古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:舛添要一

 古村治彦です。

 

 舛添要一東京都知事が、2015年6月15日に、東京都議会に対して、「2016年6月21日付で辞任したい」と申し出ました。ここ数カ月の舛添氏の政治資金の使い道に対する批判から、与党的立場である自民党と公明党を含む都議会の各会派は都知事に対する不信任案提出を決めていました。不信任案が可決されると、都知事は辞職するか、都議会を解散するかを選択し、決定しなくてはなりません。

 

 舛添氏に対するマスコミの報道と都議会における都議会議員の攻撃に対しては、「やり過ぎだ」「虐めだ」「法律に違反していないのにここまで攻撃するのは前近代的で、部族社会的だ(ここには一種の非西洋的な社会に対する蔑視が含まれていますが)」といった批判が行われています。

 

 今回の舛添氏の辞任騒動について、『ニューヨーク・タイムズ』紙が報道しました。それは以下のような記事です。

 

Tokyo Governor, Yoichi Masuzoe, Resigns Over Spending Scandal

By JONATHAN SOBLE

JUNE 15, 2016

http://www.nytimes.com/2016/06/16/world/asia/tokyo-governor-yoichi-masuzoe-resigns.html?ref=asia&_r=0

 

 記事のタイトルは「舛添要一東京都知事が政治資金支出スキャンダルで辞任」というものです。内容な今回の騒動の内容を客観的に報道しているものです。

 

 その内容を簡単に箇条書きでまとめます。

 

=====

 

・東京都知事舛添要一氏が水曜日(2016年6月15日)に辞意表明。政治活動のための資金を個人的な旅行や楽しみのために使ったことを認めた。これで人々の興奮と怒り(furor)を掻き立てた。

 

・ここ2年半で2人目の金銭を巡るスキャンダルで辞任する都知事となった。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催地東京にとっては痛手。

・ここ数カ月、舛添都知事の支出に関しては人々の怒りが醸成されてきた。都知事は今年のリオデジャネイロのオリンピックに出席できるまで都知事を続けさせてほしいと都議会に頼んだ。東京は次回の開催地として注目させるためだ。

 

・「私の懸念はオリンピックなのです」と語った。

 

・支持率の急落と政治的な同盟者の変心と離脱(defection)が辞任の最終的な決め手となった。

 

・舛添氏が自身と家族のために支出した金額は、現代の政治とカネを巡るスキャンダルの基準に照らし合わせてみると、巨額と言うには程遠い。レストランでの食事に数百ドル、ホテル滞在に数千ドルを支出した。

 

・舛添氏が雇った弁護士たちが支出を調査し、そこで、ここ数年の支出のうち、440万円(約4万1000ドル)が「不適切だが、違法ではない(inappropriate, but not illegal)」支出であることが分かった。舛添氏は謝罪し、支出に関して「いくつかの公私混同(some mixing of public and personal)」があったが、意図的にルールを破ったのではないと述べた。

 

・支出が少額であったことが彼の助けにならなかった。

 

・人々の怒りは深まった。今回のエピソードを象徴する言葉が「せこい」だ。せこいは「安い、小さい」を意味する。舛添氏が、少額の税金を納めている納税者と政治資金を寄付した人々のお金を温泉旅行に使ったことで、より人々の神経を逆なでしたと言えるだろう。それは、彼がそれらのお金を全てだまし取ったよりも怒りを掻き立てたと思われる。

 

 右寄りの政党である自由民主党所属の都議会議員である神林茂氏は、弁護士たちによる報告書が出た後、「私は怒っています。せこい、あまりにせこい」と述べた。自民党は舛添氏が政治家のキャリアの大部分を過ごした正当であり、都知事選挙で彼を応援した政党である。「せこい」という言葉は、今回のスキャンダルに言及する際に新聞やSNSで頻繁に使われた。

 

 弁護士たちが不適切な支出だと認めたものの中には、わずか数ドルの漫画本、上海の土産屋で買った絹の書道家用のローブが含まれていた。舛添氏は、政治活動にのみ支出されることを認められた彼の選挙組織にこれらの代金を付けていた。しかし、この法律の政治活動の定義は曖昧で、政治家たちは日常的に政治資金を自身の私的な支出に当てていると専門家たちは述べている。

 

