古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:瑞穂の國記念小學院

 古村治彦です。

 

 このブログでも書きましたが、「教育勅語は現在の教育現場に出てきてはいけない文書」だと私は主張しています。それは私の勝手な考えではなく、国権の最高機関である国会が、衆議院では「教育勅語等排除に関する決議」、参議院では「教育勅語等の失効確認に関する決議」として、教育勅語には何の効力も効果もないということを決議しているからです。日本国憲法が最高法規であり、それに反する法律は日本には存在できません。そして、参議院の決議は、教育現場に関する指導的な法律である教育基本法(日本国憲法に反しない)に反するという理由で教育勅語は失効しているのだと述べています。

 

 今年2月から問題になっている森友学園に対する国有地の格安払下げ、瑞穂の國記念小學院開校認可に関する疑惑の中で、森友学園の教育方針にも注目が集まりました。森友学園が運営する塚本幼稚園では約15年前から教育勅語を園児たちに暗唱させるという教育を行ってきました。教育現場に教育勅語がふさわしいのかどうかについて、松野文科相は、「教育勅語を教育の源泉として扱うことは適切でない」と国会で答えていました。

 

 しかし、今週になって、しれっと次のように語るようになりました。下に貼り付けた記事をまずはお読みください。

 

(貼りつけはじめ)

 

●「教育勅語巡り、松野文科相「教材、配慮あれば問題ない」」

 

水沢健一

朝日新聞

20173141406

http://www.asahi.com/articles/ASK3G3DYFK3GUTIL00L.html

 

 松野博一文部科学相は14日、戦前・戦中の教育勅語について、憲法や教育基本法に反しないような配慮があれば「教材として用いることは問題としない」との見解を示した。配慮が適切かどうかの判断は「(都道府県などの)所轄庁が判断するものだ」とした。

 

 教育勅語は、明治天皇が1890年に教育の根本理念として授けた「教え」。両親への孝行など一般的な道徳を表す項目がある一方、国民は「臣民」とされ、国家の一大事には「皇室国家」のために尽くすと書かれている。

 

 松野文科相は14日の記者会見で、教育勅語が「日本国憲法と教育基本法の制定によって法制上の効力を喪失した」としたうえで、「憲法や教育基本法に反しないように配慮して授業に活用することは一義的にはその学校の教育方針、教育内容に関するものであり、教師に一定の裁量が認められるのは当然」と述べた。(水沢健一)

 

(貼りつけ終わり)

 

 松野文科相は、「憲法や教育基本法に反しないように配慮して」授業に活用することは学校の教育方針に関するもので、教師が決めることだとしています。松野文科相は、法律違反、憲法違反の危険を学校の先生方、特に公立学校の先生方(公務員)に冒させようとしています。また、教育基本法に則りながら運営されるべき学校現場に法律違反の危険を冒させようとしています。

 

 日本史の授業で1890年に教育勅語が制定された、という事実を教えることは問題ないでしょう。また、大学などで教育勅語を研究対象とすることは当然の行為でしょう。しかし、教育勅語を道徳の授業で使うことは教育基本法違反になる可能性があります。そんな危険を冒さなくても、親子や兄弟姉妹、友人や皆が互いを傷つけあわずに仲良くというようなことは別の教材でも十分に教えることは可能です。また、そのような道徳は個人的な良心の問題であって、天皇の言葉だからと身につけることではありません。

 

今回の発言で松野大臣が念頭に置いているのは、森友学園が開校しようとしていた瑞穂の國記念小學院(認可申請取り下げ)のことだと思いますが、この学校のウェブサイトには「道徳(教育勅語)」としてありました。認可申請が取り下げられたので、この学校での道徳の授業は行われませんが、もし道徳として教育勅語が教えられていたら問題になっていたと考えます。ですから、教育勅語についてはっきりと否定ができないと述べることができない松野文科相は問題です。松野博一文科省は、日本会議国会議員懇談会の一員です。ですから、教育勅語についてはっきりと否定できないのだと思いますが、教育勅語について擁護したければ少なくとも文科相を辞任されてからなさるべきでしょう。いや、公務員の憲法遵守義務違反にも該当するかもしれませんから、国会議員も辞めて、擁護活動をなさるべきかもしれません。

 

 「教育勅語には良いことがたくさん書いてある」という主張があります。そのように考えることは構いませんし、教育勅語を復活、つまり教育基本法に代わる日本の脅威の指導原理にしようと訴えることは自由です。しかし、そのためには日本国憲法を全面的に改正しなければなりません。教育勅語の内容と日本国憲法の理念は合わないものだと衆参両院の決議は述べています。そして、日本国憲法に反する法律や勅語は存在できませんし、天皇をはじめ全ての公務員には憲法遵守義務があります。ですから、日本国憲法を全面的に改定、もしくは破棄して大日本帝国憲法を復活させねばなりません。そうなると、主権者は天皇ということになります。現在は国民主権ですが、天皇主権ということになります。教育勅語の中で徳目が続いて最後に「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」という一節をどう訳すかが問題です。試訳では、「ひとたび天皇が主権者の大日本帝国にとって重大なことが起きたら、勇ましく奉公し、これまで栄え続けてきた天皇家のますますの発展に貢献せよ」ということになります。この一節は、やはり天皇大権が前提になっていると考えますから、この一節が入っている教育勅語は日本国憲法下の日本では復活できません。また、曲がりなりにも国民主権と基本的人権の尊重、民主政治体制が前進してきた日本が後進してしまうことも許されません。

 戦前の日本ではしかしながら、「天皇主権説」と「天皇機関説」が併存していました。顕教と密教という言葉で表現されていましたが、表向きは天皇が大権を統べるとなっていましたが、裏では主権は国家に属すると考えられてきました。天皇機関説によって議会は重要な役割を果たすことが出来ました。しかし、1935年から天皇機関説排撃が始まり、天皇を絶対視する勢力が軍部と結託し、亡国の道を進みました。ですから、大日本帝国憲法を復活させることは、いつ天皇絶対勢力が出現し、民主的な制度を窒息死させるか分からない危険なものですから、大日本帝国憲法の復活もまた歴史の進歩に反するものと言えます。 

 

