古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:演説

 古村治彦です。

 

 アメリカ政府の機能が一部停止になってもうすぐで一カ月が経とうとしています。トランプ大統領がアメリカとメキシコの国境に壁を建設するための予算約50億ドルを要求している一方、民主党側は壁建設自体を認めないということで対立しています。

 

連邦下院は民主党、連邦上院は共和党が過半数を握っており、連邦下院で壁建設予算抜きの予算案が可決されて連邦上院に送られても、連邦上院ではトランプ大統領の支持を受けていない法案は採決しないとして棚ざらしにされ、連邦上院で壁建設予算を含む予算案を可決して連邦下院に送っても否決されてしまうということで、予算が可決されずに、政府機能が一時停止されることになりました。政府機能の約4分の1、約80万人の連邦職員が出勤できない、もしくは給料の支払いがない状態で働いているということになっています。

 

 この膠着状態を打開しようと、ホワイトハウスと連邦議会民主党執行部との間で話し合いが行われていますが、着地点が見いだせないままです。トランプ大統領は国家非常事態宣言を行い、現在の予算を組み替えて壁建設の予算を捻出し、建設をすぐに始めたいという意向を表明しています。しかし、この状態での国家非常事態宣言は裁判闘争を誘発し、壁建設はすぐには取り掛かれない状況になる可能性が極めて高くなっています。また、大統領にとって何か都合の悪いことがあると国家非常事態宣言を使える、という前例を残すことは、民主、共和両党にとって良くないことだという認識もあるようです。


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 連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、2019年1月29日に予定されている一般教書演説の延期、もしくは文書だけでの発表を主張し、それに対して、トランプ大統領はアメリカ軍の飛行機を使っての連邦議員の外国訪問を差し止め(予算の執行停止を理由に)、今週末に予定されていたペロシ議長をはじめとする議員たちのアフガニスタン訪問を中止させました。お互いに一歩も引かないチキンレースとなっています。

 

 2019年1月20日にトランプ大統領はホワイトハウスからテレビを通じて演説を行いました。国家非常事態を宣言するのではないかという観測も流れましたが、それはなく、トランプ大統領は「常識に沿った妥協」として、DACATPSの延長を行うので、壁建設の予算を認めて欲しいと訴えました。

 
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 DACAとは、子供(未成年。被保護者)の時に親が不法移民する時に一緒にやってきた人々(ドリーマーズと呼ばれます)が国外退去処分を保留され、アメリカで就労が出来るようにするものです。TPSは、指定された国々(自然災害や天災がある)の人々がアメリカに滞在し、就労できるようにするもので1990年からこの措置は採られています。

 

 トランプ大統領は国家非常事態を宣言しませんでした。そして、「妥協」を提案しました。これに対して、民主党側からは、これは妥協ではない、まず政府機能を再開してそこから話し合うべきだ、DACATPSで人々を人質にとって、壁建設の予算を獲得しようとしていると批判がでました。今回のトランプ大統領の提案は、今週、連邦上院で採決されることになりますが、可決には100名のうち60名の賛成が必要で、共和党所属議員全員に加え、民主党所属議員からの賛成が必要となります。

 

 一方、保守派からは、不法に入国した人々に恩赦を与えるようなものだ、とトランプ大統領の提案に対して批判が出ています。トランプ大統領当選の原動力となった人々からの批判ということになります。

 

 トランプ大統領としては、「民主党にここまで譲歩してやったのに、認めないのか」ということにして、国家非常事態宣言をしやすくする狙いがあるのかもしれませんが、国家非常事態宣言を行えば、民主党側が裁判闘争に持ち込んで、泥沼になり、合法性が認められないということになると、トランプ大統領にとっては大きな痛手となります。

 

 2019年1月29日には一般教書演説が予定されています。大統領が連邦議会を訪問し、そこでアメリカの現状と自身の政策について演説を行います。政府機能が閉鎖されたままでの一般教書演説は初めてのことだろうと思います。また、ここまで深い対立のまま迎えることも珍しいと思います。一般教書演説でトランプ大統領が民主党をあしざまに罵り、民主党の連邦議員たちが大量に欠席するということになると、アメリカ政治の分裂は覆い隠すことが出来ない状況となります。一般教書演説は、State of the Union Addressと言いますが、Union、まとまり、団結がほどけていくという示すことになるかもしれません。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプ大統領が民主党からの反撃の中、政府機能再開のために新しい計画を提案(Trump pitches new plan to reopen government amid Dem pushback

 

ジョーダン・カーニー筆

2019年1月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/426178-trump-pitches-new-plan-to-reopen-government-amid-dem-pushback

 

トランプ大統領は土曜日、壁建設のための予算を書類が不備の不法移民に対する保護とリンクさせる計画を提案した。これは、数週間継続している政府機能一部閉鎖を解除するための道のりとしての提案である。しかし、民主党側から早速反撃を受けている。

 

トランプ大統領の演説はホワイトハウスからテレビ中継された。若年移民に対する国外強制退去の延期措置(DACA)による保護を更に3年延長し、一時的な保護状況(TPS)によって守られている人たちへの保護を更に3年延長する、その代わりに国境の壁建設のために50億以上の予算をつける、というのが提案の内容だ。

 

トランプ大統領は「ワシントンにいる民主、共和両党は協力しなければならないことは簡潔な事実としてある。お互いの主張に耳を傾けねばならないし、武器をいったん置かねばならない。信頼を醸成し、お互いに通じ合い、解決を見つけねばならない」と述べた。

 

トランプは更に、2018年12月末からワシントンを麻痺させている「行き詰まりを打開」するために新しい計画を提案するとした。政府機能の一部閉鎖で、政府機関の4分の1が閉鎖となり、およそ80万人の連邦政府職員が出勤できないか、給料が支払われない状況で働いている。

 

政府機能の一部閉鎖は、現代史において最長の予算の執行停止となっている。閉鎖は29日目となっている。アメリカ・メキシコ国境に沿って壁を建設するというトランプ大統領の提案のために予算を巡り、行き詰まりが起きている。

 

各種世論調査によると、アメリカ国民の過半数は、政府機能の一部閉鎖について、トランプ大統領の責任であると答えている。しかし、土曜日午後に行われたトランプ大統領の演説は、民主党側に彼の計画を支持し、交渉のテーブルに戻るように圧力をかけるものであった。

 

トランプ大統領と連邦議会民主党執行部との間の会談は、行き詰まりを見せている。今月初めの会談で、連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)が、大統領が政府機能を再開しても壁建設の予算について話し合うことはないと述べ、それを受けてトランプ大統領が席を立った。それ以来、事態は膠着している。

