古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:民主党

 古村治彦です。

 アメリカが堅持してきた二大政党制が崩壊する可能性が高いと私は考えている。今回の大統領選挙をめぐるこれまでの動きの中で、共和党内に大きな亀裂が生まれている。民主党はエスタブリッシュメント対進歩主義派という対立構造があったが、「アメリカの敵・ドナルド・トランプとトランプ支持者たち(本当は民主党が助けなくてはいけない人たちのはずだが)」という共通の敵を作り上げて、今のところは一枚岩だ。

外国に敵を作って、皆でまとまろうという策謀と全く同じ構造だ。これで、「アメリカの融和」などと寝ぼけたことを言っているのは笑止千万だ。これに協力している、進歩主義派も結局、エスタブリッシュメント派の軍門に下り、ワシントンでの楽しい生活を謳歌している。私は大きく失望している。中世ヨーロッパの言葉に「都市の風は人間を自由にする」というものがあるが、それをもじって言えば、「ワシントンの風は人間を徹底的に堕落させる」ということなのだろう。進歩主義だ、貧しい人々のためだ、と意気揚々とワシントンに乗り込んでみたら、取り込まれて、堕落してしまう。その点で、ドナルド・トランプという人物は最後まで、ワシントンの「部外者(アウトサイダー)」だった。

 共和党に目を移せば、「エスタブリッシュメント派対トランプ・ポピュリズム」という対立構図になる。このブログでも紹介したが、共和党支持の有権者たちの間でのトランプ支持は根強い。この有権者たちにそっぽを向かれれば共和党の議員たちは落選して、ただの人となり、楽しいワシントンでの生活からオサラバしなければならない。

 2020年の選挙では連邦上院では共和党と民主党が50対50となり、連邦上院議長は副大統領が務めるので、民主党が過半数を握ることになった。連邦下院では民主党が過半数を維持したが、共和党が議席数を伸ばした。2022年の中間選挙では共和党が議席数を伸ばすことが見込まれている。

 共和党側は、民主党側に対して、「民主党は社会主義の方向に進んでいる」という宣伝戦略を展開している。2022年に向けてもこの戦略を採用しようとしている。これで消極的な民主党支持者たちを取り込もうとしている。民主党側では、進歩主義派の勢力が大きく、バイデン政権と連邦議会民主党執行部としても無視できない。そこで、「大きな政府」政策を実行すると、共和党側の宣伝戦略にはまってしまう。

 一方、共和党側でも「トランプ・ポピュリズム派」は、民主党側からの攻撃目標にされてしまうだろう。「あの連邦議事堂襲撃事件を起こしたトランプを支持する政治家たちを当選させてはいけない」という戦略で共和党攻撃を行うだろう。民主、共和両党はお互いの「急進派」を標的にして攻撃する戦略で2022年の中間選挙を戦うことになる。両党にとって、「急進派」は重要な存在である。そう簡単に切ることができない。このかじ取りが2022年の選挙の結果を左右することになるだろう。

(貼り付けはじめ)

共和党は2022年に連邦下院で過半数を獲得する道筋を見ている(GOP sees path to House majority in 2022

ジュリー・グレイス・ブラフケ筆

2020年11月18日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/526444-gop-sees-path-forward-to-house-majority

共和党は今週連邦議事堂に戻って来た。共和党は予想を裏切り、選挙投開票日に連邦下院での議席を増やして戻って来た。2022年の中間選挙で過半数を獲得する見通しを持っている。

共和党所属の連邦下院議員たちは木曜日、連邦下院少数党(共和党)院内総務ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)をはじめとする連邦下院共和党指導部をそのまま再任することで、その功績に報いた。共和党は、分裂した投票行動を行った有権者たちから支持を受けた。この有権者たちはトランプ大統領をホワイトハウスから追い出しながら、連邦上院と連邦下院の選挙の共和党の候補者たちを支持した。

選挙結果はアメリカ国民が捻じれた政府(訳者註:ホワイトハウスは民主党、議会は共和党)を認めたということであり、共和党側は2年後の中間選挙において連邦下院で過半数を奪還することができるという手ごたえをつかんでいる。中間選挙はこれまで、ホワイトハウスを掌握している政党が連邦議会で議席を減らすということになっている。

まだ結果が出ていない複数の州で共和党の候補者たちが優勢であり、それらを入れて、共和党は20議席近く増やそうとしている。共和党は今回の選挙結果でも過半数まで17議席足りないままである。しかし、民主党側から見れば、第二次世界大戦以降、最も議席差が少ない連邦下院ということになっている。

連邦下院少数党(共和党)幹事ステイ―ヴ・スカリス連邦下院議員(ルイジアナ州選出、共和党)は全米を駆け回って再選を目指す現職たちのために応援演説をしていた。スカリスは本誌の取材に次のように答えた。「今回の選挙で私たちは接戦の選挙区において多くの議席を獲得したことで、多くの人々に衝撃を与えることができました。しかし、私たちはこれからもやらねばならないことがたくさんありますが」。

スカリスは続けて「私たちが接戦で敗れた選挙区においても素晴らしい候補者たちがいるということを既に伝えられています」と述べた。

共和党指導部は2022年の中間選挙について楽観的になることを戒めていると述べている。彼らは現在の状況について良くなっていると感じているが、連邦下院で過半数を奪還するためにはこれからも戦い続けねばならないだろうと述べている。

トム・エマー連邦下院議員(ミネソタ州選出、共和党)は連邦下院共和党の選対委員長を務めたが、共和党は今回の選挙で予想を超える結果を得たが、連邦下院で過半数を奪還できなかったことについては「失望している」と述べた。

共和党全国選挙対策委員会(The National Republican Campaign CommitteeNRCC)委員長エマーは、議席増を当然のこととは考えておらず、過半数奪回に目を向ける必要があると述べている。また、2018年の中間選挙で民主党側の攻勢によって民主党が基盤を築いた選挙区での議席獲得のための道筋はあるとも述べている。