 私個人の見解では、「教育勅語」をアホダラ経のように暗唱させたところで効果は薄いと考えています。戦前には「陸海軍軍に賜る勅諭」、通称「軍人勅諭」というものがありました。これは、旧日本帝国陸海軍の上は元帥から下は二等兵、新兵までに与えられた天皇からの「お諭しの言葉」です。陸軍は全員がこれを暗唱することが義務とされ、海軍ではその精神を理解しておくことが必要とされました。昔の陸軍士官学校の様子を収めた映像では、毎朝生徒たちは故郷に向かって遥拝し、その時に軍人勅諭を大声で暗唱していました。軍人勅諭の中身は軍人の心構えとして必要な内容が書かれていましたが、特に「政治にかかわってはいけない」と書かれていました。終戦の時の鈴木貫太郎首相は海軍大将でしたが、首相に推挙された際に、「私は明治大帝から軍人は政治にかかわるなというお教えを受けたので、できない」といったんは断ったところ、侍従長として仕え、大きな信任を受けていた昭和天皇から「頼むから」と言われて、ようやく引き受けました。一方、陸軍は中堅将校たちが政治に関心を持ってしまったがために満州建国や中国侵略を行ってしまいました。勅諭という「ありがたい」言葉をただの言葉にしてしまったのです。言葉をただ唱えているだけでは意味がないと思うのです。

 

 教育勅語が素晴らしいと考えることは自由ですが、それを「復活」させる、つまり教育の指導理念とすることは今のままではできませんし、私はそのような復活には強く反対します。それにつながるような動きにも強く反対します。

 

(終わり)









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 古村治彦です。

 

 今回の森友学園・塚本幼稚園、瑞穂の國記念小學院(認可取り下げ)を巡るスキャンダルが大きな注目を集めていますが、その理由の一つが安倍昭恵夫人の存在です。安倍昭恵さんが園児たちに教育勅語を暗唱させ、天皇皇后の写真に最敬礼をさせる教育方針に感動し、講演を引き受け、園児たちの激励に涙を流して喜び、小学校の名誉校長になっていたということで大きな関心を集めました。

 

 安倍昭恵さんの存在は、安倍首相にとっては、批判を和らげる、物分かりの良い配偶者という姿を演出するのに役立つ存在でした。昭恵さんの予測不可能な行動は人々の注目を集め、男女問わず、賞賛を集めていました。

 

 しかし、昭恵さんの実像が明らかになるにつれて、「なんだ、結局、安倍さんと同じじゃないか」という失望と共に、賞賛されていた奔放さがただの無責任な行動ということになりました。

 

 昭恵さんの存在のお蔭で、首相夫人の取り扱いはどうあるべきか、「公人」か「私人」かということについて議論がなされるようになりました。これまで控え目で表に出ないのが首相夫人の姿でしたが、昭恵さんがこれをより「ファーストレディ」の方に近づけてきたことは事実です。しかし、諸外国のファーストレディのように、国民的にコンセンサスが得られる分野や問題での活動ではなく、昭恵さんは自分の嗅覚だけを頼りにフラフラとうろついてしまったために、今回のような問題が起きてしまいました。

 

 私たちは、日本にもファーストレディ執務室を作るべきなのかどうかを考えねばなりません。そうしなければ個人の嗅覚だけで行動して、今回のような問題を引き起こすことになります。その点で、問題提起をしてくれた昭恵さんには敬意を表するべきでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

人気のある日本の首相夫人はスキャンダルを巡り、教育的指導を受けている(Japanese PM’s popular wife gets schooled over scandal

 

アンナ・フィールド筆

2017年3月13日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/news/worldviews/wp/2017/03/13/japanese-pms-popular-wife-gets-schooled-over-scandal/?utm_term=.442e1c72da92

 

東京発。安倍昭恵氏は日本の首相の秘密兵器だと長い間考えられてきた。

 

温かい人柄、品がよく、社会問題ではリベラルな考えを持ち、ソーシャル・メディアを活用している。これらが安倍昭恵夫人の特徴であり、安倍晋三首相にはないものばかりだ。昭恵夫人は安倍首相のカリスマ的な性格の裏にある、あまり知られていない人間的な側面を人々に知らせることに貢献してきた。

 

安倍晋三首相が愛犬ロイと遊んでいる写真が昭恵夫人のインスタグラムで見られる。また、2人が笑顔で、フォロワーたちにメリークリスマス、素晴らしいクリスマスになりますようにと願っている写真も見られる。昭恵夫人は公の場で夫の手を握る。これは日本ではかなり珍しい光景である。

 

2014年に『ワシントン・ポスト』紙は昭江夫人について次のようなプロフィールを紹介した。

 

「日本では妻が夫に従うというステレオタイプがあったが、安倍昭恵夫人はこのステレオタイプを否定している。明恵夫人は夫の政策に反対していることを公表している。安倍首相は日本のエネルギーにとって原子力は必要だと熱心に訴えているが、昭恵夫人は原子力に反対している。昭恵夫人は防潮堤計画に反対し、夫が韓国政府と戦っている時に韓国文化を楽しんでいる。安倍首相は昭恵夫人を「家庭内野党(“domestic opposition party”)」と呼んでいる」。

 

「今年の初め、昭恵夫人はゲイプライドパレードに参加した。日本ではLGBTに関する諸問題を議論しない国だと考えられてきた。また、自分たちが不妊治療を受けたことを公表し、一度は養子を迎えることも考えたと述べた。これは日本ではほとんど例のない振舞いである」。

 

これ以降、昭恵夫人はアメリカ軍のヘリパッド建設に反対する人々が集まる場所を訪問した。このヘリパッドは安倍首相率いる日本政府は建設が必要だと主張しているものだ。昨年夏にはパールハーバーを訪問した。それから数カ月後の12月、夫の安倍晋三首相は当時のバラク・オバマ米大統領と共に歴史的なパールハーバー訪問を行った。

 

しかし、現在、安倍昭恵夫人に関して、日本のマスコミと日本の人々は彼女の不適切な行動に注目している。昭恵夫人は、ヘイトスピーチとうさんくさい土地取引を巡る政治スキャンダルの中心にいる。そして、昭恵夫人の役割と影響力について疑問が出ている。スキャンダルは終息していない。

 

安倍首相は今月初め、国会で昭恵夫人を擁護して次のように述べた。「私の妻は私人(private figure)です。私の妻を犯罪者のように取り扱うことについては大変不愉快です」。

 

今回の疑惑は大阪府にある幼稚園が出した手紙とヴィデオ映像が発端となった。手紙には、2つのグループ、中国人と日本に住む韓国人が「邪悪な考え」を持っていると描写され、ヴィデオ映像では、子供たちが、安倍首相が中国人と韓国人を「改悛」させようとしている試みを行っており、それを支持していると述べている姿が映っている。

 

この幼稚園を運営する学校法人は現在小学校の建設を進めていて、その名前を一度は「安倍晋三記念小學院(Shinzo Abe Memorial Elementary School)」にしたいとしていた。 昭恵夫人は名誉校長に就任する予定であった。また、実際に小学校の場所を訪問した。

