古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:日本

 古村治彦です。

 11月下旬となるとスポーツの話題としてプロ野球選手の契約更改が良く取り上げられる。ストーブリーグとも呼ばれ、活躍した選手は大幅アップ、そうでもなかった選手は減俸となり、中には減俸額を抑えようと何度も交渉をするような選手も出てくる。プロ野球選手が活躍すれば年俸は大幅アップとなる。新聞紙上には倍増だ、3倍だ、4倍だ、という言葉が躍るし、昔イチロー選手が彗星のように登場した時には10倍ということもあった。何とも景気が良い話だ。

 アメリカのトランプ政権が日本政府に対して、日本に駐留する米軍に対する費用(host nation’s support、ホスト・ネイションズ・サポートと言う)を4倍にしろ、現在の約2200億円(年間)を約8800億円にしろと要求しているという報道が出た。プロ野球選手の年俸ではあるまいし、国家予算に関わることで気軽に4倍などという数字を言い出すトランプ政権には驚くばかりだ。

 もっともこれはトランプ流の交渉術なのだろう。高く吹っ掛けておいてそれから金額を下げていく。2倍で合意できれば御の字というところだろう。それ以上で合意できれば儲けもの、4倍を日本側が呑んだら、「あいつらはバカだ」と言って大喜びだろう(トランプは酒もたばこもやらないのでシャンパンで乾杯、とはいかないだろうが)。

 ちなみにホスト・ネイションズ・サポートを「受け入れ国からの支援」ではなく、「思いやり予算」と訳したのは金丸信だ。金丸は、ワーテルローの戦いでナポレオンを破った、初代ウェリントン公爵アーサー・ウェルズリーの言葉「偉大なる将軍はただ良いだけではなく、兵士の靴のことまで思いやるものだ」から思いやり予算という言葉を思いついたという話が残っている。日本はウェリントン公爵の立場ではなく、思いやられる方の兵士の立場だと思うが、それを目くらましするための金丸流の言葉遊びと実態隠しの表現が「思いやり予算」だ。実態は米軍が贅沢するためのショバ代、カツアゲ代である。

 日本の防衛予算は対GDP比1%以内を堅持してきた。大体5兆円以内に収まってきたが、第二次安倍政権下では大幅な伸びを示し、5兆円を突破している。GDPが伸びれば防衛予算も伸びるのだが、これから縮小し続ける日本ではGDPも減っていくので、1%以内という数字を堅持すると、防衛予算も減っていかざるを得ない。防衛予算を維持もしくは増加させるには対GDP1%を突破しなければならない。トランプ政権としては日本には、ヨーロッパ先進諸国並みの2%から3%の間にまで増額させたいと考えている。そうなると、アジアの周辺諸国やロシアは日本を警戒するようになる。

 日本の防衛予算と思いやり予算を増額させて、アメリカの軍事産業からの買い付けを増加させて、日本の対米貿易黒字を減らしたいというのがアメリカ政府、そしてトランプ政権の考えだ。日本は防衛装備の9割以上をアメリカら購入している大口の大得意客だ。防衛予算が増額され、思いやり予算が増額となれば、アメリカに貢ぐ金は軽く防衛装備購入と思いやり予算で軽く1兆円を超える規模になるだろう。アメリカ軍にしてみれば死んでも手放したくない夢の国、打ち出の小槌、日本となる。アメリカ軍が外国に駐留して経費の一部でも負担してもらえれば(負担させてやれば)、米軍がアメリカ国内にとどまるよりも安上がりということにもなるようだ。自分の国で養えない軍隊を外国の金で維持するというのは何とも本末転倒であり、ローマ帝国の衰亡でも分かるように、亡国の第一歩と言わざるを得ない。

 韓国も日本と同じく駐留米軍に思いやり予算を支出している。トランプ政権は韓国に対して思いやり予算の5倍増を要求している。米韓は毎年思いやり予算などについて話し合いを持つが、来年度分に関しては交渉が決裂したという報道が出た。韓国政府は何と立派な態度であろうか。米韓同盟は朝鮮戦争で共に共産主義と戦ったということで、対等とまではいかないが、完全に従属的な日米安保体制とは異なるものだ。だから韓国側は言うべきことは言う、という態度に出ることができる。日本側には不可能な態度の取り方だ。

 また、韓国は中国との関係を良好に保つことで、北朝鮮との関係をうまくマネイジメントしている。韓国にとっては北朝鮮に攻撃されないということが重要であるが、その目的のために中国とアメリカをうまく利用している。韓国の経済力は世界トップ10に入るほどのものであり、韓国が北朝鮮から攻撃を受けて経済がダメージを受ければ困るのは米中であり、ロシアということになり、北朝鮮にとっては中露から頭を押さえつけられている格好になる。

 日本は大変守りにくい国だ。昔は海に囲まれており、それが天然の要害ということになったが、戦艦の時代、航空機の時代、ミサイルの時代となっていき、防衛しにくい国になった。防衛予算をいくら増額しても完璧に守り切るということは難しい。それであれば米中韓露の間をうまくマネイジメントして物理的な防衛力に頼らない、経済力と外交力を混合した形で国を守る方策を採らねばならない。

 しかし、にほんがやっていること、やらされていることはアメリカ軍の下請けとなるということだ。アメリカから武器を買わされ、アメリカで訓練を受け、アメリカ軍と共同の司令部を持つ(実態はアメリカ軍の指揮の下に入る)というのは、アメリカ小久保総省が進めるinteroperability(相互運用性)を高めるということであり、2015年の安保法制で自衛隊は世界各地に進出できるようになったことで、アメリカ軍と共に戦うことになる。完全にアメリカ一択の、アメリカの完全な従属国になるという安倍政権の選択は、しかし世界の情勢を見れば何とも馬鹿げた選択だ。リスクヘッジという考え方がゼロなのだ。アメリカと一緒に沈んでいくことを選んでいる。アメリカが沈んでいきつつある証拠は、駐留米軍にかかる経費負担に耐えることができずに、同盟諸国に支払うように求めている態度でも明らかだ。昔は景気が良かったお金持ちが凋落して金をせびって回っているようなものだ。

「沈む船から逃げ出すネズミ」という言葉には肯定的、否定的両方の評価があるが、国際社会で生き抜いていくためには道徳的にはどうであろうと常に逃げ出す準備をしておかねばならない。その準備さえしていないとなると、ネズミ以下の存在ということになる。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領がアメリカ駐屯米軍将兵のための支払いを4倍に増額するように要求(Trump Asks Tokyo to Quadruple Payments for U.S. Troops in Japan

―この動きはトランプ政権のアジア地域の同盟諸国に対して防衛に関して更に予算を割くようにさせようという動きの一環である。韓国に対しても更に支払いをするように求める

ララ・セリグマン、ロビー・グラマー筆

2019年11月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/11/15/trump-asks-tokyo-quadruple-payments-us-troops-japan/

アメリカ政府は北朝鮮政府との非核化交渉を刷新しようとしている中で、ドナルド・トランプ大統領は、北東アジア地域の安定に関して依存してきた長年の同盟国日本政府に対して、日本に駐屯するアメリカ軍にかかるコストを補填するために予算を劇的に増額するように要求している。

トランプ政権は日本政府に対して日本に駐屯する5万人以上の米軍将兵の駐屯にかかるコストを相殺するためにこれまでの4倍を支払うように要求している。この問題について詳しい現役と元のアメリカ政府高官たちは本紙の取材に対して一様に語った。最近まで国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたジョン・ボルトンとこちらも最近まで国家安全保障会議アジア担当部長を務めたマット・ポッティンガーが7月の北東アジア訪問時に日本政府高官たちに予算の4倍増額を要求したとアメリカ政府高官たちは述べている。

アメリカ政府がアメリカ軍の駐屯の継続のためにさらに予算を増額するようにアメリカ政府が求めているのは日本だけではない。他のアジア地域の同盟国にも増額を求めている。アメリカ政府高官たちは、7月の訪問の際に、ボルトンとポッティンガーが同様の要求を韓国に対しても行ったことを認めた。韓国には2万8500名の米軍将兵が駐屯しているが、両者は韓国政府に対して予算の5倍増額を求めた。CNNとロイター通信は以前にもトランプ大統領が韓国政府に対して更なる貢献、予算提供を求めたと報じた。

