古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:田母神俊雄




アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 2014年12月14日に行われた総選挙で一党だけ大敗を喫した政党がありました。それは平沼赳夫氏率いる「次世代の党(The Party of Future Generations)」です。公示前には衆議院議員が19名いて、選挙には公認候補を48名擁立して、結果は小選挙区で2名の当選を出したのみで、比例区では誰も当選者を出すことができませんでした。比例区の票は全国で約141万票を獲得しましたが、その「人気」と「知名度」とは裏腹に惨敗を喫しました。

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参議院議員が6名いますので、現在でも政党要件を満たすことができますし、2016年改選議員が2名ですので、最悪当選者を出せなくても、衆参で6名の議員は確保できるので、少なくとも2019年までは何とか政党要件を満たして、政党助成金を受け取ることができます。

 

 大変皮肉だなと思ったのは、発信力がある議員たちが顔を揃えていながら、代表の平沼氏が「急な解散で知名度が不足していた」と総括していたことです。石原慎太郎、平沼赳夫、園田博之、藤井孝男、中山成彬、中山恭子、松沢成文、中田宏、山田宏などの大臣や地方自治体の首長を経験し、テレビや新聞などにも取り上げられる機会が多かった人々が集まっていたことを考えると、知名度不足などと言えるのだろうか、と首をかしげたくなります。これに加えて、お騒がせな人たちではありますが、田母神俊雄、西村眞吾といった人々もいた訳です。

 

 私は、知名度不足などではなくて、彼らの主張が全く有権者に受け入れられなかったことを素直に受け入れるべきではないかと思います。「ああいう人たちはあくまでトリックスターであるが、自分の一票を託せるような人たちではない」と多くの有権者が考えたのだと思います。ネット世論が何とも頼りないものであることを政治家たちはいつ気付くのでしょうか。加藤の乱以来、彼らは周囲が見えなくなると、ネット世論の身を盲信し、そして消え去っていきました。ネット選挙などというものは幻影に過ぎません。

 

 下に貼り付けた朝日新聞の記事は次世代の惨敗について詳しく分析しています。記事では、「保守の理念」に執着し、生活に密着した政策を打ち出せなかったことが惨敗につながったと分析しています。

 

 私は、次世代の党が「保守」なのかどうか疑問を持っています。保守という言葉の定義については語り出すときりがありません。しかし、私は次世代の党が有権者に「保守」であるとは認識されず、自民党の支持者を惹きつけることもできずに、「立ち枯れて」しまったのだと思います。また、今の自民党は政治の世界でぎりぎり許されるところまで右側に拡大しているので、自生台の党の生存できる空間は既に存在していませんでした。自民党の中に、「この人は次世代の党の方がお似合いなのに」という程度の低い政治家の数が多くなってきました。

 

 次世代の党の排外主義的、自民党を糺すとして公明党攻撃を始めたことに対して、有権者は警戒感を持ったのだと思います。「いくらなんでもこんな政党は面白おかしい分には構わないけど、勢力を持たせてはいけない」というバランス感覚が働いたのだと思います。多くの有権者たちが、「この人たちは、戦前、戦中に回帰しようと言っているのだ」と直感的に判断し、危険を察知して、選択肢から外したのでしょう。そうした中で140万の票を得たことは、大変なことですが、この政党を支持した有権者が140万以上もいたということは日本が衰退基調に入っていることを示しているのではないかと考えます。

 私はツイッターで「次世代の党は政界における在特会のようだ」と書いたことがありました。その在特会では、前会長の桜井誠氏が次世代の党に投じたと発表したそうです。この寮舎の共通点は、それぞれ政界と市民社会という自分たちがいたいと思う場所に自分たちの居場所がないということです。 

 

 次世代の党に集まったのは、前回の選挙で落選すべき議員たちでした。日本維新の会を結党して、橋下徹氏の個人的な力を利用して、ゾンビのように生き返っただけの議員たちでした。今回、この橋下氏の個人的な風を起こす力を利用できなければ、結局落選するしかありませんでした。

 

 次世代の党は、ゾンビ議員たちが「辞世の句」を詠むための党だと言えると思います。若い議員の方々は彼らのお付き合いすることもないとは思いますが、好き好きですから仕方がありませんね。彼らの党名の英訳である「party of future generations」が何とも悲しく響いてしまいます。当選したのが70歳以上の大ヴェテランだけでしたから。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

