古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:第7世代

 古村治彦です。

 本日、第20回中国共産党大会が開会される。今回の党大会は、習近平国家主席(中国共産党中央委員会総書記・中国国家中央軍事委員会主席・中国共産党中央軍事委員会主席)が3期目も続投し、中国共産党中央委員会、中国共産党中央政治局、中国共産党駐政治局常務委員会、国務院、国家中央軍事委員会(党中央軍事委員会と顔ぶれが一緒)などの人事が新たに決まるということで注目される。

 このブログでも既にご紹介しているように、習近平政権の3期目、更にその先の4期目も合わせた、5年間もしくは10年間は、「世界の大動乱に備えた準戦時体制」であり、この世界史の転換点とも言える時期を乗り切り、2032年からは、1840年から42年に起きた、中国にとっての屈辱のアヘン戦争200周年で、中国が「中華王国(Middle Kingdom)」に返り咲くという目標を達成する仕上げの時期ということになる。

 これからの10年間の準戦時体制では、航空・宇宙関係出身者の政治への登用が進む。更に、「中国史上最も恵まれた世代」と呼ばれる「第7世代」、1970年代生まれが指導部に多数登用されることにもなる。鄧小平が決めて、江沢民時代から始まった10年おきに同年代で構成される指導部交代という慣例が、習近平によって覆されることになるが、これは、第二次世界大戦中にアメリカのフランクリン・D・ルーズヴェルト大統領が、2選までという慣例を覆し、4選を果たしたことと同様だ。ウクライナ戦争が深刻化し、世界大戦になる可能性が高まっている中で、新しい指導部では乗り切れないという判断もあっただろう。本来であれば、最高指導者を出すはずだった第6世代(1960年代生まれ)がパッとしないということもあったかもしれない。

 不安な点も指摘されている。指導部内の派閥争いだ。中国国内政治には、太子党(有力政治家たちの子女)、中国共産主義青年団派(若手エリート党員の組織、共青団、団派とも呼ばれる)、上海閥(江沢民とその子分たちで構成される派閥)などの派閥がある。習近平は太子党に分類される。上海閥でもあったが、権力を掌握した後に上海閥系を追い出した。現在の李克強国務院総理は共青団系だ。胡錦涛前国家主席は共青団系だ。25名で構成される中国共産党中央政治局、その内の7名で構成される中国共産党中央政治局常務委員会(チャイナ・セヴンと呼ばれる)の人事での比率がどのようになるかが注目される。

 中国はこれからアメリカを追い抜き、世界の覇権国となる。その時期は2040年代ということになる。これからの20年はそのための最後の基礎工事、足場固めということになる。第20回中国共産党大会はその点で大変重要な政治的意味を持つことになる。

(貼り付けはじめ)

中国共産党第20回大会と中国におけるエリート政治の将来:ウィリー・ウー=ラップ・ラムとのインタヴュー(The 20th Party Congress and the Future of Elite Politics in China: An Interview with Willy Wo-Lap Lam

ウィリー・ウー=ラップ・ラム筆

2022年9月20日

『チャイナ・ブリーフ』誌

https://jamestown.org/program/the-20th-party-congress-and-the-future-of-elite-politics-in-china-an-interview-with-willy-wo-lap-lam/

●質問:中国の習近平国家主席は、中国が権威主義的な諸大国の枢軸と、アメリカおよびその同盟諸国(主に自由主義的民主制自体国家の連合)との間のより広い闘争に巻き込まれていると考えていることが広く認識されている。習近平が前任者以上にアメリカとの地政学的な競合を受け入れている理由は何だろうか? 第20回党大会後も習近平は同じ道のりを歩むと考えるか?

■ラム:習近平の最も有名なスローガンである「中国の夢(the Chinese Dream)」の実現と「中華民族の偉大な復興(great renaissance of the Chinese nation)」は、「東洋が台頭し、西洋が衰退する(the East is rising while the West is declining)」という確信に裏打ちされている。この考え方は、かつて改革の最高責任者である鄧小平が「アメリカと仲の良い国は全部栄えている(countries that get on well with the U.S. have all prospered)」と述べた倫理観とは大きく異なる(Guancha.cn:2019年6月10日;フェニックス・テレビ:2015年12月25日)。しかし、中華人民共和国とアメリカが主導する各国の「民主」同盟との間の経済的、技術的、地政学的な争いが大きな原因で、一方では中国、他方ではアメリカとヨーロッパ・アジアの同盟諸国の間で正に新冷戦(new cold war)が勃発している(Project Syndicate:2022年6月17日;サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙:2022年4月20日)。

習近平政権がウラジミール・プーティン率いるロシアを「無制限(ノーリミット、no limits)」で支持し、北京が台湾海峡、日本海、南シナ海で強硬なパワーを発揮していることもあり、北京は世界の舞台で相対的に孤立している。中国はまた、輸出や投資誘致、技術分野に不可欠な重要部品へのアクセスなどにも厳しい制裁が課せられている。

これに対して習近平は、ロシアやパキスタン、カザフスタンなどの中央アジア諸国を含む上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)と共に、権威主義諸国家の枢軸(axis of authoritarian states)を形成し、アメリカ主導の同盟に対する中国の対抗能力を強化しようとしている(ザ・ディプロマット:2022年8月22日;Moderndiplomacy.eu:2022年7月30日)。この枢軸の潜在的なメンバーには、イラン、北朝鮮、ミャンマーも含まれる。9月15日にウズベキスタンでプーティン大統領と会談した際、習近平は「中国はロシアと共に大国の役割を担う努力をし、社会の混乱に揺れる世界に安定と前向きなエネルギーを注入する指導的な役割を果たすことを望んでいる」と述べた。プーティンはウクライナ問題で中国に「疑問と懸念(questions and concerns)」があることを認めたものの、モスクワと北京は「公正で民主的で多極化した世界(a just, democratic and multipolar world)」を形成するために協力すると述べた(『ザ・モスクワ・タイムズ』:9月15日;Globalnews.ca:9月15日September 15)。

第20回中国共産党大会の後、アメリカ主導のブロックと中国主導のブロックとの間の全面的な闘争が激化することが予想される。中国とアメリカは、両者の全面的な争いを存在を賭けたゼロサムゲームとみなしている。そして、対立関係に一定の安定を与えていた共生的な経済・気候関連協力が縮小していることから、関係改善の見込みは低い(Cn.nytimes:9月14日;『フォーリン・ポリシー』:6月27日誌)。

●質問:中国は現在、新型コロナウイルスの脅威が続き、経済が低迷しているという、いくつかの厳しい課題に直面している。これらの問題は、習近平が3期目の任期中に一部の政策領域で方針転換を余儀なくされる可能性があるのだろうか?

中国共産党が投票所での正統性を欠いていることを考えれば、経済成長と国民全体の支持、少なくとも納得が中国共産党の正統性の重要な要素である。いわゆる「紅五毛(hongwumaored 50 cents)」(ソーシャルメディア上で党を褒め称えてお金をもらうネットユーザーの通称)を除けば、相当数の国民が、新型コロナウイルス感染拡大による検疫、失業率の上昇、消費財への支出減、不動産・銀行危機などの問題に苛立っている(VOAChinese:9月15日;Cn.wsj.com:9月14日)。第20回中国共産党大会後、習近平は李克強首相をはじめとする国務院テクノクラートが採用した相当数の措置、特に積極的に成長を促進するための経済への流動性注入を継続し、「世界の工場(world’s factory)」から撤退しないよう西側諸国やアジア諸国の投資家たちを説得するとみられる(チャイナ・ブリーフ:9月9日)。

しかし、国務院(state council)は、政府各レベルと国有企業、民間コングロマリットが抱える膨大な債務の原因であるインフラストラクチャ整備支出を強化するという数十年来の方式を、望ましい改善策として挙げている(Gov.cn:7月6日;新華社通信:5月6日)。習近平は、技術革新などの重点分野において、党国家当局が資源を「集中的かつ重点的に」使用する「国体制、juguotizhiwhole country systemic approach)を好むと宣言した(人民日報:9月7日;Qstheory.cn:6月10日)。また、「内部循環(internal circulation)」の重要性についても言及している。これは、中国の広大な国内市場に経済成長を依存するという半閉鎖的な(semi-autarkist)政策の略語である。こうした動きは、鄧小平の市場開放政策への回帰を予感させない。

習近平国家主席や李克強い首相を含む最高指導者たちは、北京が新型コロナウイルスの患者数をコントロールし、感染拡大による死亡を防ぐことができるのは、中国と西洋の統治システムの優劣を示すものであると主張している。また、幹部たちは、徹底的かつ効率的な検疫(quarantine)作業を行うことで、最高指導者である習近平への忠誠心を示すよう奨励されている(Chinesenewsgroup.com:9月7日;Radio French International:6月28日)。

このような強硬な封鎖措置は、経済を停滞させ、一般市民を遠ざけるだけでなく、中国製ワクチンの有効性や、検査、ワクチン製造、検疫の仕組み全体に関わる大規模な腐敗についても疑問を呈した。新型コロナウイルス感染拡大に関連する措置が経済に正面から打撃を与えたため、第20回中国共産党大会後に構成される指導部は検疫措置の範囲と実施に現実的な変更を加えるかもしれない。しかし、「動的なゼロ新型コロナウイルス政策(dynamic zero-Covid policy)」の主要な要素は2023年まで十分に維持される可能性がある。

●質問:中国共産党中央政治局(CCP Politburo)は9月9日、第20回中国共産党大会で採択される予定の中国共産党綱領(CCP Constitution)の改正について検討会を開催した。中国国家憲法(PRC Constitution)と中国共産党綱領は、1980年代初頭から数回にわたって改正されている。今回の改正は何を目指しているのだろうか?

