差の拡大という新しい現象をもう一つの新しい現象につなげて論じた。そのもう一つの新現象とは、新興工業諸国(newly industrializing countries)からの工業製品輸出の増大だった。

経済学者たちは収入格差の拡大に深刻な懸念を持った。国際貿易の標準的なモデルでは、国際貿易は収入の配分に大きな効果を持つ、とされる。1941年に発表された有名な論文では、労働力豊富な国家との貿易によって国全体の収入総額は上がっても労働者一人当たりの収入額は減るプロセスが示された。

その後、1990年代に入り、私自身を含む多くの経済学者たちは国際貿易の状況が変化することが格差拡大にどれほど影響を与えるかについて理解しようと試みた。経済学者たちは、影響は比較的穏やかなもので、収入格差を広げることになる、中心的な要素ではないと徐々に結論付けるようになった。その結果として、国際貿易が与えるマイナスの影響の可能性についての学者たちの関心は消え去ることはなかったが、小さくなっていった。

しかしながらここ数年、グローバライゼーションについての懸念と不安は様々な問題のトップに浮上している。グローバライゼーションについての新たな研究結果が出るようになり、ブレグジスト(Brexit、訳者註:イギリスのEU離脱)とドナルド・トランプ米国大統領が与えた政治的衝撃のために、グローバライゼーションに対する不安が大きくなっている。1990年代のコンセンサスである、「国際貿易の増加は格差を増大させるのは真実だがその影響は穏やかなものだ」という考えの形成に貢献した人間の一人として、この時期に私たちが何を見落としたのか、見落としてきたのかを問うことは適切なことだと私は考える。

●1990年代のコンセンサス(The 1990s Consensus

1990年代中盤、貿易が人々の収入に対してどのように影響を与えるかを評価するためにデータをどのようにして利用するかで混乱が起き、議論も起きた。ほとんどの研究は貿易量と労働力の量、その他の輸出入に伴う様々な資源についてというものが中心的なテーマであった。経済学者の中にはこのようなアプローチに反対する人たちも出た。こうした人々は量(quantity)よりも価格(price)を中心的に研究することを選んだ。

徐々に姿を見せ始めたのは「~がなかったら(but for)」アプローチだった。これは、発展途上諸国からの工業製品輸出が増大するという現象がなかったとしたら、そうした場合の賃金は実際の賃金に比べてどれほど異なるものとなるかという問題設定を行うものだ。発展途上諸国からの輸出増加は1970年には小さいものであったが、1990年代半ばまでに急増した。発展途上諸国からの工業製品輸入は過去に比べればかなり大きくなっているが、先進諸国の経済規模に比較すれば小さいものであった。だいたいGDPの2%だった。この程度では相対賃金に中程度の変化を与えるにも十分ではない。その影響は瑣末ではないが、経済において中心的な役割を果たすまでに大きなものとは言えなかった。

●ハイパーグローバライゼーション[過剰なグローバライゼーション・超グローバライゼーション]Hyperglobalization

国際貿易が与える影響力に関するこうした評価は1995年前後になされたものだ。これらの評価の基となるデータは必然的にそれよりも前の数年間のものとなる。国際貿易の与える影響力は穏やかなものとなるという研究結果が出るのは間違ったことではなかった。しかし、振り返ってみれば、1990年代初めの国際貿易の流れは、より大きな現象、もしくは経済学者アルビンド・スブラマニアンとマーティン・ケスラーが2013年に発表した論文で「ハイパーグローバライゼーション(hyperglobalization)」と呼んだ現象の始まりでしかなかった。

1980年代までは、「第二次世界大戦後の国際貿易の増加は戦争前に設定された貿易障壁の廃止が主な理由であった」と論じることも可能であった。戦後の国際貿易が世界のGDPに占める割合は1913年の時点よりも少し高いくらいのものだった。しかし、80年代以降の20年間で、国際貿易の量と性質は未知の領域に踏み込むことになった。

下のグラフはこの変化の1つの指標を示している。発展途上諸国からの工業製品輸出が世界のGDPの占める割合を測定したものだ。これを見ると1990年代初めに貿易力における大変動が発生し、それが始まりに過ぎないものだったということが分かる。

■何かが起きていたのだ

世界GDPにおける発展途上諸国による工業製品の輸出に割合(%)

