古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:枝野幸男

 古村治彦です。

 

 昨日、自由党の小沢一郎代表が立憲民主党の枝野幸男代表と会談を持ちました。昨日は立憲民主党が党本部をお披露目した日でした。

 

 自由党の小沢代表は明日の国会で行われる総理大臣指名選挙で枝野氏に投票すると決め、その旨を枝野代表に伝えました。

 

 今回の総選挙において、小池百合子東京都知事によって希望の党が結党され、民進党の前原誠司代表が民進党全員による合流という提案を行い、そこから野党が分立する形となり、民進党は、希望の党、立憲民主党、無所属の会(民進党の党籍を持つ衆議院議員)、民進党(参院議員)に分裂しました。選挙戦も野党分立となり、結果として、自公に勝利を許す結果となりました。

 

 希望の党結党からの動きに関しては、小沢一郎氏も関与しているという話も伝えられました。そして、自由党や小沢氏に近い人々が希望の党から立候補するということにもなりました。しかし、これらの人々は選挙間近での国替えを求められ、全く活動したことのない地域での選挙戦を余儀なくされ、落選することになってしまいました。

 

 希望の党の結党に小沢氏が関与していた、シナリオを書いていたという主張に関して、私は本当だろうかという疑問を抱いていました。もしかしたら、小沢氏は名前を利用されただけで関与していないのではないかと私は考えています。

 

 小沢氏は今回の総選挙で野党共闘によって安倍政権を退陣させるという目標をもって活動してきました。そのために、民進党、共産党、社民党と話し合いを続けていました。そして、野党共闘が成立しかけていた訳ですが、希望の党が結党され、この枠組みは崩壊することになりました。希望の党は公明党や日本維新の会に秋波を送りながら、立憲民主党の候補者が立候補した選挙区にことごとく候補を立てました。

 

 今回の小沢氏の枝野氏との会談は、小沢氏の凄みを示しています。民主党が政権交代を実現させたのは小沢一郎氏の功績です。しかし、党内の争いのために小沢氏グループは離党し、民主党は衰退の一途をたどることになりました。この党内の争いには当時の執行部であった枝野氏も関与していると思います(ご自身はレッテル貼りだと言われています)。

 

 しかし、選挙後、新たな野党共闘に向けて、恩讐を捨てて枝野氏と会談を持ち、枝野氏に投票するということを言える小沢氏はやはり大人物です。希望の党の立ち位置がいまいちはっきりしない中で、まずは野党第一党である立憲民主党と協力関係を築き、自分たちを接着剤として共産党、社民党とつなげていく、そして、無所属の会や希望の会とも連携していくというところまで、小沢氏の視野に入っていることでしょう。

 

 小沢氏は、自分の置かれた状況の中で、悲憤慷慨も有頂天になることもなく、「今自分がすべきことは何か」を把握し、それを淡々と行うことができる、日本人では稀有な存在です。おそらく政治生命が尽きる時(それが肉体的な生命が尽きる時と同じになる可能性が大いにあります)まで、自分がやるべきだと思ったことを淡々と実行していく人でしょう。

 

 この点では、小沢氏は西郷隆盛とよく似た人物と言えるでしょう(ご自身は大久保利通のほうが尊敬できる部分があると述べていたように記憶しています)。

 

 安倍政権退陣と自民党の傲慢さの解消のために、野党共闘2.0がこれから始動し、機能することを願うばかりです。この時には失敗をしても停滞があっても、我慢をして続けることが重要なのだろうと思います。そして、それができる粘り強さを持つのが小沢一郎氏なのだと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

総理指名選挙 自由党は立憲・枝野代表に投票へ

10/30() 23:38配信 テレ朝 news

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20171030-00000057-ann-pol

 

 立憲民主党の枝野代表と自由党の小沢代表が会談し、自由党は来月1日に行われる総理大臣指名選挙で枝野氏に投票する方針を伝えました。

 

 立憲民主党・枝野代表:「首班指名で私の名前を書いて頂けると。大変光栄ですので、お礼を申し上げました」「(Q.小沢さんと枝野さんはかつて確執も?)それはマスコミが貼っているレッテルですから」

 

 会合は、小沢代表からの呼び掛けで行われ、立憲民主党からは枝野代表と福山幹事長が出席しました。枝野代表は、今後の自由党との連携について「今の政治状況を変えなければならないというのは同じ思いだ」と述べたうえで、「共通の目的があるので緊密に意見交換をしていきたい」と野党で連携して安倍政権と対峙していく考えを強調しました。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)








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 古村治彦です。

 

 台風21号の接近、上陸の中、第48回総選挙の投開票が行われました。台風のために投票所の閉鎖時刻が早まる場所や、離島からの投票箱が届けられずに開票ができない場所が出てきました。このような状況では投票所の一時閉鎖と翌日の再開といった対処が必要ではないかと思います。台風のために参政権を行使することができない人がいるならば、その行使に全力を挙げるのが民主国家であると思います。

 