 舛添氏の公務での出張のコストも批判の対象となった。彼はロンドン、ニューヨーク、パリに大規模な職員グループを連れて出張した。飛行機はファーストクラス、滞在先のホテルは高級だった。彼は都庁のリムジンを使って昨年4月までに東京南西にある温泉に48回行ったことが報道された。

 

・ある時、「世界の主要都市のリーダーが二流のビジネスホテルに滞在できますか?」と述べた。オリンピック開催を控え、東京のブランドを高める必要があると彼は述べた。批判が高まるにつれ、舛添氏は悔悟の念を表明するようになったが、ダメージは大きかった。

 

・舛添氏は政治学者、テレビのコメンテイたーの後、政治の世界に入り、2000年代には厚生労働大臣を務めた。2014年には、政治資金スキャンダルで辞任した猪瀬直樹氏の後任の都知事に当選した。

 

 猪瀬氏は2013年12月に、選挙期間中に病院経営者から50万ドル以上のお金を借りたことを認めた。猪瀬氏は、このお金は政治に使う意図のないものであったと否定したが、批判者たちは、これは秘密の政治資金の寄付だと主張した。

 

・自由民主党を含む7会派は水曜日(6月15日)に舛添氏に対する不信任案を提出する準備をしていた。これが彼の辞任の後押しとなった。最近の各新聞の世論調査では、約75%の人々が舛添氏の辞任を望むという結果が出ていた。

 

・舛添氏の後任を決める選挙は7月31日か8月7日に行われると予想される。7月10日には参議院議員選挙もあり、政治的に忙しい日程となる。

 

・猪瀬氏と同じく、舛添氏はオリピックを支持しているが、膨れ上がるコストに歯止めをかけようとした。彼は、デザインのために予算を大幅に上回る建設費を必要とするメイン会場の予算支出の肩代わりを拒絶した。デザインはより安く済むものに変更された。

 

・彼は繰り返し納税者のお金を無駄に使わないと述べたが、これが彼に跳ね返ってくることになった。

 

=====

 

 このNYTの記事では、今回の騒動の経過と内容が良くまとまって紹介されています。NYT東京支局のジョナサン・ソーブル記者が執筆した記事ですが、彼の眼には、「せこい」という言葉が印象的だったようです。「せこい」という言葉は、私たち日本人は日常で使う言葉で、あまりいい意味では使いません。「けち」よりももっとお金に執着し、使い方がせせこましいという感じで使いますが、ソーブル記者は、「安い、小さい」という意味だと紹介しています。ちょっと翻訳しにくい言葉です。

 

 この記事の柱は、2本あって、1本目は、「せこい(=安い、小さい)」で表現されるものです。舛添氏の騒動では、約440万円が「不適切だが、違法ではない」支出という調査結果が出ました。この額が政治とおかけのスキャンダルではかなりの少額であるということ、その支出が数百円の漫画本やお土産のローブであったことを書いています。

 

そして、この金額の小ささがと支出内容の小ささが、少ない所得から必死になって税金を支払っている納税者をかえって怒らせたとあります。

 

 ここで読み取れるのは、前任者だった猪瀬直樹氏、その前の都知事であった石原慎太郎氏との対比です。「額の小ささ」「日常感あふれる使い道」に人々は怒りを募らせながら、石原慎太郎氏の尖閣諸島の途による購入で集めた寄付金や新銀行東京につぎ込んだお金などには怒りの矛先は向かわなかったということです。石原氏は「せこく」なかったがゆえに無駄遣いを許されたということができます。「人は小さな嘘は見破るが、大きな嘘は信じてしまう」ということの具体例です。

 

 記事では、政治資金規正法における政治活動の定義が曖昧なために、政治家たちは日常的に私的な支出も政治資金につけ回している、という専門家の主張を紹介しながら、政治資金規正法の不備を紹介しています。政治家にとっては便利な法律かもしれませんが、政治資金収支報告書を精査されてしまえば、何かしら不備やら私的な支出が見つかるようになっている現在の法律は、いつでも、政治家のスキャンダルを作り上げることが出来るようにしているとも言えます。

 

 この記事ではっきりと書かれているのは、舛添氏が東京オリンピックの膨れ上がるコストを肩代わりすることを拒否したという点です。2016年3月末に、森喜朗、遠藤俊明・オリンピック担当大臣、舛添都知事の間で、東京都が国立競技場建設費のうち500億円を支出することに合意したというニュースはありました。しかし、基本的に「納税者のお金は無駄に使わない」というのが舛添氏の姿勢ならば、これからどこまで膨れ上がるか分からないオリピックの経費の大いなる無駄遣いにとっては邪魔な存在であって、その存在を政治資金スキャンダルで葬ってしまおうという動きがあってもおかしくはありません。

