古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:経済

 古村治彦です。

 このブログで、世界規模で新型コロナウイルス感染の収束傾向が進み、それによって経済活動が活発化していく結果としてインフレーション率が高まっていることを昨年からずっと紹介してきた。アメリカでの物価高騰の記事を何度もご紹介してきた。

 日本に暮らす私たちも物価高騰の影響を感じている。清貧の価格は変わらない久手も内容が減っているということはよく見かけるようになった。飲料で言えば、昔は1リットル、500ミリリットルで売られていたものが同じ値段で900ミリリットル、450ミリリットルになって売られているということもある。英語ではこれを「シュリンクフレーション(shrinkflation)」と言うのだそうだ。「shrink」という単語は「縮む、小さくなる、少なくなる」を意味する。インフレーション(inflation)やデフレーション(deflation)のような、よく使われる言葉ではないが、日本の現状を良く表現している。シュリンクフレーションが進んでいる日本で値上げが続いている。これは一般国民の生活を直撃し、経済状態を悪化させるものだ。

 物価の上昇率よりも賃金の上昇率の方が高ければ、生活は苦しいということはない。しかし、賃金がほとんど上がらない中で物価だけ上がり続ければ、生活はどんどん苦しくなる。スタグフレーションという状態になるのが怖いが日本は既にスタグフレーションなのではないか。物価上昇の原因は世界的な実物資産の価格高騰、具体的には石油価格の高騰や食料価格の高騰がある。これに加えて円安が進行していることも挙げられる。2022年4月28日には1ドル、130円を突破したが以下に掲載したグラフのようにこの円安は非常に急激に起きたものだ。

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ドル円チャート(2021年4月から2022年4月)

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 ドル円チャート(2000年から2022年)

 日本銀行の黒田東彦総裁は就任以来、日本政府の意向もあり、「年率インフレ率2%達成」をお題目のように唱えてきた。しかし、その実現には至っていない。日本の憲政史上最長となった安倍晋三政権下では「アベノミクス」で経済成長を目論んで、異次元の財政支出を行ったがうまくいかなった。「経済成長の結果としてインフレーション」ということを逆転させて「インフレーションを起こせば結果として経済成長(リフレ、インタゲ論)」という大きな間違いを犯した結果と言える。

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日本のインフレ率(2000年から2020年) 

 現在、輸入物資の価格高騰(新型コロナウイルス感染拡大からの回復とウクライナ戦争が重なった)と急激な円安で日本国内のインフレ率は2%を軽く達成しそうな勢いである。しかし、これは日本政府や日銀が意図した「インフレ」ではない。インフレーションには需要が高まることで起きる「デマンドプッシュ型」とコストが上昇することで起きる「コストプッシュ型」があり、現状は「コストプッシュ型」だ。経済が好調なので人々の需要が高まってのものではない。

「円安は日本にとって素晴らしい」ということを私も小学生の時に刷り込まれた。先生が黒板に日本で作った自動車が100万円として、それをアメリカで売る場合のドル換算した価格の図を描いて、「円安になればドルでの価格表示が安くなるので売れやすくなって利益が大きい」「海外から資源や材料を買ってきて日本で製品にして売る、これを加工貿易と言う」ということを説明してもらったと思う。しかし、私が小学生だった1980年代から日本経済は大きく変容し、外需頼みの国から内需頼みの国になった。GDPに占める輸出の割合は2018年の段階で18%だった。先進諸国の中でこの割合は低い方だ。

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輸出がGDPに占める割合(2018年)
 日本経済の現状は非常に厳しい。急激な円安の進行を止めることだ。そもそも貨幣価値の乱高下は好ましくない。また輸入物資の価格の引き下げは日本一国でできることではない。新型コロナウイルス感染拡大からの回復途上での経済回復のための物価高は仕方がないが、ウクライナ戦争による物価高に関しては一日も早い停戦によって改善が見込まれると思う。しかし、現状はとても厳しいと言わざるを得ない。

(貼り付けはじめ)

日本はようやくインフレーションを達成する-しかしそれは間違った種類のものだ(Japan Finally Gets Inflation—but the Wrong Kind
-数十年にわたりデフレーションとの戦いの後、世界規模の物価上昇は政治的な懸念の原因となっている

ウィリアム・スポサト筆
2022年4月25日
『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/04/25/inflation-japan-deflation-economy/

現在の日本の中央銀行のトップは非常に忍耐強い人物である。黒田東彦は9年前に日本銀行総裁に就任した際、世界第3位の経済大国である日本から、1990年以来ずっと成長を鈍化させてきたデフレーション圧力を取り除くと公約した。日銀の目標は、賃金と消費意欲を高める2%のインフレ率を作り出すために十分な資金を投入することであった。

商品価格のインフレーションが世界的に警鐘を鳴らしている中、ついに目標達成の見通しが立ったようだ。最新のデータは非常に不安定ではあるが、エコノミストたちは、日本が今後数ヶ月のうちにようやく2%のインフレーション率、場合によってはそれ以上のインフレーション率を達成し始めると予測している。