次世代の党惨敗、ネット右派頼み限界 理念先行薄い政策

 

朝日新聞デジタル 1220()1439分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141220-00000026-asahi-pol

 

 自民党の右に柱を立てる――国家や民族を重視する本格的な右派政党として衆院選に臨んだ次世代の党。インターネットで活発に発言する右派勢力などを頼りに、強い保守色を前面に出して戦った。だが、公認48人に対して当選は2人と惨敗。識者からは、保守の理念が先行し、生活に密着した政策に結びつけられなかったとの指摘が出ている。

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 選挙結果を総括した19日の次世代の党の会議。平沼赳夫党首は、落選議員らを前に「私の力が足らず、心から反省している」と頭を下げた。石原慎太郎最高顧問も「十分な応援ができなかった」と謝罪した。

 

 旧日本維新の会から分裂し、8月に結党した次世代の党は、平沼氏や石原氏ら自民党よりも保守的な理念を掲げる政治家の「オールスターチーム」の様相だった。衆院選では中国批判、慰安婦問題に加え、「根拠がない」との批判を浴びながらも、独自調査をもとに「在日外国人の生活保護受給率は日本人の8倍」などと訴え、「生活保護は日本人に限定」とする社会保障制度の抜本改革も公約に掲げた。

 

 次世代の選挙戦の象徴は、2月の東京都知事選で61万票を獲得した元自衛隊航空幕僚長の田母神俊雄氏だ。東京12区で公明党の太田昭宏国土交通相にぶつけ、支持母体の創価学会を徹底的に攻撃した。

 

 記者会見で田母神氏は「安倍晋三首相の足を引っ張る公明党を政権から分離させ、自民・次世代の連立政権を作らねば、日本は取り戻せない」と述べ、街頭演説でも徹底した公明党、創価学会批判を続けた。

 

 ネット上で発言する右派の支持を得ようと、積極的なネット戦略も展開した。「子育て犠牲にしてまでなぜ働くのか」「慰安婦問題はでっちあげ」など、「誰もが知らんふりするタブー」を斬るとして、キャラクター「タブーブタ」を一刀両断する動画を制作。動画の再生回数は30万回を超えた。

 

 ツイッターも自民、公明に次ぐ約1万2千フォロワーを獲得。「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の桜井誠前会長が「期日前投票で小選挙区、比例ともに次世代に一票を投じてきました」とツイートするなど、右寄りのネット世論に浸透したようでもあった。

 

 しかし、ふたをあければ、わずか2議席。当選はいずれも強固な地盤を持つ平沼氏(岡山3区)と園田博之氏(熊本4区)のベテラン議員だった。目玉候補の田母神氏も東京12区で約3万9千票にとどまり、4候補中最下位。平沼党首は15日未明の会見で、「急な解散で党の知名度が不足していた」と語った。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)








 

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 古村治彦です。



 私は最近、昭和史にも関心を持ち、それに関する本を読むようになりました。その中で、清沢冽の『暗黒日記』『清沢冽評論集』(ともに岩波文庫)を手にし、読む機会を得ました。これら2冊の本は本当に素晴らしい示唆を与えてくれました。



 清沢冽は1890年に長野県で生まれ、小学校を卒業後、内村鑑三の弟子、井口喜源治が開いていた「研成義塾」で学びました。そして、1906年に渡米し、苦学しながらタコマ・ハイスクール、ウィットウォース・カレッジで学びました。


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1918年に帰国し、中外商業新報社(現在の日本経済新聞社)、朝日新聞社に勤務した。1929年には朝日新聞を辞し、外交評論家として独立しました。その後は数多くの著作を著し、外務省の顧問なども務めました。1945年5月、肺炎をこじらせ55歳で急死してしまいました。彼の戦時中の日記は『暗黒日記』として出版されました。



 『清沢冽評論集』の編者山本義彦は、清沢冽の思想の特長を「(1)「心的態度」としての自由主義、中庸主義、(2)教育の国家統制に反対し、画一主義の排除と多元主義の擁護、(3)国際平和の実現をめざす外交論、(4)軍部の神がかり的、猪突猛進的で非科学的な戦争指導への否定、これに追従する思想家、ジャーナリストへの厳しい批判」としてまとめています。




