古村治彦です。
今回は日本政治について取り上げたいと思う。現在のところ、岸田文雄首相の人気は高くない。物価高に対する対応や軍事費増強のための増税のために国民の間で不満が高まっている。
岸田文雄とジョー・バイデン
岸田首相は親族の男性のほとんどが東京大学出身、自身も東大の合格者数で全国トップクラスに君臨する東京の名門私立開成高校の出身であるが、東大の入試に失敗して、二浪という形で早稲田大学法学部に入学、卒業している。早大時代には東大入試に不合格となった学生たちと集まってやけ酒を飲んでいたこともあったそうだ。早大には東大入試不合格組からどうしても早稲田に行きたくてギリギリで入学した早大偏愛組まで幅広くいるが、二浪してまで東大を目指しながら失敗してしまって、嫌々ながら仕方なく早稲田に入った、岸田首相のような人に対して、早大偏愛組は冷淡である。「あんまり早稲田出身とは言って欲しくない」という複雑な感情がある。
しかし、昨年12月、早稲田大学の大隈講堂の裏、昔の大隈重信邸の庭である大隈庭園の一部にある古民家・完之荘(かんしそう)に岸田首相、森喜朗元首相、そして、青木幹雄元自民党幹事長が集まって会談が持たれた。完之荘は卒業生であれば予約をして使うことができる。食事も可能だ。この面々であれば、都内の一流の料理屋(料亭)やホテル、更に言えば昨今話題の首相公邸で会合を持つことができる。それをわざわざ完之荘という、早大卒業生でもあまり存在を知らない場所で会合を持つというのは、象徴的な行為である。それは「早稲田部族(俺もお前も早稲田じゃないかという仲間)」としての話があったということである。
完之荘
今年亡くなった青木幹雄は、自分の早大、政治家時代の後輩である小渕恵三元首相の娘である小渕優子に派閥(平成研究会)を引き継がせたい(日本初の女性首相にしたい)、現在派閥領袖の茂木敏充自民党幹事長は首相にしたくない、早く派閥を引き継がせたいと願っていた。そのために、健康状態が万全ではない中で、大隈講堂の裏にある完之荘に出向いた。早大雄弁会時代の後輩である森喜朗も参加して、青木の悲願を後押しすることを約束した。森の影響力が強いうちに、小渕優子の派閥継承までは進めるということになるだろう。「雄弁会の先輩である青木さんの頼みだし、後輩の小渕君の娘さんのことだから」という何とも浪花節的な話ではある。しかし、このような義理人情で日本政治の人事は動いてきた。このプリンシプルに合わない行動しかできない人物はトップに立てない。威張るばかりで、パワハラ体質でもある茂木にはこのようなことはできない。岸田にしてみれば、一応は「早稲田族」でもある訳で、ここで浪花節的な早大雄弁会人脈に恩を売っておくというのは悪いことではない。
岸田首相の派閥である宏池会は保守本流として伝統を誇ってきたが、2000年の加藤の乱でガタガタにされ、分裂した。現在は谷垣グループの有隣会、麻生派の志公会、宏池会となっている。宏池会系の悲願は宏池会系の派閥の再合同だ。これによって自民党内において大きな勢力となる。岸田首相としては自身の手でこの大宏池会構想の実現を成し遂げたい。そうすることで日本政界において大きな影響力を保持できる。そこで邪魔になってくるのが、麻生太郎だ。麻生太郎は吉田茂の孫ということを前面に押し出して、宏池会の正統な後継者は自分だということで、威張り腐りながら、いまだに政界にとどまっている。麻生としては自分が大宏池会を実現して、中途半端に終わった首相在任(野党転落となった)の屈辱を雪ぎたいというところだろう。麻生太郎は野中広務に大変嫌われた。平成研究会としては相容れない人物ということになる。平成研究会としては、岸田首相の派閥である宏池会を支援するということになる。田中・大平の蜜月時代以来の協力関係ということになる。そうした中で調整役・仲介役となるのは鈴木俊一財務相となるだろう。鈴木俊一は、故鈴木善幸元首相の息子だ。鈴木善幸は東大出身・キャリア官僚出身者が多い池田派と後継の大平派(お公家様集団と呼ばれた)にあって、党人派として調整役にあたっていた。息子の俊一もまた調整役に適任の人物だ。鈴木俊一は早稲田出身であり、妹(鈴木善幸の娘)は麻生太郎と結婚しているので麻生の義理の兄ということになる。