共和党はマイアミで複数の議席を獲得し、失うと予想されていたテキサス州での複数の議席を維持した。しかし、エマーはアリゾナ州、ミシガン州、ニューハンプシャー州、ペンシルヴァニア州の各州で逆転できる可能性があったと述べている。

エマーは本紙の取材に対して次のように述べた。「今回の選挙で私たちがいささか成功したが、これは偶然の産物ではないということを共和党全体が理解しなければなりません。私たちは努力を続けたので、成功するだろうと言われていました。これからも挑戦は変わりません。より努力をしなければなりません」。

エマーは「人々がどんなことを言っても、簡単なことではないのです。世論調査の専門家や予言者の言うことなど聞きません。選挙の結果は全て候補者たち次第なのです。幸運は自分の力で引き寄せねばならないのです」と述べた。

エマーは、共和党が強力な、そして多様性のある候補者たちを登用したことと、民主党内の分裂によって、共和党が民主党の有名議員たちを落選させることができたと述べている。今回の選挙で民主党側は中道派の議員たちが多く落選した。エマーは、共和党全国選挙対策委員会の戦略として、民主党側の進歩主義的な政策を際立たせながら、接戦の選挙区に照準を定めるという戦略を採用するとしている。

エマーは「穏健派・中道派は残っていません。話は変わりますが、民主党がナンシー・ペロシを議長にとどめるならば、それは私たち共和党にとっては悪いことではありません」と述べた。

連邦下院民主党は水曜日、連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)をこれからの任期2年間、民主党のトップに据え続けることに決定した。ペロシは1月の全連邦下院議員からの投票で、過半数の支持を必要としている。2019年の連邦下院議長選挙で、民主党所属の連邦下院議員15名が反対票を投じたが、来年の議会に戻ってくるのはそのうちの10名だ。民主党は議員の数を減らしている。それでも、ペロシの再選にとっては高いハードルにはならない。

民主党側で議席を失うことになる5から15議席の議員たちの中には、長年議員を務めたヴェテランや注目を集めつつあったスター議員たちが含まれている。それらの中には、マイアミ・デード郡の選挙区から出ており、クリントン政権で保健福祉長官を務めたドナ・シャレイラ連邦下院議員(フロリダ州選出)、スタテン島の一部が選挙区になっているマックス・ローズ連邦下院議員(ニューヨーク州選出)、共和党が優勢な選挙区で15期にわたって議員を務め、連邦下院農業委員会委員長を務めたコリン・ピーターソン連邦下院議員(ミネソタ州選出)が含まれている。

歴史的に見て、ホワイトハウスを握っていない側の政党は中間選挙で過半数を獲得している。民主党所属の連邦議員の中には、2022年中間選挙に向けて戦略を再検討する必要があると述べている。

ある民主党連邦議員は、共和党側の民主党と社会主義を結び付けるメッセージ戦略について、民主党はこれに対して戦わねばならず、ペロシ議長は、こうした攻撃のために劣勢に立つであろう民主党の議員たちの敗北に責任を持つことになる。

この議員は次のように述べた。「私が言いたいのは、2022年の中間選挙において私たちは良い立場にはいないということです。私たちは劣勢に立っているんですよ。ペロシ議長が議長職にとどまるというのは全くもって不公正なことです。彼女はこれから2年間議長職にとどまりますが、その後の2022年、私たちは大惨敗を喫する可能性が高いのです」。

「私たちが10から15議席を失うだけでなく、連邦下院民主党は過半数を失うことにもなるでしょう。2020年の中間選挙は、民主党側では共和党から議席を獲得し、過半数の議席数を拡大する機会にもなるはずでした。しかし、私たちはこの機会を無駄にしました。私たちは2022年に議席数の減少を阻止するための堤防を築くために、2020年の選挙がどれほど重要なのかはわかっていました」。

流れは共和党に有利な方向に流れているようではあるが、共和党は今回の選挙での躍進を当然のことだと思ってはならず、連邦下院での過半数奪回のためにはこれからいくつもの高いハードルを越えていくことになるだろうと気を引き締めている。

連邦下院共和党筆頭副幹事長ドリュー・ファーガソン(ジョージア州選出、共和党)は次のように語っている。「もし現在の流れについて考えるならば、私たちは歴史的な勝利を収めたと言えるでしょう。私たちは民主党の本性を明らかにしました。民主党はこの国を社会主義の方向に進めようとしているのです。しかし、私たちはいささか押し戻すことができました。人々は考えを変え、戦うために外に出ました。そして、僅差で多数となっている人々が、人々をまとめる方法を主張しています」。

ファーガソンは続けて次のようにも述べた。「従って、私たちはより一生懸命に努力しなければなりませんし、資金集め、良い政策作り、メッセージの発信など全てのことに注力し、これまでの2倍努力しなければなりません。私たちはそれができると確信しています。しかし、それはドアを通って歩いていけば自然に手に入るものではなく、私たちは勝ち取りに行かねばならないのです」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 ホワイトハウスを去ったドナルド・トランプが新党を結成するかもしれない、というニュースがしばらく前に出た。その後、続報を聞いていなかったが、世論調査で凄い事実が明らかになった。サンプル数や方法に問題があり、信頼性がそこまで高くないとは言え、『ザ・ヒル』誌が実施した世論調査で、「トランプ新党」の支持率が高いことが分かったのだ。

 「トランプが新党を作ったら」という質問に、共和党支持者の64%がそちらを支持する、そのうちの半分32%はぜひとも支持すると答えた。支持政党なしは28%、民主党支持で15%がトランプ新党を支持すると答えた。そして、有権者全体にすると、37%がトランプ新党を支持すると答えたのだ。