 私は、清沢冽が1929年に発表した「甘粕と大杉の対話」に注目したいと思います。この文章を発表したことで、清沢冽は朝日新聞を追われ、外交評論家として独立しました。この文章は、獄中にいる甘粕正彦の許へ幽霊となった大杉栄が現れて対話を行うというものです。この二人のやり取りは清沢の創造の産物です。



 この対話の中で、私に最もなるほど、その通りだと思わせた一節をここで引用したいと思います。これは大杉の台詞です。



「今の俺は世界の思想を別けるに、右と左に区別しないで右と左を一緒にした極端派(エキストリーミスト)と、これに対する自由派(リベラル)とにする。そしてこの極端派の中には君ら軍人だの警官だのと一緒に生前の大杉やいわゆる戦闘的主義者とを編入する。この事実の特長は、持って生れた争闘性乃至は争闘を主とした教育の影響から、自分が闘うと同時に、他人をも闘わしたい点にある」



 私は、この「極端派(エキストリーミスト、Extremist)対自由派(リベラル、Liberal)」

という分類に触れて、自分の抱えていたもやもやをある程度晴らすことができたと感じました。私は、リベラルという言葉の定義の難しさもあって、今でもリベラルとは何かということを考えています。答えが出るかはわかりません。



 しかし、攻撃的な右と左対そうではない勢力という分け方にはある程度納得ができます。そして、右と左が極端派として一緒になり、リベラルと対峙するという構図を清沢は私に与えてくれました。



 私は、この構図は日本政治を理解する上で非常に重要だと思います。現在の状況に完全に当てはまるものではなくても、大きな示唆を与えてくれるものだと思います。



 現在の政治状況は、自民党が大きな勢力を持ち、公明党と共に与党となっています。野党側には元気がなく、共産党がある程度の活力を保っている状況です。日本維新の会やみんなの党は、安倍晋三首相が「責任野党」と呼んだように、自民党に大変強力的な姿勢を示しています。ここにリベラルな野党はいません。



これは2012年の衆議院銀選挙でリベラル政党が軒並み壊滅してしまったからです。この「リベラルの殲滅」を仕組んだのは、マイケル・グリーンであることは間違いのないところです。



 最近の選挙で安定して議席を確保し、微増させているのは共産党です。自民党に対する批判票を吸収する形で党勢を少しずつですが拡大させています。しかし、共産党が過半数を握って政権を掌握するということはないでしょう。



 ここで奇妙な「呉越同舟」「共存共栄」関係が生まれます。自民党がどんどん大きくなる。それによって、格差は拡大し、人々の生活は苦しくなります。すると、批判票が共産党に流れる。そして、自共の間には奇妙な相互依存関係ができます。自民党にしてみれば、批判票が共産党に流れることで、強力なリベラル野党の出現を防いでくれることになります。



 そして、ここで面白いことになるのですが、自共は共にリベラルの出現を阻止しようとして奇妙なランデブーを行うのです。その好例が今回の東京都知事選挙(2014年2勝ち9日投票)です。



 安倍晋三首相には国内に強力な反対勢力を持たないという状態になりました。私の考えでは、日本国内で安倍氏に少し動揺を与えられる反対勢力として、アメリカ大使館にいるキャロライン・ケネディ米駐日大使がいて、そのリベラル・カトリック人脈から、今回、細川護煕氏が突然、東京都知事選挙に出馬してきたと考えています。



 今話題の都知事選について考えてみます。舛添要一氏、田母神俊雄氏、宇都宮健児氏、細川護煕氏が有力な候補者となっています。自民党と公明党は舛添氏、日本維新の会の石原慎太郎系と自民党の一部は田母神氏、共産党は宇都宮氏、民主党は細川氏をそれぞれ支援しています。



 私は最初、宇都宮氏と細川氏が一本化してどちらかがどちらかの支援に回るくらいのことをしなければ、舛添氏が楽々と当選してしまうことになると考えていました。そうなるのなら、当選の可能性が高い細川氏が統一戦線の候補者となるべきだと考えました。しかし、細川氏も宇都宮氏も一本化の考えはないと言明されましたから、一本化がないのは残念だがしょうがないと考えあした。



