古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:維新の党



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 2015年5月17日に維新の党(大阪維新の会)が求めていた、大阪市解体(再編)に対する賛否を問う住民投票が行われました。結果は賛成、反対が拮抗しましたが、反対が1万票ほど多く、いわゆる「大阪都構想」は否決されました。これによって、橋下徹市長は政治家からの引退を表明しました。

 

 今回の住民投票の分析でよく聞かれるのが「南北問題」と「シルヴァー・デモクラシー」です。住民投票の結果、賛成が多かったのが大阪市北部の各区、反対が多かったのが南部の各区という地図が示され、「福祉に自分たちが払っている税金が無駄遣いされていると感じている金持ちが多い北部は賛成が多く、福祉に頼りきりの貧乏人が多く南部は反対した」という主張がなされています。しかし、もっと詳しく投票結果を当てはめていくと、一概にこうした過度に単純化した図式は当てはらまないのだそうです。

 

 もう1つのシルヴァー・デモクラシーは、世代別の賛成と反対の割合を挙げて、「若い人たちは賛成が多かったが、高齢者たちは反対が多かった」という主張になっています。そこから「現状維持を好み、自分たちの利益しか考えない老いぼれたちと抑えつけられるかわいそうな若者たち」という世代間分裂を煽るような言論がなされています。マスコミに出ているような影響力のある一部電場芸者の皆さん方で、都構想に賛成だったような方々がこのような分析を鼻高々で語っているなぁと私は感じています。

 

 こうした過度な単純化によって、改革の敵として「貧乏人」と「老人」がフレイム・アップされ、これらが憎悪のターゲットにされようとしています。私はこうした動きはとても危険だと考えます。まず何より、国民の中の分裂と敵対関係を煽るような言論は何の利益にもなりません。それでは貧乏人や老人には参政権を与えないと言うのでしょうか、福祉を与えないと言うのでしょうか、お前らは邪魔だから死んでしまえと言うのでしょうか?

 

 私はこうした言論はあらかじめ用意されていたんだろうと思います。成功した場合のシナリオと失敗した場合のシナリオがあったんだろうと思います。賛成した場合は「思い切った改革を求めているのが民意だ。だから国政レヴェルの最大の改革である憲法改正をやるべきだ」という主張がなされたでしょう。今回は失敗した場合のシナリオが採用されているんでしょう。それは「改革を進めたい人たちがいるのに、それを邪魔する既得権者たちがいる、それが貧乏人と老人だ」ということだと思います。小泉純一郎元首相が使った、「抵抗勢力」というレッテル貼り(レイべリング)して吊し上げて叩き潰すというやり方と同じです。

 

 改革を進めたい善の「金持ち」「若者」と抵抗勢力である悪の「貧乏人」「老人」という過度に単純化した勧善懲悪の物語にしていくんでしょう。

 

 シルヴァー・デモクラシー(silver democracy)という言葉、特にアルファベットの方をインターネット検索していただくと、日本の高齢化社会と民主政治体制(デモクラシー)の関係、投票に占める高齢者の評が占める割合が大きいために改革が進まない、後ろ向きというアメリカ系の日本研究者たちの論文のタイトルがたくさん出てきます。日本の広告会社、シンクタンク、自民党が一緒になって、「これは使える」ということで、この言葉を意図的に「輸入」して使っているのではないかと私は考えます。

 

 しかし、本来のsilver democracyというのは19世紀にアメリカの農民たちから起きた大きな動きを象徴する言葉でした。アメリカの農民たちは19世紀、自分たち自身が鋳造した銀貨を正貨として流通させようという運動を起こしました。それを支持したのが、民主党の大政治家ウィリアム・ジェニングス・ブライアン(William Jennings Bryan、1860―1925年)でした。この運動こそは下からの民主運動でした。そうした立派な言葉を日本国民の間に分裂と対立を招くために使うというのは愚かしいことです。

 

 私が1つ興味深いと思ったのは、政治家・橋下徹の師匠的存在で、彼を支えたのが堺屋太一であるということです。堺屋太一は経済評論家として有名ですが、現在の60代後半(1947年から1949年くらいまで生まれの人々)を指して、「団塊の世代」と名付けたことでも有名です。今回の住民投票の結果で「敵」としてこの団塊の世代もフレイム・アップされている訳ですが、堺屋は最後の最後までこの世代を利用し尽くして、「自分の利益となるように、美味しくいただいた」と言うことが出来るでしょう。

 

 私は、住民投票後の「失敗の場合のシナリオ」は次のようになると考えます。「現状に不満を抱え、改革して“美しく、とてつもない”日本を作りたいと考えている人々がいる。一方で、日本が抱える問題の原因となってきた人々(貧乏人と老人)がいる。彼らがいる限り、日本の閉塞感と衰退を何とかすることはできない」と煽り、改革(究極の改革である憲法改正)に賛成しない人間たちをマージナル化していき、憲法改正にまで突き進む、と。大変危険な方向に日本は流れていると私は考えます。

 

 改革という名前の「革命」に知恵もなく熱狂し、踊らされた後に来るのは「地獄」であるということは歴史が証明しています。

 

(終わり)









 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 本日、維新の党の新興役員会が開催され、橋下徹(大阪市長)・維新の党共同代表と松井一郎(大阪府知事)・同党幹事長が辞任する旨が発表されました。江田憲司衆議院議員が代表となり、幹事長には松野頼久衆議院議員が幹事長に就任することになりました。

 

 新聞報道によれば、国会議員団は両者の辞任を慰留し、統一地方選後への復帰という条件で、辞任を了承したということです。

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左から松井氏、橋下氏

 

 維新の党は先日の総選挙でも惨敗という程でなく、公示前の議席42議席を41議席と1議席減らしただけで(議員定数が5削減されたことも考えねばなりません)、選挙前の予想よりも善戦でした。近畿ブロックでは比例票で約200万票(全国で800万票)を獲得するなど、健闘していました。

 

 前回の選挙で戦った日本維新の会(大阪維新の会と石原慎太郎氏率いる太陽の党が合併)の時もそうでしたが、「維新」には、瀕死の政治家たちを蘇らせて、議席を得させる効果があるようです。その点では、維新のブランド力は侮ることができません。しかし、その求心力は落ちているといのが現状のようです。維新の党の国会議員団の顔ぶれを見てみると、元々は自民党だったり、民主党だったり、みんなの党だったりとデビューからずっと橋下氏と共に行動してきたという、大阪維新の会生え抜きという人は少ないのです。