 

安倍昭恵夫人は2014年12月と2015年9月の2度、この幼稚園で講演を行った。2度目の講演では、聴衆に対して、「私の夫もこの幼稚園の教育方針は素晴らしいと考えています」と述べた。

 

この学校法人が大幅に値引きされた価格で土地と購入したことが明らかになった。土地の価格は評価額の14%という破格のものであった。小学校開校の認可は取り下げられ、政府当局は土地の返還を求めている。しかし、議論は終息していない。

 

安倍首相は、自分自身もしくは妻が間違ったことに関与していないと強く否定している。明恵夫人はスキャンダルが発覚後に名誉校長を辞任した。安倍首相は繰り返し、昭恵夫人は私人、民間人だと述べている。

 

昭恵夫人は今回の論争について一度だけ公にコメントした。彼女は現在マスコミの注目を浴びていることに戸惑っていると述べた。

 

昭恵夫人は先週、世界女性デーを祈念する討論会に出席し、「私がどうして現在の状況に置かれて、多くの注目を浴びているのかを考えると、ただただ当惑してしまうだけなんです」と述べた。昭恵夫人は、学校を巡るスキャンダルに直接言及しなかったが、「再びファーストレディになってから、私の活動範囲は拡大しました。私はたくさんの場所を訪問しました。様々な事柄について様々な人々から頼みごとをされます」と語った。

 

「ファーストレディ」という概念は、日本では比較的新しいものだ。8年前まで、日本の首相夫人のほとんどはスポットライトの外にいた。2006年から2007年にかけての安倍首相の第一次政権期、昭恵夫人は現在よりも目立ってはいなかった。

 

しかし、昭恵夫人は、安倍首相の第一次政権期にワシントンを訪問した際にローラ・ブッシュ大統領夫人(当時)に感銘を受けたとこれまで何度か語っている。2007年、ローラ夫人は昭恵夫人と一緒にマウント・ヴァーノンにあるジョージ・ワシントンの邸宅を訪問した。安倍昭恵夫人は、ミッシェル・オバマ大統領夫人(当時)と日本語プログラムを実施しているヴァージニア州北部の小学校を訪問した。

 

コメンテイターのフィリップ・ブレイザーは『ザ・ジャパン・タイムズ』紙で、「ファーストレディという役割が日本では比較的新しいものであるので、昭恵夫人と政府との関係を見ていくことは大事なことだ」と書いている。更に続けて次のように書いている。「昭恵夫人はこれまでの日本の首相夫人よりも、英語の単語である“ファーストレディ(first lady)”に近い行動をしてきた。そして、首相夫人(prime minister’s wife)に関する人々の受け止め方を変化させてきた」。

 

政治評論家の小林吉弥は、安倍昭恵夫人はこれまで、夫である安倍晋三首相に大きな利益をもたらしてきたと指摘する。小林は朝日新聞の取材に対して、昭恵夫人の影響力は「大きい」と述べ、「外国訪問中に外側に向けて話ができる人がいることは外交上大きな利点となる」と語った。

 

現在、安倍昭恵夫人は違った理由で注目を集めている。国会議員たちは、今回の問題に関して昭恵夫人を国会に招致して質問することを要求している。

 

今月初め、野党第一党の民進党所属の榛葉賀津也参議院議員は記者たちを前にして次のように語った。「昭恵夫人は公人(public figure)です。彼女には、どうして名誉校長の依頼を受け入れたのか、どうして講演を引き受けたのかについて説明する責任があります」。

 

ファーストレディという役割が日本ではまだ新しいもので、また、日本版「イースト・ウィング(訳者註:アメリカ大統領夫人執務室)」について議論されてこなかった。野党の国会議員は、内閣府に対して昭恵夫人がどのようなサポートを受けてきたのかを明らかにするように求めた。

 

首相の広報担当は、安倍昭恵夫人には2人の常勤、3人の非常勤のスタッフが中央官庁から派遣されている、また公務の時には政府の自動車を使っていると答えた。

 

左派の新聞である朝日新聞は今月初め、社説の中で次のように書いている。「たとえ安倍昭恵夫人が個人の能力の範囲内で活動しているとしても、首相夫人は慎重さを示し、責任感を持たねばならない」。

 

社説には「公的な立場にある個人として、安倍昭恵さんにはこの問題について人々が納得するような説明をする責任がある。“民間人”として彼女自身を隠すようなことをしてはいけない」と書かれていた。

 

匿名のある野党議員は、今回のスキャンダルは切り抜ける方法がないと述べている。この議員は『東京スポーツ』紙の取材に対して、首相の最側近の名前を出しながら次のように語った。「菅官房長官は安倍政権内にいてこれまでいくつかのスキャンダルのダメージコントロールをしてきました。その方法は基本的にトラブルを起こした大臣を更迭するというものでした。しかし、菅官房長官は昭恵さんを首相夫人から引きずりおろすことはできませんし、離婚するように言うこともできません。この問題は尾を引きますよ」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)









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 古村治彦です。

 

 今回は、『ブルームバーグ』誌の森友学園・塚本幼稚園を巡るスキャンダルに関する記事をご紹介します。そして、この記事を書いた記者が昨年に行った安倍昭恵さんへのインタヴューを基にした記事を併せてご紹介します。

 

 イザベル・レイノルズ記者は、安倍昭恵さんにインタヴューを行い、それが記事になったのが昨年の12月、そして、先週の金曜日に、森友学園スキャンダルについて記事を書いています。これまでご紹介した他の欧米の新聞や雑誌に比べて、ややトーンがやわらかく感じるのは、やはり記者自身が安倍昭恵さんと直接会って話をしているということが影響しているのだろうと思います。安倍昭恵さんは直接話せば、魅了されてしまうような魅力を持っている人なのだろうと推察されます。しかし、綺麗なバラにはとげがあるとも言います。

 

 安倍昭恵さんのインタヴューを読むと、彼女の中に、「アメリカに占領されてしまって、アメリカ文化が入ってきたために、日本の良い部分が失われた」という考えが確固としてあることが分かります。明恵さんが大麻解禁に熱心なのは、戦後に大麻の栽培がアメリカによって禁止されて、それで神道の儀式で使う麻繊維が日本製ではなく、中国からの輸入に頼るようになったからだということが分かりますし、彼女が開いたレストランでは、日本で採れた食材のみを使っているのもその延長でしょう。彼女の中で、大麻解禁と瑞穂の國記念小學院の名誉校長になることは矛盾しないのはそのせいです。この点では、結局安倍昭恵さんと安倍晋三さんはぴったりのご夫婦であり、このご夫婦が分業して、「アメとムチ」をやって、人々の支持を惹きつけてきたことが現在の状況を生み出しています。ですから、「アメ」である昭恵さんの存在は厄介なものです。今回のスキャンダルでしかし、この危険性が明らかになっていくと思います。

