古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:習近平



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は習近平国家主席が慣習を破って2022年以降も権力を握り続けるのではないかという内容の記事をご紹介します。この記事を読むと、「習近平が独裁者となるのか」と思わされますが、国際情勢で考えますと、2017年からアメリカはヒラリーが大統領になって2021年までやる訳ですが、その間にどういう「大きな戦争」を東アジアに仕掛けてくるか分かりません。彼女は国務長官時代には「アジアへの回帰(Pivot to Asia)」路線を打ち出したこともありますし、それに対応するための非常的措置ということも考えられるかと思います。また、世界の覇権がアメリカから離れていく時期に、中国国内をしっかり固めておきたいという考えもあるのではないかと思います。

 

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習近平は永遠に(Xi Jinping Forever

―中国の力を増しつつある国家主席・習近平は伝統を破壊し、彼の支配を永続させようとしているのか?

 

ウィリー・ラム(Willy Lam)筆

2015年4月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/04/01/xi-jinping-forever-china-president-term-limits/

 

 外国の専門家、そして中国国内の専門家は、中国の最高指導者習近平(Xi Jinping)の中国共産党にショックを与えて体制を刷新する巧妙な手腕に驚いている。彼は党、国家、軍の権力を自分に集約しているように見えるがこれもまた人々を驚かせているに違いない。彼が最高指導者の地位に就いて2年半経ったが、国家の最高指導者の支配する期間は10年という制限を壊し、ここ最近のどの指導者よりも長い期間中国を支配しようとしているように見受けられる。

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習近平 
 

 中国共産党最高幹部に近い3人の人物に取材をしたところ、習近平と彼の側近たちは、習近平が少なくとも2027年までは中国を支配できるようにするための計画を立てているということだ。2027年の段階では彼はまだ74才であり、健康であると思われる。

 

私が取材した3名は全員が匿名を希望した。それはエリート政治を議論することはとても微妙なことであるからだ。そのうちの1人は次のように語った。「習近平は党・国家・軍を全て一手に支配している。そして、現在のところ、彼の後継者と目される人物は出ていないし、その人物を訓練しているということもない。この事実が示しているのは、彼が2022年に中国共産党中央委員会総書記の地位を退くことに影響されることなく、それ以降も中国の最高指導者の地位に留まり続けるということである」。習近平の計画は、ライヴァルたちからの反撃、国際社会や国内の危機、健康問題などで覆される可能性もあるが、彼が出来るだけ長く権力の座に就こうと計画しているのは明らかである。

 

 習近平は10年を超えて中国を支配したいと望んでいる。彼の願いを如実に表しているのは、彼が公式の場で自分の後継者となりうる人物を明らかにすることを拒んでいることだ。中国では一般的に、指導者たちは世代によってくくられる。習近平は第五世代に属している。この世代は1950年代に生まれた人々である。そして、習近平は第六世代、もしくは第七世代から後継者を選び出していない。

 

 それでは、習近平の前任者であった胡錦濤(Hu Jintao)の行動について考えてみよう。1942年生まれの胡錦濤は、第四世代の中心的な人物で、2002年から2012年まで中国共産党中央委員会総書記を務めた。1992年にエリートである中国共産党中央政治局常務委員に就任してすぐに、胡錦濤は、習近平(当時は浙江省党委書記)と李克強(Li Keqiang、現・国務院総理で当時は遼寧省党委書記)を含む第五世代の人々を25名の最高幹部で構成される、中国の統治機関である中央政治局に昇格させた。胡錦濤はまた下級の幹部たちも昇進させた。1990年代半ばまでに、第五世代に属する20名ほどの若手のスターたちが各省の副部長以上の地位に就いた。

 

 2007年の第17期中国共産党大会(党大会は5年おきに開催される重要な会議)までの時期に、胡錦濤は30名ほどの第六世代の若手のスターたちを選別し、重要な地位に昇進させたことも見逃せない動きであった。

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胡錦濤、江沢民、温家宝

 

 2005年までに、胡錦濤と江沢民(Jiang Zemin)は、習近平と李克強を、胡錦濤と当時の国務院総理である温家宝を後継者として中国共産党中央政治局常務委員会に入れることを決めたのは明らかであった。そして、2005年末までに、第六世代の20名ほどが各省の副部長以上の地位に昇進した。

 