 

 それでも橋下氏らオリジナルの大阪維新の会は危機感を持っているようです。大阪維新の会は地方選挙でも力に陰りが見え始めているようです。大阪市議会、大阪府議会、堺市議会などで大阪維新の会系の議員たちは過半数に届かず、大阪維新の会系対他の既存政党という構図になっているようです。大阪維新の会はいわば組織に喧嘩を売っていて、橋下氏の個人の魅力と発信力で選挙をやっていますから、橋下氏の神通力が落ちてしまえば、苦戦するのは当然です。

 

 今回の選挙でも維新の党は善戦しましたが、近畿圏で既存政党を大きく陵駕することができず、小選挙区での勝利も半減(前回が12→今回が5)となりました。これでは、橋下氏(バックにいる上山信一・竹中平蔵の慶應義塾大学SFCキャンパス教授陣と堺屋太一)が悲願としている大阪都構想を実現することは難しいと判断し、地元に専念するということになったようです。

 

 しかし、考えてみると、大阪都構想のような大きなアイディアを実現するためには、国のバックアップも必要です。維新の党の国会議員団は衆議院で41名、参議院で11名ですので、他党の協力がなければ難しい状況です。地元では自民党、公明党、民主党、共産党などが揃って反対という状況では、他党の執行部としても応援しにくいし、特に近畿圏出身の維新の党以外の国会議員たちは地元に配慮して応援できません。

 

 そうなると、大阪市議会、大阪府議会、他の地方自治体の議会や首長の圧倒的多数を大阪維新の会で押さえ、国(国会議員)に「民意」というプレッシャーを与えねばなりませんが、橋下氏の話題先行型の政治姿勢では今のところ、これも厳しいようです。

 

 橋下氏と松井氏が揃って党役職辞任となると、維新の党の3つのグループ(私は大阪ウィング、日本維新の会国会議員団系、結いの党系と呼んでいます)のうち、野党再編のキーマンである、江田憲司氏、松野頼久氏、柿沢未途といった人々が党の中心となります。実際に、江田氏が単独で代表、松野氏が幹事長、柿沢氏が政調会長、江田氏と出身が同じ(岡山県、東大法学部、官僚)の片山虎之助氏が総務会長と党の重要なポジションを大阪維新の会系以外が全て押さえることになります。

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左から江田氏、松野氏

 

 私は、今回の総選挙に橋下氏が出馬できなかったこと、大阪維新の会系の力が落ちたことから、橋下氏と松井氏が「名誉ある撤退」を選び、大阪に立て籠もる戦略に出たのだと思います。それで大阪都構想が実現するのかとなると、それも難しいと思います。

 

 大阪都構想が頓挫した場合、橋下氏は大阪市長を辞任し、政界から去るのではないかと思います。一方の松井氏は国政にも関心を持っているようですから、2016年の参議院議員選挙に出馬するのではないかと思います。しかし、それもその時までに維新の党が残っていて、大阪維新の会系の力がまだ健在であったらの話です。

 

 こうして見ると、大阪維新の会は地方政党であるべきだったのだろうと思います。国政への色気を出したために、大阪維新の会の独自色が薄まってしまい、中途半端になってしまいました。そして、国政政治家たちにうまく利用されてしまったというところもあります。橋下氏はとても威勢が良く、歯切れもよくて、頭の回転も速い人ですが、国政政治家の老練さにはコロッと騙されてしまったのかもしれません。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「維新の党:橋下代表、松井幹事長が辞任 「都構想に専心」」

 

毎日新聞 20141223日 2029分(最終更新 1223日 2104分)

http://mainichi.jp/select/news/20141224k0000m010057000c.html

 

 維新の党の橋下徹共同代表(大阪市長)は23日、東京都内で開かれた同党の執行役員会で「大阪都構想実現に専心したいのでいったん職を退きたい」と述べて共同代表の辞任を表明し、了承された。松井一郎幹事長(大阪府知事)も辞任した。衆院選での伸び悩みを受け、都構想の実現がかかる来春の統一地方選での大阪府議選、同市議選に集中せざるを得なくなった。

 

 両氏は統一選後に復帰する見通し。橋下氏は最高顧問、松井氏は顧問に就任する。江田憲司共同代表が代表になる。松井氏の後任の幹事長には松野頼久代表代行が就任する。

 

 江田氏は慰留したが、橋下氏らの意志が固いため、辞任が一時的であることを前提に了承した。松井氏は役員会後、記者団に「大阪都構想は維新の一番中心の政策。最も大事な統一選に専念したい」と説明した。

 

 維新は大阪府議会、市議会ともに過半数を割っている。橋下氏らは都構想実現のため、来春の府市議選での過半数獲得を目指す考えだ。

 

 しかし先の衆院選で大阪の小選挙区で維新が勝利したのは5選挙区にとどまった。2012年衆院選での日本維新の会の12からは半減以下。府市議選での過半数獲得は容易ではないとの見方も強い。

 

 維新の看板である都構想が実現の見通しを失えば、橋下氏はもちろん、維新自体も求心力を失って解体に向かいかねない。橋下、松井両氏の辞任は、足元が崩れるなか、生き残りになりふりをかまっていられなくなったためだ。国政で影響力を発揮することで都構想実現につなげようとしたかつての戦略は破綻した。

 

 橋下氏が退くことで、江田氏の党内での影響力が増す可能性もある。政調会長には江田氏に近い柿沢未途氏が就任する。野党再編を巡っても、民主党の労組系議員を激しく攻撃してきた橋下氏に比べれば江田氏のほうが進めやすいとの見方もある。

 

 ただ、江田氏は記者団に対し「今後も橋下、松井両氏の意見を聞きながら党運営を進めることに変わりはない」と強調した。【葛西大博、熊谷豪】

 

 

●「維新、橋下共同代表が辞任 松井幹事長も、大阪都構想に専念」

 

東京新聞 20141223 1822

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014122301001681.html

 

 維新の党の橋下徹共同代表(大阪市長)と松井一郎幹事長(大阪府知事)は23日、東京都内で開かれた党執行役員会で役職を辞任する意向を伝え、了承された。「大阪都」構想の実現に向け、来年4月の統一地方選で行われる大阪府議・市議選への対応に専念する。

 

 橋下氏は最高顧問に、松井氏は顧問に就く。代表は江田憲司共同代表が単独で、幹事長は松野頼久代表代行がそれぞれ務めることも決まった。

 