 宇都宮氏陣営は、細川氏の出馬に関して文書をPDFファイル形式で発表していたり、細川氏の出馬が遅かったことを捉えて「後出しじゃんけんだ」という全く持って的外れな批判をしたり、と一番当選の可能性が高い舛添氏ではなく、細川氏を攻撃してきました。



 私は、主敵は誰なのか、自民党政権に大きなショックを与えるのは、舛添氏の落選ではないのかと考え、どうして宇都宮氏陣営は舛添氏に対して同じほどの熱心さで対峙しないのかと不思議で仕方がありませんでした。



 しかし、私は清沢の「極端派と自由派」という分け方を知り、合点がいきました。この都知事選でも「自共の共存共栄のためのリベラル潰し」が行われているのです。宇都宮氏個人は当選に向けて必死で選挙活動を展開されているでしょう、粘り強さが身上の方で、それこそ命がけの活動をなさっていると思います。しかし、彼の支援者や共産党はどうでしょう。



 自分たちの商売敵になりそうなリベラルの代表である細川氏を攻撃し、自共の安定した相互依存関係をこれからも維持していこうという戦略を取っているように見えます。自民党や安倍氏の圧政が続けば続くほど、彼らにとっては安定した支持や支援を得られるということで、これは「合理的な選択(ラショナル・チョイス)」と言えるでしょう。



 自民党にしてみれば、自分たちが動かなくても、宇都宮氏陣営が細川氏陣営を攻撃し、票を奪ってくれるのですからこんなに楽なことはありません。



 二正面作戦を強いられて、細川氏は苦戦するでしょう。そして、舛添氏が当選してしまうでしょう。そうなれば、自民党の圧政はしばらく続くことになります。これは国民の利益にかなうこととはとても言えません。



 「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉があります。マルクスが『資本論』の中で使った言葉です。私はこの文章を書きながら、この言葉を思い出しました。



(終わり)







 


 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 古村治彦です。

 

 今回は、東京都知事選挙について、過去のデータを振り返りつつ、妄想していきたいと思います。過去のデータは、ウィキペディアに掲載されているものを使います。

 

※ウィキペディアの「東京都知事選挙」についてのページのアドレスは以下の通りです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E7%9F%A5%E4%BA%8B%E9%81%B8%E6%8C%99

 

(貼り付けはじめ:少し加工を施しました)

 

2012(平成24)年1216日執行

 

※当日有権者数:10,619,652人 最終投票率:62.60%(前回比:+4.80ポイント)

 

候補者名 年齢 所属党派 新旧別 得票数 得票率 推薦・支持

・猪瀬直樹 66 無所属 4,338,936 65.27% 公明、維新支持・自民支援

・宇都宮健児 66 無所属 968,960 14.58% 日本未来の党、共産、社民、緑の党、

新社会党、東京・生活者ネットワーク支持

・松沢成文 54 無所属 621,278 9.35% なし

 

・笹川堯 77 都民のくらしを守る会 179,180 2.70% なし

・中松義郎 84 無所属 129,406 1.95% なし

・吉田重信 76 無所属 81,885 1.23% なし

・トクマ 46 幸福実現党 47,829 0.72% なし

・マック赤坂 64 スマイル党 38,855 0.58% なし

・五十嵐政一 81 無所属 36,114 0.54% なし

 

2011(平成23)年410日執行

 

※当日有権者数:10,505,848人 最終投票率:57.80%(前回比:+3.45ポイント)

 

候補者名 年齢 所属党派 新旧別 得票数 得票率 推薦・支持

・石原慎太郎 78 無所属 2,615,120 43.40% 都議会自民、公明 推薦

・東国原英夫 53 無所属 1,690,669 28.06% なし

・渡邉美樹 51 無所属 1,013,132 16.81% なし

・小池晃 50 無所属 623,913 10.35% 共産 推薦

 

・ドクター・中松 82 無所属 48,672 0.81% なし

・谷山雄二朗 38 無所属 10,300 0.17% なし

・古川圭吾 41 無所属 6,389 0.11% なし

・杉田健 43 新しい日本 5,475 0.09% なし

・マック赤坂 62 スマイル党 4,598 0.08% なし

・雄上統 69 東京維新の会 3,793 0.06% なし

・姫治けんじ 59 平和党核兵器廃絶平和運動 3,278 0.05% なし

 

