古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:日本

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行いたしました。ウクライナ戦争についても詳しく分析し、『週刊ダイヤモンド』誌2024年3月2日号で、佐藤優(さとうまさる)先生に「説得力がある」という言葉と共に、ご紹介いただいております。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 ウクライナ戦争についてはあらゆる角度からの多種多様な論稿や記事が発表されている。今回ご紹介する論稿は、ロシア内戦介入戦争(シベリア出兵)についての著作を基にして、ウクライナ戦争との比較を行っている。日本ではシベリア出兵(Siberian Intervention)で知られるロシア内戦介入戦争(Allied intervention in the Russian Civil War)は、1917年にロシア革命(10月革命)で成立したボリシェヴィキと、ロシア帝国存続を目指す反ボリシェヴィキである白系ロシアによるロシア内戦に第一次世界大戦の戦勝諸国が介入した戦争を指す。日本もアメリカなどと共に、シベリア地方に出兵し、一部を占領した。ロシア内戦は白系ロシアの敗北、ボリシェヴィキの勝利で終わった。
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 今回のウクライナ戦争では、ウクライナに侵攻したロシアに対して、西側諸国がウクライナに資金や軍事装備を支援している。ウクライナ戦争については、ロシア側をボリシェヴィキ、ウクライナ側を白系ロシアに見立てている。この類推(アナロジー、analogy)がそのまま正しいと、ウクライナが戦争に負けることになる。

 この記事の著者セオドア・バンゼルは、ウクライナを勝利に導くためには、「西側諸国が、明確な長期戦略を策定し、緊密な連携を継続し、自国民に訴えかけることで国内の支持を強化することを続けることだ」としている。残念なことだが、バンゼルの挙げた条件を西側諸国が実行することはほぼ不可能だ。

まず、長期戦略を策定することが既にできていない。戦争の落としどころ、最終目標を決めてそれに向かって進むということができていない。場当たり的に、その場しのぎでウクライナに支援を与えているが、ざるに水を入れているようなもので、その効果は薄れ続けている。西側諸国が緊密な連携をしているということもない。取りあえず、金と適当な武器をウクライナに与えているだけ、誰(どの国)が音頭を取っているかもよく分からない。ヨーロッパの諸大国はアメリカ任せ、自分のところにとばっちり(ロシアからの攻撃、最悪のケースは核攻撃)がないようにしているだけのことだ。西側諸国の国民の間に「ウクライナ疲れ」「ゼレンスキー疲れ」が蔓延し、アメリカ国民の過半数が「ウクライナにはもう十分してやった」と考えているほどだ。これでは支援継続は難しい。

 こうしてみると、結局、ロシア内戦介入戦争と同様に、ウクライナ戦争は西側諸国の敗北ということになる。いまさら言っても詮無きことではあるが、長期戦になる前に、ウクライナは良い条件で停戦できるときに停船をすべきだった。私は2022年3月の時点でこのことを述べている。こうして見ると、人間は賢くない。謙虚に歴史から学ぶという姿勢が重要である。

(貼り付けはじめ)

西側諸国による最後のロシア侵攻からの大きな教訓(The Big Lesson From the West’s Last Invasion of Russia

-ロシア内戦への連合国の介入が今日のウクライナについて教えてくれること。

セオドア・バンゼル筆

2024年33

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/03/the-big-lesson-from-the-wests-last-invasion-of-russia/?tpcc=recirc_latest062921

ほぼ全員がミシガン州出身だったとは言え、アメリカ軍兵士にとってロシア北部は厳しい寒さに感じられたに違いない。1918年9月4日、4800人のアメリカ軍が北極圏からわずか140マイルしか離れていないロシアのアルハンゲリスクに上陸した。その3週間後、彼らはイギリス軍やフランス軍とともに、そびえ立つ松林や亜寒帯の湿地帯の中で赤軍(Red Army)との戦いに突入した。最終的に、2年間の戦闘で244人のアメリカ兵が死亡した。アメリカ軍将兵の日記には、最初の遭遇戦の悲惨な様子が描かれている。

「私たちは機関銃の巣に突っ込んで早々に退却した。[ボリシェヴィキはまだ激しく砲撃してくる。私の分隊のペリーとアダムソンは負傷し、銃弾は私の両肩を撃ち抜いた。ひどく疲れ、腹が減った。他の隊員もそうだ。この攻撃で4人が死亡、10人が負傷した]

これらの不運な魂は、ロシア内戦への連合国による介入という、広大かつ不運な事態の一端に過ぎなかった。1918年から1920年にかけて、アメリカ、イギリス、フランス、日本は、バルト海からロシア北部、シベリア、クリミアに数千の軍隊を送り込み、反共産主義の白系ロシアに数百万ドルの援助と軍事物資を送った。これは20世紀における外交政策の失敗の中でも最も複雑で忘れられがちなものの1つであり、アンナ・リードの新著『厄介な小さな戦争:ロシア内戦への西側の介入(A Nasty Little War: The Western Intervention Into the Russian Civil War)』では、鮮明にかつ詳細に語られている。

リードが参戦した将兵たちの個人的な日記と並行して見事に織り成す紛争の詳細は、しばしば別世界のように感じられる。日本軍はロシア極東のウラジオストクを占領した。当初は連合国の中で最もタカ派介入支持者だった、気まぐれなフランスはウクライナ南部の占領を主導し、ムイコラーイウ、ヘルソン、セヴァストポリ、オデッサといった読者にはおなじみの都市をめぐって赤軍と争った。 6万人の軍隊を含む介入に最も多くの資金を投入したイギリスは、迫りくるトルコ軍からバクーを守り、バルト三国でボリシェヴィキに対して海軍の破壊活動を行い、最終的には黒海の港から白人を避難させ、ロシアの周縁部全域を徘徊していた。赤軍の猛攻撃の前に崩壊した。

リードの優れた著書に漂う不穏な疑問は、西側諸国が歴史を繰り返す運命にあるのかということである。介入(intervention)は失敗に終わり、目を凝らして見ると、今日のウクライナへの介入も、物資、人的資源、政治的意志が無限に湧き出るように見える広大で断固としたロシアを前にすると、同様に無駄に見えるかもしれない。アメリカ連邦議会共和党の極右派、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相、ドナルド・トランプ元米大統領たちはそう信じ込むだろう。ロシア介入中にロシア北部の連合国軍のイギリス軍司令官エドマンド・アイアンサイドが語った絶望感は、「ロシアはあまりにも巨大なので、息が詰まるような気分になる」というものだった。

しかし、歴史的な反響が強いにもかかわらず、この2つの介入の違いは、その類似点よりも示唆に富んでいる。綿密な研究は、おそらく更に大きな問いを投げかけている。対外介入を成功させる条件とは何か? 確かに連合国は失敗を犯したが、公平を期すなら、失敗の大半は自分たちの手に負えないことが原因だった。最も制限的な要因は、白系ロシアの同盟者たちが無能かつ有害だったことだ。白系ロシアは反ボリシェヴィキの社会主義者と無能な元ツァーリ将校からなるバラバラのグループで、根っからの大ロシア独裁者(Great Russian autocrats)だった。白系ロシアはロシア国民の支持を得られず、また決定的なことに、ウクライナ人からバルト人に至るまで、少数民族の宝庫である帝室主義(Tsarist)ロシアをロシアの庇護下に置こうとしていた。

今日のウクライナの置かれた状況ははるかに有利だ。アメリカとヨーロッパ諸国は、目もくらむような道徳的明快さとの闘いにおいて、ヴォロディミール・ゼレンスキー政権のウクライナにおいて統一された断固たる支持者たちを擁している。ロシア経済は戦時中の状況にあるかもしれないが、全体として見ると西側諸国ははるかに多くの資源を手元に持っている。そして、この任務、つまりやる気に満ちたウクライナを敵対的な侵略から守るということは、世界最大の国の政府を打倒するという試みに比べるとはるかに野心的ではない。実際、この2つの介入を冷静に比較すれば、当時の西側諸国の首都のように今は衰えつつある自国の政治的意志が邪魔にならない限り、西側はウクライナを最後までやり遂げるという決意を強めるはずだ。

対外介入に欠かせないのは、明確で達成可能な目的、信頼できる現地の同盟者たち、攻撃可能な敵国、物質的手段、そして最後までやり遂げる政治的意志である。連合軍のロシアへの介入は、ほとんどすべての面で致命的に欠けていた。

リードの物語で最も印象的なのは、連合国軍がロシアで一体何をするつもりだったのかがしばしば不透明なことだろう。確かなことは、全ての西側諸国政府がボリシェヴィズムを嫌悪し、その膨張主義的で感染力のある可能性を恐れていたということだ。しかし、それ以上の戦略や目的はほとんど共有されていなかった。実際、西側諸国の軍隊は当初、ドイツ軍の手に渡ることを恐れたロシア北部と東部の鉄道と連合軍の軍事倉庫を警備するために派遣された。しかし、1918年11月にドイツが降伏した後、状況は少し複雑になった。ジョージ・F・ケナンがその名著『介入の決断(The Decision to Intervene)』の中で述べているように、「アメリカ軍がロシアに到着して間もない頃、ワシントンが考えていたアメリカ軍がロシアに駐留するほとんど全ての理由が、歴史によって一挙に無効にされた」のである。