 

 彼女のインタヴュー記事を読んだ後で、スキャンダルをめぐる記事を読むと、やや擁護している感じがするなという印象を持ちます。

 

レイノルズ記者は、「安倍首相は今週、国会で「私は公人ですが、妻は民間人です。妻を犯罪者化のように取り扱うことは極めて不愉快です」と発言した」と書いています。これは確かにそのような発言はありましたが、質問者は誰も安倍昭恵さんを犯罪者であると発言していません。それどころか被害者ではないのかという懸念を示唆している人たちもいます。これは阿部首相自身の変な印象操作による、答弁逃れでしかありません。そうした文脈を無視して、この発言を特別に取り上げている点で、少し擁護しているんだろうと思われます。

 

 安倍首相の支持率が高いこと、自民党の党大会で総裁任期が3年、3期までということで、戦後では最長の10年の首相在任と言うことも視野に入ってきました。安倍首相の人気を支えてきた一つの要素として、昭恵さんの行動と存在があるのは間違いないところです。しかし、森友学園の報道が続いていく中で、安倍首相の在任期間が10年に届くかどうか、少し心許なくなってきていると言えるでしょう。

 

(貼りつけはじめ)

 

●「党大会を前に幼稚園を巡るスキャンダルが安倍首相に付きまとう(Kindergarten Scandal Dogs Abe Ahead of Party Meeting)」

 

イザベル・レイノルズ筆

ブルームバーグ

2017年3月3日

https://www.bloomberg.com/politics/articles/2017-03-02/nationalist-kindergarten-scandal-dogs-abe-ahead-of-party-meeting

 

●安倍首相は妻の学校との関係、更に土地取引の件で厳しく追及されている

●トランプとの会談で上がったが支持率が6ポイント下落と日経新聞が報道

 

日本の歴史上、最長の在任期間を誇る首相になるための段階に進む前のこの数日間、安倍晋三首相は妻と国家主義的な教育を行う幼稚園を巡るスキャンダルに対峙している。

 

安倍氏が首相になって4年間が過ぎた。この週末、与党である自由民主党の党員たちは、安倍首相が党の総裁に3期連続在任することができるようにするための規則の改定に無条件の賛成を示そうとしている。これによって、安倍氏の首相在任が10年に及ぶ可能性も出てきた。

 

安倍首相の支持率は概して安定している。世論調査の数字では、彼の支持率の李悠馬は良く分からないが、安倍首相の政権担当期間中に失業率が1990年代中盤の数字にまで下がっていること、野党第一党の民進党が2012年の総選挙での惨敗の後で再建に苦闘していることが考えられる。

 

それでも、今週末の彼の大勝利の瞬間が森友学園を巡るスキャンダルで怪我される危険が出てきている。森友学園は大阪で幼稚園を運営しており、この幼稚園は戦前の国家主義的な要素を含むカリキュラムでの教育を行い、安倍首相を支持しているということが明らかになった。

 

森友学園が、野党側が述べているように評価額よりもかなり低い値段で土地を購入できたことについて、いくつも疑問が浮上している。この土地取引は、森友学園が小学校を開校して業務を拡大しようとした計画の一部である。

 

●ゴミのある土地(Waste Site

 

安倍首相や昭恵夫人(学校の名誉校長に就任させられた)が土地取引に関与したことを示す証拠は出てきていない。そして、学園の理事長である籠池泰典氏は土地の価格について政治家に働きかけを行ったことはないと述べた。籠池氏は産経新聞の取材に対して、敷地内から実際にゴミが見つかったと答えた。

 

安倍首相はこの問題から距離を取ろうと努めている。そして、土地取引に関して、自身もしくは昭恵夫人が関わっていることを示す証拠が出たら辞職すると述べた。そして、木曜日、いかなる調査にも協力すると表明した。野党の山本太郎議員は、証拠を出してもらうために、昭恵夫人に国会に出席してもらって質問を受けてもらうように求めた。

 

今回の問題は国家審議の多くの時間を占め、マスコミにとっては格好のテーマとなっている。月曜日に発表された日経新聞による世論調査では、安倍首相に対する支持率は6ポイント下がり、60%であった。2月に行われたドナルド・トランプ米大統領との首脳会談の後に上昇した支持率は少し低下した。それでも、政治アナリストであるスティーヴン・リードは、安倍首相は「各種のスキャンダルに上手に対処している」と述べている。

 

●中国の反応(China Reacts

 

政治腐敗に関する著書もある東京にある中央大学の政治学教授スティーヴン・リードは、「大事なことは人々を素早く切り捨てること、そして、何も嘘はないと明らかにすることです。しかし、安倍首相は妻を切り捨てることはできませんし、野党側は、このことをニュースにすることに成功しています」と述べた。

 

中国の国営メディアもこの騒ぎを報道している。日中両国は現在、領土と安倍首相の軍隊の役割を拡大させようという努力を巡って緊張関係にある。新華社通信は木曜日、記事の中で、「火のないところに煙は立たないものだ」と書いた。

 

塚本幼稚園は、子供たちに天皇の写真に頭を下げさせること、19世紀に出された教育勅語を暗唱刺させることで知られている。こうした行為は第二次世界大戦での日本の敗戦後、行われなくなったものだ。先月、幼稚園は、「外国人の間で誤解を引き起こす可能性」を持つ表現を使ったことについて謝罪した。共同通信によると、籠池園長は韓国人と中国人に対する差別的な発言を行った疑いで調査が行われた。

 

昭恵夫人は予定されていた役職から身を引いたが、森友学園との妻との関係を巡って国会では安倍首相への追及が続いている。今週、フジテレビで放映された映像の中で、昭恵夫人が幼稚園を訪問し、園児たちが「日本と日本人のために働いている安倍晋三内閣総理大臣を献身的に支えている」ことに感謝するという言葉を大きな声で一斉に述べた時に、涙を流した様子が映っている。

 

安倍首相は今週、国会で「私は公人ですが、妻は民間人です。妻を犯罪者化のように取り扱うことは極めて不愉快です」と発言した。

 

昭恵夫人は昨年にブルームバーグが行ったインタヴューの中で、日本は、西洋文化を取り入れたことで、アイデンティティのいくつかの要素を失ったように感じていると述べた。

 

自民党所属の参議院議員で元防災大臣の鴻池祥肇は記者たちに、森友学園から献金は受けたが、土地取引に関しての助力を求められたが拒否したと述べた、と水曜日に読売新聞が報じた。