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ソース:世界銀行

1990年代に国際貿易が急増した理由は貿易における新たな形式のためであったのだろうか?この疑問に対する答えは技術と政策の混合ということになるだろう。飛行機によるコンテナ輸送(freight containerization)は最新の技術という訳ではなかったが、この技術によって輸送コストが減少することで製造業における労働集約が必要な部門を海外に移転させることが可能なのだということをビジネス界が認識するまでにしばらく時間がかかった。その時期、中国は中央計画(central planning)から輸出に特化した市場経済(market economy focused on exports)へと大きな変化を遂げた。

発展途上諸国からの工業製品輸出の世界GDPに占める割合を測定すると、現在の数値は1990年代半ばに比べて3倍になっている。それでは発展途上諸国の輸出が収入配分に与える影響力もそのまま3倍になっていると結論付けることになるだろうか?少なくとも2つの理由からそうではないということになる。

第一の理由は、発展途上諸国からの輸出の増大の多くの部分は、近代化しつつあるアジア、アフリカ、ラテンアメリカの各国間の貿易量の増大を反映しているというものだ。これは重要な事実であるが、先進諸国に住む労働者たちに与える影響にとっては大きいものではない。更に重要な第二の理由は次の通りだ。この貿易拡大が含む本質は、「非熟練と熟練の2つのタイプの労働者による製品が同時に存在し、南北貿易に関与している労働者の労働価値(訳者註:賃金のこと)の増大が貿易量の増大に比べて早くない(訳者註:労働者の給料が上がらない)」ということである。

バングラデシュからの衣服の輸入と中国からのiPhoneの輸入、という2つのケースを考えてみよう。バングラデシュからの衣服の輸入は、言い換えるならば教育水準の低い労働者たちのサーヴィスを輸入し、アメリカ国内の教育水準の低い労働者に対する需要を引き下げる圧力がかかるということである(訳者註:アメリカ国内の低賃金の労働者の仕事がなくなる)。中国からのiPhoneの輸入の場合は、iPhoneの価値(訳者註:値段)の大部分は、日本のような高収入で、より教育水準の高い国々で行われた労働を反映しているものだ(訳者註:だから値段が高い)。中国からのiPhoneの輸入は言い換えるならば熟練と非熟練の2つのタイプの労働を輸入するということであり、収入配分に与える影響はより小さくなるということである。

これら2つの理由があったが、1995年から2010年にかけての発展途上諸国からの輸出増加は、1990年代のコンセンサスが可能だと想像したよりも、より大きいものとなった。この輸出増加はグローバライゼーションについての懸念をぶり返させることになった理由であろう。

●貿易不均衡(Trade Imbalances

学者たちがグローバライゼーションの与える影響を測定する方法と、トランプ大統領のアプローチをはじめとする一般の人々がグローバライゼーションを見る方法は対照的なものだ。大きな違いが見られるのは貿易不均衡についてだ。一般の人々は貿易黒字もしくは赤字が国際貿易における勝者と敗者を決定する要因だと見る傾向がある。しかし、1990年代のコンセンサスの基盤となっている国際貿易に関する経済学のモデルでは、貿易不均衡は何の役割をも果たさないということになる。

各経済学者が採用する単一のアプローチは長期的に見れば正しいと言える。それは、各国は自分の力で何とかしなければならないし、貿易不均衡は主に雇用における貿易関連部門と非貿易関連部門の配分率に影響を与えるが、労働に対する総需要に明確な影響を与えないからだ。しかし、貿易不均衡における急速な変化は調整という面で深刻な問題を引き起こす。より広範囲にわたるテーマにはこのコラムではすぐに戻ることにする。

ここでは、アメリカの石油以外の貿易収支(その大部分は工業製品が占める)とアメリカ国内の製造業における雇用についての比較について特に考えてみよう。

■2000年の輸入ショック

2000年代に工場関連の雇用の多くが失われた。この理由として貿易赤字の悪化が挙げられる

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ソース:アメリカ経済分析局;アメリカ労働統計局

1990年代末までに、製造業における雇用は雇用全体に占める割合は下落し続けていたが、絶対数で見れば安定していた。しかし、製造業における雇用は2000年を境に崖(cliff)を落ちるかのように急落した。この急落は石油以外の貿易赤字の急増に対応するものだった。