 選挙結果は、自公大勝ということになりました。現在のところ、自民党は公示前の勢力を維持、公明党は5議席減少、ということでほぼ公示前勢力を維持することに成功しました。自公だけで総議席の3分の2を獲得しました。自公に関しては、9月の段階では、勝敗ラインは過半数の233、その後、情勢調査が出て、絶対安定多数の261という話が、安倍晋三首相の側近・萩生田光一代議士から出ていましたから、まさに大逆転ということになりました。

 

 希望の党は公示前から8議席を失い、50議席前後、日本維新の会は4議席失い、10議席は確保、という結果になりました。立憲民主党は公示前15議席から約40議席を伸ばして54議席、共産党は21議席から9議席を減らして12議席、社民党は1議席は確保していますが、比例でどうなるか、分からない状況です。今回、民進党から無所属で出馬した候補者は20名以上が当選しました。比例復活がない中で当選してくるのは地盤が強いということになります。

 

 選挙速報の中で、共同通信や時事通信は、自民、公明、希望、維新を「改憲勢力」としてまとめ、この勢力で310議席を超えたという速報を打ちました。確かにこれら4つの政党で465議席中370議席という大きな数字を占めることになりました。希望を抜いても自公維で310議席以上320議席に迫る数字となっています。

 

 自公大勝、改憲勢力大勝ということになりました。野党は惨敗という結果になりました。しかし、9月から10月の初めにかけて、この言葉は、自公惨敗、希望大勝となるはずでした。安倍首相が解散を決断し、総選挙の投開票日が10月22日とされたころを思い出してみれば、安倍首相には森友学園小学校や加計学園岡山理科大学獣医学部の新設に絡む問題が付きまとい、安倍政権の支持率は下がっていました。そうした中で選挙をして、自民党は大丈夫なのか、過半数割れもあるという話になっていました。実際に9月末の状況では、自公で250議席を確保するのではないか、と言えば、「お前の予測は甘い、自公は過半数割れするのだ」という叱責を受けることさえありました。この時、私は自公で250、希望で150、それ以外で65ということになるのではないかと考えていました。かなりおおざっぱですが、希望が勝つだろうと思っていました。自公が公示前よりも40も50も減らせば、安倍首相の責任問題になって政権は持たないだろうし、それ以上の数字となれば倒閣運動が起きるのではないかと考えていました。

 

 しかし、私は同時に希望の党に懐疑的、批判的でありました。それは、このブログでも書きましたが、小池百合子東京都知事が安倍晋三首相と思想的に何の違いもないことやアメリカのジャパン・ハンドラーズとも関係が深いことを挙げて、希望の党は本当に自民党と対抗する野党なのだろうかということを書きました。小池都知事は、首班指名に関して、公明党の山口那津男代表の名前を挙げてみたり、維新との連携を図ってみたり、自民党との選挙後の連携、特に安全保障政策について連携する可能性に言及するなどの行動や言動を行いました。そして、選挙の候補者名簿を見てみれば、公明党が重視し候補者を出している小選挙区、日本維新の会(大阪の選挙区)、自民党・石破茂代議士に近い議員の選挙区には候補者を擁立せず、立憲民主党に対しては律儀なほどに対抗馬を立ててきました。

 

 思い出していただきたいのは、希望の党の結党から10月10日頃まで、希望の勢いは大したもので、立憲民主党は酷いものでした。「立憲民主?なんじゃそりゃ?潰してやるよ」という鼻息の荒さでした。希望の党は15議席も守れないだろうなというのが、10月10日に大宮駅西口での枝野幸男代議士の演説を聞いていた時の私の感想でした。同じ日の数十分前には小泉進次郎代議士が来ていて、その時の人の集まり具合を見ていたので、やはりそれよりも少ない人数でしたので、特にそう思ったのかもしれません。

 

 選挙戦が始まってみれば、安倍政権に対する支持率は上がらないが、自公が300議席をうかがう勢いという情勢調査の結果が出てきて、驚かされました。289の小選挙区の情勢を丹念に調査していけば、ある程度確度の高い分析ができるのでしょうが、それでもいくら何でも300は、と驚かされました。そして、希望の党の失速もまた驚くばかりのものでした。都知事選挙や都議会議員選挙の時の勢いはなくなっていました。

 

それはマスコミが面白おかしく報道したこともあるでしょうが、そのような報道をさせる隙を作ったのは小池都知事と希望の党であるし、何より、希望の党の曖昧さというか、どこか信じられないというところが有権者にあったと思います。小池都知事にマスコミは何度も総選挙への出馬はないかということを質問しました。私はどうしてそう何度も質問するのだろうか、小池さんは出馬は100パーセントない、と述べているのに、と思っていました。このパーセントを使った表現に関しては、小池さんにかわいそうな面があって、橋下徹氏が選挙に出る、出ないというときに%という表現を使って出馬はないと述べたが、結局出馬したということもあって、パーセントを使ってしまうとどうしても信用できないという印象が持たれやすくなっている状況もあって、これは小池さんには気の毒なことでした。しかし、彼女の煙に巻くような、少しすかした、馬鹿にしたような発言や行動は他にもあって、それが報道されて、希望の党への支持が伸びなかったということもありましょう。

 