 

トランプは自身の提案を実現させようとしている。そのため、国境には「緊急の行動」が必要な「危機」が存在するという主張を行っている。

 

トランプ大統領は次のように述べた。「不法移民は賃金を低下させ、公共サーヴィスに大きな負担をかける。国境の流入・流出のコントロールが欠如すると、それが、犯罪者とギャングがアメリカに入国するための玄関口、広く開かれた玄関口となる」。

 

トランプ大統領は、民主。共和両党の幹部たちと協力してきた、と強調し、そして、自分の提案を支持することを求めた。大統領は提案を「多くの妥協」を伴う「常識」だと述べた。

 

トランプ大統領は「私たちは、民主、共和両党が熱意をもって提案を支持してくれることを願っている。今回の提案は民主、共和両党が受け入れることが出来る、常識に沿った妥協である」と述べた。

 

トランプ大統領は次のように述べた。「私たちの計画の中で、民主党幹部の優先事項に協力したので、私たちの計画について支持をしてくれることを希望する。これは常識に沿った妥協であり、民主、共和両党は受け入れることが出来るはずだ。過激な左派が我が国の国境についてコントロールすることはできない」

 

トランプ大統領は、連邦上院多数派院内総務ミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)が来週、トランプ大統領の提案した内容の法案を採決にかけることを約束したと述べた。マコーネル自身も法案を採決にかけることを認め、「今こそ法制化する時だ」と述べた。

 

マコーネルは声明の中で次のように述べた。「超党派の協力によって、連邦上院は法案を可決してそれをすぐに連邦下院に送ることが出来る。連邦下院もそれで行動に移ることが出来る。出勤することが出来ない連邦政府職員たちの状況は深刻であり、国境での危機は、見せかけの投票では改善されない。しかし、大統領の計画は政府機能閉鎖と国境での危機という2つの問題を解決する方向に進ませる道筋である」。

 

マコーネルはこれまで連邦下院が可決した、政府機能を再開するが国境に関する追加的な予算は含まない予算案の可決を阻止してきた。マコーネルは今週初め、連邦上院においては、トランプ大統領と連邦議会民主党執行部との間で合意が成立した法案だけを採決にかけると発言した。

 

マコーネルはペンス副大統領とトランプ大統領の娘婿で上級補佐官のジャレッド・クシュナーと木曜日に会談を持った。そこで政府機能の一部閉鎖を終わらせる道筋について議論が行われた。連邦下院共和党は土曜日夕方にトランプ大統領の提案について議論を行うように求めると見られる。

 

トランプの提案には、8億ドルの緊急人道支援、2000名以上の国境管理職員と警備職員の増強、75名の移民判定半次の増加が含まれている。また、また大統領は、230マイルに及ぶ追加的な壁とフェンスの建設も要求している。

 

しかし、民主党は演説の前に、既に報道されていた大統領による移民に対する一時的な緩和と引き換えに壁建設予算を要求するという内容に対して、反撃をしていた。民主党は今回の争いが膠着状態に陥っていることの本質を明確にしつつ、攻撃を行っている。

 

トランプ大統領の演説の直前にペロシ議長は声明を発表し、その中で次のように述べた。「民主党は、トランプ大統領が最終的に政府機能の再開に合意し、国境警備に関して緊急に必要な議論を行うと願っていた。大統領の考えていることは何一つ連邦下院では可決されない。これらを全部合わせてみても、全くもって出発点になどならない」。

 

トランプ大統領とペロシ議長との間の緊張は、ペロシ議長が2019年1月29日に予定されている一般教書演説を延期するように求めてから高まっている。トランプは対抗策として、連邦議員たちによるアメリカ軍の飛行機を使っての移動や旅行を差し止めた。その中には、今週予定されたペロシ議長のアフガニスタン訪問も含まれている。

 

連邦下院歳出委員会院長ニタ・ローリー連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は、トランプ大統領は、政府機能を再開させて、その後に連邦議員たちと移民政策と国境警備について交渉を行うようにしなくて貼らないと発言した。

 

ローリーは次のように述べた。「ドリーマーズ(DACAによって守られている人々)とTPSを受けている人々を守ることは正しい。大統領は、無駄に終わる壁建設のための予算を得るために、これらの人々を人質に取っている。これは間違っている。壁建設のための予算は、国境警備のためにより効果的に使うことも出来る。大統領の交換条件、移民の一部に対する一時的な保護と引き換えに無駄な仕事となる国境の壁建設を行うという提案を受け入れることはできない」。

 

連邦上院少数派院内総務チャールズ・シューマー連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は、トランプ大統領にとって、今の状況を打開するための唯一の方法は、「政府機能を再開し、民主、共和両党が公開の場で議論を行い、超党派の解決に至ることだ」と述べた。

 

シューマーは更に次のように述べた。「DACATPSの保護を一方的に持ち出して、それと交換で壁を建設するというのは妥協ではなく、人質を取ったようなものだ。これをやったのがトランプ大統領なのだ」。

 

民主党の幹部職員2名は匿名で、民主党側は、トランプの提案内容について事前に相談はなかったと述べている。また、民主党が連邦下院で過半数を占めており、連邦上院でも提案内容については採決をして見なければどうなるか分からないとしている。

 

連邦下院民主党のある幹部職員は次のように述べた。「これまでにも似たような、不適切な提案がトランプ政権側から出され、民主党はそれらを拒絶してきた。ブリッジ法案(BRIDGE ACT)はドリーマーズに対する完全な保護ではないし、永続的な解決策ではない」。

 

この人物は続けて、「大統領による、無駄に終わるであろう、57億ドルの壁建設予算が含まれているので、これは妥協などではない。この壁建設の予算の要求から政府機能閉鎖が始まったのだ」と述べた。

 

テレビ中継された演説を行う直前、トランプ大統領は大統領執務室で帰化が認められた人々に対する帰化セレモニーに参加した。イラク、イギリス、ジャマイカ、ボリヴィア、韓国から新たにアメリカ市民となった人々がアメリカへの忠誠を誓った。

 

トランプ大統領は次のように述べた。「皆さんは新しくそして素晴らしい冒険の出発点に立っています。皆さんはアメリカ人として権利と自由を享受されます。あなた方に成し遂げられないものは存在しません。しかし、市民権には大きな責任を伴うものです」。

 

「ブリッジ」法案はリンゼイ・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)とディック・ダービン連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)が以前に共同で提出したもので、「ドリーマーズ」(子供の時に不法にアメリカにやってきた移民たち)に3年間「一時的な保護」とアメリカ国内での就業を可能にすることを認める内容である。この法案は、連邦議会がより広範な移民に関する合意実現に努力しながら、連邦議員たちが長年にわたって逃げ続けてきた移民政策に関する弥縫策なのである。