今のところ、この数値は世界的に見ても控えめなものとなっている。アメリカの2022年3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.5%上昇し、1981年以来最も高い上昇率となったが、日本の指数はわずか1。2%上昇にとどまった。しかし、これには携帯電話業界を事実上支配している3社のカルテルに対する政府の取り締まり後、携帯電話料金が52.7%下落したことが含まれている。

その他の数字も、日本の基準からすると目を見張らせるものだった。エネルギーコストは20.8%上昇し、1981年以来最も急な上昇となり、食用油は34.7%上昇した。卸売物価の指標である企業物価指数は、ウクライナの悲惨な状況もあって、2022年3月には前年同月比で9.5%上昇した。

全体として、エコノミストたちは、様々な一時的要因を平準化した後の基礎的なインフレーション率は、現在、日銀が設定した目標の2%程度であると見積もっている。しかし、誰も喜んではいないように見える。2022年6月の選挙を控え、政府は最も影響を受ける人々への補助金制度を実施するために奔走しており、日本円は急激に下落している。しかし、黒田総裁は、コスト増は短期的な問題であり、総裁が設定した目標を妨げるものではない、と平然としているように見える。

日本にとって、20年以上にわたるデフレーションのもたらしてきたコストは明らかである。しかし、多くの日本人が気づいていないのは、世界の国々は絶対額で豊かになっているのに、日本だけはほとんど変わらないということだ。OECDのデータによると、過去30年間の年間平均賃金の上昇率はわずか3%であるのに対し、米国では47%も上昇している。物価も同じような軌跡をたどっている。東京は長年、世界で最も物価の高い都市とされてきたが、コスト削減、関税の緩やかな引き下げ、輸入代替品の増加などにより、現在ではほとんどの世界ランキングでトップ10にも入っていない。

この状況を打開するために、中央銀行である日本銀行は過去9年間、市場に現金を流し込んできた。この前代未聞のプログラムにより、中央銀行は事実上全ての新規国債を購入することになった。そして、政府の税収は平均して歳出の60%しか賄っていないが、このことは購入すべき債務が大量に存在することを意味する。

このことは、2つの大きな問題を引き起こしている。日本政府は世界で最も負債を抱えている国であり、負債総額は年間経済生産高の約190%に相当する。このような政府の大盤振る舞いの裏舞台での資金調達によって、日銀のバランスシートは4倍になり、世界銀行のデータによれば、2020年には日銀自身の保有額は年間GDPの92%にまで上昇する。

このように、今の日本は間違ったインフレーションになっているようである。黒田総裁の目標設定の基礎にある考えは、いわゆる需要主導型の好循環を生み出すことであった。これは高い給料の労働者たちが外に出てより多く消費し、需要を押し上げ、それが新たな投資を招来し、それがより高い賃金につながるというものだ。

しかし、海外からのコストアップは物価を押し上げ、消費者たちの購買意欲を低下させ、商品の購入を控えさせることになる。この問題は、資源に乏しい日本では特に深刻で、事実上全ての原材料と商品を輸入している。食料の60%以上とエネルギーの95%(主に石油)を輸入している。過去10年間、世界の商品市場は概ね平穏だったため、これまでは大きな問題にはならなかったが、ロシアのウクライナ侵攻で小麦も天然ガスも十字架の下に置かれ、問題の深刻化が予想される。

このことは、2022年6月の参議院選挙でより強力な支持を得ようとする政府にとって、決して無視できることではない。与党の自民党が政権を失うリスクはないが、参議院選挙の投票結果はしばしば、事態の進展に関する有権者たちの感情を測る指標と見なされる。物価上昇の打撃を和らげるため、政府は消費者と中小企業を支援する480億ドル規模の幅広い補助金パッケージをまとめつつあると報じられている。日本経済新聞によると、この支援はガソリンの追加補助から低金利ローンや現金支援まで多岐にわたるという。

同時に、日本の岸田文雄首相は物価高騰を利用して、彼が提唱している「新しい形の資本主義」を推進しようとしている。これは安倍晋三前首相の下で実施された、過去10年間のアベノミクスで利益あげた大企業や裕福な退職者たちから富を国民全体に広げることを目的としている。

岸田首相は2022年3月の国会で、「物価上昇に対処するため、企業がコストを転嫁できるようにし、労働者の賃金を上げる環境を整えることによって、国民の生活を守るためにあらゆる政策方策を実施する」と述べた。

クレディ・スイスのエコノミストで元日銀の白川弘道のように、他のコストが上昇しているにもかかわらず、企業に賃上げを求めるのはかなり無理があると懐疑的な見方をする人々もいる。日本の消費者たちは伝統的に物価が上がると買い控えをする。そのため、小売業者は過去に値上げをするのをためらい、より少ない量でより高い単価を隠す「シュリンクフレーション(shrinkflation)」という概念を生み出した。