 

テンプル大学日本校の非常勤研究員であるマイケル・キューセクは、YouTubeにアップした動画の中で、幼稚園のカリキュラムよりも、学園を巡るお金の動きの方が安倍首相を傷つける可能性があると述べた。

 

今回の自民党大会は、「安倍氏にとっての戴冠式となるはずであったが、にわかに彼がこれまで経験したことのないスキャンダルが起きた」と、キューセクは述べている。

 

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●「日本のファースト・レディーは安倍氏への家庭内ホットラインで批判を行う(Japan’s First Lady Offers Critics a Household Hotline to Abe)」

 

イザベル・レイノルズ、エミ・ノブヒロ筆

ブルームバーグ

2016年12月5日

https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-12-04/japan-s-first-lady-offers-critics-a-household-hotline-to-abe

 

●安倍昭恵夫人は貿易、原子力発電、国防政策に反対している

●総理大臣夫人のフェイスブックのタイムラインには平和への願いがつづられる

 

高い支持率を誇る安倍晋三氏は、現代史において最長の在任期間を誇る首相となる可能性も囁かれている。そのような安倍首相にはひとりよがりになるリスクがある。そこで、29年間、安倍首相の妻をしている安倍昭恵氏の出番だ。

 

日本の大製菓会社の家に生まれ、現在54歳になる昭恵氏は、日本では、「家庭内野党(the household opposition)」として有名だ。これは、昭恵氏が、TPP貿易協定、原子力技術の輸出の拡大、沖縄における米軍基地の拡大といった安倍氏の政策に反対を表明しているからだ。

 

先週、東京の中心部で4年前に彼女が開店したレストランでインタヴューを行った。昭恵氏は、「私の夫や近い人々には届かないような考えを取り上げて、伝えたいのです。これが野党のようだと思われたんだと思います」と語った。

 

昭恵氏は伝統的な首相夫人のイメージから離れようとしている。伝統的なイメージは、妻は夫に従い、裏で色々と助けるというものだ。更に驚くべきことは、安倍首相の政策に対する批判を表に出すことが、62歳の保守派の論客にとってアピールとなっているということだ。

 

元経済産業省の官僚で、現在は明治大学国際総合研究所客員研究員の奥村準は次のように語っている。「昭恵氏はこれまでの首相夫人の枠では捉えきれません。日本国内の誰も、アメリカのファースト・レディーでも、あの方のようには行動できないでしょうね。興味深いことは、昭恵氏の行動や言動が安倍首相を傷つけていないということです。実際には、安倍首相のイメージを和らげています。安倍首相は全く異なる考えや視点を許容できているという風にです」。

 

●ソーシャル・メディア(Social Media

 

Uzu」という名前のオーガニック食材を使う小さなレストランでインタヴューは続いた。昭恵氏は、人々から聞いた批判的な意見を夫に伝える時にはそれに適した時間とタイミングに行うようにしようとしていると述べた。

 

昭恵氏は、「毎日、野党の方々が批判されていて、私が家に帰ってきて批判を始めたら、夫は止めてくれと言うでしょうね」と語る。続けて、「妻として、夫をあまり攻撃したくないと思うときももちろんありますが、時には、どうしても言わなければならないことがあると思うときもありますよ」とも述べる。

 

昭恵氏は日本の総理大臣夫人では初めて積極的にソーシャル・メディアを活用している。彼女のフェイスブックのページには彼女の考えについて、多くの賞賛と批判の声が寄せられる。フェイスブックでは10万以上のフォロワーを持っている。彼女は口汚い書き込みをするフォロワー以外にはブロックすることはない。

 

彼女は今年11月にフェイスブックに書き込みを行いその中で、「世界平和について語る前に、私自身のタイムライン内での平和を達成したいのです」と書いた。

 

昼食をともにしながらのインタヴューの中で、「中には、私に大きな期待を寄せて下さる方もいます。夫とは逆の意見を持つ方で、私に対して夫にもっと強く言うようにと批判する方もいます。私たち夫婦の間で意見が異なるのにどうして一緒にいられるのかと質問する方や離婚しなさいと言う方までいるんですよ」と言って、昭恵氏は笑った。「ほっといてください、ですよね」。

 

●メディアの注目(Media Storms

 

昭恵氏は、幼稚園から高校まで、上流の過程の子女が通うカトリック系の学校に通った。そして、女性だけの専門学校に進学した。彼女は卒業後、日本最大の広告会社である電通に入社した。電通の上司が安倍氏を紹介する算段をした。今年初めのある雑誌のインタヴューの中で、子供を授からなかったことについてあれこれ言われることに対して、苦言を呈した。

 

昭恵氏の行動はしばしば彼女の言葉よりも雄弁だ。今年8月、彼女は、警察による警備や秘書の同行もなく(without a police escort or secretaries)、予告なく沖縄を訪れた。彼女は沖縄本島北部のアメリカ軍のヘリパッド建設反対の人々の許を訪れた。彼女は、夫には反対される恐れがあったので、相談しないで訪問したと述べた。

 

メディアが注目したもう1つの行動が、8月の後半にハワイのパールハーバーで祈りをささげる姿であった。パールハーバーは日本が奇襲をかけた場所で、この攻撃によって、アメリカは第二次世界大戦に引きずり込まれることになった。彼女の弧の行動が、安倍首相の日本首相初のパールハーバー訪問を促したという見方も出たが、公式訪問がこのように急に決まるということはない。

 

安倍夫妻は合わないようで合っているカップルだ。そんな2人は1945年から1952年まで続いたアメリカの占領時代よりも前の日本の様々な側面を称賛する点では一致している。安倍首相はたびたび、「戦後レジーム」を批判し、軍隊の役割を拡大するためにアメリカが草案を作った憲法を書きなおそうという熱意を持っていることで知られている。昭恵氏は文化面に興味を持っており、言語と自然により集中している。

 

昭恵氏は自身でオーガニックの米を作っている。そして、日本で取れた食材だけを使った食事を提供する彼女のレストランでその米を出している。彼女はまた、首相公邸に設置しているミツバチの巣箱では日本のミツバチを飼っていると述べた。ヨーロッパのミツバチの方がより多くのハチミツを作るがそれでも日本のミツバチを飼っていると述べた。

 

「戦後、ヨーロッパとアメリカの文化が入ってきて、日本はもともと持っていたものを弱められてしまったと考えています」と昭恵は述べた。

 

昭恵氏は西洋においては自然をコントロールしようと試みると述べる。そして、これは、2011年の大震災の時に起きたレヴェルの大津波から地域を守るために東北地方で進められている巨大な堤防作りもそれと同じだと述べている。

