古村治彦です。

 ロシアのウクライナ侵攻に対して、欧米を含む西側諸国は経済制裁を発動している。世界金融からの締め出しということになるが、これは制裁を科す西側諸国の国民生活にも大きな影響を与える。簡単に予想がつくのは、エネルギー価格の高騰だ。西ヨーロッパ諸国は、ロシアからの石油や天然ガスに依存してきた。従って、今回の制裁でもエネルギー分野に関しては例外措置とされている。ロシアからのエネルギー供給が減少すれば、困るのはヨーロッパ諸国だ。ロシアからのエネルギー供給が減ることになれば、西ヨーロッパ諸国は代替の輸入先を探すことになる。そうなればどうしても他の国々との競争になり、価格は上昇するだろう。日本もこのエネルギー獲得競争に巻き込まれる。日本国内のガソリン価格や電気料金の値上げは避けられない状況だ。

 エネルギー価格の上昇は他の製品や商品の価格高騰にもつながる。以下の論稿にもあるように、意外なところでは、アメリカはロシアから安価な肥料を輸入しており、それが途絶すると、農業生産にもかかわってくる。アメリカ国内の農業従事者たちは既に減産を視野に入れて計画を立てているということだ。そうなれば世界規模で食料不足ということになる。

 日本でも物価高が進行している中で、更に追い打ちをかけるような事態になるだろう。ロシアに対しての経済制裁はロシア経済にダメージを与えることになる。しかし、よく見ると、エネルギー部門が例外措置にしてあるなど、西側諸国、特にヨーロッパ諸国への影響が少しでも小さくなるように設計されている。フランスの経済担当大臣が「経済戦争でロシア経済を破壊する(フランスの経済規模なんて小さい癖に)」と言いながら、フランスのエネルギー巨大企業と樽はロシアからの撤退を行わない方針だ。良い意味でも悪い意味でも、フランスは狡猾で二枚腰だ。こういう点は見習うべきだ。しかし、彼らの口先だけの威勢のよさと実際の行動の差には唖然としてしまう。こういうことをやって恬として恥じるということがないというのも、戦争に明け暮れ、植民地獲得競争に奔走した野蛮極まりないヨーロッパという土地がなせる業なのか。

 これから私たちはインフレーションの進行に備え生活を防衛していかねばならない。インフレーションが進行すれば生活は苦しくなるし、政府は利上げと増税で私たちの生活を更に苦しめるだろう。大企業群はロシアのウクライナ侵攻を奇貨として、製品やサーヴィスの値上げを躊躇なく進めるだろう。この点に関しては、各企業がどれほどの利益を上げるかを注意深く監視して、不当な利益を上げるようならば、それもまた、対ロシアと同じく厳しく糾弾しなければならない。何とも嫌な春になりそうだ。

(貼り付けはじめ)

ロシアのウクライナ侵攻がアメリカ経済に与える影響に関する5つのポイント(Five ways the Russian invasion of Ukraine could impact the US economy

サラクシ・ライ、シルヴァン・レイン筆

2022年2月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/596203-five-ways-the-russian-invasion-of-ukraine-could-impact-americans

ロシアのウクライナ侵攻と、それに対する米国と西側同盟諸国による前例のない制裁措置は、世界経済と金融市場を動揺させている。

また、世界的にインフレーションが進行する中で、重要な食料、エネルギー、工業製品のサプライチェインが混乱し、海外旅行ができなくなり、株式市場が乱高下している。

ロシアのウクライナがアメリカ国民に与える影響の5つについてこれから見ていく。

(1)エネルギー価格と石油価格の上昇(Energy and oil prices rise

ロシアのウクライナ侵攻は5日目を迎え、アメリカとヨーロッパ連合は制裁を強化し続けている中、月曜日の原油価格は急騰し、ブレント原油は1バレル100ドルを突破した。

米国エネルギー情報局によると、2020年の単年度だけでも、ロシアはアメリカにとって3番目に大きな外国産石油の供給国であり、輸入石油の7%を占めていた。また、ロシアは2019年に130億ドルの鉱物性燃料をアメリカに輸出しており、アメリカに送られるロシアからの輸出の半分以上を占めていた。