日本円が突然急落し、輸入品が更に高くなることも見通しを悪くしている。円は1ドル130円に迫り、年初から10%も下落している。これは、岸田首相が狭めようとしている経済格差を更に拡大させることになる。海外に大きな権益を持つ大企業は、自国にお金を戻すことで急激に高い利益を得るだろう。一方、平均的な労働者たちはレジでより多くの支払いを強いられることになる。

BNPパリバのチーフエコノミストで、日銀ウォッチャーとして知られる河野龍太郎は、「人々の関心が輸入インフレーション率の上昇と円安に向いている。こうした中で、短期的な景気刺激策だけでなく、超金融緩和を固定することによる長期的な悪影響についても、メリットとデメリットを再確認して検討する必要がある」と指摘している。

長期的には、日銀の最大の脅威はインフレーションサイクルが制御不能になることである。ドイツ銀行東京支店チーフエコノミストである小山健太郎は最近のレポートで、「日銀の政策スタンスが円安を悪化させ、物価を上昇させていると国民が確信すれば、日銀は家計の負担増を促す悪役になる可能性が高くなる」と指摘した。しかし、物価上昇に対抗する伝統的な方法である金利の引き上げは、ただでさえ弱い経済にブレーキをかけるだけでなく、日銀が保有する国債に多額の損失を与えることになる。

しかし、黒田総裁は躊躇していない。債務残高と円安への懸念がありながらも、日本銀行はここ数週間、国債買い入れプログラムを継続している。黒田総裁は、自分自身の目標は、日本を「デフレーション・マインド」から脱却させることだと常々主張している。今回の物価上昇で、彼は成功への道を歩み始めているのかもしれない。

問題は、こうした新たな懸念が、日本の高齢化社会、労働力の減少、低成長と一緒になって、長期的かつ不可逆的な景気後退をもたらすかどうかである。見通しには問題があるが、日本は過去に何度も懐疑的な見方を覆してきた。シティグループの当時のチーフエコノミスト、ウィレム・ブイターは、2010年のイヴェントで、「日本は世界で最も理解しにくい経済だ。これが物理学なら、日本において重力は働かないことになるだろう」と述べた。

※ウィリアム・スポサト:東京を拠点とするジャーナリストで2015年から『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿している。彼は20年以上にわたり日本の政治と経済をフォローしており、ロイター通信と『ウォールストリート・ジャーナル』紙で働いている。彼は2021年に刊行されたカルロス・ゴーン事件と事件が与えた日本に与えた影響についての著作の共著者である。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 アメリカ国民の半数が国内経済の先行きを不安視しているという世論調査の結果が出た。『ウォールストリート・ジャーナル』紙の世論調査の結果では、約半数が来年の国内経済はより悪くなるだろうと答えたということだ。その最大の原因は、インフレの亢進、つまり物価が急激に上がっていることである。以下にアメリカのインフレ率のグラフを2つ掲載する。2016年12月から現在までの5年間のグラフと2020年12月から現在までの1年間のグラフだ。

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アメリカのインフレ率5年間のグラフ

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アメリカのインフレ率1年間のグラフ

 2016年から新型コロナウイルス感染拡大が始まる2020年初めまでは、インフレ率は2%を少し超える程度だった。その後、インフレ率は下降したが、2021年3月頃から急激に上昇している。新型コロナウイルス感染拡大対策としてのワクチン接種や経済活動の再開によって、アメリカ経済が活発に動き出した。しかし、急激なインフレ率の上昇に賃金上昇は追いついていない。そのために、人々は経済の先行きに不安を持っている。

 アメリカ人にとって特に重要なのはガソリン価格だ。アメリカは車社会であり、ガソリン価格の変動には特にナーバスになる。ガソリン価格が上昇するということは、飛行機など他の移動手段の価格の上昇や、暖房用の灯油などの価格の上昇も反映しているので、この点でもガソリン価格の上昇は生活を圧迫する要因が増えるということで、非常に嫌う。

特に、11月末の感謝祭から12月末のクリスマスまでは、「ホリデーシーズン」と呼ばれる。この期間は移動やプレゼント交換、豪華な食事などで支出が増えるので、この時期にガソリン価格が上がることをアメリカ国民は嫌う。そして、その怨嗟の声は政権に向かう。バイデン政権の支持率が低いことは既にお知らせしているが、これが大きな原因である。以下にアメリカのガソリン価格の変動のグラフを掲載する。

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アメリカのガソリン価格5年間のグラフ

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アメリカのガソリン価格1年間のグラフ

ここ5年では3ドルを上回ることはなかった。新型コロナウイルス感染拡大で経済活動が停滞したために、ガソリン価格は一気に下落したが、今年の3月頃から上昇を続け、新型コロナウイルス感染拡大以前よりも高くなっている。経済活動が再開してまだ間もなく、賃金上昇が追いつかない中で、この負担増は庶民を直撃する。