 私は希望の党が無理やり過半数の233人の立候補者を立てたことに疑問を持ちました。そして、その中身を見て、憤りを覚えました。選挙はやはり勢いや風ではうまくいきません。国政選挙、特に総選挙では有権者は特に慎重になります。日頃から地道な活動をしているから応援してやろうということになります。どうしてもそうなります。それなのに、その選挙区から代議士となっている人、代議士となった経験がある人、選挙に備えて地道に活動してきた人たちに対して、選挙区の変更が指示されました。自由党に属していた人や小沢一郎代議士に近いと言われている人たちからそのような人が多く出て、私はどうしてそんなことをするんだと憤りを覚えました。

 

樋高剛氏という人物がいます。樋高氏は小沢一郎代議士の秘書として研鑽を積み、生まれ育った神奈川で代議士を目指し、3回の当選を経験した人物です。義父は平野貞夫元参議院議員で、小沢氏の側近と言える人物です。2012年、2014年に苦杯をなめましたが、地道に活動を続けていました。しかし、樋高氏は今回千葉県の選挙区から立候補し、落選しました。いきなりの国替えで、名前を覚えてもらうところから始めてよく3万6000票も獲得できたものだと思いますが、これでは人材の無駄遣いです。このような例はほかにもあります。そして、立憲民主の候補者がいる場所には律義に広報車を立てて、自民批判票を分割して共倒れ、希望の党のほうが獲得票数が多い小選挙区が少なく、立民支持者からは「希望が本当に邪魔だったなぁ」という嘆き節が出てくる始末でした。

 

 しかし、このような嘆き節が出るはずではなかったのです。希望が少なくとも100議席は獲得、うまくいけば150議席だ、ということになっていたを思い出すと、どうしてこうなったのかということを今更ながらに思います。そして、小池都知事の振りまいた幻影と風が今回の総選挙では自公を利しました。小池都知事の吹かせた風が逆風となって希望の党に吹き付け、前進を阻んだということになります。小池氏が自民党を助けるために、希望の党を作って野党を分断したということまでは言いたくありませんが、結果としてはそうなってしまいました。意図してそうしたかどうかは分かりませんが、外形上そうなってしまいました。

 

 野党、安倍政権批判勢力が大敗したことは間違いありません。野党が分立し、しかも野党の核となるであろうと考えられていた希望の党に逆風が吹く中ではいかんともしがたいということになりました。立憲民主党は現有から40議席伸ばしましたが、これを喜ぶことは当然ですが、浮かれてはいけないと思います。支持者で浮かれている人は少ないでしょう。希望、民進系無所属、共産、社民といった野党、維新という「ゆ党(野党でも与党でもない)」、自公という与党の中で、自分たちの立ち位置を確かめ、これから支持を拡大していくという作業が必要になります。参加しているプレイヤーが多くなるとどうしてもその作業は複雑なものとなります。ここで失敗すると順風から逆風になりますし、その変化の速さは希望の党が今回示しました。

 

 総投票数、各政党の獲得票数といったことをこれから見ていかねばなりませんが、自民党に対する票数が全投票数に占める割合は、議席に占める割合である約60%を大きく下回っているでしょう。野党が分立してさえいれば、漁夫の利で自公が勝利する、ということを2012年からずっと見せられてきました。野党共闘の枠組み作りが全国各地で進められてきましたが、結局それはうまくいかないということになりました。

 

 前原誠司・民進党代表は野党共闘路線ではなく、希望に全員合流して、一気に巨大政党を作り上げることをもくろんだのでしょう。しかし、希望の党の結党メンバーには民進党のリベラル派が嫌で離党した人々が多く、とても全員が合流できる状態ではありませんでした。また、安保法制であれだけ反対していたのに、希望の党から出るということは、その時との整合性を問われるということになります。自公からそのような戦いを強いられたら、厳しい戦いになったことは間違いありません。また、小池氏は自分の子飼いを増やすということもあったでしょうから、民進系は厳しい処遇をされたことでしょう。自由党から言った人たちに対する扱いを見ればそのように思わざるを得ません。

 

 希望の党にも行けない、行っても厳しい、当選も難しいという「負け犬」たちが作ったのが立憲民主党です。しかし、この立憲民主党に支持が集まってしまったのです。これは安倍政権もいや、だけど、小池都知事もいやという人たちの受け皿となりました。私はこれまでずっと枝野幸男という政治家に批判的でした。しかし、安倍晋三、小池百合子、枝野幸男と並べられて、誰を支持するかと問われたときに、枝野幸男という選択しかありませんでした。「立民は現有維持できないだろうな、いやできるかもしれない、へー20台獲得という話も出ているのか、倍増の30?本当に?、40台なんてそんな馬鹿な」という感情の変遷がありますので、立憲民主党が50台を獲得できたことはうれしいですが、はたしてこれからどうしていくのか、いけるのかということには不安もあります。

 

 自公は自分たちへの支持が増えなくても、野党が分立してくれれば勝てるという基本戦略を確立しました。それに対しての対抗策は、野党がまとまること(候補者を立てあって潰しあうのを止めること)しかありません。今回の選挙で大きな傷が野党側に残ってしまいました。希望と立民が協力することは難しいかもしれません。また、小池氏が敗北を認めた希望から離脱する議員も出てくるのではないかという話も既に出ています。そうなったときに、元民進党の再合流となる時には、民進党の再興では意味がありません。リベラルから中道右派までを包むアンブレラパーティーになることが重要であると思います。