アジア諸国に対して北東アジア地域の米軍の存在を継続するために必要な予算を出すようにトランプ政権が圧力をかけているが、これはアメリカとアジア地域の同盟諸国との間の緊張を高め、中国や北朝鮮のようなライヴァル陣営にアジア諸国を走らせることになると専門家の中には懸念を表明している人たちもいる。

シンクタンクのヘリテージ財団研究員でCIAの分析官を務めた経験を持つブルース・クリングナーは次のように述べている。「このようなアメリカ政府からの要求は金額が過大過ぎるだけではなく、要求の方法のせいもあり、反米主義を引き起こす可能性が高い。もし同盟関係が弱体化し、抑止力と在留米軍の削減ということになったら、北朝鮮、中国、ロシアにとっての利益となる。これらの国々はこうした状況をアメリカの影響力とアメリカらの同盟諸国への支援の減少につながると考える」。

ある現役の政府高官は更に明確に述べている。「アメリカからの過大な要求は同盟関係の価値を全く分かっていないことが原因であり、ロシアと中国とのいわゆる大国間競争にアメリカが集中するためにこれまでのやり方を変更するというトランプ政権の戦略にとって逆効果になる」。

アメリカ政府が日本政府と韓国政府に圧力をかけているというニュースは、トランプ政権が進めている、同盟諸国に対して圧力をかけて防衛のために更なる予算を支出させる動きの一環である。トランプ大統領は長年にわたりヨーロッパ地域の同盟諸国に対して軍事予算を十分に支出していないとして批判してきた。トランプ大統領の努力は実を結びつつある。来年末までにNATO加盟のヨーロッパ諸国とカナダは2016年に比べて1000億ドル以上も軍事予算を増額することになっている。

現在、トランプ大統領は中国の軍事力増強と北朝鮮からの脅威の中での太平洋地域の情勢に関心を向けていると考えられる。日本と韓国は数万名規模の米軍将兵の駐屯にかかるコストのために数億ドル規模の予算を支出している。両国はそれぞれアメリカとの二国間の特別措置協定に基づいて支出をしている。これらの協定はこれまで5年おきに交渉がもたれ内容が決定されてきた。

アジア太平洋政策担当国防次官補ランドール・シュライヴァーはマーク・エスパー国防長官のアジア地域訪問に先立つ今週、「トランプ大統領が世界各地で強調してきたように、同盟諸国はさらなる負担を進んで負わねばならない。これは韓国にだけ限ったことではない」と発言した。

2021年3月に期限を迎える現在の日本との特別措置協定の下では、日本政府は54000名の米軍将兵の駐屯にかかるコストを相殺するために約20億ドルを支出している。日本駐屯の米軍将兵の約半数は沖縄にある米空軍基地に駐屯している。3名の国防総省高官経験者たちは、期限を迎える前に、トランプ大統領は予算の増額、300%増額となるおよそ80億ドルの支出を要求していると認めた。

トランプ大統領は韓国政府に対しても同様の予算増額を求めている。しかし、韓国政府との交渉期限は日本政府とよりも早くやってくる。昨年、韓国との5年の特別措置協定が期限を迎えた際に、トランプ大統領は韓国政府に対して50%の増額を求めた。これまでの特別措置協定に基づき、韓国政府は駐留する2万8500人にかかる経費を相殺するために年間約10億ドルを支出している。その後の拡大交渉で、米韓両政府は、韓国側が前年よりも8%増額した額を支出するが、毎年支出額について交渉するということで合意に達した。

元国防総省関係者の1人は、今年中に韓国との協定が期限を迎えることになるが、トランプ大統領は約50億ドルの予算増額を求めており、これは400%増額となることを認めた。

あるトランプ政権幹部は「トランプ大統領は日本や韓国を含む世界中の同盟諸国が更に貢献することができるし、そうすべきだということを明確に期待している」と述べている。

トランプ政権の高官は続けて次のように述べている。「日韓以外の同盟諸国も近い将来に両国に対するのと同じ要求に直面する可能性が高い。

この幹部は「韓国に対する要求は同盟諸国に対するアメリカの要求に関する新たな型板の第一歩ということになる。最初に韓国に適用され、次に日本、そしてアメリカ軍が駐留するほかの同盟諸国に適用されるだろう」と述べている。

日本政府は軍事協定に関する交渉のために韓国政府よりも多くの時間を持つ。そのため日本政府は韓国政府の動向を注視している。アメリカ政府と韓国政府との間の合意の形が、日本政府とアメリカ政府との交渉の形のひな型となると日本政府は考えているだろう。国防総省の元高官は「日本政府は韓国政府よりも少しは有利な立場に立っている。日本政府は“韓国さん、お先にどうぞ。私はあなたと同じ合意を結ぶようにしますからね”と言うだろう」と語っている。

今年9月の貿易協定の合意文書に署名する中で、日本側は影響力を失うことになった。トランプ大統領と日本の安倍晋三首相が9月25日に署名した合意文書で、日本政府はアメリカ産農産物への関税を引き下げることに合意した。

アメリカ政府が同盟諸国に対して防衛支出の増額を要求し続けている中、日本政府は「負担の分担について創造的な考え」をしようとしている。元国防総省高官によると、その具体例としては、日本にある米軍基地内の新しい施設への予算支出や新たにアメリカの地上配備ミサイルを国内に受け入れるといったことになる。

専門家や元政府高官が指摘しているように、次期特別措置協定に関するアメリカ側との予備交渉において、日本側は防衛予算の大幅増額を強調している。日本政府高官たちは、高額なアメリカ製の軍事装備を購入する決定を下したと述べている。その中にはF-35戦闘機やV-22オスプレイ、ティルトローターが含まれている。また、沖縄の米軍基地再編についてスピードアップを図るために更なる予算支出も決めたとも述べている。

元アメリカ政府高官たちは、日本からの米軍撤退は長期的に見てアメリカにとって大きな財政負担を強いることになると指摘している。もちろん特別措置協定に合意がなされなくてもすぐに米軍撤退ということにはならない。

元外交官で現在は日米関係を専門とする非営利組織の笹川平和財団の非常勤研究員を務めるジェイムズ・ズムワルトは次のように述べている。「アメリカ政府が米軍を日本から撤退させ、アメリカ本国に帰還させたならば、アメリカ国民は更なる税金負担を追うことになるだろう。現在、日本政府は米軍基地勤務の軍属2万40000人の給料と米軍将兵家族の光熱費などを支出しているが、それをアメリカ政府が支払わねばならなくなる」。

日本政府と韓国政府は北東アジア地域におけるアメリカ軍の軍事プロジェクトに多額の予算を支出している。連邦議会調査部の2018年の報告書によると、日本政府は第二次世界大戦後におけるアメリカ軍の海外基地建設に関し、最大規模となる3つの基地建設のコストの50%以上を支払っている。それらは、沖縄の普天間基地の代替基地(辺野古、日本政府は121億ドルの経費の100%を支出)、岩国の海兵隊航空基地(日本政府は48億ドルの経費の94%にあたる45億ドルを支出)、グアムの沖縄から4800人の海兵隊員が移動するための施設(日本政府は経費の36%にあたる31億ドルを支出)だ。

韓国政府はハンフリーズ基地の増設費用の93%にあたる100億ドルを支出する。

日本政府も防衛装備の90%以上をアメリカ企業から購入する。連邦議会調査部の資料によると、日本政府はロッキード・マーティン社のF-35戦闘機とボーイング社のKC-46タンカーを購入する。