貿易赤字の急増は雇用の落ち込みを説明するものだろうか?その通りだ。理由の大部分を占める。

次の推定評価はきちんとした根拠があるものだ。1997年から2005年にかけて貿易赤字の増大によってGDPに占める製造業の割合は1.5パーセンテイジポイント低下した。言い換えるならば、製造業の産出量自体では同時期に10%以上も下落した、ということになる。製造業の雇用がおよそ20パーセント低下したということの原因の半分以上をこれで説明できる。

この推定評価は、比較的短い期間における製造業の雇用が雇用全体に占める割合ではなく、製造業の雇用の絶対数に焦点を当てている。製造業経済からサーヴィス経済への長期的な変動について、貿易赤字を使ってもほんの一部しか説明はできない。しかし、輸入の急増はアメリカの労働者の一部に衝撃を与えた。この衝撃はグローバライゼーションに対する反撃を引き起こす理由となった可能性が高い。

●急速なグローバライゼーションと崩壊(Rapid Globalization and Disruption

1990年代のグローバライゼーションを肯定するコンセンサスは、国際貿易は格差拡大にほぼ影響を与えないというものだった。このコンセンサスが基盤とした諸モデルは貿易量の増大が、大学に進学しなかった労働者など広範な層の労働者たちの収入にどれくらい影響を与えるかを問うものだった。長期的にみてこれらのモデルが正確であると考えることは可能であり、おそらく正しい。1990年代のコンセンサスを受け入れていた経済学者たちは、特定の産業部門と地方の労働者たちに注目する分析的な方法に目を向けなかった。この方法を経済学者たちが採用していれば短期的な動向をより良く理解できたことだろう。この方法に目を向けなかったことについて私は大きな間違いであったと確信している。そしてこの間違いを犯すことに私も協力したのだ。

グローバライゼーションをめぐる政治は、国際貿易がブルーカラーとホワイトカラーの報酬格差、もしくはジニ係数として知られる格差を測定するための広範な統計的方法にどのように影響するかという大きな疑問よりも、貿易の流れの大変動によって利益を得た、もしくは損失を被ったそれぞれ個別の産業部門の経験によって、より影響を受けているということが明確に示されるべきであったのだ。

2013年に発表され、今ではすっかり有名になっているデイヴィッド・オーター、デイヴィッド・ドーン、ゴードン・ハンソンの論文『チャイナ・ショック(China Shock)』の中でなされた分析が人々の耳目を集める余地がここにあった。この本の著者たちが主に行ったのは、国際規模の収入配分に関する広範で様々な疑問を投げかけることから急速な輸入の増大がアメリカ国内の各地方の労働市場に与える影響についての疑問を提示することであった。そして、著者たちはその影響は巨大で永続的なものだと結論付けた。この結論付けは新たなそして重要な示唆を与えるものとなった。

こうした様々な問題について、25年前には考察することもできなかった私たちのような経済学者たちのために弁解するならば、1990年代に始まったハイパーグローバライゼーションについて知る方法がなかった、もしくはそれから10年後に貿易赤字の急増が起きることなど分からなかった、ということになる。ハイパーグローバライゼーションと貿易赤字の急増ということが一緒になって起きなければ、チャイナ・ショックの規模はより小さいものとなったことであろう。私たちは物語の極めて重要な部分を見逃してしまったのだ。

●保護主義を擁護する十分な論拠となるか?(A Case for Protectionism?

1990年代のコンセンサスが見逃したものは何か?それはたくさんある。発展途上諸国からの工業製品輸出はコンセンサスが形成された時点でのレヴェルをはるかに超えるものにまで成長した。輸出の拡大と貿易不均衡の拡大が同時に起こったのだが、これはグローバライゼーションが1990年代のコンセンサスが想像したよりもより大きな崩壊とコストを(訳者註:アメリカ国内の)労働者の一部に与えた、ということを意味した。

それではグローバライゼーションが与えた崩壊とコストは、トランプ大統領の主張は正しく、貿易戦争はグローバライゼーションによって傷つけられた労働者たちの利益となるであろうということになるだろうか?