 

(終わり)






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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今朝、私は以下の新聞記事を読みました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに関しては、新国立競技場建設を巡る政府と東京都、具体的には森喜朗元首相(文教族のドン)と下村博文文部科学大臣(東京を地盤とする文教族で安倍晋三首相の側近)対舛添要一東京都知事の「500億円」を出すか出さないかの問題が大きくクローズアップされています。

 

 以下の新聞記事によると、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで当初計画されていた東京のお台場を中心とする湾岸地域に集中しての各競技開催が放棄され、既存の施設を多く利用した開催に変更になるようです。地図で見れば分かりますが、お台場を中心とする湾岸地域での多くの新施設建設が放棄されることになります。

 

 私は「東京オリンピック・パラリンピックなどと言っているが、正確には何か裏事情がプンプンのお台場オリンピック・パラリンピックじゃないか。こんなものを開催する意味はない」と考えてきました。私は、このオリンピック・パラリンピック開催はお台場カジノ構想とセットであると考えていました。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「20年東京五輪:会場変更、戸惑いも」

 

毎日新聞 20150610日 東京朝刊

http://sportsspecial.mainichi.jp/news/20150610ddm035050100000c.html

 

 国際オリンピック委員会(IOC)が8日に2020年東京五輪の会場計画で新たに7競技の会場見直しを承認したことを受け、対象となった競技団体の関係者からは理解を示す声が上がる一方、選手村(東京都中央区)から8キロ圏内というコンパクトな当初の計画が崩れたことを残念がるコメントも聞かれた。

 

 若洲オリンピックマリーナ(東京都江東区)から1964年東京五輪と同じ江の島ヨットハーバー(神奈川県藤沢市)に変更された日本セーリング連盟の鈴木修専務理事は「(当初の計画以外で)コンディションが一番いい所が選ばれた。市民の盛り上がりなどを総合した結果」と納得した様子だった。

 

 江東区に新設予定だった夢の島ユースプラザから武蔵野の森総合スポーツ施設(仮称、東京都調布市)に変わる日本バドミントン協会の能登則男事務局長は「決まったら仕方ない」と諦めの表情を浮かべ、「選手村から会場までの移動時間が長い。(道路の五輪関係車両)専用レーンもどれぐらいになるか分からないが、選手に負担のないようにしてほしい」と注文した。

 

 東京ビッグサイト(江東区)から幕張メッセ(千葉市)に移るテコンドーの関係者は「競技人口が少ないテコンドーは都心で開催して埋没するより、千葉で自治体の後押しなどで盛大にやれたら、良かったと言えるかもしれない」と前向きにとらえつつも、「東京五輪なのになぜ千葉で、と外国人選手には抵抗を感じる人が多いかも」と戸惑いをにじませた。【新井隆一、熊田明裕】

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

 ただ、お台場オリンピック・パラリンピックと言いながら、メインスタジアムは相も変わらずに新宿区霞町のあたりの旧国立競技場の場所にそのまま建てられるというのが気になっていました。「お台場に新たに建てれば良いのに」と考えていました。

 

 しかし、カジノ構想の見せかけの理由としてのオリンピック・パラリンピックで、政治的な影響力がまだまだ大きい森喜朗元首相(ラグビーにも深く食い込んでいる)に利権を食わせるために新国立競技場を建設することになったのだと思います。

 

 東京オリンピック・パラリンピックは石原慎太郎元都知事の独りよがりの悲願でした。石原慎太郎氏の長男は石原伸晃代議士で、父慎太郎氏の頼みを受けた森喜朗氏の支援を受けて、自民党総裁選挙に出馬したことがあります。また、石原慎太郎氏と森喜朗氏は若手代議士時代には、血判状で有名になった議員グループであった青嵐会に属していました。こうした点から、2人は親しい関係にあります。そして、国立競技場とその周辺の利権は森喜朗氏、お台場開発に関しては石原慎太郎氏の棲み分けができていたのだろうと思います。下村博文大臣は森氏の子分格でしかありません。

 