 支配エリートに新しい血を入れるという中国共産党の伝統に習近平が従うならば、2015年末までに、第七世代の20名ほどを各省の部長、副部長級にまで昇進させているはずである。しかしながら、習近平が2012年11月に党総書記に就任して以降、第七世代では1人だけ、上海市副市長の時光輝(Shi Guanghui、1970年生まれ)だけが副部長級の地位に昇進した。習近平が2015年中にこの他の指導者たちを昇進させる可能性は低いと見られている。

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 時光輝
 

 習近平はもう一つの不文律を破ろうともしているようだ。1980年代末から、中国共産党の最高幹部は非公式ではあるが、「七上八下(七は入れて八は出す)」政策に従ってきた。67歳までの最高幹部は中央政治局常務委員会に入ることが出来るが、68歳以上の人物は入ることが出来ない。5年に1度開催される党大会で、その時に68歳以上の中央政治局常務委員は引退すると予想され、68歳以下の人物は地位に留まる。現在の中央政治局常務委員7名のうち、習近平と李克強を除く5名は2017年までに68才を超えるので、その時の党大会で引退することになる。しかし、その5名の代わりに誰が中央政治局常務委員会に入るのだろうか?

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栗戦書

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王滬寧

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趙楽際

 

 取材に答えてくれた3名の匿名の中国共産党関係者たちは、習近平の信頼の厚い第五世代に属する3名の人物が2017年に中央政治局常務委員に昇格するだろうと語った。その3名は、栗戦書(Li Zhanshu、1950年生まれ)、王滬寧(Wang Huning、1955年生まれ)、趙楽際(Zhao Leji、1957年生まれ)である。更に重要なことは、現在の常務委員であり、腐敗根絶の責任者である王岐山(Wang Qishan、1948年)はそのまま地位に留まる可能性が高いことだ。王岐山は習近平と同じ太子党であり、2人は1950年代からの友人であるが、2017年の第19期中国共産党大会の段階で王岐山は69歳となっている。取材に答えてくれたある人物は、2022年の第20期党大会まで第五世代は党指導部の防波堤として留まる可能性が高く、そうなると、習近平は少なくとも2027年の党大会までは現在の地位に留まろうとしているということになる。

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王岐山

 最高指導者は10年間しかその地位に留まれないという不文律がある中で、習近平はこの確立された伝統をどのように避けようとしているのか?

 

 中華人民共和国憲法は、国務院総理を含む、各省の部長が10年以上地位に留まることを禁止している。しかし、中国共産党の憲法である党憲章には、各省の部長級以上に相当する党の役職の就任期間の制限について明文化された規定は存在しない。その代り、1980年代から90年代にかけて中国の最高指導者であった鄧小平(Deng Xiaoping)が確立した不文律があり、それによると、中央政治局常務委員は10年以上その地位に留まれないことになっている。

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鄧小平

 

 しかし、習近平は国家主席の座を降りてもなお国のトップであり続けることは可能なのである。中国では、中国共産党と政府の組織は並行して存在しているが、実質的には、党が政府に対して優越し、コントロールしている。例えば、湖北省の最高責任者は党委書記である。省長は2番目にランクされる。国政レヴェルでもこれは同じだ。習近平が持つ3つの肩書、国家主席、中国共産党中央委員会総書記、中国人民解放軍を統括する中国中央軍事委員会主席のうち、中国共産党中央委員会総書記の地位が最も重要なのである。

 

 中国共産党中央委員会総書記の地位に留まる以外にも、習近平には他の選択肢がある。1つのシナリオとしては、毛沢東の遺風を弱める一環として鄧小平が1982年に廃止した、中国共産党中央委員会主席の地位を復活させ、自分が主席に就任することがある。これが実現すると、未来の総書記は主席である習近平に従わねばならなくなる。

 

 もう1つのシナリオとしては、中国共産党中央委員会総書記と国家主席を退任しても、中央軍事委員会主席には留まるということが考えられる。これにはいくつかの前例がある。1980年代、鄧小平は中央軍事委員会主席の地位に就いて、中国を支配した。また、江沢民は国家主席を退いてからの2年間、中央軍事委員会主席の地位に留まって影響力を保持し続けた。

 

 2013年末、権力を掌握してから1年後、習近平は党の最高指導部の中に2つの大きな力を持つ組織、中央国家安全委員会と中央全面深化改革領導小組を作った。この2つの組織はそれぞれ、半警察国家と経済政策を一手にコントロールしている。習近平が中央軍事委員会とこの新たに創設された2つの組織の主席に留まるならば、誰が中国共産党中央委員会総書記になろうとも、習近平に従属しなければならない。

