古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:統一教会

 古村治彦です。

 2022年の日本における最大の事件は安倍晋三元首相暗殺事件だった。これによって、日本の政界では現在、自民党と統一教会の関係清算の動きが進んでいる。統一教会への批判も依然として強いままだ。安倍晋三元首相暗殺事件の山上進容疑者の背景に、家庭関係の不幸と母親の統一教会への入信と多額の寄付による不幸があり、山上容疑者が統一教会に怨恨の感情を抱き、現在の教団最高指導者韓鶴子総裁を狙うも果たせず、統一教会と関係が深いと彼自身が考えた安倍晋三元首相を狙ったが報道され、統一教会に対して注目が一気に集まった。そして、統一教会が政界、特に自民党に深く食い込んでいる実態が明らかにされるようになり、自民党は統一教会との関係を清算せざるを得ない状況に追い込まれた。

 祖父信介元首相以来、父安倍晋太郎元外相がともに統一教会と深い関係にあり、安倍晋三元首相もまた関係を継続させた。その結末が悲劇的なことであったことは何とも皮肉なものだ。

 安倍晋三元首相は「改革の熱狂」を引き起こした小泉純一郎・竹中平蔵時代の申し子のような形で、若きスターとして自民党や政府の重職をほぼ担うことなしに、これまでのキャリアパスとは異なる形で首相に就任した。第一次政権は1年弱と短気であったが、第二次政権は長期政権となり、政権担当機関は憲政史上最長を記録した。この間に安倍晋三元首相が行ったことは、戦後日本の構造の改悪であった。格差の拡大、解釈改憲の強行による憲法九条の骨抜き、対米従属体制の強化であった。アベノミクスと呼ばれる経済政策は効果を生まなかった。戦後体制の変革を目指した安倍晋三元首相の残した日本は、衰退国家の道をたどる日本となった。少子高齢社会の流れを止められなかったが、これは安倍氏以外の政治家でも同じことだっただろう。

 安倍元首相の暗殺によって、政界における安倍晋三元首相の影響力が消え、彼に守られていた人々は後ろ盾を失った。「チェンジ・オブ・ペース」で就任した岸田文雄首相は、国防費GDP比2%達成というアメリカからの指令(トランプ政権時代から言われていた)を実現するために、大幅な増税を画策している。また、先制攻撃の容認という重要な転換も行おうとしている。国防予算の増額と先制攻撃の容認ということが合わされば、近隣諸国にとっては脅威ということになる。安全保障の不安定な環境があるので国防を強化するということがさらに不安定化を増長するということになる。

 私は安保条約改定で退陣した岸政権から経済重視の池田政権への移行と、安倍政権から岸田政権への移行をアナロジーとして比べて考えていた。簡単に言えば、宏池会系になれば、好戦的な姿勢は弱まるだろうと考えた。しかし、21世紀にはこのようなアナロジーは適さなかったようだ。宏池会は平和路線で経済重視という常識は既に通用しないようだ。ある意味で、戦後体制が終焉したということが言えるだろう。そして、非常に残念なことであるが、安倍晋三元首相が目指した戦後体制の終焉は成功したということになるのだろうと思う。

(貼り付けはじめ)

安倍晋三元首相の国葬は、安倍元首相の存命中と同様に議論を巻き起こすものだ(Shinzo Abe’s State Funeral Is as Controversial as He Was

-暗殺された元首相のための儀式は一つの時代の終焉を際立たせた。

スペンサー・コーエン筆

2022年9月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/09/26/japan-shinzo-abe-state-funeral/

戦後初のそして最後の首相公葬が秋の暖かい火曜日に行われた。1967年10月31日、吉田茂はその2週間前に89歳で亡くなった。不確実で激動のアメリカ占領時代とその後の独立時代に日本を率いたこの人物を国家は讃えた。1951年、サンフランシスコで戦争終結のための講和条約に調印し、瓦礫と火の海から生まれた新しい民主政治体制国家「新生日本」を体現した人物ことが吉田茂だった。

神奈川県大磯の吉田茂邸の芝生の上に、小銃を手にした自衛隊の儀仗隊の列が立ち、式典は始まった。長男で作家・評論家の吉田健一が遺骨を入れた箱を持ち、ゆっくりとした足取りで重厚な黒塗りの車に乗り込んだ。車は東京に向かい、頭を下げて祈る弔問客で埋め尽くされた通りを走り、やがて皇居近くの日本武道館に到着した。外は大勢の人、中は関係者や外交官たちなどが集まり、厳粛な雰囲気に包まれていた。吉田健一は父の遺骨を持って中央通路を歩き、佐藤栄作首相に遺骨を渡すと、佐藤首相は自衛隊の儀仗隊3人に遺骨を手渡した。その遺骨は、数千本の菊の花で覆われた祭壇と、高さ3メートルの遺影の下に運ばれた。

吉田茂の肖像画は、1964年の東京オリンピックのために建設された会場である日本武道館に集まった政治家や外国の外交官たちを見下ろし、建設と成長に沸く首都で、安定と経済力の象徴である新しい新幹線が横切る国土を眺めていた。この平和と繁栄は、数十年前に吉田茂が行った政策によって形作られたものである。吉田は、軍事力とアメリカからの完全な独立を、自由民主党(Liberal Democratic PartyLDP)政権を強固にした産業と経済力に引き換え、「吉田ドクトリン(Yoshida Doctrine)」「サンフランシスコ・システム(San Francisco System,)」「吉田案件(Yoshida Deal)」と呼ばれるものによって、国家の指導者になった。吉田の死は、1945年の第二次世界大戦の終結から始まった壮大な歴史の幕を閉じたかのようであった。歴史家のジョン・ダワーは、「彼の死は、吉田が他のどの日本人よりも体現した『戦後』という章に、最後の文章を書いたのだ(the death wrote the final sentence to the chapter called ‘postwar,’ which Yoshida more than any other single Japanese personified)」と書いている。

2時10分、日本中にサイレンが鳴り響き、武道館は静まり返り、多くの人が一つの時代の終わりを感じた。しかし、多くの人がそれを受け止めた。銀座で黙祷する人たちに10代の少女が、「あれ、皆さん何をしているんですか?」と声をかけた。佐藤内閣は1947年に廃止された戦前の国葬令(state funeral ordinance)を回避し、公示や国会審議によらず閣議決定(cabinet decision)で葬儀を行ったのだ。このような経緯に戸惑う人もいれば、真っ向から反対する人もいた。国葬の正当性を疑問視し、恣意的な法的根拠を糾弾し、国葬は過去の帝国の遺物であり、残すべきものではないとする評論家もいた。保守的な読売新聞の記者でさえも「無感動な国葬(an emotionless state funeral)」と評した。

さて、今週火曜日に行われる安倍晋三元首相の国葬では、華やかさ、ページェント、喪服、弔辞、批判、そしてスペクタクルが再び繰り返されることになる。政治家の国葬は、約80年前に終わった戦争の後で2回目、50年以上ぶりのことである。「吉田茂以来、国葬が行われなかったと言うよりは、吉田以降、国葬が永久に廃止されたと考えた方が真実に近いと思う」と朝日新聞はで論評した。1975年、佐藤栄作は死去し、彼の支持者たちは国葬で彼を讃えようとした。しかし、明確な法的根拠がなかったため、国、国民、自民党の出資による形での国民葬(national funeral)が行われた。

それ以来、戦後はこの方式が定着した。内閣総理大臣の葬儀は、内閣と自民党の共同出資で行われることになった。1989年、昭和天皇(海外では裕仁天皇と呼ばれる)は、宮内庁が「国家儀礼(State Ceremony)」と呼ぶ「大喪の礼」を行い、吉田首相の儀式とは異なる形で国民が敬意を表した。しかし、現在の岸田文雄首相は儀礼にとらわれない。しかし、岸田文雄首相は、佐藤首相に倣い、閣議決定で安倍首相の国葬を行った。

安倍首相を例外とすることは、当然といえば当然だが、賛否両論があった。7月、街頭演説中に手製の銃で撃たれて亡くなった安倍元首相は、ある時代の政治を象徴する人物だった。岸信介元首相の孫であり、自民党の有力政治家だった故安倍晋太郎元外相の子息である安倍晋三は、戦後最も長く首相を務めた政治家となった。亡くなった当時は、自民党の最大派閥を率いていた。