答えは「ノー」だ。保護主義という答えは自由貿易に対する厳格な関与よりも、グローバライゼーションが与えた損失を基にしている。急速に拡大し続けるグローバライゼーションに伴う問題点とは、歴史上最も急速な変化による崩壊が起きている中で労働に対する需要が変化していることではない。急速な変化は私たちに迫っている。多くの指標が示しているのは、ハイパーグローバライゼーションは一時的な現象だったのであり、国際貿易は世界のGDPにおいて比較的安定してきているということだ。上にある1つ目のグラフを見れば横ばいになっていることが分かる。

結果として、現在の貿易体制からの離脱ではなく、グローバライゼーションを逆行させようという試みによって現在の大崩壊は起きている。現時点では、どこに生産設備を建設するか、どこに移動して仕事に就くかなどについて膨大な数の決断は、開かれた世界貿易システムがこれからも存続していく、という前提の上に行われている。関税を引き上げることや世界貿易量を収縮させることでこの前提が間違っていると示すことは、これまでとは違う形で新たな勝者と敗者を生み出す新しい崩壊の波を発生させることになる。

グローバライゼーションがもたらす影響についての1990年代のコンセンサスが称賛されなくなってはいるが、グローバライゼーションに欠点があるからと言って、現在の保護主義が正当化されることはない。私たちは1990年代の時点で将来何が起きるのかを分かっていたならば、実際にやってきたこととは違ったことをやったであろう。しかし、時計の針を戻すことを正当化するだけの理由は存在しない。

(貼り付け終わり)

(終わり))

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 古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大で私たちの生活は変わった。手洗いうがいの励行をはじめとして、マスクの着用、人々が集まることの回避、不急不要の外出の回避と言ったことが起きている。それによって社会活動、経済活動は大きく制限を受け、大ダメージを受けている。新型コロナウイルスによって私たちの生活は「変えられ」ている。自主的にではなく、ウイルスの恐怖のために「変えさせられて」いる。

 アメリカでも生活の多くの面で変化が起きているという記事を以下にご紹介する。消費の低下、オンラインでの買い物の増加、不動産業の先行き不透明、テレビやラジオの視聴数の増加と広告収入の低下などが起きているということだ。これまで当り前となっていた生活のやり方や習慣が変化しつつあるということだ。新型コロナウイルス感染拡大が収まっても握手を拒否する人も多いようだ。

 アメリカでもコロナウイルスの恐怖によって生活が「変えさせられて」いる。確かにその性質や症状が全部解明されていないウイルスだから恐怖心を持つのは当然だが、それによって無理や無茶な行動をする必要があるとは私は考えない。手洗いうがいやマスク着用を励行しながら、社会活動や経済活動を行うべきだと思う。「自粛」をしていないお店に対して嫌がらせをしたり、警察が特殊警棒を持って繁華街を見回り人々に帰宅を促したり、といった「自警団」「ナチスの突撃隊」のような行動は社会を分断する行為だ。

 恐怖心によって考えることを放棄し、「上から」の命令に対して過剰に反応して、「それこそ正義だ」とばかりに、過剰な行動を取ることは結局最後には自分たちが支配者たちによって縛られ動けなくさせられてしまうことにつながる。自分たちでできることを励行しながら、権力の動きには抗する、こういう厳しい状況の時こそ冷静に行動し、生活すべきだ。そのためには現在のような異常な自粛ムード、「空気」を転換する必要がある。

 緊急事態宣言の「出口」、すなわち「どのような状況になったら解除するのか」「感染者数や死亡者数でどのくらいになったら何を解除するといった、いくつかのフェーズがあるだろうにそれが分からない」ということは恐怖心を増加させ、疲労を募らせるものだ。

 学校の勉強や仕事でもそうだが、最終目標の前に小さな目標をいくつか設定してそれをクリアしていく、達成感を感じて次に進む原動力を生む、ということやる。現在の政府は、人々の恐怖心を利用して、統制を強めているだけのことで、出口戦略一つ示すことができていない。恐怖心を利用して人々が自発的に政府の統制に服従する、という現状を利用しているだけのことだ。日本の現状は大変残念だ。

(貼り付けはじめ)

コロナウイルス危機が終了した後のアメリカ人の生活の様相(What American life will look like after the coronavirus crisis ends

クリスティン・テイト筆

2020年5月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/civil-rights/495624-what-american-life-will-look-like-after-the-coronavirus-crisis-ends

私たちの国に新しい時代がやってきつつある。歴史上の重要な出来事全てと同様、我が国の経済の原動力と我が国の政府の機能は、見えない敵によってひっくり返されている。今回のコロナウイルスによる死亡者数は我が国が長年にわたり関与したヴェトナムで亡くなった米国人の数を超えた。各種の市場は2008年に比べてより恐怖心をもって反応している。今回の新型の疾病は、中東での戦争、911事件、不動産価格の急落といった過去20年間の様々な重大な出来事に比べて、より大きな影響を平均的なアメリカ人に与えている。