 

 今回は自公惨敗、となるべき選挙でした。それが野党分立となってしまったことは、野党側に責任があります。自民党を利してしまったという事実は厳然として残ります。そこで、どこが悪い、何が悪いということを言い合うのはありですが、それをいつまでも引きずっても自公を利するだけです。自公政権、安倍一強状況を打ち壊すために何が最善なのかということを考えていかねばなりません。

 

(終わり)



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





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 古村治彦です。

 

今回の選挙ほど序盤と中盤以降で評価が大きく振れた選挙は珍しいのではないかと思います。最初は自公過半数割れという話が出て、その後、中盤以降では自公が300をうかがう勢いという数字が出ています。現在の状況は分かりませんが、アナウンスメント効果とアンダードッグ効果が出て自公の伸びが抑制されていると思います。自民党の伸びは鈍化し、立憲民主党の指示が急速に伸び、希望の党は下落傾向に歯止めがかかっていません。立憲民主党の結党に際して、ダメだろう、日本未来の党の末路を見てみればわかる、という意見もありましたが、まさか、希望の党が日本未来の党のようになってしまうとは誰も予想できませんでした。私は「未来」「希望」のような抽象的な言葉ではなく、「立憲」「民主」というはっきりした言葉を使う潔さと真面目さが有権者に受けたのだろうと思います。

 

 選挙戦では「安倍・自公対小池・希望」の一騎打ちという図式がマスコミでも盛んに喧伝されましたが、有権者もバカではありません。それは表面上だけのことで、本当は対立なんかしていない、安倍・自公も小池・希望も同じじゃないかとなって、「改憲翼賛会(現代版大政翼賛会・米政翼賛会)である自公維希対立憲民主党・共産党・社民党や無所属など」が正しい図式だと理解しています。それは、小池百合子東京都知事の優柔不断さを見てみればわかります。彼女は勢いと風に乗って、民進党の自民党とやっていけそうな前職・元職、そして希望の党プロパーの候補者たちを当選させ、国政に復活するつもりであったと思わざるを得ません。しかし、「安倍晋三首相2号」を国政に送り込むことを、1号にうんざりしている国民が選択することはありません。

 

希望の党は、立憲民主党にはライヴァル候補を擁立し、日本維新の会や公明党には立てなかった、ということで、「ああ、あわよくば自民党の地位に自分たちが入って連立政権を組んで、小池百合子氏が首相になって改憲をしたい(これじゃ安倍晋三氏と違わない)、もしくはこれらの党に気を遣ってうまくいけば自民党と大連立を組みたいのか(結局改憲に協力して、小池氏が次の総理を狙うためか)」ということを国民に看破されてしまったからです。

 

安倍首相と考えが一緒の小池百合子氏を利用して勢力を増やそうとしたと言われる前原誠司代議士(一応まだ民進党代表)と小沢一郎代議士(自由党共同代表)は策士策に溺れる、もしくは、策の弱い部分を小池氏に利用されてうまく騙されて、自分たちはポイ捨てされたということになります。小池氏は民進党の自民党に考えが近い前職に希望の党のプロパー新人候補者を入れて、安倍氏よりもタカ派路線で国政復帰を目指していたのでしょう。そのために前原氏は民進党を供物として差し出す羽目になり、小沢氏は目指していた野党共闘の形を崩壊させる結果になりました。小沢氏の構想力と説得力は日本政界随一でしょう。惜しむらくは、その構想を実現することに貢献できる人物が周囲にいなかったということでしょう。自由党系で希望の党から出馬した人たちはそれぞれ地道に活動していた地元から離れた場所に「国替え」をさせられました。こうした人たちが地元で出ていたらどんなに良かっただろうかと思います。

 

 小選挙区制度を導入して二大政党制を日本に実現する、ということが果たして良かったのかどうか、という問題について、私は問題が多かったと思います。最大の問題は、自民党に対してつけられていた「拘束具」が外されてしまった、ということだと思います。小選挙区制になって、特に小泉政権以降の選挙では、大勝ち、大負けという結果が出るようになっています。得票率に比べて議席数が割高に出てくるのが小選挙区制の特徴で、これを抑えるために、比例代表制も併せて採用していますが、それでも、勝つときは大勝ち、負けるときは大負けとなります。

 

これを防いで、与野党伯仲状態を作り出すためには、小選挙区と比例区で別の政党に投票する、与党支持者の場合であれば、小選挙区で与党候補者、比例で野党(できれば野党第一党)に投票する、野党支持者であれば小選挙区、比例共に野党に入れるということをしなければなりませんが、これはこれで大変複雑なことを有権者、特に与党支持者に強いる、お願いすることになりますから、難しいです。やはり応援している政党に勝ってほしいですから。また、無党派層が多いので、それがどちらにふれるか、投票に行くかでも結果が大きく変わります。ただ、国民の多くはあまりに強力な与党の出現は求めておらず、はっきり言って、小選挙区制とその結果としての二大政党制は日本にそぐわないと私は考えます。