現地にいた熱心なイギリス軍将校たちは、ウィンストン・チャーチル陸軍長官のような国内のタカ派閣僚に後押しされ、気まぐれなロシアの冒険を擁護して自らの政治資金をほとんど使い果たしてしまったが、すぐに積極的に介入して赤軍と戦うイニシアティヴを確保した。ウクライナ南部など他の地域では、現地の白軍を支援する任務が明確であったが、フランスは一連の挫折と反乱に見舞われたため、すぐに意気消沈し、1919年4月に帰国の途に就いた。

この曖昧さを象徴するのが、ウッドロー・ウィルソン大統領が1918年7月に個人的に書いたメモに書かれたアメリカ軍介入の指示である。ウィルソン大統領はこの決断に苦悩し、「ロシアにおいて、何をするのが正しく、実行可能かについて分かるために血の汗を流している」というのが特徴的だった。ウィルソンはメモの冒頭で、軍事介入は「ロシアの現在の悲しい混乱を治すどころか、むしろ助長する」と警告し、シベリアで活動するチェコ軍団を支援するためと、「北方でロシア人組織が組織的に集まるのを安全にする」ためにロシア北部に米軍を派遣することを約束した。これらは明確な内容とは言い難い。

アメリカ軍将校たちは、これらの指示を疑わしそうに受け止めた。シベリアで8000人の将兵たち(doughboys)を指揮していたウィリアム・グレイブス大将は、アメリカが紛争に関与していることに明らかに懐疑的であり、ウィルソンの指示を赤軍と戦うのではなく鉄道の警備のみを許可するものと解釈していた。グレイブス大将は後に回想録の中で、ワシントンが何を達成しようとしているのか全く分からなかったと書いている。これは全て、シベリアでのより介入寄りのイギリスの同僚たちとは反対の考えであった。彼らは代わりに、白軍の恐ろしく無能な「最高支配者(supreme ruler)」アレクサンドル・コルチャク提督を積極的に支援した。アレクサンドル・コルチャック提督はロシア黒海艦隊の元司令官であり、内陸のシベリアの奥地で、不得意な陸戦を展開していた。ちなみに、コルチャック提督を現ロシア大統領ウラジーミル・プーティンは熱烈に支持している。

ここから白系ロシアの話に移る。おそらく、外国介入、特にウクライナとロシア内戦の両方に対する西側介入のような野心的な介入の必須条件は、現地の同盟国である。それは、西側諸国によるリビア介入後の混乱と、バルカン半島への介入の成功との違いだ。この点で白系ロシアは惨めな失敗を喫した。

どこから始めたらいいのか分からない。コルチャックの他にも、ロシア南部で白軍を率いていた無能なアントーン・デニーキン将軍がいた。彼は、自分の監視下で白軍が行ったウクライナのユダヤ人に対するおぞましいポグロムについて、連合国政府に対して嘘を言ってごまかした。また、11の時間帯にまたがるロシアの全周囲を網羅する、ありえないほど広大でバラバラの戦線で活動する以上に、複雑怪奇な白軍の派閥は、基本的に軍閥(warlords)として行動し、忠誠心や協調性はほとんど存在しなかった。

白系ロシアにとって致命的だったのは、首尾一貫した、あるいは説得力のあるイデオロギーが存在しなかったことだ。アントニー・ベーバーは、彼の素晴らしいロシア内戦史の中で、白系ロシアの敗因を政治的プログラムの欠如と分裂的性質の両方にあると指摘している。「ロシアでは、社会主義革命家たちと反動的君主主義者たちのまったく相容れない同盟は、共産主義者の独裁一本やりにほとんど歯が立たなかった」。

これら全てを赤軍と比較してみる。彼らはモスクワとサンクトペテルブルクの工業の中心地を支配し、より強力な国内通信網を使って内外に活動した。このおかげでレオン・トロツキー政治局員、リードによれば、彼は「洞察力があり、決断力があり、限りなく精力的という、天才に近い戦争指導者として開花した」、白軍がロシア東部と北部から前進する中、劣勢な前線を強化するために装甲列車に飛び乗ることができた。ボリシェヴィキは、破滅的な経済政策を実施し、国内でテロの第一波を引き起こしたにもかかわらず、士気が高く、少なくともその時点では地元住民たちにある程度のアピールをする明確なイデオロギーを持っていた。

そして根本的に、彼らの意志は白系ロシアや西側諸国よりもはるかに強かった。第一次世界大戦の荒廃の後、連合国政府はボルシェビズムの蔓延を恐れたが、疲弊した国民を巻き込むことはできなかった。この点で、歴史的な反響は最も厄介である。国民の支持は当然のことながら低迷し予算は逼迫した。1919年、イギリスの『デイリー・エクスプレス』紙が、今日のアメリカ共和党のレトリックを利用して次のように述べた。「イギリスは既に世界の半分の警察官であるが、全ヨーロッパの警察官にはなれない。東ヨーロッパの凍てつくような平原は、イギリスの擲弾兵一人の骨にも値しない」。シベリアとロシア南部での白系ロシアの挫折は、棺桶に釘を打つようなものだった。当時も今もウクライナでは、介入に対する外国の政治的支持は、戦場での勢いの感覚に最も依存していた。

外交政策立案者たちの仕事は、自分たちがコントロールできるものとコントロールできないものを区別することだ。同盟諸国、地理、敵の脆弱性など、有利な条件を直観できる限り、戦略と目標、政治的意志の動員、努力を支援する資材の提供、調整など、自分たちが管理できる事柄に焦点を当て、同盟諸国とそれらを最適化することが課題ということになる。

現在、西側諸国の首都に蔓延している悲観論にもかかわらず、今日のウクライナ戦争は、ロシア内戦中に連合諸国が直面した状況とは異なり、政策立案者たちが望むことができる、より好ましい状況のいくつかを提示している。白系ロシアと異なり、ウクライナは価値ある有能な同盟国であり、意欲の高い国民を背景に領土を守るために戦っている。ウクライナの大義は正義にかなったものであり、二項対立の特質を西側諸国の国民に容易に説明できる。プーティン大統領の勝利への個人的な意志は強い一方で、ロシア社会を全面的に動員することへの躊躇とその行動を見れば、彼が国民に求めることの限界を感じていることは明らかだ。ロシアの人的資源と物資はウクライナよりも多いが、ウクライナの武装と戦闘を維持するために必要な量は完全に管理可能である。現在連邦下院の共和党極右派が停止させている、アメリカからの600億ドルの補助金は、その見返りに比べれば微々たるものである。ウクライナを擁護することで西側の価値観を擁護する。ロシアを戦略的な落とし穴にはまり込ませ、NATOの東側面の残りの部分を脅かすロシアの能力を低下させる。そして大西洋横断同盟を強化する。現在、西側諸国の首都は、1918年当時に比べてはるかに団結しており、各首都間の防衛連携も強固になっている。彼らはウクライナの終盤戦に対する共通の感覚を鋭くすることはできるが、紛争が何らかの交渉による解決で終わることは誰もが知っている――問題は誰の条件によるものか、である。

もしアメリカとその同盟諸国が、ロシア内戦への西側の介入の落とし穴を避けることができれば、つまり、明確な長期戦略を策定し、緊密な連携を継続し、自国民に訴えかけることで国内の支持を強化することができれば、プーティンに打ち勝つ可能性は十分にある。このような好条件を考えると、長期的な成功への主な、そしておそらく唯一の障害は、この仕事をやり遂げる政治的意志があるかどうかである。

※セオドア・バンゼル:ラザード社地政学顧問会議議長兼執行委員。駐モスクワ米大使館政治部門、米財務省で勤務した。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。日本がアメリカの下請けで武器を製造するということは、私が本の中で予想していた通りの展開です。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 岸田文雄と自民党をめぐっては、スキャンダルもあり、増税もあり、非常に厳しい状況になっている。それでも何とか予算を通すことができた。今年4月には、岸田首相は、国賓としてアメリカを訪問する。アメリカ連邦議会の上下両院合同会議で演説を行うことが決まっている。国賓待遇なので、ジョー・バイデン大統領主催の晩餐会や、岸田首相主催の答礼となる晩餐会もあるだろう。私の記憶では、連邦議事堂で演説を行った日本の首相は、故安倍晋三元首相以来だと思う。「属国」の首相に対して、これだけの「好待遇」をするということは、それ相応の「お土産」がいる。それが下記の記事にあるアメリカ向けの軍事装備部品の共同生産体制の強化、増産ということである。
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 ウクライナ戦争が開戦して2年以上経過し、状況はウクライナにとって不利になっている。アメリカをはじめとする西側諸国では、ウクライナに対する支援が厳しくなっている。最大の支援国であるアメリカでは、アメリカ連邦下院でウクライナ支援に反対する共和党強硬派がいる。大統領選挙の共和党候補者となること学実となっているドナルド・トランプも反対している。アメリカ国民の多くも「既に十分にしてやった」と考えている。これらのことは、『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で詳しく書いている。