岸田首相は「開成高校族」でもある。岸田首相は開成高校出身者として初めての首相となった。多くの東大合格者を出し、それに比例して中央官僚のキャリア官僚、政治家たちを生み出してきたが、岸田首相が初めての開成高校出身の首相というのは驚きである。開成高校出身者のキャリア官僚と政治家で構成される同窓会組織もあり、その組織が岸田首相をバックアップしているということは良く知られている。開成出身者にしてみれば、「早稲田程度にしか行けなかった勉強のできなかった人」扱いであろうが、東大法学部を出た、中央官庁のキャリア官僚になって出世コースに乗ったと言ったところで、首相の座を掴むためには、勉強の出来や頭脳明晰さだけではどうしようもない部分が大きい。
岸田首相を中心にして、開成出身の中央官庁のキャリア官僚たちはまとまって支えているということになるだろう。財務省としては、岸田首相がアメリカから「厳命」されている防衛費倍増をかなえながら、増税の幅を小さくしたい(大増税に賛成なのは防衛費増額を望む国会議員たちだ)ということで苦心しているようだ。増税の時期もまだはっきりとは決まっていない。腹芸で出来るだけ遅らせて、その間に世界の政治情勢、経済情勢の変化を待って対応しようという感じになっている。
岸田首相は2つの部族にうまくはまっている。政治力を持つ早稲田族と、中央官庁、霞が関で大きな影響力を持つ開成高校族だ。こうした2つの勢力をうまく使いながら、中央政界でうまくやっていく、誰とも衝突しないという戦略で生き延びていくと思われる。。
(貼り付けはじめ)
●「「ご遺族の意向を押し切って参列」 茂木幹事長が青木幹雄元官房長官のお別れ会に姿を見せた理由」
7/20(木) 5:56配信
デイリー新潮
https://news.yahoo.co.jp/articles/f0f8753c79027d48866a4795a4120807efb52887
https://news.yahoo.co.jp/articles/f0f8753c79027d48866a4795a4120807efb52887?page=2
山陰地方が記録的な大雨に見舞われた今月9日。島根県出雲市で、6月に死去した“参議院のドン”こと青木幹雄元官房長官のお別れ会が行われた。
「政界引退後も、平成研究会(茂木派)の実質的なオーナーとして歴代政権に影響力を及ぼした。悪天候の中、式典には300人もの参列者が集まりました」
とは、さる自民党関係者。
「青木さんのご遺族は、事前に“改めて東京でも開催します”と周知し、国会議員には声を掛けませんでした。例外的に招かれたのは、細田博之衆院議長ら中国地方選出議員のほか、小渕優子元経産相くらい。派閥会長の茂木敏充幹事長も招待は見送られていたんです」
青木氏は平成10年に発足した小渕恵三内閣で官房長官に就任。が、小渕総理は在職中に病に倒れて優子氏がその後を継いだ。その縁で青木氏は、彼女に「実の娘のように目をかけてきた」(地元関係者)ことで知られる。もう一人の招待者である細田氏は、同じ島根県選出の盟友だ。
●“茂木敏充の名義の花なら受け取るな”
先の自民党関係者が言う。
「青木さんは生前、茂木さんを“我(が)が強すぎる”などと蛇蝎(だかつ)のごとく嫌ってきた。二人の確執は最後まで解消されず、青木さんは“茂木敏充の名義の花なら受け取るな。受け取るなら平成研の名義にしてもらえ”と言い残したとも。供花の名義にまでこだわるのは細やかな配慮で有名だった青木さんらしいですが、“そこまで嫌っていたのか”と、改めて対立の根深さが浮き彫りになりました」
9日の朝、それでも茂木氏は出雲市に向かった。
政治部デスクが解説する。
「茂木にとり、この日は南米と欧州に向かう外遊の出発日。彼が強行軍にもかかわらず出向いたのは、青木の“最後の一撃”の影響を気に病んだからでしょう」
青木氏が自身の死後も続けた“茂木切り”に、茂木氏は危機感を募らせた。