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円ドル5年間のグラフ

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円ドル1年間のグラフ

 一方、日本について簡単に見ていきたい。現在、日本は円安傾向に入り、輸入品の価格が上昇することによる、製品の値上げのニュースが続いている。

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日本のインフレ率5年間のグラフ

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日本のインフレ率1年間のグラフ

日本のインフレ率はもともと低い水準で推移していたものが、新型コロナウイルス感染拡大でマイナスにまで落ち込んだ。現在でも1%台にも届かない水準であるが、円安による「コストプッシュ」型のインフレで物価上昇ということはあるだろうが、それでも日銀が定めた2%には遠く及ばないものとなるだろう。

 日本のデフレ傾向からの脱却は来年も厳しいだろう。問題は、給料が上がらない中で、デフレならばまだ何とかなるが(それも大きな問題だが)、給料が上がらない中で、物価だけは上がっていく、スタグフレーションになることだ。先進諸国はどこもこの点を懸念していると思う。政府がいくらお金を流しても、それが人々に行き渡らねばそのような状態になる。従って、今は配分と再配分を重視する政策を行う必要がある。特に日本では、新型コロナウイルス感染拡大を抑え込みつつあるので、経済回復、特にデフレ脱却をこの機会を捉えて行う(「禍を転じて福と為す」)ということを行うべきだ。

(貼り付けはじめ)

国民のほぼ半分がよく年アメリカ経済がより悪くなるだろうと考えている(Almost half in new poll expect economy to get worse in next year

レクシ・ロナス筆

2021年12月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/584781-almost-half-in-new-poll-expect-economy-to-get-worse-in-next-year

『ウォールストリート・ジャーナル』紙の最新世論調査の結果によると、有権者の46%が来年のアメリカ経済はより悪くなるだろうと答えた。より良くなると答えたのは30%にとどまった。

世論調査に答えた有権者たちが最大の経済問題だと考えているのはインフレーションだ。29ポイントの差をつけてインフレが悪化するという答えの方が多かった、61%が経済は悪い方向に向かって進んでいると考えていると答えた。

民主党は、新型コロナウイルス感染拡大から経済の回復を売り込もうとしている中、インフレーションにまず対処することに苦闘している。

クリス・ブストス連邦下院議員(イリノイ州選出)は本誌の取材に対して、「多くの経済指標を見れば、良い状態になっていることを示しています」と述べた。

彼女は続けて次のように述べた。「しかし、実際の生活レヴェルのお金問題について話しますとね、違ってきます。車のガソリンを満タンにする時、ガソリン価格が上がっていて、支払いが大きくなっています。食料品店に行ってベーコンを1パウンド買う時、値段が上がっています。人々はこのような価格上昇の現状に気付いています」。

バイデン大統領は、インフレーションや世界規模の供給チェインの問題に悩まされている。結果として、世論調査における支持率の数字を下げている。

今回の世論調査では、57%がバイデンの大統領としての仕事ぶりを評価しないと答え、41%が評価すると答えた。

経済に関する不安感が高まる中、2022年の中間選挙で民主党よりも共和党を支持すると答えた有権者の数の方が多かった。

世論調査に答えた有権者のうち、今日選挙が実施されると仮定しての質問に対して、44%が共和党に投票すると答え、一方、民主党に投票すると答えたのは41%だった。

今回の世論調査は2021年11月16日から22日にかけて、1500名の成人を対象に実施された。誤差は2.5ポイントだ。

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インフレーションが進む中でも10月の収入と消費者支出が上昇(Incomes, consumer spending rose in October even as inflation spiked

シルヴァン・レイン筆

2021年11月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/583021-incomes-consumer-spending-rose-in-october-even-as-inflation-spiked

アメリカ合衆国商務省が水曜日に発表したデータによると、インフレの急進があったにもかかわらず、個人所得の増加が物価上昇を抑制することができたために、2021年10月の消費者支出は増加した。

個人消費支出は先月1.3%増加した。財に対する支出の1%増、サーヴィスに対する支出の0.7%増が寄与した。サプライチェインの混乱、新型コロナウイルス感染拡大に関連する規制、新型コロナウイルス感染拡大による消費習慣の変化などにより、消費者の財に対する支出がサーヴィスに対する支出を大きく上回った。

米連邦準備制度(Federal Reserve)が推奨するインフレ率の指標である個人消費支出(personal consumption expendituresPCE)価格指数(price index)は2021年10月に著しく上昇した。それにもかかわらず、全米での買い物ブームは継続した。

水曜日に発表された分析の中で、オックスフォード大学のグレゴリー・ダコは次のように書いている。「2021年10月の消費者支出は、ウイルス懸念の軽減や温暖化、自動車のサプライチェインの制約緩和、ホリデーシーズンの早期開始などの要因により、増加した」。