 また、アメリカは工業生産力が落ちている中で、多くの武器をウクライナに送っているために、アメリカ軍の装備自体が足りなくなっているということは、2022年の段階で既に報じられている。工業生産力は中国、ドイツ、日本に劣っている。また、軍事用品は一般使用できないために、簡単に増産はできないし、雇用を増やすということもできない。そうした中で、アメリカとしては武器の生産に困っているという状況だ。そうした中で、便利使いされるのは日本だ。これらのことも私は『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』の中で予想していた。その通りになった。
 アメリカで足りない武器を日本が代わりに作らせていただく、しかも日本のお金で、ということになる。これは「ウクライナ支援」という大義名分がつく。アメリカが武器とお金を渡してウクライナ人に戦わせるというのがウクライナ戦争の大きな構図であるが、ここに日本人がお金を出すということが加わる。

 アメリカは「民主政治体制防衛のための武器庫(arsenal of democracy)」(フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領の言葉)という大義名分を守るために、属国・日本を使う。貧乏くじを引かされるのは日本ということはこれからもそうだったし、これからも続くだろう。
(貼り付けはじめ)

●「アメリカ向け装備部品増産へ、日米首脳会談で連携強化調整…日本がウクライナ支援を下支え」

2024/03/10 05:00

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240309-OYT1T50255/
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 日米両政府は4月に予定する首脳会談で、防衛装備品を巡る「共同生産体制の強化」について合意し、成果文書に明記する方向で調整に入った。ロシアによる侵略が続くウクライナ支援で米国の生産体制は 逼迫ひっぱく している。日本がウクライナ支援を下支えすることで日米同盟の結束を示し、抑止力維持にもつなげる狙いだ。

 複数の日米両政府筋が明らかにした。米ワシントンで4月10日に行われる岸田首相とバイデン大統領との会談では、日米の防衛産業間の連携強化が主要なテーマとなる。米側には、ウクライナ支援の長期化などで砲弾やミサイルが在庫不足に陥りかねないとの危機感がある。

 日本は昨年12月、防衛装備移転3原則と運用指針を改正した。これに合わせ、米国のミサイル不足を補うため、地対空誘導弾パトリオットミサイルの米国への輸出を決めた。

 首脳会談では、こうした補完関係を加速させる方針を確認する見通しだ。覇権主義的な動きを強める中国もにらみ、装備品のサプライチェーン(供給網)を強化したいとの考えがある。

 具体的には3原則と運用指針の改正で防衛装備品の部品輸出を幅広く認めたことを踏まえ、主に部品の生産拡大を想定しているとみられる。ウクライナで大量に消費されているりゅう弾砲の部品などが浮上しており、日米は今後、弾薬なども含めて対象とする装備品の特定を急ぐ。

 日米両政府は日本企業が米軍装備品の整備や修理を定期的に行う事業の本格化も検討しており、首脳会談でも議題とする方向だ。

 米海軍第7艦隊を中心に日本に前方配備された艦艇が対象候補に挙がっている。現在、大規模な整備は米本土で行われているが、日本で実施できれば、整備の際の運用休止期間の短縮や費用の抑制につながる。日本にとっては防衛生産・技術基盤の強化も期待できる。

 艦艇に加え、最新鋭ステルス戦闘機「F35A」なども候補として浮上している。

 ただ、日本政府内では、日本の艦艇整備拠点の受け入れ余地が少ないとの指摘もある。米議会では一連の事業を日本が行うことになれば米国の雇用に影響しかねないとの警戒感もあるとされ、慎重に詰める方針だ。

 今回の首脳会談は国賓待遇で招かれて行うもので、首相は米議会の上下両院合同会議で演説する。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 日本は世界に先駆けて、「少子高齢社会」「少生多死社会」に突入している。「高齢化」ではなく、「高齢」である。ある学者の言葉を借りれば、「日本は老人ホーム」ということになる。下の記事にあるように、1年間で生まれる乳児の数が約75万人で、亡くなる数は約159万人で、差し引きすれば、約84万人の人口減少ということになる。移民などを考えれば、減少数はこれよりも少ないとなるが、約80万人が日本からいなくなったということになる。約1億2000万人の人口を誇る(世界第12位)日本で80万人くらいと思えるが、問題は、人口減少が2011年からずっと継続しており、出生数は1970年代中盤の第二次ベイビーブーム(現在の50歳前後)を最後に、減少し続けている。
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第二次ベイビーブーム世代(団塊ジュニア世代)が前の世代に近い形で婚姻、出産できていれば、2000年代前半(現在の20代中盤から30代中盤)に多少のベイビーブームが起きていただろうが、経済氷河期ということと、自己責任ブームもあり、経済的に安定せず、結果として、第二次ベイビーブーム世代は前の世代のような婚姻も出産もできなかった。ここに国家(政府与党自民党)は力を注ぐべきであったが、国家(政府与党自民党)は団塊ジュニア世代を斬り捨て、見捨てて、結果として、現在の日本の惨状を招いている。生まれてくるはずの人たちを出現させなかったということになり、自民党の罪は万死に値する。
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今頃になって、少子化対策などと言っているが、既に手遅れである。時を逸している。適材適所という言葉があるが、適時という言葉もある。その最も効果を発揮する時に政策をびしっと打てなければ、それは失敗であり、その点で自民党は失策を、しかも日本にとって致命的な大失策をしてしまったということになる。一度ダウンスパイラルにはまり込んでしまえば抜け出すのは容易ではない。デフレスパイラルのことを考えればそれは理解できる。

人口を維持するためには、合計特殊出生率2.07が必要である。1.5が「超少子化」と分類され、それより下になると深刻な事態ということになる。日本は2005年から10年間程度は特殊出生率が持ち直していたが、それでも1.5にも及ばない状況である。出生率を2.07に近づけることは不可能である。出生数100万を目指すことも夢のまた夢である。日本は衰退国家であるということを改めて認識しておかねばならない。
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 日本の人口はこれからも減り続け、これから50年間で1億人を下回り、やがて8000万人台になるだろう。2100年頃には8000万人台を割り込んでいるかもしれない。現在のような社会システムを維持することはできないだろうが、人口の過密から解放されているかもしれない。日本が先進国であった時代の遺産を食いつぶしながら、やがてそれもなくなれば、また一から始めるということになるだろう。そういう循環になっているのかもしれない。

(貼り付けはじめ)

●「2023年生まれの赤ちゃん 8年連続減で過去最少758631人 去年1年間の死亡者数は3年連続増で過去最多」

2/27() 15:31配信 FNNプライムオンライン

https://news.yahoo.co.jp/articles/5c530414ee9b8e3fe575968cac7f8b5811ecec1f

2023年に生まれた赤ちゃんの数が8年連続で減少し、過去最少となった。

厚生労働省によると、20231年間で生まれた赤ちゃんの数を示す出生数は前の年よりも約41000人減って、758631人だった。

出生数が減少するのは8年連続で、過去最少となった。

一方、20231年間で死亡した人は159503人で3年連続で増加し、過去最多に。

また、結婚の件数は489281組で減少した一方、離婚の件数は、187798組で増加した。

=====

2023年出生数、最少75万人 人口減り幅も過去最大、厚労省

2/27() 15:31配信 共同通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/5c8cf6a517a7a4b0f43c374069832f80381c2f64

 厚生労働省が27日に発表した人口動態統計の速報値(外国人らを含む)によると、2023年に生まれた赤ちゃんの数(出生数)は過去最少の758631人だった。初めて80万人を割った22年から5.1%減り、少子化が一段と進んだ。今後発表する日本人だけの出生数は70万人台前半への落ち込みが確実な情勢だ。婚姻数も90年ぶりに50万組を割った。死亡数は過去最多の159503人となり、出生数を引いた人口の自然減は831872人と最大の減少幅になった。

 未婚・晩婚化の傾向は変わらず、少子化は政府想定より12年早いペースで進む。

 出生数は第2次ベビーブームのピークだった1973年(約209万人)以降、減少傾向に入り、16年に100万人を割った。2022年の速報値は799728人で初めて80万人を下回り、23年はさらに41097人減った。減少は8年連続。

 厚労省の国立社会保障・人口問題研究所は将来推計人口で、76万人を割るのは35年と見込んでいたが、実際は12年早まった形だ。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。世界は大きく「ザ・ウエスト(the West、西側諸国)対ザ・レスト(the Rest、西峩々以外の国々)」に分裂していく、構造変化が起きています。そのことを詳しく分析しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 「デカップリング(decoupling)」「脱ドル化(de-dollarization)」という言葉を聞くようになった。特に昨年、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の総会で、「BRICS通貨の創設が発表されるのではないか」という予測が出て、ドルに代わる世界通貨になるかもしれないということで、話題になった。結局、インドの反対もあり、今回は見送りとなったが、ドルが世界の基軸通貨(key currency)の地位を失う可能性が取り沙汰されるきっかけとなった。このことは、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも取り上げた。脱ドル化、デカップリングとは、西側世界への経済的な依存を減らすことである。その先頭を走っているのは中国である。下の論稿には、中国が行ってきたデカップリングと脱リスク化について、脱ドル化、技術依存度(technological dependence)を下げる努力、国内の金融部門に外国が関与することを制限することが挙げられている。これらは、20世紀末から西側諸国を中心に進められてきた、グローバライゼーション(Globalization)に逆行する動きであるが、グローバライゼーションに対する逆行こそが、国家を救う道である。