国防総省元高官は「これは日韓両政府にとって計算の合わない、過大な支出ということにはならない」と述べた。

同盟諸国から駐留米軍のコストを相殺するために更なる予算を分捕ろうというトランプ政権の計画に沿った動きは今回が初めてのことではない。今年3月、トランプ政権は同盟諸国に対して駐留米軍の経費全額を支出することを望んでいるという報道が出て、その後は更に50%をプラスした支出を望んでいるという報道が出た。当時の国防長官代理パトリック・シャナハンは連邦議員たちに対して、トランプ政権は「コスト・プラス・50」計画を進めることはなく、こうした報道は誤ったものだと述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回は2018年の世界経済GDPについての記事をご紹介する。世界各国のGDPを大きさに比例させて、見やすくしたヴィジュアルがあり、「この国はこれくらいなのか」と興味を持ってみることが出来る。

 ここで使われているのは、購買力平価GDPと一般的なGDPだ。 

購買力平価(Purchasing Power Parity)は、為替レートは自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定されるという理論だ。有名なのは、ビックマック指数だ。これは世界各国に展開しているハンバーガーのマクドナルドで売っているビックマックの値段がいくらになっているのかを基準にして計算している。購買力平価GDPは各国の物価を計算に入れた為替レートの対ドルで計算をしたものだ。

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 購買力平価のレートと市場でのレートで米ドルと人民元を見てみると、人民元は実際以上に安く誘導されているということになる。購買力平価GDPで計算すると、2014年以降は、中国がアメリカを抜いて世界最大の経済大国ということになる。しかし、実際のレートで計算すると、アメリカが最大の経済大国であることは変わらない。

2018gdp001 

 中国も経済成長をし、物価が上がり、人々の生活水準も上がっていくとなると、通貨の力も強くなるし、そうなればいつまでも安い方向を維持することは難しい。日本がそうであったように、通貨の価値は上がっていく。対ドルで元高になっていく。
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 中国の経済成長率が鈍化していると言っても6%以上を維持している。経済規模を考えると、アメリカは4%以上の経済成長をしなければ、中国に差を縮められる。アメリカの最近の経済成長率は2%台なので、中国が差を縮めている。

 日本を見てみれば一般的なGDPでは3位(5.79%)で4兆9700億ドル(約537兆円)、購買力平価GDPでは4位(4.02%)で5兆4800億ドル(約592兆円)である。購買力平価GDPの方が高いということは、円が安く誘導されているということを示している。日本は世界第2位の経済大国(1968年に当時の西ドイツを抜いて2位に)で、アメリカを凌駕すると言われていたバブル時代はもう30年も前の話で、それから衰退が続いている。

 世界経済の全体像をつかむということで今回ご紹介する記事は役立つものになっている。

(貼り付けはじめ)

購買力を考慮しながら世界経済を可視化する(Visualizing The World Economy When Purchasing Power is Taken into Account

2019年9月12日

https://howmuch.net/articles/the-world-economy-ppp-2018

異なる国々の経済を比べる際に、最も一般的な方法は「購買力平価(purchasing power parity)」を使うことだ。購買力平価(PPP)は世界各国の経済を「財のバスケット」内部の様々な価格を平準化することで比較することだ。言い換えるならば、購買力平価は、国家間の生産を比較する際に、生活水準の違い(1カートンのミルクの値段の違いなど)を考慮に入れるということだ。これを一歩進め、購買力平価GDPで世界各国のGDPを可視化する。このチャートでは、国際的なドルを使用する。これはアメリカ国内のドルの購買力と同じ購買力を持っている。

・購買力平価GDPの測定は、各国の経済を比較するために、市場の為替レートではなく、世界中の生活費のコストを考慮に入れている。

・2018年の世界の購買力平価GDPは136兆4800億ドルだ。

・アジア諸国は購買力平価GDPで世界の40%以上を占めている。

・米中両国は購買力平価GDPで世界の3分の1を占めている。

・今回の可視化に使われている情報は世界銀行からのものだ。最新の数値は2018年のものだ。各国のサイズは購買力平価GDPの大きさに比例している。各国は属する大陸で色分けされている。そして、世界の生産に対してとの地域がどれくらい寄与しているかがわかる。

●購買力平価GDPから見る世界トップ10

1. 中国:25兆3600億ドル(約2739兆円)[18.58%]

2. アメリカ:20兆4900億ドル(約2213兆円)[15.02%]

3.インド:10兆5000億ドル(約1134兆円)[7.69%]

4.日本:5兆4800億ドル(約592兆円)[4.02%]

5.ドイツ:4兆5100億ドル(約488兆円)[3.30%]

6.ロシア連邦:3兆9900億ドル(約431兆円)[2.92%]

7.インドネシア:約3兆4900億ドル(約377兆円)[2.56%]

8.ブラジル:約3兆3700億ドル(約364兆円)[2.47%]

9.イギリス:約3兆700億ドル(約332兆円)[2.25%]

10.フランス:約3兆700億ドル(約332兆円)[2.25%]

先月、私たちは現在のアメリカ・ドル表示の各国のGDPをイラストと示す可視化したものを発表した。このGDPは生活にかかるコストを入れていない。また、それぞれの国家の生産高を比較するために市場における為替レート使用している。世界の名目GDP(右側)と購買力平価GDP(左側)のいくつかの違いに気づくだろう。明らかなことは、アメリカは世界の名目GDPで最大のシェアを占めているが、中国は購買力平価GDPで最大のシェアを占めている。

世界銀行のデータは、アメリカの購買力平価GDPは、大恐慌時代以来毎年成長していることを示している。しかし、ここ10年間の拡大の後、アメリカの経済成長は鈍化している。しかし、雇用の成長によって経済の安定は保たれ、GDPは拡大し続けると見る専門家たちもいる。

同様に、中国の景気後退は国際的な関心を集めている。特に輸出量の減少に人々の目が向いている。中国の中央銀行は貸出を促進し、生産を増加させるために預金準備率を低下させることで対応を行っている。世界規模の景気後退を示す兆候はより多くなっている。日本とインドのような国々の経済指標は私たちに印象を残すことに失敗している。世界経済は成長を続けているが、様々な指標の動向は変化の兆しを示している。

世界経済のGDPと購買力平価GDPの違いについて読者の皆さんは驚いただろうか?コメント欄で教えて欲しい。

=====

世界の86兆ドル経済を一つのチャートで可視化する(The World’s $86 Trillion Economy Visualized in One Chart

2019年8月15日

https://howmuch.net/articles/the-world-economy-2018

世界のGDPは堅調に成長し、2018年には6.9%の成長率を記録した。全体で2017年の80兆2000億ドルから85兆8000億ドルに増加した。この成長の半分は世界最大の経済大国2か国から来ている。アメリカは20兆5000億ドル(2017年に比べて5.4%増)、中国は13兆6000億ドル(10%増)となった。しかし、世界規模での景気後退の恐怖は高まっている。世界第1位と第2の経済大国同士が経済における緊張関係を深刻化させていることがその原因となっている。

・アメリカは今でも世界最大の経済大国であり、世界のGDPの23.9%を占めている。

・中国は世界第2位の経済大国であるが、最近の四半期においては約30年間で最も遅い経済成長ペースを記録した。

・最新の世論調査で、経済学者の半分が来年までにアメリカ経済は後退すると予測している。

・アメリカと中国との間の貿易摩擦は解決しておらず、投資家たちは世界経済の成長について悲観的になっている。

・私たちのデータは世界銀行の2018年版世界GDP数値から取っている。それぞれの国はGDPの大きさで示されている。それぞれの国は地域別にまとめられ、色分けされている。2017年からどのように変化死体を見る場合には、HowMuch’s 2017 analysis of world GDP.をチェックして欲しい。

GDPから見る世界のトップ10

1. アメリカ:20兆4900億ドル(約2200兆円)[23.89%]

2. 中国:13兆6100億ドル(約1470兆円)[15.86%]

3.日本:4兆9700億ドル(約537兆円)[5.79%]

4.ドイツ:4兆ドル(約432兆円)[4.66%]

5.イギリス:2兆8300億ドル(約306兆円)[3.29%]

6.フランス:2兆7800億ドル(約300兆円)[3.24%]

7.インド:2兆7300億ドル(約295兆円)[3.18%]

8.イタリア:2兆700億ドル(約224兆円)[2.42%]

9.ブラジル:1兆8700億ドル(約202兆円)[2.18%]

10.カナダ:1兆7100億ドル(約185兆円)[1.99%]