 

●大麻関連産業(Hemp Industry

 

昭恵氏はまた日本の大麻関連産業が失われたことを残念に思っている。アメリカが占領するまで、日本では大麻関連産業が栄えていたが、現在では、33の農家に栽培許可が与えられているだけだ。1954年には3万7000の農家が栽培していた。昭恵氏は、長い間、日本独自の宗教である神道の儀式で麻繊維が使われてきたが、今はその大部分を中国からの輸入に頼っていると語った。

 

昭恵氏は精神に作用しない大麻の栽培と医療目的でのマリファナの使用を主張している。医療用マリファナを支持した参議院議員が辞職したことから、ここ数か月、始まったばかりの医療用マリファナの合法化を目指す運動に対する批判が起こっている。

 

「私はこれまで大麻を吸ったことはありませんし、大麻吸引には賛成ではありません」と述べたが、大麻の産業目的、医療目的での使用まで全て禁止するのは正しくないと考えているとも述べた。

 

安倍氏は2006年に1年だけ首相を務めた。それ以降、昭恵氏はスポットライトを浴びる生活を送るようになった。昭恵氏は夫である安倍晋三氏が3期連続で自民党の総裁に留任し、首相を続けることは素晴らしいことだと考えている。特に、ドナルド・トランプが大統領選挙に当選して、アメリカの政策ははっきりしない時に、世界に強力な指導者として安倍晋三氏が存在することは素晴らしいことだと考えている。

 

昭恵氏は、「私の夫が再び総理大臣になれたのは、努力のせいではなく、運命というべきものです。日本は今、大きな役割を果たす時です」と語った。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)









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 古村治彦です。

 

 今回はイギリスの雑誌『ジ・エコノミスト(The Economist)』誌に掲載された、森友学園・塚本幼稚園に関する記事をご紹介します。短い記事ですが、論調は大変に厳しいものです。

 

 まず、ウルトラナショナリスト(ultranationalist)という言葉が重要です。この言葉は以前にもご紹介した『ザ・ガーディアン』紙でも使われています。ナショナリストというと、国家主義者、国家主義的ですが、これにウルトラがつくと、超という言葉をつけることになります。これは、排外主義的、好戦主義的という意味合いが強くなり、大変危険な考えであり、存在だということになります。イギリスのメディアが使っている点も見逃せません。イギリスはインドシナ半島やマレー半島、シンガポールで日本軍と戦いました。そして、多数のイギリス軍将兵が捕虜となり、虐待を受けました。この時のイメージを呼び起させるのが、日本の超国家主義という言葉です。

 

 今回の記事では、このような戦前の軍国主義への回帰を「政府が奨励しているかのように見えることに日本国民は驚いている」と書いています。森友学園に対する超破格値での土地売却は、政府が超国家主義的な考えを広めることを奨励しているという捉え方をしています。そして、この政府を率いているのは、安倍晋三首相なのです。

 

 今回の記事では、稲田朋美氏の名前にも言及されています。安倍首相(と安倍昭恵夫人)と稲田氏は、揃って危険な人物なのだということが言われているのです。

 

 安倍首相とその周辺に向けられる目は厳しいものとなっています。危険人物が率いる日本、というイメージになっていますが、これを払拭することはほぼ不可能ですが、唯一の方法は、安倍首相が退陣することです。

 

(貼り付けはじめ)

 

●「衝撃の学校:日本に存在する超国家主義的な幼稚園(School of shock An ultranationalist kindergarten in Japan)」

 

当惑を覚えるほどに大変驚かされるのは、この幼稚園は総理大臣とのつながりを持っていることだ

 

2017年3月4日 東京発

http://www.economist.com/news/asia/21717996-embarrassingly-it-has-links-prime-minister-ultranationalist-kindergarten-japan?fsrc=scn/tw/te/rfd/pe

 

塚本幼稚園に通う子供たちは毎朝、軍歌に合わせて小さな足を踏み鳴らしながら行進し、天皇の写真に向かって頭を下げ、国家を守るために自分自身を捧げることを力強く誓う。様々な学校行事では、3歳、4歳、5歳の子供たちが、見守っている保護者たちに対して、大きな声で外国の脅威から日本を守るように強く求める。

 

塚本幼稚園の園児の曽祖父母たちが子供時代、同じような教育を受けた。しかし、第二次世界大戦後、公立学校では国家主義的な要素は減少させられた。つい最近まで、私立学校でこのような過度な愛国主義と好戦主義が教えられていたことを認識している日本人は少なった。日本政府がそのような動きを奨励していたかのように考えられることに気付かされ、日本国民は更に驚いた。

 

昨年、塚本幼稚園を運営する学校法人である森友学園は、大阪市内(訳者註:大阪府豊中市内)の公的な土地を破格の値段で購入した。その価格は土地の持つ価値の14%に過ぎないものだった。森友学園は、塚本幼稚園と同じく、超国家主義的な考えを広め、教え込むための小学校を建設し始めた。学校建設の寄付を集める時には日本の首相である安倍晋三氏の名前を前面に押し出した。 安倍首相の昭恵夫人は、塚本幼稚園で講演を行い、名誉校長に任命された。防衛大臣である稲田朋美氏は、籠池氏が戦艦の帰還を歓迎するために、園児たちを港にまで派遣し、自衛隊員の士気向上に貢献したことに対して感謝状を贈った。

 

安倍氏は土地取引に関与したことはないと否定した。そして、もし誰かが関与を証明出来たら辞職するだろうとも述べた。安倍首相は、自分たち夫婦は塚本幼稚園を支援してくれるようにという、籠池泰典園長からの依頼に悩まされていた、籠池氏は、「自分(安倍首相)は何度もそんなことはできない」と言っているのに、自分の名前を使って金を集めていたのだ、と述べている。

 

しかしながら、安倍氏は以前、籠池氏を賞賛していた。安倍首相は、籠池氏について、教育に対する「素晴らしい情熱」を持ち、自分とは「同じようなイデオロギー」を共有していると述べた。追及が進むにつれて、安倍夫人と稲田氏両方に関する見直しが行われる兆候が見られるようになった。稲田氏と安倍夫人に関する記述の一切が塚本幼稚園のウェブサイトから消されたのだ。

 

塚本幼稚園は、ヘイトスピーチ関連の法律違反の疑いで捜査を受けている最中だ。塚本幼稚園は保護者に文書を配ったが、その中で中国人と書くべきところを「支那人(shinajin)」と書いた。この言葉は、「チンク(chink、訳者註:中国人に対する蔑称)」に相当する言葉である。副園長である籠池夫人は、韓国系の園児の保護者に手紙を送り、その中で、自分は差別をしないが、「韓国人と中国人を憎んでいる」と書いている。