倫理、収入、地理といった面で見てみると、今回のコロナウイルスは、州政府や連邦政府による政府布告よりも、アメリカ人の生活を破壊している。過去2か月で起きている私たちの社会の変化の多くはマイナスの影響を持っている。ウイルスの感染拡大によって起きている大規模な変化はより大きな基調を示すものとなっている。

地域のビジネスの活動停止について見てみよう。長年にわたり、政治の世界ではウォール街よりも地方の生活を支持する言説が支持を得てきた。しかし、ソーシャル・ディスタンシングとインターネットのために、小規模ビジネスは損害を受けている。全米自営業者連盟は、今年3月に楽観指数は、指数の調査が開始されて以降、最も厳しい程度の急落を記録した。消費指数もまた2020年第一四半期では約18%も下落した。閉鎖制限が実施されたのは今年の3月後半から始まったにもかかわらずこのような数字となった。店舗販売を行う会社だけが倒産のリスクを抱えている自営業ということではない。全米には1100のショッピングモールがあるがその中の多くが倒産のリスクを抱えている。

伝統的な買い物についてみると、オンラインでの売買が現在の話題となっている。アマゾン社は今回の危機のお蔭でこれまでにないほどの売り上げを記録している。オンライン上の日常品の売買はほぼ2倍になっており、テレビゲームへの消費額は50%増となっている。オンライン上の売買の総額は感染が始まってから49%増となっている。食品以外の売買の中でアルコールの売買が最も取引量を増加させており、75%増となっている。

住宅売買もまた劇的な変化を示している。賃借人の3分の1は先月の賃料を支払うことができなかった。また、住宅を買おうとしている人たちにとって物事は良い状況になっていない。住宅ローンの貸し手たちは、1500万人の持ち家のオーナーはローンを支払えないことになると予測している。住宅ローンの金利は低い状況であるが、若い人々は、雇用状況が不安定になっている中で、30年間もローンを抱えたくないと考えるようになっている。不動産業も同様の状況になっている。それは消費者の消費が減少することで、不動産を借りて商売をしている店などが賃料を支払えない状況になってしまうからだ。

社会的な交流の規範は変化しつつある。それはただスーパーマーケットに入店する際にマスクと手袋をするといったことだけに留まらない。当たり前のように自然に握手をするということも過去の習慣となる可能性がある。最近のある調査によると、新型コロナウイルス感染拡大が収まっても他の人と握手をしないようにしようと考えていると答えたのは全体の31%に上った。肘をくっつけ合うという挨拶の仕方がこれから残る可能性がある。

アメリカ人がコロナウイルスのニュースに釘付けになっている中、ラジオとテレビにおけるこれまでのやり方が大きく変化している。また、出版や新聞も同様に前提が大きく変わりつつある。全米規模のケーブルテレビは加入者が増加し、プライムタイムの視聴者数が増加している。同様のことは地方局でも起きているが、但し書きがつく。今回の危機が始まってから地方局の視聴者数は50%増加したが、広告収入は減少している。

出版社の多くは数百名単位で記者を解雇し、出版も止まっている状況である。また新聞もテレビのようにはなっていない。出版ジャーナリズムは「絶滅の危機」に瀕しているという判断も出ている。通勤などでの自動車利用が減少しているが、そのためにラジオ局の収入や聴取者数が減少している。大規模メディアに対して人々の嫌悪感が増している中で、地方の新聞とラジオは信頼できるメディアとなっている。しかし、これら2つのメディアは消滅する可能性を持っている。

コロナウイルスにより直接的に関係があることは、アメリカ国民は現在、自分たちの健康をより真剣に考えるようになっているということだ。処方箋薬の需要の増加と中国からの医療資源輸入の不足のためにアメリカ国民は打撃を受けている。複数の製薬会社が治療法とワクチン開発に数億ドルを投資しているために、人々が必要とする薬剤にかかるコストは上昇している。その結果はまだ明確になっていないが、現状によって薬剤の研究と開発に対する民間と公的な投資の恒常的な増加へと根源的な変化が起きる可能性が高い。