アメリカと中国両国で世界GDPの約40%を占めている。それぞれ20兆5000億ドルと13兆6000億ドルを記録し、世界経済の23.9%と15.9%をそれぞれ占めている。両国の経済力と深刻化する緊張のために、私たちのアナリストたちは両国に注意を払っている。

全米ビジネス経済学会は280名のビジネス経済学者を対象に調査を実施した。調査対象者の半数は来年末までにアメリカ経済は後退すると予測していると答えた。ゴールドマンサックスとJPモルガンに所属しているアナリストたちは2019年第二四半期の経済成長は2%以下に減速すると見ている。景気後退が予測される理由は何だろうか?経済学者たちは景気減速が予想される多くの要素を指摘している。現在のアメリカ経済において労働市場は堅調であったが、後退の兆候が見え始めている。連邦準備制度理事化による予想される金利引き上げも景気後退の兆候となっている。アメリカにおける経済格差の拡大もまた後退を示す要素となっている。1989年から2018年にかけてアメリカ国民の下半分は9000億ドルを失った。これは経済全体に大きな影響を与えている。

しかし、世界中の報道機関が報じている要素は関税が与える衝撃と中国とアメリカとの間での貿易戦争勃発の可能性である。米中両国の経済は既に影響を受けている。数字がそれを示している。中国の2019年第二四半期のGDP成長率は6.2%に鈍化した。この数字は1992年以降最も小さい成長率となった。今年7月の中国の工業生産高の成長率は、昨年に比べて4.8%に鈍化した。この数字は2002年2月以降で最も弱いペースとなった。アメリカと中国が貿易面での相違をすぐに乗り越えることが出来るか確かではない。そして、市場は長期の難局を示しているように見える。このように先行き非案の兆候はあるが、経済学者の中には景気後退が不可避だと確言できないとしている人々がいる。こういった人々は、オーストラリアとイギリスのような国々の経済は何十年単位で安定的に成長していると述べている。

各国や各地域のGDPについて読者の皆さんを驚かせたのはどんなことだろうか?アメリカもしくは中国は景気後退に向かって進んでいると考えるだろうか?景気後退は世界経済全体にどのような影響を与えるだろうか?コメント欄で考えを教えて欲しい。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回は、ドナルド・トランプ大統領の支持基盤を形成する石油・天然ガス業界とエタノール業界・トウモロコシ農家の分裂についての記事をご紹介します。

 

 トランプ大統領は石油・天然ガス業界とエタノール業界の間で板挟みということになっているそうです。その発端は、トランプ大統領が、環境保護局による小規模の石油精製業者にガソリンにエタノールを混合する義務を免除するという決定を行わせたことです。アメリカではガソリンにエタノールを混合することが法律で義務化されているそうで、今ではE-15といってエタノールが15%混合されているガソリンもあるそうです。

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小規模の石油精製業者にはこのエタノール混合が負担らしく、混合しなくても良いということになったのですが、これにエタノール業界とトウモロコシ農家が反発しました。これはまあ分かりますね。

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エタノール製造業は農業州で発展しています。エタノールの原料はトウモロコシなので、その生産地に近い場所にエタノール製造工場があります。農業州はトランプ大統領に投票しました。しかし、今年8月には集会でエタノール業界団体、農業団体の指導者たちの一部が「投票したことを後悔している」と発言するほど激怒しました。

 

一方の石油・天然ガス業界はできればエタノール混合を止めて欲しいのですが、石油依存からの脱却という大義名分でジョージ・W・ブッシュ時代にエタノール混合が義務化されており、これを急に廃止することは難しいということになります。それで小規模業者のエタノール義務免除を何とか勝ち取ったということになります。

 

石油・天然ガス業界とエタノール業界の両方を満足させる解決策はなかなか見つかりそうにありません。石油・天然ガス業界はそこで、ガソリンのオクタン水準を上げる法案を応援しています。エタノールを混合しながらオクタン水準を上げることは可能だとしています。一方、エタノール業界はこの法案がエタノール混合義務付けの解除につながる可能性があるとして危機感を持っています。なかなか解決策は見つかりません。トランプ大統領はどっちつかずの態度を取っているので、業界同士の反目が高まっているそうです。

 

 トウモロコシ農家にとってはトウモロコシが売れさえすればよいということになりますから、エタノール製造に回る分が減るならば、他の販売先を見つければよいということになります。人口で言えば中国が有力な輸出先ですが、現在の米中貿易戦争でこれは難しいということになります。そこで、白羽の矢が立ったのが日本ということなのでしょう。アメリカの国内政治が日本に影響を及ぼす、だからアメリカ政治にも関心を持つ必要があるということが良く分かる事例です。

 

(貼り付けはじめ)

 

エタノールを巡る争いはトランプ大統領の支持基盤を形成している主要なグループを分裂させる(Ethanol fight divides key groups in Trump's base

 

レベッカ・ベイツク筆

2019年9月2日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/energy-environment/459485-ethanol-fight-divides-key-players-in-trumps-base

 

トランプ大統領は間もなく、どの支持者のグループをより好むかを決めねばならないであろう。農家か石油・天然ガス産業か、どちらかに決めねばならない。

 

エタノール製造業者と石油・天然ガス産業との間の分裂は深まっている。これは、一人の政治家の支持基盤において相反する利益を持つ団体をどのようにして満足させようとするのかという設問に対しての格好の事例研究(ケーススタディ)となる。そして、トランプ政権の2019年8月の動きは両者を怒らせるだけに終わってしまった。

 

トランプ大統領は複数の石油精製業者に対して、彼らの製品にエタノールを混合しなくてよいという許可を出す決定を下した。これに対してトウモロコシ農家は反発した。反発を受けてトランプ政権は忠実な支持基盤を宥めなければならなくなった。

 

トランプ大統領は木曜日、ツイッター上で次のように書いた。「私たちがエタノールについて行っていることを見て農家は幸せを感じるだろう。年間を通じてE―15ガソリン(訳者註:エタノールが15%分入っているガソリン)を販売できる。これは既に実施されている。より大きな計画も実施される準備が出来ている!同時に私は小規模の石油精製業者を廃業から救うことが出来た。全員にとって素晴らしい結果だ!」。

 

しかし、石油精製産業にとっては、全ての人々にとって素晴らしい結果とはならなかった。

 

ホワイトハウスはエタノール製造業を強化することを目的とする提案を行う予定になっている。石油・天然ガス産業は特にこの提案に反対している。

 

石油・天然ガス産業の各業界団体は連名でトランプ大統領に書簡を送った。その中には「大統領はウィン・ウィンとなる解決法を見つけたいと示唆してきた」と書かれており、大統領が行う予定の農家への提案は農家と石油・天然ガス産業両者にとって利益となるものでなければならないと主張している。

 

書簡に署名しているのは、石油会社と天然ガス会社を代表するアメリカ石油協会(API)と石油精製会社を代表するアメリカ燃料・石油化学製造業協会(AFPM)だ。

 

アメリカ燃料・石油化学製造業協会会長チェット・トンプソンは記者たちからの電話取材に対して次のように述べた。「この政権で農家優遇が終わらない限り、私たちの活動は終わらない。私たちは、私たちの考えを理解してもらい、できれば大統領を説得するために活動を続けている」。

 

これら石油・天然ガス産業の諸団体は、トランプ大統領が常に主張している「エネルギー支配(energy dominance)」の大きな部分を占めている、しかし、トランプ大統領のエタノールについての動き、エタノール混合率が高いE-15ガソリンの年間を通じての販売を許可すること、石油精製業者のエタノール混合の免除について再考すること、は、トランプ大統領がトウモロコシ農家もまた自身の支持基盤の重要な要素であると考えていることを示している。

 

エタノール産業を代表する再生可能燃料協会(RFA)会長ジェフ・クーパーは、全米に150以上のエタノール製造工場があり、エタノール製造工場がある郡では2016年の米大統領選挙でトランプへの投票がヒラリー・クリントンを上回った、と発言した。

 