 現在の日本を見てみると、自国通貨である円の価値の低下によって、諸外国から見て、「なんでも安い国」となった。しかも高品質というおまけがつくので、「なんともおいしい」区になっている。現在、バブルを超える勢いで、株式市場が上昇を見せているが、これは、外国からの投資が増大し、それに国内の資金が流れているということである。外国からの資金はいつか日本株を打って出ていく。株高に誘惑されて株式を買ったり、NISA投資をしたりしている日本の人々には損がかぶせられる。そうして国力が奪われていき、日本の衰退は加速していく。グローバライゼーションで利益を得るのは国境を軽々と超えるエリートたちや資産家たちだけである。日本は30年以上、グローバライゼーションによって国力を毀損させられてきた。

 世界の構造が大きく変化しようとしている時期になっている。グローバライゼーションと世界構造の大変化に備えるためにも、デカップリングと脱ドル化を真剣に検討し、議論するべき時だ。しかし、既にアメリカ国債を買いまくり、外貨準備もドルに偏重している日本はこのようなことはできないかもしれない。アメリカと一緒に心中をするしかないということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

西側諸国がデカップリングを発明したのではない-中国が発明したのだ(The West Did Not Invent Decoupling—China Did

-北京は長い間、経済を西側諸国から切り離すことで自由裁量(free hand)を手にしようとしてきた。

アガーテ・デマライス筆

2024年2月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/01/china-decoupling-derisking-technology-sanctions-trade-us-eu-west/

クレムリン・ウォッチャーたちの間で語り継がれている話がある。2014年のロシアによるクリミア侵攻と併合に対して、西側諸国が初めてロシアに制裁を課した直後、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は経済補佐官たちを呼び出した。彼の質問は単純だった。「ロシアの食料自給率はどのような状況なのか?」。補佐官たちはあまり良くないという答えが返ってきた。ロシアは国民に提供する食糧は輸入に頼っていた。プーティンは顔をあ納めさせて、制裁によってモスクワの主食へのアクセスが制限されることを恐れ、何とかするよう命じた。

2022年にロシアが本格的にウクライナに侵攻する時点にまでテープを早送りすると、プーティンはもはや食料の心配をする必要がなくなった。わずか8年で、ロシアは食糧をほぼ自給自足できるようになり、肉、魚、そして、まあまあの品質のチーズまで生産できるようになった。

ロシアが食糧自給を目指したのは、現在流行している経済的デカップリング[economic decoupling](最近では脱リスク[de-risking]と言い換えられている)をめぐる議論よりもずっと以前のことである。政治的言説(political discourse)が示唆するところとは逆に、西側諸国がこうした政策を考案したわけではない。ロシアの例が示すように、西側の民主政治体制国家と対立する国々は、潜在的な敵国から自らを守るために、長い間リスク回避政策(de-risking policy)を追求してきた。

ロシアに比べ、中国は技術、貿易、金融の面で西側諸国への経済的依存(economic reliance)を減らしてきた実績がある。デカップリング(decoupling)とデリスク(de-risking)の発明者であり、世界のリーダーでも存在がいるとすれば、それはどう見ても北京である。

近年、アメリカが中国へのハイテク輸出を次々と規制するずっと以前から、中国の指導者たちはテクノロジーを脱リスクの最初の柱としてきた。例えば、北京の半導体分野への最初の投資計画は、1980年代まで遡るが、当時の中国が基本的なチップを生産する域にも達していなかったことを考えると、その結果は成功と失敗が入り混じったものであったことは間違いない。

中国の計算はシンプルだ。テクノロジーは経済的・軍事的優位性のバックボーンである。したがって、北京にとって技術的な自給自足は、生き残り、繁栄するために必要不可欠なことなのだ。

中国の技術依存度(technological dependence)を下げる努力は過去10年間で推進された。ドナルド・トランプ前米大統領が中国との関係断絶を自慢し始める2年前の2015年、北京は半導体(semiconductors)、人工知能()artificial intelligence、クリーンテクノロジー(clean tech)などの主要技術分野で、自給自足を目指す「メイド・イン・チャイナ2025(Made in China 2025)」の青写真を発表した。

中国は技術的な自給自足を自国が生存し続けるための必須条件と考え、わずか数年で目覚ましい進歩を遂げた。多くのハイテク分野では、中国企業や研究者たちは揺るぎない世界的リーダーであるか(特にクリーン技術分野では、中国企業がソーラーパネル[solar panels]、風力タービン[wind turbines]、電気自動車[electric vehicles]の市場を独占している)、あるいは西側諸国の競合相手とほぼ肩を並べている(人工知能、量子コンピューター[quantum computing]、バイオテクノロジー[biotech]を含む)。

半導体は例外だ。マイクロチップに関して言えば、西側諸国の政策立案者たちは、中国は最先端チップ(cutting-edge chips)の生産において、アメリカ、台湾、韓国に大きく遅れをとっていると指摘し、自らを安心させたがっている。確かにその通りだが、北京はアメリカの輸出規制が危機感を煽ることを歓迎しているのかもしれない。

中国指導部はまた、輸出管理が容易に裏目に出る可能性があることを知っている。歴史が示しているように、長期的には、アメリカの一方的な輸出管理は、ほとんどの場合、輸出収入を制限することでアメリカ企業に損害を与え、その結果、最先端を維持するための研究開発に費やすことができる額も抑制されることになる。言い換えれば、中国政府は長期戦を繰り広げており、アメリカ政府の積極的な戦略が最終的には裏目に出て、西側諸国の技術への依存を減らすという中国の取り組みを更に支援することを期待しているのだ。

金融分野は、北京のリスク回避戦略の2本目の柱であり、長い歴史を持つ。この分野でも、西側諸国経済との関係を断ち切ろうとする中国の努力は、北京からのリスクを取り除くというアメリカとヨーロッパの計画に先行していた。最も明白な例は、北京が国内の金融部門に外国が大きく関与することを認めてこなかったことだ。中国の金融市場は閉鎖的で、外国人投資家は中国株の4%、中国国債の9%しか保有していない。中国独自の銀行システムは、国際金融からほぼ完全に遮断されており、中国人以外の投資家が中国の銀行資産の2%未満しか所有していない。また、国内外への資金移動を厳しく制限する資本規制は、いまだ解除されていない。

しかし、金融分野における北京のリスク回避努力は、外国人を遠ざけるだけではない。中国の指導者たちは不都合な真実に直面している。西側諸国の金融チャネルへの依存は、北京のアキレス腱になるかもしれない。西側諸国は世界の支配的な通貨を所有し、世界の全ての銀行を結ぶ世界的な決済システムであるSWIFTや、世界で最も重要な証券保管機関であるユーロクリア(Euroclear)など、グローバルな金融インフラへのアクセスを支配している。

西側諸国の金融支配が制裁を強力なものにしている。ドルやSWIFTへのアクセスを失うことは、ほとんどの銀行や企業にとって事実上の死刑宣告である。2012年に西側諸国がイランのSWIFTへのアクセスを遮断する決定を下した後、北京はその結果を目撃した。

金融制裁に対抗するための先制攻撃として、中国は3つの戦略を展開している。

第一に、人民元による国境を越えた決済の整備を進めている。世界貿易におけるドルとユーロの優位性を考えれば、その道のりは険しい。しかし、中国の脱ドル化計画(China’s de-dollarization plans)は進展している。人民元で決済される世界的な決済の割合は、2023年にはほぼ倍増し、約4%にまで達した。重要なのは、中国の対外貿易の3分の1が人民元建てになっていることで、中国企業は西側諸国の制裁からある程度身を守ることができる。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、そして最近加わった5カ国からなるBRICS圏の通貨の可能性が取り沙汰されているが、人民元がロシアと中国の貿易で最も使用されている通貨になったように、北京もBRICS諸国間の貿易で人民元が選択される通貨になることを望んでいる。

SWIFTに代わる中国の決済システムCIPSthe Cross-Border Interbank Payment System)は、北京の金融リスク軽減の2つ目の礎石となる。2015年に開始されたこの決済ネットワークは、SWIFTよりもはるかに規模が小さい。しかし、SWIFTは世界中のほとんどの銀行を接続している中で、SWIFTが中国の銀行を切断した場合のバックアップとなるだろう。最後に、中国はアラブ首長国連邦やタイなどともデジタル通貨を使った国境を越えた取引を試験的に行っている。中国のデジタル通貨がグローバルになる道のりはまだまだ遠い。しかし、優位性は重要ではないかもしれない。中国の目標は、保護手段として代替金融チャネルを持つことであり、そのためには運用が可能であることが必要なだけなのだ。

