古村治彦です。


 今回は、日本政治についての私の雑感を書きます。


 私は、日本政治の現実を、「米政翼賛会(U.S. Rule Assistance Association in Japan)」という言葉を使っています。この「米政翼賛会」という言葉は、私の造語です。戦前から戦中にかけて、日本に存在した政治組織「大政翼賛会(Imperial Rule Assistance Association)」をもじって作りました。


 2013年から現在にかけて、日本の政治は、アメリカの意向を反映する政治勢力しか存在しない状況にあります。政党は数多くありますが、そのほとんどはアメリカの意向を反映する政党です。こうした状況は、2012年の総選挙、2013年の参議院議員選挙を通して生み出されました。


 現在は、自民党と公明党が連立を組んで与党となっています。民主党、日本維新の会、みんなの党、共産党、生活の党、社民党、結いの党、新党大地といった政党が野党となっています。


 しかし、よく見てみると日本維新の会、みんなの党、結いの党は、与党の補完勢力になっている、半分与党(ゆ党と言うのだそうです)のような存在です。結いの党はできたばかりですから、まだ評価するのは難しいですが。


 私は、自公維み結に加えて民主党の一部が米政翼賛会を形成していると考えています。これはあまりに大雑把な考えである、と批判される方もいらっしゃると思います。しかし、2013年の政界の動きを見てみれば、自公の組み合わせがほころぶことはなく、安倍首相は日本維新の会の橋下徹代表やみんなの党の渡辺喜美代表との関係も悪くなく、特定秘密法案の採決時には協力を取り付けています。


 そして、2013年12月に江田憲司氏が率いる結いの党ができました。これは色合いとしては、ややリベラル的な感じがある政党です。この少し前に、アメリカのジョセフ・バイデン副大統領のアジア歴訪、キャロライン・ケネディ駐日米大使の着任といった出来事がありました。私は、こうした動きに合わせて、結いの党ができたと考えています。右がかった、ナショナリスティックな自維みに対するカウンター、バランスを取る存在としてアメリカが作らせたものと考えています。結いの党を作った江田氏は、日本維新の会の松野頼久代議士、民主党の細野豪志代議士らと「既得権益を打破する会」を作っています。そして、設立の会では、ローソンの新浪剛史社長が講演をしています。私はここら辺の人脈が非常に重要だと考えています。そして、このことを2014年1月21日発売の新刊『ハーヴァード大学の秘密』(古村治彦著、PHP研究所)で書いています。


 結いの党については、色々と批判や懸念があるようですが、私はアメリカの意向もあって、しばらくは堅調に(少しずつではあっても)、党勢を維持し、政界の一部の再編において中心的な存在になるのではないかと思います。日本維新の会の中に分裂があることは既に知られていますが、松野氏らが合流することも考えられます。


 民主党は2012年の州銀議員選挙、2013年の参議院議員選挙で大きく党勢を後退させました。そして、党内には、自民党に移籍した方がすっきりするような議員たちが数多く残るというような状況になっています。民主党が自公に対抗する軸とはならず、分裂もあるのではないかと私は考えています。


 ここまでごちゃごちゃと書きましたが、私が申し上げたいのは、日本の政治状況は、右がかった勢力とそうではない勢力があるが、どちらもアメリカの意向で動いているということです。アメリカの意向で動いているというところから、私は「米政翼賛会」という言葉を考えました。


 これは例えて言うと、アメリカという人形遣いがいて、両手に人形(パペット)をはめて動かしています。人形たちは互いに別個の存在で、争っているように見えますが、要は人形遣いに動かされているだけで、人形遣いの意のままに動いているだけに過ぎません。パペットマペットというお笑い芸人がいますが、その人のネタを思い出していただけると分かりやすいかと思います。



 1942年の第21回総選挙では、大政翼賛会(翼賛政治体制協議会)の推薦候補と非推薦候補 466の定数のうち、推薦候補381、非推薦候補85を獲得しました。非推薦候補の得票は合計すると約35%を得ています。現状の米政翼賛会の議席は、戦時中の大政翼賛会(翼賛政治体制協議会)の議席数よりも大きくなっています。私は現状は戦前、戦中よりも悪くなっていると考えます。


この米政翼賛会にとっての最大の目標は、日本国憲法の改正です。そのためには、衆議院と参議院で共に3分の2以上の賛成を得る必要があります。この数を確実に押さえることが米政翼賛会の目的です。


 この米政翼賛会の中で、憲法改正に直面して、一番動揺しそうなのが公明党です。憲法9条改正に関して賛成に回れるかどうか、はっきり分かりません。ですから、たとえ公明党が脱落しても3分の2以上を両院で押さえることが重要です。


 そのために2016年に衆参ダブル選挙が行われるのではないかと私は考えています。憲法改正、憲法9条改正についてはさすがに国民も慎重だと思いますが、現在の政治状況で、それに確実に反対する政党の勢力が余りにも小さ過ぎます。民主党には自民党や日本維新の会に移籍した方が良いのではないかという議員も結構いますので、確実に反対しそうなのは、共産党、社民党、生活の党、新党大地くらいのものです。これらのうち、共産党を除いて、次の選挙までに確実に存続し、党勢を拡大しているのかどうか分からないという残念な状況です。これは、ジャパン・ハンドラーズの一人、マイケル・グリーンが論文で書いたように、リベラルを存在させないための策動が働いたからです。私は、2012年の総選挙前の日本未来の党、嘉田由紀子氏や飯田哲也氏の動きは実はそうしたグリーンの意向に合わせた動きであったのではないかと今でも疑っています。


 日常として現状に慣れてしまうとそれが当たり前になってしまいます。今の政治状況が当たり前になってしまうのは大変危険であると私は考えます。それを疑い、自分で考え判断していくことが重要であると考えます。そして、かなり状況が悪くなっていても、それでも諦めずに民主政治体制の中で認められた方法で政治に関わって、状況を変えるべく努力していくことが重要なのだと私は考えています。


(終わり)