 

森友学園は、安倍氏と同様に、苦しみに悶えている。大阪府の職員たちは、工事が完成しても小学校に認可はおりない可能性があると述べている。小学校には、予想よりも少ない入学希望者しか集まっていない。そして、小学校は、予定していた「安倍晋三内閣総理大臣記念小學院(Prime Minister Shinzo Abe memorial school)」というより壮大な名前から、「瑞穂の國記念小學院(Land of Rice memorial school)」に変更することを余儀なくされた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)










 
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 古村治彦です。

 

 今回の森友学園・瑞穂の國記念小學院(安倍晋三記念小学校)を巡るスキャンダルで出てくるのが、森友学園が経営している塚本幼稚園での園児による教育勅語の暗唱です。戦前の日本では、教育勅語は教育の指導原理となっていましたが、あのように皆で暗唱するものではなく、「紀元節(211日)、天長節(天皇誕生日)、明治節(113日)および11日(元日、四方節)の四大節と呼ばれた祝祭日には、学校で儀式が行われ、全校生徒に向けて校長が教育勅語を厳粛に読み上げ、その写しは御真影(天皇・皇后の写真)とともに奉安殿に納められて、丁重に扱われた」(wikipediaから)というものだったようです。校長先生が奉読するものを静かに聞くものだったようです。先生が天皇の代りになって、「朕」という天皇の自称の言葉から始まる言葉を読むものです。生徒が「朕」と言うことはおかしなことです。だって生徒はどう逆立ちしても天皇ではありませんから。

 

 有名な勅語に「陸海軍軍人に賜りたる勅諭」というものがあります。これは戦前の軍人に対して、「このような軍人であれ」という指針を示したものです。勅諭ですから、「天皇が教え諭すもの」です。陸軍士官学校では、後半の5条を毎朝、生徒たちが暗唱していました。海軍士官学校では記憶・暗唱されませんでした。海軍は「直後のご精神さえ分かっていればよい」ということだったそうです。塚本幼稚園の籠池泰典園長は、この陸軍士官学校のまねをしたかったのだろうと思いますが、自分たちの勝手なイメージで、実際にありもしない戦前の姿を生み出してしまっています。

 

 この教育勅語ですが、1890年に制定されたもので、主導したのは長州閥の山県有朋です。実際に起草したのは井上毅です。この教育勅語に関しては、最後の元老となった西園寺公望が文部大臣時代に、「国際協調主義」「国際社会における日本人の位置と役割」といった部分が欠落しているという理由で、第二教育勅語の制定を考え、その原案まで作っていましたが、日の目を見ることはありませんでした。1930年代から40年代にかけての日本の歴史を振り返る時、西園寺の危惧が悲しいことに現実化してしまったということが言えます。亡国の歴史が全て教育勅語に起因するということはありません。しかし、戦前教育の指導原理として国際的な感覚を涵養できなったという点では、問題があったと思います。

 

 連日、報道されていますが、森友学園・塚本幼稚園に関するスキャンダルでは、塚本幼稚園の教育内容にも焦点があてられています。教育勅語の暗唱の様子も放映されています。教育勅語はそもそも、日本国憲法下の日本において、教育の現場にあってはならない、存在してはいけないものです。

 

 以下は衆議院予算委員会で行われた質疑の様子を伝えるものです。

 

(貼りつけはじめ)

 

●「「教育勅語」教育は不適切 森友学園の幼稚園教育内容宮本議員追及に文科相 衆院予算委分科会」

 

しんぶん赤旗 2017224

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-02-24/2017022415_01_1.html

 

 不透明な国有地売却が問題になっている大阪市内の学校法人「森友学園」(籠池泰典理事長)が、幼稚園児に教育勅語を暗唱させるなどしている教育内容の問題点が23日、衆院予算委員会分科会で追及されました。日本共産党の宮本岳志議員は、文部科学省に指導を求めました。

 

 森友学園は、同市淀川区で運営している塚本幼稚園で毎朝、教育勅語を暗唱させていることで知られます。

 

 籠池理事長は本紙の取材に、同学園が今年4月から開校しようとしている私立小学校でも「教育勅語を朗誦(ろうしょう)する」と明言しています。同校の名誉校長は、安倍晋三首相夫人の昭恵氏です。

 

 同校の認可を審議している大阪府私立学校審議会では、学園の教育方針やカリキュラムについて「思想教育のような部分がある」「違和感を覚える」と懸念の声があがっています。

 

 宮本氏は、文部科学省が以前から「教育勅語そのものを教材として使うということは考えられない」という立場をとってきたことをあげて「いまもその立場に変わりはないか」とただしました。

 

 文科省の藤原誠初等中等教育局長は「変わっていない」と答えました。

 

 宮本氏は、教育勅語の暗唱は文科省が一貫して否定してきたものであり「これを小学校で教えるのは不適切だ」とただしました。

 

 松野博一文科相は「この教育方針が認可も受けていない小学校でどう扱われるかは仮定の問題だ」としながら「教育勅語を教育の源泉として扱うことは適切でない」と答えました。

 

 宮本氏は、塚本幼稚園では「しつけ」と称して「子どもがおもらししたら、そのままカバンに入れて持ち帰らせる」など児童虐待につながりかねない問題もあることをあげ、「不適切なものがあればただちにただすべきだ」と求めました。

 

 教育勅語 戦前の教育の基本原理を示すものとして1890年に明治天皇の言葉として出されました。親孝行や兄弟仲良くなど当たり前に思える徳目を並べていますが、それらをすべて天皇への命がけの忠義に結び付け、「重大事態があれば天皇のために命を投げ出せ」と徹底して教え込んだのが特徴で、軍国主義教育の主柱となりました。敗戦後、憲法、教育基本法の理念に反するとして1948年、国会の決議で公式に否定されました。

 

(貼りつけ終わり)

 

 この記事には、「敗戦後、憲法、教育基本法の理念に反するとして1948年、国会の決議で公式に否定されました」とあります。これはどういうことでしょうか。

 

教育勅語は1890年に制定されたということは、これまでこのブログでもご紹介した海外の新聞記事にでも出ています。それではいつまで効力があったかというと、実質的には敗戦の年にアメリカ軍が進駐してくるくらいまでですが、その効力がないことが正式に決まったのは1948年6月19日です。同時にその他の詔勅(陸海軍軍人に賜りたる勅諭など)も一括して無効とされました。

 