■ラム:中国共産党または中国共産党憲法は、中国または中国国家憲法と区別するために、既に2017年の第19回中国共産党大会で改正され、「新時代の中国の特色ある社会主義に関する習近平思想(Xi Jinping Thought on Socialism with Chinese Characteristics for a New Era)」が党の指針として明記された。今回の改正案では、最高綱領に「2つの確立两个确立、liang ge quelitwo establishes)原則を挿入し、習近平の地位を更に高める可能性がある。習近平同志を党中央の核心(core of the dangzhongyang [central party authorities])、全党の核心(core of the whole party)とし、習近平思想を新時代の中国の特色ある社会主義(Socialism with Chinese Characteristics for a New Era)に優先させる」(中国日報:9月10日;サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:9月10日)のだ。また、中国共産党総書記と中国共産党中央軍事委員会主席の任期を廃止するために、中国共産党憲章が改正されるかもしれない(Radio Free Asia:9月11日;VOAChinese:9月10日)。現在の中国共産党綱領では、この2つのトップ地位の在任期間について明確な規定がない。しかし、2018年に国家憲法が改正され、これまで各5年の2期までとされていた国家主席のポストの任期制限が廃止された。

●質問:今回の第20回中国共産党大会は、ポスト毛沢東時代の他の大会とどのように似ていて、どのように違うのか? サプライズはあるのだろうか?

権力者はサプライズを嫌い、そのような出来事が事前に周到に準備されていることを確認するために、あらゆる手段を講じる。だからこそ、最高指導者である習近平は、中国政治に「ブラックスワン(black swans)」が出現しないよう繰り返し警告している(Beijing Daily:8月20日;China.com:5月9日)。21世紀の毛沢東と言われる習近平は、人工知能(artificial intelligenceAI)を活用した大規模な監視体制に確固たる自信を持っており、銀行や不動産のデフォルトや関連スキャンダルをめぐっていくつかの地方で勃発したデモにも動じていない(チャイナ・ブリーフ:7月18日)。習近平のエネルギーのほとんどは、第20回中国共産党大会に向けた人事の最終調整に費やされている。それは、自派の支配を強固にすると同時に、習近平の明らかな毛沢東回帰と反米・反西側の姿勢に心を痛めている党の長老や反対派の多くを宥めるだけの余地を生み出すためだ(Deutsche Welle Chinese:9月9日;Asia Society:8月4日)。

改革開放時代(Era of Reform and Opening Up)においても、党指導部は約2300人の全人代代議員と新任の中央委員会委員の意向を最終的に掌握してきたが、後者は5年に1度の大会を利用して、公共政策について時に異質な意見を述べることがある。今回の党大会は、1人の人間の知恵と功績を称えることが中心で、経済の活性化、新型コロナウイルス感染拡大への対応、対米関係の改善など、新しいアイディアが出てくるかどうかは大いに疑問だ。

●質問:十年前、中国の指導者たちの地位は「同輩中の首席primus inter pares)」、つまり 「first among equals」と表現されることがあった。また、習近平時代におけるエリート政治や派閥抗争をどのように考えるべきか?

■ラム:鄧小平は、「改革時代」において、1人の権力者に対する、個人崇拝(personality cults)や過度な権力集中(over-concentration of powers)を防ぐために、数々の重要な制度改革を断行した。そのひとつが、単独の人物による支配から集団指導体制(collective leadership)への移行であり、政治局常務委員会(Politburo Standing CommitteePBSC)の各メンバーが権力を大きく共有し、総書記は「同輩中の首席(first among equals)」に過ぎないというものであった。中国の幹部はこのモデルを「九龍(責任を分担して、nine dragons)河を飼いならす(九治水、Jiulong zhishui)」と称したHK01.com:2019年8月11日;Yazhou Zhoukan:2019年7月15日)。しかし、習近平は2012年末の政権獲得当初から、全ての意思決定権を自らの手に集中させることに成功した。それでも、李克強首相が率いる共青団派(Communist Youth League Faction)と江沢民元主席が率いていた上海派(Shanghai Faction)の2つの強力な党派の残党は、政治局や政治局常務委員会に少数派として残っている(チャイナ・ブリーフ:2021年10月14日)。第20回中国共産党大会以降、思想・人事から財政・外交に至るまで、習近平と習近平派の権力支配が強まる(チャイナ・ブリーフ:8月12日)。これは、「偉大なる舵とり(Great Helmsman 訳者註:毛沢東の別称)」がほぼ絶対的な権力を握っていた1960年代から70年代の毛沢東時代に一部回帰することになる。

●質問:中国共産党内では習近平の後継者争いが起きているのか? もし、明日、習近平が突然死んだらどうだろうか? 体制は大混乱に陥るだろうか?

■ラム:2032年の第22回中国共産党大会まで習近平が統治するとすれば、後継者を探すのに10年間の猶予がある。この後継者問題は、最高指導者の突然の失脚という不測の事態に中国共産党が対処できるかどうかということと同様に、公式メディアや検閲の厳しいソーシャルメディアにとってタブーである。長年にわたる「七上八下(68歳定年、67歳以下はもう1期、retirement at 68, possibly one more term for cadres aged 67 or under)の規定により、1960年代生まれの第6世代の新星たちは、第20回中国共産党大会または2027年の第21回党大会で中国共産党中央政治局常務委員となるが、それは一時的な措置に過ぎないかもしれない(チャイナ・ブリーフ:2021年11月12日)。その有力候補は、習近平の愛弟子で最高顧問の丁学祥(Ding Xuexiang、1962年生まれ)と重慶市党委書記の陳敏爾(Chen Min’er、1960年生まれ)である。しかし、第22回党大会で丁は70歳、陳は72歳になる(Chinafocus.com:4月7日;Cn.nytimes214日)。年齢条件を満たせるのは第7世代のメンバーか1970年代生まれの幹部だけであるため、習近平の後継者候補はまだ政治の舞台で強いイメージを打ち出していない(チャイナ・ブリーフ:2019年4月9日)。これらの幹部はいずれも次官以上の地位に到達してはいない。更に、新星たちが、国家的に重要な業績を上げ、最高幹部への昇進を勝ち取るまで数年しかない(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:8月29日;Thinkchina.sg:2021年12月6日)。

●質問:中国共産党総書記には国民による投票がないが、習近平が「終身指導者(leader for life)」として一般人や下級党員、仲間であるエリートたちに訴えていることは何か? 基本的に、習近平の「切り札(stump speech)」は何か?

■ラム:多くの中国人は、1978年末に鄧小平が「改革の時代(Era for Reform)」を始めてから30から40年の間に生まれたか、あるいは働き始めた。習近平は、「思想の解放(thought liberation)」や集団指導(collective leadership)から、民間企業の権限強化、西側資本の誘致に至るまで、鄧小平の教えのほとんどを覆した。中国共産党は国民の脱政治化(depoliticized)に成功し、多くの人々の関心とエネルギーを政治から純粋な経済的追求へと移行させた。しかし、習近平は反改革主義的な施策、とりわけ習近平自身の終身在職を含む個人崇拝(personality cults)の復活に対して、大多数の国民と幹部から真の支持を得たことはない。失業率の上昇と株式・不動産市場における中産階級の大きな損失は、習近平にとって、「中華民族の偉大な復興(the great renaissance of the Chinese nation)」などの聞こえが良いが空虚なスローガンの正当化を二重に難しくしている。台湾統一(reunification of Taiwan)や中国が新たな中央の王国(emergence of China as the new Middle Kingdom)となることを含む「中国の夢(Chinese dream)」は、習近平が「終身支配者(ruler for life)」になることを目指す根拠となっている(Indianexpress.com:2021年11月16日;Asia.nikkei.com:2021年10月21日)。しかし、中国とアメリカの経済力、技術力、軍事力の間には依然として強大な差があり、東洋が西洋に取って代わるとは限らない。この画期的な目標を達成できない習近平は、中国の「第2の毛沢東(Second Mao Zedong)」であるという主張の正統性を損なう恐れがある。