 アメリカの有権者の3分の1以上がトランプ新党を支持するというのは、民主、共和両党にとって衝撃だ。共和党は党内にエスタブリッシュメント派対トランプ・ポピュリズム派の分裂を抱えているが、トランプ支持の有権者たちが離れてしまえば、共和党は選挙で勝てないどころか、第三党に転落してしまう。二大政党制(Two-Party System)の一方の雄、と威張っていたのに、そこから追い落とされる。そうなれば末路は哀れ、消滅してしまう可能性もある。

 トランプは「いつでも新政党をつくるぞ」という姿勢を見せながら、駆け引きができる。エスタブリッシュメント派はトランプにそっぽを向かれたら選挙に負けるということになる。トランプの影響力は大きいままで維持される。

 民主党側は高みの見物を決め込めるかというとそうでもない。民主党内部もエスタブリッシュメント派対進歩主義派の対立を抱えている共通の敵、トランプをとりあえずホワイトハウスから追い出すことができて良かったね、ということで今は対立は激しくないが、進歩主義派の要求にエスタブリッシュメント派は応えたくないということもでてくる。

また、2016年の大統領選挙民主党予備選挙でのヒラリーを勝たせるための民主党全国委員会の不正問題もある。トランプが影響力を行使する、もしくは新党を作るという行動に出た場合、進歩主義派も同様の手段でエスタブリッシュメント派を揺さぶるということも考えられる。

 トランプ新党の具体的な計画はまだ出ていない。しかし、その名前だけでもこれだけの有権者が期待を寄せている。せっかく協力してトランプをホワイトハウスから追い出すことに成功した、民主、共和の既成の二大政党にとっては深刻な問題は続く。

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世論調査:共和党支持の有権者の64%がトランプ率いる新党に参加したいと答えた(Poll: 64 percent of GOP voters say they would join a Trump-led new party

ガブリエル・シュルト筆

2021年2月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/hilltv/what-americas-thinking/537442-poll-64-percent-of-gop-voters-likely-to-join-a-trump-led-3rd

最新のヒル・ハリスXの共同世論調査の結果によると、共和党支持の有権者の多数が、もしトランプ前大統領が新しい政党を立ち上げたら、それに参加したいと答えた。

1月28日から29日にかけて実施された世論調査で、有権者登録済の共和党支持の有権者たちのうち64%がトランプ前大統領が新政党を立ち上げるならばそれに参加したいと答えた。そのうちの32%はぜひとも参加したいと答えた。

対照的に、共和党支持の調査対象者の36%が「全く」「それほど」支持しないと答えた。

支持政党なしの28%、民主党支持の15%がトランプ率いる第三党支持に回るだろうと答えた。

調査対象者全体の37%が、もしトランプが新政党を立ち上げたら、支持するだろうと答えた。

先月、トランプ派新しい政党をスタートさせるというアイディアについて話したという報道がなされた。しかし、トランプ率いる第三党に関する具体的な計画は浮上していない。

ハリスXCEO兼主席世論調査分析者のドリタン・ネショーは本誌に対して次のように語った。「議事堂進入という事件はあったが、トランプは政治的な力を維持し、それは真剣に興梠しなければならない程のものだということをこれらの数字は示している。彼は多様な支持基盤から支持を集め、有権者全体の3分の1の支持を集めている。これらの有権者は多くの問題に関して、トランプに魅力を感じている人たちである。これらの問題は民主党と共和党のエリートたちは適切に認識ておらず、対処もしていない」。

ネショーは続けて「トランプが共和党から離れて自分自身の政党を創設したとします。世論調査の結果から見ると、彼はアメリカで第2位の政党を創設するということになります。共和党は第3位に転落します」と語った。

最新のヒル・ハリスXの共同世論調査はオンラインで945名の有権者登録済の人々に対して実施された。その内の340名が共和党支持者であると申告した。今回の世論調査の誤差は3ポイントだ。

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 古村治彦です。

 古い記事で恐縮だが、今回の大統領選挙の政治献金についての記事を紹介する。簡単に言えば、エリートはバイデンに献金し、非エリートはトランプに献金したということだ。民主党は貧しい人々やマイノリティのためのリベラルな党、共和党はお金持ちのための保守的な党、という色分けを子供の時に習った。私が子供時代の1980年代のことだが、「共和党は自民党で、民主党は社会党みたいなもの」と教えてくれた大人がいた。「日本の社会党は選挙でいつも自民党に負けているのに、アメリカの民主党は選挙で共和党に勝ったり負けたりしているのはどうしてなのか」と不思議に思ったことを覚えている。

 献金から見ると、そうした単純な色分けは既に破綻している、意味をなしていないということになる。バイデンに献金しているのは安定した大企業で働いている人々や政府機関の人々だ。一方、トランプに献金しているのは不安定な自営業者や労働者たちだ。「弱い者の味方」であるはずの民主党が本来ならば支持基盤としなければならない人たちがトランプの応援をしている。前回紹介した記事でも取り上げていたが、白人労働者階級とラティーノ系の有権者の民主党への支持が低調、ということはこの献金の面からも分かる。大企業や政府機関で働いている人々に比べ、自営業者や労働者は景気の影響をモロに受ける。

 新型コロナウイルス感染拡大のために景気が低迷して影響を受けるのはそうした弱い人々だ。そうした人々にとって経済政策で全く期待できないバイデンを応援する理由はない。バイデンは新型コロナウイルス感染拡大対策と景気対策という難問を引き受けるだけの能力があるとは誰からも思われていない。彼は選挙が終われば用済みで、「早くカマラが大統領に昇格しないかしら」と、大金持ちの老人が子供たちや親せきから思われているようなことを期待されている始末だ。12月中の選挙人による投票がどうなるか、最高裁での判決がどうなるかということはもちろんがあるが、もしバイデンが大統領に就任しても、こんなに悲しい船出をするアメリカ大統領がかつていただろうかと暗澹たる気持ちになる。

 そして、共和党と民主党のアイデンティティの逆転現象はアメリカ政治研究にとって非常に興味深いテーマとなる。ポピュリズムと似非リベラリズムとの戦い、これがアメリカ衰退の時期に起きた。いよいよ店じまい、そのような感じだ。