 

 もちろん、習近平の権力掌握と彼の徹底した反腐敗キャンペーンは、党内のライヴァルたちの反撃を呼び込む可能性も高い。また、彼が国内政策と外交政策を全てコントロールするとなると、国内や国際社会で予期できない危機が起きた際に、スケープゴートにされることもあるだろう。

 

 習近平の前には困難な仕事が一つ待っている。2022年を越えても権力を保持できるだけの権力基盤の構築に彼が失敗してしまうことも十分にありうる。しかし、習近平が定まった期間に縛られないで最高権力を持つ指導者だけが中国と共産党を版得させることが出来ると考えたらどうだろうか。彼は自分こそそれをやる男とだと考えるだろう。

 

(終わり)










 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12






 中央国家安全委員会と同じく、中央全面深化改革領導小組は、習近平の行政スタイルが持つ2つの特徴を示している。1つ目の特徴は、情報公開がほとんどなされない党機関が国務院を超えて大きな責任を持つというものである。第18期中国共産党大会が開催されるまでは、経済改革といった主要な政策の立案と実行において国務院は主要な役割を果たした。更に言うと、習近平の指示は12以上の党と政府の各部に対して、習近平に忠実な王滬寧によって調整される。結果、習近平は個人の権力を更にふるうことができるようになり、集団指導体制において同僚たちからの監督を受けなくなるということも起きるだろう。中央国家安全委員会をはじめとし、改革グループの構造はトップダウンになっており、官僚の複層的な各段階を通じて命令が下される。(
“Xi’s Power Grab Towers over Market Reforms,” China Brief, November 20, 2013を参照のこと)

 

 中央互聯網安全情報化改革領導小組は習近平によって設置された最新の超機関であるが、詳細な情報はほとんど公表されていない。このグループはインターネット上の安全保障の強化と中国のIT産業の育成発展を目的としている。このグループの主席は習近平で、副主席は国務院総理の李克強と中国共産党中央精神文明建設指導委員会主任の劉雲山の2人である。総書記は、国家互聯網情報センター(State Internet Information CenterSIIC)の主任である魯煒(Lu Wei、ろい、1960年~)だ。国家互聯網情報センターは、国務院公安部の互聯網(インターネット)局と共に、その主要な責務として「インターネット上から“不安定要素”を取り除くこと」を掲げている。国家互聯網情報センター主任に任命される前、魯煒は新華社通信常務副社長と国務院情報室主任を務めた。中央互聯網安全情報化改革領導小組に参画している党と政府の諸機関には、国務院公安部、国務院酷寒安全部、国家情報室、国家互聯網情報センター、国務院工業情報化部(Ministry of Industry and Information Technology)、党中央宣伝部である。(新華社通信、2014年2月28日;Guancha.cn、2014年2月28日;民報、2014年3月28日)

 

 これら3つの高位の意思決定・調整機関の設置は、習近平が改革手法の「トップレベルでのデザイン」作りに没頭していることを示している。 しかし、こうしたトップダウン式の改革手法にはリスクが伴う。国家情報センターのジャン・ジーヨンは次のように指摘している。「現在の改革の動きは党の最高部から出てきている。トップが主導権を握り、命令が中央と地方の行政部の各レベルで実行されるようになっている。」ジャンはまた次のように語っている。「中位のそして下位の幹部たちはこうしたトップダウン方式に関しては対処法をよく分かっているので、新しい改革はスピード感のない官僚たちによって遅滞させられることになるだろう。地方幹部の典型的な戦略は命令を丸投げして何もしないというものとなるだろう」(人民日報フォーラム、2014年3月25日;大公報、2014年3月17日)

 