※ウィリー・ウー=ラップ・リン(Willy Wo-Lap Lam、林和立)博士:ジェイムズタウン財団上級研究員、『チャイナ・ブリーフ』誌定期寄稿者。香港中文大学歴史学部・国際政治経済修士プログラム非常勤講師。6冊の中国に関する著作を持ち、代表作に『中国政治と習近平時代(Chinese Politics in the Era of Xi Jinping)』(2015年)がある。2020年に最新作『中国の将来のための戦い(The Fight for China’s Future)』(ルートレッジ・パブリッシング)が刊行された。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今年秋の第20回中国共産党大会で習近平(Xi Jinping、1953年-、69歳)中国国家主席は2期10年務めた最高権力者の座から降りることなく、更に1期5年、権力の座にとどまり続けるという話になっている。そうなると10年ごとに若い世代に最高指導部を引き継ぐという江沢民(Jiang Zemin、1926年-、95歳)と胡錦濤(Hu Jintao、1942年-、79歳)の時に行われた習慣が崩れることになる。ポスト習近平時代の中心と目されていた中国共産党指導部第6世代(1960年代生まれ)から最高指導者(国家主席・中国共産党総書記、中国中央軍事委員会主席を兼ねる)人物は出ないということになる。そして、次の第7世代(1970年代)から最高指導者が出る可能性が取り沙汰されている。最高指導者を出せなかった第6世代は「悲劇の世代」ということになりそうだ。
 習近平がこれから更に2期10年最高指導者を務めるならば、第6世代から最高指導者は出ないが、1期5年で退けば、15年を第6世代からの最高指導者が務める可能性がある。第6世代のトップランナーは胡春華(Hu Chunhua、1963年-、59歳)副首相である。最近になって、習近平が胡春華を重用し始めているという報道もある。習近平が3期目の国家主席となる場合に、胡春華を政治局常務委員に引き上げ、首相のポストを与える可能性もある。そして、習近平が胡春華を最高指導者に引き上げて自身は院政を敷くという可能性もある。現在の政治局員序列第2位の李克強(Li Keqiang、1955年-、67歳)首相は全国人民代表大会常務委員長か中国政治協商会議主席に転身するということも考えられる。江沢民、胡錦涛の時とは違ったイレギュラーな人事となるが、これであれば第6世代の悲劇性を少しは薄めることもできるだろう。
 習近平は中国共産党中央委員会主席(Chairman of the Central Committee of the Chinese Communist Party)の職位を復活させ、この地位に就くという観測も出ている。党主席は権力が集中するポジションであり、1945年に設置され、毛沢東が亡くなる1976年までその地位に就いていた。その後は1976年から1981年まで華国鋒(Hua Guofeng、1921-2008年、87歳没)、1981年から1982年まで胡耀邦(Hu Yaobang、1915-1989年、73歳没)が就任したが、権力集中への反省から、鄧小平が廃止した。

 この中国共産党中央委員会主席を復活させて、習近平が権力を掌握する可能性が出ている。現在、中国では習近平が中国共産党の「終身核心(eternal core)」とされている。習近平が権力を掌握したままで、これからの厳しい時代を乗り越えようとしている。中国はこれからの時代に備えようとしている。

(貼り付けはじめ)

分析:習近平は胡春華の「第6世代」全体をスキップする準備をしている(Analysis: Xi prepares to skip over Little Hu's '6th generation'

-習近平国家主席陣営の内外で有望な政治家たちはトップにはなれない。

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習近平主席のゆっくりだが着実な政治改造は中国の他のトップリーダーの生活をも変えようとしている。5月13日、河南省で小麦の収穫を観察する党総書記と複数の側近たち。

カツジ・ナカザワ筆

2022年5月20日

『アジア日経』紙

https://asia.nikkei.com/Editor-s-Picks/China-up-close/Analysis-Xi-prepares-to-skip-over-Little-Hu-s-6th-generation

東京発。中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は胡春華Hu Chunhua、1963年-、59歳)副首相をどう見ているのだろうか?

58歳の胡春華副首相は、将来のトップリーダーと目されていた時期があった。胡錦濤(Hu Jintao、1942年-、79歳)前国家主席や李克強(Li Keqiang、1955年-、67歳)首相と同じく、胡春華は共産主義青年団(Communist Youth League)の第一書記を務めた経歴がある。

胡錦涛と同じく、胡春華も長年にわたり、チベット自治区で働いた。チベット自治区は、動乱と民族紛争で知られていた。

胡錦涛前国家主席と同じ苗字だったことから、胡春華は「リトル・フー(Little Hu)」と呼ばれるようになった。

2008年、胡春華は国内最年少で河北省長に就任した。45歳の時だった。毛沢東(Mao Zedong、1893-1976年、82歳没)、鄧小平(Deng Xiaoping、1904-1997年、92歳没)、江沢民(Jiang Zemin、1926年-、95歳)、胡錦濤(Hu Jintao、1942年-、79歳)、習近平(Xi Jinping、1953年-、69歳)と続く、中国指導者のいわゆる「第6世代(Sixth Generation)」の顔であることは間違いないところだ。

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左から毛沢東主席、鄧小平、江沢民主席、胡錦濤主席、習近平主席。中国に6代目のリーダーが誕生するのは、しばらく先のことかもしれない。

胡春華(リトル・フー)の運命は2012年に習近平が中国共産党総書記に就任し、その直後に国家主席に就任すると一変した。習近平は太子党出身で政治的背景が異なり、2人の胡とは対立する派閥に属していた。

しかし、不安があるにもかかわらず、胡春華(リトル・フー)は生き延びてきた。

だから、2022年5月中旬に習近平(67歳)が河南省を訪問した際、胡春華が大勢の側近の一人として同行したことは特筆すべきことだった。視察に参加した5人の政治局員の1人であるだけでなく、国営放送の中国中央テレビで習主席と歩きながら話す姿も映し出された。

派閥の関係もあってか、胡春華は習主席の視察に常に同行する人物ではない。習近平の側近である劉鶴(Liu He、1952年-、70歳)副首相がその地位を確固として占めている。

劉鶴が習主席の河南省視察に同行しなかったことは噂の種になっている。

習近平と胡春華が手を結んでいるのか? 習近平と胡春華はより接近しているのか?

河南省訪問直前の5月12日、米紙『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、中国政府がアメリカとの閣僚級貿易協議の代表を劉鶴から胡春華に交代させることを検討していると報じた。

商務部の報道官は記者会見でこの報道を否定したが、中国の対米窓口担当者を交代させることは、経済関係の行き詰まりを打開する一つの方法となり得るだろう。

胡春華(リトル・フー)にとって、習近平時代の9年間、眠れない夜が続いたに違いない。

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5月13日、河南省南陽市で撮影された習近平と胡春華。北京は、胡春華がアメリカとの閣僚級貿易協議の中国代表に就任するとの噂を否定している。

中国の国会である全国人民代表大会は2022年3月、副首相をより柔軟に任命・解任しやすくする法案を押し通して可決させた。

この新ルールにより、習近平は側近を副首相に昇格させ、その人物を次期首相にする道を開いたとの憶測が飛び交っている。

習近平は同じ全人代で、内モンゴル自治区の石炭産業の腐敗を問題にした。習近平は内モンゴル自治区の石炭産業の腐敗を問題視し、「関係者を何世代にもわたって炙り出し、徹底的に処罰する」と宣言した。

胡春華はかつて内モンゴル自治区のトップを務めた。

習近平は2022年の5年に1度の中国共産党大会を控え、政治的に敏感な時期にこのような激しい言葉を発したのである。

4年前(2017年)、前回の全国大会の直前、同じく第6世代の新星、孫政才(Sun Zhengcai、1963年-、59歳)が汚職容疑で突然粛清された。孫政才は当時、重慶市のトップで政治局員だった。

孫政才の失脚は、習近平が次代の国家指導者候補の政治生命を決める権利を有していることを思い知らされる衝撃的な失脚であった。

胡春華(リトル・フー)は自分の微妙な立場を自覚し、目立たないように、着実に任務をこなしてきた。

ある古くからの知人は、胡春華の人柄と能力を高く評価している。この人物は「彼は相当な酒豪で、いろいろな話題について自分の意見を言うことができるインテリだが、今の胡は、よく観察しておくしかない」と付け加えた。

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2017年10月、北京の人民大会堂で開催された共産党全国大会において、重慶市共産党の陳敏爾書記が重慶市代表団の討論会に出席した。

2年前、習近平は同様に、胡春華を伴って注目の地方視察を行った。

2019年4月、習近平は重慶にいた。ホスト役を務めたのは側近の陳敏爾(Chen Min'er、1960年-、61歳)、重慶市のトップだった。陳は60歳だ。しかし、そこには胡春華の姿もあった。視察の主目的は、胡春華が副首相として担当する政策分野である貧困撲滅である。

今回の習近平の河南省訪問の主な目的は、「南北分水嶺プロジェクト(South-to-North Water Diversion Project)」の視察であった。胡春華は、水の豊富な中国南部と北部を結ぶメガプロジェクトの責任者だ。