しかし、国葬1週間前の時点でも日本人の約6割が葬儀に反対している。その理由は、安倍首相の右翼的な政策に対する軽蔑から、あるいは葬儀そのものが独裁的な行事であるという考えからである。ここ数カ月、市民団体が葬儀に国費を使うことの差し止めを求め、何千人もの人々が東京の街頭に出て、国民が何も言えないで決まった儀式だと抗議している。「国葬が民主政治体制のための葬儀であってはならない(A state funeral must not be a funeral for democracy)」と、8月31日に約4000人の群衆が国会の前に集まって叫んだ。批評家たちは、国葬は大衆に、しばしば不人気な人物を集団で悼み、記憶することを強要し、時に物議をかもす彼の政策への批判を押しとどめようとする試みであると見ている。国葬は「民主政治体制の破壊」を意味すると経済学教授の金子勝は書き、およそ1200万ドルにのぼる納税者の資金を追悼のために使うことは非民主的で、特に法的根拠があいまいな式典の場合はそうであると主張した。しかし、岸田首相と自民党は葬儀を続行し、首相は葬儀は「民主政治体制を守るものだ」と宣言した。

先週、イギリス女王エリザベス二世の国葬のために参加者たちがロンドンに集まった。その儀式と人物との比較は避けられないものであった。エリザベス女王は、多くの人々から慕われる君主であり、今日イギリスに住むほとんどの人々が生きている間、国の象徴的な舵取りをする中立的な存在として見られていた。もちろん全ての人々がそうであった訳ではない。これに対し、安倍首相は君主ではなく政治家として、国際的なリベラリズムと右翼的なナショナリズムの間に境界線を引いた。そして、2000年代初頭に政権を握った。S・ネイサン・パークは次のように主張している。安倍首相は、歴史修正主義(historical revisionism)を標榜したことで物議をかもし、分裂している人物ではあった。しかし、彼の周囲にいた人々と外国の外交官の双方を惹きつける魅力があった。しかし、おそらく最も適切な比較は、エリザベス女王の死と、戦前、戦中、戦後とその地位にあった昭和天皇の死である。1989年の昭和天皇の葬儀は、何日も喪に服し、結束して、明確で顕著な歴史の区切りを示すように見えた。

安倍元首相の死は、女王や天皇といった君主の死ほどには、国家の安定を破壊していないように見える。しかし、東京大学の五百旗頭薫教授(日本政治・外交史)は、銃撃事件直後の『フォーサイト』誌に、日本政治では有力な保守政治家が暗殺されると「政治が漂流する(politics goes adrift)」のが通例だと書いている。安倍首相のような「保守主義と進歩主義」のバランスを取る政治家が国政の舵取りをし、その暗殺によって全てが混迷と混乱(confusion and disorder)に陥るという。

そして、1967年と同じように、終わりを宣言する日々が続いている。安倍元首相のスピーチライターだった慶応大学教授の谷口智彦は、「国葬によって、安倍首相の『チャーチル的(Churchillian)』な、国家への貢献が歴史に刻まれる」と書いている。また、この式典にあまり賛成でない人たちもその歴史的意義を認めている。朝日新聞のある論説委員は、銃撃事件の数日後、そして東京の寺院で行われたより小規模で内輪の安倍首相の葬儀の翌日に、「1つの時代が終わったのに、人々や車は何も変わっていないかのように動き続けていた」と書いている。

また、グローバルな視点からの意見もあった。産経新聞の磨井慎吾は、「私たちが生きてきた平成という時代は、急速に歴史になりつつあるという思いが強くなっている」と書いている。平成は厳密には2019年に天皇陛下の退位で既に終わっているが、暦が変わり、祝日が規定されたものの、その推移は穏やかで地味なものだった。そして、3年後の今、世界的な新型コロナウイルス感染拡大、ウクライナ戦争、安倍首相の暗殺を経て、変化が起きているのではないかと磨井は主張している。安倍元首相の葬儀は、吉田元首相の葬儀と同じように、一つの時代の終わりを意味するのかもしれない。

安倍首相暗殺の意味は、週ごと、日ごと、最初は時間ごとに変化していった。しかし、多くの人が口にしたのは、「民主政治体制(democracy)」という言葉だった。7月8日、銃撃事件から数時間後、岸信夫防衛相は記者団にこう語った。参院選の2日前だった。安倍首相の弟である岸首相はやつれた様子で、声は小さく、テンポはゆっくりで落ち着いていた。彼は「民主政治体制への冒涜(an affront to democracy)」と述べ、次に銃撃は暴力的で、言論の自由(free speech)と公正な選挙(fair elections)を抑圧しようとするものだと言い、厳しく非難した。岸田首相も同じように「日本は民主政治体制を守らなければならない」と演説を続けた。読売新聞が7月12日に発表した世論調査では、73%の人が暗殺事件を民主政治体制(a threat to democracy)への脅威と見ている。

また、当初は犯人の動機があいまいであったこと、標的があまりに重要で影響力があったこと、そして近年との比較があまりに平板であったことからか、コメンテーターたちは政治的暗殺の多い日本の歴史に他の場所との類似性を探した。国内外のジャーナリストや学者たちが「日本における政治的暴力の歴史」や「日本の過去の暗殺に関する入門書」を執筆した。保守的とはいえ国民感情のバロメーターであるNHKは、過去の暗殺の写真や映像をふんだんに使って安倍首相狙撃の特集を組んだ。

戦前の複数の暗殺は実質的時代を転換させるものであり、行為や時代は違うが、安倍首相狙撃後の類似を危惧する論者が出ているのは当然だ。昭和時代の研究者である保阪正康は、暗殺事件後に『文芸春秋』誌に書いたように、当初、犯人は安倍を批判する極左か極右の人物だと考えていた。そして、銃撃の2日後、朝日新聞のインタヴューで、その推測に基づいて、戦前の暗殺のように「暴力の連鎖(chain of violence)」が続くと警告していた。保坂は、1930年に東京駅で撃たれた浜口雄幸首相や、1932年に超国家主義者の青年軍人たちがクーデターを起こし、犬養毅首相を殺害したいわゆる5・15事件のことを読者に思い起こさせた。このような政治家の刺殺事件や射殺事件は、戦前の民主主義に対する攻撃であり、戦争への足がかりであり、ファシズムの初期の侵攻の兆候であると、1947年に碩学丸山真男が指摘した。

保坂は戦後にも目を向けていた。彼は朝日新聞の取材に対し、1945年以降、「暴力の連鎖」は終わったと述べている。歴史学者でジョージワシントン大学国際関係学部准教授のアレックス・フィン・マッカートニーは、「暗殺は特に、日本の極右勢力によって使われた政治的暴力の戦術だ」と述べた。戦後でも、日本社会党の浅沼稲次郎委員長が他の党首たちと討論しているときに刀で刺されて殺された陰惨な事件や、安倍首相の祖父である岸信介の暗殺未遂事件などが起きた。保坂は取材に対して「戦後の長い期間、政治家に対する暴力は連鎖的に起こることはなく戦争に発展することもなかった。私にとって、これは民主政治体制が確立されていた証拠だ。今回の事件を受けて、もう一度、これを証明しなければならない」と述べた。

しかし、今回の安部元首相暗殺事件は特異な出来事なのだろうか? 衰退(decline)、崩壊(collapse)の兆しという見方もある。それは、41歳の山上徹也容疑者は、一見するとバラバラで単発に見える最近の暴力事件の複数の犯人の一人であったからだ。2008年に東京・秋葉原の群衆に車で突っ込み、道行く人を刺して7人を殺害、10人を負傷させた残虐な殺人事件で、犯人の加藤智大に対して、日本政府によって39歳にして2021年12月以来の死刑執行が行われた。2019年には、家族と暮らす51歳の無職、岩崎隆一がナイフで武装してバス停で待つ子供たちに近づき、2人を殺害し、十数人に怪我を負わせ、自分自身は自殺した。同年、青葉真司(41歳)が京都のアニメスタジオに火を放ち、36人が死亡した。

山上、加藤、青葉、岩崎の4人は、政治的、思想的に一致している訳でもない。しかし、彼らはほぼ同時代の1960年代後半から1980年代前半に生まれ、バブル崩壊後の崩壊の真っ只中で育った世代である。「就職氷河期世代(Employment ice age generation)」である。戦後の終身雇用(lifetime employment)の約束が株価とともにしぼんでしまった、意気消沈し忘れ去られた世代である。後に、英語では「Lost Generation」と呼ばれるようになった。どんな意味で失われたのか? 仕事が失われ、社会的流動性が失われ、希望が失われた。

これは、山上容疑者が高校の卒業アルバムに書いた、未来の自分を表現するための言葉である。バブル崩壊から7年後の1999年、高校卒業者の就職率は88.2%と、日本史上最低の数字となった。父親が自殺し、兄が癌に侵され、山上容疑者と母親は悲しみと喪失感に苛まれていた。母は統一教会に入会し、多額の寄付をしたため、山上容疑者は大学に通うことができなかった。彼の将来は不安定であり、経済的な停滞によって更に悪化した。