この日に、国会の衆議院、参議院それぞれで決議案が可決されました。衆議院は、「教育勅語等排除に関する決議」、参議院は、「教育勅語等の失効確認に関する決議」となっています。それぞれに決議を貼り付けます。

 

(貼り付けはじめ)

 

教育勅語等排除に関する決議 昭和23年年6月19日 衆議院本会議

 

民主平和国家として世界史的建設途上にあるわが国の現実は、その精神内容において未だ決定的な民主化を確認するを得ないのは遺憾である。これが徹底に最も緊要なことは敎育基本法に則り、敎育の革新と振興とをはかることにある。しかるに既に過去の文書となっている敎育勅語並びに陸海軍軍人に賜わりたる勅諭その他の敎育に関する諸詔勅が、今日もなお國民道徳の指導原理としての性格を持続しているかの如く誤解されるのは、從來の行政上の措置が不十分であつたがためである。

 

思うに、これらの詔勅の根本的理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すもととなる。よって憲法第九十八条の本旨に従い、ここに衆議院は院議を以て、これらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めないことを宣言する。政府は直ちにこれらの謄本を回収し、排除の措置を完了すべきである。

 

右決議する。

 

=====

 

教育勅語等の失効確認に関する決議 昭和23年6月19日 参議院本会議

 

 われらは、さきに日本国憲法の人類普遍の原理に則り、教育基本法を制定して、わが国家及びわが民族を中心とする教育の誤りを徹底的に払拭し、真理と平和とを希求する人間を育成する民主主義的教育理念をおごそかに宣明した。その結果として、教育勅語は、軍人に賜はりたる勅諭、戊申詔書、青少年学徒に賜はりたる勅語その他の諸詔勅とともに、既に廃止せられその効力を失っている。

 

 しかし教育勅語等が、あるいは従来の如き効力を今日なお保有するかの疑いを懐く者あるをおもんばかり、われらはとくに、それらが既に効力を失っている事実を明確にするとともに、政府をして教育勅語その他の諸詔勅の謄本をもれなく回収せしめる。

 

 われらはここに、教育の真の権威の確立と国民道徳の振興のために、全国民が一致して教育基本法の明示する新教育理念の普及徹底に努力をいたすべきことを期する。

 

 右決議する。

 

(貼り付け終わり)

 

 衆議院の排除決議では、「これらの詔勅の根本的理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すもととなる。よって憲法第九十八条の本旨に従い、ここに衆議院は院議を以て、これらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めないことを宣言する」と述べています。

 

 教育勅語には、主権在君、神話的国体観に基づいているので、基本的人権を損ない、国際的信義の点から疑問が残るので、憲法第98条に従って、排除すると述べています。憲法98条には、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と書かれています。

 

 日本国憲法は国の最高法規であって、その条規に反する法律や詔勅は存在できませんし、効力を持ちません。教育勅語は主権在君、神話的国体観に基づいているので、日本国憲法に反するので効力はないとしています。

 

 参議院の失効確認決議では、「さきに日本国憲法の人類普遍の原理に則り、教育基本法を制定して、わが国家及びわが民族を中心とする教育の誤りを徹底的に払拭し、真理と平和とを希求する人間を育成する民主主義的教育理念をおごそかに宣明した。その結果として、教育勅語は、軍人に賜はりたる勅諭、戊申詔書、青少年学徒に賜はりたる勅語その他の諸詔勅とともに、既に廃止せられその効力を失っている」と述べています。

 

 こちらでは、日本国憲法の人類普遍の原理に基づいた教育基本法ができたので、教育勅語はその効力はないと述べています。日本国憲法に基づいて教育基本法が出来、それがこれからの指導原理となるので、教育勅語はその効力を失ったとしています。

 

 それぞれ理屈は異なりますが、教育勅語は日本国憲法に合ってないということを述べています。ですから、この教育勅語は日本国憲法が制定されて以降、公的な場所には出てきてはいけない存在なのです。もちろん、学問研究や個人の思想や信条のために、それを保持して読むことは良いでしょう。しかし、日本国憲法の人類普遍の原理に基づいている教育基本法が現在の教育関係の指導原理的な法律となっている以上、日本国憲法に反する存在である教育勅語を教育の場に持ち込むのは法律違反です。ですから、森友学園が行っていることも法律違反の可能性が高いのです。

 

 森友学園が認可申請中の「瑞穂の國記念小學院」のウェブサイトの「学習目標」(http://www.mizuhonokuni.ed.jp/curriculum/objective/)のページには、はっきり、「道徳(教育勅語)」と書かれています。この学校が認可されれば、教育勅語を教えることになります。これは日本国憲法に基づいて定められた教育基本法に反する行為ですが、この小学校に認可を与えた大阪府の公務員、知事の責任となるでしょう。

 

 更に言えば、国会での審議中、共産党の小池晃参議院議員の質疑中に、「(教育勅語は)いいじゃないか」というヤジが閣僚席や委員席から叫ばれました。私はこのヤジを飛ばした大臣、国会議員、もしかしたら政府委員(キャリア官僚)たちは狭義の意味で憲法遵守義務違反だと考えます。

 

 公務員には憲法遵守義務があります。日本国憲法に反する行為はできません。これは日本国憲法第99条に定められています。

 

憲法99条には、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。」と書かれています。国務大臣や国会議員は憲法を尊重し擁護する義務を負っています。

 

 国会議員が、しかも国権の最高機関である(日本国憲法第41条)国会の場で委員会に出席しているなかで、堂々と教育勅語を賞賛する発言を行うのは明らかに憲法違反です。国会の内部で堂々と憲法違反をする国会議員には辞めてもらうしかありません。国会議員を辞めてもらって好きなだけ教育勅語礼賛の言葉を叫び続ければよいのです。

 教育勅語復活ということを公約に掲げて選挙を行うことは良いとしましょう。政党は公的な存在ですが、公務員でありません。政党が公約として教育勅語復活(しかしこれには日本国憲法の廃棄も一緒に主張されねばなりません)を 掲げることは良いでしょう。それで当選した国会議員が国会審議などで主張するのもよいでしょう。ですから、上で狭義と書きました。しかし、これにはどうしても日本国憲法の廃棄、全文からの全ての書き直しが必要となってきますから、まずは改憲、しかも全面的な改憲をしなければなりません。

 

 安倍晋三首相やお仲間たちが改憲を進めようとしています。今回のスキャンダルで、彼らの進める改憲のイメージが私たちにはっきり見える形になりました。塚本幼稚園の様子こそは、安倍氏らが実現したい「美しい日本」であり、改憲後の姿となります。ここまで日本は追い詰められてきました。ここで押し戻さねばなりません。

 

(終わり)









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