 

 大勝ちした政党は本来であれば、民意よりも大きく反映された議席数を与えられたことに畏怖を感じ、権力を行使する際には慎重にかつ協調的に行おうとするものです。しかし、小泉政権以降の自民党政権は少数の例外を除いて、権力をふるうことに畏怖を感じず、やりたい放題ができるという勘違いを基礎にして行動してきました。恐怖を感じ慎重にふるまうためにはこれまでの人類の歴史を知り、人間は愚かなのだから慎重に行動しなければならない、ということを知らねばなりませんが、残念ながら今の自公連立政権は学歴や職歴は超一流でまばゆいばかりですが、そうしたことを忘却している、ネトウヨに実際に権力を持たせたらこうやるだろうなということを実際にやっているにすぎません。

 

 今回の選挙では自民党と公明党の連立枠組みは序盤大変厳しい状況が伝えられました。100議席を失って過半数割れをするのではないか、と言われていました。それは、小池百合子東京都知事が希望の党を結成し、都知事選挙、都議選挙での小池旋風の凄まじさに人々が目くらましをされていたためです。希望の党が出現し、民進党は合流する形になるはずでしたが、全員が希望の党に行けないということになり、小池氏の安倍氏と同じ考えに同調すること(踏み絵を踏む)ということが要求され、民進党合流はなくなりました。この時点で、簡単に言えば民進党は2つに分裂させられました。そして、野党共闘体制も崩壊させられました。自民党に批判的な無党派層有権者の票は分散し、死に票が増え、結果として自民党が漁夫の利を得るということになります。

 

 しかし、希望の党から排除された人々が立憲民主党を創設し、選挙戦に新たな軸を立てました。安倍政治とそれに親和性の高い小池政治とは違う、2本目の対抗軸です。立憲民主党は希望の党のように選挙に多くの候補者を出すことができませんでした。準備が足りませんでした。しかし、今や希望の党を上回る支持を集めているという世論調査の結果も出ていました。立憲民主党が野党再編の軸となって、リベラルから中道へとウイングを広げていく、そのために無所属、希望の民進系で心ならずも公認をもらったという人たち、が協力できる体制づくりが必要でしょう。そうなると、希望の党は分裂してしまう可能性は高いです。希望の党の結党メンバーのうち何人が国会に戻ってこられるか分かりませんが、民進系の大量離脱となると、希望の党は先細りということになるでしょう。そうなれば極端に言えば、彼らは自民党に吸収されてしまうかもしれません。それはそれで彼らのためかもしれません。

 

 今回の民進党の分裂は、自民党内の保守本流である宏池会(池田派を源流とする)の分裂と同じで、分裂が長引けば日本政治に大きなマイナスとなってしまいます。自民党内の保守本流・宏池会は2000年の加藤の乱で崩壊してしまいました。その後、合流ということもなく分かれてしまって、党内における力を落としています。その間に、保守傍流である清和会(岸派を源流とする)が勢力を伸ばし、やりたい放題となって現在に至っています。

 

 「リベラルから中道」をまとめるべき勢力である、自民党内宏池会と民進党が分裂したままで喜ぶのは安倍首相が属する清話会をはじめとする、日本政治の傍流の人々です。ですから、自民党内部の宏池会の復活と立憲民主党を軸とする野党再編、民主党勢力の結集は選挙後の急務です。これらの勢力が伸びねば、安倍首相一強状態を抑制することはできません。
 

 リベラル分断・野党殺しは、2012年のマイケル・グリーンの記事にもあったジャパン・ハンドラーズの安倍首相支援のシナリオです。私は意図的なのかどうかはともかく、小池都知事はこのシナリオに乗った、しかし、今回は日本国民がこのたくらみを見抜いて、リベラルを支援する方向に動いているということだと思います。また、世界的に見れば、アメリカでは民主党のバーニー・サンダース連邦上院議員、イギリスでは労働党のジェレミー・コービンといった指導者たちが人々の支持を集めています。立憲民主党の堅調さはこの世界的な流れの中に位置づけられると思います。

 ですから、立憲民主党が40台後半、民進系無所属が20前後、希望の党の心ある民進系で何とか30、合計で100に近い90台後半を結集させることが今回の選挙では重要であると思います。希望の党の小選挙区の候補者で、希望の党プロパーではない民進系でよさそうな人にはその人に投票、その人が危なそうであれば、比例で希望の党に投票、をお願いしたいと思います。そして、無所属の人の場合には、比例には立憲民主党か共産党、社民党をお願いしたいと思います。自民党支持者や公明党支持派の皆さんも、どうか比例だけでもこの3党にご投票ください。お願い申し上げます。

 

自公政権の議席を1議席でも削り取り、立民共産社民の議席が増えて欲しい、そう願っています。

 

(終わり)



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




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古村治彦です。

今回の総選挙について、現在の時点での結果予想が出ました。自公が堅調、希望不振、立憲民主に勢いというところです。

 