 橋下氏は執行役員会で「当面の間、党の役職を離れたい」と述べた。国会議員団側は両氏に、統一地方選後に復職するよう強く要請した。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)









 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 2014年12月14日の総選挙の結果、民主党は公示前の62議席から73議席へと議席を増加させました。しかし、代表の海江田万里氏が小選挙区で落選し、比例復活もできなかったために、党代表を辞任すると発表したことを受け、2015年1月18日に代表選挙を行うと発表されました。海江田氏が落選していなかったらどうだったか分かりませんが、勝敗ラインを100議席としていましたので、それに届かなかった場合には責任論が出て、民主党の伝統芸能であるお家騒動が起きたことでしょう。

 

 下に貼り付けた新聞記事によると、細野豪志元幹事長が代表選挙への立候補を正式に表明し、岡田克也元代表を推す声も多いということです。前原誠司元代表も出馬に意欲を持っているという報道もあります。岡田氏と前原氏、共に代表を経験しており、政権を担った時に共に外相を務めましたが、やや賞味期限切れという印象が残ります。

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細野豪志 

 

 今回の党代表選挙では、民主党の再建が先だとする「再建」と野党再編に向けて動いていくべきだとする「再編」の2つの考えがあるということです。岡田氏は「再建」派からの支持が多く、細野氏は「再編」派だと言われています。そして、前原氏も「再編」派なのですが、前原氏は維新の党の橋下徹共同代表(現・大阪市長)と親しく、連携を模索しているという報道がなされています。まとめるとこういうことになります。

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岡田氏(左)と前原氏(真ん中)

・細野豪志(元幹事長):維新との連携・合併まで視野に入れた野党再編派

・前原誠司(元代表):維新(橋下徹氏)との連携を深める野党再編派

・岡田克也(元代表):民主党の勢力回復を優先する民主党再建派(海江田執行部副代表で、国政選挙を担当し、野党共闘を行った)

 

 私は、重要になるのは、①民主党内でもう一度政権を担う気概が出てくるのか、②医師の党がどうなるのかということがポイントになると思います。

 

 民主党は今回の総選挙で議席を増やしましたが、二桁台に留まりました。これは2009年からの2012年まで与党であった時に、菅直人、野田佳彦両氏を総理大臣にして、結局財務省にだまされて消費税増税を行い、「国民の生活が第一」というスローガンをこそこそと隠してしまったことに対する怒りと失望がまだ国民の側にあり、「とてもじゃないが民主党には入れられない」「自民党が巨大与党であり続けるのはまずいから、仕方なく、涙を呑んで、鼻をつまんで、煮え湯を飲む思いで、嫌々民主党に投票する」という人たちが多く、民主党への積極的な支持は戻っていません。

 

 そうした中で、現状をどう考えるかですが、「とりあえず党勢は少し回復したし、野党第一党であることには変わりない。来年の地方選挙で頑張れば、2016年の参議院選挙でそこまで負けないだろう」という弛緩した雰囲気が民主党を覆っているのではないかと思います。「党勢は少し回復したとは言え、このままでは政権を担うところまではとても届かない」という危機感がそこまでないように見えます。しかし、これは大変危険な兆候です。

 

 1955年からの55年体制下、日本社会党がまさにそうでした。「昔はうちも与党になって総理大臣も出たんだよ」「野党第一党として自民党に対峙している」「改憲を阻止できるだけの議席は確保している」ということを正当化の道具にして、怠惰と安寧に阿り、結果は党を滅ぼすことになりました。もちろん、民主党に日本社会党出身の議員たちが多く参加したのは、こうしたぬるま湯ではいけないということで参加したと思いますが、人間は悲しいもので、やすきにつく、怠惰になるという歴史は繰り返されるようです。

 

 菅直人氏に功績があるとすれば、2003年に代表であった時に小沢一郎氏が率いる自由党と合併をする決断をしたことです(その裏には鳩山由紀夫氏の動きがありました)。これによって、異分子を入れることで、化学反応が起きて、民主党の体質は強化されました。それを面白く思わない人間たちが最終的には民主党を駄目にしてしまったのですが、民主党はこの時のような決断をして、党を再び活性化させるべきです。

 

 具体的には、細野氏を代表に据えて、維新の党の江田憲司、松野頼久両氏との交渉を始め、何からの形で融合を図るべきです。細野氏、江田氏、松野氏は政界再編を目指して、2013年に「既得権益を打破する会」を設立しています。ここでその人脈を活かすべきです。

 

 維新の党は、私の考えでは、「大阪ウィング」(橋下徹)、「日本維新の会国会議員団」(松野頼久)、「結いの党」(江田憲司)の3つのグループの寄り合い所帯です。この3つのグループのうち、松野氏と江田氏が率いるグループは国会議員たちばかりです。そうなると、選挙となれば、橋下氏個人の風頼み、しかも関西限定となると、やはり民主党の組織に頼る方が良いと考えるでしょう。結局、橋下氏対松野・江田氏ということになり、解党ということになるでしょう。橋下氏は安倍晋三氏を応援する「ゆ」党(野党でも与党でもない)ですから、自民党に対抗するための軸にはなりませんし、そのための新勢力に入るべきでもありません。大阪維新の会に戻ればよいのだろうと思います。そして、野党結集軸には「立憲主義」を守ることを掲げて戦いを挑むべきだと思います。

 

 私の同僚、中田安彦氏が書いていたことですが、細野氏は人脈が広く、自民党の二階俊博氏や野中広務氏の系列ともつながりが深いのだそうです。こうした人々を通じて、中国の最高指導者層とも関係を保っているということです。

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野中氏(真ん中)と細野氏

 また、細野氏自身はアメリカ留学などの経験はないですが、江田憲司氏は、ハーヴァード大学留学を経験し、留学時の寮のルームメイトはマイケル・フロマン米国通商代表であり、フロマンはオバマ大統領とハーヴァード大学のロースクールで一緒に法学雑誌の編集をしていた友人です。松野氏は、震災後に立ち上げられた、「国難対処のために行動する『民主・自民』中堅若手議員連合」(民自連)に参加し、マイケル・グリーンやリチャード・アーミテージとも会談を持っています。この民自連には、自民党からは菅義偉、河野太郎、岩屋毅、梶山弘志、平将明、民主党からは、樽床伸二(落選中)、松野頼久(維新の党)、長島昭久、笠浩史が参加していました。こうした人脈に関することは、拙著『アメリカ政治の秘密』『ハーヴァード大学の秘密』、そしてこのブログでも繰り返し書いてきました。是非お読みください。