書類上、担当の副首相である胡春華が習近平に同行するのは当然であった。その気になれば、習近平は胡春華が他の政治的な目的で今回の視察同行に選ばれたのではないことを説明できたはずだ。

しかし、チャイナ・ウオッチャーたちがどのような分析を行おうとも、一つだけはっきりしていることがある。胡春華が中国の新しい対米貿易交渉のトップに抜擢されるかどうかはともかく、彼はもはや将来の習近平の後継者候補ではない。

それは胡春華が習近平と対立する派閥に属しているからではない。同じことは、習近平の側近で第6世代に属する陳敏爾や上海市トップの李強(Li Qiang 、1959年-、63歳)にも言える。

陳敏爾と李強は、習近平が浙江省トップを務めていたときの部下であった。彼らは習近平の政治集団の中核をなす「浙江派(Zhejiang faction)」に属している。しかし、習近平が政権を維持する以上、どちらも真の後継者にはなり得ない。

複数の党幹部は「第6世代」の悲劇についてささやき始めた。彼らは、「この言葉は無意味になった」とささやき合っている。

ある中国共産党高官は、「第6世代リーダーを語ることは政治的に難しくなった。この世代は追い越され、現在50歳前後の若い世代に注目が移っている」と語った。

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「李強のような第6世代のリーダーについて語ることは政治的に難しくなっている」。

習近平は2017年、指導者の10年の任期の途中で、将来のトップリーダー候補を少なくとも2人、政治局常務委員会(Politburo Standing Committee)に登用し、後継者として育成できるようにするという長年の党の伝統を破った。

習近平は、2012年に総書記に就任する5年前の2007年に政治局常務委員に就任している。習近平のライバルである現職の李克強首相も2007年に政治局常務委員に就任している。

胡春華をはじめとする第6世代のリーダーたちは、2022年の中国共産党大会に向けて、更なる昇進を目指した戦いに挑むことになる。

しかし、競争に勝って常務委員会に入った者は誰であっても、党の最高指導者への道を歩む名誉を得ることはできない。加えて、政治局常務委員や首相の権限は大幅に縮小されるかもしれない。

習近平は権力を集中的に手中に収めている。習近平は党総書記、国家主席の地位にとどまることなく、さらに高い地位、場合によっては党主席を目指すだろう。

毛沢東が終身在任した党主席という地位は、1982年に鄧小平が独裁を防ぐために正式に廃止した。習近平が復活させれば、政治局常務委員や首相の地位は低下することになる。

一方、習近平の側近たちは、これまでとは違った人生を歩むことになる。2022年の全国代表大会以降に新設される習近平を中心とした中央集権体制のもとで、重要なポストを担うことになるだろう。

新しい統治システムの構築が水面下で始まろうとしている。その制度設計は、人事以上に重要な意味を持つ可能性が高い。
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 古村治彦です。

 今回も中国共産党指導者第7世代に関する論稿をご紹介する。この論稿では第7世代で各省の党常務委員や副省長、中央行政機関の副部長を務める108名の分析となっている。

 現在の段階で、各省レヴェル(中国の各省でも1カ国分くらいある、大都市になれば小国を凌駕する規模になる)の中国共産党常務委員会に入り、各省の重職を担っている人物たちがこれから10年間の最高指導部入りのためにスタートラインに立っているということになる。その数だけで100名以上いる。そこから最終的に「チャイナ・セヴン」と呼ばれる、中国共産党政治局常務委員会(国家主席や国務院総理などを務める)に入ることになる。

 彼らの多くが2018年頃から、それまで金融分野であったり、製造業分野であったりで活躍していたところから、地方の行政機関へと転身している。そして、各地方レヴェルで党常務委員会入りをし、ほとんどの場合が最も若いメンバーということになっている。

 英語の記事であるため、漢字が載っていないので、漢字の名前が分からない人たちも複数いるが、これからどんどんと分かっていくだろう。2022年秋の中国共産党大会で中央委員会に正式な委員、もしくは委員候補として第7世代が多く入ると見込まれている。前回と今回の2回の記事でご紹介した人物たちが入ると思われる。青田買いで写真だけでも眺めておくことは有意義だと思う。

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先駆者たち:第20回中国共産党大会における1970年代世代の台頭(Pioneers: The Rise of the Post-1970s Generation at the 20th Party Congress

チェン・リー(ブルッキングス研究所ジョン・L・ソーンストン研究所部長)筆

2022年4月10日

『チャイナユーエス・フォーカス』

https://www.chinausfocus.com/2022-CPC-congress/pioneers-the-rise-of-the-post-1970s-generation-at-the-20th-party-congress

中国共産党は長年、政治的エリートの年齢層を過度に気にしてきたといっても過言ではないだろう。中南海(Zhongnanhai)が広大な国土を一党支配するためには、「幹部の世代間排除」(intergenerational deletion of cadresganbu qinghuang bujie)によって政治指導が途絶えることがないようにする必要がある。

1980年代初頭、鄧小平(Deng Xiaoping、1904-1997年、92歳で死)をはじめ、陳雲(Chen Yun、1905-1995年、89歳で死)、胡耀邦(Hu Yaobang、1915-1989年、73歳で死)などの幹部たちは、「第三グループ(third echelondisan tidui)」という概念を提唱した。これらの中国トップは、中国共産党指導部は江沢民(Jiang Zemin、1926年-、95歳)や李鵬(Li Peng、1928-2019年、90歳で死)を後継者に指名するだけでなく、当時30代後半の胡錦涛(Hu Jintao、1942年-、79歳)のような若い幹部たちを、将来、江や李の後継者となる後継層のリーダーとして育成する努力をすべきだと明確に主張していた。

●中国共産党の主要問題:世代間をつなぐ継続性(The CCP’s key issue: Intergenerational continuity

「第3グループ」という言葉は1980年代から1990年代にかけて広く使われるようになった。中国共産党幹部の若いグループを選抜し、育成するというやり方は、この20年間ずっと浸透している。2021年12月、中国共産党中央組織部の陳希(Chen Xi、1953年-、68歳)部長は、複数の中国の公式宣伝媒体で広く報じられた長い論稿の中で、中国が直面している「重要かつ根本的な問題」は、党が後継世代の有能な幹部を育成できるかどうかであると述べた。陳中央組織部長は、強力な中央組織部が若い幹部たちに対して、「複数ポストでの訓練(multi-post training)」と「各層での試験(layer-by-layer tests)」を通じて、指導力を高めるための豊富な経験を提供すると明言した。さらに、陳希は「幹部の忠誠心は中国共産党の統治の魂である(Cadre loyalty is the soul of the CCP’s reign)」と率直に明言した。

当然のことながら、中国共産党当局が若い世代の指導者グループを速やかに高位に登用できなければ、異なる世代間の政治的対立が発生する可能性がある。2018年7月、習近平は中国共産党全国組織工作会議(CCP National Organizational Work Conference)で、「幹部チーム全体がやる気と希望を持てるように、各年代の幹部の熱意を存分に発揮させるべきだ」と発言した。

私の連載において前回では、現在、そして少なくとも今後10年間は、1960年代以降の世代(the post-1960s generation6G)が全国指導部の中で優位を占めていることを説明した。その次の世代である1970年代以降の世代(the post-1970s generation7G)の代表は、来年秋に発足する第20期中国共産党中央委員会でも急速に増えていくだろう。現在376名いる第19期中央委員会では、1970年代生まれの委員は2名(いずれも候補)しかいない。中国科学院副院長の周琪(Zhou Qi、1970年-)と信陽市(河南省)党委書記の蔡松涛(Cai Songtao、1974年-)である。ただし、第7世代のリーダーたちの割合は、現在の中央委員会の0.5%から第20期中央委員会では10%近くまで増加すると予想される。

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周琪

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蔡松涛

●第7世代の急速な台頭(The rapid rise of 7G leaders

現在、中国の31ある省レヴェルの行政機関には、それぞれ少なくとも1人の第7世代のリーダーが副省長に就任している。河北省では3人の副省長が第7世代のメンバーだ。省レヴェルの指導部の入れ替えが進む中、新たに省党常務委員に就任した人物の約3分の1が1970年代生まれである。

私が行った実証研究によると、2022年3月末までに、1970年代生まれの文民指導者が副省長、次官級で合計108人在職していることが分かった。軍事面では、中国の公式資料によると、2020年5月までに、人民解放軍で1970年代生まれの20人以上が軍レベル(junji)で文民指導部の副省長・副部長レヴェルに相当する少将の地位に就いている。例えば、霍建少将(Huo Jiangang、1970年-)は2019年に第49軍集団の司令官に就任した。2021年からは中国人民解放軍国防大学連合作戦学院の学院長を務めている。