自公は公示前の勢力が325議席でしたから、300議席をうかがう勢いとなると、290議席台ということになります。減少する議席数は30から35ほどということになります。公明はいつも手堅いので、そんなに大きな増減はないでしょうから、自公枠組みでの結果は、自民党の結果が大きく左右します。

 

先週は、自公連立が過半数割れ、公明党が自民党から離れて希望の党と連立を組むという話も出ていました。そのシナリオを書いているのが、小沢一郎代議士だという話もまことにしやかに話されていました。しかし、小沢氏は希望の党の結党について、話を聞いて、「これなら反安倍の議員を当選させることができる」と思ったが、それ以上はかかわっていないのではないかと私は考えます。前原誠司・民主党代表はもっと深くかかわり、希望の党結党メンバーの元民進党議員たちに騙されてしまったのではないかと考えます。希望の党と民進党の混乱については、選挙後に関係者が虚心坦懐に証言をすることが日本政治のためであると考えます。

 

希望の党は現有勢力からあまり伸びがないという予想結果が出ています。先週の予想結果では100議席という予想が複数のメディアで出ていました。それが60前後ということになるという厳しい結果が出ました。希望の党が立憲民主党と共倒れをするような立候補者の立て方をしたことがやはり大きいと思います。また、比例で希望に入れた場合に、好ましくない人物が議員になってしまうという警戒感も大きいと思います。新党でこれだけ風が吹かない新党も珍しいです。2014年の日本未来の党を思い出します。今の状況では、希望の党は、自民党をアシストするために結成されたということ以上の役割を今回の選挙で果たせないということになります。

 

立憲民主党は倍増ということですが、元が小さい政党ですから、増えても30台ということだと言われています。これからの更なる伸びが期待できると思いますが、30台後半から40に近づけることもできると思います。

 

共産党は野党共闘の枠組みを尊重して、候補者調整に一番貢献があったわけですから、やはり比例でいつもは共産党以外に入れている人たちに向けて、一種の抵抗感、躊躇をなくすようにできれば、これから更なる上積みが期待できると思います。

 

日本維新の会は大阪でもだいぶ苦戦しているようだという話を聞きました。小選挙区で希望の党の立候補者がいないにもかかわらず苦戦となると、現有維持から微増が精いっぱいのところでしょう。関東では好ましくない人物が比例で当選してしまうことのないようにしてもらいたいと願うばかりです。国会にこれ以上、品位を落とす暴言議員は必要ありません。維新は自民や希望との差別化がうまくいっていないのではないかと思います。社民党は小選挙区1、比例1を何とか確保したいところです。

 

希望の党で当選してくる人たちのほとんどは、民進党の前職だった人たちでしょう。彼らについては、やはりこれからも希望の党でやっていくのかどうか、をよく考えてもらいたいと思います。現在、希望の党で出ていることは決してプラス要因ではないのですから、それで小選挙区で勝ち抜いてきた人たちは、希望の党に対していろいろと注文を付けることができるし、場合によっては離党することだって考えられるでしょう。

 

今回、安倍首相に退陣してもらう機会でもあるわけですから、自民党の議席を大幅に減らすことが重要ですが、問題は希望の党がそれを促進しているどころか、邪魔をしているということです。安倍首相に退陣してもらいたい人たちは、それぞれの選挙区の立候補者をよく見て、どのような選択が安倍首相退陣につながるのかということを考えつつ、安倍氏のエピゴーネンになるような人たちは国会に出さないという、アクロバティックな方法を考えねばなりません。しかし、それは意外に難しいことではないと思います。

 

また、選挙は最後の最後まで分からないと言いますし、勝ち馬に乗る「バンドワゴニング」が起きるか、判官びいきの「アンダードッグ」が起きるか、あと10日間で分かりません。

 

これから自民党の議席数を少しでも削り取り、立憲民主党の議席数を増やしてほしいというのが私の希望です。野党の立憲勢力の議席を150議席に近づけてもらいたいと思います。改憲のための大政翼賛会、米政翼賛会の結成を阻止するために。しかし、今回の世論調査の結果ではそれはかなり困難なことだと思われます。アメリカのジャパン・ハンドラーズによる、日本の野党勢力殺し、リベラル殺しのシナリオがうまく働ているという感じです。私がこれまでに書いてきましたように、小池百合子東京都知事はその手駒の一つだと考えねばならないと思います。

 

はっきり申し上げて、小池百合子氏を担ぎ上げた人々の思惑は大きく外れ、逆回転が起きて自分たちが苦しむ結果になっています。そのために日本政治は大きな困難を迎えようとしています。私たちは現在の状況をしっかり目撃し、記憶し、間違いを正していく、という作業をずっと続けていかねばなりません。それこそが日本のデモクラシーを生き延びさせる確実な方法であると考えます。

 

(貼り付けはじめ)

 

●「衆院選序盤情勢 自公300議席うかがう 立憲民主、倍増も 希望、伸び悩み」

 

産経新聞 10/12() 7:55配信 産経新聞

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171012-00000054-san-pol

 