中国のリスク回避戦略の3つ目のそして最後の柱は、貿易および中国の投資先としての非友好国への依存を減らすことを伴う。その論拠は、2014年にプーティン大統領がロシアの食糧安全保障を懸念したときの論拠と似ている。紛争、感染症拡大、地政学的な緊張によって経済関係が阻害されたり、サプライチェインが混乱したりする可能性があるため、中国政府は貿易の流れをどこかの国に過度に依存することが弱点だと見なしている。中国のような輸出指向の経済にとって、重要な原材料の輸入や主要な輸出先として特定の国に過度に依存することは致命的となる可能性がある。

中国の貿易におけるリスク回避の努力は、ハイテクや金融のそれよりも最近のもので、2018年の最初の米中貿易戦争が起きた際に始まった。しかし、中国の税関が発表した最新の統計を見てみると、中国は最近、一見非友好的に見える西側諸国との関係を分散させるための明確な努力をもって、貿易のリスク回避を加速させている。

2023年の最初の11か月間で、中国のアメリカへの輸出は2022年の同時期と比較して8.5%減少し、ヨーロッパ連合(EU)への輸出は5.8%減少した。一方、インド、ロシア、タイ、ラテンアメリカ、アフリカを含むほとんどの新興市場への中国の輸出は増加した。西側経済への貿易依存度を減らす中国の努力は功を奏しており、2023年には東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟諸国向けの輸出が、アメリカやEUを抑え、中国の最大の輸出先となった。

中国のリスク回避努力は投資分野にも及んでいる。アメリカン・エンタープライズ研究所のデータによると、2014年までの10年間、G7諸国とオーストラリア、ニュージーランドは、「一帯一路」構想の資金を除いた中国の対外投資フローの半分近くを吸収していた。2022年までに、この割合はわずか15%にまで低下し、インドネシア、サウジアラビア、ブラジルなどの新興諸国が中国からの直接投資の最大の流入を引き寄せている。

中国の他の取り組みと同様、新興国市場への投資促進も、西側諸国のリスク回避策が発明される以前から行われていた。この変化は2017年のデータで顕著になったが、投資プロジェクトは通常、実現までに数年かかるため、開始はもっと早かったと考えられる。

これらのことから、中国のリスク回避の動きは、アメリカやヨーロッパの取り組みよりもはるかに古く、広範囲に及んでいることが分かる。しかし、中国自身のリスク回避戦略に関する議論は、西側諸国の議論の中ではかなり少ない。

これは重大な欠陥である。北京から見ると、中国への依存を減らそうとする西側諸国の圧力は、アメリカの最先端技術への依存から技術的自給自足の優先、西側の銀行チャネルよりも自国の金融インフラへの依存、西側経済よりも新興市場の優先という、中国の長年確立された計画を加速させるもう1つの理由となる。北京の長期にわたる組織的なアメリカやヨーロッパからの離脱は、中国の経済政策の顕著な特徴であり、それは大きな影響を持つ。

リスク回避は双方向である。協力と平和を導く、経済的相互依存(economic interdependence)という考えは、ロシアのウクライナ侵攻で崩れ去ったと主張する人々もいるが、経済的結びつきはアメリカとヨーロッパに対して、北京への大きな影響力を与えている。しかし、現在進行中の中国と西側諸国との関係を断ち切るプロセスは、西側諸国の制裁脅威の抑止効果を弱めることは避けられず、世界、特に台湾海峡をより危険なものとするだろう。

これはまさに中国の戦略であり、そもそも中国が自給自足を目指す基底には、台湾併合という野望がある。アメリカやヨーロッパがリスク回避を発明したのではなく、中国が発明したのである。そして中国は、この分野で最も熟練した実践者のようである。

※アガーテ・デマライス:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ヨーロッパ外交評議会上級政策研究員。著書に『逆噴射:アメリカの利益に反する制裁はいかにして世界を再構築するか』がある。ツイッターアカウント:@AgatheDemarais
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行いたしました。前半はアメリカ政治、後半は世界政治の分析となっています。2024年にアメリカはどうなるか、世界はどうなるかを考える際の手引きになります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 今回は地政学の大きな流れをまとめた優れた論稿をご紹介する。著者のハル・ブランズはジョンズ・ホプキンズ大学教授で、『フォーリン・ポリシー』誌や『フォーリン・アフェアーズ』誌に多くの論稿を発表し、著書『デンジャー・ゾーン 迫る中国との衝突』(飛鳥新社)もある。ハルフォード・マッキンダー、アルフレッド・セイヤー・マハン、ニコラス・スパイクマン、カール・ハウスホーファーといった、地政学の大立者の思想を簡潔にまとめている。また、現代にまで引き付けて、分析を加えている。

 地政学の有名な理論としては、「ランドパワー・シーパワー」「ハートランド・リムランド」「生存権(レーベンスラウム)」といったものがあるが、簡潔に述べるならば、「イギリス、後にはアメリカが、世界を支配するためには、ユーラシア大陸から有力な挑戦者が出てこないようにする」ということである。地政学がドイツに渡れば、「ドイツが生き残るためには拡大していかねばならない」ということになった。
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 現在に引き付けて考えてみると、「ロシアと中国を抑え込むために、アメリカは、ヨーロッパ(とイギリス)、日本を使う」ということであり、「インド太平洋」という概念を用いるということになる。これは逆を返して考えれば「ユーラシアでロシアと中国が団結して強固な結びつきで一大勢力となって、アメリカやイギリス、日本を“辺境化”する」ということになる。今、私たちは世界の中心がアメリカやイギリスであると考えるが、ユーラシアに世界の中心が移れば、アメリカもイギリスも世界の外れということになる。世界は大きな構造変化を起こしつつある。これからはユーラシア大陸の時代ということになるだろう。

 世界を大きく、俯瞰で見るために地政学は有効である。地政学的な素養は学者だけではなく、多くの人々にとっても必要である。現在の世界を説明するために、そして、新たな状況の出現を予測したり、考えたりすることは有意義なことだ。そして、新たな時代には新が地政学の思想が出てくることだろう。それが今から楽しみだ。

(貼り付けはじめ)

地政学は期待と危機の両方をもたらす(The Field of Geopolitics Offers Both Promise and Peril

-世界で最も悲惨な学問(science)は、ユーラシア大陸を非自由主義や略奪にとって安全なものにするかもしれないし、そうした力から守るかもしれない。

ハル・ブランズ筆

2023年12月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/12/28/geopolitics-strategy-eurasia-autocracies-democracies-china-russia-us-putin-xi/

アレクサンドル・ドゥーギン(Aleksandr Dugin、1962年-、62歳)はちょっとした狂人だ。このロシアの知識人は2022年、ドゥーギン自身を狙ったと思われる、ウクライナの工作員が仕掛けたモスクワの自動車爆弾テロで、彼の娘が殺害され、西側で大きな話題となった。ドゥーギンが標的にされたのは、ウクライナでの大量虐殺を伴う征服戦争(genocidal war of conquest in Ukraine)を何年も前から堂々と提唱していたからだろう。「殺せ! 殺せ! 殺せ!」。2014年、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領が初めてウクライナに侵攻した後、彼はこう叫んだ。更に、「これは教授としての私の意見だ」と述べた。娘の葬儀でも、ドゥーギンはメッセージに忠実だった。幼児だった娘の最初の言葉の中に、「私たちの帝国(our empire)」という言葉があったと彼は主張した。

本当かどうかは別として、このコメントはプーティン大統領の外交政策を形作る熱狂的なナショナリズムを知る窓となった。それはまた、よく誤解されている伝統である、地政学(geopolitics)への窓でもある。単に力の政治(power politics)の同義語として使われることも多い地政学は、実際には19世紀後半から20世紀初頭にかけて現れた、国際関係に対する独特の知的アプローチであり、その洞察(insights)と倒錯(perversions)が現代を深く形作ってきた。

ドゥーギンは1990年代、アメリカに対抗するためにユーラシア帝国を再建することで、落ちぶれた(down-and-out)ロシアがその偉大さを取り戻すことができると主張し、一躍有名になった。これは、1904年にイギリスの地理学者ハルフォード・マッキンダー(Halford John Mackinder、1861-1947年、86歳で没)が提唱した「これからの時代はユーラシアに依拠する侵略者とオフショアのバランサーとの衝突(clashes between Eurasian aggressors and offshore balancers)によって定義される」という論文の奇妙な世界への応用であった。マッキンダーの論文は、地政学という学問分野の確立に貢献した。ドゥーギンの暴言やプーティンの犯罪が示すように、地政学は今日でも知識人や指導者に影響を与えている。