慶應義塾大学経済学部の嘉治佐保子教授は2015年、「失われた数十年は、日本が大切にしてきた一体感と調和という概念を侵食した(The lost decades have eroded Japan’s cherished notion of oneness and harmony)」と書いている。戦後、吉田が築いた取り決めで鍛えられた思想の崩壊ということになる。解雇されたサラリーマンがスーツを着て公園のベンチで新聞を読み、親族や近所の人に解雇されたことは言えなかったこと、1990年代後半の自殺率の上昇、ネトウヨや2ちゃんねる文化、ひきこもり、これらは全て崩壊の兆候だろう。アメリカ在住の作家イアン・ブルーマは2009年に「悲惨な世界大戦の残骸から構築された日本社会の構造全体が崩れてきている」と書いている。

そして山上容疑者は、統一教会への恨みを募らせている中で、戦後社会の崩壊に巻き込まれた。統一教会に人生を狂わされ、経済的な停滞で更に悪くなったと彼は考えた。そこで彼は、統一教会の現在の指導者であり、故・創始者である文鮮明の妻である韓鶴子を殺害しようと計画したが、新型コロナウイルス感染拡大時代の渡航制限のために不可能だったと捜査当局に語った。しかし、統一教会と緩いつながりがあるとされる安倍元首相が統一教会のイヴェントで演説している映像を見て、標的を安倍首相に移し、7月8日に奈良で殺害した。

山上徹也は戦後の崩壊と衰退の産物だ。しかし、安倍元首相の死は、それ自体が変化の触媒(catalyst)となり、敗戦後の数年間に最初に刻まれたシステムの解体を更に進めることになるかもしれない。安倍の死は、数十年にわたる保守支配の終焉を意味するかもしれない。歴史家のアンドリュー・レヴィディスは、「安倍首相の殺害によってもたらされた問題は、岸信介によって定義された保守政治の時代の終焉に到達したかどうかである」と述べている。安倍元首相が継承してきた保守の覇権(conservative hegemony)と一党支配(one-party rule)は、彼の暗殺によって混乱と不確実性に投げ込まれるかもしれないが、今のところその可能性は低いと思われる。

銃撃事件はまた、自民党幹部と統一教会との関係に明るい光を当てた。これは、今や崩壊するかもしれない戦後の秩序のもう一つの遺物である。また、多くの人が、暗殺について、どうやって個人が銃を作ることができたのか、と疑問を持っている。そして政治学者の彦谷貴子が『フォーリン・アフェアーズ』誌に書いているように、ウクライナ戦争後に起きた暗殺に続いて、安全保障についての関心が高まって、国防と安全保障に関する会話が起きている。知るのは時期尚早だが、安倍元首相の銃撃は、戦後の平和主義の秩序さえも解体させる可能性がある.

それでは、安倍首相の葬儀は、戦後の最後の息の根を止めることになるのだろうか? 東京大学の五百籏頭薫教授は、銃撃事件後の数日間のメール交換で、「様子を見なければならないが、吉田の葬儀が本当に終わらせることができなかった戦後の時代の終わりになるかもしれない」と慎重に語った。この葬儀は、戦後の、冷戦の、ある種の終わりであるかもしれない。2006年に初めて政権を取った安倍首相は、その政策と目的、思想と信条、意欲、意思を集約した言葉を口にした。それが「戦後レジームからの脱却(overcoming the postwar regime)」だった。安倍晋三元首相は、生前にはこの目的を果たせなかったが、死後はそれに成功するかもしれない。

※スペンサー・コーエン:ニューヨークを拠点とするジャーナリスト。以前は東京を拠点としていた。朝日新聞のスタッフとしてニューヨーク支局から記事を送っている。今回の記事は彼個人の仕事であり、朝日新聞とは関係ない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 2022年9月27日の安倍元晋三元首相の国葬については反対論が国民の多数を占めている。私は正直に言って、国葬が決定された直後、「世論調査を刷れば国民の半分くらいは賛成ということになるんだろう」と考えていた。安倍晋三元首相は選挙に強く6回の国政選挙で勝利を収めていたのだから、国民の半分くらいは国葬に賛成するだろうと思っていた。しかし、私の考えは間違っていた。国民の過半数が安倍元首相の国葬に反対という世論調査の結果が多く出た。安倍元首相の人気や人々からの支持はそれほど高くなかったということになる。そして、安倍元首相率いる自民党が選挙で勝ち続けたのは選挙制度のおかげも大きいということが私の中で明らかになった。

 私は国葬という話が出てきた時から反対だ。国葬を行うための根拠となる法律はない。国会での審議もおざなりで、閣議決定で国葬実施が決まった。国家が行う行事はすべからく税金の支出が伴う。税金の使われ方を行政府が勝手に決めるというのは危険な暴走行為である。更に言えば、国家の行う全てにおいて重要なのは手続きだ。そこに毛ほどの瑕疵があれば、その行事や行為には正当性はない。今回の国葬に関しては、手続き面で多くの瑕疵がある以上、国葬に正当性はなく、それを強行することは、日本という国家の正統性もなくなるという重大な暴走ということになる。だから、私は国葬に反対だ。

 そして、安倍元首相暗殺事件によって日本政界と統一教会の深い関係が白日の下に晒された。安倍晋三元首相やその周辺の「保守」と呼ばれる政治家たちは、韓国や中国に対する嫌悪感を煽る、ナショナリスティックな言動を繰り返してきた。しかし、安倍元首相は韓国を拠点とし、「日本は韓国に奉仕する存在」と主張してきた統一教会と深い関係を築いていた。この矛盾に戸惑う人が多い。「反共」という補助線を引けばある程度理解できる。

文鮮明は「反共」を旗印にして、アメリカの共和党や世界各地の独裁者たちと深い関係を築いてきた。冷戦下、反共産主義であれば、「自由と人権の総本家」を自称するアメリカも独裁国家を支援してきた。文鮮明は膨大な資金(日本の信者や弱っている人々から搾り取った)を使ってそうした人々に取り入ってきた。日本の窓口が岸信介から発する自民党清和会であり、笹川良一であった。文鮮明が築いた反共ネットワークは、独裁国家や独裁者たちをつなぐネットワークであり、岸信介や安倍晋三はそのラインに連なる。

更に言えば、こうした反共ネットワークの基底にあるのはアメリカのCIAだった。CIAの謀略や世界各国の指導者たちをエージェントにしていった様子は『』(ティム・ワイナー著)に詳しい。岸信介は戦前には満州国建国から国家総動員計画を作り上げ、戦後はアメリカのエージェント、具体的にはCIAのエージェントとなった。日本を「反共の防波堤(bulwark against Communism)」とすることに成功した。「反共」の旗印さえ掲げれば、後は何でも良かった。岸信介の権力志向と戦前回帰志向も日米安保条約改定までは利用価値があり不問に付された。岸の日米安保改定については評価する主張もあるが、現在の「対米従属」を固定化する枠組みを強化したという点では、「反米で独立志向の立派な岸信介」という評価は過大評価だと私は考える。

 今回の安倍晋三元首相の暗殺と国葬は日本の戦後政治が抱えてきた負の部分を一部ではあるが国民に示すことになった。日本政治の汚れた部分を急に全部きれいにすることはできないし、そもそも政治に汚い部分が存在するのは当然のことだ。しかし、あまりにも汚れ過ぎている場合にはその掃除が必要だ。自民党内部の良識ある人々も含めて国民的な動きとして掃除を行うことが重要だ。

(貼り付けはじめ)

安倍晋三元首相の殺傷事件をきっかけにして統一教会について詳細に調べられる(Shinzo Abe’s Killing Puts Unification Church Under Microscope

-日本の与党と韓国の統一教会との関係が国民の怒りを買っている。

ウィリアム・スポサト筆

2022年8月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/08/29/shinzo-abe-killing-unification-church-japan/

東京発。安倍晋三元首相が暗殺された事件をきっかにして、予想もしなかった公の場での議論が起きている。当初は悲しみの声が覆っていたが、犯人が人々に注目させたかった問題について、政府に対する人々の怒りに変化している。

合法的であれ何であれ日本では銃を入手することはほぼ不可能なので、先月起きた安倍元首相襲撃は、粗末な手製の武器で行われたが、いくつかの計画変更により首相が標的になった。犯人の長期的な目標は、統一教会の宗教指導者を狙うことだったようだ。統一教会(Unification Church)は、韓国を拠点とする宗教団体で、信者に対する強引な資金集め(heavy-handed fundraising among members)や集団結婚式(mass wedding ceremonies)で知られ、論争の的になっている。統一教会の最高指導者の代わりに安倍元首相を攻撃しようと決めたのは、安倍元首相が世界平和統一家庭連合(Family Federation for World Peace and Unification)として知られる統一教会とつながりがあると考えたからである。