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霍建剛

本論稿では、副省長・副部長レヴェルの第7世代の文官指導者たちに焦点を当てる。これら108人の高官のうち、96名(89%)が過去2年間に現職に任命され、73名(3分の2以上)の指導者が2021年以降にこの重要なレヴェルに進んだ(図表1参照)。2016年11月には、当時江西省党常務委員会秘書長で現在は杭州市党委書記を務める劉捷が、全国で初めて第7世代から省の党常務委員会のメンバーとなった。省党常務委員会の第7世代のメンバーは、2021年7月の13名から12月には26名に増え、半年で倍増した。

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第7世代の指導者たちが省レヴェル・中央行政部で副省長、副部長に任命された年(総数=108名)

2022年3月までに、第7世代の省レヴェルの党常務委員は46名に達し、副省長レヴェルに在職している第7世代の指導者の半数以上が常務委員にも就任している。全体として、第7世代の集団は第6世代が支配する省の党常務委員会の委員の11%以上を占めるようになっている。

中国共産党中央組織部は最近、第7世代のリーダーたちの登用に力を注いでいる。2022年3月、諸葛宇傑(1971年-)が上海市党委副書記に就任し、全国で初めて省レヴェルの副書記を務める第7世代のリーダーとなった。これまで、第7世代の幹部で省長・中央の行政機関の部長になった者はいない。このほか、貴州省政法委書記の時光輝(1970年-)、福建省常務副省長の郭寧寧(1970年-)、チベット自治区組織部長のライ・ジィアオ(1972年-)らが第7世代の新星として挙げられる。

また、最近では、第7世代のリーダーたちが重要な省のいくつかの省都を含む主要都市の党書記に任命されている。その代表例が済南党委書記の劉強(Liu Qiang、1971年-)、厦門市党委書記の崔永Cui Yonghui、1970年-)、杭州市党委書記の劉捷(Liu Jie、1970年-)、温州市党委書記の劉小涛(Liu Xiaotao、1970年-)、蘇州市党委書記の曹路宝(Cao Lubao、1971年-)、太原市党委書記の韦韬Wei Tao、1970年-)、昆明市党委書記の劉洪建(Liu Hongjian、1973年-)、ウルムチ市党委書記の楊発森(Yang Fasen、1971年-)などが挙げられる。これらの指導者はいずれも各省の党常務委員を兼任している。これらの都市の行政的地位の高さから、前述の市党書記はいずれも第20回中央委員会の初委員に選出(委員候補となる可能性が高いが、委員である可能性もある)となることが予想される。彼らは、やがて国を動かすことになる次期エリート世代の先駆者たちだ。

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崔永輝

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劉小涛

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韦韬

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楊発森

●第7世代リーダーたちの人格形成における経験と人口学的な特徴(The formative experiences and demographic traits of 7G leaders

第7世代の副省長・副部長クラスの指導者108名中103名(95%)が1970年代前半に生まれている。中央値は1971年である。最も若いのは、チベット自治区常務副主席・党常務委員の任維(Ren Wei、1976年-)で、1976年生まれだ。
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任維

中国のソーシャルメディアでは最近、1970年代前半に生まれた人々を「中国で最も幸運な年齢層(the luckiest age cohort in the PRC)」と呼ぶ記事が広く流布された。その記事によると、この年齢層は、上の年齢層が経験したひもじさや飢餓の感覚を持たなかったという。なぜなら、彼らが生まれる10年前の1960年代前半に、中国当局は「天災三年(three years of natural disaster)」と呼んでいたものを既に経験していたからである。また、文化大革命世代のように、農村で農民として働く「下放青年(sent-down youths)」としての肉体的苦労を経験するには、彼らは若過ぎた。

1980年代初頭に実施された厳格な家族計画政策によって、一人っ子の家庭で育った「一人っ子世代(single-child generation)」でもない。彼らは、中国都市部の新興中産階級の家庭に生まれた最初の世代であり、「改革時代の子供たち(children of the reform era)」である。2001年の世界貿易機関(World Trade Organization WTO)加盟により、中国が世界経済に大きく組み込まれた時期に人格が掲載された。

この年齢層のリーダーたち108名のうち、女性はわずか7名(6.5%)であり、広西チワン族自治区常務副主席の蔡麗新(Cai Lixin、1971年-)、前述の福建省常務副知事の郭寧寧(1970年-)、湖南省副知事の張迎春(Zhang Yingchun、1970年-)、遼寧省統一戦線部長のフー・リージェ(Hu Lijie、1971年-)など 4名が現在地方の党常任委員を務めている。彼女たちは第20期中央委員会の委員候補の有力候補である。

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蔡麗新
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 張迎春

当然のことながら、この第7世代のリーダーたち108名のうち97名(90%)は漢民族である。少数民族出身者は、満州族3名、回族2名、モンゴル族1名、チベット族1名、ツジャ族1名、チワン族1名、ウイグル族1名、ゲラオ族1名である。この第7世代の少数民族指導者の中には、例えば、チベット自治区党委員会秘書長の达娃次仁(Dawa Ciren、ダワ・チレン、1972年-、チベット族)、太原市党委書記の韦韬Wei Tao、1970年-、チワン族)、遼寧省副省長の張立林(Zhang Lilin、1971年-)、雲南統一戦線部長のチョウ・ジアン(Qiu Jiang、1972年-)、新疆ウイグル自治区党常務委員の伊力扎提・艾合提江(Ilzat Exmetjanイルザット・エクスメジャン、1975年-、チベット族)も第20期中央委員会の委員候補として有力候補であると思われる。
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达娃次仁
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張立林

出身地別では、遼寧省、江蘇省、湖南省が最も多く、それぞれ12人、10人、9人である。本研究の第7世代リーダーのほとんど、88名(81%)が1990年代に中国共産党に入党している。これらの第7世代のリーダーたちは全員大学を卒業しており、102名(94%)が大学院レヴェルの学位を取得し、そのうち58人(53.7%)が博士号を取得している。第7世代のリーダーたちが最も多く学部教育を受けた大学は、北京の清華大学(8人)、人民大学(7人)である。

このうち3分の1以上(34.3%)は工学を専攻し、27名(25%)が経済、金融、会計を学んでいる。この2つの分野は、第7世代の年齢層における2つの重要な専門分野である。人文科学(言語、歴史、哲学)を専攻したリーダーは17名(15.7%)にのぼる。12名(11.1%)は政治や法律を学んでいる。また、12名(11.1%)は、数学や統計学などの自然科学を専攻している。

また、23人のリーダーたちの公式の経歴には、客員研究員や学位候補生として海外に留学した経験があることが記されている。そのほとんどが欧米諸国への留学で、最も多いのはアメリカ(9名)、次いでイギリス(4名)、シンガポール(4名)となっている。例えば、江西省副省長の任珠峰(Ren Zhufeng、1970年-)は、1999年から2005年までの6年間、イギリスで金属鉱物関係の会社に勤務しながら、ロンドン・ビジネススクールでMBAを取得し、その後、中国中央財経大学で経済学博士号を取得した。中国五鉱集団公司(China Minmetals Corporation)で部長、CEO補佐、総経理、党書記、取締役会議会長を16年務めた後、2021年に江西省副省長兼党常務委員に就任した。renzhufeng522

任珠峰

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図表2:第7世代の指導者たちが副省長、副部長レヴェルの指導部に入っている部門

図表2は第7世代の指導者たちが副省長、副部長レヴェルの指導部に入っている部門を示している。ほぼ80%が地方指導部に所属している。省庁の指導部や企業・金融機関に勤務する人はそれぞれ5.6%に過ぎない。中国の27の省庁の副部長のうち、第7世代の出身者は朱忠明財務副部長(Zhu Zhongming、1972年-)、叢)亮国家発展改革委員会副部長(Cong Liang、1971年-)など少数にとどまっている。中央の党機関のクラスタは最も低い割合(2.8%)である。その他の中央機関(中国共産主義青年団、中国科学院、新華社通信のリーダーなど)は6.5%である。

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朱忠明

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(叢)亮

この人事配置は、省級指導部が中国共産党の国家指導部への重要な足がかりになるという長年の傾向を再確認するものである。しかし、第7世代の新星たちの経歴を詳しく見てみると、彼らの多くは中国の旗艦企業や大手金融機関でより広範な指導経験を積んでいることがわかる。更に、習近平時代には、地域横断的、部門横断的、政府・企業横断的な経験に基づいてエリートが採用・昇進されることが多くなっている。この重要な現象は、本連載の次のエッセイで取り上げるが、もっと注目されてもよいだろう。

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 古村治彦です。

 今年秋の第20回中国共産党大会で習近平の任期延長が決定されると、中国共産党指導部第6世代が最高指導者となる芽がなくなってしまうことになる。習近平が2032年まで中国共産党総書記、2033年まで国家主席を務めるということになると、10年後には第7世代(1970年代生まれ)が最高指導部の適齢期となる。この10年で第7世代が人事面で抜擢、昇進していくだろう。その顔ぶれを見ておくことはこれからの10年にとって重要である。