習近平が直接タッチしていない党と国家の主要な機関は、腐敗に対処する機関である、中国共産党中央規律検査委員会(Central Commission for Disciplinary InspectionCCDI)と国務院監察部(Ministry of SupervisionMOS)だけだという事実は重要だ。これら2つの機関はウェブサイトを共有し、「1つの事務室に2つの看板」システムの下で運営されている。中央規律検査委員会書記の王岐山(Wang Qishan、おうきざん、1948年~)は、中央国家安全委員会と中央全面深化改革領導小組に関与していない中央政治局常務委員2名のうちの1人である。2012年末に中央規律検査委員会書記に就任して以降、王岐山は中国共産党の反腐敗闘争の規模を拡大し、その先頭に立って活動している。それぞれが一定数の党と政府機関(中央と地方)を担当する規律検査室の数は10から12に増やされた。王岐山は太子党で、国務院副総理を務めた人物であり、習近平とは深い関係にあると見られている。王岐山は中央規律検査委員会と国務院監察部のスタッフを監察するための事務室を新設した。王岐山は地方レベルの腐敗を根絶するために定期的に地方を巡回させる監察グループを拡充した。この事実もまた重要である。(大公報、2014年3月18日;チャイナ・デイリー、2014年1月15日)王岐山が書記に就任して以降、中央規律検査委員会は、20名以上の国務院副部長級以上の高級幹部を摘発してきた。そのうちの少なくとも半分の「虎たち」は、中央政治局常務員であった周永康(Zhou Yongkang、しゅうえいこう、1942年~)につながりがある人々である。周永康は習近平の政敵の1人である。習近平は、「反腐敗カード」を使って政敵を攻撃している。加えて、中央規律検査委員会は監察能力を高め、トップからの命令を効率良く実行できない地方幹部たちを摘発している。(聯合報[台北]、2014年2月10日;BBC中国語放送、2013年11月4日)

 

 習近平の支配哲学は、鄧小平の定めた集団指導体制という原理に挑戦しているだけでなく、鄧小平が定めた他の2つの原理にも反している。それらの原理は、①党と政府の分離(separation of party and government)、そして、②「五湖四海(five lakes and four seas)」である。(新華フォーラム、2011年7月2日;人民日報、2010年9月3日)党と政府の分離は1987年の第13期中国共産党大会政治報告で明確に規定されたもので、中国共産党は長期にわたる計画のような大きな問題に集中し、国家における日常の行政は政府に任せて処理させるというものである。「五湖四海」原理とは、高級幹部は、「5つの湖、4つの海」、つまりあらゆる場所から登用しなくてはならないとするものだ。そして、この原理は、様々に異なる経歴やつながりを持つ幹部たちをバランスよく登用するというものでもある。しかし、習近平に直属する高位グループが設置されたことは、習近平が毛沢東流の権力集中主義を志向していることを示している。習近平は、監督やチェック&バランス機能を導入せずに、個人のネットワークを基にしてこれらのグループを立ち上げた。こうした劇的な権力の集中化が習近平の掲げる「中国夢(チャイニーズ・ドリーム)」の実現を加速するか、失速させるか、これからも観察し続ける必要がある。

 

(終わり)





 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





 古村治彦です。

 今回から2回に分けて、中国政治の最新論文をご紹介します。

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新しい高位グループが党と政府との間の区別に脅威を与える(
New High-Level Groups Threaten Line Between Party and Government

 

Publication: China Brief Volume: 14 Issue: 7

2014年4月9日 

ウィリー・ラム(Willy Lam)筆

 

http://www.jamestown.org/programs/chinabrief/single/?tx_ttnews%5Btt_news%5D=42208&tx_ttnews%5BbackPid%5D=25&cHash=9c04fb8086372aa9cd6deb00e61e01e7#.U1PR4X-KD4g

 

 

 習近平(Xi Jinping、しゅうきんぺい、1953年~)は、複数の情報が非公開の指導的なグループや委員会に実権を集中させている。中国共産党(Chinese Communist Party)の最高指導者である習近平に、これらの機関は直属している。これらのトップレベルの意思決定・調整機関は、習近平の側近たちは、最高指導者(supremo)である習近平に直属し、報告を行っている。それらの機関とは、中央国家安全委員会(the Central National Security CommissionCNSC)、中央全面深化改革領導小組(the Central Leading Group on Comprehensively Deepening Reforms)、中央互聯網(インターネット)安全情報化改革領導小組(the Central Leading Group on Internet Security and Informatization)である。このような機関に関しては、透明性とチェック&バランス機能の欠如に関する疑問が拭えない。李克強(Li Keqiang、りこっきょう、1955年~)国務院総理は全国人民代表者会議(National People’s CongressNPC)で国務院は「自己革命(self-revolution)を行う決意である」と表明している。この意味は、中央政府の各部(日本で言うと各官庁)は合理化を行い、それぞれが持つ力を縮小し、市場と社会がより大きな役割を果たせるようにするというものである。(チャイナ・ニュース・サーヴィス、2014年3月5日;人民日報、2014年3月5日)

 