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民事連の会合の様子

細野氏は、アメリカにとっても中国にとっても納得できる存在であると思いますし、ポスト安倍氏という点でも、有力候補になると思います。

 この文章は本日(2014年12月19日)の午後に書いていたのですが、細野氏が正式に党首選への立候補を表明したというニュースが入ってきました。新聞記事によると、細野氏は民主党の政権与党時代を「失敗」と断じ、先日の総選挙の結果も「完全なる敗北」であったと発言したそうです。また、「民主党の自主再建を実現する」と述べて、維新の党の江田氏からの新党設立への呼びかけに応じない考えを示したとのことです。
 
 この新聞記事は自民党の機関紙に等しい産経新聞(総選挙の結果予想を自民党単独で3分の2だと嬉々として報道した「をめでたき」自称・全国紙)の記事ですから、読者による読み解きが必要となります。民主党は今の状況では野党再編の軸にはなれません。議席数が多いだけのことです。ここで重要なのは、細野氏が現在の幹部たちに喧嘩を売りつつ、議員と党員の支持を幅広く集めようとしているところです。岡田氏。前原氏といった最高幹部連中に「あんたらの出る幕じゃない」と切り捨て、比例復活組の某N島議員のように、負け惜しみと強弁を繰り返す人に「俺たちは負けたんだ、お前は選挙に強いはずだったのにな。だからしばらく黙っとけよ」と切り付け、それでも、「民主党を再建します」と発言して、議員と党員たちの支持を得ようとしているのだと思います。

 
 維新の党は41議席を獲得しました。何の組織もなくて、橋下代表の人気や個々の努力で維新は現有議席をほぼ守りました。民主党は一部で安倍政権に対する批判票の受け皿にはなりましたが、その役割を共産党に奪われ、あれだけの組織がありながら勝ち切れませんでした。このような脆弱な野党第一党では、野党再編の軸にすらなれないというのが細野氏と周辺の考えなのでしょう。私は、いずれ野党再編はあると思いますが、それは2016年の参議院議員選挙のあたりではないかと思います。

 私の考えでは、民主党を残すが、55年体制時の社会党のようになって、自民党の一人勝ち、万年与党化を許すか、野党再編から野党再建に向けて動くか、今が重要なターニングポイントです。ここで、安倍自民党と「立憲主義」で対抗すべきだと思います。歴史を振り返ってみれば、大正時代に、「藩閥打破、憲政擁護」を掲げての大正デモクラシーがありました。立憲政友会(尾崎行雄)と立憲国民党(犬養毅)が桂太郎(長州出身)を倒すことに成功しました。ここで、民主党を残すかどうか、ということよりも、民主党を利用して、立憲主義を守り、「平成の時代の大正デモクラシー」を起こすべきだと私は考えます。そのためには国会論戦と選挙を通じて、自民党と会え晋三首相を追い詰めるしかありません。

 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141219-00000583-san-pol

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

●「細野氏、出馬を正式表明 民主党政権は「失敗」、野党再編応じず」

 

産経新聞 1219()1936分配信

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141219-00000583-san-pol

 

 民主党の細野豪志元幹事長は19日、国会内で記者会見を開き、党代表選(来年1月18日投開票)への出馬を正式に表明した。「民主党としての旗を掲げ直し、新民主党を再生していきたい」と決意を述べた。

 

 細野氏は会見で、安倍晋三政権で「立憲主義が危機的な状況に立たされている」と批判。「国民が選択できる政権の枠組みが風前のともしびだ。民主党の再生なくして政権交代の枠組みはない」と述べ、政権交代可能な政党にするための出馬だと強調した。

 

 細野氏は民主党政権を「失敗」と断じた上で、「再起を期した今回の衆院選も完全なる敗北だった」と語り、党の抜本的な改革の必要性に言及。野党再編については「自主再建を実現していきたい」と訴え、野党再編による新党を目指す維新の党の江田憲司共同代表らの呼びかけには応じない考えを示した。


●「民主党:代表選 細野・岡田両氏を軸 維新との関係が焦点」

 

毎日新聞 20141217日 2125分(最終更新 1217日 2300分)

http://mainichi.jp/select/news/20141218k0000m010106000c.html

 

 民主党が来月18日の代表選実施を決めたことを受け、各グループが相次いで会合を開くなど代表選に向けた動きが本格化した。17日に出馬を表明した細野豪志元幹事長は知名度があり、発信力強化への期待が高い。代表経験者で政策にも強い岡田克也代表代行を推す声も強く、両氏を軸に党内の多数派工作が活発化しそうだ。

 

 代表選は、党立て直しに向け、維新の党との関係を中心に野党再編への対応が焦点となる。新代表の任期は2017年9月末までのため、来春の統一地方選だけでなく、16年参院選も含めた「党の顔」にふさわしいかもテーマだ。ベテランか中堅・若手かの世代問題も注目を集める。

 

 細野氏は17日、野党再編について「まず民主党の旗を鮮明にした上で、その旗の下で(同調する)野党のメンバーの結集を目指すべきだ」と述べ、野党再編に意欲を示した。海江田万里代表が野党再編に慎重姿勢を崩さなかったことに、党内の一部には根強い不満がある。細野氏は現執行部への批判票も狙う。

 

 一方、現執行部に属する岡田氏は17日、代表選に名前が挙がっていることについて「光栄なことだ」と記者団に述べるにとどめた。細野氏と比べ、野党再編に慎重とされる。連合出身議員が多く、維新との再編に警戒感を抱く参院側を中心に支持を集めるとみられる。ただ、岡田氏は衆院選では維新とも選挙区調整を積極的に進めた。細野氏との違いはそれほど大きくないという見方もある。

 

 前原誠司元代表のグループは17日、東京都内で会合を開き、対応を協議した。前原氏は会合後、「まったく白紙だ」と述べた。ただ、出馬を促す声が複数あったと紹介し「どうすれば党が再生できるか仲間と相談し決めたい」とも語った。その後、前原氏は細野氏や長島昭久元副防衛相、松本剛明元外相と会談した。

 

 若手に推す声がある玉木雄一郎政調副会長は国会内で当選3回以下の若手議員の会合に出席した。玉木氏は記者団に「若手も党再生に中核的な役割を果たさなければならない」と述べた。馬淵澄夫選対委員長は記者団に「準備と覚悟はできているが、現在は白紙だ」と語った。