 しかし、お台場オリンピック・パラリンピックの様相が変わってきました。お台場での開発が縮小され、既存施設の利用、更には東京西部・調布市にある施設利用計画が浮上してきました。前回の都知事選挙で舛添要一氏は東京オリンピック・パラリンピックにおける東京西部地区の利用を公約に掲げていました。そして、カジノ構想には慎重な公明党の支援も受けて当選することが出来ました。今から思い返してみると、舛添都知事誕生は、お台場オリンピックの放棄とセットだったということになります。そして、舛添氏は、現在、新国立競技場建設について、「正論」の立場に立って、文教族を攻撃しています。私は、ここに、安倍政権内部の暗闘があると考えました。

 

 先日、私はSNSI・副島隆彦を囲む会の中田安彦研究員と雑談をしていました。彼は私がスポーツ好き(彼はスポーツ好きではありません)であることを知っているので、スポーツの話、特に横浜にあるプロ野球球団である横浜DeNAベイスターズの話をしてきました。私は彼がそんな話をしてくるのは珍しいと思ってその理由を尋ねたところ、カジノ構想絡みの話で、質問したと答え、以下のような記事がたくさん出ていることを教えてくれました。

 

(雑誌記事転載貼り付けはじめ)

 

●「有力視されたお台場カジノ開設 菅官房長官の地元横浜逆転か」

 

2015.04.25 16:00 NEWSポストセブン

http://www.news-postseven.com/archives/20150425_317893.html

 

 

 株価は上がり、統一地方選でも勝って、浮かれ放題の安倍晋三首相だが、実は足下は大揺れだ。

 

 現在、首相官邸で実権を握っているのが菅義偉・官房長官と世耕弘成・官房副長官のラインだ。官房長官はあらゆる政策で各省庁の調整を行なう役目であり、その権限は絶大だ。

 

 その菅氏のライバルがお友達大臣の筆頭格の下村博文・文部科学相だ。下村氏は長く首相と同じ細田派(清和会)に所属し、安倍氏とは家族ぐるみの付き合いで知られる。「いずれ官房長官として安倍総理を支えるのが悲願」(細田派中堅)というから菅氏は目障りな存在に映るだろう。

 

 その2人が安倍政権が力を入れる「カジノ特区」の招致合戦で激突した。東京選出の下村氏は、「東京・お台場の一角に国際観光産業としてのカジノを構えたい。お台場に行ったら歌舞伎も浄瑠璃もAKB48も見られる。その一角だけでも年間2000万人ぐらいの集客力があるようなものだ。これだけで東京はものすごく元気になる」と旗を振り、当初はお台場でのカジノ開設が有力視されていた。

 

 ところが、菅氏の地元・横浜に逆転されたという。

 

「政府は東京五輪までに全国2か所にカジノ特区を開設する方針だ。有力なのは横浜と大阪。お台場は東京都知事が慎重派の舛添要一氏に代わったことで後退し、その隙に菅さんが巻き返した。特区を指定する国家戦略特別区域諮問会議のメンバーには菅さんと甘利明・経済再生相の2人の神奈川選出議員がいるのに、下村氏ら東京選出議員が1人も入っていない」(カジノ議連の議員)

 

 菅vs下村の力関係に大きな影響を与えたのが下村氏の政治資金スキャンダルだ。下村氏を応援する教育関係者の団体が政治団体の届出をしないままパーティーや講演会を開催し、下村氏が寄付を受けていたことが政治資金規正法違反にあたると追及された。

 

 安倍首相はあくまで下村氏を庇(かば)ったが、「これで次の内閣改造でも下村氏の官房長官の目はまずなくなり、菅氏は漁夫の利を得た」(自民党幹部)格好なのだ。

 

※週刊ポスト201551日号

 

(雑誌記事転載貼り付け終わり)

 

 このように、お台場カジノ構想は頓挫しており、現在は横浜と大阪が有力な候補地となっているそうです。そして、安倍晋三首相の側近の座を巡り、菅義偉官房長官と下村博文文部科学大臣が争っているが、菅氏の方がリードしているということのようです。菅氏と大阪の橋下徹市長の関係などについては、中田安彦研究員がウェブサイト「副島隆彦の学問道場」(http://www.snsi.jp/)において、文章にして発表する予定となっていますので、そちらを是非お読みください。

 