クーパーは次のように述べた。「アメリカ中西部のエタノール産業が存在する地域はトランプ大統領の支持基盤になっているのは明らかだ。しかし、トランプ政権の再生可能燃料とバイオ燃料に対する態度を見ると、この地域に住む人々は鞭で打たれたような、また、一貫しない政策で不安な気持ちを持っている」。

 

シンディ・アクスネ連邦下院議員(アイオワ州選出、民主党)はトランプ政権の諸政策は資金に余裕のある大規模な石油会社を利するものだと主張している。アクスネ議員はトランプ大統領による石油精製業者のエタノール混合免除が発表された後、農家たちの反応を取りまとめる際に尽力した人物だ。アクスネ議員は、新しい計画には少しは改善が見られるだろうが、トランプ大統領が公の場で農家の窮状について懸念を持っていると述べていることに疑義を呈した。

 

アクスネ議員は本誌の取材に対して次のように述べた。「トランプ大統領が行ってきたことを振り返ると、アイオワ州での支持率が下がるまで、アイオワ州の農家について何も考えていなかったことは明らかだ」。

 

2019年8月9日に環境保護庁(EPA)から石油精製業者に31のエタノール混合免除許可が発行された。これに対してアイオワ州の農家は激怒した。この夏の初め、トランプ大統領がアイオワ州を訪問した際に、エタノール混合免除プログラムを見直すと約束した。しかし、それから2カ月後、トランプ大統領はEPAが免除条項を提出した小規模の石油精製業者たちに混合免除を許可することにゴーサインを出した。

 

アイオワの農家たちは記者会見を開き、トランプ大統領が約束を反故にしたことを非難した。また、エタノール業界の指導者たちの中には、トランプに投票したことを後悔していると表明する人たちも出た。

 

クーパーは次のように述べた。「アメリカの農家は既に米中貿易戦争によって痛みを感じ、輸出市場を失った。農家は、エタノール混合免除が発表された時、大変に怒り、不満を持った。農家は負担に耐え切れなくなり、堪忍袋の緒が切れた。ここ数週間、私たちは私たちの希望を実現するために努力を続けている」。

 

農家からの批判を受けて、トランプ大統領は農家に対して、石油精製業者に対してガソリンに混合するエタノールの量を増やすことを義務付ける可能性があると示唆した。

 

アメリカ石油協会の流通担当副会長フランク・マチアロラは、現在ガソリンにエタノールを混合しなければならないという規定になっていることについて、本誌に対して「現在の規定は中途半端だと私たちは考えている」と述べた。

 

「負担は年を追うごとに重くなっている。現在の規定は市場を動かすが、最終的には製品を追い出すことになる。エタノール混合プログラムが始まって15年が過ぎたが、首尾一貫しない政策が続いている。今必要なのは明瞭さである。政策が首尾一貫しないのは、エタノール産業の気まぐれのためだ。小規模の石油精製業者がエタノール混合免除を受けるたびに政策を見直さねばならないということを続けねばならないのだろうか?」

 

エタノール産業もトランプの計画については態度を明確にはしていない。

 

エタノール産業側は法律で定められているように環境保護局に対してエタノール混合免除を受けた会社の製品にもエタノールを混合させるようにして欲しいと望んでいる。

 

クーパーは「これはエタノール産業にとって大きな利益となるものではない。農家にとってもそうだ。これはただ法律書に載っている法律を実行するだけのことだ」と述べた。

 

クーパーは「トランプ政権によって政策変更が続いているが、これはエタノール産業の長期的な利益には合致するが、私たちには緊急的な支援が必要なのだ」と述べた。

 

クーパーは「政策を変更してもらうことは素晴らしいことだ。しかし、政策変更は長期的な効果のためであり、私たちはこれ以上エタノール製造工場を閉鎖させないために注力している」と述べた。

 

石油・天然ガス産業とエタノール産業の両者を喜ばせる中間的な解決策があるとすれば、それはすぐには出てこないものだ。

 

アメリカ燃料・石油化学製造業協会は、ガソリン内のオクタンのレヴェルを高くすることを義務化する2018年に議会に提出された法律案を解決策として挙げている。

エタノールを混合してもオクタンのレヴェルを引き上げることはできる。

 

アメリカ燃料・石油化学製造業協会会長チェット・トンプソンは「関与する全ての業者や組織が内容を完全に理解すれば、この法案こそがトランプ大統領が求めているウィン・ウィン関係をもたらすことになるだろう。これに反対する人たちはいないだろうと思う」と述べた。

 

しかし、クーパーは、エタノール製造業者はこの法律案が機能するとは考えていないと述べた。その理由として、この法律案が成立すると、多くの添加物やプロセスを通じてオクタンレヴェルの高いガソリンを製造できるのに、エタノール混合の義務化が終了してしまう可能性が高いことを指摘している。

 

クーパーは、これから数日もしくは数週間後に発表されるであろうトランプの計画が石油・天然ガス産業に大きく影響されたものであろうと述べた。

 

クーパーは石油・天然ガス産業について次のように述べた。「もちろん、私たちは思い込みに陥らないようにしている。私たちとしては事態を注視している。計画が実際に公表されるまで、私たちは積極的な反応は控える」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 今回は現在の日韓関係の悪化はアメリカの弱体化の兆候だという内容の記事をご紹介します。記事の内容は日韓関係の悪化を概観しながら(徴用工問題と慰安婦問題を混同している点は誤りがあります)、アメリカの存在感と影響力が以前のように大きければ、更なる悪化を防ぐことが出来るのだが、それはもう望むべくもない、ということを主張しています。

 

 著者のスティーヴ・クレモンスは北東アジアの国際関係の専門家ですが、日中韓それぞれが行き過ぎた行動をとっていると述べています。

 

 韓国の最高裁が徴用工問題に関して、韓国で経済活動を行っている日本企業に対して賠償金支払い、もしくは財産の没収という判決を出しました。サンフランシスコ講和条約で日米両政府は相互に請求権を放棄しました。これに対して被爆者がアメリカに被害の補償を請求できなくなったとして日本政府を提訴しました。これに対して、日本政府は、「外交保護権(自国民の被害に対して政府が外国政府に補償を求める権利)」は放棄したが、被爆者個人が請求する権利は放棄していない、という立場を取りました。

 

日本では被爆者がアメリカに対して個人的に被害の保証を請求することを否定できない立場から、韓国の徴用工や慰安婦についても個人請求権は否定しないという立場でした。しかし、その後は日本の裁判所では個人の請求権を認めないという判決が出て、韓国や中国の元徴用工や慰安婦、戦時中に被害を受けた人たちが日本の裁判所で訴えても、請求が認められないということになりました。

 

 韓国の最高裁の判決によって、元徴用工の訴えが認められたことが発端となりました。日本政府は当然、そのような判決は認められないという立場です。韓国政府も日韓国交正常化(1965年)の際に請求権問題は解決している、日本が韓国に支払った経済協力金(実質的な賠償金)には徴用工の保証の資金も含まれている、という立場ですから、最高裁の判決には当惑したものと思われます。しかし、三権分立(日本も韓国もそうです)で、司法の独立が尊重されるとなると、韓国政府が最高裁の判決を変更することはできません。

 

 私は大人の態度というのは、ここで態度を硬化させるのではなく、それでは話し合い、交渉をしてお互いに納得が出来る点を見つけましょう、というものだと思います。しかし、このような状況下、日本政府は軍事転用可能な物資や技術の最終輸出先に不安があるという立場(北朝鮮に渡り各開発プログラムに使われる危険性がある)から、半導体製造の原材料の韓国への輸出規制を強化し、韓国を輸出規制に関して優遇措置が受けられるホワイト国から除外しました。

 

 韓国内では徴用工問題の報復として、韓国の主要産業となっている半導体製造などに影響を与える行為として反発が起きました。そして、韓国からは日本の韓国におけるホワイト国認定の解除と日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)の破棄という反撃が起きました。韓国からの安全保障上重要な情報やデータが日本に入ってこないということになると、一番の懸念は北朝鮮に関する情報やデータが直接入ってこないということです。アメリカは両国と協定を結んでいますから、日本の安全保障に関連するということになれば、韓国から提供された北朝鮮の情報やデータを日本に提供するでしょうから、大きな影響はないかもしれませんが、アメリカを介しての安全保障関係を結んでいたはずだった韓国からの「手切れ」は大きな衝撃となりました。