 

とりあえずの一時しのぎのための法案は、トランプ大統領のDACAを終わらせようとする動きに対し各裁判所がそれを阻止した後に、指示を集めるようになった。DACAは2012年にオバマ前大統領が実行したもので、被保護者の時に不法にアメリカに入国した移民たちに対して、国外退去処分を保留して、アメリカ国内で就労する権利を与えるものだ。

 

「一時的保護状態(TPS)」は1990年以降、様々な形態で実行されてきた。TPSは、自然災害、もしくは人災が現在も続いている国々が指定され、それらの国々の市民がアメリカ国内で就労し、滞在することが出来るとするものだ。

 

二人目の民主党の幹部職員はトランプ大統領からの提案を「全く真剣さに欠けた生産物」と評した。

 

この人物は次のように語った。「トランプ大統領からの提案について民主党は事前に何の相談も受けなかった。民主党は以前にも似たような申し入れをことごとく撥ねつけてきた。今回の提案は全く真剣さに欠けた生産物である。今回の提案は、大統領が作り出したごみをきれいにしようとしてホワイトハウスのスタッフたちが話し合ってみて出てきた不真面目なものだ。大統領は壁建設のために多くの人間を人質に取っているようなものだ」。

 

トランプ大統領の提案を実現するためには、マコーネルは少なくとも7名の民主党所属の連邦上院議員の支持を勝ち取らねばならず、更に、共和党所属の連邦上院議員全員を団結させて、提案を支持させねばならない。

 

民主党所属の連保上院議員の中には、リンゼイ・グラハム(サウスカロライナ州選出)、スーザン・コリンズ(メイン州選出)、リサ・マコースキー(アラスカ州選出)といった共和党所属の連邦上院議員たちのグループと超党派の交渉を行っている人たちもいるが、この中の誰もトランプ大統領の考えを支持しようとする人は出て来ていない。

 

超党派グループに属しているティム・ケイン連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)は土曜日の午前中に、民主党は政府機能再開が最初に来るべきだとする、超党派グループの姿勢を支持していると述べた。

 

ケインは、政府機能再開前に交渉が成立し合意が出来てしまうことは、「政府機能閉鎖を交渉の道具として使うことがこれからも起きてしまうこと」になると懸念を表明した。

 

ケインは本紙の取材に対して、「政府機能の再開がまず行われねばならない。政府機能が再開された後ならば、そこで何かの合意がなされてもそれは納得できるものだ」と述べた。

 

ボブ・ケイシー連邦上院議員(ペンシルヴァニア州選出、民主党)は、トランプ大統領はまず成否機能を再開させねばならないと主張した。ペンシルヴァニア州は2016年の大統領選挙でトランプ大統領が勝利した州だ。

 

ケイシーは次のように述べた。「トランプ大統領は自身が始めた政府機能閉鎖を終わらせ、政府機能を再開させねばならない。政府機能が再開されたのち、民主、共和両党は国境警備の様々な方策について、そして移民システムの改革について、話し合うことが出来る」。

 

 

In addition to the uphill battle to win over Democrats, Republicans could also face criticism from some members of their own base, who will pressure them to oppose making any immigration deal with Democrats.

 

トランプ大統領は、保守派の論客や支持基盤からの批判の中で、強硬な姿勢から後退し、連邦議会と移民に関して何らかの合意を結ぶかもしれないという姿勢を示唆していた。

 

土曜日のトランプの演説直後から右派の日人からの攻撃が始まった。

 

保守派の論客アン・コールターは、トランプ大統領の提案を「恩赦の合意」と評した。

 

コールターは大統領選挙で敗れたジェブ・ブッシュに言及しながら、ツイッター上で、「トランプ大統領は恩赦を提案した。私たちはトランプに投票したつもりだったが、出てきたのはジェブだった」と書いた。

 

「ナンバーズUSA」会長のロイ・ベックは、トランプ大統領の提案は、「トランプの選挙における公約で中心に置かれていた忘れられたアメリカの労働者たちの敗北を意味する」と述べた。

 

ベックは次のように述べた。「恩赦と壁建設の取引は移民法を破った人々を助けるものであり、将来移民法を破る人々の出現を阻止するものではない。このような恩赦の取引は更なる集団的不法移民、更なる不法な越境者、更なる不法滞在者を、不法に入ってきた労働力との競争に直面している最も攻撃に晒されているアメリカの労働者たちの負担で、招き入れる誘引を与えるものである」。

 

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トランプ、連邦議会が史上最長の政府機能閉鎖記録を更新(Trump, Congress break record for longest shutdown

 

ジョーダン・カーニー筆

2019年1月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/425012-trump-congress-break-record-for-longest-shutdown

 

一部政府機能併催は現在までに、現代史上最長の予算執行停止状態となっている。ビル・クリントン政権下の21日間という記録を破った。

 

今回の政府機能停止の記録更新という不名誉な記録は2018年12月22日に始まり、長引く争いの解決に向けた動きの兆候すら見えない。トランプ大統領と民主党側の話し合いは行き詰っている。共和党穏健派による解決に向けた話し合いのための努力も実らなかった。連邦議員たちは月曜日午後までワシントンDCを離れている。従って、政府機能閉鎖は少なくとも24日間続くことになる。

 

ホワイトハウスと連邦議会民主党執行部の連邦上院少数派院内総務チャールズ・シューマー連邦上院議員(ニューヨーク州選出)と連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出)は、トランプ大統領が提案している国境の壁建設の予算を巡り、対立している。しかし、いつどのように膠着状態が終わるかについて、連邦議員たちも政権幹部たちも同様に分からない状況に置かれている。

 

連邦上院歳出委員会委員長リチャード・シェルビー連邦上院議員(アラスカ州選出、共和党)は、トランプ大統領と連邦議会民主党の間でどのような妥協がなされるのか、まったく見当がつかないと述べた。

 

政府機能閉鎖解除の道のりについて本誌がシェルビー議員に取材した際、議員は「それは重要な質問だ。今回の問題について核となる疑問だ。ここにいる私たちの誰もが持っている疑問だ。その答えは誰も分からない。私はいくつか考えを持っているし、皆何らかの考えを持っている」と述べた。

 

しかし、シェルビー議員は、トランプ大統領と連邦議会民主党がとりあえず話し合いを始めない限り、「状況は混とんとしたままで、サーカスのようなもののままだ」と述べた。

 