 1970年代生まれの第7世代は現在、地方の各省の最高幹部(常務委員や副省長など)を務めている。それぞれが金融(銀行)、港湾管理、鉄鋼などの専門分野を持ち、専門分野で成果を挙げて、行政部門へと異動となったのがだいたい2018年後半のようだ。既に、中央の最高指導部(政治局常務委員7名を含む政治局委員25名)もしくはそれらを含む中央委員(200名)に入る競争が始まっている。中国の人口を考えるとこうした最高指導部に入るのは至難の業である。

 習近平体制になって、幹部抜擢の要素としては「政治的道徳性」が必要であるようだ。汚職に手を染めず、習近平体制に忠誠を誓うということが必要なようだ。これから下にある記事にある人物たちが中国政治の表舞台に出てくることになるということで、その顔と名前を今から見ておくことは有意義なこととなる。

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中国政治

解説:共産党の台頭するスターたち:のちに最高指導部層に達するかもしれない中国の第7世代指導者たち(Explainer | Communist Party rising stars: China’s seventh-generation leaders who may eventually reach the top

・競争者たちの多くは観光振興、港湾管理、都市計画などの専門分野の経験者が多い。

・1960年代生まれのトップ指導者たちは、トップポストへの挑戦というより、定年まで習近平の下で働き続けることになりそうだ。

ウィリアム・ジェン筆

2021年6月26日

『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』紙

https://www.scmp.com/news/china/politics/article/3138537/communist-party-rising-stars-chinas-seventh-generation-leaders
中国は来年開催される5年に1度の全国代表大会で、次の大規模な指導部再編を発表する予定だ。そこでは、共産党の最高権力機関である中央委員会(200人)への昇格が、習近平国家主席の将来の後継者となり得るかどうかが注視されることになる。

中央委員会のメンバーになることは、25人の政治局、より排他的な政治局常務委員、さらには総書記のポストへと、党内でさらに昇進するための前提条件だ。

1970年代生まれは「第7世代」と呼ばれ、多くの幹部が定年を迎える中、権力中枢への進出が期待されている。

共産党研究の歴史家たちは、毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦濤、習近平と、歴代の最高幹部たちを特徴づけしてきた。しかし、習近平は2期目以降も留任するようで、第6世代を構成する1960年代生まれの幹部は、自らトップの座を狙うのではなく、定年まで習近平の下で働き続けることになりそうである。

第7世代の高官たちは、各省の事実上の意思決定機関である省レヴェルの党政治局常務委員を務めているか、党組織や政府でトップの地位に就いている。彼らには最高の地位まで上昇する機会がある。彼らの多くはまだ省レヴェルの党常任委員会の下位のポジションにいる。例えば秘書長(secretary general)といった地位だが、これは大抵の場合には常任委員会の中で一番下の地位となる。劉洪建、劉捷、時光輝といった少数の人物たちは治安部門や党の人材部門担当でより高い地位に就いている。これには彼らの個別の能力をテストしようという北京の思惑が見える。

第7世代は中国全土の出身であるが、いくつかの共通点を持っている。彼らは最低限でも大学の卒業生であり、将来の承認に備えて中国共産党中央党学校(party’s Central Party School)で学んだ経験を持つ。

彼らの多くはいくつかの専門分野を持っている。それらは観光振興、港湾管理、都市計画、ハイテク地区開発である。

私たちは第7世代の中で、既に省レヴェルの党常任委員となっている有望人物たちを年齢が若い順に紹介していく。

■劉洪建(Liu Hongjian、1973年-、48歳)
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今年5月、劉は雲南省政法委員会(Yunnan Political and Legal Affairs Commission)書記に昇格し、中国で最年少の省レヴェルの党委常務委員となった。雲南省政法委員会は省内の治安と法執行部門を監督する組織である。

中国南東部の福建省寧徳市福鼎市に生まれ、福建省で最も貧しい地域の1つである寧徳市で20年以上を過ごした。習近平は1988年から1990年にかけて寧徳市党委書記を務めた。

2012年、劉は福建省の観光振興をリードする役職に昇進し、その後、2018年7月に南平市長に就任した。

劉は2020年7月に雲南省の副省長に就任するために福建省を離れた。

■呉浩(Wu Hao、1972年-、49歳)

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第7世代で2番目に若い人物である。中国の南西部の江西省党政治局常務委員、省党委書記を務める。

彼の同僚たちと同様、呉は、キャリアのほとんどを故郷の河南省で過ごし、河南省の交通部門や住宅・都市農村開発部門の責任者にまで上り詰めた。

呉は河南省を離れ2020年3月に江西省副省長に就任し、2021年61日に現職に昇格した。

■費高雲(Fei Gaoyun、1971年-、49歳)

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費高雲は1月に、江蘇省東部の党常務委員兼政法委員会書記に就任した。

中国で尊敬を集める初代首相の周恩来の故郷である江蘇省淮安市に生まれ、電子工学の学位を取得後、江蘇省でキャリアを積んできた。

2008年に江蘇省儀徴市の党委書記、2012年に南通市、2017年に常州市の党委書記を務めるなど、様々な指導的役割を担ってきた。

2018年に江蘇省副省長に就任した後、3年後に省党常務委員会に入り、3年後に現職に就いた。

■諸葛宇傑(Zhuge Yujie、1971年-、50歳)

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諸葛宇傑は2017年5月に上海市党常任委員と党委秘書長に昇進した。

諸葛は中国の金融部門の首都とも言うべき上海で生まれ育ち、キャリアの全てで過ごしてきた。上海の港でキャリアをスタートさせ、上海国際港務グループのCEOまで上り詰めた後、2013年に区長として上海市楊浦区のトップに赴任した。

2016年に副秘書長として上海市党委員会に昇格し、2017年に現職に昇格した。

■劉強(Liu Qiang、1971年-、50歳)

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劉強は東部山東省の副省長から、2020年6月に省党常務委員、省党委員会秘書長に昇格した。

劉強は他の多くの同業者と異なり、1993年に国営の中国農業銀行(Agricultural Bank of China ABC)でキャリアをスタートさせた。上海で中国農業銀行の業務責任者を務めた後、2016年に中国銀行の副頭取に転出した。

2018年に山東省副省長に転身し、昨年6月に現在の地位に昇格した。

■連茂君(Lian Maojun、1970年-、50歳)

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連は2020年4月から天津自由貿易区の区長と天津市党常務委員を務めている。

遼寧省北部に生まれた連は、ITの学位を取得後、キャリアの大半を省都の瀋陽で過ごした。2016年に瀋陽市政府の秘書長に昇格するまでの10年以上、瀋陽の様々なハイテク区の発展をリードしてきた。

2019年11月に北京近郊の主要工業都市の副市長として天津に赴任し、その5カ月後に現職に昇格した。

■周紅波(Zhou Hongbo、1970年-、50歳)

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周紅波は2021年1月、南部の海南省にある有名な観光都市である三亜の党委書記、省党常務委員に任命された。

海南省に赴任する前は、主に出身地である広西チワン族自治区で仕事をしていた。農業の専門家であり、同自治区の農業部門を経て、広西チワン族自治区の州都である南寧市の副市長に昇進した。そして、2011年、南寧市長に就任した。

2020年12月に海南省に移動し、1か月後には現在の地位に就いた。

■李雲沢(Li Yunze、1970年-、50歳)

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東部の山東省出身の李雲沢は、2021年5月に四川省の党常務委員と南西部地区担当の副省長に昇格した。

土木工学とマルクス主義理論の学位を持つ李雲沢は、山東省の劉強と同じく、国営の中国建設銀行で20年以上働いた。2016年、中国最大の国有銀行である中国工商銀行(Industrial and Commercial Bank of ChinaICBC)の副頭取に転出した。

彼は銀行を離れ、2018年に四川省副省長に就任した。現在の党職への昇進はそれから20カ月後のことだった。

■夏林茂(Xia Linmao、1970年-、51歳)

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夏林茂は、2021年2月に北京市教育委員会主任と北京市党常務委員に就任した。

清華大学を卒業し、建築を専攻した夏林茂は工学博士号を取得している。 北京の都市計画委員会で20年近く過ごし、2011年に北京市石景山区長に昇格した。

教育担当の前に、2017年に北京市美雲区、2018年に東城区の党委書記をそれぞれ務めた。

■劉捷(Liu Jie、51歳)

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劉捷は2016年5月に東南部の江西省党常務委員会に入り、省党委員会秘書長を務めた。1970年代生まれの政府高官として初めて省党常務委員に就任したことになる。

2018年5月に南西部の貴州省に異動し、同省の常務委員と常務委員会秘書長に就任した。2020年7月には、貴州省の幹部人事を担当する省党組織部長に昇格した。

劉捷は北京科学技術大学冶金学科を卒業し、共産党創立者の毛沢東が生まれた湖南省中部の湘潭市の国有製鉄所で16年間勤務した。

2008年に湖南省商務庁長に昇進し、2011年に江西省新余市の市長に転出した。

時光輝Shi Guanghui、1970年-、51歳)
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時光輝は2018年11月、南西部貴州省の省政法委員会書記と省党常務委員に就任した。