 

 日本側は貿易問題と安全保障問題は全くの別物だという立場で、韓国政府の行動を非難していますが、そもそも日本側の貿易管理強化は、対北朝鮮の懸念という安全保障上の理由から起きたもので、日本政府の行動こそは安全保障と貿易問題を一緒にしています。

 

 今回ご紹介する記事の著者クレモンスは、アメリカの存在感と影響力がしっかりとしていて、安全保障に関与していたならば、今回のような日韓関係の悪化はなかっただろうという立場です。そして、日韓両国政府は、対立がもたらす大きなリスクを認識し、対立を激化させないようにすべきだと主張しています。

 

 北朝鮮に関しては、アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長のトップ会談がシンガポールとヴェトナムのハノイで2回、更に今年6月30日には大阪でのG20の後にトランプ大統領が38度線を訪問、板門店で、「トランプ大統領のツイッターでの呼びかけを読んだ」とする金委員長と会い、話し合いを行いました。

 

 このように北朝鮮をめぐる情勢は、外見上は華やかですが、実質的には何も進んでいません。核兵器放棄も行われる兆候は見られません。そのうち、アメリカは中国との貿易戦争を開始し、今も続いています。クレモンスは、「1930年代のスムート・ホーリー関税法時代の悪夢」と表現しています。日韓貿易戦争もまたこの小型版と言えるでしょう。米中貿易戦争の主眼はホアウェイ(ファーウェイ、為華技術)の5Gをめぐる争いという面もあり、日韓貿易戦争にはファーウェイとアメリカの間で板挟みになるサムソンに対する日本からの圧力(アメリカからの依頼[命令]でしょう)という面もあると思います。


 「交渉の達人」ということで、アメリカ大統領になったドナルド・トランプ大統領ですが、国際政治や国内政治の舞台では、全くうまくいっていません。トランプ大統領が行ってきた交渉術は脅しと開き直りであって、国際舞台では通用しない、という批判も出ています。

 

 北東アジア地域を一気に不安定にさせている米中貿易戦争と日韓貿易戦争は、とどのつまり、アメリカの衰退の兆候であり、国際関係の構造が大きく変わる、終わりの始まりということが言えるでしょう。そうした中で、日本はあまり大きな被害を受けないように、いきり立って対応するのではなく、「柳に風」と受け流すというくらいが良いのだろうと思います。

  

(貼り付けはじめ)

 

韓国と日本との間の争いはアメリカの弱体化を示す兆候(South Korea-Japan spitting contest is a sign of US weakness

 

スティーヴ・クレモンス筆

2019年8月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/458763-south-korea-japan-spitting-contest-is-a-sign-of-us-weakness

 

現在、各地で緊張状態が発生しているが、アメリカがそれらを土壇場で救うことが出来ると考えている人たちはほぼいない。

 

アメリカの同盟国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦はカタールに対して禁輸措置を実施している。カタールには中東地域最大規模のアメリカ軍基地が置かれている。イギリスはヨーロッパから離脱しようとしている。トルコはロシアから防空システムを購入し、アメリカとNATOを拒絶している。香港ではデモが激化している。香港の民主政治体制は危機に瀕している。中国とアメリカはお互いに関税引き上げを激化させている。スムート・ホーリー関税法時代の悪夢を復活させようと夢中になっているかのようだ。

 

現在、アメリカの同盟国である日本と韓国はお互いに非難合戦を激化させ、日米韓3か国の防衛同盟の枠組みに脅威を与えるような状況になっている。3か国の枠組みによって、北朝鮮は封じ込められてきたし、枠組みの存在は北東アジアにおけるロシアと中国の冒険主義に対する堤防となってきた。

 

こうした状況に加え、トランプ大統領はグリーンランドをめぐる発言でデンマーク国民を怒らせている。また、アマゾンの密林の20%が焼失しようとしている。混乱状況はこれまでにない高みにまで到達しつつある。

 

過去を振り返ってみると、アメリカが安全保障を与えることで、世界の各地域は、お互いに敵意を持つ国々で構成されていながらモラルハザードに陥らないで済んできたと私は考えている。アメリカが地域の平和を守り、地域の近隣諸国間の角逐を和らげる役割を果たした。これで地域の近隣諸国は無謀な、ナショナリスティックな主張をお互いに繰り返しながらも、地域の状況が不安定化する、もしくは戦争が起きるというところまではいかなかった。

 

日本の政治指導者たちは靖国神社に参拝することで、第二次世界大戦前の価値観を復活させようとし、ナショナリスティックな感情を弄んできた。靖国神社には戦時中の日本の戦争指導者たちの霊魂が祀られている。また、日本の政治指導者たちは、日本が戦時中に行った大量殺人、性的暴行、日本が支配した中国と朝鮮半島の人々からの収奪について、ごまかし、正当化しようとしている。

 

韓国の政治指導者たちは、悪意に満ちた日本に敵対する言動を行っている。このような言動を行うのは、かつて日本が植民地化した際に行った犯罪について繰り返すことで、自分たちの正統性を明確にしようという狙いがあるからだ。

 

中国でも状況は同じだ。中国の教科書のほぼ全ては歴史において日本を怪物のような悪者に仕立て上げようという熱意に満ちている。 物事をはっきりさせたいのだが、日本は戦時中にアジアで残酷なことを行った。そして、歴史に対して記憶喪失のようになっている。しかし、中国の教科書やテレビ番組は日本に対する歪められた固定観念に溢れている。

 

地域内の争いの激化を克服するために、アメリカは日本の攻撃的な軍事力の復活を止めるボトルのコルクに役割を果たしたし、日本と韓国にとっての安全保障上の重要なパートナーとなった。その結果、日韓両国は、歴史における恨みはありながらも、情報・諜報関係と安全保障上のパートナーとなった。

 

日本と韓国との間の協力関係は重要だ。特にアメリカの安全保障、そして両国の安全保障にとって大変に重要だ。北朝鮮が脅威であるという認識から出てくる両国の違いと争いと北東アジア地域においてアメリカが地域の安定の基盤となるものを提供することが出来なくなっていることが明らかになることで、日韓の協力関係は弱くなっている。

 

先週、日本側の行為が韓国側の更なる行為にとっての引き金となった。韓国側は日本との情報共有協定を破棄した。この協定は軍事情報に関する包括的保全協定(GSOMIA)と呼ばれるものだ。その引き金となったのは、日本が韓国に対する輸出管理格付けを変更したことであった。日本側は韓国から重要な技術や物資が北朝鮮に密輸されるのではないかという恐怖感を持っており、そうした行為を行った。

 

韓国の文在寅大統領は北朝鮮の金正恩に対して媚びへつらっている。これはトランプ政権が北朝鮮の指導者に寒い場所あら出てくるようにと温かく働きかけていることに対する反応である。日本側は、核技術にとって重要な技術や戦略的物資が韓国企業から北朝鮮に輸出される可能性があるという恐怖感を持った。日本はこれらの技術や物資の韓国に対する売却を差し止めなかった。しかし、日本は貿易に関する韓国の格付けを変更した。結果として、北朝鮮に対する輸出が懸念される物資などは、北朝鮮の核開発プログラムに使用されないことを確実にするために、項目別の許可制の対象となり、より厳しく監視されることになった。

 

日本側の措置は韓国の指導者たちを激怒させた。そして、両国間の争いを激化させた。韓国最高裁はそれまでの国際的な合意を無視し、現在韓国で活動中の日本企業の一部に対して第二次世界大戦中のこうした企業の「慰安婦」に対する取り扱いに対して賠償金を支払うように命令を下した。慰安婦は日本の占領軍の将兵のために売春行為を強要された女性たちだ。そして、実施しないようにというアメリカと日本からの要請があったにもかかわらず、韓国は日曜日に自動延長が予定されていたGSOMIA情報共有枠組を停止した。

 