ダコは続けて次のように書いている。「しかし、米国の家計にとっては、インフレ率の上昇、製品の入手可能性の現象、財政支援の減少など、全てがバラ色という訳ではない」。

個人消費支出(PCE)は、消費者物価が3ヶ月連続で0.4%上昇した後、10月に0.6%上昇した。また、10月までの1年間で5%上昇しました。年間のインフレ率は9月から0.6ポイント上昇している。

賃金の上昇と雇用の増加が個人消費を押し上げ、先月の個人所得は0.5%増加した。しかし、インフレ調整後の可処分所得は0.3%減少しました。

会計事務所RSMのアメリカ人エコノミストのトゥアン・グエンは次のように書いている。「強力な支出は今年の最後の2カ月でも価格に対して圧力をかけ続けることになるだろう。しかし、最近のデータでは、そのような圧力を和らげる役割を果たすサプライチェインのねじれが改善されてきている」。

グエンは続けて次のように書いている。「概して言うと、水曜日に発表されたデータは、今年の第四四半期の成長につながる、予想を上回るホリデーシーズンの見通しを再確認するものだ」。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 明日、このブログでも詳しく紹介するが、ジョー・バイデン大統領の支持率は下落している。バイデン政権は新型コロナウイルス対策と経済対策という、国内問題への対応に重点を置いていた。更には、国内の分断にも対処するということも公約に掲げていた。支持率が下がっているというのはそれらにうまく対処していないということが原因であると考えられる。

 バイデン政権発足に向けて、バイデン政権が重点を置くであろう5つのポイントというのがあった。それらは、(1)新型コロナウイルス対策、(2)経済、(3)分断の解消、(4)議会との協力、(5)バイデン自身の大統領としてやりたいことの明確化であった。新型コロナウイルス対策はワクチンができてから順調に推移していたが、ワクチン接種義務化の話が出てきて、反対論も多くなっている。経済はコロナの状況に左右されている。分断の解消は進んでいないどころか、深刻化するばかりだ。議会との協力と言っても、民主党内のエスタブリッシュメント派対進歩主義派が影響してうまくいっていない。そして、こうしたこともあって、バイデンの姿には元気がない。

 こうして国内問題でうまくいかない場合の常とう手段、どこの国のどの政権でもやることだが、外国の敵を設定して、国内問題から目を背けさせる。バイデンにとっては中国とロシアがそれにあたる。日本も入らされているクアッド(Quad、アメリカ、日本、インド、オーストラリア)という枠組みとは別にAUKUS(アメリカ、イギリス、オーストラリア)という枠組みが発表された。これはユーラシアを包囲しているということであるが、逆の見方をすれば、イギリスとオーストラリアが境界のポイントとして、アメリカの影響圏がその範囲に限定されているという見方もできる。

 明日の記事とも合わせて今回の記事をお読みいただきたいと思う。

(貼り付けはじめ)

大統領選挙当選者バイデンが直面する5つの最大の挑戦(The five biggest challenges facing President-elect Biden

ナイオール・スタンジ筆

2020年11月29日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/527663-the-five-biggest-challenges-facing-president-elect-biden

大統領選挙当選者ジョー・バイデンは2021年1月20日まで大統領に就任することはないが、彼が直面するであろう困難のほとんどは既に明確になっている。

トランプ大統領に代わって大統領になって取り組まねばならない5つの大きな問題についてこれから見ていく。

(1)新型コロナウイルス感染拡大との戦い(Fighting the pandemic

2020年、新型コロナウイルス感染拡大によって、アメリカ人の生活は急速に変化させられてきた。アメリカ国内で現在までに26万人以上が死亡し、感染者数は1300万以上となっている。

感染者数は、夏の終わりから秋にかけて落ち着いた後、再び急速に増加している。11月末の感謝祭の直前には、全国の1日の死亡者数が2週間前に比べて約60%増加し、1日の新規感染者数も40%以上増加した。

バイデンの公約には、追跡調査の改善と各州知事へマスク着用義務を設定するように求めることが含まれていた。バイデンはまた、科学的な助言にきちんと耳を傾けることを強調した。これは明らかにトランプに対して放ったジャブとなった。トランプはアンソニー・ファウチや他の専門家たちを遠ざけ、効果が証明されていない治療法を色々と発表してきた。

3種類のワクチンの試験結果が良好であることから良いニュースがもたらされる可能性も高い。

しかしながら、国民に幅広くワクチン接種が実行されるには数カ月を要する。

新型コロナウイルスはアメリカにとっての最大の問題だ。この問題の対処を誤れば、バイデンには大きな損失となる。

(2)経済(The economy

新型コロナウイルスは、アメリカ国民の肉体的健康と、経済にも莫大な負担をかけている。

2020年10月の時点でのアメリカ国内の失業率は6.9%だった。9月に比べて、1ポイント下がり、ピークだった2020年4月の失業率は14.7%だったがそれからだいぶ下がった。しかし、新型コロナウイルスが拡大する直前の2020年2月の時点の3.5%の約2倍となっている。