注目すべきは、ロシアに科された制裁措置が今のところエネルギー部門を除外しているにもかかわらず価格が上昇していることだ。バイデン大統領は、この措置について「アメリカ国民がガソリン売り場で感じている痛みを抑えるため」の決定であると述べている。

しかし、フランスのパリ政治学院(Sciences Po Paris)教授でガソリン分野のアナリストであるティエリー・ブロスは、『ウォールストリート・ジャーナル』紙に、石油価格は「極めて不安定」な状態が続くだろうと語った。ブロスは「ウラジミール・プーティンはいつでも供給削減を決定できるのだ」と述べた。

今週月曜日、全米のガソリン価格は平均で1ガロン(約3.78リットル)3.62ドルとなった。アメリカ自動車協会によると、ガソリン価格は「原油価格が上昇を続けているため、今後も上昇し続けるだろう」と述べている。アメリカの平均ガソリン価格は、1年前には約2,71ドルだったが、この上昇はロシアがウクライナとの国境に軍隊を集結させる前から始まっていた。

アメリカ自動車協会の広報担当のアンドリュー・グロスは声明の中で「ロシアの侵攻とそれに伴うアメリカと同盟諸国による一連の金融制裁のエスカレートは、世界の石油市場に動揺を与えている」と述べている。

グロスは更に「アメリカの株式市場と同様に、石油市場も乱高下(volatility)に対応しにくい。爆発的な状況であり、地球の裏側での出来事がアメリカの消費者に波及することがあるのだということを痛感させられている」と述べた。

ウォールストリート・ジャーナルは、アメリカをはじめとする主要な石油消費国が、原油価格の上昇を受けて、7000万バレルの緊急備蓄(emergency stockpiles)を放出することを検討していると報じた。

(2)農業従事者のためのサプライチェインにかかわる諸問題で食料品価格は上昇する(Supply chain issues for farmers could drive higher food prices

アメリカ国内の農業従事者たちは、紛争前に過去最高値を記録していた肥料価格の高騰に備えているところだった。

『ブルームバーグ』誌によると、低コストで大量の肥料を生産するロシアは、カナダに次いで世界第2位のカリの生産国である。カリは主要な商品作物や農産物に使われる重要な栄養分である。

ロシアとウクライナの危機が最高潮に達する前から、『アイオワ・キャピタル・ディスパッチ』紙は、アメリカの農業従事者たちは来年の栽培シーズンに向けて、高騰する肥料価格と供給不足のため、トウモロコシの作付けと畑での窒素肥料(nitrogen fertilizer)の使用を控える可能性が高いと報じていた。

トム・ヴィルサック農務長官は木曜日、ロシアのウクライナ侵攻が米国農業に及ぼす直接的な影響について、最大の懸念は肥料会社による価格つり上げであり、「我々はそれを注視していく意向であると明確にしておく」と述べた。

サードブリッジ社のシニアアナリスト、パトリック・ドネリーは、「我が社の専門家たちによると、カリや肥料の生産業者は必要に応じて生産を増やす能力を持っているということだ。問題は、サプライチェインを通じて小売店や農家に供給される量がどの程度増加させることができるかだ」と語った。

ドネリーは更に「最も直接的な影響は、農産物価格の更なるインフレーション、ひいては食品価格の上昇となることだ。アメリカ国民はこの先、食料品代がもっと高くなると予想される」と付け加えた。

(3)旅行の制限と工区運賃の上昇(Travel restrictions and rising airfare costs

ウクライナは領空を閉鎖し、ロシア発着のフライトをキャンセルする航空会社が増えている。EUだけでなく、多くの国々がロシアの航空会社に対して領空を閉鎖している。

スコッツ・チープ・フライツのウィリス・オーランドは本誌の取材に対して次のように述べている。「領空閉鎖という点で、イギリスとロシアの間で報復合戦の状態になっており、FAAはウクライナ、ベラルーシ、ロシア西部の一部で民間航空機の飛行を制限している。こうした規制が継続または拡大した場合、中東、アフリカ、アジアへの航空運賃が高くなる可能性がある」と述べた。

紛争地域から遠く離れた場所での旅行も影響を受ける可能性がある。

オーランドは「この危機は、既に高騰している原油価格の上昇に拍車をかけるに違いない。ジェット燃料は航空会社にとって最大の経費の一つであり、燃料費の高止まりは運賃の上昇に反映される可能性がある」と述べた。

しかし、運賃に反映される燃料費高騰の影響は、「現在のような非常に競争の激しい運賃環境では緩和されるはずだ」とオーランド氏は付け加えた。

However, the effect of higher fuel costs on which fares are available is bound to be “tempered by the extremely competitive fare environment we're currently in,” Orlando added.