安倍元首相暗殺で逮捕された41歳の元自衛隊員の男性、山上徹也容疑者は、1984年に父親が亡くなった後、母親が統一教会に入り、家族が経済的に破綻したことに怒りを持っていたと捜査当局に供述している。家族の1人によると、母親は長年にわたって合計70万ドル以上の献金をしていたという。1954年にカリスマ性のある文鮮明によって設立されたこの教会は、高圧的な資金調達の手法に詐欺の疑いがあるとして、日本の警察と何度も揉めている。日本人の会員数の推定は調査によって大きく異なるが、日本の信者は主要な収入源であると考えられている。世界的には200万人から300万人の信者がいると言われている。

山上は当初、教団の再興指導者、特に2012年に文鮮明が亡くなった際に教団を引き継いだ文鮮明の未亡人、韓鶴子(Hak Ja Han、ハンハクジャ)を標的にしようと考えていたという。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で韓鶴子は予定していた日本への渡航をキャンセルし、更に山上は韓国への渡航が不可能になった。2021年の同時期、ある教団大会で安倍元首相が行った賛辞のビデオを見て予定を切り替えたという。安倍の祖父で戦後の首相だった岸信介の1950年代までさかのぼる、教会と日本の与党・自民党の関係も山上は知っていたのだろう。

政治に精通した文鮮明は、その厳格な反共主義的見解において、日米の保守派と共通の基盤を見出した。統一教会は常に論争にさらされ、カルトと揶揄されたが、それでも文鮮明は世界の有力者たちと親しくなり、彼らはしばしばその好意に応えた。また、ウォーターゲート事件で苦境に立たされたニクソン大統領を支援したことで、ニクソン大統領から感謝されたこともある。

文鮮明は、1990年にはソヴィエト連邦を訪問し、ミハイル・ゴルバチョフ大統領と会談し、政治・経済改革への支持を表明した。1995年、ジョージ・HW・ブッシュ(父)元米大統領とバーバラ・ブッシュ夫人は、文鮮明の妻が運営する教会系の団体である世界平和女性連合(Women’s Federation for World Peace)の大規模な会合で演説を行った。安倍元首相が登場した2021年のネットイベントには、ドナルド・トランプ前米大統領も登場し、文氏が1982年に設立した、共和党支持の『ワシントン・タイムズ』紙を絶賛した。

文鮮明にとって、日本は勧誘と資金調達のための肥沃な土地だった。宗教が人生において非常に重要であると答えた日本人はわずか10%であり(多くの人は神道の結婚式と仏教の葬儀を抵抗感なく行き来する)、統一教会を含む多くのニューエイジ宗教に引き寄せられる人々もいる。外部の人間から見れば、こうした宗教は世間知らずの人々からお金を搾取する洗脳カルトだが、人気が衰えないのは、何らかのニーズを満たしていることを示唆している。自民党にとって統一教会は、熱心でよく組織された支持者集団であり、信者の票集めという選挙戦の最前線での仕事を引き受けてくれた。

こうした政党と宗教のつながりは異常なことではなく、必ずしも裏があるわけでもない。アメリカの福音派(U.S. evangelicals)と共和党の密接な関係は周知の通りである。同時に、アメリア南部の黒人教会は、会員の投票率を上げるのに十分な効果があることが証明されており、ジョージア州とテキサス州の共和党は日曜日の投票を禁止しようとしたが、これは悪い方向に作用した。

日本では、過去10年間連立政権の一翼を担ってきた公明党は、1930年に設立され、過去には政府からしばしば疑いの目で見られてきた仏教運動である創価学会という宗教団体に支えられている。公明党の山口那津男代表は、宗教と政治が結びついている問題について、8月初旬の記者会見で、統一教会は別問題であると示唆し、慎重な姿勢を示している。山口代表は「社会的な問題を抱えたり、大きな迷惑をかけたりする団体については、政治家は選挙で支援を求めたり、国民を誤解させるような行動を慎むべきだ」と述べた。

安倍元首相暗殺がなければ、今さらスキャンダルに爆発することもなかっただろう。統一教会の資金調達方法は、何年も前から批判されてきた。2009年には訴訟を受けて、資金調達方法を改め、信者が返還を要求したお金を返すと約束したが、最近になって、少なくともいくつかの問題が続いていることを認めている。統一教会関係者は、元信者からの苦情を聞く仕組みがあることを指摘し、該当件数は着実に減少していると主張している。

しかし、7月8日に安倍首相が殺害されてからの数週間で、国民は統一教会の政治的なつながりに目覚め、どんなに無害に見えても心配だと感じるようになったようである。違法なものは見つかっていないが、着実な報道は、この国の最も確立された政党と、倫理的に問題があり、弱い立場の日本人を食い物にしているように見える韓国の宗教団体とのつながりに焦点をあてている。その中でも、萩生田光一元経済産業大臣は、ブッシュ元大統領が演説したのと同じ教会関連の女性団体の会合に出席し、数年にわたり毎年650ドル程度の寄付をしていたことが判明した。萩生田は、この会のメンバーは一般の有権者であり、自分はこの会の慈善活動を支援していると説明した。

このような報道の中で、共同通信社は日本の国会議員712人全員を対象に、教会との関係を問うアンケートを実施した。その結果、100人が「何らかのつながりがある」と答えた。そのほとんどは、イヴェントに参加したり、募金活動のチケットを教会員に売ったりすることであった。また、30人の議員は、教会の会員が票集めを手伝ってくれたと言っている。

国民の反応は強く、多くの政治家たちがその関係を否定したり、ごまかしたりしたが、新たな報道で事実が発覚し、不信感が募った。また、出席した会合や寄付が統一教会と関係しているとは知らなかったと説得力のない主張をする政治家もいた。自民党と統一教会とのつながりが次々と明らかになるにつれ、岸田文雄首相はますます圧力を受けるようになった。岸田首相は、政権に新しい活力を注入するために、日本ではおなじみの内閣改造にいち早く踏み切った。首相はまた、閣僚や高官は教会との関係を絶つべきだと述べたが、その作業は個々の議員に任されているようだった。岸田は最近の記者会見で、「統一教会をめぐって国民から様々な意見が寄せられている。政治の信頼を確保するために、政治家はどう行動すべきかを考えるべきだ」と述べた。

しかし、性急な措置も功を奏さず、統一教会とつながりのある議員3人がまだ閣内に残っているとの報道がなされた。このため、7月上旬の参議院議員選挙で好成績を収め、わずか1カ月前に勢いに乗っていた政権が危うくなっている。7月中旬には63%あった支持率は、毎日新聞の最新の調査では36%にとどまっている。岸田の任期が危ういと言うのは早計だが、これほどの急落があれば、普通なら不運な指導者は退陣に追い込まれる。このように国家指導者が損切りをする傾向があるため、安倍首相を除いて、日本は過去16年間、回転ドア首相が続出している。

9月下旬に予定されている安倍首相の国葬(state funeral)は、戦後日本の政治家の国葬としては、第二次世界大戦を終結させたサンフランシスコ条約の交渉にあたった吉田茂に次いで2例目であることも、こうした事態が暗礁に乗り上げた一因となっている。今回の国葬は、日本を再び世界に知らしめた安倍首相の幅広い影響力を示す、有力者の集まりとなることが約束されている。出席予定者は、バラク・オバマ前米国大統領、カマラ・ハリス米副大統領、ナレンドラ・モディ・インド首相などだ。フランスのエマニュエル・マクロン大統領やドイツのアンゲラ・メルケル元首相も出席する可能性があると報じられている。このように世界的な支持を得ているにもかかわらず、毎日新聞の世論調査では53%の人が国葬に反対していると答えている。

岸田内閣に向けられた国民の怒りは、統一教会と自民党のつながりと偽善に対する一般的な不安以上に、明確な焦点がないように思われる。安倍元首相は韓国との関係で強硬な姿勢を示したが、これは日本の多くの地域に長年存在する反韓感情の底流を反映したものだ。

しかし、安倍元首相が殺害された後に明らかになったことは、親日的なナショナリストの感情と、弱者から金を引き出すことに熱心な韓国の宗教団体を結びつけた、皮肉な関係を指摘するものだった。多くの世界的人物がそうであるように、安倍首相も常に国際的な議論より国内での議論の方が多かった。死後もそうである。

※ウィリアム・スポサト:東京を拠点とするジャーナリスト。2015年から『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿している。20年以上にわたり、日本の政治と経済を取材しており、ロイター通信とウォールストリート・ジャーナル紙で勤務していた。2021年にはカルロス・ゴーン事件と日本への影響について共著を出版した。
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 古村治彦です。