「この日、小渕は弔辞を任されていました。個人名での供花すら断られていた茂木は、弔辞を読む小渕の姿が派閥の世代交代を内外に印象付けることを恐れたはず。だから彼は、あくまで遠慮を求めたご遺族の意向を押し切って、強引に顔を見せたとみられています」
●後がない茂木氏は…
折悪く、岸田文雄総理は今秋と目される内閣改造と党役員人事で、茂木幹事長の交代を検討しているとされる。
「最大の理由は東京都における公明党との選挙協力を巡るトラブルです。交代となれば、派閥における茂木の影響力低下は避けられませんが、一方で小渕の求心力は一気に高まりますね」
政治ジャーナリストの青山和弘氏はこんな見方だ。
「茂木氏は65歳の岸田総理より2歳年上で、年齢的にも次の総裁選が最初で最後の挑戦になる。衆院33人、参院21人からなる派閥の結束や小渕氏の台頭を考えれば“大雨の中、外遊の出発日に出雲まで出向いた”という事実は今後、大きな意味を持つ可能性がある。派閥の中堅幹部は“無理して行かなくても……”と鼻白んでいましたが、後がない茂木氏に“行かない”との選択肢はなかったのでしょう」
恩讐の彼方に仄見えてしまう老獪な打算――。
「週刊新潮」2023年7月20日号 掲載
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●「岸田政権は5月までもつ? 「第1次安倍政権と似てきた」の声」
村上新太郎
2022年12月14日
『アエラ』
https://dot.asahi.com/wa/2022121300069.html?page=1
https://dot.asahi.com/wa/2022121300069.html?page=2
https://dot.asahi.com/wa/2022121300069.html?page=3
秋の臨時国会が12月10日、閉幕した。焦点だった旧統一教会問題をめぐる救済新法は成立したものの、世論の評価はいまいち。相次ぐ閣僚スキャンダルも来年に持ち越されそうな情勢だ。満身創痍の岸田文雄政権、いつまでもつのか──!?
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「総理大臣は実に孤独なものです……ちょっとつらいときもあります」
岸田文雄首相は11月21日夜、母校・早稲田大学の大隈庭園内にある「完之荘」で森喜朗元首相や自民党の青木幹雄元参院議員会長らと会食し、こう心情を吐露してみせたという。森、青木両氏とも早大雄弁会出身の実力者。今後の政権運営などについて意見交換したと思われる。大物たちに悩みを打ち明けた岸田首相の真意は何だったのか。政府関係者はこう語る。
「岸田首相は、財務省出身で最側近の木原誠二官房副長官や、官邸官僚たちの進言をほぼ言いなりで聞いて政権運営をしてきた。それに対し、自民党サイドからは『事前に一切説明がない』と猛反発を食らい、政府・与党の連携欠落が明らかになった。問題閣僚の更迭判断の遅れや身体検査のずさんさなども影響し、官邸が機能不全に陥った」
「政高党低」と言われた時代から一転、いまや官邸は党を抑えられなくなっているという。物価高騰対策の補正予算案では、萩生田光一政調会長に押し込まれ、当初政府が想定していた25兆円規模から4兆円超の上積みを余儀なくされた。注目された2023年度から5年間の防衛費についても、財務省は当初30兆円台前半を主張していたが、増額を求める防衛族をバックにした防衛省に押し切られ、総額約43兆円の大盤振る舞いに。岸田首相は1兆円強の増税を表明せざるを得なくなった。
閣僚の辞任ドミノも止まらない。岸田派の葉梨康弘前法相、寺田稔前総務相に続き、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との深い接点が明らかになった秋葉賢也復興相も危うい状態だ。「岸田首相は非主流派の菅義偉前首相や二階俊博元幹事長と面会したり、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長と3人で何度も会ったりするようになった。ある程度、党側に軸足を移さないといけないと思ったようだ」(自民党関係者)
■新閣僚にも醜聞 野党の鼻息荒く