「航空会社は、ここ数週間、平均運賃が上昇しているにもかかわらず、新たな航空需要を取り込もうと絶えず努力しており、その結果、運賃のセールが頻繁に行われている」と述べた。

Airlines are grappling constantly to capture renewed demand for flights, which is resulting in frequent fare sales, even as average fares have crept higher in recent weeks,” he said.

(4)株式市場の乱高下(Stock market volatility

ロシアがウクライナとの国境に軍隊を集結させ、市場が大規模な紛争に備える中、株価は1年を通して着実に下落し続けた。戦争の到来とロシアに科せられた前例のない制裁措置により、金融セクターは未知の領域に向かい、今後も乱高下が続く可能性がある。

2022年に入ってから、ダウ平均は7%以上、S&P500指数は9%以上、ナスダック総合株価指数は約13%下落しており、投資の専門家たちは数年にわたる猛烈な上昇の後、さらなる減速に警戒感を強めている。

アリー社のチーフ・マーケット・アンド・マネー・ストラテジストであるリンゼイ・ベルは「リスク管理は優れた投資計画の鍵だが、地政学的リスクは計画的に備えることが難しい」と、アリーのチーフ・マーケット・アンド・マネー・ストラテジスト、リンゼイ・ベル氏は書いている。

「ロシアとウクライナの地政学的危機が続いていることが、今の株価を圧迫しているかもしれないが、歴史的に見れば、こうしたディップは長期投資家にとって良い買い場となり得る。この状況で考慮すべきは地政学的リスクだけではないが、いつの間にかFRBが心配の壁のトップに戻っていることは十分にあり得ることだ。"

The ongoing Russia-Ukraine geopolitical crisis may be pressuring stocks right now, but history suggests these dips could be good buying opportunities for long-term investors. While there is more than just geopolitical risk to consider in this situation, it’s quite possible that before you know it, the Fed will be back at the top of our wall of worry.”

(5)連邦準備制度によるより迅速な利上げ(Faster Fed rate hikes

エネルギー価格と食料品価格の更なる高騰とサプライチェインのボトルネックはインフレーション圧力を生み出し、連邦準備制度に対して、今停止している一連の利上げを促すことになるだろう。

インフレーション率が連邦準備制度の予想を大きく上回る水準まで上昇したため、FRBは既に来月から年内で数回の利上げを実施する姿勢を示している。FRBがインフレーションの指標として推奨している個人消費支出(personal consumption expendituresPCE)価格指数によると、今年1月までの12カ月間で物価は6.1%上昇した。

経済活動の低下によってインフレーションが緩和される可能性はある。一方で、専門家たちは、好調なアメリカ経済と深刻な供給の混乱の可能性が組み合わさることで、FRBがより早く利上げに踏み切る可能性があると見ている。

ゴールドマン・サックスのエコノミストであるデービッド・メリクルは金曜日に発表したリサーチ・ノートの中で、「2022年に非常に高いインフレーション経路をたどると、残り7回のFRB会合全てにおいて着実に利上げを行うことが容易になるはずだ」と述べている。

メリクルは、食品とエネルギー価格を除いた年間インフレ率は2022年末に3.7%と、前回予想の3.1%から上昇すると予想している。FRBは平均して年間2%のインフレを目指している。

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前例のない西側諸国の制裁はロシア経済の首を絞める(Unprecedented Western sanctions strangling Russian economy

シルヴァン・レイン、アレックス・ガンギターノ筆

2022年2月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/596144-unprecedented-western-sanctions-strangling-russian-economy

アメリカと西側の同盟諸国による金融制裁がロシア経済の首を絞めている。

ロシア大統領ウラジミール・プーティンがウクライナに対する戦争を仕掛けている最中、バイデン政権、イギリス、ヨーロッパ連合、その他の主要な経済プレーヤーたちからの前例のない罰則の重みで、彼の国ロシアの経済は崩壊し始めている。