経済学者たちは景気後退の二番底の見通しを持ちそれを懸念している。ワクチンについて希望があっても経済は厳しいという見通しを持っている。

新型コロナウイルスの感染率が上昇すると、より厳しい規制が課されることになる。一部の都市や州では既に規制が強化されており、それが労働者や企業にさらなるダメージを与えることが懸念される。

消費者態度指数は最近になって下がっている。これはアメリカ人の消費意欲が下がっていることを示している。そのような動きでは経済に対する憂慮は深まるばかりだ。

連邦議会は感染拡大に関連しての新たな経済刺激策を可決することに失敗している。連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)と連邦上院少数党(民主党)院内総務チャールズ・シューマー連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)を含む民主党側の指導者たちは、連邦上院多数党(共和党)院内総務ミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)よりも支援策を望んでいるが、マコーネルは承認していない。

バイデン大統領には、賃借人と住宅ローン保有者たちへの保護を拡大するというようなことを、大統領令を通じて行うことが可能だ。

経済において1つの明るい点がある。それは、2月末から3月にかけての不振から抜けて、株式市場の状況が良くなっていることだ。

バイデンが経済を再び活性化できれば、政治的に大きな報酬を受け取ることになる。しかし、そのような結果が保証されているということではない。

(3)党派対立の激化(Polarization

バイデンは選挙期間中に、「国家の魂」を回復するということを公約に掲げた。しかし、これは実行するよりも言いっぱなしにすることの方がはるかに容易だ。

アメリカはここ数十年、党派対立の激化が進んできた。それは政治家によってだけ進められたのではなく、ケーブルニュースやSNSといった文化的な力によっても進められた。

そして、トランプが登場した。彼は自分の支持基盤を喜ばせ、批判者たちを怒らせ、不和の火を消すのではなく、火に油を注ぐことに関心を持っているようだった

ここ数週間、トランプは、2020年の大統領選挙で不正が行われたということを示唆する共同謀議理論を主張し、この動きは効果的だった。『エコノミスト』誌・YouGov共同世論調査の最新の結果では、共和党支持者の80%と無党派の45%が、バイデンの勝利は正当性を持たないと確信していると答えた。

バイデンには、中道的なイメージや長年の実績など、国をまとめようとする上での強みがある。

しかし、国家を極端な方向に進める力は簡単には消え去らないだろう。

(4)議会との交渉(Dealing with Congress

バイデンは来年1月の段階で、連邦下院は民主党が過半数を握っているので協力できるということが既に分かっているが、連邦上院に関してはジョージア州での2つの決選投票の結果次第ということになる。

民主党が両議席を獲得するというのが最高のシナリオであるが、それでも連邦上院の議席数は同数となる。連邦上院が同数になった場合の決定投票ができるのは副大統領なので、民主党は事実上、過半数を占めるということになる。しかし、議席数が同数の場合には、バイデン政権にとっては快適な状態とは言えない。

共和党はバイデンと進んで協力するだろうか?どんなに贔屓目で見ても、それは疑問だ。マコーネルはこれまで連邦上院において強硬路線を採用してきた。マコーネルは、オバマ元大統領の一期目の中盤に、「彼を一期だけの大統領にしてやる」と発言したのは良く知られている。オバマ大統領の任期が終わりに近づき、オバマは連邦最高裁判事の候補者にメリック・ガーランドを指名したが、マコーネルは公聴会の開催を阻止した。

バイデンは長年にわたり連邦上院議員を務めたが、これは彼にとって有利な点となる。副大統領として、オバマ大統領の議会への使者としての役割を果たした。彼は、党派を超えて連絡をして話ができることを誇りとしている。

左派に属するバイデンに対する批判者たちは、バイデンの考えは時代遅れで、彼が求めているような気さくな雰囲気は過去のものであると主張している。

バイデン政権の最初の1年間で、誰の主張が正しかったのかがはっきりわかることになるだろう。

(5)大統領としての意義を明確にする(Defining his presidency

バイデンの選挙運動の基本的な主張は極めて明確だった。それは、彼はトランプをホワイトハウスから追い出すための原動力だ、というものだった。

この主張は100%うまく証明された。バイデンはトランプに全国規模で、4ポイント、600万票の差をつけて勝利した。

しかし、バイデン大統領、バイデン政権の具体的な姿を描くことは難しい。その姿は極めて不明瞭だ。ただ、アメリカ国内の士気を高めるという曖昧な希望があるだけだ。

感染対策や経済だけではなく、医療、環境、気候変動などバイデンが前進させることが可能な様々な政策分野が多く存在する。

しかし、バイデンはそれらの糸を織りあげて、大統領として、まとまった意味を持たせることができるだろうか?