約4分の1の政府機能が2018年12月22日から閉鎖されたままだ。トランプ大統領が、連邦上院が可決した7週間のつなぎ予算に署名しないと示唆してから、閉鎖が始まった。連邦下院の保守派議員たちが提出した50億ドルの壁建設予算を含む予算案は否決された。

 

予算執行停止によって80万人の連邦政府職員が出勤できないか、無給で働くという状況になった。連邦政府職員たちは金曜日に渡される最初の給料を受け取れなかった。

 

連邦議員たちは、有権者に対する新たな財政負担が連邦議会とトランプ大統領との間に合意をもたらすための圧力となることを願っている。

 

しかし、政府機能閉鎖が更に数週間延長し、来月まで続くことを示す兆候が既に出ている。

 

政権幹部たちは本紙の取材に対して、予算管理局が2月までの政府機能一文閉鎖に対する準備を進めており、ホワイトハウスの補佐官たちは、2019年1月29日に予定されているトランプ大統領による一般教書演説を使って、アメリカ・メキシコ国境に沿った壁建設に反対している民主党に痛撃を与えることについて議論を行っている。

 

連邦下院民主党は今月初めに2019年2月8日までの国土安全保障省の予算をつけ、その他の影響を受けている各省庁には9月30日、2019年度の一杯の予算をつけるという予算案を可決させた。連邦下院民主党は更に各省庁の決算法案を可決させつつある。

 

しかし、こうした法案は連邦上院では行き場のないものとなる。連邦上院多数派院内総務ミッチ・マコーネル連邦上院議員は、大統領からの支持がない限り、これらの法案を採決にかけることはないと公言した。木曜日、連邦上院民主党が、連邦下院が可決した政府を全面的に再開させる予算案の採決をマコーネルは阻止した。

 

マコーネルは連邦上院の議場で次のように述べた。「私たちが今現在においてやらねばならないことは、民主、共和両党の間で意味のないやり取り、見せかけだけの投票をするということではない」。

 

共和党所属の連邦上院議員の中には、連邦下院が可決した個々の省庁の予算案を可決させること、もしくは民主党側とトランプ大統領が国境の壁建設を巡り争っている間に政府機能を完全に再開するための決議を行うことを公然と支持する人たちも出ている。しかしながら、共和党所属の連邦上院議員の中で、これらの方策について連邦上院で採決を行うように求めた議員は出て来ていない。

 

リサ・マコースキー連邦上院議員(アラスカ州選出、共和党)は、金曜日に連邦上院が閉会する前に議場で演説を行い、その中で「政府機能の閉鎖は統治の一環とは言えない。誰もそれによって得をしない」と述べた。

 

この期間、トランプ大統領は、南部国境における移民の状況について国家非常事態を宣言するかどうかではっきりした態度を示してこなかった。国家非常事態を宣言すれば、国境の壁建設のために連邦予算の一部の転用を求めることが可能となる。

 

金曜日、トランプ大統領はホワイトハウスにおいて記者団を前に、壁建設を即座に始めるために国家非常事態宣言を行う権限を持ってはいるが、「拙速に行うことはない」と述べた。

 

トランプ大統領は「国家非常事態宣言を行うことは容易だ。しかし、連邦議会はそのようなことがないように行動すべきだ」と述べた。そして、宣言を行うことで裁判闘争が始まり、壁建設が数カ月も遅れてしまうことになるので、できれば宣言はしたくないとも述べた。

 

トランプ大統領は、予算を巡る争いから抜け出すために国家非常事態宣言という考えをちらつかせている。大統領は、フォックス・ニュースのアンカーであるシーン・ハニティに対して、「連邦議会との交渉がまとまらない場合には、国家非常事態宣言を行う可能性は極めて高い」と述べた。

 

トランプの側近の中には、国家非常事態宣言に突き進むべきだと公の場で表明する人物も出ている。「民主党は壁建設の予算を絶対に認めないのだから」と主張している。水曜日、トランプ大統領とペロシ議長は怪談を持った。その際、ペロシ議長は、たとえ大統領が政府再開に合意したとしても、国境の壁建設の予算のために議論をすることは決してないと述べた。トランプ大統領はすぐに席を立ち、ホワイトハウスを後にした。

 

リンゼイ・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は金曜日、トランプ大統領との会談の後に声明を発表した。リンゼイは声明の中で次のように述べた。「民主党は問題を解決することよりも大統領への憎悪を優先させている。国境警備の問題は過去に民主党も深刻なものだと認識していたはずだ。民主党は2020年の米大統領選挙においてトランプ大統領を倒すために持てる力すべてを投入することになるだろう」。

 

グラハムは更に「大統領閣下、今すぐに国家非常事態を宣言すべきだ。今すぐに国境の壁を建設すべきだ」と述べた。

 

しかし、国家非常事態宣言という考えに対しては、連邦上院共和党と連邦下院のトランプと同盟している保守派議員たちから公の場で反撃を受けている。国家非常事態宣言は裁判闘争に直面し、将来の民主党所属の大統領に同様の手段を与えてしまうことになると警告を発した。

 

チャック・グラッセリー連邦上院議員(アイオワ州選出、共和党)は金曜日記者団に対して次のように述べ得た。「大統領は国家非常事態を宣言してはいけないと考えている。連邦議会の一員として、予算を配分するために憲法上与えられた権力について私は自分の両親に基づいて行動すべきだと考えている。国家非常事態宣言は間違った方策だと思う」。

 

トランプ大統領が国家非常事態を宣言するならば、民主党側は彼の行動の合法性を捧呈で争うことになるだろう。民主党側は宣言の無効決議を行うことが出来る。トランプの宣言を無効にするための決議には過半数の賛成だけでよい。

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シューマーはトランプ大統領による国家非常事態宣言は法廷に持ち込まれて機能が停止することになるだろうと述べたが、同時に彼自身とペロシは立法府としての方法を採用して阻止するということも明らかにした。

 

シューマーはポッドキャスト「ポッド・セイヴ・アメリカ」とのインタヴューの中で、「トランプ大統領の国家非常事態宣言を法的に阻止することになると思う」と述べた。

 

シューマーは更に、「ナンシー(・ペロシ議長)と私でこの件についてこれまでも話し合ってきたことは皆さんご存知だと思う。私たちは立法府としての方法で宣言を阻止することが出来るという考えで一致している」と述べた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 ドナルド・トランプ大統領は、現地時間2019年1月8日東部時間午後9時から、大統領執務室から国民に向けた演説を行うと発表しました。また、それに続いて南部国境を直接訪問するということも決まりました。トランプ大統領が大統領執務室から国民に向けた演説を行うのは就任して初めてのことになります。