ノートルダム大学キョウ国際問題大学院の経済制裁の専門家ジョージ・ロペスは、「経済界、銀行界の誰もが、私たちが新しい領域にいることを知っている。それは、銀行部門の中心を最も強力な矢として、一国の経済を組織的に停止させることだ」と述べている。

アメリカと同盟諸国が、ロシア中央銀行が保有する約6000億ドルの準備金からロシア政府を切り離し、ロシアの国際金融システムとの関係を更に断つ措置を取ったことで、月曜日のルーブルの価値は急落した。

西側諸国は、ロシア中央銀行、ロシア財務省、ロシアの外国投資ファンドとのほとんどの取引を禁止し、プーティンが制裁の衝撃を緩和するために何年も蓄えてきた資金を封じ込めた。この制裁は、世界的な混乱の中でドルの価値が上昇する中、世界金融システムの主要基軸通貨であるドルへのロシアのアクセスを遮断するものでもある。

アメリカとEUはまた、ロシアの特定の銀行に対し、銀行が取引を行う際に使用するメッセージング・システムである国際銀行間金融通信協会(Society for Worldwide Interbank Financial TelecommunicationSWIFT)へのアクセスも禁止した。

ロシアの準備金のうち約3000億ドルは、現在、アメリカ、ヨーロッパ、その他の同盟諸国にあり、現在はプーティンから切り離されている。ロシアはまだ数十億ドル相当の金を国内に保有しているが、複数の専門家によれば、モスクワは自国の銀行が厳しい制裁を受けているため、ロシアの銀行と進んで取引する人はほとんどいないだろうと述べている。

調査会社マネタリー・ポリシー・アナリティクス社の共同設立者でエコノミストのデレク・タンは、「問題は、他の人々が喜んで取引しない場合、彼らはそれを有用なものに変換することができないということだ」と述べている。

タンは「ロシアの銀行は資産を保有しているが、使うことができない」と発言した。

外貨準備を利用できないロシア政府は、経済と金融セクターを浮揚させるために必死の手段に打って出た。ロシア中央銀行は基準金利を20%に引き上げ、ルーブルが更に暴落するのを防ぐために外国人が保有する有価証券の売却を禁止した。

ロシアは海外の金融機関にSWIFTの代替手段に参加するよう促したが、欧米の路線に従わない国には制裁が待っているため、賛同者はほとんどいないようだ。

ロシアは最終的に、銀行の経営破綻、インフレーションの進行、長期にわたる深刻な経済的ダメージを防ぐことはできないかもしれない。アメリカとEUはロシアへのダメージを限定的にするためにいくつかの例外を設けたが、専門家たちは、欧米による経済制裁の影響は世界市場に波及する可能性があると分析している。

アメリカはこれまでにも、ヴェネズエラ、北朝鮮、イランの各中央銀行を制裁の対象としてきた。しかし、ロシアのような経済規模を持つ国に対して、これほど多くの国の支持を受けて、これほど厳しい制裁を科したことはない。スイスがロシアに制裁を加えることは、モスクワにとっても大きな痛手であり、金融市場で大きな存在感を示す歴史的に独自の多胎場を保ってきた国ロシアにとって大きな転機となると見られる。

クロウェル・アンド・モーリング社の国際貿易プラクティスグループで、アメリカの経済制裁分析を専門とする役員デイヴィッド・ウルフは次のように述べた。「今回の欧米諸国の対ロア経済制裁は前例のないことだ。これほど早く、これほどのレヴェルで各国が協調して行動したことを私はこれまで見たことがなかった」。

2020年のロシアの国内総生産(gross domestic product)は約1兆5000億ドルで、ニューヨーク州よりもわずかであるが小規模の経済だ。しかし、ロシアは石油、天然ガス、小麦、特定の金属の世界供給のかなりの割合を産出しており、敵対する西側諸国に対して重要な影響力を保持している。

前出のタンは「アメリカにとってそれほど関係はないのだが、ヨーロッパにとっては極めて深刻な事態になると思う」と発言した。ロシアとの経済関係が深い東欧・中欧諸国にとって、今回の制裁は「極めて破壊的(extremely disruptive)」なものになる可能性があるとタンは述べた。