ある日本政府高官は韓国側の行動を「無謀」で「錯乱」したものだと断じた。複数のアメリカ政府高官は、GSOMIAの停止は日米韓の同盟関係を損なうものとなるであろうし、その結果として地域の安定を失い、北朝鮮を勇気づけ大胆な行動をとらせることにつながるだろう、そうなれば分裂はさらに深まると繰り返し発言した。

 

日本の河野太郎外相は「大韓民国政府による決定は現在の北東アジア地域の安全保障環境について完全に誤った判断をしているものであり、従って大変遺憾であると言わざるを得ない」と発言した。河野外相は更に続けて、「大韓民国政府は、大韓民国に向けた輸出管理の日本の見直しをめぐる合意を拡大するのではなく、安全保障の面でこのような決定を行った。輸出管理と安全保障は全く次元の違うものだ。従って、大韓民国政府の主張は全く受け入れられないものであり、私たちは大韓民国政府に対して強く抗議するものである」と述べた。

 

今回の件が起きる前にも日本と韓国の指導者たちは仲たがいをしていた。そして、日本の公式の認識と慰安婦に対する犯罪に対する悔恨などの諸問題で争いを続けていた。しかし、両者の争いはアセアンやG20の場でも展開され、両者は同じステージに立つことを拒絶した。一度は日本の安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領が同じにステージに立つことを拒絶した。しかし、重要な情報交換協定を破棄するまでには至らなかった。

 

明らかになりつつあるのは、このようないら立ちが募る状況下におけるアメリカの影響力は減退しつつあるということだ。そして、世界におけるアメリカの戦略的縮小がもたらす現実は、お互いに敵意を持つ国々の間を取り持つ緩衝材という役割が小さくなっていくというものだ。アメリカが安全保障を提供することで、地域を構成する国々の指導者たちは、無謀な、ナショナリスティックな、地域に危険をもたらす発言をしながらも実際に地域に不安定がもたらされることも、戦争がもたらされることもなかった。アメリカによる安全保障は子供たちが寝るときにしっかりと抱き締める毛布のようなものであった。しかし、そのようなことは現在では全く期待できない。

 

現在、発言や行動が更に重要になっていくであろうし、アジア地域における実際の紛争をもたらす可能性が高まっている。歴史は繰り返す。アジア諸国の指導者と国民は、同盟感懐を犠牲にし、安定的な安全保障関係の合意を破棄することがどれほど高くつくかということを認識する前に、まず争いがどれほどコストをもたらすものかについて認識する必要があるのだ。

 

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 古村治彦です。

 

 2019年2月27日から28日にかけてヴェトナムの首都ハノイでアメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩国務委員会員長の首脳会談が開催されました。昨年6月12日のシンガポールでの首脳会談に続く第2回目の会談でした。


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 今回の首脳会談では共同宣言に署名されることもなく、成果のないままに終了ということになりました。トランプ大統領は記者会見に応じ、これからも交渉を続けていくと述べました。それでもマスコミでは「物別れ」「決裂」という言葉が躍っています。

 

 前回の一回目の首脳会談では、共同宣言が出されました。その中には「トランプ大統領は朝鮮民主主義人民共和国に安全の保証を与えると約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた断固とした揺るぎない決意を確認した」という一節があり、これでアメリカは北朝鮮を攻撃しないとし、北朝鮮は非核化に向かって進むということになりました。

 

 アメリカとしては、攻撃しないという保証を与えたのだから、アメリカの意向通りの非核化を行うべきだと考えている一方で、北朝鮮は安全の保証だけではなく、経済発展に向けた動きもついでに確保しよう、非核化をできるだけ高く売りつけようという考えのようです。中国とロシアの後ろ盾もあり、経済制裁も効果を上げていない(密輸などで)中で、北朝鮮は焦る必要はない状況です。そうした中で、アメリカの意向通りには物事は進まなかったということでしょう。

 

 それでも交渉は続けるということですし、交渉が続いている状況で、一回目の共同宣言の効力があるうちは、アメリカにとってはミサイルが飛んでこないということであり、北朝鮮にとってはアメリカから攻撃されないということで、この宙ぶらりんの状態はお互いに望ましいということになります。

 

 金正恩委員長が不機嫌なままで会場を去ったという報道が少しに気になります。笑顔がなくて外見上が不機嫌に見えたという印象論の報道ならまだ良いのですが、会談の席上でのトランプ大統領の発言のために不機嫌になったということなら問題です。私が懸念しているのは、現在の外交、安全保障を司っているアメリカの政府高官がそろいもそろってネオコン派であるという点です。

 

 そうした中で、トランプ大統領がアメリカによる北朝鮮攻撃、体制転換、政権交代などについて口を滑らせてぽろっとでも発言すれば、北朝鮮にしてみれば到底受け入れがたいことになります。

 

 日本政府について考えてみると、今回紹介している記事の内容から考えると、何も合意が出来なくてホッとしているということになるでしょう。日本が置き去りにされて、米朝が何か氏からの合意や進展をしてしまうということは、日本にとっては困ってしまう事態です。日本はアメリカとの関係に依存し過ぎているのに、アメリカは気まぐれで日本の利益を考えない行動をするということになったら、日本は損ばかりをしてしまうということになります。


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 また、日本が過度にアメリカ依存をしているということで、対中、対露、対北朝鮮についてはフリーハンドで動くことはできません。一方でアメリカはいざとなれば日本のことなど考慮しないということは可能です。日本は東アジア地域の大国ではありますが、北朝鮮をめぐる問題に関してはサイドラインに立たされたまま、ということになっています。

 

 北朝鮮も日本に関しては重視していないので、日本からの働き掛けもうまくいっていないのが現状です。

 

 こうして見ると、下に紹介した記事にあるように、日本政府にとっては今回の会談で何も成果が出なかったということは、「日本にとって何も悪いことが起きなかった」ということになり、胸をなでおろしているということになるでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

ハノイでの首脳会談で日本政府ははじき出されたと感じている(Hanoi Summit Has Tokyo Feeling Left Out

―日本はアメリカと北朝鮮が合意に至る中で、日本の利益が無視されるのではないかと懸念を持っている

 

ロビー・グラマー筆

2019年2月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/02/26/hanoi-summit-has-tokyo-feeling-left-out-japan-north-korea-shinzo-abe-kim-jong-un-nuclear-deal-trump-asia-security-denuclearization/

 

2018年9月、国連総会の席上、日本の安倍晋三首相は、北朝鮮との「相互不信の硬い殻を打ち破る」用意があり、北朝鮮の最高指導者金正恩国務委員会委員長との首脳会談を行う用意があると宣言した。

 

しかしそれ以降、アメリカと北朝鮮、韓国と北朝鮮、中国と北朝鮮といくつもの首脳会談が次々と開催される中で、日本はサイドラインから眺めることしかできず、ドナルド・トランプ米大統領が日本政府に相談することなく、北朝鮮と合意を結ぶのではないかという懸念を持ち続けている。

 

長年にわたり北朝鮮に対して強硬姿勢を保持してきた当の安倍首相は北朝鮮の金委員長との首脳会談を開くことができないままでいる。これはトランプ大統領が今週金委員長との2度目の会談を準備している中で、日本が不安定な立場に立っており、日本政府もそのことを認識していると専門家や日本政府高官たちは述べている。

 

ある日本政府高官は匿名で取材に応じ、「日本では、何か良いことが起きることを希望するよりも、何も悪いことが起きないことを人々は望んでいる」と発言した。

 

ヴェトナムでの首脳会談において、トランプ大統領と金委員長は非核化について北朝鮮による譲歩の可能性について議論することになるだろう。アメリカの同盟諸国は、金委員長がうまく立ち回り、トランプ大統領を出し抜き、政治上のまたPR上の勝利を勝ち取るのではないかという懸念を持っている。アメリカのマイク・ポンぺオ国務長官もまたこうした懸念を持っていると報じられている。大きな懸念としては、北朝鮮政府が非核化のための真のステップから外れるために自分たちの主張に固執するのではないかというものだ。アメリカの各情報機関のトップたちは、北朝鮮が核兵器プログラムを放棄したくないと考え、昨年シンガポールで開催されたトランプ・金会談以降の複数回の実務者協議は中断し、停滞しているのが現状だと発言している。