 

 このほか、大畠章宏前幹事長のグループや旧社会党系議員らで作るグループも相次いで会合を開いた。【高橋恵子、村尾哲】

 

 

●「細野豪志氏、民主党代表選への立候補を表明 野党再編に言及」

 

朝日新聞デジタル              |  執筆者:       奈良部健、安倍龍太郎

投稿日: 20141218 0912 JST 更新: 20141218 0912 JST

http://www.huffingtonpost.jp/2014/12/17/goshi-hosono-runs-for-dpj-leader_n_6344496.html

 

民主党は17日の両院議員総会で、代表選の日程を来年1月7日告示、18日投開票と決めた。代表選に向けた動きが本格化し、細野豪志元幹事長(43)が立候補を表明した。党内には岡田克也代表代行(61)を本命視する見方が強く、前原誠司元代表(52)も意欲を示す。党内の各グループは多数派工作に着手した。

 

細野氏は17日、記者団に「安倍政権に対抗しうる勢力がいまの国会にない。民主党の旗を鮮明にしたい」と立候補を表明した。19日に記者会見を開いて具体的な政策を表明する。それに先だって自らが率いる派閥「自誓会」の会合を国会内で開き、笠浩史元文部科学副大臣、階猛元総務政務官ら約10人が参加した。

 

今回の代表選は党再生を民主中心の「自主再建」で進めるのか、新党を含めた他の野党勢力との「再編」を目指すかが争点になる。再編派の細野氏は「結集できるメンバーが野党の中にいれば、結集を目指す」とも語った。

 

再編派からは、維新の党の橋下徹代表と近い前原氏もグループの所属議員約10人を集めた。夜には、自身に近い議員と協議。周辺は「前原氏は立候補の意思があるが、グループ内にも異論がある」と述べ、立候補できるかどうかは不透明だ。

 

一方、自主再建派の筆頭格と目される岡田氏はこの日、記者団から候補として名前があがっていることを問われ「光栄なことだ」と述べるにとどめた。重鎮議員は「自主再建派はみんな岡田氏だろう。数が多い」と語り、再建派の議員たちが推すとみている。

 

大畠章宏前幹事長のグループ9人は国会内で会合を開き、自主再建を目指す代表を推す考えで一致した。ただ、「(代表経験者ら)昔の顔ばかりではなく、いろんな人が出た方がいい」(篠原孝衆院議員)との意見も出た。岡田氏が衆院選で維新の党と候補者の一本化を進めたことから、閣僚経験者からは「失敗に終わり、その戦犯だ」との声もある。

 

一方、党中央代表選挙管理委員会は、代表選立候補には国会議員20人以上の推薦が必要だと決めた。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)









 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 昨日から今日にかけてマスコミでは選挙戦序盤の各党の情勢を伝える記事が出ています。どの記事も「自民党圧勝(300議席をうかがう勢い)、公明党は堅調、民主党と維新の党は伸び悩み、共産党は躍進(一桁から15・6議席へ)、他党は消滅の危機」という論調で一致しています。

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 衆議院の定数は480から、「0増5減」で475に減った中で、自民党が2012年の総選挙での獲得議席数294(選挙区:237、比例区:57)を超えるということになると、安倍晋三総裁の下、2回の総選挙、1回の三議員通常選挙で圧勝するということになります。これほどの選挙の「強さ」を示した自民党総裁を引きずり降ろすことはできません。

 

 今回の選挙情勢の分析を見ると、民主党と維新は勝利の可能性が高い選挙区の数は多いのですが、自民党の候補は選挙区で負けても、惜敗率で比例復活当選をする人が多く出るということが見込まれているようです。これは、「支持政党なし」の無党派の有権者が比例区の投票で自民党に入れると見込まれているからです。

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 これは、無党派層としては、「安倍氏の政権運営や経済政策については評価しないが、野党は信頼できないし、小選挙区は自民党以外の候補に入れるが、バランスを取り、保険をかけるために比例投票は自民党にしよう」という意識が働いていると思われます。

 

 しかし、この動きが自民党候補の比例復活を生み出し、300を超える議席を獲得し、結果として、安倍政権の延命を手助けすることになるのです。与野党伯仲状態になれば、緊張感と謙虚さを政治の世界に取り戻すことができます。

 

 インターネット上では「戦略的投票」を訴える人たちが出てきました。戦略的投票とは、「嫌いな政党や政権を勝たせないために、それらの党や政権以外のセカンドベストな選択肢を選ぶ」ということです。比例区で自民党に投票することは、「安倍政権批判票」にはなりません。矛盾してしまいますが、「安倍政権支持票」ということになってしまいます。

 

 ですから、明確に自民党と安倍政権を支持すると決めておられる方々以外で、迷っておられる方々には、是非、戦略的投票について検討していただけたらと思います。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「無党派取り込む自民、伸び悩む民主 衆院選・情勢調査」

 

朝日新聞デジタル 124()533分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141204-00000010-asahi-pol

 

 朝日新聞社が実施した衆院選序盤の情勢調査では、自民が単独で300議席を超える勢いだ。自民は無党派層をまとめ、地盤の地方部に加え、都市部でも優勢の選挙区が多いことが、堅調さを物語っている。一方、共産は議席を増やす勢いだが、民主は伸び悩んでおり、維新などかつての「第三極」に勢いはない。与野党の明暗を分けているのは――。

 

■自民、比例優勢 都市部も堅調

 

 比例区で大きく議席を積み増す勢いの自民。その原動力は無党派層だ。

 

 自民は政権を失った2009年衆院選で比例区で1881万票、55議席を獲得したが、政権を取り戻した前回12年衆院選でも獲得したのは1662万票、57議席で、議席はほぼ横ばいだった。ところが今回は比例区で20議席近く増える見通しになっている。

 

 投票態度を明らかにした人でみると、自民支持層の9割弱が比例区投票先は「自民」と答えた。無党派層でも「自民」が41%に達し、最も多い。前回衆院選の調査では無党派層の比例区投票先は自民と維新がほぼ並んでいたが、今回は自民に集中している。その結果、自民は大勝した05年の郵政選挙の比例区で獲得した77議席に迫る勢いだ。

 

 小選挙区でも優位に立つ選挙区が多く、堅調な戦いぶりをしていることが自民の勢いを下支えしている。特に伝統的に地盤としてきた北陸、中・四国、九州だけでなく、都市部の選挙区でも議席を維持する見通しになっている。