 産経新聞社は11日、第48回衆院選(22日投開票)について全国の総支局の取材に共同通信社の電話世論調査の結果などを加味し、選挙戦の序盤情勢を探った。自民党は選挙区、比例代表で優位に立ち、連立を組む公明党と合わせ300議席をうかがう勢いだ。過半数(233議席)を超える235人を擁立した小池百合子代表(東京都知事)率いる希望の党は伸び悩み、100議席に届かない公算が大きい。

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                   ◇

 

 安倍晋三首相(自民党総裁)は自民、公明両党で過半数の獲得を勝敗ラインに掲げている。序盤情勢では自民党は単独で過半数に届き、絶対安定多数(261議席)を上回る勢いだ。絶対安定多数は常任委員長ポストを占め、委員数でも野党を上回る議席を確保し、国会運営が安定する。公明党は公示前勢力を維持する見通しだ。

 

 公示前は57議席だった希望の党は60議席前後にとどまるとみられる。小池氏は政権選択選挙を掲げ、民進党前職を含め多くの候補者を擁立したが、選挙区、比例ともに勢いがみられない。小池氏の不出馬に加え、党として首相候補を示していないことが影響した可能性がある。東京と大阪で希望の党と候補者をすみ分けた日本維新の会は、関西圏を中心に議席を獲得し、公示前の14議席から微増となる見込みだ。

 

 枝野幸男代表が立ち上げた立憲民主党は公示前の16議席から倍増の勢いとなっている。民進党から分裂した立憲民主党は護憲色が強く、安全保障関連法を「違憲」とする共産党が競合する選挙区で候補者を取り下げたことも追い風になっているとみられる。

 

 一方、共産党は公示前の21議席の維持が難しい情勢で、社民党は公示前の2議席を維持する見通しだ。

 

 ただ、共同通信の調査では投票先を「決めていない」との回答が選挙区で54・4%、比例代表で47・2%に上った。無党派層の多くが投票先を決めていないとみられ、投開票日に向けて情勢が変化する余地も残っている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回はアメリカの著名な政治学者であるウォルター・ラッセル・ミードによる現在の日本の政治状況に関する記事をご紹介します。

 

 簡潔に述べると、ミードは、「現在、日本の政治状況は激動しているが、実は安定に向かっている。希望の党は自民党の新たな派閥であって、最終的には安倍氏が勝利する」ということを主張しています。

 

 外側からの目で見れば、安倍晋三首相と小池百合子都知事は対立する関係ではなく、一緒なのだということが明らかなのです。これは私がこのブログでも採算申し上げてきたことです。しかし、希望の党は自民党の派閥のような存在であるというのはミード氏の慧眼と言えましょう。

 

 メディアでは10月22日の選挙予測が出ています。自公の枠組みで100議席を減らす、もしくは自民党は単独過半数割れとなるが自公枠組みで過半数維持、といった予想が出ているそうです。自公が減らす分が希望に行ってしまうと、これはミード氏によると「自民党の派閥」なのですから、大きくは自民党に入れることと一緒になってしまうことになります。

 

 希望の党は民進党の前職や元職が多く公認を受けています。彼らがよもや自民党の一派閥に入った、自民党を助けるために存在するということは考えたくありませんが、外側の大きな目から見るとそうなってしまいます。ですから、民進党出身で心ある候補者の方は、希望の党の公認で当選しても、是非良識的な行動を取っていただきたい、自民党の派閥の一員に成り下がるようなことはないようにお願いしたい。

 

 私は自公の枠組みが大きく議席を減らすということは喜ばしいことだと思います。そして、その後に何が起きるだろうかということを考えてみたいと思います。自公の減少した議席数が大きれば大きいほど、安倍首相の退陣の可能性は高まります。しかし、自公が減らした分が希望の党に行く場合、しかも元民進党よりも希望の党独自の候補者が多く当選する場合、これは自民党の派閥になる可能性が高くなります。そうした人々がまとまって、自公と連立政権を組む、それに維新も入る、ということになると米政翼賛会、現代版の大政翼賛会が完成することになります。

 

 この時の大義名分は、「北朝鮮を巡る外交上の危機的な状況の中で、救国大連立を組む、そして、その指導者にはこれまで通り安倍晋三氏を立てて、継続性と安定を図る」ということになるでしょう。こうなると、小池氏は一度自民党に反旗を翻しながら、自分の手兵を率いて再び自民党に帰ることになります。そうなれば、一気に次の首相候補、ということにもなるでしょう。

 

 このような馬鹿げたシナリオが現実のものとならない為にも、希望の党の候補者に関してはきちんと調べて、投票すべきだと思います。希望の党のオリジナルメンバーと彼らに近い人物たちは、おそらく、自民党の一派閥になることに躊躇がない人たちでありましょうから、是非次の国会で議席を占めないようにしてもらいたいと考えます。

 

(貼りつけはじめ)

 

日本の選挙をめぐるドラマは、その激しさとは裏腹に日本政治の安定を示すものだ(Japan’s Electoral Drama Belies Its Stability

―安倍首相と彼の最大のライヴァルは主要な問題の多くで合意している

 

ウォルター・ラッセル・ミード(Walter Russell Mead)筆

2017年10月2日

『ウォールストリート・ジャーナル』紙

https://www.wsj.com/articles/japans-electoral-drama-belies-its-stability-1506983937