 昨年(2013年)11月に開催された中国共産党中央委員会三中全会(the Third Central Committee Plenum)において、中央国家安全委員会と中央全面深化改革領導小組の設置が決定されたが、既に重要な役割を果たすようになっている。しかし、これらの機関に関する情報はほとんど公表されていない。そのスタッフの陣容、中央国家安全委員会の構成と目標は明らかにされていない。ただ、その規約として、党、政府、軍の各機関の連携を図り、国内の安定と「敵意を持った外国勢力」が起因する脅威に対処するというものがある。トップの3名の名前と役職だけが明らかにされている。それぞれ委員長の習近平、副委員長の李克強、そして全人代常務委員会委員長の張徳江(Zhang Dejiang、ちょうとくこう、1946年~)である。この3名のメンバーは、中国最高指導部で強大な力を持つ中国共産党中央政治局常務員会(Politburo Standing CommitteePBSC)に所属している。いくつかのメディアは、中央国家安全委員会を構成することになるであろう諸機関のリストを発表した。しかし、この情報の真偽はまだ確定していない。諸機関には、中国人民解放軍(People’s Liberation Army)、中国人民武装警察部隊(People’s Armed Police)、外交部(Ministry of Foreign Affairs)、公安部(Ministry of Public Security)、国家安全部(Ministry of State Security)、中国共産党中央対外連絡部(CCP’s International Liaison Department)、中国共産党中央宣伝部(Propaganda department)の名前が挙げられている。(文匯報[香港]、2013年3月7日;グローバル・タイムズ・フォーラム、2013年1月25日)

 

公的メディアと香港のマスコミは、複数の全人代の高級幹部たちの「習近平の腹心の一人である栗戦書(Li Zhanshu、りつせんしょ、1950年~)が中央国家安全委員会の総書記となり、あらゆるトラブルに対処している」という発言を引用している。栗戦書は、第18期中国共産党中央政治局委員であり、現在は中国共産党中央弁公庁(Central Committee General OfficeCCGO)主任を務めている。中国共産党中央弁公庁は党全体の神経集中センターのようなものであり、中央政治局常務委員会から中央、地方のあらゆる党機関に対して指示を出す機関である。また、定期的に中国全土に対して発表される主要政策の文書を作成する機関でもある。中央弁公庁は、中央国家安全委員会のために総局と情報センターの規模を倍に拡大した。(チャイナ・ビジネス・ニュース[上海]、2014年3月10日;民報[香港]、2014年3月10日)

 

 栗戦書は、西安市党委書記を務めた経験を持ち、習近平率いる陝西ギャングの中心メンバーである。栗戦書には外交政策の面での経験がない。このことから、中央国家安全委員会が主に国内の治安維持に特化した機関であるという主張には信憑性があることが分かる。栗戦書と彼の親分である習近平は深いつながりを持っている。このことから、最高指導者である習近平が、中央国家安全委員会の名の下で警察国家機能を利用することは難しいことではない。彼は中央国家安全委員会を利用して、反体制活動家たちを厳しく取り締まることから、急速に勢力を拡大しつつある習近平派に敵対する政敵たちを攻撃することまでできるのだ。(大公報[香港]、2014年3月7日;サウスチャイナ・モーニング・ポスト、2014年3月7日)習近平は中央国家安全委員会を支配している。その結果、習近平は、中国の国内治安に関して幅広く独立した力を持ち、コントロールができるようになるだろう。そして、鄧小平(Deng Xiaoping、とうしょうへい、1904~1997年)によって確立された集団指導体制に対して脅威を与えることになるだろう。

 