 

 今回、朝日新聞社が情勢調査を実施した150選挙区を都市規模に応じて「都市型」50、「中間型」50、「地方型」50に分類したところ、自民は「地方型」の大半の選挙区でリードしているだけでなく、「都市型」でも7割近くの選挙区を獲得する勢いだ。

 

 この「都市型」の50選挙区は、政権交代が起きた09年衆院選は民主が44議席を獲得し、自公が政権に復帰した前回12年衆院選では自民が36議席、当時の維新が7議席を獲得。そのときどきの「風」の影響を受けやすい選挙区だ。ところが今回、野党に風が吹いている気配はなく、自民が前回なみの議席を維持する見通しになっている。

 

 特に、東京、神奈川、愛知、大阪、福岡など9都府県で、今回調査対象に含まれる68選挙区をみても、自民は優位や、競り合っている選挙区が多く、大幅に議席を減らすことはなさそうだ。この68選挙区は09年衆院選では民主が59議席を獲得したが、前回は自民48勝と巻き返した。選挙の度に大きく振れてきた選挙区でも今回、揺り戻しは起きそうにない。

 

 自民の勢いの象徴が、前回自民が議席を取れなかった東京15区と大阪13区だ。東京15区では前回、みんなの党(当時)の柿沢未途氏に敗れた秋元司氏が今回はややリード。大阪13区でも自民新顔の宗清皇一氏が、前回議席を獲得した次世代の西野弘一氏をリードしている。

 

 また、情勢調査に合わせて実施した世論調査で、この2年間の安倍晋三首相の経済政策が成功か失敗か尋ねたところ、「失敗だ」が34%で「成功だ」は28%だった。比例区投票先をみると、「成功だ」と答えた人の69%が自民で、「失敗だ」と回答した人も民主31%や自民27%と分散。安倍首相の経済政策に批判的な民主や共産などが必ずしも批判票の受け皿になっていないことも、自民の議席増につながりそうだ。

 

■民主、上積みも伸び悩み 「第三極」は苦戦

 

 「風が吹かない」選挙となり、野党の中でも明暗が際だちつつある。

 

 民主は政権交代を実現した2009年衆院選の小選挙区で300選挙区中221議席を獲得したが、前回12年衆院選は27議席に激減した。今回はそこから10議席前後上積みする情勢だ。特に、かつての地盤で議席回復の兆しがみえる。

 

 自民、公明両党が圧勝した05年衆院選でも民主が勝ち越し「民主王国」と呼ばれた北海道。12年衆院選で民主は12選挙区すべての議席を失ったが、鈴木宗男氏が率いる新党大地と連携して選挙戦に臨む今回、北海道3区で優位に立ち、議席奪還の可能性が出てきた。

 

 同様に09年衆院選で全15選挙区を独占し、民主が地盤にしてきた愛知県。前回は2選挙区しか議席を守れなかったが、今回は愛知2区、11区に加えて5区でも優位に立ち、議席増の可能性が出てきた。

 

 ただ、全体としてはかつての勢いを取り戻せておらず、目標の100議席には及ばない情勢だ。東京1区の海江田万里代表がやや苦戦しているだけでなく、埼玉5区の枝野幸男幹事長も接戦で、都市部で議席を大きく上積みする勢いはない。

 

 比例区でも議席を増やして自民に次ぐ第2党の地位を取り戻す見通しだが、09年衆院選の比例区で獲得した87議席のピーク時には遠く及ばない見通しだ。

 

 民主が伸び悩んでいるのは、候補者を十分擁立できなかったことも影響していそうだ。前回衆院選では民主や第三極政党の候補が乱立し、自民が大勝した反省から、民主は維新や生活などと候補者の「すみ分け」を進め、民主が小選挙区で候補者を立てたのは295選挙区中178選挙区。投票先を挙げた人をみてみると、民主候補がいない選挙区で比例区投票先は「民主」と答えた人はわずか13%。民主候補がいる選挙区の「民主」(21%)よりも少なく、候補者不在で選挙運動が浸透していない可能性もある。

 

 自民でも民主でもない第三極として、前回ブームに乗った政党は今回、苦戦を強いられている。

 

 維新は、日本維新の会として戦った12年衆院選の小選挙区で14議席、比例区で40議席を獲得したが、今回は小選挙区で議席を大きく減らしそうだ。特に前回は地盤の大阪府で12勝したが、今回はリードを許している選挙区が多い。前回、維新の松浪健太氏が議席を得た大阪10区は今回、やや苦戦している。維新の松野頼久・国会議員団会長(熊本1区)もやや厳しい。

 

 日本維新の会から分裂した次世代は小選挙区で公示前の3議席から上積みするのは難しく、比例区では議席を獲得できるか微妙だ。

 

 こうした中、躍進する可能性があるのが共産だ。特に、無党派層の比例区投票先は9%で、自民、民主、維新に次ぐ4番手につけた。ただ、比例区で20議席を獲得した00年衆院選には及ばなそうだ。

 

==========

 

●「自民300議席超える勢い 衆院選・序盤情勢調査」

 

朝日新聞デジタル版 20141240018

http://www.asahi.com/articles/ASGD376BZGD3UZPS01L.html?ref=yahoo

 

 14日投開票の衆院選について、朝日新聞社は2、3の両日、約6万人の有権者を対象に電話調査を実施し、全国の取材網の情報も加えて選挙戦序盤の情勢を探った。現時点では①自民は単独で300議席を超える勢いで、公明とあわせて定数の3分の2(317議席)を上回る可能性がある②民主は公示前の62議席から上積みするものの、伸び悩み、100議席には届かない公算が大きい③維新は公示前の42議席から後退、次世代も公示前の19議席から1ケタになりそう④共産は公示前の8議席から倍近く増える見通し――であることが分かった。

 

 今回の衆院選は、1票の格差を是正する「0増5減」により、定数は小選挙区295、比例区180の計475となる。

 

 調査は、全295小選挙区の中から全国の「縮図」になるように選んだ150小選挙区の有権者を対象にし、調査結果を約2倍にするなどして全国の情勢を読み取った。ただし、調査時点で投票態度を明らかにしていない人が小選挙区で4割以上、比例区でも3割以上おり、今後、情勢が変わる可能性もある。

 