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 米大統領が執務室から演説を行うというのは、戦争が始まるとか、何か大きな事件や災害が起きたとか、そういう重大な時です。トランプ大統領は国境の壁建設を「国家安全保障と人道上の危機」と訴えており、それほどの重大事だということをアピールしていることになります。加えて国境を訪問し、国境警備の最前線で働く人たちと面会するということで、更にアピールするということになります。

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 トランプ大統領は、大統領が持つ地位と力(bully pulpitと呼ばれます)を利用することで、事態を打開しようという動きに出ています。国民がこれを支持すれば、議会民主党も何らかのトランプ大統領寄りの妥協をしなければならなくなります。

 

 深読みをすれば、議会民主党側が大統領にこうした動きを行うことを求めたということもあるかもしれません。民主党としては、国民世論が高まり、仕方なく妥協するという形を取る、ということになります。しかしこれは深読みし過ぎているかもしれません。

 

 トランプ大統領の壁建設の熱意はかなり高いようです。

 

 国境の壁建設は一面で見れば、50億ドル(約5500億円)の大規模公共事業となります。壁の材料製造と壁建設のために多くの雇用が生まれることになります。テキサス州は全米で経済成長率が高い地域ですが、更に景気が良くなるでしょう。国境はニューメキシコ州、アリゾナ州、カリフォルニア州にもありますから、こうした地域にも政府のお金が降り注ぐことになります。株式市場の高騰は金持ちを優遇することになりますが、こうした大規模公共事業では一般庶民までお金が渡ることになります。トランプ大統領は社会資本の改善にも予算を出すことを公約としており、壁建設も公共事業の一環ということが言えるでしょう。

 

 仕事が生まれ、雇用が生まれる、ということになれば、その恩恵に浴した人々はトランプ大統領に感謝するでしょう。民主党支持の労働組合に参加している労働者たちもトランプ大統領に感謝するでしょう。2020年の米大統領選挙を考えると、前回の大統領選挙で共和党の大票田であったテキサス州、共和党優勢州であったアリゾナ州を抑えておくこと、更に民主党(ヒラリー・クリントン)が勝ったニューメキシコ州を奪い取ることが可能になります。

 

壁建設はトランプ大統領の最初からの公約ですが、再選に向けた布石という点で、大変重要ということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

政府機関閉鎖を巡る戦いの中、トランプ大統領はプライムタイムに演説を行い、国境地帯を訪問する(Trump to give prime-time address and travel to border amid shutdown fight

 

ジョーダン・ファビアン筆

2019年1月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/424165-trump-to-travel-to-border-thursday-amid-wall-fight

 

ホワイトハウスは月曜日、トランプ大統領が火曜日のプライムタイムに、国民に向けた演説を大統領執務室(オーヴァル・オフィス、Oval Office)で行い、今週末、アメリカ・メキシコ国境を訪問すると発表した。トランプ大統領の壁建設のための予算要求に端を発した一部政府機関の閉鎖が続く中で発表が行われた。

 

ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース報道官は、政権が南西部国境の「国家安全保障と人道上の危機」と呼ぶ場所の「最前線に立つ人々」とトランプ大統領が面会することになると発言した。

 

サンダース報道官は訪問についてこれ以上の詳細な情報は提供しなかったが、詳細についてはできるだけ早く発表することになるだろうとも述べた。

 

トランプ大統領が演説を行うことについては、『ニューヨーク・タイムズ』紙が最初に報じた。トランプ大統領はツイッター上で、演説を行うと認めた。

 

トランプ大統領はツイッターで「火曜日東部時間午後9時に我が国の南部国境における人道上のかつ国家安全保障上の危機について、全国民に向けて演説を行うことをお知らせできたことを嬉しく思う」 と書いた。

 

トランプ大統領がプライムタイムに大統領執務室で国民向けの演説を行うのはこれが初めてのことになる。

 

これらの公のイヴェントを行うことで、トランプ大統領は、大統領の地位と立場と力(bully pulpit)を利用してアメリカとメキシコを分断する壁建設に必要な政府予算50億ドル以上の獲得を実現しようということになる。議会民主党は度重なる予算要求をことごとく撥ねつけた。

 

連邦議会が一部政府機能の再開のための予算案を可決しなければ、トランプ大統領の国境訪問時、政府機能閉鎖は20日を迎えることになる。そうなれば1990年代半ばに起きた政府機能停止の最長期間に近づくことになる。

 

トランプ大統領は、クリスマス後のイラク電撃訪問中に記者団との対話の中で、国境訪問のアイディアを思いついた。

 

トランプ大統領は「私はテキサスに行く。私たちはそこで壁建設の起工式を行うのだ」と述べた。

 

民主党はトランプ大統領の壁建設予算要求を妨害してきた。先週、トランプ大統領は、議会の承認なしに壁を建設するために国家非常事態宣言を発する可能性について言及した。この場合の国家非常事態宣言については法的にかつ政治的に疑問が多いと考えられている。

 

マイク・ペンス副大統領や政権幹部たちは、先週末に2度にわたり議会指導部の補佐官たちと会談を持った。しかし、これらの会談でも突破口を見つけることはできなかった。

 

民主党側は、トランプ大統領が自身の壁建設の希望を正当化するために、南西部国境地帯において危機状態を作り出している非難している。

 

ナンシー・ペロシ連邦下院議長(カリフォルニア州選出、民主党)は、今週、壁建設予算を含まない、各政府機関を再開させるための予算について下院で採決を行う予定だと述べた。

 

ペロシは先週発表した声明の中で、「トランプ大統領による政府機能の閉鎖が引き起こした無分別の不安定さと無秩序を今すぐに終わらせねばならない」と述べた。

 

トランプ大統領は昨年初めて国境を訪問した。そしてサンディエゴ近郊にある国土安全保障省の施設で国境の壁のデザインモデルを複数見学した。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 ウェブサイト「副島隆彦の学問道場」内の「重たい掲示板」にアルルの男・ヒロシ(中田安彦)研究員が「[1756]安倍晋三が米議会で演説する件」として2015年2月23日に掲載した記事の中で、私が「おかしい」と思った部分があり、それを書いておきたいと思います。それは、中田研究員が貼りつけた共同通信の記事です。それを下に転載貼りつけします。


「重たい掲示板」の投稿記事へは、「こちら」からどうぞ。


(転載貼りつけはじめ)

 

(貼り付け開始)

 

安倍首相、米議会演説へ 池田勇人氏以来54年ぶり 

共同通信 2015年2月22日

 

 