 安倍晋三元首相の銃撃暗殺事件から、日本政治においては、「政治と宗教」のつながりが焦点になっている。具体的には統一教会と政界(主に自民党)のつながりが取り沙汰されている。私は政治家たちがどの宗教を信仰していてもそれは自由であるが、その情報は公開され、有権者へ投票の際の判断材料として提供されるべきだと考えている。それが嫌なら立候補しなければよい。そして、各政党はどの組織からどのような支援を受けているのかを明確に発表すべきだと考えている。これも有権者の判断のためだ。
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 統一教会は反社会的な行動のために多くの裁判で敗訴となっている。霊感商法や正体を隠しての勧誘や脱会の際の強引な引き留めなどが社会問題となり、かつ合同結婚式という、見知らぬ男女が結婚式で初めて会って有無を言わさずに結婚させられてしまうという儀式などのために、危険視されてきた。マスコミでは1980年代から1990年代にかけて報道されたがそれ以降は報道がなくなっていた。しかし、今回の安倍晋三元首相銃撃事件によってクローズアップされ、統一教会が政界に深くかかわっていることが明らかになった。統一教会と政界の接点の中心にいたのが安倍晋三という人物であった。より大きく言えば、自民党と活発な政治活動を続ける宗教を結び付ける存在が安倍晋三元首相だった。
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 安倍晋三元首相は2006年9月に首相に就任した。その前には安倍元首相や日本の右翼勢力の危険性は取り沙汰されていた。日本国際問題研究所のウェブサイトに玉本偉(たまもとまさる)研究員の論稿(英語で書かれた)が掲載された。その論稿は小泉純一郎首相が周囲の反対を押し切って靖国神社参拝を強行し、「ザ・カルト・オブ・ヤスクニ(the Cult of Yasukuni)」勢力が台頭し、また日本が右傾化することで周辺諸国から孤立するという内容であった。この論稿に対して、産経新聞の古森義久(当時のワシントン特別論説員)が新聞で取り上げ批判した。日本国際問題研究所が外務省からの補助金で運営されている団体なのにこのような偏向した内容の論稿を掲載して良いのかという論理で、日本国際問題研究所に「公開質問状」となる記事を掲載した。日本国際問題研究所の佐藤行雄理事長は狼狽し、産経新聞に謝罪文を送り掲載された。そして、玉本研究員をけん責処分俊、研究員の論説記事を全て削除した。

 それに対して、ニューアメリカ財団研究員スティーヴン・クレモンスは『ワシントン・ポスト』紙に「日本の思想警察の台頭」という記事を掲載した。これは日本の右翼勢力が、暴力も使いながら、言論封殺を行っており、その代表例が古森による玉本論文非難だという内容だった。古森はワシントン・ポストに反論文を掲載した。この頃、加藤紘一衆議院議員(当時)の自宅が放火され全焼するなど、右翼勢力による暴力まで用いた言論封殺の動きが活発だった。第一次安倍政権時代の分析については、副島隆彦先生と弟子たちの論文集『最高支配層だけが知っている日本の真実』(成甲書房)に詳しく書かれている。
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 安倍晋三元首相は、神道政治連盟、日本会議(生長の家の学生部から出た組織)、そして統一教会と深い関係を持ち、「政治と宗教」を象徴する人物であった。2006年の第一次政権時代から、右翼的な宗教との関係があり、日本の右傾化を進めたということになる。そして、国民全体がそれを許容した。その結果が現在のような閉塞状況であり、自民党の極端な右傾化、復古主義である。私たちは「カルト・オブ・ヤスクニ」という言葉をしっかりと覚えておかねばならない。これらの宗教団体は一様に日本国憲法の変更を主張し、自民党の憲法草案はそうした主張が多く盛り込まれたものとなっている。戦前への復古を目指す。このような動きについて、今回の安倍元首相銃撃暗殺事件を契機にして、国民に広く周知され、そうした動きが阻止されるということを願う。

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神道は長い間日本の政治と絡み合ってきた-そして、安倍晋三はその多くの団体と関わりを持ってきた(Shinto religion has long been entangled with Japan’s politics – and Shinzo Abe was associated with many of its groups

ケイトリン・ウゴレッツ筆(カリフォルニア大学サンタバーバラ校東アジア言語・文化研究科、博士取得候補者)

『ザ・カンヴァセイション』誌

2022年7月18日

https://theconversation.com/shinto-religion-has-long-been-entangled-with-japans-politics-and-shinzo-abe-was-associated-with-many-of-its-groups-186697

ケイトリン・ウゴレッツは、この記事から利益を得るいかなる企業や組織にも勤務したり、コンサルタントとして相談を受けたり、株式を所有したり、資金提供を受けたりはしておらず、学術分野における任命以上の重要な所属についても明らかにしていない。

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安倍晋三前首相の写真の前で献花する人々。安倍晋三元首相の葬儀を前に、弔問に並ぶ人々(2022年7月12日、東京・増上寺にて)。

安倍晋三元首相の狙撃犯とされる山上徹也容疑者は、安倍首相が統一教会として知られる、救世主の登場を約束する新興宗教運動とつながりがあったことが動機だと警察に供述した。

山上容疑者は、母親がこの団体に「多額の寄付(huge donation)」をしていたと説明し、母親を破産させ家庭を崩壊させたのはこの教会だと非難した。2022年7月11日の記者会見で、統一教会の日本支部長は、山上容疑者と安倍元首相は信者ではないが、山上容疑者の母親が信者であることを認めた。

統一教会は1954年、韓国の宗教指導者、故文鮮明(Sun Myung Moon)によって設立された。文鮮明は、家族を救い、世界平和を実現するために、自分はイエスから遣わされたと主張した。彼の信者は一般的に「ムーニーズ(Moonies)」と呼ばれている。

文鮮明は宗教活動以外にも国際的なビジネス取引や保守的な反共産主義の政治に深く関与した。

安倍家と統一教会の政治的なつながりは、母方の祖父・岸信介、父・安倍晋太郎と3代にわたっている。安倍晋三は2021年の時点でも統一教会関連のイヴェントに有料スピーカーとして登場した。

今回の銃撃の背後に考えられる動機は、日本を最も宗教的でない国の一つと見ている多くの人々を驚かせた。日本の宗教を研究対象としている学者として、私は安倍元首相と彼の政党である保守系与党である自民党が、いくつかの宗教的伝統や宗教政党とつながりを持っていることを知っている。しかし、安倍首相と神道との深いつながりがニュースになることはほとんどない。その理由は不明だ。

神道は長い間、安倍元首相の政治の一部であり、今も自民党にとってそうである。

●神道とは何か?(What is Shinto?

神道は、仏教と並ぶ日本の二大宗教の1つだ。多くの宗教的伝統と同様に、神道は人々にとって異なる意味を持つことがある。ある人々にとっては、日本人の中心的な信仰ということになる。また、神道を宗教として捉えていない人たちもいる。

神道は通常「神々の道(Way of the Gods)」と訳される。簡単に言うと、神道は「カミ(Kami)」と呼ばれる神々を崇拝することに焦点を当てた儀式の伝統の集合だ。これらの強力な神々は、作物の成長を助け、人々の健康を守るなど、多くのことに責任があると信じられている。

神道の神々の中には、日本の皇室とつながりのある神々がいることが知られている。特に太陽の女神(sun goddess)である天照大神(Amaterasu)は、日本の天皇や皇后の祖先であり、国の守護神として崇められている。伊勢神宮(Grand Shrines of Ise)は、日本で最も神聖な場所とされている。

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黒いスーツに身を包んだ男たちが一列になって歩く儀式的な行列。日本の中部にある三重県の伊勢市にある伊勢神宮の外宮(outer shrine)を後にする日本の、明仁上皇(2019年4月18日撮影)。

神道の儀式は、日本中、いや世界中の神社の神職が、神とその管轄下にある地域社会の人々のために行うものである。天皇陛下も毎年、五穀豊穣を祈り、即位や退位の際に国民のために神事を執り行う。

神事に参加することが神聖で、精神を高揚させるという人々もいる。また、神社に参拝することは、単に伝統や国の誇りの問題である人々もいる。

●神道との絡み合い(Entanglement with politics

神道は政治や国家と長い間複雑に絡み合ってきた歴史がある。現存する最古の日本の書物は、天皇や公家がその子孫であると主張する神々の神話的な行為を想起させ、彼らの支配を正当化するものであった。