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 宣伝になるが、『ザ・フナイ』2020年11月号に今回のアメリカ大統領選挙について拙文を掲載していただいた。このことは前々回のブログで紹介した。拙文の中で私は、「民主党のジョー・バイデンがかなり有利だと報道されているが、それは間違いだ」という点から、その論拠となる世論調査の結果を紹介するなどして、トランプ大統領再選がある、ということを主張した。
thefunai202011
ザ・フナイvol.157(2020年11月号)

 今回、ご紹介する記事は、偶然にも拙文の内容とよく似た内容になっており、私の主張が独りよがりの、論拠のないものではない、ということを伝えたいと思い、このブログでご紹介することにした。

 アメリカでも日本でも「全国規模の世論調査の結果で、民主党のジョー・バイデン前副大統領が共和党の現職、ドナルド・トランプ大統領を10ポイント近くリード」という報道がなされ、「バイデンが圧勝だな」という雰囲気作りがなされている。しかし、そもそも全国規模での世論調査で判断するのは間違いのもとだ。そのことは、2000年の大統領選挙、2016年の大統領選挙で、アル・ゴア、ヒラリー・クリントン(共に民主党)が全国規模での得票総数で勝利したのに、選挙人獲得数で敗北したことでも明らかだ。

 アメリカ大統領選挙は各州の獲得票数が多かった候補者が選挙人を総取りするという形式で行われるのだ(メイン州とネブラスカ州はそうではない)。単純に全米での得票総数で決まる訳ではない。だから、各州の動きを見ておかねばならない。しかし、選挙人が配分されている全米50州+ワシントンDCすべてを見る必要はなく、激戦州と言われる10程度を見ていればよい。

 下の記事では、「トランプの意外な強さ」が選挙戦の様相を複雑化させている、つまり、バイデンが勝利すると言いきれない要素がある、と述べている。それが、「経済運営に関してはトランプの方の評価が高い」「トランプ支持者は熱心な人が多いが、バイデン支持者はそうではない」というものだ。私も拙文(まだ暑い8月上旬の時点で書いた)でこの2点の重要性を取り上げた。

 バイデンが圧勝ということはないし、大統領選挙は終わってなどいない。

 あと1時間もしないで第1回目の討論会がオハイオ州クリーヴランドで開催される。『ニューヨーク・タイムズ』紙が、トランプが税金を少ない金額しか払っていなかった、もしくはラっていなかったという報道をした。討論会でのテーマは既に決まっていることは前回ご紹介したが、この税金問題を取り上げざるを得なくなる。これは、他の重要な問題についての時間を削るためのものだ。特に経済問題について時間を使わないようにするためのものだろう。

(貼り付けはじめ)

メモ:トランプの強さが選挙の様相を複雑化させている(The Memo: Trump's strengths complicate election picture

ナイオール・スタンジ筆

2020年9月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/517893-the-memo-trumps-strengths-complicate-election-picture

ジョー・バイデン前副大統領はホワイトハウスをめぐる戦いで明らかにリードをしている。しかし、民主党の候補者にとっていくつかの問題が表面化しつつある。

トランプ大統領は、伝統的に多くの有権者にとって最重要の問題である、経済運営の点で、劣勢をはね返す強さを見せている。多くの世論調査の結果で、トランプ支持者たちはバイデン支持者に比べて熱心に支持しているということも分かっている。

大統領候補者同士による討論会は3回実施される予定で、その日程も近づいている。来週火曜日に第一回目の激突が予定されている。これはバイデンにとって最大の試練となるだろう。また、バイデンのラティーノ系有権者からの支持についても疑問が出ている。ラティーノ系有権者は重要な激戦諸州の多くでカギを握る存在だ。

民主党内部で希望となっているのは、多くの物事が発生しており、それらのためにトランプが二期目を勝ち取ることが難しくなっているということだ。

アメリカ国内における新型コロナウイルスによる死者数は今週火曜日には20万を超えた。経済は最低の状態から回復しつつある。しかし、全国規模での失業率は通常よりも高いままであり、8月の時点で8.4%を記録した。

トランプ大統領の個人的な性格については、アメリカ国民から支持を得られるよりも、見放されることの方が多いという状態である。各種世論調査の数字によると、トランプ大統領は多くの問題、特に人種関係で有権者から厳しい評価を下されている。トランプ大統領の人種関係についての言動などは状況を悪化させており、それが選挙に影響を与えている。

今週水曜日に、ケンタッキー州在住のアフリカ系アメリカ人女性ブレオンナ・テイラーが今年3月に銃撃で殺害された事件に関連して、警官が1人だけが訴追されたということを受け手、更に多くの抗議活動が行われた。この警官はテイラーの殺害による告訴ではなく、テイラーの近隣住民を危険に晒したという件で訴追された。

しかし、これらトランプに対して逆風となるカードが多く出ている状況ではあるが、民主党内部には、党内に過度の楽観論が広がっていることに懸念を持っている。

ある民主党系のストラティジストは率直に次のように述べた。「選挙戦は既に終わりで、トランプは負けだろうと言う人たちがいるが、私はその時にこう考える。“一体何を言っているんだ?”と」。