地政学は、地理学が、テクノロジーと相互作用するかを研究する学問であり、グローバルパワーをめぐる絶え間ない争いに関して研究する学問である。地政学が注目されるようになったのは、ユーラシア大陸という中心的な舞台を支配することで、現代世界を支配しようとする巨人同士の衝突の時代が始まってからだ。そして、冷戦後の時代に地政学が時代遅れのものに思えたとしても、酷い戦略的対立関係が再登場している今、その重要性は急劇に高まっている。しかし、20世紀の歴史と現代の戦略的要請を理解するには、地政学の伝統は1つではなく、2つあることを理解する必要がある。

マッキンダーと彼の知的継承者たちに代表される、地政学の民主的な伝統が存在する。これは恐ろしいが悪とは​​言い難い。それは、猛烈な無政府状態の世界で自由主義社会がどのように繁栄できるかを理解することを目的としているからだ。そして、ドゥーギンに象徴される独裁的な地政学学派があり、それはしばしば純粋かつ単純な毒である。この独裁学派地政学はプーティン大統領と中国の習近平国家主席の政策によく表れている。民主諸国家の政策立案者たちが新たな時代を形作るには、自らの地政学の伝統を再発見する必要がある。

経済学が陰鬱な学問だとすると、地政学はそれほど明るい科学ではない。地政学は1890年代から1900年代にかけて出現した。この時代は、帝国間の競争が激化し、交通と通信の革命により世界が1つの戦場となり、戦略家たちが危険で相互につながりのある世界で生き残るための絶対条件を見極めようとしていた時代だった。地政学の研究は常に、世界中の自由の運命の中心となりつつある超大陸であるユーラシアに特別な焦点を当ててきた。

マッキンダーが論文「歴史の地理的軸(The Geographical Pivot of History)」で説明しているように、テクノロジーはユーラシア大陸の地理を紛争の温室(hothouse of conflict)にしてきた。鉄道の普及は軍隊の移動時間を大幅に短縮し、野心的な国家、特に急速に近代化する独裁国家が陸地の端から端まで覇権を求める時代を予見していた。それらの国家が資源豊富な超大陸を征服した後は、比類なき海軍の建設に目を向けることになる。

マッキンダーの厳しい予測は、大陸の諸大国がユーラシア大陸を支配することを目指し、やがて世界を支配するというものだった。マッキンダーは、やがてロシアが世界を支配すると懸念していた。マッキンダーの言う、リベラルな超大国は、ユーラシア大陸の分断を維持することで、この世界的専制主義(global despotism)を阻止しなければならない。マッキンダーにとって、そのリベラルな超大国はイギリスだった。イギリスは、陸と海で覇権を狙う国々をけん制しながら、その周辺では、危険に晒されている「橋頭堡(bridge heads)」を保持しなければならないとマッキンダーは考えた。

アルフレッド・セイヤー・マハン(Alfred Thayer Mahan、1840-1914年、74歳で没)は、アメリカに出現したマッキンダーの分身のような存在であった。シーパワー(sea power)の伝道師であるマハンは、中米地峡に運河を建設し、戦艦軍団を編成し、難攻不落の海洋強国を築き上げるようアメリカに働きかけ、知的キャリアを積んだ。しかし、マッキンダーのように、マハンも超大陸を神経質に見つめていた。彼は次のように見ていた。蒸気の時代(age of steam)には、ユーラシア大陸の統合は海を隔てた国々を脅かすかもしれない。もしかしたら、ロシア皇帝が中東や南アジアを突破して、より温暖な海域とより広い地平線を目指すかもしれない。あるいは、日本やドイツが自国内の支配を確立した後、海を越えてさらに遠くを見据えるかもしれない。

マッキンダーが卓越した陸の力が卓越した海の力につながると考えたとすると、マハンはユーラシア大陸内の危険をコントロールするには、その周辺の海域を支配する必要があると考えた。そこでマハンは、米英の海洋同盟(maritime alliance between the United States and Britain)に狙いを定め、2つの海洋民主政治体制国家が海を取り締まり、それぞれの自由の伝統にふさわしい世界システムを維持することを目指した。マハンは1897年、「英語を話す民族の心情の統一(unity of heart among the English-speaking races)」こそが、「この先の疑わしい時代における人類の最良の希望となる(lies the best hope of humanity in the doubtful days ahead)」と書いている。

地政学の闘技場で重要な3人目の人物は、第二次世界大戦の世界的混乱の中で頭角を現したオランダ系アメリカ人の戦略家であるニコラス・スパイクマン(Nicholas J. Spykman、1893-1943年、49歳で没)だ。スパイクマンはマッキンダーの主張や考えを次のように改造した。最も鋭い挑戦は、荒涼としたロシアの「ハートランド(heartland)」ではなく、ユーラシア大陸に深く切り込みながら、隣接する海を越えて攻撃することができるダイナミックで工業化された、「リムランド(rimland)」の国々、すなわちドイツと日本だ。鉄道がマッキンダーを魅了し、戦艦がマハンを夢中にさせたとすれば、スパイクマンを悩ませたのは爆撃機(bomber)であった。ひとたび全体主義国家がヨーロッパとアジアを制圧すれば、彼らの長距離航空戦力(long-range airpower)が新世界(西半球)の海洋進入路を支配し、その一方で封鎖と政治戦争がアメリカを弱体化させ、殺戮に向かうとスパイクマンは考えた。ユーラシア大陸内のパワーバランスを冷酷に調整することによってのみ、ワシントンは致命的となりかねない孤立を避けることができると主張した。

現在、これらの思想家たちを分析することは憂鬱であり、逆行的でさえある。マハンは誇らしげに自らを「帝国主義者(imperialist)」と呼び、マッキンダーは中国に「黄禍(yellow peril)」のレッテルを貼った。地政学が拠り所とする二重の決定論(dual determinism)、すなわち地理が世界の相互作用を強力に形成し、世界は過酷で容赦のない場所であるということを、全員が受け入れていた。スパイクマンは1942年に「国家が生き残れるのは、絶えずパワーポリティックスに献身することによってのみである」と書いている。

それは正しくなかった。マッキンダー、マハン、そしてスパイクマンは、新しいテクノロジーと、より凶暴な暴政の夜明けによって、より恐ろしくなった世界規模での対立の時代を乗り切ろうとしていた。マハンが言うところの「個人の自由と権利(the freedom and rights of the individual)」を尊重する民主的な社会が、「個人の国家への従属(the subordination of the individual to the state)」を実践する社会からの挑戦を生き残ることができるかどうか、3人とも最終的にはそれを懸念していた。つまり3人とも、どのような戦略、マッキンダーの言葉を借りれば「権力の組み合わせ(combinations of power)」が、許容可能な世界秩序を支え、ユーラシア大陸の統合が新たな暗黒時代の到来を告げるのを防ぐことができるかを見極めようとしていた。

この民主学派地政学(democratic school of geopolitics)は、非自由主義的な諸大国によって運営される超大陸を、避けるべき悪夢とみなした。権威主義学派地政学(authoritarian school)は、それを実現すべき夢と考えた。

自由主義の伝統に彩られた地政学が英米の創造物であるとすれば、より厳しく独裁的な倫理観を持つ地政学はヨーロッパ大陸で生まれたものだ。後者の伝統は、19世紀後半にスウェーデンの学者ルドルフ・チェーレン(Rudolf Kjellen、1864-1922年、58歳で没)とドイツの地理学者フリードリヒ・ラッツェル(Friedrich Ratzel、1844-1904年、59歳で没)が始まりである。これらの思想家たちは、ヨーロッパの窮屈で熾烈な地理学の産物であり、当時の最も有害なアイデアのいくつかを生み出した。

チェーレンとラッツェルは社会ダーウィニズム(social Darwinism)の影響を受けていた。彼らは、国家を拡大しなければ滅びる生命体とみなし、国民性を人種的な用語で定義した。彼らの一派は、1901年にラッツェルが作り出した「生存圏(Lebensraum)」、生活空間(living space)の探求を優先した。この伝統は、大陸の征服と開拓に成功したアメリカからインスピレーションを得ることもあったが、帝国ドイツのように、拡張主義的なヴィジョンと非自由主義的、軍国主義的な価値観が両立していた国々で最も開花した。そしてその後の数十年の歴史が示すように、この反動的でゼロサムの傾向を持つ地政学は、前例のない侵略と残虐行為の青写真(blueprint)となった。

このアプローチの典型は、カール・ハウスホーファー(Karl Haushofer、1869-1946年、76歳で没)である。彼は第一次世界大戦時には砲兵司令官を務め、1918年の敗戦後、ドイツ復活(German resurrection)の大義を掲げた。ハウスホーファーにとって、地政学は拡大と同義だった。第一次世界大戦後、ドイツは連合国によって切り刻まれた。ドイツが取るべき唯一の対応は、「現在の生活空間の狭さから世界の自由へと爆発することだ(out of the narrowness of her present living space into the freedom of the world)」と彼は書いている。ドイツは、ヨーロッパとアフリカにまたがる資源豊富な自国の帝国を主張しなければならない。抑圧され、持たざる国、すなわち日本とソヴィエト連邦が、ユーラシア大陸と太平洋の他の地域でも同様のことをすると、彼は信じていた。