(貼り付けはじめ)

トランプとバイデンに最も多く寄付した被雇用者(従業員、社員、職員)たちは誰か(The Employees Who Gave Most to Trump and Biden

ジャッキー・グー筆

2020年11月3日

『ブルームバーグ』紙

https://www.bloomberg.com/graphics/2020-election-trump-biden-donors/

2020年大統領選挙で使われた選挙資金の額は史上最高記録を更新している。そうした状況下、アメリカの労働者たちによる政治献金は、アメリカの雇用者(企業、組織、団体、政府)と職業の人たちの間での政治的な姿勢を示すスナップショットとなっている。

ブルームバーグ・ニュース社による、インターネット献金プラットフォームである「悪とブルー」と「ウィンレッド」が発表した献金データの分析によると、バイデンに献金した雇用者とその労働者たちのほとんどは、各大学から連邦政府、IT関連企業が含まれている。一方、トランプへの最大の献金者たちには配送企業、ウォルマート、米軍が含まれている。

この分析における被雇用者(従業員や職員)の中で、トランプに献金した被雇用者たちが雇用者(企業、組織、団体、政府)として名前を上げたで最も多かったのが、ニューヨーク市警察とアメリカ海兵隊であった。約70%がトランプ陣営に献金を行った。バイデンへの献金の中で、最も多く献金した雇用者は、フェイスブック社とワシントン大学であった。また、これらに属している被雇用者で政治献金を行った人々の内、97%がバイデンに献金を行った。

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どの雇用者(企業)がバイデン、トランプに献金しているか(それぞれの陣営に献金した被雇用者が多い雇用者100)

センター・フォ・リプリゼンティティヴ・ポリティックスの報告によると、2020年の大統領選挙の支出額は総額で66億ドル(約6860億円)以上になると見られている。4年前の倍額になる見込みだ。民主党のジョー・バイデンは10月14日までの時点で、陣営への個人献金を約10億ドル集めている。ドナルド・トランプ大統領は約6億ドルを集めている。

2020年、選挙陣営にとってインターネット上の献金プラットフォームは重要な資金集めの道具となった、特に新型コロナウイルス感染拡大のために対面での献金集めが制限される中で、重要な役割を果たした。民主党はアクトブルーを使った献金集めで有利なスタートを切ったが、ウィンレッドは、トランプ大統領が支持者たちに使用を促したことで、急速に重要性を増していった。これらのプラットフォームは少額の献金者の増加に大きく貢献した。

アクトブルーとウィンレッドを通じた被雇用者の献金について、ブルームバーグ・ニュース社の分析は、全ての個別の献金については説明はできていない。そして、今年の選挙で失業中の人々がどれだけの額を献金したのかについて考慮されていない。しかし、今年の選挙で、2つのプラットフォームでの献金は献金総額の57%を占めている。この分析によって、200ドル以下の献金者の動きを大まかに掴むことができ、こえは連邦選挙管理委員会の様々な報告の内容に反するものでもない。

トランプは徐々に肉体労働者たちからの支持を上げていった。自身の職業を牧場主と自己申告した献金者の84%、建設労働者の75%がトランプに献金した。大学教授、学部長、大学職員の大多数はバイデンに献金した。

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誰が誰に献金しているのか(それぞれの陣営に献金している100の職業)

ウィンレッドを使ってトランプに献金した1万9000名以上が自分たちの職業として挙げていたのが、「ホームメイカー(家事労働者、家政担当者)」であった。アクトブルーを使ってバイデンに献金した人々に比べて900名以上少なかった。トランプ陣営に献金した人の中で職業欄に「妻」という言葉を入れた人の数は、バイデン陣営に献金した同様の人々に比べてほぼ5倍となった。非営利団体に勤務している人の中で、トランプ陣営に献金をした人の割合は4%にとどまった。一方、牧場経営者の84%がトランプに献金を行った。

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 古村治彦です。

 ジョー・バイデンの息子ハンター・バイデンには金銭スキャンダルが付きまとう。ウクライナや中国でのビジネスに関してのものだ。しかも父ジョーがアメリカ合衆国副大統領に在任していた時期だ。そもそも父ジョーは30年以上連邦上院議員を務めたのだが、その時期にワシントンでロビイストをしていたということもいまから考えれば、「親の七光り、親の威光を使って仕事をしていた」ということになる。アメリカにだって「忖度」はある。「忖度」という言葉の英訳についてはこのブログでも紹介している。

※「「忖度(そんたく、SONTAKU)」、英語にしにくい日本語(2017年3月24日)」↓

http://suinikki.blog.jp/archives/69823078.html

 さて、この息子ハンターの疑惑、スキャンダルについて大手メディアは「黙殺」だった。また、ツイッターなどSNSではこのスキャンダルについて貼り付けたり、記事を紹介したりすることを禁止した。これは、アメリカ国民の「知る権利」を大いに侵害する行為だった。大手メディアがトランプ大統領や彼の家族に関する記事は何でもかんでも掲載し放題だったにもかかわらずだ。

 ある世論調査の結果では、「ジョー・バイデンのバカ息子ハンターのスキャンダル、疑惑について知っていたらジョーには投票しなかった」という有権者が結構な数いるのではないかと推測できる数字が出た。バイデンに投票した有権者の4.6%が、スキャンダルを知らなかったし、知っていればジョーに入れなかったと答えているのだ。

 今回の選挙の結果は総得票数でも、激戦各州の得票数でも僅差だった。従って、バカ息子ハンターの疑惑が知れ渡っていれば、結果は全く違ったものとなっていただろう。ジョー・バイデンが大統領になっても、ハンターのことは父親ジョーにとってアキレス腱、弱点として残り続ける。民主党内で「早くハリスが昇格しないかな」と考えている幹部たちがハンターのことをメディアにリークして、大手メディアが選挙期間中とは異なり、大いに報じることになったら、ジョーは不名誉な辞任も考えられる。生殺与奪の権を他人に握られる。