 日米両政府は、安倍晋三首相が4月下旬からの大型連休中の訪米時に米議会で演説を実施する方針を固めた。日本政府関係者が21日明らかにした。1961年に池田勇人首相が下院で演説して以来54年ぶりとなる。日本の首相としては前例がない上下両院合同会議での演説へ最終調整している。先の大戦への反省を踏まえ、戦後一貫して「平和の道を歩んできた」との見解を示し、未来志向の関係を呼び掛ける考えだ。

 

 首相の祖父、岸信介首相も57年に演説している。

 

 安倍首相は演説で、TPPなど経済分野を含めた幅広い両国関係の深化が相互の国益にかなうとアピールするとみられる。

 

2015/02/22 02:00 【共同通信】

(貼り付け終わり)

 

この記事は何処が安倍首相を招請したか書いてないが、共同通信の英語版には次のようにある。

 

(引用開始)

 

According to the government official, U.S. Deputy Secretary of State Antony Blinken proposed, when he called on the prime minister’s office on Feb. 13 during a trip to Japan, that Abe address Congress, and he agreed.

 

Abe also expressed hope to make address Congress during a meeting in Tokyo on Monday with a bipartisan group of U.S. lawmakers led by Rep. Diana DeGette, a Colorado Democrat.

 

(引用終わり)

 

(転載貼りつけ終わり)

 

 古村治彦です。

 

 私が「おかしい」と思ったのは、英語版の方です。前半部を翻訳しますと、「ある政府高官によると、米国務副長官アントニー・ブリンケンが、2015年2月13日の訪日中に首相官邸を訪問し、安倍首相に対して、アメリカ連邦議会(Congress)での演説を提案し、安倍首相も同意した」となります。

 

①アメリカは三権分立(Separation of Power)が徹底している国です。「分立」とありますが、「緊張感を持って、自分の縄張りを犯されないように見張りあっている」状態です。この中で、行政府の国務省の一職員であるブリンケンが、連邦議会のことで何かを言うことありえませんし、あってはいけないことです。これは大変な越権行為です。「公務員が連邦議会のことで云々した」となると、これは大変なことです。それは、アメリカの国家体制である三権分立をないがしろにする行為だからです。

 

②ブリンケンには、国務省派遣で連邦上院外交委員会のスタッフ(その時の委員長は現在のジョー・バイデン副大統領)という経歴もあります。ですから、議会とのパイプがあって、「安倍首相の連邦議会での演説」について、提案があったということも考えられます。しかし、それはあくまで非公式であり、表に出てはいけない話です。それを「米国務副長官のアントニー・ブリンケン」が議会演説を提案した、と共同通信に漏らした「the government official」は、実は大変なことをしでかしているのです。

 

③ブリンケンが安倍首相を訪問したのが2015年2月13日です。その後、2015年2月16日に米議会の超党派議員団が安倍首相と会談しています。英語の記事の後半部にある通り、「安倍首相は月曜日(16日)に、コロラド州選出で民主党所属のダイアナ・デゲット連邦下院議員率いるアメリカの超党派の連邦議員たちと東京で会談し、その中で、連邦議会での演説を希望した」ということです。その時の様子を日経新聞は次のように伝えています。

 

(新聞記事転載貼りつけはじめ)

 

●「首相、米議会演説に意欲 春で調整の訪米時に」

 

日本経済新聞電子版 2015年2月17日

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE16H05_W5A210C1PP8000/

 

 安倍晋三首相は16日、米議会の超党派議員団と首相官邸で会談し、春の大型連休中で調整している自身の米国訪問時の米議会での演説に意欲を示した。デゲット下院議員が「首相が米議会で演説できるようにしたい」と話し、首相は「できればありがたい」と応じたという。同席者が明らかにした。

 

 日本の首相による米議会での演説が実現すれば1961年の池田勇人首相以来54年ぶりとなる。首相の祖父の岸信介首相も演説したことがある。

 

 首相は議員団との会談で、戦後70年について「戦火を交えた両国は戦後和解して強固な同盟国となり、ともに世界の平和と繁栄に貢献してきた。今後も幅広い分野で緊密に連携したい」と強調した。米側は「首相の訪米の成功を期待している」と語った。

 

(新聞記事転載貼りつけ終わり)

 

 古村治彦です。

 

④超党派議員団は、安倍首相に対して「演説ができるようにしたい」と述べて、安倍首相が「できればありがたい」と応じています。これはまだ正式な招待という訳ではありません。もちろん内々には根回しが済んでいるということもあるでしょうが、正式な招待のためには、連邦下院議長のジョン・ベイナーの親書なり、招待状がなければなりません。また、超党派議員団は別の機会では安倍首相の歴史認識が日米関係にとって懸念となっていると語ったとも伝えられています。以下の記事をお読みください

 

(記事転載貼りつけはじめ)

 

●「日本を訪問中の米議員団、安倍首相の歴史観を危惧「第二次世界大戦をめぐる問題で、日本が逆行しているとみなされないようにすべき」―米紙」

 

Record China 219()1037分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150219-00000029-rcdc-cn

 

日本を訪問中の米議員団、安倍首相の歴史観を危惧「第二次世界大戦をめぐる問題で、日本が逆行しているとみなされないようにすべき」―米紙

 

18日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、日本を訪問中の米国の議員団が、安倍晋三首相の歴史観が日米関係にとって懸念になっていると述べたと報じた。写真は安倍晋三首相。

 

2015218日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、日本を訪問中の米国の議員団が、安倍晋三首相の歴史観が日米関係にとって懸念になっていると述べたと報じた。

 

ウォール・ストリート・ジャーナルが17日に報じたところによると、日本を訪問中の米国の超党派の議員団が、安倍晋三首相の第二次世界大戦に対する歴史観が日米関係にとって大きな懸念になっていると述べた。ダイアナ・デゲット下院議員(民主)は、記者団に対して、「第二次世界大戦終戦70年にあたり、慰安婦問題をはじめ、第二次世界大戦に関連したその他の問題で日本は逆行しているとみなされないようにすることが重要である」と述べた。また、安倍首相の「歴史修正主義」は、日本の近隣諸国との関係を傷つけるものだとの見方を示した。

 

日系のマーク・タカノ議員(民主)は、非常に二極化された米国の政治的環境から見ても、安倍首相の歴史観は超党派の議員の反発を起こす危険性があると警告した。また、ジェームズ・センセンブレナー議員(共和)は、安倍首相と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の首脳会議がまだ行われていないことに対して懸念を示し、北朝鮮が脅威となる可能性に対して日本、韓国、米国が協力することの重要性について述べたという。(翻訳・編集/蘆田)

 

(記事転載貼りつけ終わり)

 