中央国家安全委員会の顔ぶれを見ると、この改革志向の委員会により大きな権力が集中することが容易に予想される。中央国家安全委員会の主席は習近平であり、副主席は、李克強国務院総理、イデオロギーと宣伝を担当する劉雲山(Liu Yunshan、りゅううんざん、1947年~)中国共産党中央精神文明建設指導委員会主任、張高麗(Zhang Gaoli、ちょうこうれい、1946年~)国務院常務副総理の3名が副主席となっている。彼らは全て党中央政治局常務委員である。彼らの下には、10名の政治局委員が配置されている。その中には、劉延東(Liu Yandong、りゅうえんとう、1945年~)国務院副総理、汪洋(Wang Yang、おうよう、1955年~)国務院副総理、馬凱(Ma Kai、ばがい、1946年~)国務院副総理といった国務院の閣僚級の人々や中国共産党中央各部の責任者たちが含まれている。党の中央各部の責任者で言えば、党中央弁公庁主任の栗戦書、党中央政策研究室(Central Policy Research OfficeCPRO)主任の王滬寧(Wang Huning、おうこねい、1955年~)、党中央宣伝部長の劉奇葆(Liu Qibao、りゅうきほう、1953年~)、党中央組織部長の趙楽際(Zhao Leji、ちょうらくさい、1957年~)が配置されている。更には、全国人民代表者大会常務委員会副委員長の李建国(Li Jianguo、りけんこく、1946年~)、中央軍事委員会(Central Military Commission)副主席の許其亮(Xu Qiliang、きょぎりょう、1950年~)人民解放軍空軍上将、中国共産党中央政法委員会(Central Political-Legal Commission)書記の孟建柱(Meng Jianzhu、もうけんちゅう、1947年~)といった人々も含まれている。(中国青年報、2014年3月13日;民報、2014年1月23日)

 

 王滬寧は上海にある復旦大学の教授を務めた人物であり、国家主席時代の江沢民と胡錦濤の政治アドヴァイザーであった。そして、習近平によって、中央国家安全委員会の総書記に任命された。王滬寧は現在、党中央政策研究室(Central Policy Research OfficeCPRO)主任を務めている。党中央政策研究室は目立たない部署で、公式メディアでその活動が伝えられることはほとんどない。しかし、党中央政策研究室は中国で最高レベルの、国内政策、外交政策に関するシンクタンクなのである。党中央政策研究室はシンクタンク機能の他に、中央国家安全委員会の事務局と情報集積センターの役割を果たしている。中央国家安全委員会には、党中央政策研究室副主任の潘盛洲(Pan Shengzhou、はんせいしゅう)と国務院国家発展和改革委員会(National Development and Reform CommissionNDRC)副主任の穆虹(Mu Hong、むこう)の2人の副総書記がいる。潘盛洲は農業の専門家だ。穆虹の国家発展和改革委員会での仕事は、資産投資管理と主要なプロジェクトの監督である。(Finance.12cn.com、2014年3月10日;香港エコノミック・タイムズ、2014年3月10日)





 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



「習近平は団派のようなライバル派閥の人々をわきに追いやることに成功しているのか?」という疑問よりも、もっと重要な疑問は、「習近平が権力を拡大し、絶大な力を持つことは彼自身にとって良いことなのか?」という疑問である。中央全面深化改革領導小組を例に採れば、この機関は共産中国史上最大の高度な意思決定機関だと言える。この機関には4名の中国共産党中央政治局常務委員が参加し、主席と副主席を務めている。それ以外に、10名の中央政治局委員が参加している。中央全面深化改革領導小組は良く練られた構成となっている。これによって、習近平は、経済、行政、社会、文化の各方面の諸改革の将来に向けた道筋を直接監督することができるのである。(Finance.Sina.com[北京]、2014年1月24日;BBC中国語放送、2013年12月30日;ドイチェ・ヴェレ中国語放送、2013年12月30日)また、習近平は意思決定において明確な上意下達の命令系統を、中央全面深化改革領導小組を通じて持つことになるだろうと予測されている。第18期中国共産党中央委員会三中全会において示された文書には、諸改革の秩序だった実行について次のように書かれている。「私たちは、状況全体に責任を持ち、様々な部門を調和させるという党の中核的な機能を発達させねばならない」。習近平は中国共産党の最高機関が改革の様々な側面に責任を持つようにすると決意した。しかし、習近平の決意は、李克強が強調した、経済における官僚の介入の度合いの削減と「市場と社会の創造的な力の促進」を妨げるもののように考えられる。( China News Service、2013年11月17日;Caijing.com[北京]、2013年7月13日)

 