 ジョー・バイデンにとっては前途多難なことだし、何よりも選挙結果に影響を与えたメディアとSNSの罪は万死に値するということになる。

(貼り付けはじめ)

世論調査:ハンター・バイデンのスキャンダルをメディアが隠蔽したことはトランプの明確な勝利を盗んだ(Media's hiding of Hunter Biden scandal robbed Trump of clear win: Poll

ポール・ベダード筆

2020年11月13日

『ワシントン・イグザミナー』紙

https://www.washingtonexaminer.com/washington-secrets/medias-hiding-of-hunter-biden-scandal-robbed-trump-of-clear-win-poll

ジョー・バイデンに投票した有権者たちの中で十分な数の人々は彼の息子ハンターの金銭スキャンダルについて知っていれば、バイデンに投票しなかったし、それはトランプが明確な勝利を得るのに十分な数だった。

新しい調査によると、バイデンに投票した有権者のうち4.6%が、バイデンの息子の中国に関する金銭スキャンダルについて知っていれば、バイデンには投票しなかっただろうと答えた、ということだ。

「マクローリン・アンド・アソシエイツ」社がメディア・リサーチ・センター(MRC)のために行った世論調査の結果によると、バイデンに投票した有権者のうち36%がハンター・バイデンのスキャンダルについて知らなかった。その内の13%がもしスキャンダルを知っていたらバイデンに投票しなかっただろうと答えた。

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MRCは「バイデンからのそのような有権者の移動は、トランプ大統領が選挙人289名を獲得して勝利していたということを意味する」と指摘している。MRCは2016年と2020年の大統領選挙においてトランプ選対のために働いた。

ハンター・バイデンのスキャンダルに関しては、保守的ではないメディアのほとんどが報じなかった。ツイッターとその他のSNSはスキャンダルに関しての報告の多くを禁止とした。

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リンゼー・グラハム連邦上院議員は、バイデンが副大統領在任中にハンター・バイデンが海外で締結したビジネスに関する合意についての新たな発見は選挙結果を左右するだろうと予見していた。

MRC社の会長ブレント・ボゼルは次のように述べている。「隠蔽の影響について私たちは今良く認識している。バイデンに投票した有権者のうち4.6%がハンター・バイデンのスキャンダルについて知っていればバイデンには投票しなかったと答えている。ハンター・バイデンのスキャンダルは選挙の結果を変える可能性があったのである。メディアとシリコンヴァレーはこのことをよく分かっていたのだ。だから、彼らはハンター・バイデンのスキャンダルがアメリカ国民に届かないようにと積極的に行動したのだ。アメリカ国民は真実を知る価値を持つ人々だった。しかし、もはや時遅し、となってしまった」。

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 古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙について、今でも法廷闘争や抗議活動が続いている。今回の選挙で今のところ、民主党のジョー・バイデン前副大統領が勝利したということになっている。ここで思い出してもらいたいのは、「バイデン氏が圧倒的に有利」と言い続けたメディアの報道だ。メディアにはそれだけの調査能力はなく、大学や世論調査会社の行った各種世論調査の結果を引用してそのような報道を行った。私の記憶では、10月の段階で、その当時の世論調査の結果を当てはめると、「バイデンが360近く、トランプが180程度」となるということだった。

 しかし、そんな大差の付く戦いではなかった。総得票数で見ても、激戦州での票差を見ても大接戦だった。7000万以上のアメリカの有権者たちがトランプを支持したということは間違いない。トランプ大統領とトランプ大統領への支持者への悪罵を考えると、その支持の堅固さは特筆すべきだ。

 2015年から2016年にかけて、全くの泡まつ候補扱いだったトランプが共和党の有力候補に駆け上がり、党の指名を獲得し、最後には圧倒的に有利と言われたヒラリー・クリントンに勝利を収めた。トランプ現象、トランプ主義という言葉と「なぜあんな野蛮なトランプが支持されるのか?誰が支持しているのか?」という疑問がメディアに溢れた。

 トランプ現象について、2016年2月、共和党の予備選挙が始まって間もない(トランプがまだ共和党の候補者として確定しない)時期に、チャールズ・マレーが分析した論稿を紹介する。これはトランプ現象分析においては今でも色あせない内容である。

 アメリカは変質した。アメリカは健全な平等主義、自由、個人主義の国であった。人々は経済的に成功してもそれをひけらかすことを嫌った。貧しくても堂々と生きることができた。アメリカに日本のような戦後という時代区分はないが(いつも戦争をしているようなものだから)、第二次世界大戦後にそれが大きく変容した。そして、取り残されたのが、白人の労働者階級の男性たちだ。「アホでマヌケなアメリカ白人」「ニューヨークの場所も知らない」「頑迷にキリスト教原理主義を信じている」と西海岸や東海岸で優雅に暮らすエリートたちに馬鹿にされ、見下され続けてきた。このエリートたちは、自分たちが素晴らしい人間だと思って欲しくリベラルな考えを振り回す。「弱者の味方」であるはずの民主党支持であることがかっこいいと思っている。しかし、実際には低学歴、低所得の白人労働者階級を徹底的に見下し、馬鹿にする。昔のエリートや成功者たちはできるだけ自分は皆と一緒です、元々は貧しいところから這い上がって来たので一緒ですという態度を取った。

 こうしたことがアメリカに分断をもたらした。日本でタレント活動をしているお笑いコンビ「パックンマックン」のパトリック・ハーランはハーヴァード大学卒業と巧みな日本語でテレビによく出ている(相方さんはどうしているのだろうか)。ハーランは「7000万人以上もトランプに投票したなんて信じられない」とテレビで発言し、それに対して橋下徹元大阪市長が「そういう考えだからアメリカに分断が生まれるのだ」とツイッター上で批判した。私は橋下元市長の言説をほぼ全く支持しないが、この発言に関しては同感である。