ヨーロッパはロシアの石油や天然ガスの輸出に特に大きく依存しており、そのためヨーロッパの指導者たちはロシアに対する厳しい経済制裁について警戒している。もしプーティンがロシアからのエネルギーや食糧のヨーロッパへの輸出制限を決めれば、物価上昇を更に強めながら、需要は急増するという、プーティンにとっては有利な状況になる。

アメリカはエネルギーの純輸出国であるが、アメリカの石油と天然ガスに対する需要が急増すれば、過去12カ月で40%上昇したアメリカ国内のガソリン価格も上昇する可能性がある。ガソリン価格の高騰は、インフレーションの進行で急落したバイデン大統領の支持率を更に低下させる可能性がある。

アメリカと同盟諸国は、これまでに発表された対ロシア経済制裁のうち、エネルギー関連の支払いについては例外とするということで、経済制裁による反動・吹き戻し(blowback)を抑えようとしている。このような例外措置は、西側諸国をエネルギー価格の上昇から守るだけでなく、西側による制裁(かなり厳しい罰則を設けている)の経済的な影響力をある程度維持することになる。

トランプ前大統領の下で文民安全保障・民主政治体制・人権担当国務次官を務めたエリック・ユーランドは「ロシアの経済規模は私たちよりはるかに小さいが、ロシアは欧米諸国の製品やサーヴィスを輸入禁止にするなど、確報復する可能性を持っている。つまり、西側諸国や西側企業からのロシアへの製品輸出禁止に直面する可能性が突如としてできたということになる」と、述べた。

ユーランドは、西側諸国の制裁がすぐに影響を与える分野がある一方で、完全な影響を与えるのに数カ月かかる分野もあると述べた。

ユーランドは更に「これらの影響のいくつかは、より中規模である。そのため、私たちはエネルギー生産とその事業に関するロシアの取引能力を中断するようにしなければならない。短期的な価格の影響に関しては、この制裁の効果が明らかになる3から6ヶ月の期間で見るようにすべきで、即座に顕著な変化はないと思われる」と発言した。

しかし、ロシアには、制裁による経済的な締め付けを緩和するための選択肢や協力者がほとんど存在しない。中国とロシアは経済的に密接な関係を築いているが、中国の銀行の中にはロシアの石油会社向けの取引処理に難色を示すところも既に出ているとタンは指摘している。

タンは「中国の銀行は伝統的に、アメリカの制裁に抵触することを非常に警戒する」と述べた。

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多くの多国籍企業がモスクワを罰するためにロシアから撤退(Multinationals flee Russia, punishing Moscow

カール・エヴァース=ヒルストロム筆

2022年2月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/business-a-lobbying/business-a-lobbying/596200-multinational-us-companies-flee-russia-amid-invasion

ロシアによるウクライナへの残虐な侵攻を受け、国際社会の多くのアクターたちがロシアを孤立させようとしている。多くの巨大多国籍企業もその動きに同調し、ロシアからの撤退を進めている。

石油・ガス分野の巨大多国籍企業のBPとシェルは、ロシアで数十億ドル相当の投資を何十年も行ってきたが、ロシアから撤退すると発表した。複数のアメリカの多国籍企業はロシアへの出荷を完全に停止している。

ロシアのウラジミール・プーティン大統領と取引することによる評判の悪化や財務上のリスクを考慮する企業が増えるにつれ、ロシアからの脱出(exodus)は続くと予想される。複数の専門家は、エネルギー企業が巨額の損失を甘受してロシアから撤退する決定を下すことで、失うものが少ない産業分野の企業も即座にエネルギー企業に同調するだろうと分析している。

戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)の国際ビジネス担当部長ビル・ラインシュ「各企業の最高幹部クラスが、政治的なリスクを考慮するだけでなく、ロシアの行動に対して純粋に怒りを感じているのだと私は考えている」と発言した。更には「企業がこれほど早くロシアからの撤退を決断したことに驚いている」とも述べた。

こうした決断の背景には、ロシア政府との関係を断つよう求める世論の大きな圧力がある。また、アメリカとその同盟諸国が発動した大規模な制裁により、各企業がロシア企業とビジネスを行うことが著しく困難になっていることも理由として挙げられる。

シェルは月曜日、約30億ドル相当のロシア国有のエネルギー・プロジェクトへの出資を断念すると発表した。シェルは更に、この措置が資産価値を低下させ、「減損処理(impairments)につながる」と強調した。