東部の安徽省に生まれた時光輝は、上海の同済大学道路交通工学科を卒業後、上海市工程建設発展有限公司(Shanghai Municipal Engineering Construction Development Co., Ltd.)で15年間勤務した。2005年には上海市工程管理局副局長に就任した。

2006年から2011年まで上海市江南区と奉賢区で指導的立場を務め、2013年に上海市副市長に就任した。

2018年に貴州省に赴任し、現職に就任した。

その他の人々も見ていく。

以下のメンバーは、現在、地方の党常務委員ではないが、重要なポストを歴任しており、また、党内の出世競争で先頭走者であり、将来の指導者候補と目される人物である。

■郭寧寧(Guo Ningning、1970年-、50歳)

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郭寧寧は2018年から東南部の福建省の副知事を務めている。1970年代に生まれた女性党員で唯一、地方の指導者階級に到達している。彼女は地方政権に入る前に、中国銀行と中国農業銀行で豊富な銀行経験を積んだ。

■覃偉中(Qin Weizhong、1971年-、50歳)

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覃偉中は中国のハイテク産業の「首都」である深圳市の最年少市長に、2021年5月に正式に就任した。名門清華大学を卒業し、現在の中国共産党中央組織部長の陳希(Chen Xi、1953年-、68歳)の子飼いとして広く知られている。

■周亮(Zhou Liang、1971年-、50歳)

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周亮はキャリアの最初で現在国家副主席を務める王岐山の筆頭秘書を務めていた。2018年3月には中国の金融部門の監督機関である中国銀行保険監督管理委員会(China Banking and Insurance Regulatory CommissionCBIRC)の副主席に就任した。

■李欣然(Li Xinran、1972年-、49歳)

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李欣然は、そのキャリアのほとんどを中国共産党の反腐敗組織で過ごした。現在、中国銀行保険監督管理委員会(CBIRC)の懲戒部長を務めており、中国共産党の懲戒機関である中央紀律検査委員会を率いる最有力候補と目されている。

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北京の指導者「第7世代」が表舞台に登場しつつある(Beijing's "seventh generation" of leaders emerges onto stage

この記事では1970年代生まれの高官たちを取り上げる。彼らの中の1人が習近平から統治を引き継ぐことになるだろう。最高指導者である習近平は中国共産党総書記の座に2032年までとどまり、国家主席には2033年までとどまることが可能だ。10名の高官たちが党のトップの地位に就くために有利な位置にいる。将来の指導者たちに習近平がまず求めるのは「政治的道徳性(political morality)」である。

林和立(ウィリー・ウー=ラップ・ラム)筆

『アジア・ニューズ』誌

2019年4月19日

https://www.asianews.it/news-en/Beijings-seventh-generation-of-leaders-emerges-onto-stage-46812.html

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北京(アジア・ニュース)発。習近平が政権を去る決意をした時、誰にその遺産を渡すのだろうか。2018年3月、中国の「指導部の中枢(heart of the leadership)」は憲法を改正し、国家主席の任期の制限を撤廃した。 2020年半ばには、中国共産党「第6世代」の高官の多くが引退を始める。従って、中国の将来の多くは、1970年代生まれの「第7世代(7G)」に属する高官の手に委ねられる。これは、香港中文大学教授で、中国に関するいくつかのエッセイの著者である林和立(ウィリー・ウー=ラップ・ラム)が支持するテーゼである。その中で、習近平の後継者として期待される新星たちを紹介している。

●導入-第7世代は次の権力者となりうるのか?

中国の将来のほとんどは1970年代生まれの幹部たちの手に握られている。彼らは中国共産党「第7世代(Seventh Generation7G)」に所属している。2018年第4四半期、彼らの中から15名ほどが副省長、行政部の副部長、その他同等の地位といった主張な地域的な重職へと昇進した。習近平国家主席が2018年3月に憲法を改正し、国家主席の任期を撤廃したことで、習近平は健康状態が許す限り、80歳になる2032年まで党総書記を、2033年まで国家主席を務める可能性が出てきた(Asia.Nikkei.com:2019年3月15日、香港自由新聞:2018年2月25日)。このことは、習近平が中国共産党指導部のいわゆる「終身核心(eternal core)」として、いずれ第7世代にバトンタッチする可能性を提起している。

1980年代に「改革の偉大な設計者(Great Architect of Reform)」鄧小平(Deng Xiaoping、1904-1997年、92歳で死)が確立した継承方式に従い、「第3世代の核心」江沢民(Jiang Zemin、1926年-、95歳)元国家主席は2002年の第16回党大会で第4世代の胡錦濤(Hu Jintao、1942年-、79歳)に政権を譲り渡した。胡錦濤前主席は2期10年を務めた後、2012年の第18回党大会で第5世代代表の習近平に政権を委ねた。もし習近平が中国共産党の最近の慣例に従うなら、習近平と現在の政治局常務委員の大半は1950年代生まれであり、1960年代生まれの第6世代(sixth generation6G)の幹部が後継者となるはずである。しかし、習近平が2032年の第22回党大会まで党の最高幹部を務めるとすれば、1960年生まれの新星は72歳であり、中国共産党政治局常務委員会の定年である68歳を4年過ぎていることになる[1]。従って、現在25人いる政治局員のうち、胡春華副総理(Hu Chunhua、1963年-、59歳)や陳敏爾重慶市党委書記(Chen Min’er、1960年-、61歳)など、第6世代の有力者は、習近平の後継者候補から既に外れたようである。

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胡春華
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陳敏爾

第22回党大会はまだ13年先であり、第7世代の幹部たちは現在、次官級のポストにしかいないため、誰が次期総書記の政治的手腕と持続力を備えているかを推測するのは時期尚早だ。しかし、大臣クラスの幹部は通常65歳で引退することから、第6世代所属の幹部の多くは2020年代半ばには引退時期を迎えることになる。2018年7月に開催された党組織に関する全国会議で、習主席は「喫緊の要求と長期的な戦略的ニーズに基づき、指導者に関して全ての地域と部門で特定量の優れた若手幹部を育成すべきだ」と指摘した(中国新聞社:2018年7月10日、中国青年報:2018年7月10日)。最高指導者の指示は、その1週間前に開かれた、中国の特色ある社会主義の新時代に向けた「質の高い若手幹部の発掘、伝播、昇格」を目的とした政治局会議の後に出されたものである。政治局は、党指導部の若返りは「国家の長期統治と永続的な安定という目標だけでなく、党の事業に取り組む後継者を確保するための主要な戦略的任務」だと指摘した(新京報:2018年6月30日、新華社:2018年6月29日)。

●中国共産党第7世代の新進気鋭の人物は誰なのか?

1970年代前半に生まれた10人の官僚(図参照)は、その大半が2018年半ば以降に昇進しており、中国共産党の官僚競争の狡猾な回廊の特徴である地位争いで優位に立っているようだ。工業、工学、金融などの経歴を持つこれらのテクノクラート的な新進気鋭の官僚は、ほとんどが地方行政官として活躍している。この10人のうち、省・直轄市の常務委員(常委[changwei]Member of the CCP Standing CommitteeMSC)に就任したのは3人だ。その3人とは 劉捷(1970年-)は貴州省党委員会の常務委員と秘書長、諸葛宇杰(1971年-)は上海市党委員会の常務委員と秘書長、時光輝(1971年-)は貴州省党委員会の常務委員で、「安定維持(stability maintenanceweiwen、維穏)」の重要政策を含む政法業務担当をそれぞれ務めている。中国には、党委員会、特に党常務委員(changwei)が政策を決定し、それを同じレヴェルの政府組織が実行するという慣行が長く続いている。よって、ある地域の共産党委員会の常務委員(changwei)は、同じ省・市の副省長や副市長よりも上位に位置する。それは副省長や副市長は常務委員にはまだ就任していないかもしれないからだ(Apple Daily [Hong Kong]:2019年3月25日、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:2019年1月5日、Jiangsu.sina.com:2019年1月2日、China Economics Net:2018年12月10日)。

●チャート:中国共産党「第7世代」指導部の主要な台頭しつつある指導者たちChart:

2016年11月、劉捷は46歳で江西省の党常務委員に就任し、第7世代のリーダーとしての記録を打ち立てた。2000年、劉は30歳の若さで湘鋼第二製錬廠の董事長(社長)に就任し、湖南省の鉄鋼業で頭角を現した。2011年に江西省に赴任し、新余市長に就任した。その5年後、江西省委員会の常務委員と秘書長に就任し、劉は大ブレイクを果たした。2018年半ばには貴州省に赴任し、省委員会の常務委員と秘書長に就任した(『新聞[上海]』:2018年5月17日、『捜狐.com』:2018年5月17日)。諸葛宇杰も時光輝も、上海の国営企業でエンジニアとしてキャリアをスタートさせた後、地方の県や都道府県にほぼ相当する市区の行政官となった。諸葛は上海の海事技術部門を経て、楊浦区の党委員会のメンバーに昇進した。45歳で上海市党委員会弁公庁主任となり、昨年、秘書長に昇格した(『聯合早報』[シンガポール]:2018年11月21日、Baidu News:2018年11月20日)。時光輝は上海の名門同済大学を卒業後、15年間、市公共事業当局のさまざまな部署でエンジニアや管理職として働いてきた。上海市静安区の副区長になると、行政に転身した。2011年には奉賢区の党委書記に、2013年には上海市の複数の副市長の1人にまで上り詰めた。2018年末には貴州省の党常務委員に就任した(Phoenix TV :2017年4月24日、Caixin.com:2017年4月24日)。