研究者ジョリオン・トーマスは、著書『偽装された自由(Faking Liberties)』の中で、近代日本における宗教のあり方をめぐる100年にわたる議論の中心に神道があったことを明らかにしている。19世紀まで、日本には西洋で考えられているような「宗教(religion)」という概念はなく、日本語で「宗教」という言葉もなかった。しかし、1889年の明治憲法に信教の自由の権利(the right to religious freedom)が盛り込まれると、政府はどのような伝統や集団が宗教的であるかそうではないかを決定しなければならなくなった。

当時、神道は公式に分裂していた。天皇や神である祖先に関する儀式は無宗教の民間の儀式(「国家神道(State Shinto)」と呼ばれることもある)として、それ以外の個人の信仰や実践に関することは私的宗教として分類された。

第二次世界大戦後、アメリカを中心とする連合諸国(the Allies led by the United States)は日本に占領政府(occupation government)を作り、戦後の国家から神道の全てを宗教に分類して分離した。しかし、他の宗教と同様に、神道も日本の政治と関わりを持ち続けた。

日本における重要な団体の一つに、神道政治連盟(Shinto Association for Spiritual LeadershipSAS)がある。神道政治連盟(SAS)は、約8万社の神社が加盟する神社本庁(Association of Shinto Shrines)の政治部門として1969年に設立された。

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黒いスーツを着た3人の男性が先行している神職と他の3人に頭を下げられながら廊下を歩く。2005年8月15日、物議を醸した東京の靖国神社で戦没者への祈りを捧げた後、神職の後を歩く安倍晋三元首相(当時自民党副幹事長)。

研究者のマーク・マリンズによると、ナショナリスト集団の目的は、天皇の権力を増大し、憲法を改め、学校で神道の道徳教育を実施することである。また、日本の過去の軍国主義を象徴する空間として物議を醸している東京の靖国神社への政府関係者の参拝も支持している。この神社では、植民地支配や戦犯を含む戦没者の霊が、神道の神々として祀られている(are enshrined as Shinto deities)。

安倍首相とその政権は、数十年にわたり神道政治連盟(SAS)と緊密に連携してきた。2016年、安倍内閣の閣僚20人のうち19人が神道政治連盟に所属していた。14人は日本会議(Japan ConferenceNippon Kaigi)のメンバーだった。日本会議は、日本を守る会(Society to Defend Japan)などの神道系団体とつながりのある、神道政治連盟とは別の右翼民族主義団体である。安倍首相は日本会議のメンバーであり、特別顧問を務めていた。

安倍首相とその家族は、政府以外の右翼的な宗教プロジェクトにも関連している。2017年、安倍夫妻は超国家主義的な私立神道小学校に関する汚職スキャンダルに巻き込まれた。土地取得のための政府の巨額値引きに疑問が生じ、安倍夫妻は関係を断ち切り、学校の計画は頓挫した。

ナショナリズムとは別に、安倍は環境保護主義など現代神道の他の側面の政治化に貢献した。2016年、彼はG7首脳を、天照大神が祀られている三重県の伊勢神宮内宮(Inner Shrine of Ise)に招待した。この訪問では、植樹式(tree-planting ceremony)が行われた。学者であるアイケ・ロッツは、安倍がこの行事を利用して正当性を獲得し、国家的な公的精神性(national public spirituality)の一形態として神道を推進したと書いている。

安倍晋三は首相在任中も、そしてその後も、各世代の保守派、ナショナリスト、信奉者にとって、神道政治のリーダーでありモデルであった。この遺産は今後も生き続けている。

カリフォルニア大学サンタバーバラ校の博士課程に在籍するケイトリン・ウゴレッツは、日本の宗教、グローバリゼーション、デジタル技術、大衆文化を専門とする研究者だ。博士論文の研究テーマは、世界規模の神道信者のデジタルエスノグラフィーとオンライン神道共同体の成長というものだ。また、デジタル技術とソーシャルメディアの時代における東アジアの宗教の権威、信憑性、帰属意識、革新性に関連する問題にも関心を持っている。ゲームやアニメのプロジェクトで日本の宗教と大衆文化に関するコンサルティングを行った経験があり、ユーチューブ(YouTube)の教育チャンネル「Eat Pray Anime」を主宰している。

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日本の思想警察の台頭(The Rise of Japan's Thought Police

スティーヴン・クレモンス筆

2006年8月27日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/archive/opinions/2006/08/27/the-rise-of-japans-thought-police/7953533b-62bf-482b-b854-acb7436c4dd5/

他の国であれば、政策通の間で繰り広げられる、利害関係の薄い争いに過ぎないかもしれない。しかし、受け入れ可能なナショナリズムを見つけるのに苦労している日本では、最近起こった、新聞の論説委員と一流の外交政策シンクタンクの編集者との間の激しい争いは、はるかに憂慮すべきものであった。公人に対する右翼の威嚇キャンペーンの最新の攻撃は、言論の自由を圧殺し市民社会の後退を招いているのだ。

2006年8月12日、超保守的な(ultra-conservative)産経新聞に所属するワシントンを本拠とする論説委員である古森義久は、日本国際問題研究所(Japan Institute of International AffairsJIIA)が運営するオンライン・ジャーナル「コメンタリー」の編集長である玉本偉の記事を攻撃した。玉本の記事は、反中国的な恐怖を煽り、戦没者を祀る神社への公式参拝に代表されるような、日本における新しい「タカ派ナショナリズム(hawkish nationalism)」の台頭を懸念するものであった。古森はこの記事を「反日(anti-Japanese)」と決めつけ、主要な著者を「極左知識人(extreme leftist intellectual)」であると非難した。

しかし、古森はそれだけにとどまらなかった。小森は研究所の佐藤幸雄所長に対して、小泉純一郎首相が毎年靖国神社(Yasukuni Shrine)に参拝していることに疑問を呈する著者である玉本を支援するために税金を使ったことについて謝罪するよう要求したのである。

驚くべきことに、佐藤は古森の要求に従った。日本国際問題研究所のウェブサイトは日本の外交政策と国家アイデンティティの問題について率直な議論をする場であるべきだという彼自身の声明も含めてもそうだ。佐藤所長は先週、産経新聞の編集部に手紙を送り、許しを請い、「コメンタリー」の編集管理を全面的に見直すことを約束した。

佐藤の古森と産経新聞に対する降伏は息を呑むほどの出来事であった。しかし、日本を覆っている政治的雰囲気の中では驚くには当たらない。最近のナショナリズムの高まりに刺激され、1930年代の軍国主義(militarism)、天皇崇拝(emperor-worship)、「思想統制(thought control)」への回帰を切望する過激な右翼活動家たちが、より主流の世界に進出し、自分の考えにそぐわない人々を攻撃し始めたのだ。

先週、こうした過激派の一人が、小泉純一郎首相の今年の靖国参拝を批判した元首相候補の加藤紘一の実家を焼き払ったばかりだ。数年前には、富士ゼロックスの小林・トニー・陽太郎会長が「小泉首相は靖国参拝を止めるべきだ」と発言した後、自宅を手製の爆弾で狙われたことがある。爆弾は爆発する前に解体されたが、小林は殺害の脅迫を受け続けた。圧力はその効果をもたらした。小林が率いる大企業の連合組織である経済同友会は、小泉首相の中国に対する強硬姿勢や靖国参拝に対する批判を撤回し、小林は現在ボディーガードと一緒に行動している。

2003年、当時の田中均外務審議官は自宅で時限爆弾を発見した。北朝鮮に甘いということで狙われた。その後、保守派の石原慎太郎都知事が講演で、田中に対する攻撃は「自業自得(had it coming)」と主張した。

自由な発想と脅迫が対峙する(free-thinking-meets-intimidation)もう一つの例は国際的に尊敬されている慶応大学の名誉教授の岩男寿美子である。昨年2月、日本の多くが女性の皇位継承を支持する用意があることを示唆する論文を発表した後、右翼活動家が彼女を脅迫した。彼女は主張の撤回を発表し、現在は身を隠していると伝えられている。

このような過激な言動は、過去に起きた不穏な響きを呼び起こす。1932年5月、犬養毅首相は、満州における中国の主権(recognition of Chinese sovereignty over Manchuria)を認め、議会制民主政治体制(parliamentary democracy)を堅く守ることに反対した右翼活動家の一団によって暗殺された。第二次世界大戦後、右翼の狂信者たちは主に影に隠れていたが、日本の国体(national identity)、戦争責任(war responsibility)、皇室制度(imperial system)に関する微妙な話題に近づきすぎたり、公然と発言したりする人々を脅かすことはあった。