2007(平成19)年48日執行[編集]

東京都庁舎前・東京都知事選挙横断幕詳細は「2007年東京都知事選挙」を参照

 

※当日有権者数:10,238,704人 最終投票率:54.35%(前回比:+9.41ポイント)

 

候補者名 年齢 所属党派 新旧別 得票数 得票率 推薦・支持

・石原慎太郎 74 無所属 2,811,486 51.06% 自民、公明 実質支援

・浅野史郎 59 無所属 1,693,323 30.75% 民主、社民、国民 実質支援

・吉田万三 59 無所属 629,549 11.43% 共産 推薦

 

・黒川紀章 73 共生新党 159,126 2.89% なし

・ドクター・中松(中松義郎) 78 無所属 85,946 1.56% なし

・桜金造 50 無所属 69,526 1.26% なし

・内川久美子 49 無所属 21,626 0.39% なし

・外山恒一 36 無所属 15,059 0.27% なし

・高橋満 61 無所属 5,558 0.10% なし

・雄上統 65 無所属 4,020 0.07% なし

・山口節生 57 カント~ 3,589 0.07% なし

・高島龍峰(木村一成) 71 無所属 3,240 0.06% なし

・佐々木崇徳 64 無所属 2,845 0.05% なし

・鞠子公一郎 33 無所属 1,373 0.02% なし

 

(貼り付け終わり)

 

これらのデータで分かることは、まず一応国会に議席を持っている政党の支持、支援がある候補者たちがある程度の票数を獲得していることです。そうではない場合は、圧倒的な知名度があることが必要です。

 

そして、当選するためには最低でも260万票が必要なことです。投票率が上がれば、この数字も上がっていくでしょう。

 

前回の選挙の場合、有権者数は約1060万、投票率は約63%でした。これを掛け合わせると、投票総数は約637万票ということになります。

 

自公維新が推した猪瀬直樹氏が約434万票(約65.3%)、次点の宇都宮健児氏(ほぼ全てのリベラルな野党が推した)が約97万票(約14.6%)、無所属の松沢成文(元民主党所属国会議員、元神奈川県知事で一定の知名度あり)が約62万票(約9.4%)を獲得しました。

 

前回は長く続いた石原都政の継続性と顔が変わるということで投票率も上がりましたが、上がった分が全て猪瀬氏に流れたと思われる程に猪瀬氏への投票が多くなりました。

 

政治学の理論の一つである合理的選択論(Rational Choice Theory)で考えると、有権者は自己利益の最大化を考えます。もし、投票することよりも投票しないことが自分の利益になると考えれば、棄権します。また、投票する一票が死票になって欲しくないと考えます。わざわざ自分が当選するはずもないと考える候補に入れる人はいません。できるだけ、勝ち馬に乗りたいと考えるのが人情という訳です。

 

主義、主張、イデオロギーがはっきりある人たちにとっては、投票を通じての意思表示が自己利益になるのですが、ほとんどの人にはそんな強固な考えはありません。そうではありますが、バランスを取るという行動に出ることもあります。

 

 今回の場合、細川護煕元首相の出馬表明がない段階では、舛添要一元厚労相、宇都宮健児弁護士・元日弁連会長、田母神俊雄元航空幕僚長・元空将・軍事評論家の争いになると考えられていました。舛添氏を自公に民主が支援し、宇都宮氏を共産党、社民党が支援し、田母神氏を石原慎太郎元東京都知事を含む、維新のゾンビ議員たちが支援することになっていました。はっきり申し上げて、この構図では、舛添え氏が圧倒的に有利な状況でした。自公で基礎票が180万から200万。民主党まで入れれば200万は超えてくる数でした。宇都宮氏に各政党が最大限支援しても100万に届かずで、田母神氏はそこまでもないということになったでしょう。

 

 そうなると、勝ち馬に乗りたい普通の有権者たちは舛添氏に投票するか、「もう結果が分かっているのなら」ということで棄権してしまったことでしょう。

 

 ここに細川氏が小泉純一郎元首相と小沢一郎代議士・生活の党代表の支援を受けて出馬表明を行いました。ここでこの安定した構図に波乱が起きました。細川氏、小泉氏、小沢氏はそれぞれ毀誉褒貶が多い人物です。それぞれが批判し合う関係でありました。それが東京都知事選に向けて「脱原発」ということでタッグを組みました。