 ここで出てくる疑問は、習近平とつながりがある人々の質と能力はどうなのか、というものだ。習近平は自分の派閥に人を集め結束させることに腐心しているようである。従って、側近たちを昇進させる際に、職業上の能力よりも個人的な忠誠心を重視しているように見える。例えば、昨年陳希が中国共産党中央組織部のナンバー2に任命されたことについて考えてみる。陳希は才能あふれる工学の専門家であり、1990年代前半にはスタンフォード大学の客員研究員をしたこともある、陳希はキャリアの大半を清華大学で過ごした。2000年代の7年間は清華大学党委員会書記を務めた。また国務院教育部と中華科学技術協会に勤務していた経験もある。しかし、陳希は人事と組織に関する経験に欠けている。更に興味深いのは、陳希は沈躍躍(Shen Yueyue、1957年~)と交代して組織部副部長に就任したという事実だ。56歳の沈躍躍は陳希よりも若いだけでなく、人事や人材管理についてより知識を持っているのだ。沈躍躍は胡錦濤前国家主席の派閥に属しており、1998年から2002年にかけて浙江省と安徽省で組織部の幹部を経験している。そして、2003年から2013年まで中国共産党中央組織部副部長を務めたのだ。陳希の昇進は、習近平が大学の同級生に対して、人事の専門家であり、誰を政府内に入れるかの門番役である趙楽際の手助けをして欲しいと望んだ結果だと結論付けるのは難しいことではない。習近平派の利益にそぐわないと思われる人物は中央組織部の推薦を受けられずに昇進が難しくなるということになるのだ。(Radio Free Asia、2013年4月30日;大公報、2013年4月18日)江沢民と胡錦濤の組織哲学と同じく、習近平は 彼の最も信頼する人物を中国共産党中央組織部や中国共産党中央宣伝部のような「重要な機関」に配している。江沢民の時は曽慶紅、胡錦濤の時は李源潮が中国共産党中央組織部長となった。彼ら2人は上司である江沢民と胡錦濤にとって掛け替えのない助言者であった。

shenyueyue002
沈躍躍

 

 2013年11月の第18期中国共産党中央委員会三中全会で採択された文書の重要性を説明しつつ、習近平は「改革を包括的に深化させることはシステム工学的に言えば、複雑なことである」と指摘している。彼は次のようにも発言している。「必要なことは、トップがデザインをし、包括的に計画を立て計算することだ」。国営の中国新聞は更に次の世に書いている。「習近平の中央全面深化改革領導小組の主席就任は、この機関が充分な権威を持ち、決定がスムーズにかつ有効に行われるということを担保している。習近平はこのような方法で既得権益からの抵抗と妨害を排除しようとしているのだ」。(中国新聞、2013年12月31日;New Beijing Post、2013年11月14日習近平の正統性を更に強化し、人気を高めるために、習近平と彼の側近たちは、「国家主席は改革の速度を加速させるために権力を掌握しつつある」ということを示していかねばならない。彼らといえども毛沢東流の権力の事故強化スタイルから逃れることはできないのだ。

 

(終わり)



 

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古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 習近平は上海市党委書記をわずか6カ月しか経験しなかったが、上海時代の部下たちを北京に呼び寄せている。2007年に習近平が中国共産党中央政治局常務委員に昇進する際に、彼の昇進に関わった人物として上海閥の2名の名前が挙げられる。1人は元国家主席の江沢民、もう一人は元国家副主席の曽慶紅(
Zeng Qinghong、1939年~、そうけいこう)である。指導者第5世代の「中核」と見なされる人々が上海閥の人々を習近平派に送り込んだことは驚くには値しない。上海閥であり習近平派に参加した人物と言えば、丁薛祥(Ding Xuexiang、1962年~)は昨年、中国共産党中央弁公庁(CCP General Office)副主任と中国共産党総書記弁公室(personal office of the President)主任に任命された。51歳の丁薛祥は、習近平が上海市党委書記を務めていた時期、上海市党委員会中央弁公室主任を務めていた。この時、習近平は、丁薛祥の政治的洞察力と組織的手腕に深い印象を受けた。(文匯報[香港]、2013年7月24日;BBC中国語放送、2013年5月17日)もう一人の上海を基盤として昇進してきた人物として、習近平が上海市党委書記をしていた時期の上海市副市長だった楊暁渡(Yang Xiaodu、1953年~)である。2014年1月、上海出身の楊暁渡(61歳)は、中国共産党中央規律検査委員会(CCP Central Commission for Disciplinary InspectionCCDI)副書記に任命された。中国共産党中央規律検査委員会は、中国における反汚職の最高機関である。(人民日報、2014年1月15日;大公報、2014年1月15日)

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曽慶紅       丁薛祥                 楊暁渡

 