 

日本は世界の諸大国の中で最も低い評価しかされていない国であるが、通常は最も落ち着いた国である。1955年の結党以来、自由民主党が日本政治を独占してきた。現在、公明党と一緒になって連立与党となり、国会の両院で3分の2の議席を有している。

 

しかし、現在の日本はこれまでよりも爆発しそうな雰囲気になっている。これは先週始まった。安倍晋三首相は10月22日に衆議院の解散総選挙を行うと決めた。人気の回復と野党側の混乱を利用しようと考えてのことだ。しかし、安倍氏の計画は、覆されてしまった。カリスマ性を持つ東京都知事小池百合子氏が新党「希望の党(“Party of Hope”)を結成し、総選挙において全国規模で立候補者を出すと発表したのだ。僅か3か月前、小池氏率いる地域政党「都民ファーストの会(“Tokyoites First”)と協力政党(訳者註:公明党など)は地方選挙で圧勝した。東京都議会では127議席の3分の2に少し足りない議席を獲得した。

 

ドラマが一気に進展したのは先週のことであった。国会の野党第一党である民進党が驚くべき発表を行った。それは、民進党は衆議院内における会派を解散し、来たる総選挙において議員たちが小池氏の旗の下で選挙に出馬することを許可する、というものであった。安倍氏の勝利は突然、当然のものではなくなった。コメンテイターたちは、安倍氏が下した総選挙の決断をイギリスのテレーザ・メイの野心的な企ての大失敗と比較し始めた。

 

小池氏の影響力が小池氏をどこまで引き上げるかを語るのは早計だ。彼女が衆議院選挙に出馬するには、東京都知事を辞任しなければならない。72%の有権者は、彼女は都知事の地位にとどまるべきだと考えている。都知事に留まっても辞任しても批判に晒される。民進党の枝野幸男氏は、小池氏が保守的すぎると考えるリベラル派をまとめるために新たな党を結成しつつある。最近の世論調査では、連立与党は衆議院での3分の2という現有議席には届かないが、安倍氏は勝利すると示していた。

 

しかし、3分の2を失うというのは問題だ。なぜなら、3分の2の議席は安倍氏にとって重要な目標を達成するためには必要な数だからだ。彼の主要な目標、それは、1948年に制定された憲法を変更することだ。この憲法は日本が戦争に参加することを禁止している。この条項は、第二次世界体制ン直後にアメリカが推進したもので、日本の漸進的な軍事力の再建と安倍氏が定義する「普通の国」になることに対してのブレーキの役割を果たしている。

 

しかし、根本的なところで保守的である日本では、変化というものは現状維持のための戦略でしかない。ある点から考えると、小池氏は一人の日本人女性としてこれまでにない力と存在感を手にしている革命家としての存在であり、彼女が所属していた政党と保護者に対して反旗を翻すことに成功している。しかし、外交政策の面では、小池氏は、安倍氏のナショナリスト的な立場にきわめて近い。現在の自公連立政権の初期段階において、小池氏は安倍内閣の防衛大臣を務め、強硬派としての評判をとっている。小池氏は定期的に、議論の的となっている靖国神社に参拝している。靖国神社には第二次世界大戦の戦死者と共に恐るべき戦争犯罪人たちも祀られている。小池氏はまた、歴史教科書から日本の戦時中の蛮行を消し去ろうとする運動を支持している。

 

政治の世界における通常の終わり方とは大きく異なる結果が出るだろう。それでも、小池氏の急速な台頭は、数十年にわたり日本政治を支配してきた政治の世界の基本モデルを更に強固なものとする可能性が高い。過去60年のうちのほとんどの期間、日本は事実上の一党しか存在しない国家であった。この状況下では、政策を巡って他の政党と競うよりも、自民党内部の派閥間の争いの方が重要であった。自民党内部の諸派閥はそれぞれ、強力な個性とボスによってまとめられ、派閥間の相違は抽象的な政治的理想というよりも、相争う産業別、政治的な各種ロビー団体の利益によって生み出されていた。

 

小池氏の東京における「反乱」は、多くの自民党の実力者たちによってひそかに支持されていた。彼女の新党「希望の党」は、西洋型の野党というよりも、自民党内部の伝統的な派閥のようである。来たる選挙における小池氏の支持者と安倍氏の支持者の争いは、自民党の大勝利をもたらす。最後に残った主要な野党は解体し、自民党内部にもう一つ派閥が出来たようなものだ。

 

安倍氏は予想していたよりも厳しい選挙戦に直面する。しかし、彼にとっての最強のライヴァルが多くの点で彼と考えが同じだということは、彼の勝利にとって重要な方策となる。日本は、アメリカによる安全の保証がかつてよりも不確かなものとなっている状況下、中国との厳しい競争、北朝鮮からの危険な脅威に晒されている。 こうした中、世界は、日本の国家戦略と軍事的な姿勢が急速に発展することを期待している。これは誰が首相になっても変わらない。

 

※ミード氏はハドソン研究所研究員で、バート・カレッジの国際問題専攻の教授である。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)




アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12






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