最新の『ワシントン・ポスト』とABCニュースの共同世論調査の結果が今週水曜日に発表されたが、これは民主党関係者の神経を刺激した。世論調査が実施されたフロリダ州とアリゾナ州でトランプが僅差ではあるがリードしているという結果が出たのだ。

トランプはフロリダ州の選挙に必ず行くと答えた有権者の間で、バイデンに対して4ポイントのリードを確保し、アリゾナ州では1ポイントのリードであった。両方の結果は共に誤差の範囲内の数字ではあった。ワシントン・ポスト紙は、「これら2つの世論調査の結果は他の機関が行った同じ2つの調査の結果に比べて、トランプ大統領にとってより良いものとなった」と評価している。

しかし、こうした結果は、トランプの熱狂的な支持者たちに希望を与える、表面的に報道される数字だけでのことではない。

両州の有権者はトランプに対して経済運営について比較的高い評価を与えた。アリゾナ州では、登録済有権者のうちトランプの経済運営を評価したのは57%で、42%は評価しなかった。フロリダ州では、53%がトランプ大統領の経済運営を評価し、43%が評価しなかった。

両州における経済運営に関するトランプへの評価の数字は、両州におけるトランプの大統領としての仕事への支持率の数字よりもかなり高い数字となっている。

トランプに投票するつもりの有権者でそれを「隠して」おり、世論調査の調査員との面談で自身の支持候補を明確にしたくないという人たちがいる場合、彼らの存在は、トランプ大統領の2期目で自分たちの経済状態が更に良くなる考える人々の中に見つけることができるだろう。

ワシントン・ポスト紙とABCニュースの共同世論調査で、経済運営に対する評価に関しては他の世論調査の結果でも示されている。全国規模で選挙に必ず行くと答えた有権者を対象にした、キュニピアック大学の世論調査の結果が今週水曜日に発表されたが、トランプは経済に関して僅差であるがバイデンを49%対48%で上回った。トランプ大統領の大統領としての支持率は低いままで、支持率は43%、不支持率は53%だった。

キュニピアック大学の世論調査の結果では、バイデンはトランプに10ポイントの差をつけている。これが11月の選挙でも同様であれば、選挙の結果はほぼ地滑り的にバイデンの勝利ということになる。21世紀の大統領選挙において、総得票数で最も差が開いたのは2008年の大統領選挙であった。この時にはバラク・オバマはジョン・マケインに7ポイントの差をつけて勝利した。

また、有権者の熱意はトランプにとって希望が持てる、もう一つの指標である。アリゾナ州とフロリダ州におけるワシントン・ポスト紙とABCの共同世論調査では、トランプ支持の有権者の中で、「とても熱心だ」と答えた人の割合は、バイデンの支持者の中での熱心な支持者の割合に比べて、かなり高いことが分かっている。熱心な支持者の割合の差は、アリゾナ州では22ポイントに達し、一方でフロリダ州ではそこそこの7ポイント差となっている。

民主党の一部には、「バイデンがトランプに対して大差をつけていることを強調し過ぎないことが大事だ」とする声もある。

民主党系のストラティジストであるポール・マスリンは、2012年の共和党候補者だったミット・ロムニーとロムニー選対は、有権者の熱意によって当時のオバマ大統領に対して勝利を収めることができるだろうと確信していたと述べている。マスリンは次のように述べている。「私たちが学んでいることは、熱意というものを測定すること、そしてそれに頼ることは大変に難しいということです。しかし、ロムニー選対が説明していなかったのは、選挙戦において重要である5つか6つの州で、オバマ陣営は素晴らしい組織を持っていたということです。熱意という点では、10人のうち8人が選挙に行くと答えていたのですが、実際には全員が投票に行っていたのです」。

トランプの分断を招きやすい性格と現在の通常ではない状態は、火曜日の討論会で多くの視聴者がテレビの前に座ることになるだろうということが容易に予測される。トランプはバイデンの心を乱そうとするだろう。そして、トランプ選対は民主党側のミスにつけこむだろう。しかし、バイデンが無傷で切り抜けることができれば、これからの選挙戦は彼に有利に進むことになるだろう。

共和党系のストラティジストであるマット・ゴーマンは、今年の大統領選挙討論会はこれまでに比べて重要性が低い、その理由は有権者の多くは既に誰に投票するかを決めていると述べている。ゴーマンは、金曜日に亡くなった最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグの後任選びを巡る戦いは、民主、共和両党の基礎的な支持者たちの熱意で選挙の結果が決まってしまう場合には、重要な戦いになるとなるだろうと主張している。

ゴーマンは次のように述べている。「民主、共和両党の支持者で、候補者たちによって説得されるであろうという人はほとんどいません。私が最高裁をめぐる戦いがかなり重要である考える理由はこれです。左派はトランプ大統領に刺激を受けて活発化しています。しかし、右派は最高裁判事の構成のためにも大統領選挙がいかに重要かということを認識しています」。

選挙まで6週間に迫り、バイデンに有利な状況は明白だ。しかし、トランプ大統領が除外されているということでもないのだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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