 下の論稿を読むと、アメリカの分断は根深く、トランプ現象、トランプ主義はそこから出てきたことであって、トランプが分断をもたらしたのではないということが分かる。そして、この分断が国家分裂にまで進むのではないかということも合わせて考えさせられる。

(貼り付けはじめ)

トランプのアメリカ(Trump’s America

-トランプの白人の労働者階級へのアピールは何も非合理的なものではない、とチャールズ・マレーは書いている。白人の労働者階級が怒っているのには理由がある。

チャールズ・マレー筆

2016年2月13日

『ウォールストリート・ジャーナル』紙

http://www.wsj.com/article_email/donald-trumps-america-1455290458-lMyQjAxMTE2MDE5MzYxMzMwWj

「トランピズム(Trumpism)は、アメリカがこれまで辿って来たコースに対するアメリカ人の多くが感じている正当な怒りを表現したものだ」

今これを読んでいるあなたがトランピズムに失望しているのなら、ドナルド・トランプが共和党の候補者指名を勝ち取ることができなければトランピズムなど消え去ってしまうだろうと自分自身を偽ってしまってはいけない。トランピズムは、アメリカがこれまで辿って来たコースに対するアメリカ人の多くが感じている正当な怒りを表現したものだ。そして、トランピズムの出現は予想されたものだった。トランピズムは半世紀にわたって続いているプロセスの帰結である。その帰結とは、アメリカの歴史の中で作られてきた国家的なアイデンティティを売り渡してしまうことだ。

 著名な政治学者サミュエル・ハンティントンは彼の人生最後の著書『分断されるアメリカ(Who Are We?)』を2004年に発表した。ハンティントンはこの著作の中で、アメリカの国家的なアイデンティティの2つの要素が消え去ってしまったと主張している。1つは、アングロ・プロテスタントの遺風であり、これは多くの文化的、宗教的な伝統が息づくアメリカの中で不可避的に消え去りつつある。もう一つは、アメリカ独自の考えと理想である。歴史家リチャード・ホフスタッターがかつて述べたように、「一つの国家、国民としての私たちの運命は、いくつものイデオロギーを持つのではなく、一つのイデオロギーを持つことだ」ということだ。

このイデオロギーをハンティントンは「アメリカの信条(American Creed)」と呼んだ。このイデオロギーはどのような要素によって構成されているか?その3つの中核をなす価値観は、要約すると、平等主義(egalitarianism)、自由(liberty)、そして個人主義・利己主義(individualism)である。これらの価値観から出て、長期にわたってアメリカ国内で見られてきた信条の別の側面もある。それらは、法律を前にすれば何人も平等であること(equality before the law)、機会の平等(equality of opportunity)、言論の自由と結社の自由(freedom of speech and association)、独立を尊ぶ態度(self-reliance)、制限された政府(limited government)、自由市場を基盤とした経済(free-market economics)、集権化されていない、人々の選挙で選ばれる政治権力(decentralized and devolved political authority)である。

今日、アメリカの信条はその権威と実態を失いつつある。何が起きているのか?アメリカ社会全体を通じてこうした変化の多くの現象が目撃できるようになっている。そうした変化は、「新しい上流階級と下層階級の出現」と「労働者階級の苦境」という2つの現象の間で起きているのだ。

2012年に出版した著作『分裂に向かう:白人たちのアメリカの状況、1960―2010年(Coming Apart: The State of White America, 1960-2010)』の中で、私はこれらの新しい階級について詳しく議論した。新しい上流階級は、アメリカの経済、政治、文化を作っている人々によって構成されている。新しい下層階級は、アメリカの市民文化の最も基本的な機能、特に労働と婚姻から外れた人々によって構成されている。これら2つの新しい階級は、アメリカの信条(American Creed)を拒絶している。アメリカの信条が今でもリップサーヴィス的に述べていることはある程度は実現しているのだが、それでもこの新しい階級の人々はアメリカの信条を拒絶している。トランピズムは、「アメリカの信条などすでになくなっている」と訴えている悩み多き労働者階級の人々の声そのものなのである。

歴史的に、アメリカの例外主義(American exceptionalism)の広く認識されてきた側面は、階級意識の欠如であった。マルクスとエンゲルスさえもそのことを認識していた。それは、平等主義的なアメリカの様式であった。そうだ、確かにアメリカには豊かな人々も、貧しい人々もいた、しかし、それは豊かな人々は他の誰よりもより良い存在だということを意味するものではなかった。

成功を収めたアメリカ人たちは頑なまでに上流階級の外見を受け入れることを拒絶した。多くの場合、自分たちは普通の人々なのだと、他の国民と同様に振舞った。そして、成功者となったアメリカ人たちは大抵の場合、自分たちは中流的な環境、もしくは貧困の中で育ったという自負を持ち続けた。自分たちの若い時の習慣や判断基準を、成功を収めて以降の人生でも維持した。

アメリカは共同体内において高いレヴェルの社会的、文化的な違いを保持していた。トクヴィルは1830年代のアメリカについて、「最も富裕な市民たちが人々から乖離しないように細心の注意を払う」場所だと形容した。この状況は20世紀になっても、アメリカのエリートたちが多く住む地域の中でも続いた。1960年の国際調査の結果で、フィラデルフィア市のメインライン地区に住む人々の年収の中央値は、現在のドルの価値に換算して、9万ドルに過ぎなかった。ボストン市のブルックラインでは7万5000ドル、ニューヨーク市のアッパーイーストサイドでは6万ドルだった。これらの地域での典型的な夕食会では、招待客の多くは高校卒業以上の学歴を持っていなかった。