今日の右派による脅迫について憂慮すべき重要な点は、それが機能していること、そしてそれがメディアの中に相互主義を見出したことである。産経新聞の古森は、最近の事件の犯人たちと直接の関係はないが、自分の言葉が頻繁に彼らを動かしていること、そして彼らの行動が自分の発言に恐怖感を与える力を与え、彼らが議論を封じるのを助けていることに気づいていないことはないだろう。更に悪いことに、日本の現首相である小泉純一郎も、来月の選挙で後継者となるであろう安倍晋三も、日本の主要な穏健派の言論が自由に表現されることを抑圧しようとする人々を糾弾するようなことは何も言っていない。

脅迫のケースはまだまだたくさんある。私はここ数日、日本のトップクラスの学者、ジャーナリスト、政府の公務員など数十人と話をした。彼らの多くは、右派からの暴力や嫌がらせを恐れて、数々の事件について公に言及しないよう私に懇願してきた。ある政治評論家は私にこう書いた。「右翼が私の書くものを監視し、さらに問題を起こそうと待ち構えているのは知っている。このような人たちのために時間やエネルギーを無駄にしたくない」。

日本にはナショナリズムが必要だ。しかし、健全なナショナリズムが必要だ。タカ派的で過激なものではないナショナリズムが必要だ。最近、こうしたタカ派的で過激なナショナリズムのために、この国で最も優秀な人たちの多くがその見解を明確に示すことができない状態を余儀なくされている。

スティーヴン・クレモンス:ニューアメリカ財団American Strategy Program)アメリカ戦略プログラム部長兼日本政策研究所(Japan Policy Research Institute)共同創設者。

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私は過激派を支持しない(I Don't Back Extremists

2006年11月11日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/archive/opinions/2006/11/11/i-dont-back-extremists/f78707dc-62cb-4715-b224-89621adb50d1/

「日本の思想警察の台頭」(8月27日)という記事の中で、筆者スティーヴ・クレモンスは私の誠実さに対する攻撃を行い、また重要な事実についても間違っている。クレモンスの発言と事実は次の通りである。

クレモンス氏:産経新聞と古森義久は、「1930年代の軍国主義への回帰を切望する極右活動家の過激化したグループ」と何らかの形で連携している。

私の回答:産経新聞は毎日220万部発行されている日本の主流な新聞である。産経新聞も私もそのような活動家たちとは全く関係がない。

クレモンス氏:小森氏は「自分の言葉がしばしば彼ら(テロリスト)を活気づけ、彼らの行動が今度は彼の主張に対して恐怖感を煽る力を与え、彼らが議論を封じるのを助けることを認識していないことはないだろう」。

私の回答:クレモンス氏は、私が意図的にテロ行為を鼓舞しようとしていると非難している。彼はこの主張に対して何の立証もしないし、することもできない。要するに、産経新聞も私もそのような行為を糾弾し、反対しているのである。

産経新聞は、小泉純一郎首相の政敵である加藤紘一の自宅を放火した事件を厳しく非難している。

小泉純一郎首相の政敵である加藤紘一の自宅を放火した事件では、加藤自らが編集部に感謝の言葉を述べている。

クレモンス氏:古森氏は表現の自由を抑圧した。

私の回答:私は、政府の出資する研究所が、海外の読者に向けて、政府の政策や指導者について、非常に意見の多い批判や誤った報道を英語で発信していることを報道した。私は言論の自由を強く支持しており、政府が出資している客観的であるべき政策研究機関がこのような攻撃を助長していることを国民に知らせることもその一つだ。クレモンス氏が主張するように、私は誰かに謝罪やその他の行動を要求したことはない。

古森義久

編集委員

産経新聞、東京

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 安倍晋三元首相の銃撃暗殺事件から約2週間が経過した。岸田文雄首相は安倍元首相の「国葬」を9月に執り行うと発表した。自民党の茂木敏充幹事長は国葬反対の国民の声を「承知していない」と切り捨てた。根拠となる法律もなく、国会で審議を行うこともなく、閣議決定のみで国葬を強行している。そのような強行突破での実施が死者を悼む行事となるのかどうか甚だ疑問だ。

 安倍元首相を銃撃したとして殺人容疑で逮捕された山上徹也容疑者の供述から、自民党と統一教会の関係に人々の関心が集まった。強引な勧誘や実質的な献金強制、それに合同結婚式などが日本で報道されたのは1980年代から90年代にかけてであった。その当時、一家離散の悲劇に苦しむ人々や全財産を失って悲嘆にくれる人々の姿が報道された。現在、「信教の自由で不幸になるのは自己責任だ(自由権)」という一般論を並べ立てながら、統一教会を遠回しに擁護する論調がマスコミ(五大新聞社と五大テレビ局)でも流されていたが、その実態に再び焦点があてられることで少しずつ消えているようだ。

 統一教会の問題点はそのカルト性と政治への接近の2つが挙げられる。カルト性については1980年代からずっと報じられてきた。しかし、実生活では、統一教会と名乗らずに別の名前の団体として人々を勧誘し、最終的には信者にしてしまうということが起きている。私の学生時代には過激派(革マル派)が学生自治会を牛耳っており、立て看板、ビラを通じて、「統一教会、原理研には気をつけろ」という警告を盛んに出していた。私は「革マル派に入るのだって危ないではないか」と思いながら、ビラを流し読んでいた。ただ、当時の報道(1990年代)もあって気を付けるようにはしていた。

 統一教会の政治との関わり、特に自民党との関わりは、「政治の玄人」「政治のプロ」のような人々からの話からの知識として知っていた。「自民党の議員事務所には統一教会系の統一日報が置いてある」「無給のスタッフを各議員事務所に派遣している」「選挙の動員などにも協力している」といったことは聞いていた。また、アメリカの日本研究分野の大物であるリチャード・J・サミュエルズの『マキァヴェッリの子どもたち』という日本とイタリアの19世紀以降の歴代指導者の比較研究では、岸信介、文鮮明、笹川良一の関係について言及されている。

 韓国発祥の統一教会が現在のような巨大な宗教帝国となったのは、日本の資金のおかげである。日本からの資金が全体の7割を占めるということは、日本以外の国々では強引な献金や霊感商法は行っていないということになる。日本の統一教会は集金マシーンとなっている。そこには日本による植民地支配の歴史を絡めての「贖罪意識」を刺激しての集金ということもあるようだ。そして、自民党との大物政治家たちのつながりを誇示することで、統一教会はその「正当性」を人々にアピールしてきた。その代表格が安倍晋三元首相だ。

 山上徹也容疑者のものと思われるツイッターアカウントが発見され(現在は凍結中)、その中で、山上容疑者が安倍晋三元首相を支持する「ネトウヨ」的な書き込みが多くなされていることが明らかにされた。それなのにどうして安倍元首相を銃撃するに至ったのかということであるが、自分の家族を崩壊させた統一教会と安倍元首相との間に緊密な関係があることを知った、最初は教団の最高幹部を狙ったが攻撃が不可能なので安倍元首相に標的を変えたということになっている。ここのところはより緻密な分析が必要であろう。

 統一教会にとって日本と自民党という存在は宗教帝国として拡大していく上で欠くことができない存在となった。結果として、統一教会が自民党に対する影響力を持つまでに至ったということも言われている。しかし、より直接的に言えば、日本人の膏血を絞ることで肥え太った統一教会との関係を清算せずにずっと持ち続けた日本人が日本の国民政党たる資格があるのか、ということだ。彼らが述べる「家族・家庭の重要さ」「国民の生命財産を守る」という言葉は何の意味もなく、空虚なものでしかないということになる。

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安倍元首相と日本が文鮮明の統一教会にとっていかに重要な存在になったか(How Abe and Japan became vital to Moon’s Unification Church
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安倍晋三元首相を暗殺した容疑者は、安倍元首相が母親の金銭トラブルの原因とされる宗教団体と関係があったため、恨んでいると警察に語ったとメディアは報じている。(キヨシ・オオタ/ブルームバーグ・ニューズ)

マーク・フィッシャー筆

2022年7月12日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/2022/07/12/unification-church-japan-shinzo-abe/

悲嘆にくれる高齢者たちをターゲットにした訪問販売戦術を用いて、そして著名な政治家の育成などで、統一教会は何十年もかけて、日本を最も信頼できる利益の中心地として確立してきたと、故文鮮明牧師の多くの部門を持つ精神的・経済的世界帝国を調査分析する捜査官たちは口々に語る。

今、安倍晋三元首相を暗殺した容疑者は、自身の母親の破産を宗教団体のせいだと考えていると警察に話し、統一教会が犯人の母親が日本支部の会員だったことを確認した後、日本において長い間論争の的になっていた統一教会の役割について再び精査される状況になっている。

日本国内での報道によれば、銃撃の容疑者である山上徹也は、母親が宗教団体に大金を寄付するよう圧力をかけられ、経済的に破綻したと警察に供述しているということだ。

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7月8日の奈良での暗殺現場で、警備員にタックルされる安倍元首相狙撃容疑者の男。(読売新聞社/ロイター経由)。