 自民は過半数(238議席)を大幅に上回り、公示前の293議席も超える勢い。小選挙区では、都市部でも好調で、前回2012年衆院選で獲得した237議席にほぼ並びそうだ。比例区では、12年衆院選で得た57議席を超え、現行制度で最多だった05年衆院選の77議席に迫る。12年衆院選で善戦した「第三極」が離合集散し、失速したため、自民が無党派層の受け皿になっているとみられる。公明も小選挙区、比例区とも堅調で、公示前の31議席を確保しそうだ。

 

 民主は小選挙区は北海道や愛知県などで議席を積み増し、公示前の25議席から10議席前後は増えそうだ。しかし、海江田万里代表(東京1区)はやや厳しい戦いを強いられるなど、復調しているとは言い切れない。比例区は公示前の37議席を上回るかどうか。

 

 維新は40議席を割り込む見通し。小選挙区は、地盤の大阪府も含め、不振で、公示前の13議席から1ケタに落ち込みそうだ。前身の日本維新の会は12年衆院選で比例区で40議席を獲得したが、今回、維新は30議席を割る可能性が出てきた。次世代は熊本4区などで議席を維持しそうだが、比例区での議席獲得は微妙。共産は、比例区で00年以来の2ケタの議席獲得が有力になってきた。

 

 生活は公示前の5議席を下回りそう。沖縄3区で優勢だが、小沢一郎代表(岩手4区)は接戦となっている。社民は沖縄2区でリード。過去議席を維持してきた比例区九州ブロックでも1議席を得る可能性もある。

 

 みんなの党の代表だった渡辺喜美氏(栃木3区)はやや苦しいが、後任の代表だった浅尾慶一郎氏(神奈川4区)はやや有利な情勢だ。

 

     ◇

 

 《調査方法》 コンピューターで無作為に作成した番号に電話をかける「朝日RDD」方式で、150小選挙区を対象に実施した。各選挙区の有効回答の目標数は400。世帯用と判明した番号は全国で10万3392件で、うち6万759人から有効回答を得た。回答率は59%。

 

 調査対象となる150小選挙区は、過去の衆院選での各党の獲得議席数や地域的なバランス、今回調査前の取材による情勢を考慮し、統計的に全295小選挙区の「縮図」になるように選んだ。激戦が予想されたり、話題の候補者がいたりする注目区でも、調査対象になっていない選挙区もある。

 

 予想議席数は、小選挙区については、調査結果をほぼ2倍し、比例区については、有権者数に応じて、推計した。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)









 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は2014年12月14日に投開票が行われる第47回総選挙について書きたいと思います。現在は太陽暦を使っており、厳密には同じ日ではありませんが、12月14日は赤穂浪士の吉良邸討ち入りの日で、その時の浪士は47名でありました。12月14日に47という数字の一致は興味深い偶然です。

 

 2014年12月14日まで約3週間ほどある訳ですが、現在のところ、自民党と公明党が過半数(0増5減で選挙区が295、比例区が180で合計475議席なので)238議席を超えることは間違いないようです。安倍首相は自公で過半数であれば勝利であり、アベノミクスと2017年4月からの消費税増税10%が国民の信任を得たとして政権を続けていくことになります。現在与党である自公は320議席を保有しており、0増5減の影響があるとは言え、絶対安定多数266議席を28議席も下回っても「勝利」とするのは無理があるように思います。

 

 公明党は比例で手堅く20議席以上、小選挙区で数名の当選をそこまで減らさないとなると、大幅に議席を減らすのは自民党の方になります。前回は295名が当選したのですが、今回自公で過半数が最低ラインとなると80名近くが落選、絶対安定多数266が最低ラインとなると50名以上が落選と言うことになります。

 

 これで果たして「勝利」と言えるのか、50名以上の落選を出しながら「勝利だ」「政権続行だ」と強弁しても党内には不満が残ります。今回の総選挙は争点がはっきりしない選挙で、はっきり言って安倍氏自身もやりたくない選挙であった訳ですが、自民党側にしてみれば何でも官邸主導で貧乏くじだけを引かされるということで不満が充満していくと思います。議席数にもよりますが自民だけで過半数238を維持できなければ倒閣運動、反安倍氏の動きが出てくると思います。そうなると、ポスト安倍氏は前幹事長の石破茂氏と現在の幹事長の谷垣禎一氏ということになりますが、自民党、公明党、財務省、諸外国全てが納得できる人物としては谷垣氏と言うことになります。岸信介が安保改定で辞任した後にチェンジ・オブ・ペースで宏池会の池田勇人が首相になったというアナロジーに通じるものがあります。

 

 2012年の総選挙で安倍総裁の下で大勝した自民党ですが、人の体に譬えるならば、体脂肪率が上がって、血圧が上がり、血液検査の数値が悪くなってしまったようなものです。嫌韓嫌中を堂々と標榜する議員、ネトウヨと何ら変わらない知性の低い議員、国会議員が偉いと勘違いし周囲に威張り散らし当たり散らす議員など、自民党の若手議員は低質な人物たちが多くなってしまいました。失礼を承知で言いますと、脂肪(こうした低質な議員たち)が増えて、自民党がネトウヨや在特会と変わらない、血圧だけが高いような組織になってしまい、血糖値(嫌韓嫌中)や尿酸値(過度なナショナリズム)が挙がってしまいました。血圧、血糖値や尿酸値を下げるためにはダイエットが必要です。皆さん方には是非自民党のダイエットに協力していただきたいと思います。

 

 2003年以降の総選挙の結果を見ると、①得票数と議席数の割合は同じにならない、②公明党と共産党は手堅い(支持者が固定して動かないので議席数の増減が大きくないが大きな躍進は難しい)、③野党側は数が多くなると得票数に比べて獲得議席が少なくなってしまう(共倒れを起こしてしまう)ということが分かります。前回選挙は日本維新の会とみんなの党が躍進しましたが、野党側が候補者をそれぞれ出してしまったために票が分散し、合計すれば非共産の野党側が勝っていたのに、という選挙区がいくつもありました。

 選挙制度と政党の数については、フランスの政治学者モーリス・デュヴェルジェという人が唱えたデュヴェルジェの法則というものがあります。これは、選挙区の当選できる人数に1を足した数の政党数(国政選挙で当選者を出す)に収斂していくというものです。小選挙区だと当選者は1ですから、1+1で2となります。完全な小選挙区制だと二大政党制になります。日本の場合は比例代表制も並立させていますから、数が減らないということになります。小選挙区制で当選者が1人、与党は候補者を絞り込んでいるのに、野党側が乱立させれば勝ち目がないことは、明らかです。