第7世代の第2グループとしては、主要な省の5人の副知事で構成されている。郭寧寧(1970年-)は、次官相当まで上り詰めた数少ない40代女性の1人である。遼寧省出身で清華大学を卒業後、46歳で中国農業銀行副頭取に就任し、銀行業界でキャリアを積んだ。彼女は2018年末に福建省副省長に就任した。習近平主席が17年間地方行政官として過ごした福建省を担当しているということは、昇進の見込みという点では有利に働く可能性がある(新北京報:2018年11月23日)。今回の第7世代幹部の中で最も若い楊晋柏(Yang Jinbo1973年-)は、エネルギー分野でその技術力と管理能力を証明した。陝西省出身の彼は、41歳で中国南方電網公司の副総経理に上り詰めた。昨年、広西チワン族自治区に赴任し、副主席(副省長相当)の1人に任命された。幹部が最高指導部を目指す場合、少数民族と働いた経験が大きなプラスになるとされることが多い(Caixin.com;2018年11月29日)。

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楊晋柏

他に第7世代で副省長を務めるのは、李雲沢(1970年-)、劉強(1971年-)、費高雲(1971年-)で、それぞれ四川省、山東省、江蘇省にいる。劉強は、「金融の魔術師(financial wizard)」と呼ばれ、中国人民銀行、中国建設銀行、中国工商銀行を経て、2016年に世界最大の銀行である中国工商銀行(Industrial and Commercial Bank of China ICBC)の副頭取に就任した。その後、昨年になって、8人いる副省長の1人として四川省に異動した(『人民日報』:2018年9月30日)。福建省の郭と同じく、劉は中国農業銀行で革新的な経営者として頭角を現した。中国銀行の副総裁を短期間務めた後、2018年9月に山東省に移った(Caixin.com:2018年9月14日)。江蘇省出身の費高雲はキャリアのほぼ全てを地元江蘇省の草の根レヴェル、地域レヴェルの行政ポストで過ごした。彼は2017年に大都市常州市の党委書記に上り詰めた後、中国で最も豊かな省の1つである江蘇省の副知事に任命された(Caixin.com:2018年1月31日)。

国務院をはじめ、中央政府には第7世代のメンバーはほとんどいない。これは、習近平主席が国家より党の優位性を主張し、重要な政策は中央と地方の両方で中国共産党幹部が決定することを反映しているのだろう。これまで、第7世代のメンバーは2人確認されている。いずれも国務院の最重要監督機関の1つである中国銀行保険監督管理委員会(China Banking and Insurance Regulatory Commission CBIRC)に所属している。周亮(Zhou Liang、1971年-)は同委員会の6人の副主席の1人である。李欣然(Li Xinran、1972年-)は、CBIRCの規律検査部部長を務めている。周と李はともに、中国の最高レヴェルの反腐敗機関である党中央規律検査委員会(Central Commission for Disciplinary Inspection CCDI)を務めた経験がある(華夏時報:2018年11月19日、証券時報:2018年3月21日).

●第7世代のその他の有望な台頭する人物たち

第7世代指導者のうち、党内ヒエラルキーへの昇格を急ぐ人物たちとは別に、現在、大衆組織や統一戦線組織など、政治的に敏感でない分野で活躍している人物にも注目すべき点がある。共産主義青年団(Communist Youth League CYL)中央委員会常務書記の汪鴻雁(Wang Hongyan、1970年-)はその好例である。汪鴻雁は湖北省の地方行政で成果を挙げ、2008年に共青団の最高幹部となった。習近平国家主席が共青団を馬鹿にするような発言をしたことはありつつも、彼女が主に貢献するのは青年関連の仕事となるだろう(China-onway.com:2019年2月20日)。アメリカで学んだ弁護士の李波(Li Bo、1972年-)は、2004年に中国に帰国後、中国人民銀行法務部、金融政策部などで急成長を遂げ、昨年、中国人民銀行副総裁に就任した。昨年、華僑の間で中国のイメージを高めることなどを使命とする「中華全国帰国華僑連合会(All-China Federation of Returned Overseas Chinese、中全国华侨联合会)」の副会長に就任した(Finance.caixin.com:2018年9月14日)。
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汪鴻雁

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李波

●習近平が設定する必要条件は「政治的道徳性」

習近平は2012年末に中国共産党総書記に就任して以来、自らの権力拡大の過程で、習近平が個人的に知っている、最高指導者への無条件の忠誠を公言している幹部たちを最高幹部に登用してきた。いわゆる「習一族軍(Xi Family Army)」は、習近平が福建省(1985-2002年)、浙江省(2002―2007年)、上海(2007年)で地方統治を担当した際の部下や仲間で構成されている。その他の習近平の子飼いは、かつての同級生や故郷の陝西省に関係する官僚である(チャイナ・ブリーフ:2018年2月13日)。しかし、第7世代の新進リーダーたちは、党の「最高指揮官(zuigaotongshuai、最高统帅)」と個人的なつながりがあることが知られている者はほとんどいない。しかし、習近平が定めた2つの重要な昇格基準をクリアしていることは重要である。1つ目は、「専門能力と道徳を兼ね備え、道徳を優先すること(decai jianbei, yide weixian / 德才兼以德先)」である。習近平は最近、党の理論誌『真理探究』に発表した論文で、「忠誠心があり、道徳的に清潔で、責任を取れる質の高い幹部を育成する(nurture a corps of high-quality cadres who are loyal and [morally] clean, and who can take up responsibilities)」と誓った。習近平は「道徳(morality)」の問題について、「政治道徳、職業道徳、社会道徳、家庭道徳(political morality, professional morality, social morality and family morality)が含まれており、幹部たちはこれらの面で合格しなければならない」と述べた。最重要なのは、政治的道徳の面で合格しなければならないということだ」(人民日報:2019年1月16日付、人民日報:2019年1月6日)と述べている。

第7世代の幹部の大半は金融や工学などの専門資格を十分に有していることから、習近平の厳しい専門能力要件(stringent requirements on professional capability)を満たすのに最適な人材であると思われる。第7世代の幹部の多くが銀行経験者であることは、国家の社会負債総額がGDPの約3倍と推定される現在、習指導部が財政に慎重であることを反映していると思われる(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:2019年2月15日)。習近平は2016年の演説で、幹部たちに「新発展概念(new development concepts)」をしっかりと身につけるように促した。これらの概念は、「新発展概念には、時代の特徴が詰まった新しい知識、新しい経験、新しい情報、新しい要件が含まれるため、知的・専門的な要件を指す」と指摘した(人民日報:2016年1月3日)。中央党校の王東起教授によると、「幹部の専門的心構え、専門的達成度、専門的能力の能力とレヴェルを絶え間なく高める」ことは、幹部がより高い政治的地位を獲得し、より多くの政治的責任を負うことにもつながる(『人民日報』201897日)。

先月開催された全国人民代表大会と中国人民政治協商会議では、各級幹部は「習近平同志を核心として、党中央の下でさらに強固に団結する」よう求められた(チャイナ・ブリーフ:2019年3月22日)。習近平とその側近が「政治的道徳性(political morality)」と「党の核心(party core)」への忠誠を同一視しているとすれば、習近平への忠誠を表明することは、職業上の追求と行政の両方で最高のパフォーマンスを発揮することにも取って代わるかもしれない。つまり、習近平が「五湖四海(five lakes and the four seas)」の出身者たち、つまり、経験も派閥のつながりも多様でなければならないという公約を守るかどうかにかかっている(Youth.cn:2015年5月19日)。

※林和立(ウィリー・ウー=ラップ・ラム、Willy Wo-Lap Lam)博士:ジェイムズタウン・ファウンデイション上級研究員、『チャイナ・ブリーフ』定期寄稿者。香港中文大学歴史学部中国研究センター・国際政治経済プログラム修士課程非常勤教授。中国に関する5冊の著作があり、『習近平時代の中国政治』(2015年)がある。

脚注

[] 中国共産党綱領には、総書記の在任期間に関する規定がない。また、国の最高統治機関である政治局常務委員会の委員の定年についても何も書かれていない。しかし、5年ごとの党大会の開催時に、68歳に達した幹部は政治局員になれないという慣例は、よく守られている。しかし、総書記については例外がある。1997年の第15回党大会では、当時71歳だった江沢民が5年間、党委員と総書記を兼任することを許可された。

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