 古村治彦です。

 

⑤このような状況では、安倍首相の連邦議会での演説が確実に行われるという保証はありません。三権分立の話に戻ると、共同通信の英語版記事では、「2月13日にブリンケンが機械演説を提案し、安倍首相が同意した」とあり、「2月16日に超党派議員団との会見で、安倍首相が議会演説を希望した」とあります。ブリンケンが提案することもおかしいですし、議会演説に関しては、何も正式には決定していないことが分かります。

 

⑥以下の投稿から私が考えたことは、「首相官邸側の高官が共同通信をはじめとするマスコミを使って、議会演説を既成事実化しよう」としているのだということです。3月3日にアメリカ連邦議会で演説するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、オバマ大統領ともバイデン副大統領とも会談できません。「それに比べて、安倍首相はオバマ大統領とも会談でき、議会でも演説できる」という最大限の厚遇で迎えられるのだ」ということに官邸側はしたいのでしょう。しかし、そこで、「ブリンケン米国務副長官からの議会演説の提案」という内容を話してしまいました。これは大きなミスです。

 

中田研究員の投稿を読んで、私が「おかしい」感じた点から考えたことを書きました。

 

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


 

 古村治彦です。

 

 昨日、以下のような記事が配信されました。米連邦議会の超党派の議員たちが阿部首相を訪問し、今年四月末(大型連休の頃か?)に訪米する安倍晋三首相が米連邦議会で演説が出来るようにしたいと述べ、安倍首相も歓迎の意向を示したということです。

 

 日本の首相はこれまでアメリカ議会で演説をしたことはありません。「世界で最も重要な二国間関係」と日本の一部政治家やその周辺は威張っていますが、実態はこんなものです。「アメリカの利益と日本の破壊に最も貢献した」小泉純一郎元首相は在任中に訪米して演説をする千載一遇のチャンスがあったのですが、靖国神社参拝問題で流れてしまいました(「靖国神社へは参拝しない」という確約を米議会側が求めました)。

 

 本ブログをお読みいただいている方ならピンときていると思いますが、安倍首相が訪米(予定)の1か月前である3月(もうすぐです)に、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が訪米し、米連邦議会で演説を行います(ジョン・ベイナー下院議長の招聘による)。しかし、オバマ政権側はバラク・オバマ大統領も、ジョー・バイデン副大統領も、ジョン・ケリー国務長官も、高官は誰も彼と会談することはありません。また、連邦議員たちの中に、ネタニヤフ首相の演説を欠席すると表明する人たちが出てきています。

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ネタニヤフ(左)と安倍晋三両首相

 

 現在、アメリカ政治は、大きく2つのグループに分裂し、お互いが激しく争っています。2つのグループとは、①反オバマ・親ヒラリーのネオコン・人道主義的介入派と②抑制的な外交・防衛政策を求めるリアリスト派です。この①のグループにつながり、外側から支援し(そして利用されて)ている形になっているのが、イスラエルのネタニヤフ首相であり、日本の安倍首相なのです。

 

 ①のグループは、この2人の外国の指導者に対して、「世界のデモクラシーの総本山である米連邦議会での演説」という最大級の名誉を「エサ」として与えようとしているのです。それに対して、良識ある人々は怒っている訳です。安倍首相もおそらくオバマ政権の高官とは会ってもらえないか、会ってもらえてもきわめて短い時間での会談という形になるでしょう。

 

 ネタニヤフ首相と安倍首相の米連邦議会演説は、米連邦議会の歴史に泥を塗る行為になるでしょう。

 

(新聞記事転載貼りつけはじめ)

 

安倍首相、米議会演説に意欲=大型連休の訪問時

 

時事通信 216()2016分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000121-jij-pol

 

 安倍晋三首相は16日午後、米議会「日本研究グループ」のダイアナ・デゲット下院議員らと首相官邸で会談した。出席者によると、4月下旬からの大型連休中で調整している首相の訪米が話題になり、デゲット氏は「(首相が)米議会で演説できるようにしたい」と表明。首相は「(演説)できればありがたい」と意欲を示した。

 

 首相はこの中で「本年は戦後70年だが、戦火を交えた(日米)両国は戦後和解して強固な同盟国となり、地域と世界の平和と繁栄に貢献してきた。今後も幅広い分野で連携していきたい」と強調。米議員側からは「首相の訪米の成功を期待する」との声が出た。

 

 日本の首相の米議会での演説は過去に例がない。首相は演説が実現すれば、戦後70年を踏まえ、日本の平和国家としての歩みや、積極的平和主義に基づく安倍政権の外交・安全保障政策について説明する見通しだ。

 

(新聞記事転載貼りつけ終わり)

 

(終わり)















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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 元ニューヨーク州知事で、米民主党リベラル派(Liberal Lionと呼ばれました)の大物マリオ・クオモ(Mario Cuomo、1932~2015年)が亡くなりました。クオモは1983年から1994年までニューヨーク州知事を務めました。長男のアンドリュー・クオモ(Andrew Mark Cuomo、1957年~)は2011年からニューヨーク州知事を務め、現在2期目です。その前は、クリントン政権下の1997ねから2001年まで、住宅都市開発庁長官を務めました。

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マリオ・クオモ
 
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アンドリュー・クオモ 

 

 マリオ・クオモの追悼記事で必ず言及されているのが、1984年の米民主党の全国大会での基調演説です。この「二つの都市の物語(A Tale of Two Cities)」(チャールズ・ディケンズの小説『二都物語』から来ている)と呼ばれる演説は名演説として、アメリカ政治史に燦然と輝いています。

 

 私はこの名演説を聞きながら、1980年代のアメリカは現在の日本の状況とよく似ていると感じました。考えてみれば、この時期にアメリカに留学していた竹中平蔵氏が今の日本のグランドデザインを描いていることを考えれば当然のことかもしれません。


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竹中平蔵

 この時期の米民主党は、共和党のロナルド・レーガン(Ronald Reagan、1911~2004年)大統領の圧倒的な人気の前に、劣勢、苦戦を強いられていました。この時期を支えたのがマリオ・クオモでした。この部分も今の日本とよく似ています。私は、今年1月18日に開催される日本の民主党の代表選で、このマリオ・クオモの名演説に匹敵する演説が出て欲しい、そして、自民党との対抗軸を鮮やかにして欲しいと考えています。


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1984年米大統領選挙の結果(共和党:レーガン<赤>;民主党:ウォルター・モンデール<青>)

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ロナルド・レーガン
 

 下に演説の一部とその拙訳を掲載しました。ご覧いただければ幸いです。

 