 前回2012年の総選挙では民主党と国民新党が与党でしたが、1993年以降の日本の政治の対立軸であった自民対非自民という枠組みで考えるならば、非自民系が乱立したと言えます。自民軸側は、自民党と公明党ががっちりスクラムを組み、まとまって突出したのに対し、非自民系軸は乱立してしまいました。

 

 そこで、下の新聞記事にもありますが、今回は野党側は選挙協力を進めて候補者の数を絞り込んでいます。そうなのです、自民党にダイエットをしてもらうには、野党側も候補者を絞り込んで、つまり「ダイエット」をして、投票を集中してもらう必要があります。

 

 今回の野党側は民主党と維新の党(橋下徹大阪市長と松井一郎大阪府知事が不出馬を決めてくれたことが最大の貢献となるでしょう)を軸に野党再編(野党再建)を射程に入れて、選挙協力が進んでいます。共産党に選挙協力をしてもらうことは難しい面もありますが、沖縄では現職優先で選挙協力ができていますし、社民党に対してはある程度の協力関係ができるのではないかと思います。

 

 今回の選挙は簡単に言えば、「太り過ぎた自民党にダイエットをしてもらう」ことだと思います。「今のままの自民党が好きだ」と思われる方は自民党に入れていただいた方が良いでしょう。何事もそうですが、過度なダイエット(現実で言えば絶食を長期間続けるとか)はかえって健康を損ないます。「今の自民党はちょっとおかしいな」と思われる方はぜひダイエットに協力してあげていただきたいと思います。私もウエストがメタボリック症候群の範囲を超えてしまいましたので、自戒を込めて書いておきたいと思います。

 

(2003年以降の総選挙の結果)

 

●2003年

・与党側(選挙区:2777万→181;比例区:2939万→94)

自民党(選挙区:2609万→168;比例区:2066万→69)

公明党(選挙区:887万→9;比例区:873万→25)

保守新党(選挙区:79万→4;比例区――――)

・非共産野党側(選挙区:2412万→108;比例区:2513万→77)

民主党(選挙区:2181万→105;比例区:2210万→72)

社民党(選挙区:171万→1;比例区:303万→5)

無所属の会(選挙区:50万→1;比例区――――)

自由連合(選挙区:10万→1;比例区――――)

・共産党(選挙区:484万→0;比例区:459万→9)

 

●2005年 

・与党側(選挙区:3350万→227;比例区:3488万→100)

自民党(選挙区:3252万→219;比例区:2589万→77)

公明党(選挙区:981万→8;比例区:899万→23)

・非共産野党側(選挙区:2639万→55;比例区:2710万→71)

民主党(選挙区:2480万→52;比例区:2013万→61)

社民党(選挙区:100万→1;比例区:372万→6)

国民新党(選挙区:43万→2;比例区:118万→2)

新党日本(選挙区:14万→0;比例区:164万→1)

新党大地(選挙区:約2万→0;比例区:43万→1)

・共産党(選挙区:494万→0;比例区:492万→9)

 

●2009年

・与党側(選挙区:3580万→228;比例区:3503万→92)

民主党(選挙区:3348万→221;比例区:2984万→87)

社民党(選挙区:138万→3;比例区:301万→4)

国民新党(選挙区:73万→3;比例区:122万→0)

新党日本(選挙区:22万→1;比例区:53万→1)

新党大地(選挙区:――――;比例区:43万→1)

・非共産野党側(選挙区:3579万→66;比例区:2993万→79)

自民党(選挙区:2730万→64;比例区:1881万→55)

公明党(選挙区:783万→0;比例区:805万→21)

改革クラブ(選挙区:4万→0;比例区:6万→0)

みんなの党(選挙区:62万→2;比例区:301万→3)

・共産党(選挙区:298万→0;比例区:494万→9)

 

●2012年

・与党側(選挙区:3350万→227;比例区:3488万→100)

自民党(選挙区:2564万→237;比例区:1662万→57)

公明党(選挙区:886万→9;比例区:712万→22)

・非共産野党側(選挙区:2730万→49;比例区:3253万→95)

民主党(選挙区:1360万→27;比例区:963万→30)

社民党(選挙区:45万→1;比例区:142万→1)

国民新党(選挙区:12万→1;比例区:7万→2)

日本維新の会(選挙区:694万→14;比例区:1226万→40)

みんなの党(選挙区:281万→4;比例区:525万→14)

日本未来の党(選挙区:299万→2;比例区:342万→7)

新党日本(選挙区:6万→0;比例区――――)

新党大地(選挙区:約32万→0;比例区:35万→1)

新党改革(選挙区――――;比例区:13万→0)

・共産党(選挙区:452万→0;比例区:369万→8)

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「衆院選立候補予定者、大幅減1047人 野党間調整進む」

 

2014年11月24日 朝日新聞デジタル

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141124-00000033-asahi-pol

 

 来月2日公示の衆院選で、各党の立候補予定者がほぼ出そろった。朝日新聞がまとめた今月24日時点の擁立状況は、小選挙区928人、比例区119人で計1047人。民主党を中心とする野党間の候補者調整が進み、「第三極」の新党が擁立を競った前回衆院選の候補者数1504人より大幅に減る方向だ。

 

 一票の格差縮小のため、今回から選挙区は5減の295となり、比例区を含めた衆院定数は475。与党の自民・公明両党と、共産党はすでに大半の選挙区で候補者を固めた。共産以外の野党各党は与党に対抗しつつ選挙区での共倒れを避ける思惑から、民主党と維新・次世代など第三極各党が立候補予定者を一本化する作業を加速。共産を除く主要野党の選挙区の予定者数は前回の624人から314人に半減している。

 

 24日時点では295選挙区のうち185前後で、与党と共産に加え、民主・維新・次世代・生活・社民のいずれかから1人が立つ構図に。民主や第三極各党の予定者が競合する選挙区も約60あり、与党と共産以外に主要政党の予定者がいない選挙区も約45ある。

 

 自民は選挙区で285人、比例区は「0増5減」で選挙区を失った5人や比例単独の前職らを擁立。公明は選挙区で9人、比例単独で25人を立てる。民主は選挙区に180人を立てて積み増しをめざすが、前回より大幅に減りそうだ。選挙区では維新が73人、次世代が30人、生活が16人、社民が11人を擁立する。(石松恒、山下龍一)

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)








 

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