アメリカ人にとっては受け入れやすい状況は存在しない。その代り、私たちが直面しなければならない新しい現実の要素が存在する。

アメリカ国民は最近の世代は、以前の世代に比べて戦争による影響を受けていない。多くの人々にとって、今回の危機は厳しい目覚めの一発となった。政府の統制による耐乏生活の時代、株価や石油価格などの乱高下、将来にわたり、医療資源が統制され、配給となる可能性が存在する。効果的な治療法の確立と経済活動の再開の両立によって、世界規模の大恐慌を避けることができるように願っている。第一次世界大戦後に生まれた世代の多くは争いとスペイン風邪によって影響を受けた。この世代のアメリカ人は大恐慌と第二次世界大戦によって鍛え上げられることになった。この世代と同様、今の若者たちは自身が持つ強さを試されるか、破壊されるかという状況に直面している。

離職した数百万のアメリカ人、小規模ビジネスを閉じてしまったオーナーたちにとって、感染拡大が続く日々とは終わりのない悪夢の日々ということになる。しかし、現在の苦闘は、私たち全員にとって辛抱をするための機会となる。私たちの行動はこの時期における私たちの生き方を決めるものとなる。私たちはコロナウイルスに私たちの生き方を決めさせてはならないのだ。

※クリスティン・テイトはリバータリアニズムを信奉する作家であり、「ヤング・アメリカンズ・フォ・リバティー」のアナリストを務めている。彼女は「ファンド・フォ・アメリカン・スタディーズ」のロバート・ノヴァック記念ジャーナリズム専門研究員を務めている。彼女の最新刊は『ザ・リベラル・インヴェイジョン・オブ・レッド・ステイト・アメリカ』である。

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コロナウイルス危機について今日知るべき10のこと(Ten things to know today about the coronavirus crisis

ピーター・サリヴァン筆

2020年5月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/healthcare/495747-ten-things-to-know-today-about-the-coronavirus-crisis

今日は5月の初日だ。4月はコロナウイルスのためにアメリカにとって酷い月となった。しかし、感染者数のカーブはそのままであり、5月もまた厳しい月になるであろう。

治療法について1つの進歩が起きている。アメリカ食品医薬品局(FDA)は金曜日、レムデシヴィル(remdesivir)という薬剤に緊急的に認可を与えた。この薬剤は新型コロナウイルスに対する特効薬ではないが、ある程度の効果が認められている。

2つの世論調査の結果によると、多くの州が経済活動を再開させ始めている中で、アメリカ国民は通常の生活に戻ることに懸念を持っているということだ。

これから今日知るべき10のことを挙げていく。

4月が終わり、5万3000名以上のアメリカ人がコロナウイルスのために命を落とした。5月になって状況が好転するとは考えられない。

アメリカ食品医薬品局はレムデシヴィルという薬剤に対して緊急的に認可を与えると発表した。今週初めにレムデシヴィルは、コロナウイルス治療においてある程度の効果が期待できるという有望な研究結果が発表された。

テキサス州では経済活動の再開をスタートさせようとしている中で、同州では1日の死者数としては最大の50名を記録した。

米教育省はテキサス大学と中国のある研究機関の実験室との関係を調査し始めた。この中国の研究機関の実験室はコロナウイルス感染拡大に関して詳細に調査を行っている。

多くの州で経済活動が再開され始めているが、最新の世論調査によると、66%のアメリカ国民は職場に復帰することを嫌がっている。

70以上の公衆衛生、商業、学術の研究機関がコロナウイルスの遺伝子を研究するために協力体制を構築している。

いくつかの州政府と地方自治体政府の中には、他州や他の地方自治体に居住しているアメリカ人に対して旅行移動の制限と強制的な隔離を命じている。この動きは、憲法上と政治的な論争を引き起こしている。

ミネソタ大学の最新の報告では、コロナウイルス感染拡大は最長で2年間続く可能性がある、また、ウイルスの拡大を効果的にコントロールするためには世界総人口の最大3分の2が免疫を獲得する必要があると警告を発した。

米退役軍人省はコロナウイルスによる死亡者のために約30万ドル分の死体袋を注文した。

最新の世論調査によると、58%のアメリカ人がこれからしばらくは映画に行かない、もしくはいかないだろうと答え、57%がプロスポーツの試合の観戦に行かない、もしくはいかないだろうと答えた。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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