 

韓国では文在寅大統領は、南北関係を修復するために、金委員長の関係をこれまでになく強めている。文大統領と金委員長との間の一対一の会談は複数回開かれ、多くの場合、最後は両者が抱き合い、笑い合う様子を写真撮影することで終了している。

 

一方、北朝鮮政府は日本政府からの外交的な接触に対して反応をしていない状況下で、日本は韓国政府かアメリカ政府を通じて、トップレヴェルの関与を確保しなければならない。そのために、安倍首相は気まぐれな北朝鮮の最高指導者と向こう見ずで自由気ままなアメリカ大統領の間に挟まれ、身動きが出来ないようになっている。現在のアメリカ大統領は原稿通りに発言しないことと補佐官たちの助言を無視することを好む。

 

専門家の中には、北朝鮮は安倍首相と関与することを拒絶しているが、安倍首相がトランプ大統領と個人的な関係を持っているので、日本は外交上、強い立場にあると主張している人々もいる。しかし、安倍首相はハノイの首脳会談をサイドラインから眺めることを強いられている。

 

ヘリテージ財団研究員でCIA韓国部の副部長を務めたブルース・クリングナーは、「日本政府の高官たちと話をすると、彼らは懸念を感じ、孤立感を持っていることが分かる」と述べた。クリングナーは更に、トランプ大統領について、「日本政府高官たちは良くないサプライズが起きることを憂慮している」とも述べた。

 

トランプ大統領に対して日本政府高官が懸念を持つのはそれだけの理由があるからだ。

 

2018年の第一回目の米朝首脳会談の後、トランプ大統領は一方的に韓国との共同軍事演習の一部を修了すると発表した。これは同盟諸国と国防省内部に大きな衝撃を与えた。

 

2018年12月、トランプ大統領は、アメリカ軍のシリアからの完全撤退とアフガニスタンからの大幅な撤退を決断したと発表して、アメリカの同盟諸国を再び驚かせた。シリアからアメリカ軍を全員引き揚げさせるという決断(これは現在再考中ではある)によって、国防長官だったジェイムズ・マティスと対イスラム国特使だったブレット・マガークは辞任した。

 

ブルッキングス研究所の朝鮮半島研究部門の責任者ジュン・パクは、シリアとアフガニスタンに関する予想外の発表は東アジア全域を駆け巡り、アメリカの同盟諸国の神経を逆なでした、と述べている。パクは、東アジア地域のアメリカの同盟諸国に残されたものは、「不安定と不信感、不平不満の複雑に絡んだ状態である。これらはトランプ大統領の予測不可能性が原因の一部であると思う」と述べている。

 

中国の軍事的脅威が高まり、北朝鮮が核兵器とミサイル開発を放棄しない状況下で、それらに対処するために、日本はアメリカとの同盟関係に大きくい依存し続けている。日本の平和主義憲法は第二次世界大戦後に制定されたが、これは、純粋な防衛行動のみに軍事力を使用すると制限している。安倍政権は憲法の改定と日本の自衛隊を完全な軍隊にすることを推進中だ。

 

アメリカとの同盟に大きく依存しているということは、日本はアメリカ大統領の気まぐれの影響を受けてしまうということになる。現在のトランプ大統領は伝統的な同盟諸国との関係性の構造をはねつけ、これまでのアメリカの国際問題へのかかわりに疑問を呈している。

 

トランプ大統領が金委員長と合意に達することで、アメリカに対する脅威をなくす一方で、東アジア地位の同盟諸国を見捨てるのではないかというのが日本政府内に広がっている恐怖感だ、と日経新聞コメンテイターの秋田浩之と述べている。考えられる合意内容として、北朝鮮の長距離大陸間弾頭ミサイル開発に制限を加えながら、完全な非核化を行わず、アメリカ本土には脅威ではないが日本にとっては脅威となる短距離、中距離ミサイル開発も阻止しないというものがある。秋田は「これは日本にとって悪夢のようなシナリオだ」と述べている。

 

ランド研究所の研究員ナオト・アオキはハノイでの合意内容によって、日本の置かれている不安定な立場はより厳しいものとなるだろう、と述べている。トランプ・金会談の結果の一つの可能性として考えられる内容は、アメリカの交渉担当者たちが外交関係正常化に向けたステップの中で北朝鮮に、完全な大使館機能を備えてはいない連絡事務所を設置することを提案するということだ。東アジア地域の他の主要なプレイヤーであるロシアと中国は平壌に大使館を置いている。韓国は昨年9月に北朝鮮に連絡事務所を設置している。

 

青木は「アメリカが連絡事務所を設置するとなると、日本は東アジア地域で北朝鮮との間に、二国間で利用される存在もしくは外交チャンネルを持たない唯一の主要国となる」と発言している。

 

日本政府高官や専門家たちによれば、日本は複数回にわたり北朝鮮に接触を図った。2018年の国連総会の非公式な場面での接触や、2018年8月の東南アジア諸国連合の会合での日本の河野太郎外相と北朝鮮の李容浩外相との会談が 行われた。また、両国の情報機関の間で交渉が行われたとも報じられている。

 

青木は、これらの交渉や会談では「何も実質的な」ことには結びつかなかったようだ、と述べている。

 

外交評議会(CFR)のシーラ・スミスをはじめとする一部の専門家たちは、ハノイでのトランプ・金会談に至る過程で日本は孤立しているという考えに反論している。スミスは、トランプとポンぺオが東京を訪問したこと、北朝鮮との交渉について調整を行うために両者が安倍首相や河野外相と電話会談を行っていることを指摘している。

 

別の日本政府高官は匿名で、「非核化問題について私たちはアメリカと全面的に協調している」と述べている。

 

スミスは、2017年に北朝鮮が日本を飛び越えるミサイル実験を行った後、安倍政権は国連を含む、国際的な反応を引き出すために効果的に活動した、と述べている。スミスは「日本は国際的な舞台で活発な活動を続けている」と述べている。

 

しかし、トランプ大統領と安倍首相との個人的な友情がハノイでトランプが行う交渉に影響を及ぼすかどうかは不明確だ。秋田は、「(安倍首相の)個人的な関係が、日本にとって好ましくない妥協をトランプ氏が行わないようにするだけの効力を持つのかどうかは分からない」と述べている。

 

安倍首相は金委員長との直接の会談の際には、1970年代から1980年代にかけて拉致された日本国民について話をしなければならないと一貫して主張している。北朝鮮は17名の日本国民を拉致したことを正式に認めた。しかし、実際の数は不明確だ。日本人拉致問題は日本の外交問題の中で政治的に最も重要でかつ感情的に緊張をはらんでいるものだ。この問題に対する最後の大きな進展は2002年に起きた。この時、北朝鮮は拉致を認め、5名の拉致被害者を解放した。残る12名の運命については不明確なままであった。この人々が生存しているのかどうかも含めて不明確なままであった。しかし、拉致問題解決に向けて進展することは、北朝鮮国内で唯一求められている経済発展への道を開くことでもあるのだ。

 

安倍首相は日本史上4番目に長い在任期間を誇る首相である。彼は自身の政治キャリアを通じて拉致問題を主眼にしてきた。安倍首相は自身の外交政策上の成果を確固としたものにするために拉致問題を一気に全面解決したいと表明している。しかし、複数の日本政府高官たちは、アメリカ政府か韓国政府の仲介があっても問題解決は難しいと諦めている。

 

戦略国際問題研究所(CSIS)の北東アジア担当研究員のスー・ミー・テリーは、北朝鮮から見れば、拉致問題は、韓国やアメリカとの関係改善と比べて、取るに足らないものであると述べている。彼女は「関係改善に向かっている中で、拉致問題は現在のところ、金委員長にとって重要度の高い問題ではない」と述べている。

 

CFRのスミスは、安倍首相と金委員長との会談が行われる場合には、これらの実質的な諸問題についても話し合われなければならない、と述べた。

 

スミスは「そうでなければ首脳会談とは言えない。また、単なる写真撮影の機会でもいけない」と述べた。

 

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