===========


 
1984年民主党全国大会におけるマリオ・クオモニューヨーク州知事の基調演説(抜粋)

 

10日前、レーガン大統領は、この国には状況が良くなっている人々もいるが、今でも不幸せで、自分自身について、家族について、そして、自分たちの将来について不安を持っている人たちも多くいると認めました。大統領は、彼らの持つ不安が理解できないと述べました。彼はこう言いました。「どうしてそんな風に思うんだろう?この国は丘の上で輝きを放つ都市(a shining city on a hill)だというのに」。大統領の発言は正しいのです。多くの点で、私たちアメリカは、丘の上で輝きを放つ都市なのですから。

 

しかし、ここに厳しい現実が存在します。それは、全ての人々がこの輝ける都市の輝きと栄光を共有していないという事実です。大統領がホワイトハウスの玄関や彼の持つ農場のヴェランダから見れば、都市は輝いて見えるかもしれません。そこの住む全ての人々が幸せに暮らしているように見えるかもしれません。しかし、そこにはもう一つの都市があるのです。輝きを放つ都市にはもう一つの部分があるのです。そこでは人々は住宅ローンを支払うことができず、それどころか若い人々の殆どは住宅を持つことができません。学生たちは教育を受けられず、中間階級の親たちが子供たちに臨んだ夢は煙のように消え去っています。

 

輝ける都市のもう一つの部分では、アメリカの歴史上、これまでにないほど人々は貧しくなっています。多くの家族が問題を抱え、より多くの人々が助けを必要としながら、それを見つけられないでいます。状況はもっと悪くなっています。家の地下室で寒さに震えている恒例の人たちがいます。道路の上や排水溝の中で眠るしかない人々がいます。そこには輝きなんてありません。ゲットーでは多くの若者が仕事にあぶれ、教育もない中で、毎日、麻薬密売人に自分たちの命を差し出しています。レーガン大統領、そこにあるのは絶望(despair)です。貴方が仰った輝ける都市で、貴方が会わなかった人々の顔、そして訪問しなかった場所にあるのは絶望です。

 

大統領、この国は、「丘の上にある輝きを放つ都市」の国ではなく、「二つの都市の物語」の国なのです。貴方はこのことを知らねばなりません。

 

大統領、貴方はこれまでもいくつかの場所に行かれたことでしょう。貴方が訪問されたアパラチア地方では今でも掘立小屋で暮らしている人々がいます。貴方はラカワナにも行かれましたね。そこには製鉄所で働いていたが解雇された多くの人々がいます。彼らは、どうして我が国が外国の鉄鋼に対して補助金を出すのか疑問に思っています。大統領、恐らく貴方はシカゴにあるシェルターに立ち寄って、ホームレスの人々と話をしたかもしれませんね。貴方は必要な助けを受けることを拒絶された女性に、子供たちにきちんとご飯を食べさせるように言ったでしょうね。しかし、彼女が援助を受けられなかったのは、貴方が富裕層に対する減税をし、使いもしないミサイルを増やすために社会保障関連予算を削ったからなのです。

 

恐らくですが、大統領、私はそうあって欲しくないと思っています。紳士淑女の皆さん、真実は私たちが懸念するものに近いようなのです。レーガン大統領は就任早々、私たちに対して、自分は社会ダーウィニズム、適者生存、「政府は万能ではない」という考えを信奉していると述べました。そして、強い人々に対して手厚い保護をして、彼らの経済的野心と慈善によって他の人々にも恩恵が届くようにするという政策を行っているのです。富める人々はますます豊かに、彼らのテーブルからこぼれ落ちる欠片だけで、中間階級や懸命に働いて中階級になろうとする人々には十分だと彼らは言っているのです。

 

フーヴァー大統領時代、共和党はこの政策を「トリクルダウン」と呼びました。そして、現在彼らはこれを「サプライサイド(供給重視)」と呼んでいます。しかし、あの時と現在とで共通しているのは、彼が唱える輝きを放つ都市に住めるほどに幸運な人はほとんどいないということです。この都市から排除された人々、鍵をかけられて入れないようにされた人々ができることは、この都市のけばけばしい高層ビルから離れるということだけです。

 

これはもう時代遅れの物語です。私たちの歴史と同じくらいに古いものです。民主党と共和党との間の違いは常に勇気と自信によって測られてきました。共和党は、貨車に老人、若者の一部、弱者の一部を乗せないようにし、置き去りにしないと何も達成できないと確信しています。「強者だけがこの土地を受け継ぐことができる」と彼らは私たちに言います。

 

私たち民主党はいささか別のものを信じています。私たち民主党は家族全員が相互に関わることで何かを実現できると信じています。フランクリン・ルーズヴェルトは、立ち上がれずにいたアメリカを立ち上がらせるために、車いすから立ち上がりました。教育、住宅、平和といった新しいフロンティアに貨車をどんどん送り込みました。この貨車にはアメリカという家族全員が乗っていました。その成果はアメリカという家族全体に届いていきました。この貨車には全員が乗ってきました。黒人、ヒスパニック、全ての人種、そしてアメリカ先住民の人々も含まれていました。彼らは家族のために懸命に働き、アメリカという偉大な国の分け前を少しずつですが分け合うことができました。

 

私たち民主党員は団結しなければなりません。私たち民主党員はアメリカを団結させるために団結せねばなりません。それは、共和党がこの国に団結をもたらすことができないからです。彼らの政策は、幸運に恵まれた人々と置いてけぼりにされた人々という2つのグループに国を分断しています。共和党はこの分断をして勝利だと呼びます。彼らはこの国を二つに切り分けようとしているのです。一時的に良い状態になる人々と、悪くなる人々に分けて、そしてこの分断を回復と呼ぼうとしているのです。

 

私たちは、アメリカという一つの家族にならねばならないと確信しています。私たちはお互いにつながっているのだということを認識しなければなりません。デュラスに住む退職した先生が抱える問題は私たちの問題なのです。バッファローに住む子供たちの将来は、私たちの将来なのです。正統な形で生きていこうとしているボストンに住む障害を抱えた人の苦闘は私たちの苦闘なのです。リトルロックにいる女性の飢餓は私たちの飢餓なのです。私たちが何かを与えねばならないのにそれができていないのは、私たちの失敗なのです。

 

私は皆さんにお願いしたいことがあります。それは、紳士淑女、兄弟たちそして姉妹たち、この偉大な国に対する愛、アメリカという家族に対する愛、そして神の愛によって、素晴らしい将来をどのように作り上げるかをこの国に思い出させてほしいのです。

 

どうもありがとうございました。皆さんに神のご加護がありますように。

 

(終わり)








 

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