古村治彦です。
中国は北朝鮮との国境線に沿って、避難民用キャンプ建設を行っているという報道が出ました。これは、チャイナ・モバイルの内部文書が流出し、少なくとも5つのキャンプを建設中だという内容が記載されていたということです。
北朝鮮で他国による軍事行動、もしくは金正恩政権の崩壊が起きた場合、難民が発生する可能性が高いです。この場合、北緯38度線の軍事境界線を越えるよりも、北側の中朝国境を超える可能性が大きいです。また、船で脱出ということになりますが、日本までたどり着くことが出来るかというと、これにはある程度の大きさの船でなければ難しいでしょう。韓国の沿岸にたどり着くものが多くなるのではないかと思います。
船で避難する場合には、韓国側がヘリコプターや救助船をかなり出すでしょう。韓国側は北朝鮮は韓国領土であり、不法な政権が占拠していると主張しているのですから、北朝鮮国民は韓国民として取り扱い、救助活動を行うでしょう。中朝国境から中国側に避難する場合には、中国人民解放軍が国境を固めて、バラバラと入ってくることを許さずに、管理して受け入れるかどうかを判断して、キャンプには選別していれるようにするのではないかと思います。
日本側でも自治体レヴェルで避難民が船でやってきた場合の想定や準備を行っているようです。避難民にまぎれた武器を携行する工作員がいるのではないかという主張もありますが、その危険があるとしても、その工作員は自分の命令主である政権がなくなっている場合に日本への潜入工作を行うのかどうか、疑問です。日本に大きな損害を与え場合に、北朝鮮の政権が生き残ることはほぼ不可能であり、命令主を失うことを工作員が行うのかどうか疑問です。また少数の工作員ができることでは日本を滅亡させることはできません。
北朝鮮からの船は途中で韓国側とアメリカ海軍の敷いた哨戒網に捕捉されることも考えると、日本側まで流れてくる数はかなり少ないものと思われます。
中国には中朝国境から今でも多くの脱北者が逃げてくるのですから、有事になればその数は大変なものとなるでしょう。ですからその流れをコントロールしたいと思っているはずです。そのために人民解放軍を国境線に張り付けて国境封鎖を行いつつ、流入を許可できる北朝鮮国民を一時的に収容するためのキャンプを建設しているものと思われます。場合によってはアメリカと韓国の許可(黙認)を受けて、北朝鮮国内に人民解放軍が進駐し、治安回復に当たる可能性もあります。しかし、北朝鮮という「緩衝材(アメリカと直接対峙しない)」は必要なので、すぐに撤退するでしょう。そして、北朝鮮は経済成長を主要な目的とする新政権ができ、国民に対する制限を少しずつ緩めながら、中国式の社会主義市場経済路線を採用することになるでしょう。そうなれば、韓国との間でも関係が劇的に改善し、朝鮮半島の統一に一歩前進ということになります。
こうしたことが2018年に起きるのかどうか、注目されます。
(貼り付けはじめ)
中国が北朝鮮との国境に沿って避難民キャンプのネットワークの建設計画を持っている(China
building network of refugee camps along border with North Korea)
―私たちが入手した文書によると、金正恩政権の崩壊による大量の避難民流入の可能性に中国政府が備えて少なくとも5つのキャンプを建設中であるということだ。
トム・フィリップ筆
2017年12月12日
『ザ・ガーディアン』紙
https://www.theguardian.com/world/2017/dec/12/china-refugee-camps-border-north-korea
中国はひそかに北朝鮮との880マイル(1416キロ)に及ぶ国境に沿って複数の難民キャンプを建設している。紛争や金正恩政権の崩壊によって避難民が押し寄せる場合に収容するためにキャンプを建設しているということだ。
難民キャンプ計画の存在を英語で初めて報じたのは『フィナンシャル・タイムズ』紙で、先週のことであった。計画が明らかになったのは、国営の巨大電話会社の内部文書がリークされたことがきっかけだった。巨大電話会社はキャンプ内にインターネット設備を備え付けることになっていると文書に掲載されていた。