ハウストホーファーが「汎地域(pan-regions)」と呼ぶものを統合することによってのみ、修正主義諸国は敵に打ち勝つことができた。また、協力することによってのみ、敵、すなわちイギリスによる分割統治(divide-and-conquer)を阻止することができた。この地政学の目標は、独裁的な軸によって支配されるユーラシアであった。マッキンダーが警告していたことを、ハウシュホーファーは彼の著作から惜しみなく借用し、実現する決意を固めた。

騒乱や殺人なしにこれが達成できるという気取りはなかった。ハウスホーファーは「世界は、政治的な整理整頓(political clearing up)、権力の再分配を必要としていた。小国はもはや存在する権利がない」と書いている。ハウストホーファーは、1930年代後半から1940年代初頭にかけてドイツが行った「生存圏」の獲得という殺人行為を支持することになった。

ハウスホーファーは、アドルフ・ヒトラーが1920年代に収監されている間、アドルフ・ヒトラーの相談役を務めていた。ヨーロッパのライヴァルを排除することの重要性、東方における資源と空間の必要性など、ヒトラーの『我が闘争(Mein Kampf)』の中心的主張は、純粋なハウスホーファーの主張であったと歴史家のホルガー・ヘルヴィッヒは書いた。ヒトラーが英米のシーパワーへの回答として提唱した広大なユーラシア陸軍帝国も、同様にハウスホーファーの思想に影響を受けたものだった。歴史上最も大胆な土地強奪は、ヒトラーの誇大妄想(megalomania)、病的な人種差別主義、権力への壮大な渇望に起因する。それはまた、悪の地政学(geopolitics of evil)に支えられていた。

国家と国家の衝突は思想の衝突である。20世紀を解釈する1つの方法は、民主学派地政学が独裁主義的な地政学を打ち負かしたということである。

第一次世界大戦、第二次世界大戦、そして冷戦において、根本的に修正主義的な諸国家(radically revisionist states)は、ハウストホーファーの脚本をそのまま実行に移した。ドイツ、日本、ソヴィエト連邦はユーラシア大陸の広大な土地を占領し、近隣の海と争った。支配地域は、時には殺人的な残虐性をもって統治された。しかし、リベラルな超大国が指揮を執り、民主国家が持つ最高の地政学的洞察に導かれた世界連合によって、彼らは最終的に敗北した。

マッキンダーによれば、これらのオフショア(ユーラシア大陸から離れた)諸大国(offshore powers)は、ユーラシア大陸の捕食者たちが超大陸を蹂躙し、彼らの注意が完全に海洋に向くのを防ぐために、陸上に同盟諸国を育成した。マハンが予見したように、米英は大西洋を支配し、ワシントンの圧倒的なパワーを発揮させるために同盟を結んだ。そして、スパイクマンが推奨したように、アメリカは大西洋と太平洋にまたがる同盟関係を構築し、かつての同盟国であったソ連を封じ込めるために、日本とドイツという改心した敵を利用することで、ユーラシア大陸の分断を維持することに最終的に関与することになる。

実際、こうした闘いでは道徳的な妥協が繰り返された。西側民主政体諸国は、第二次世界大戦ではソ連の指導者ヨシフ・スターリンと、冷戦後期では中国の指導者毛沢東と悪魔の取引(devil’s bargains)をした。彼らは、封鎖、爆撃、クーデター、秘密介入といった戦術を用いたが、それはより高い善への貢献によってのみ正当化できるものだった。スパイクマンは、「全ての文明的生活は、最終的にはパワーにかかっている。と書いている。民主政体諸国は、世界最悪の侵略者が最も重要な地域を支配するのを防ぐために、冷酷にパワーを行使した。

1991年のソヴィエト連邦の戦略的敗北と解体によって頂点に達したこれらの勝利の報酬は、繁栄する自由主義秩序と、グローバル化と民主化によって地政学が時代遅れになったという感覚であった。しかし残念なことに、世界は今、独裁的な挑戦者たちが古い地政学的思想を武器とする、新たな対立の時代に突入している。

プーティンの新帝国主義プログラム(neoimperial program)について考えてみよう。1990年代から、ドゥーギンは、ロシアは覇権主義的な「大西洋主義者」連合(“Atlanticist” coalition)によって存在を脅かされていると主張し、ロシアの安全保障エリートたちの間でその名を知られるようになった。ハウホーファーと同様、ドゥーギンはマッキンダーを逆転させることで活路を見出した。ドゥーギンは2012年に、モスクワにとっての最良の戦略は「私たち自身の手でロシアのために偉大な大陸ユーラシアの未来を作ることだ(great-continental Eurasian future for Russia with our own hands)」と書いている。旧ソ連の諸共和国を取り戻し、不満を抱く他の国々と結びつきを強めることで、ロシアはユーラシア修正主義者のブロック(bloc of Eurasian revisionists)を構築することができる。「ロシアの核心地域(The heartland of Russia)」は「新たな反ブルジョア、反米革命の舞台(“staging area of a new anti-bourgeois, anti-American revolution)」だとドゥーギンは1997年に書いた。西側諸国ではプーティンとドゥーギンの結びつきはしばしば誇張されてきたが、後者の著作は前者が何をしたかを知る上で悪くない指針となる。

プーティンのロシアは、その支配から逃れようとした近隣諸国(グルジアとウクライナ)の領土を分割し、一方で毒殺、戦略的腐敗、その他の戦術を駆使して他のポスト・ソヴィエト諸国を従属させ、隷属させてきた。西側諸国の政治的不安定を煽り(これもドゥーギンが提唱した共同体を崩壊させる戦術である)、その一方で、プーティンの言葉を借りれば、「現代世界の両極の1つ(one of the poles of the modern world)」として機能しうるユーラシアの制度を構築しようとしている。その一方で、プーティンはユーラシアを独裁的で反米的な大国の要塞とすることを目指して、中国やイランと擬似的な同盟関係を結んでいる。プーティンはまたもやドゥーギンの言葉を引用し、ロシアは「リスボンからウラジオストクまで」広がる「共通地帯(common zone)」を作らなければならないと述べている。プーティンはまた「ユーラシア超大陸は、ロシアが守るべき“伝統的価値”の避難所(a haven for the “traditional values”)であり、ロシアが利用すべき“大いなる機会”の源泉(a source of “tremendous opportunities”)である」と述べた。

2022年2月のロシアのウクライナ侵攻は、広々としたユーラシア大陸の中心地とダイナミックなヨーロッパ大陸の縁を結ぶウクライナを征服することで、この計画を加速させることを意図していた。ここでプーティンは、ドゥーギンが規定した血なまぐさい倫理観をもって、ロシアの「偉大な大陸ユーラシアの未来(great-continental Eurasian future)」を追求した。拷問、強姦、殺人、去勢、大量拉致、ウクライナの民族的アイデンティティを抹殺する組織的な努力は、専制的な政権の残虐性を帯びたユーラシア拡張の地政学の再来を示している。

中国の国家運営もまた、おなじみの弧を描いている。第二次世界大戦以来最大の海軍増強を行うことで、北京は台湾を奪取し、スパイクマンが西太平洋の「限界海域(marginal seas)」と呼ぶ重要な海域を支配する力を身につけようとしている。この目標を達成すれば、中国はユーラシア大陸で最も活気のある地域の覇者となる。また、世界中に基地を持つブルーウォーター・ネイヴィー(外洋海軍)への投資を自由に行うことで、習近平の言葉を借りれば「海洋大国(great maritime power)」となる。マハンが生きていれば、きっとこの中国の動きに注目していたことだろう。

マッキンダーの思想を応用した考えが中国の戦略にも反映されている。習近平の「一帯一路(the Belt and Road)」構想は、それに続くいくつかのプログラムと同様、東南アジアから南ヨーロッパ、そしてそれより遠方の国々を、経済的、技術的、外交的、そしておそらくは軍事的な影響力で包み込むことを意図している。これがうまくいけば、中国は中国中心の超大陸の周縁部(periphery of a Sino-centric supercontinent)にしがみつこうとしているヨーロッパに対して、圧倒的な地位を占めることになり、おそらくは北京が管理するシステムの中で、アメリカを二流の地位に追いやることさえできるだろう。学者ダニエル・S・マーキーは著書『中国の西方水平線』の中で、「ユーラシア大陸の資源、市場、港湾へのアクセスは、中国を東アジアの大国から世界の超大国へと変貌させる可能性がある」と書いている。習近平の中国は、人民解放軍の劉亜州上将が2004年に提言したように、「世界の中心を掌握する(seize for the center of the world)」ことを決意した。

しかし、中国の国家運営がマハンとマッキンダーの見識を採用しているとすれば、その意味するところは独裁的な伝統に沿ったものということになる。中国の外交官たつは、台湾が中国と統一された後に台湾の住民を「再教育(reeducate)」することを約束しているが、この脅しは20世紀最悪の犯罪の記憶を呼び起こさせる。中国が支配するユーラシア大陸は、ハウスホーファーが誇りに思うような権威主義的な汎地域となるだろう。北京とモスクワは、時には上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization)を通じて協力し、中央アジアにおける潜在的なカラー革命(color revolutions)を阻止し、国境を越えて逃亡する反体制派を追い詰めてきた。その一方で、専制政治の近代化は北京の積極的な援助によって続けられている。「中国のデジタル・シルクロード(China’s Digital Silk Road)」は、最先端の監視装置を装備することで、非自由主義的な政府を強化している。