 

 これで何が起きるかということを思考実験してみます。脱原発(舛添氏も自分なりの脱原発を主張されているようです)系が固まって支援するはずだった宇都宮氏から細川氏へ支援を変える組織や人々が出てきました。これに対して、宇都宮氏を支援する組織や人々はこうした動きに反発して、より支援に力を入れ、宇都宮氏支持に力を入れることになります。舛添氏の方では、足元にくさびを打ち込まれた形になります。

 

自民党と公明党は、党本部を上げて舛添氏支援を行おうとしています。しかし、自民党内部には舛添氏に対するアレルギーがあります。自民党政権時は厚生労働大臣を務めながら、自民党が野党に転落すると除名処分となる離党を強行しました。また、自民党の支持者の中には、田母神氏を支援したいとする人たちがかなりいることも分かってきました。

 

自民党の支持層に細川と田母神でくさびを打ち込んでいく、そして、公明党の支持母体である創価学会の信者の皆さんの中には平和や原発問題についてかなり懸念を持っている方々もいらっしゃると聞いています。安倍氏に対するブレーキ役になるかもしれません。

 

さて、ここで、基礎票について考えてみたいと思います。前回の投票数が約637万でした。舛添氏の基礎票は180万から200万ということで圧倒的に有利な状況は変わりません。数十万票の票数を獲得しそうな候補が4名ですから、過半数を獲得する候補者は出にくいと考えられます。ですから200万台での争いとなるでしょう。

 

宇都宮氏は共産党の支援がありますから大体60万、細川氏は民主、社民などを合わせて恐らく60万くらいではないかと考えます。田母神氏は20万票くらいではないかと考えます。これにはあまり根拠はありませんが、最終的に50万票ほど獲得出来たら御の字ではないかと考えます。

 

宇都宮氏と細川氏はいかにしてそこから200万台に乗せていくかの勝負となります。無党派層への浸透と他陣営の切り崩しが大きなカギとなります。自民、公明から多くを切り離せるのは細川氏であると考えます。宇都宮氏は共産党の党員でもないし、公認候補でもないのですが、自民党の支持者層は宇都宮氏に投票しづらいと考えられます。既に細川氏支持を表明している自民党の地方議員も出ているという話です。

 

無党派層への浸透は宇都宮氏の方が一日の長があるように思われますが、小泉氏の動員力(ミーハーですが見てみたいと思う人は多いと思います)と小沢氏とその周辺の選挙活動のうまさはやはり大きなものがあります。

 

そう考えると、200万台に乗せていく力を持つのは細川氏であると考えます。それでも恐らく舛添氏を抜くことは難しいでしょう。舛添氏230万、細川氏200万、宇都宮氏150万、田母神氏50万ということになるでしょう。

 

舛添氏が敗れる場合というのは、投票率の上昇と自公の支持者の投票が低調である時ということになります。しかし、自公に加え、連合東京の支援もあるということで、楽々と200万票を越えてくるということで、舛添氏の有利さは変わらないでしょう。

 

しかし、細川氏の出馬までは、勝利の確立がほぼ100%であったものが、少し引き下げられているのではないかと思います。細川氏の出馬によって「2月9日の投票日までどうなるかは予断を許さない状況です」という表現が少しリアリティを持つようになりました。

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



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 古村治彦です。

 今回は都知事選挙について、私がここ数日考えたことを書きたいと思います。


 


 2014年2月9日に投票が行われる東京都知事選挙は主要な候補者たちの立候補表明が終わり、いよいよ本格化してきました。細川護煕元首相が立候補を表明して、舛添要一元厚労相がかなり有利だと思われていた都知事選挙の構図が少し変化するかなという印象があります。宇都宮健児元日弁連会長・弁護士や田母神俊雄元空将・軍事評論家も活発な動きを見せています。

 


 こうした中で、自民党と公明党が舛添要一氏の支援に本腰を入れるということになりました。最初は都連レベルでの支援を行い、党本部は直接関わらない(実質はそういう訳にはいかないと思いますが)ということになっていたようですが、党本部が動くということになりました。こういうことを書くと大変失礼ですが、宇都宮氏や田母神氏の出馬を受けても、「自公の組織票に舛添氏の個人の力があればそこまで本気にならなくても勝てるさ」という感じで動く気配を見せなかった自公が細川氏をターゲットにして動き始めてきました。