だが、肝心の支持率は低下する一方だ。共同通信社が11月26、27日に実施した世論調査によると、岸田内閣の支持率は10月末の前回調査から4.5ポイント減の33.1%で、過去最低を更新。不支持は51.6%で初めて5割を超えた。
中でも、旧統一教会問題を巡る被害者救済新法について、マインドコントロール(洗脳)された人の寄付の取り消し規定が必要との回答が75.8%に上ったことは重要だ。新法に洗脳下の寄付規制を明記しない政府方針は、世論とズレていることになる。「この数字に官邸は焦ったが、『洗脳下』は定義付けが難しい。そこで、寄付を勧誘する際、十分に配慮する規定を修正法案に盛り込むなど、内閣提出法案としては異例の、野党案を取り入れた法案となった」(与党国対関係者)という。
岸田政権の現状について、政治ジャーナリストの野上忠興氏は「閣僚が次々とドミノ辞任した第1次安倍政権と酷似している。こういう展開になると、内閣自体がもう長くない」と断言する一方で、こうも語る。
「岸田首相は案外しぶといから、支持率が30%あれば来年5月の広島サミットまではもつのではないか。状況的には20%台前半に落ちていてもおかしくないが、日本人はお人よしだから信任してしまう。ただ、岸田首相には危機感がない。自分の長男を首相秘書官にして、後ろがついていくはずがない。今、ほとんどの霞が関幹部の心は岸田首相から離れている」
政権の危機はまだ続く。寺田氏の後任に据えた松本剛明総務相は就任早々、資金管理団体が会場収容人数を超えるパーティー券を販売し、政治資金規正法違反の疑いがあると「しんぶん赤旗」にスクープされてしまった。
松本氏は旧民主党から自民党に転じた転向組で、麻生派(志公会)所属。「適材適所」(岸田首相)と言うものの、あからさまな麻生人事だ。だが、旧民主の流れをくむ立憲民主党にとって松本氏はいわば裏切り者。立民にとっては“制裁”を加える絶好の機会とあって、批判の手は緩めないだろう。立民幹部は「元々、プライドが高く、自民党内でも浮いた存在と聞く。徹底的に追及し辞任に追い込む」と鼻息は荒い。
岸田首相からすれば、松本氏や秋葉氏を更迭しようにも、これ以上、首を切ると政権がもたない恐れもある。そこで浮上していたのが年明け以降の内閣改造。人心一新し、立て直しを図るのが狙いだ。ただ、11月下旬ごろから「改造は視野に入れているが慎重に見極めようという意見が出てきた。問題大臣の交代だけで収める可能性も十分ある」(自民党幹部)という。
自民党役員人事も合わせて行うとみられていたが、国会運営をめぐり立憲民主党の安住淳国対委員長にやられっぱなしの、高木毅国対委員長も所属する安倍派の要請で交代させない芽も出てきた。
そもそも内閣改造しても支持率が上がるとは思えないが、来年5月の広島サミットで議長国として存在感を発揮して支持率を上げ、余勢を駆って解散に持ち込むというのが首相の基本戦略だろう。
最大の救いは「ポスト岸田」の有力候補が不在で、野党の支持率も非常に低い点だ。支持率がジリ貧でも、どこかの段階で解散の引きがねを引き、反転攻勢に出ることを狙っているのは間違いない。
「残念なのは、かつては三角大福中(三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘各氏)、安竹宮(安倍晋太郎、竹下登、宮沢喜一各氏)など自民党はベンチの中に予備軍がいっぱいいたのに、今はいないこと。国民の側は誰も『あの人がいいね』という発想ではなく、『あの人でいいや』という見方をする。政治の劣化ぶりもこれ極まれりだ」(野上氏)
「冗談に聞こえるかも」と前置きしたうえで、前出の政府関係者は語る。
「官邸内部ではサッカー日本代表が格上のドイツ、スペインに勝ち、メディアがサッカー一色になり政治ニュースが霞むと喜んでいた。しかし、クロアチアにPK戦で負けて、これで平時に戻ったとがっくりする職員が多いといいます」
このままでは何も成し遂げないまま、“オウンゴール”で試合終了だ。(本誌・村上新太郎)
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