膨張と抑圧がどのように相互作用しているかを示す最も明確な例は、中国国内において見られる。習近平政権は新疆ウイグル自治区を、ウイグル族を強制収容所に押し込め、容赦ないデジタル弾圧を実施することで、人道上のホラーショーと化している。北京は「独裁の器官(organs of dictatorship)」を駆使し、「絶対に容赦しない(absolutely no mercy)」と習近平は2014年に指示した。この政策の根拠は地政学にある。新疆ウイグル自治区は、中国のユーラシア大陸への重要な輸送ルートの上に位置しているため、「新疆ウイグル自治区は特別な戦略的意義を持つ(Xinjiang work possesses a position of special strategic significance)」と習近平は述べている。それは、中国の力によって残虐行為が拡散することを予感させるものだ。

ハウホーファーの後継者たちは、非自由主義と略奪にとって安全なユーラシアを求めている。民主世界はその試練に応えるため、自らの地政学的系譜を復活させる必要がある。

ワシントンは今、マハンが夢見たような艦隊のような戦艦を必要としているわけではない。

技術革新は、その本質ではないにせよ、ライヴァル関係のリズムを変化させる。今日の競争は、新しい能力と新しい戦争領域を特徴としており、かつてないほど長距離の敵を攻撃することが容易になっている。しかし、いくつかの現実は変わらない。グローバル秩序を安定させるには、その中心にある悪意ある覇権主義(hegemony)を回避する必要がある。民主学派地政学は、このように常に変化しながらも、私たちが考えているほど斬新ではない世界をナビゲートするための心象地図(mental map)と一連の原則を提供している。

第一に、地政学とリベラルな価値観は相反するものではない。後者を守るには前者をマスターすることが不可欠だ。自由主義世界は理性、道徳、進歩を称賛するが、地政学的伝統は闘争と争いを強調する。しかし、西側の自由主義秩序の前提条件は、二度の世界大戦と冷戦において、自由の最も恐ろしい敵を打ち砕くか封じ込める力の組み合わせを生み出すことであった。世界が、ほんの数年前に出現した、破滅的な戦争や独裁的な優勢から安全ではなくなっていることを考えると、リベラルな価値観の隆盛には、パワーポリティックスにおいて地政学をスムーズに応用できる能力を国家が持つことが再び必要となるだろう。

地政学を学ぶ者なら、2つ目の洞察も理解できるだろう。スパイクマンは、ユーラシア大陸が枢軸諸国(the Axis)に制圧されそうになっていた1940年代初頭に、彼の代表的な著作を執筆した。リベラル勢力がどん底状態に陥ったことが、ユーラシア大陸の均衡が新たに崩れないようにすることで、次の戦争を防ぐ戦略を求めるスパイクマンの主張につながった。

スパイクマンが着想した戦略の歴史的成果のおかげで、西側諸国は、プーティンがウクライナに強硬に攻撃しないように、重要な援助を提供することで、東ヨーロッパの奥深くでロシアと均衡を保つことができるようになった。ワシントンとその同盟諸国は、中部太平洋ではなく台湾海峡で北京の力を牽制することができる。このような立場を維持するための軍事的・外交的要求は重いが、修正主義者たちが勢いづいた後に、より弱い立場からバランスを取ることに比べれば、その要求が少ないことは確かである。

ポジションを維持するためには、第3の原則を守る必要がある。それは、地政学とは同盟政治(alliance politics)であり、ユーラシア大陸の覇権をめぐる戦いは、同盟の構築と破棄の競争ということだ。スパイクマン、マッキンダー、マハンが把握していたように、海外の大国は、たとえ超大国であっても、最前線の同盟国の助けがあって初めてユーラシア大陸の情勢を調整することができる。逆に、覇権国家を目指す国は、海外からの支援を阻止し、隣国を孤立させることによってのみ、隣国を制圧することができる。

したがって、ユーラシア大陸のバランスは、アメリカが旧世界の周辺地域に介入するために必要な主権的、軍事的優位性を維持できるかどうかにかかっている。しかし、たとえ強制、賄賂、選挙妨害、その他の介入戦術を用いる敵対者に対して、遠く離れた大陸にアクセスし、影響力を与え、追加の能力を与える同盟と安全保障ネットワークをワシントンが適応させて強化すればそれは問題ではない。それらの同盟は全く別のもとして考える必要がある。

マッキンダーが思い起こさせるように、パートナーのタイプや場所も重要である。中国との戦いは主に海洋問題である。しかし、これは4つ目の教訓であるが、ランドパワーとシーパワーは、たとえその相対的なメリットが際限なく議論されるとしても、互いに補完し合うものである。ワシントンが太平洋で孤立無援の敵に直面することを望むならば、ヴェトナムや特にインドなど、中国の脆弱な陸上国境に沿ってディレンマを生み出すような友好諸国の存在が必要になる。

ヴェトナムもインドも理想的なパートナーではないが、これは第5の原則を強調している。アメリカにとって戦略とは、民主的な団結と卑劣な妥協を融合させる技術である(art of blending democratic solidarity with sordid compromises)。ユーラシア大陸の大西洋と太平洋の縁に広がる自由民主諸国は、ワシントンの連合の中核である。しかし、バランスを維持するには、常に非自由主義的なアクターたちと非自由主義的な行為が関与してきた。

この世代の修正主義者たちを封じ込めるには、シンガポールからサウジアラビア、トルコに至るまで、友好的な、あるいは単に二律背反的な権威主義者の弧に対峙する必要がある。ライヴァル関係の激化によって、ワシントンが秘密裏の謀略、経済的妨害工作、代理戦争に手を染めることになっても、ショックを受ける必要はない。覇権をめぐる争いは、比較的立派な民主国家に醜いことをさせるものである。

しかし、第6の教訓を忘れてはならない。ユーラシアの争いは一次元的なものでも、単地域的なものでもない。マハン、マッキンダー、そしてスパイクマンはみな、ユーラシア大陸を巨大で相互に結びついた舞台と見なしていた。最近では、アメリカにとって本当に重要なのは台湾だけであり、軍事力だけが真に重要なパワーの一種であるという、より還元主義的な見方(reductionist view)をする分析者たちもいる。西太平洋で中国に敗戦した場合の結果は、確かに画期的なものとなるだろう。しかし、自由世界が直面している問題はそれだけではない。

今日のウクライナにおける仮定の話ではない戦争の結果は、バルト海から中央アジアまでの戦略的バランスを形成し、ユーラシアの独裁国家とそれに対抗する自由民主政体国家との間の優位のバランスを形成する。だからこそ、ウクライナを切り離せという声は、ワシントンの最も脆弱な西太平洋の同盟諸国からはほとんど聞こえてこないのだ。

更に言えば、マッキンダーが1904年の論文で書いたように、中国は対外的にも対内的にも拡大することができる。ユーラシア大陸に進出すれば、「偉大な大陸の資源に海洋の出入り口を加える(add an oceanic frontage to the resources of the great continent)」ことができる。また、スパイクマンが付け加えるように、政治戦争(貿易、技術、その他の非軍事的手段の利用)は、戦争そのものと同様に敵を軟化させることができる。つまり、これらの思想家たちは、北京の経済的・技術的影響力を封じ込めることは、その軍事力を牽制するのと同じくらい重要であり、ワシントンがユーラシア大陸の一部分に焦点を当て、他の地域を排除するような単純なことはできないということを理解している。

その多くは、将来に対する厳しい見通しを示している。しかし、民主学派地政学が冷徹なパワーに関する計算の専門知識を必要とするのであれば、それだけに限定することはできない。最後の洞察は、世界的な危機は創造の機会であるということだ。

20世紀において、ユーラシア大陸における挑戦諸国の活動は、世界の民主国家に前例のない協力を呼び起こした。ユーラシアの挑戦諸国の活動は、世界の民主国家にかつてない協調を呼び起こし、侵略の計画を退けるとともに、世界の多くの地域にかつてない繁栄と幸福をもたらした自由主義秩序の基礎を築いた。現在の対立関係の中で成功する連合とは、20世紀の時と同様に、地球規模のグループが、かつてないほど軍事的、経済的、技術的、外交的に団結して、この時代の最も差し迫った課題に対処するものである。マッキンダーは、「反感を買う個性(A repellent personality)」には「敵を団結させる(uniting his enemies)」という美点があると書いた。民主学派地政学の目標は、今日また新たな時代の創造を可能にする安全保障を提供することであるべきだ。

ハル・ブランズ:ジョンズ・ホプキンズ大学ポール・H・ニッツェ記念高等国際関係大学院(SAIS)ヘンリー・A・キッシンジャー記念特別教授、アメリカン・エンタープライズ研究所上級研究員。ツイッターアカウント:@HalBrands
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