1960年代以降、新しい上流階級は全く別の文化を創り出した。半世紀にわたり、アメリカのエリート大学はアメリカ全土から最も才能に恵まれた若者たちを惹きつけてきた。こうした若者たちは自分たちだけで親しくなり、時には結婚に至ることも多くなった。頭脳というものが市場においてより急激に価値を高めていくことになった。2016年、エリートが多く住む地域で夕食会が開かれる場合、出席者のほぼ全員が大学卒業の学位を取得しているし、中には更に修士号や博士号などを持っている人も多くいる。こうした人々は例外なく豊かである。フィラデルフィア市のメインライン、ボストン市のブルックライン、ニューヨーク市のアッパーイーストサイドにおける家族の年収の中央値はそれぞれ、15万ドル、15万1000ドル、20万3000ドルだ。

この夕食会で交わされる会話の内容は、アメリカの大衆が集まる場所で話される内容とは全く異なるものだ。新しい上流階級の人々は、アメリカの大衆が好む映画、TV番組、音楽といったもの自体に魅力を感じることは少ない。食べ物、健康維持、子育ての方法、休暇の過ごし方、読んだ本、ウェブサイト、ビールの味について、大衆とは全く異なる文化を持っている。いいですか、新しい上流階級は自分たち独自の方法を作り出している。

新しい上流階級のもう一つの特性、これはそれまでのアメリカには存在しなかった新しいものであるが、上流階級のメンバーであることを簡単に受け入れ、一般のアメリカ国民に対する慇懃無礼なへりくだり(condescension)である。「レッドネック(redneck、貧しい白人労働者)」という言葉を高い教育を受けた友人たちとの会話の中で使ってみると良い。この言葉は、他の人種に関わるいくつかの言葉と同様に、その場の雰囲気を緊張させる。「フライオーヴァー・カウンティ(訳者註:大都市間を飛び交う飛行機を見上げるしかない田舎の郡)」という言葉が出た時、誰も「それはどんな意味なの?」と質問することはない。また、私は皆さんにワシントンDCで働く友人を紹介して会話をしてもらうこともできる。その友人は週末をゆっくり過ごすためにウエストヴァージニア州に別荘を購入した。彼はウエストヴァージニア州の別荘周辺に住む田舎者の隣人たちへの軽蔑感を語るだろう。この私の友人はアメリカの首都でもエリートしかいない地区で暮らしており、それとは全く異なる人間たちと出会ったのだ。

一般大衆のアメリカはこうした慇懃無礼なへりくだりと軽蔑について完全に気付いている。そして、このことに苛ついている。アメリカの平等主義は死に瀕している。

新しい上流階級が主流から外れていく中で、新しい下層階級は白人労働者階級の中から生まれつつある。そして、こうした人々はトランプ主義が伸長する環境を作るうえで重要な役割を果たしている。

労働と婚姻はアメリカ建国以来のアメリカの市民文化の中心的な柱である。そして、1960年代まで、このことは白人労働者階級にとっては真実であった。成人男性のほぼ全員が仕事をしているかもしくは仕事を探していたし、結婚していた。

しかし、物事は変化し始めている。30代から40代の白人の労働者階級の男性が労働に参加している割合(仕事に就いている割合)は、1968年には96%だったが、2015年には78%になっている。30代から40代というのは、働き盛りであり、家族を形成し、子供たちを育てていくための重要な20年だ。同時期、結婚している男性の割合は86%から52%に低下している。非白人の労働者階級の男性でもその数は減少している。しかし、白人たちに比べてその速度は遅く、継続的ではない。

大きな変化がいくつも起きている。そしてそうした変化がアメリカ全土で見られるようになっている。現在、平均的な白人労働者階級の人々が住む地域では、働き盛りの男性の5人に1人は仕事探しを放棄している。そうした人々の生活はガールフレンド、兄弟姉妹や親によって支えられている。もしくは、障碍者年金、施し、もしくは犯罪によって生活費が賄われている。そうした人々の半分は結婚しておらず、社会から孤立している男性たちの多くに起きている社会的問題が並行して起きている。

こうした地域では、子供たちの半分は正式な結婚をしていない女性から生まれている。父親がいない状態で成長することで、特に少年たちにとって全ての問題が起きる。麻薬もまた都市部だけではなく小さな町のレヴェルでも深刻な問題になっている。

こうした流れが労働者階級の居住地域に住む人々全員の生活にどのように影響するかを考えてみよう。こうした地域にはまだ昔ながらの生活をきちんと営んでいる人たちもいる。こうした人々は、古い市民文化など消え去ってしまった地域で働き、家族を養っているのだということに気づく。こうした地域では隣人たちの友愛や楽しい交流は消え去り、安全ですらないのだ。

アメリカの階級構造におけるこれらの大きな変化は、別の大きな変化に伴って起きている。その別の大きな変化とは、自由と個人主義に関する諸原理からイデオロギー的に大きな逸脱が起きたということだ。自由と個人主義はアメリカの信条の2本の柱である。この逸脱は大規模に起きた。それは公民権運動とフェミニスト運動が理由である。2つの運動は、アメリカの信条に対する古典的な反対として始まった。そして、アフリカ系アメリカ人と女性にとっての理想的なアメリカを作ることを求めた。

しかし、公民権運動とフェミニスト運動の成功は、アメリカの信条とは矛盾する政策をすぐに生み出すようになった。アファーマティヴ・アクションは人々をいくつかの集団として扱うことを要求した。結果の平等は法の下の平等を棄損した。グループを基礎とした諸政策は増大を続けた。更に多くの政策は更に多くのグループを生み出した。

1980年代初めまでに、民主党員エリート、そして民主党支持のエリートたちは、伝統的な理解としての自由と個人主義に対する公開のイデオロギーに関する戦いに参加した。これによって、人種的マイノリティ、独身女性、低所得の女性たちからの継続的な民主党への支持を固める効果をもたらした。しかし、これによって、民主党支持の有権者の中で重要な要素を占める人々を排除することになった。それが白人労働者階級である。