シェルの最高経営責任者(CEO)であるベン・ヴァン・バーデンは、「私たちは、ヨーロッパの安全保障を脅かす無意味な軍事侵略行為によって、ウクライナで人命が失われたことに衝撃を受けており、これを遺憾に思う」と声明の中で述べた。

ヴァン・バーデンの声明発表は、長年プーティン大統領を擁護してきたBPが、ロシア国営エネルギー企業ロスネフチの株式20%を売却すると発表した後に行われた。厳しい制裁下で売却は困難であるため、BPがこの投資を償却することになれば、250億ドルもの損失が発生する可能性がある。

BPのヘルゲ・ランド社長は声明の中で、「ロシアのウクライナへの攻撃は、地域全体に悲劇的な結果をもたらしている侵略行為である」と述べた。「BPは30年以上にわたってロシアで事業を行い、優秀なロシア人の同僚たちと協力してきた。しかし、今回の軍事行動は根本的な変化を意味する」と述べた。"

ロシアがウクライナへの攻撃を激化させる中、世界からの孤立も同時に進んでいる。アメリカの運送会社フェデックスとUPSは、ロシアとウクライナ両国への全ての出荷を一時的に停止すると発表した。ドイツのDHLは、安全上の懸念を理由にロシアとウクライナへのサーヴィスを一部停止すると発表した。

海上輸送企業マースクは月曜日、ロシアとの間の輸送を停止する可能性があると発表した。この動きは、ロシアを国際貿易から更に切り離すことになる。デンマークの巨大海運会社マースクは、ウクライナの治安状況を注視し、「ロシアに対して科された、常に変化する制裁と制限に従う準備をしている」と述べた。

ロシアから撤退していない企業は、複雑な制裁をどのように乗り切るかを分析し、ロシアとのビジネスを継続することが制裁による規制上の課題に適合するかどうかを探っていると思われる。

クレムリンのウクライナ侵攻に対応して、アメリカと同盟諸国は、海外に保有するロシア中央銀行の資産約6300億ドルを凍結し、ロシア国有企業の資金調達を阻止し、ロシアの銀行の一部を国際決済システム「SWIFT」から切り離した。アメリカはロシアの国有銀行が米ドルにアクセスできないようにし、ロシアがコンピューターチップやその他の技術を入手できないようにする輸出規制を課した。

わずか数日の間に、この制裁によってロシア経済は崩壊寸前にまで追い込まれた。月曜日の午後、ロシア・ルーブルの価値は1セント以下となり、企業がこの国から撤退する理由がまた一つ増えた。

ヨーロッパ域内の各企業、特に銀行やエネルギー企業は、2014年にクリミア半島を併合したことでアメリカがロシアに制裁を発動した後、一般的にロシアへの投資を制限しようとしたアメリカ企業よりもはるかにロシアへの関与の度合いが高くなっている。

アメリカ通商代表部によると、ロシアはアメリカに輸入される石油の約7%を占めているが、全製品の輸入国としては全体で20位、アメリカ製品の輸出市場としては40位に過ぎない。

ロシアから切り離される場合、アメリカ企業で困難に直面することになるのは少数だ。ボーイングは航空機の製造にロシア製のチタンを長年使用してきたが、他の国から材料を調達できると主張している。ペプシコとマクドナルドはともに、売上の4%前後をロシアとウクライナから得ている。

しかし、他の企業は既に行動を起こしている。デル・テクノロジーズはロシアへのコンピューター販売を凍結すると発表し、デルタ航空はロシアの航空会社アエロフロートとのチケット購入の提携を停止した。アエロフロートはヨーロッパのほぼ全域で飛行を禁止されている。

前出のラインシュは「エネルギー分野を除けば、ロシアは経済の舞台で大きな役割を担っていない。ロシアとの貿易を停止するのは、消費者としても政治的にも賢い行動であり、企業のコストもそれほどかからないだろう」と述べた。

ロシアの攻撃から逃れるウクライナ国民に対して、他のアメリカ企業も積極的に支援している。エアー・B・アンド・Bは10万人のウクライナ人難民に無料で短期間の住居を提供すると発表し、グーグル、メタ、ツイッターは複数のロシア国営企業がウクライナでコンテンツを宣伝することを禁止している。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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