 習近平派の中で重要な要素となっているのは、陝西省出身、もしくはキャリアにおいて陝西省で勤務をした経験を持つ人々である。陝西省は習近平と彼の尊敬を集めている父親、習仲勲の出身地である。緩やかな組織体である陝西省組(Shaanxi Gang)には、3名の中国共産党中央政治局常務委員と4名の中央政治局委員が含まれている。中国共産党中央政治局委員の趙楽際(Zhao Leji、1957年~、ちょうらくさい)と栗戦書(Li Zhanshu、1950年~、りつせんしょ)は、彼ら2名が出身地である陝西省で習一族の利益をうまく守った。そのことで習近平と深いつながりを持つことになった。中国共産党中央組織部長の趙楽際(56歳)は、2007年から2012年まで陝西省党委書記を務めていた。栗戦書(63歳)は、興味深いキャリアを積んできている。栗戦書は、陝西省で指導的な地位を歴任したが、1998年から2003年まで西安市党委書記を務めた。習近平が栗戦書と知り合ったのは1980年代初めであった。両者は河北省にある近隣の県の党委書記をそれぞれ務めていた。(サウスチャイナ・モーニング・ポスト、2013年11月23日;陝西日報[西安]、2013年3月17日)

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趙楽際                    栗戦書

 

 習近平は政権内部に彼の高校時代と大学時代の同級生たちを招き入れている。中国共産党中央組織部副部長の陳希(Chen Xi、1953年~)と中国共産党中央財経領導小組(CCP’s Leading Group on Finance and Economics)弁公室主任の劉鶴(Liu He、1952年~)がその代表的人物たちである。陳希(60歳)と習近平は、1970年代に、名門清華大学で共に化学工学を専攻し、ルームメイトであった。(大公報、2013年4月18日;Asia Times Online、2013年2月19日)劉鶴(61歳)と習近平は、北京市海淀区で同じ学区の別々の高校に通っている時に親友となった。劉鶴はハーヴァード大学ケネディスクールで修士号を取得した経済学者である。そして、金融と経済に関する諸改革における習近平のアドヴァイザーとなっている。現在は国務院国家開発改革委員会副主席も兼任している。劉鶴は、昨年11月の第18期中国共産党中央委員会三中全会で承認された経済改革案の起草において重要な役割を果たした。(フェニックステレビ[香港]、2013年10月11日;文匯報、2013年10月11日)

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陳希                        劉鶴

 

 習近平は自身の権力基盤を固める一方で、胡錦濤前国家主席が率いた団派の人々をわきに追いやるために様々な努力を行った。現在の中国共産党中央政治局常務委員で団派は国務院総理の李克強だけである。李克強の団派時代からの同僚たちは、第18期中国共産党大会において中央政治局委員にまで放ってはいるがそれ以上は昇進しなかった。長年の伝統に従えば、国務院総理というのは中央政治局常務委員会において中国経済を担当するメンバーが就任するということになっていた。しかし、李克強は中央全面深化改革領導小組の3名いる副主席の1人に過ぎないのである。残り2人の副主席は、イデオロギーと宣伝の専門家である劉雲山(Liu Yunshan、1947年~、りゅううんざん)と国務院常務副総理の張高麗(Zhao Gaoli、1946年~、ちょうこうれい)である。彼らもまた中国共産党中央政治局常務委員である。そして、この2人は、李克強よりも習近平により近いと考えられている。李克強国務院総理は、第18期中国共産党中央委員会三中全会で採択された経済と社会の改革に関する文書作りに携わった最高レベルのチームから外されていた。このことが意味するのは、李克強は経済に関わる各部をこれからも運営するであろうが、重要な政策決定に関しては、習近平に従わねばならないということだ。(サウスチャイナ・モーニング・ポスト、2014年1月24日;民報、2013年11月17日)


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劉雲山                    張高麗
 

 中央政治局委員で、団派に対して忠誠心を持つ人々は、重要な地位に就けられているようには見えない。中国国家副主席の李源潮(Li Yuanchao、1950年~、りげんちょう)と中国共産党中央宣伝部長の劉奇葆(Liu Qibao、1953年~、りゅうきほう)といった人々がそうである。国家副主席の李源潮は、胡錦濤政権下で台頭するスターであった。彼の重要な仕事の一部は、公的な労働組合、中国共産主義青年団、中華全国婦女聯合会(All-China Women’s Federation)のような「大衆組織」を監督することである。劉奇葆は、党のメディアや広報を担当しているが、中央宣伝部長というのは、通常、メディア全般について大きな権限を持っているものなのである。第18次中国共産党大会以降、劉奇葆は、彼の上司である劉雲山の統制を過度に受けているように見える。(Chinanews.com、2013年4月1日;文匯報、2013年11月20日)

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李源潮     劉奇葆

(続く)



 

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