 


 細川氏に出馬に対しては、全陣営が早速批判と非難を向けています。そして、宇都宮氏や田母神氏の支持者の皆さんの中にいる、細川氏にかなりの拒否反応を示す人たちがインターネット上で広範なテーマを取り上げて批判を展開しています。私はこうした動きは、結局のところ、主敵であるはずの舛添氏の当選に利するだけの行為であると私は考えます。マルクスは『資本論』の中で、「地獄への道は善き意図をもって舗装されている」という言葉を使っています。この言葉の意味については複数の解釈があるようなのですが、「良いと思ってやった行いが思いもよらず、全く意図しなかった悪い結果をもたらす」という意味で使われます。細川氏に対しての批判には正論があり、その通りだということがありますが、細川氏に対する批判を行ったからと言って、圧倒的に有利な舛添氏に打撃を与えられるかというとそれは難しい、ほぼ不可能ではないかと私は思います。

 


 こういうことを書いて気分を害される方もおられると思いますが、近親憎悪や内ゲバという言葉があります。戦後の左翼陣営の歴史を見てみると、自分たちの主目的の達成よりも、自分たちと元々は仲間であったが分裂したグループに対する攻撃に終始する、そして弱体化していくということがありました。また、急進的な主張(それはそれで素晴らしい内容のものではありましたが)をするあまりにかえって広範な人々の支持を得られなかったということがありました。今回もまた同じような失敗をして、主敵を利することになるのだろうと、私はここ最近悲観的になっています。

 


 ここで良く考えねばならないのは、自民党員、自民党から選挙に出ること(東京地区の地方自治体や国会議員の選挙)を考えていながら、元空将・軍事評論家の田母神俊雄氏を支援しようとしている皆さんです。自民党は最初、都連レベルで舛添要一氏を支援することにしていました。しかし、公明党が舛添氏の支援を決めたこともあり、また細川氏の出馬で危機感を覚えたのか、安倍晋三首相・自民党総裁が公明党の山口那津男代表と会見し、舛添要一氏の支援で一致しました。そして自民党は党本部を上げての支援ということになりました。

 


 自民党が田母神氏を支援する可能性はなくなりました。複数の当選者が出るなら支援ができるかもしれませんが、都知事は一人しかなれません。そうなると、自民党員、もしくは自民党から選挙に出たいと考えている人が田母神氏を支援することは自民党総裁、もしくは自民党本部の意向に反することになります。自民党の歴史を見てみると、総裁や党本部に反抗しても許されてきたということもありますから大丈夫だとは思いますが、自民党東京都連や公明党のことを考えると、そういう人たちは今後選挙の際にそこまでの支援が受けられるのか、そして東京から選挙に出ようとしてどうだろうか、ということになります。

 


 やはり今の自民党には公明党の組織票が必要なのでしょう。そして、田母神氏に共鳴してしまうような人たちは少し邪魔な存在なのかもしれません。しかし、そうした人たちをJ-NSCなどを通じて自民党支持者として陶冶してきたのは、自民党自身なのです。自民党にしてみれば、おとなしく、強い主張をすることなく、淡々といつもいつも自民党に無条件に投票してくれる人が重要であって、自分たちを強烈に支持してくれるが、時に大変批判的になり、党総裁や党本部の意向に反抗するような人はいらないということになります。

 


 私は偉大な政治学者であった故チャルマーズ・ジョンソン(Chalmers Johnson)が提唱した「ブローバック(Blowback)」という言葉を思い出します。これは2001年9月11日の同時多発テロの1年前に出された本の題名でもありますが、アメリカが対ソ連用に育てたアルカイーダが、結局アメリカに攻撃を加えることになったということをいみじくも言い当てたものでした。

 


 この都知事選が一つのポイントとなって、自民党が少し変化していくのではないかと思います。都知事選自体は、自民党と公明党の組織力やネットワーク力がフル回転ということになり、舛添要一氏が有利になったと思われます。反自公で統一戦線(United Front)、統一候補ができると面白い勝負になると私は考えていましたが、それも潰えました。安倍晋三首相に対する現実的な力を持つストッパーは国内勢力には存在しなくなるということになります。それでも、野党側からすれば、自民党と同じくここが一つのポイントとなって、野党再編や野党再建の動きが活発化することになると私は考えます。