白人労働者階級の男性たちは、1980年代初めの「レーガン・デモクラッツ」の典型的な人々だった。そして、トランプ支持者の中核と形容されている。しかし、このグループの持つ不満はたいていの場合誤解されてきた。白人の労働者階級の男性たちは自分たちと見た目が違う人々に対して理由もなく攻撃を加えているのだという主張は全くの間違いだ。確かに、人種差別と外国人嫌悪の要素がトランプ主義の中には存在する。私はトランプについて批判的な文章を書いた後、そうした要素をツイッターやフェイスブックで数多く目撃した。

現象としてのトランプ主義の中心的な真実とは、アメリカの労働者階級全体が支配階級に対して怒る正当な理由が存在する。過去半世紀の間、経済成長は続いた。しかし、その褒賞は全く労働者階級にもたらされなかった。経済学者たちはこうした主張に対して、反論と否定を述べているが、その要点は明確だ。収入の面でアメリカの下半分の家族収入は1960年代末から増加していない。

同じ半世紀、アメリカ企業は数百万の製造業の雇用を海外に輸出した。製造業は労働者階級の仕事としては最も給料の高い仕事であった。製造業の仕事は過去もそして現在も圧倒的に男性向けの仕事である。1968年と2015年、製造業の仕事の70%が男性に占められていた。

同時期の半世紀、連邦政府は、合法、違法を問わず、移民を許可してきた。その多くは、国内の労働者階級向けの仕事を争う競争相手となってきた。農業以外の、労働者階級の雇用の多くは建設業や製造業が提供してきた。過去そして現在も、これらの業種の雇用の多くは男性がし得てきた。1968年にはその割合は77%、2015年には84%だった。

経済学者たちは現在でもこうした出来事がアメリカの労働市場に与える好ましい影響について主張している。しかし、巨大企業が工場を閉鎖し、雇用を中国に移してしまった町に住む人々にとって、また、賃金が安いという理由で不法移民ばかりを雇う建設業者を見ている屋根職人たちにとって、彼らの怒りと不満はきちんとした理由があることなのである。

白人の労働者階級の男性たちはエリートたちから見下されているという事実に加え、自分たちが住む共同体の中で、家族を養う人間、父親、配偶者として認識されていないということもある。その結果として、共同体の成員としての人生は崩壊している。その結果として、ここ数十年にわたり投票し続けた政党である共和党は彼らを助けるために何もしなかった。これで誰が怒らないであろうか?

物事をどのように改善して欲しいかという点で、白人労働者階級の男性たちは保守主義を望んでいない。彼らは今現在自分たちに対して無関心な政府が自分たちのために活動して欲しいと望んでいる。バーニー・サンダースが移民について熱意を持っているとしても、彼のイデオロギーの残りの部分について見れば、保守主義よりもトランプ主義の方がより多くの共通点を数多く持っていることが分かるだろう。

政治に関わる問題として見ると、サンダースが自由と個人主義について、伝統的にアメリカで使われてきた意味合いで使っていないことについては全く問題にならない。トランプも、また白人の労働者階級もサンダースと同様である。こうした人々もまたアメリカの信条から共同して逸脱しているのである。

この信条全体を握り続けているのは誰か?中流階級と中流の中の上流階級(特に小規模のビジネスを自身で行っている人々)の大部分、企業社会や金融社会にいる多くの人々、そして共和党の幹部クラスの人々の大部分がそうである。こうした人々は、平等主義、自由、個人主義の理想の節度ある支持者であり続けている。

穏健的な民主党員や支持者たちのことを忘れてはいけない。彼らはニューディールの精神的な遺産相続人である。彼らは社会民主政治体制(social democracy)を主張することだろう。しかし、こうした人々もアメリカ国民をいくつかのグループのメンバーとだけでしか扱わない諸政策については不満であり、トクヴィルが述べた、言論の自由、個人の道徳的な責任、平等主義を固く支持している。こうした人々は数多く存在しているが、そのほとんどが政治的な姿勢を表に出さないようにしている。

しかし、こうした人々はアメリカの人口の一部分であって、アメリカが175年にわたって存在し続けるにあたり、アメリカを一つにまとめてきた国家規模の同意というものもなくなってしまった。アメリカの信条に対する支持が減少していく中で、その影響が日常生活にも出てきている。私たちが自慢している自由は数千もの小さな制限によって束縛されている。小さな制限は私たちが望むものにつながっていない。個人主義はグループの権利を優先するために無視されている。そして、アメリカには傲慢な上流階級が生まれている。イデオロギー的にも、そして現実面においても、アメリカの信条は損なわれている。

アメリカの国民的な特性は全てが失われている訳ではない。アメリカ人は今でも世界から見て、活き活きとした、独自性の強い国民的な特性を持っている。歴史的に見て、アメリカは、多くの人種や民族をアメリカの国民的特性にまとめ上げることに他の国々に比べてうまくやることができている。私たちはこれから時代が過ぎても、アメリカ人であるということを感じ続けることだろう。

そうした中には皮肉なこともある。トランプ主義の熱意のほとんどは、移民の流れを受けての、アメリカの国民的な特質に対する脅威に反対する方向に向けられている。しかし、私が実際に接ししたあらゆる人種の移民の人々は、ほとんどの場合、古くからのアメリカ国民のような特質をも人々だ。こうした人々は気さくで明るく、仕事熱心で、楽観的で、かつ野心的だ。アメリカの国民的特性を維持し続けることは、私たちが抱える諸問題において最も小さいものであるように思われる。

それでも、このような特性も究極的にはアメリカの信条にその根を持っている。そうした世俗的宗教にある信条をアメリカ国民の一部しか持っていない現状である。それでも、この国は素晴らしく強力で、大変に豊かな、アメリカ合衆国と呼ばれる国のままであり続けるだろう。しかし、そうなれば、私たちは、世界の歴史において、アメリカを独自なものとしてきた基盤から離れていくことにもなる。

※マレー氏はアメリカン・エンタープライズ研究所WH・ブレイディ記念研究員を務めている。著書は数多くあるが、代表作として『人々による:許可を必要としない自由の再構築』と『分裂に向かう:白人たちのアメリカの状況、1960―2010年』がある。

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