「チャイナ・モバイル」文書は先週からSNSや海外の中国語ウェブサイトで閲覧されている。文書には吉林省に少なくとも5つの批判民謡のキャンプを建設する計画があることが書かれていた。
文書の信ぴょう性を本紙は独自に確かめることはできなかった。この文書には次のように書かれている。「国境を超える緊張が高まっているために、長白県の中国共産党委員会と政府は県内に5つの避難民用キャンプの建設を進めるように提案している」。
文書にはキャンプの場所と名前として、長白県の川岸、長白県シバリダオゴウ、長白県ジグアンリジが掲載されている。『ニューヨーク・タイムズ』紙は、豆満江と琿春にも避難民用センターの建設が計画されていると報じた。
月曜日の定例記者会見で、中国外務省の報道官はキャンプの存在の有無を認めることを拒絶したが、キャンプ自体が建設中かどうかについては否定しなかった。陸慷報道官は記者団に対して「私はそのような報告を見ていない」と語った。
中国外務省が作成した記者会見の公的記録には、避難民用キャンプに関する質問は削除されていた。外国人ジャーナリストが提起する政治的に微妙なもしくは不適切なテーマに関しては削除されることは日常的によく起きている。
北朝鮮は脱北者たちが国境を抜けやすい場所の守りを固めている。
流出した文書には、文書を起草したチャイナ・モバイルの社員一名の名前と電話番号が掲載されている。火曜日にこの電話番号にかけてみたが応答はなかった。キャンプの建設は、北朝鮮国内の政治的な不安定、もしくは政権崩壊の可能性について中国政府が懸念を深めていることを示している。
北京の人民大学所属の北朝鮮専門家である成暁河は、文書の信ぴょう性を認めることはできないが、中国が不測の事態に備えて準備をしないのは無責任だと述べた。
成教授は「朝鮮半島における緊張は高まっている。戦争直前の状態だ。大国であり隣国として、中国は全ての可能性に備えて計画を立てる必要がある」と語った。
日本のドキュメンタリー作家である石丸次郎は、北朝鮮国内と中国側に市民ジャーナリストのネットワークを組織している。石丸は中国側の朝鮮族の住む長白県内のある情報提供者が最近になってキャンプが建設されている兆候はないが、「キャンプの建設計画があると聞いている」と語ったということである。
朝鮮半島における緊張は今年になって高まっている。ドナルド・トランプ米大統領は北朝鮮の金正恩政権に対する圧力を高め、北朝鮮政府は核兵器と弾道ミサイル開発プログラムの進展を加速させている。
トランプは金正恩に「リトル・ロケットマン」というあだ名をつけて馬鹿にし、軍事行動の可能性をちらつかせて脅している。一方、金正恩も侮辱で対抗し、核兵器とミサイル実験を継続し、2つの新たな国連による経済制裁を受けている。
北朝鮮は2017年11月29日に大陸間弾道ミサイルの発射実験を行った。その直後に北朝鮮政府はアメリカの全領域を攻撃できる能力を有していると宣言した。
本紙は月曜日、北京でNBAのスタープレイヤーであったデニス・ロッドマンにインタヴューを行った。ロッドマンは和平調停者になりうる人物だ。ロッドマンは破滅に導く核兵器による紛争の恐怖を一笑に付し、彼が友人と呼ぶ金正恩が「アメリカ国内の人々を爆弾で殺そうとすることはない」と否定した。
ロッドマンは「俺たちが死ぬなんてことはねぇよ、マジな話がさ。そんなことは起きないんだよ」と語り、トランプ大統領に対しては自分を金正恩との間をつなぐ仲介者として起用するように訴えた。ロッドマンはトランプと金正恩との間の舌戦を「チェスゲーム」みたいなもので、真面目にとらえてはいけないと述べた。
中国政府は事態がそのように確かなものだとは見ていない。先週、北朝鮮の核実験場に最も隣接する吉林省の公的な新聞は、新聞の全面にわたる長文の記事を掲載し、その中で、核兵器をめぐる事故が起きた場合の対応策について述べ、中国側が神経を尖らせていることを示唆した。
『吉林日報』は読者に対して、ヨウ素入りカプセル、マスク、石鹸が核兵器の事故には有効であると報じた。
(貼り付け終わり)
(終わり)