 


 ここ数日、私が考えたことを取り留めもなく書きました。乱文で申し訳ありません。最後まで読んでいただいてありがとうございます。

※2014年1月17日午後6時5分。加筆します。細川氏擁立には自民党内部にくさびを打ち込むということではないかという考えが浮かびました。それは、ある自民党員の方が細川氏に投票するという発言をSNSで行っていたのを見たからです。私は自民党内部が一枚岩であるという前提で考えてきました。しかし、もともと自民党は寄り合い所帯のように、様々な考えの人たちがいた(いる)政党です。穏健派の人たちは目立たないが、確かにいます。

 谷垣禎一法相も穏健派というか、保守本流の宏池会の出身です。谷垣氏は自分が総裁の時に党を出た舛添氏に対して「個人的な思いはある」という発言をしています。これは「だけど党の決定に従う」と続くものですが、それなら「党の決定に従うこと」だけを述べればよいのです。ところがそうではないのはよほどの思いがあるし、もっと大きく言えば、安倍晋三首相に対しても含むところがあるのではないかと推測されます。

 こうして考えると、自公が本部として引き締めにかかっているのも、意外に党内にまとまりが欠けるところが見え始めているのではないかと私は考えています。そして、それが細川氏陣営が仕掛けた揺さぶり、打ち込んだくさびのせいなのだろうと考えます。そしてこのようなことを考えたのは、小沢一郎氏なのだろうとも考えています。


(新聞記事転載貼り付けはじめ)

●「主張に現実性ない…自民、党挙げ「対細川氏」」



2014年1月17日 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20140117-OYT1T00171.htm?from=top



 自民党が東京都知事選(23日告示、2月9日投開票)を巡り、党本部が前面に出る形で舛添要一元厚生労働相を支援する姿勢を鮮明にしている。



 小泉元首相が支援する細川元首相の主張が政府の方針と異なるため、国政が混乱しかねないとの判断から主戦論が一気に強まった。



 自民党の河村建夫選挙対策委員長は16日、党本部で開かれた東京都連幹部らの会合で「党本部を挙げた態勢の中で、勝利を目指して頑張っていこう」と呼びかけた。会合では、党として舛添氏を全面支援することを決めた。同党は16日、石破幹事長名で党所属の全国会議員に舛添氏への支援を呼びかけるメールを送った。今後は閣僚クラスを応援弁士として投入するほか、都議や区議、支持団体への働きかけを強める方針だ。



 自民党は当初、都連を主体とした舛添氏の支援態勢を想定していた。無党派層がかぎを握る都知事選は、党本部が出過ぎない方がいいとの判断もあった。しかし、「原発の即時ゼロ」を主張する小泉氏が、「脱原発」を争点に細川氏を支援する考えを示しているほか、細川氏自身がかつて2020年の東京五輪・パラリンピックの「返上論」を唱えていたことも判明。「細川氏の主張は現実性がない。都知事になれば、日本全体に悪影響が広がる」(幹部)との懸念が広がった。



20141171049  読売新聞)



●「舛添氏支援で自公党首が一致」



2014年1月16日 共同通信

http://news.nifty.com/cs/headline/detail/kyodo-2014011601001946/1.htm



 安倍晋三首相と公明党の山口那津男代表は16日、官邸で会談し、東京都知事選(23日告示、2月9日投開票)に立候補を表明した舛添要一元厚生労働相(65)を支援する方針で一致した。同じく出馬予定の細川護熙元首相(76)の陣営では、小泉純一郎元首相に続き、民主党の野田佳彦前首相や、脱原発を主張する菅直人元首相がブログで細川氏を支援する考えを相次いで表明した。



 脱原発や2020年東京五輪への準備、防災対策強化を争点とする首都のリーダー選びは告示まで1週間となり、各陣営は選挙準備を加速した。



 安倍首相は会談で山口氏に「協力して取り組もう」と呼び掛け、賛同を得た。



(新聞記事転載貼り付け終わり)



(終わり)






 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

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