ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 前回、ご紹介したように、次期米軍制服組トップの統合参謀本部議長ダンフォード海兵隊大将に続き、副議長となるポール・セルヴァ空軍大将もロシアを「アメリカの存在にとっての脅威」と発言しました。

 

 脅威を殊更に大げさに強調することは軍人の予算獲得や権限獲得の手段ですが、これに危険な考えを持つ文民が一緒になると一気に戦争準備が進んでしまいます。それは日本でもアメリカでも同じですね。

 

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さらに多くの将官が「ロシアがアメリカにとっての“存在を揺るがす脅威”」となるという主張に同調(More Pentagon Generals Line Up to Proclaim Russia’s ‘Existential’ Threat to U.S.

 

ポール・マクリー筆

2015年7月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/07/14/more-pentagon-generals-line-up-to-proclaim-russia-existential-threat-to-u-s/

 

 さらに多くの米軍の将官たちが、ロシアがアメリカにとっての「存在を揺るがす脅威」であるという主張に参加している。国防総省の最高幹部に指名された2人の将官が「ウラジミール・プーティン大統領率いるロシアは現在アメリカが直面している最大の脅威だ」という主張に同意している。

 

 アメリカ空軍大将ポール・セルヴァはバラク・オバマ大統領から次期米軍統合参謀本部副議長に指名された。セルヴァは火曜日の連邦上院軍事委員会に出席し、「現在のアメリカの脅威は次の順番だと私は考えます。ロシア、中国、イラン、北朝鮮、アルカイーダに代表されるイデオロギーを中心とする全ての組織です」と発言した。先週連邦上院軍事委員会に出席した、オバマ大統領から次期米軍統合参謀本部議長に指名されたジョセフ・ダンフォード海兵隊大将も同じ順番で脅威となる国々を挙げた。

 

 2015年7月9日に行われた連邦上院軍事委員会の人事承認のための公聴会で、ダンフォードは、最近のウクライナと東部ヨーロッパにおけるロシアの行動は「警戒を要するもの」であり、「ロシアはアメリカの国家安全保障にとっての最大の脅威であり、アメリカの存在を揺るがす脅威となり得る」と語った。

 

 ジョン・マケイン連邦上院議員はセルヴァ大将に対して、テロリスト組織を脅威の最後に挙げた理由を鋭く質問した。これに対して、セルヴァは、テロリスト組織はアメリカ国内において脅威ではないからだと答えた。セルヴァは次のように語った。「現在のところ、イスラム国は我が国土と我が国に対して明確な脅威となっておりません」。

 

 一方、ロシアは最大の脅威である。セルヴァはその理由について、「ロシアの軍事力は、彼らがそう望むならば、アメリカの存在を揺るがす脅威となる」からだと語った。

 

 

主要6各国とイランが最低10年間の核開発停止の合意に達したこの日に、セルヴァは、イランに対する経済制裁の解除と1000億ドルを超えるイラン資産の凍結解除によって、「イランがそのように選択するならば」、彼らはヒズボラのようなテロ組織により多くの資金や物資を与えることが出来るようになるとも発言した。

 

 詳細について語ることは拒絶したが、セルヴァは「アメリカは、イランが台頭してくるならばその脅威に対応するためにいくつかの可能な選択肢を用意する必要があります」と語った。

 

 マケインは連邦上院軍事委員会に出席し、発言した。発言の冒頭、マケインはダンフォードとセルヴァが挙げたアメリカにとっての脅威のリストには驚かされたと述べた。マケインは自身が考える脅威のリストは「イスラム国家のテロリスト軍団、イランの核兵器開発、イランが周辺諸国を不安定化させる試み、修正主義ロシアのウクライナ侵攻、中国の軍事力増強と周辺諸国への攻撃的な態度」だと述べた。

 