統一教会の日本支部を運営する田中富広会長は月曜日の記者会見で、山上容疑者の母親は1998年に入信し、その後一時的に退会し、今年になって復帰したと述べた。教会幹部は、母親が団体に献金していたという情報はなく、山上容疑者自身が教会に所属していたという記録もないと述べた。警察はまだその宗教団体名を明らかにしていない。

火曜日、日本のメディアは、奈良の統一教会の建物のファサードから弾痕が発見されたと報じた。日本のテレビ局であるフジニューズネットワークによると、山上容疑者は安倍元首相を撃つ前にそこで銃のテストをしたと捜査当局に語ったという。

統一教会は日本で数十の教会を管理しており、奈良の教会もその一つで、安倍元首相が金曜日に銃撃された場所から数百メートルしか離れていない。

安倍元首相は他の多くの世界的指導者と同様に、統一教会関連のイヴェントに有料スピーカーとして出演していたが、最近では9月にドナルド・トランプ元大統領も出演した番組に出演し、ヴィデオリンクを通じて講演を行った。

トランプ前大統領は文鮮明の未亡人であり、統一教会で「真の母(True Mother)」として知られる韓鶴子が主催した「希望の集会」で、彼女を「偉大な人物」と呼び、「世界中の平和のための彼女の驚くべき仕事」を賞賛した。彼は文鮮明夫妻に感謝の言葉を述べた。「彼らが地球全体に引き起こしたインスピレーションは信じられないほどだ」。 文鮮明は2012年に死去し、それ以来、彼の妻と子供たちは彼のビジネスや他の組織の支配権をめぐって争ってきた。

安倍首相はトランプ大統領が出演した同じ番組で、韓鶴子に「世界の紛争解決、特に朝鮮半島の平和的統一に向けたあなたのたゆまぬ努力に深く感謝する」と表明した。

自らを救世主(messiah、メシア、メサイア)と称する文鮮明は、イエスから地上での活動を継続するよう指示されたと説いた。

その歴史を通して、文鮮明の教会とその関連団体は、世界の政治指導者、有名人、他の宗教の著名な聖職者たちを講演に招くために高額の謝金を支払ってきた。これは、統一協会を有名で尊敬される人物と関連づけることによって信用を勝ち取るための長年のキャンペーンの一部である。

アメリカ国内と世界各地で文鮮明のビジネスと政治的な行動について長年研究してきたラリー・ジリオックスは土曜日に次のように述べた。「彼らは自分たちに正当性を与えてくれる人になら誰にでも金を出す。大きな名前(有名性)は小さな名前を次々と引きつけ、地元のベンチャー企業を助けることができる」。

具体例を挙げる。1990年代半ば、ジョージ・HW・ブッシュ元大統領やジェラルド・フォード元大統領、コメディアンのビル・コスビー、ソ連のゴルバチョフ元書記長などが、日本とワシントンで開かれた文明性主催の会議で講演を行った。ブッシュは、あの世での愛する人の幸せを保証するために何百万ドルも寄付するよう圧力をかけられたとして、統一教会と文氏が経営するハッピーワールド社を訴えた何千人もの日本人に対して、日本の裁判所が1億5000万ドル以上の賠償金を認めた数ヶ月後に講演を行った。

(ワシントン・ポスト紙が彼の出演について報じた後、ブッシュは当時一般的に8万ドル程度だった講演料を慈善団体に寄付することにした)

学者や政府の調査員たちによる統一教会に関するいくつかの研究によれば、60年代以上にわたり、統一教会とその様々な分派は、アメリカを含む世界各地の事業を助成する収益センターとして日本に依存してきたという。

『ワシントン・タイムズ』紙や他の多くの国でのメディア事業など、文鮮明の最も有名な構想のいくつかが損失を出しても、統一教会は主に「霊的販売(spiritual sales)」と呼ばれるものに基づく強力な収益源を日本部門に期待することができた。

かつて統一教会員で、その後精神衛生カウンセラーになり、破壊的カルトについての本の著者でもあるスティーヴ・ハサンは土曜日次のように述べた。「日本の統一教会員たちは、死亡記事を詳しく調べ上げ、亡くなった人の家族の家のドアをノックして、『亡くなったあなたの愛する人が私たちと通信している。その人は銀行に行って、あなたの愛する人が霊界で昇天できるように統一教会にお金を送ってほしい』と述べた。このような行動をしてきたの

統一教会のルーツは韓国だが、統一教会を研究してきた複数の歴史家の研究によれば、伝統的に教会の富の70%を提供してきたのは日本であったという。日本の元教会幹部はかつてワシントン・ポスト紙に、文鮮明の組織が1970年代半ばから80年代半ばにかけて、日本からアメリカに8億ドルを送金したと語った。

統一協会の元幹部ロン・パケットは1997年にワシントン・ポスト紙に次のように語っている。「文鮮明は韓国と日本からマンハッタン・センター(ニューヨーク市にある教会の主要施設の一つ)に現金の入った袋を何百と送ってきた。そのお金がどこから来るのかと尋ねるといつも答えはただ『お父様から』というものだった。統一教会員たちが使う「お父様」とは文鮮明を意味する。

日本では長年、統一教会信者たち(Unificationists)が高麗人参や、文鮮明が韓国で経営する会社で作られた石塔のミニチュアなどの宗教用品を売る光景をよく目にした。統一教会信者たちは、その商品に霊的な力が宿っていると主張し、日本では集団訴訟に発展し、数百人が示談を勝ち取った。

日本の小政党であるNHK党の黒川敦彦代表は、先月のテレビ放送で、統一教会は「反日カルト」であり、1958年に統一教会が日本に最初に進出したのは安倍首相の祖父である岸信介元首相のせいであると述べた。文鮮明は1975年に日本で最初の新聞を創刊し、その後すぐに彼の特徴である信者の集団結婚を日本に持ち込んだ。

前述のハッサンによると、文鮮明の神学では、彼の母国である韓国は世界を支配する運命にある支配者民族の故郷である「アダム」の国であり、日本は韓国に従属する「イヴ」の国であるという。統一教会では、イヴがサタンと性的関係を持ち、人類を堕落させ、文鮮明が人類を救済するようになったと教えられている。

文鮮明の未亡人である韓鶴子は現在、統一教会の正式な後継団体である「世界平和統一家庭連合(Family Federation for World Peace and Unification)」を統括している。文氏の息子亨進(ヒョンジン、通称:ショーン)が立ち上げた対抗組織も、日本に進出している。ペンシルヴァニア州ニューファンドランドに拠点を置く世界平和統一神殿(World Peace and Unification Sanctuary)は、「鉄の棒の牧師たち(Rod of Iron Ministries)」として知られ、AR-15アサルト銃は「攻撃的な悪魔の世界から身を守るため」の宗教儀式に重要な役割を果たすと説いている。

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2018年2月、ペンシルヴァニア州ニューファンドランドにある世界平和統一聖堂で、装填されていない武器を手にする礼拝者たち。

ヒョンジンの兄クックジン(國進、通称ジャスティン)は教会界で「真の息子(True Son)」と呼ばれ、ペンシルヴァニア州グリーリーに武器製造会社カー・アームズ社(Kahr Arms)を所有し、2010年に父親から日本に派遣され、教会の法的地位を剥奪しようとする動きに反発した。

國進はその年の演説で次のように述べた。「警察が私たちの教会に対してかなり大規模な捜査を行っていたので非常に困難な時期だった。警察は私たちの教会を徹底的に調査した。彼らは私たちの教会のメンバーを逮捕し、私たちの教会を捜索していた。それも1つや2つの場所だけでなく、多くの場所で捜索が行われた」。

演説の中で、國進は、教会が日本人に、亡くなった、愛する人の霊を救うために多額の寄付をするよう圧力をかけていたことを否定した。彼は、日本における教会の大口献金者の多くにインタヴューしたことがあると述べた。國進は「私は彼らに、“何があなたをそんなに寄付する気にさせるのですか”と尋ねた。そして、非常に多くのケースで、兄弟姉妹は、先祖がやってきて、そうするようにと言ったと私に言ってくれたのだ」と述べた。

※東京を拠点とするジュリア・ミオ・イヌマは本記事の作成に貢献した。

※マーク・フィッシャー:上級編集員。様々なテーマを網羅。ワシントン・ポスト紙のエンタープライズエディター、ローカルコラムニスト、ベルリン支局長を経て、メトロ、スタイル、ナショナル、海外デスクで30年にわたり、政治、教育、ポップカルチャーなど、さまざまな分野を取材してきた。 ツイッターアカウント:@mffisher

(貼り付け終わり)

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