 米軍輸送指令本部司令官ダレン・マクドュー空軍大将はセルヴァと共に公聴会に出席した。マクドューは脅威のリストの一番上にサイバー攻撃を挙げた。彼はその理由として協調して広範囲に対して行われるサイバー攻撃によって、アメリカ全土の輸送インフラは一斉に停止してしまう危険があると述べた。

 

 マクドューと同じ分析をしているのがジェイムズ・R・クラッパー米国家情報長官だ。2015年2月にクラッパーは議会で証言を行い、その際、アメリカのインフラに対するサイバー攻撃は国にとっての最大の脅威だと述べた。

 

(終わり)

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海兵隊の将官がジョン・マケインのイスラム国に対する怒りのボタンを押した(Marine General Pushes John McCain’s Buttons on Islamic State

 

ポール・マクリー筆

2015年7月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/07/23/marine-general-john-mccain-islamic-state/

 

 連邦上院議員ジョン・マケインは木曜日の朝、米海兵隊の次期司令官候補に対して激怒した。この人事に関する公聴会の終了間際、マケインはこの将官に対して、「イスラム国に関する貴官の回答の多くに私は失望している」と述べた。

 

 ロバート・ネラー米海兵隊中将は、連邦上院軍事委員会に出席して、海兵隊大将ジョセフ・ダンフォードから交代して海兵隊司令官になるにあたっての質疑応答を行った。ジョセフ・ダンフォードは次期米統合参謀本部議長に内定している。

 

 しかし、ネラーの回答に関して、連邦上院議員リンゼー・グラハムを困惑させ、更に公聴会の委員長を務めていたジョン・マケインを激怒させ、ネラー中将に対して、イスラム国に関する講釈を行う一幕もあった。ネラーは公聴会で、イラク軍と諸国連合の空軍によって「イスラム国は現在のところ頭打ちの状況に陥っている」と述べたが、それにマケインが激怒したのである。

 

 マケインは海兵隊中将ネラーに対して大声で、イスラム国はラマディとファルージャのようなイラク国内の主要な大都市を制圧し、イラクとシリアの大部分を支配しているのだと叱責した。アリゾナ州選出連邦上院マケインは、「私は貴官が今までどこにいたのかは知らないがね、イスラム国は明らかにイラクを制圧しつつあるんだぞ」と批判した。

 

 ネラーは、2005年から2007年にかけて、イラクのアンバール州に派遣された米海兵隊の海外遠征部隊の副司令官を務めた。この部隊はスンニ派が支配する地域に派遣された。

 

 マケインはネラー中将の考えをさらに掘り下げるために、公聴会の後に文書で更なる質問をすると述べた。マケインはネラーに対して次のように述べた。「ファルージャとラマディで私たちは多くの素晴らしい海兵隊員を失ったのだ。グラハム議員と私は、我が国の青年たちが戦っている現場に実際に行ったのだ。私たちは必要なことはなさねばならない。率直に言って、私たちは若者たちが捧げた犠牲に関して感謝を忘れてしまっている」。

 

 次期統合参謀本部議長に内定しているダンフォード海兵隊大将、副議長に内定しているポール・シルヴァ空軍大将、陸軍司令間に内定しているマーク・マイリー陸軍大将は、議会での公聴会で、現在のところ、アメリカにとっての最大の脅威はロシアだと証言した。ネラーは、こうした制服組のトップとはいささか異なる見解を述べた。ネラーは潜在的に敵対勢力になり得る中でロシアが最大の軍事力を有していることは疑う余地はないとしながらも、「アメリカにとっての最大の脅威は急進的な過激主義だ」と述べた。

 

 ネラーは「現在のところ、急進的な過激主義の組織が私たちと戦いたいと望んでいるとは思いません。彼等は私たちを殺したいと望んでいます。彼らの武力はそこまで大きくないですが、彼らの意図は脅威です」と述べた。ダンフォード、セルヴァ、そしてマイリーは全員、ロシアがアメリカの「存在を脅かす」存在であると述べた。

 

(終わり)







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