 横浜DeNAベイスターズは今シーズン好調ですが、前身の大洋ホエールズ、横浜大洋ホエールズ、横浜ベイスターズから含めてあまり強くないティームであることはプロ野球ファンならば誰でも知っています。相手に白星ばかりを供給して、自分たちは借金(負け越し)を重ねる「横浜大洋銀行」などと揶揄されたこともありました。それでも1960年と1998年に2度セントラル・リーグを制覇し、日本シリーズでも勝利を収め日本一になっています(消滅した大阪近鉄バファローズは日本一になったことはありませんでしたし、人気球団阪神タイガースの日本一は1985年の1度きりです)。

 

 ベイスターズが本拠地としているのが横浜スタジアムで、1978年開場、この年にそれまで川崎球場を本拠地としていた大洋ホエールズが移ってきました。川崎球場には、東京下町にあった本拠地東京スタジアムを追われた当時ジプシー球団と呼ばれたロッテ・オリオンズが入りました。カジノ建設候補地である山下公園付近や中華街にもほど近い公園の中にある横浜スタジアムは絶好の場所にありますが、カジノ構想ではかえって邪魔になる可能性が大きいようです。別の場所に横浜ドームを建設、しかもそのドームは音楽コンサートなどメインになる可能性もあるということです。

 

 話を元に戻すと、お台場オリンピック・パラリンピックからカジノへという東京自民党と石原慎太郎氏の思惑は外れ、菅義偉官房長官のお膝元である横浜におけるカジノ構想が進んでいるということです。そして、このことが2020年の東京オリンピック・パラリンピックの計画の迷走の原因になっているのだろうと私は考えています。

 

(終わり)





ダニエル・シュルマン
講談社
2015-07-29




 
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 古村治彦です。



 私は最近、昭和史にも関心を持ち、それに関する本を読むようになりました。その中で、清沢冽の『暗黒日記』『清沢冽評論集』(ともに岩波文庫)を手にし、読む機会を得ました。これら2冊の本は本当に素晴らしい示唆を与えてくれました。



 清沢冽は1890年に長野県で生まれ、小学校を卒業後、内村鑑三の弟子、井口喜源治が開いていた「研成義塾」で学びました。そして、1906年に渡米し、苦学しながらタコマ・ハイスクール、ウィットウォース・カレッジで学びました。


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1918年に帰国し、中外商業新報社(現在の日本経済新聞社)、朝日新聞社に勤務した。1929年には朝日新聞を辞し、外交評論家として独立しました。その後は数多くの著作を著し、外務省の顧問なども務めました。1945年5月、肺炎をこじらせ55歳で急死してしまいました。彼の戦時中の日記は『暗黒日記』として出版されました。



 『清沢冽評論集』の編者山本義彦は、清沢冽の思想の特長を「(1)「心的態度」としての自由主義、中庸主義、(2)教育の国家統制に反対し、画一主義の排除と多元主義の擁護、(3)国際平和の実現をめざす外交論、(4)軍部の神がかり的、猪突猛進的で非科学的な戦争指導への否定、これに追従する思想家、ジャーナリストへの厳しい批判」としてまとめています。




 私は、清沢冽が1929年に発表した「甘粕と大杉の対話」に注目したいと思います。この文章を発表したことで、清沢冽は朝日新聞を追われ、外交評論家として独立しました。この文章は、獄中にいる甘粕正彦の許へ幽霊となった大杉栄が現れて対話を行うというものです。この二人のやり取りは清沢の創造の産物です。



 この対話の中で、私に最もなるほど、その通りだと思わせた一節をここで引用したいと思います。これは大杉の台詞です。



「今の俺は世界の思想を別けるに、右と左に区別しないで右と左を一緒にした極端派(エキストリーミスト)と、これに対する自由派(リベラル)とにする。そしてこの極端派の中には君ら軍人だの警官だのと一緒に生前の大杉やいわゆる戦闘的主義者とを編入する。この事実の特長は、持って生れた争闘性乃至は争闘を主とした教育の影響から、自分が闘うと同時に、他人をも闘わしたい点にある」



 私は、この「極端派(エキストリーミスト、Extremist)対自由派(リベラル、Liberal)」

という分類に触れて、自分の抱えていたもやもやをある程度晴らすことができたと感じました。私は、リベラルという言葉の定義の難しさもあって、今でもリベラルとは何かということを考えています。答えが出るかはわかりません。



 しかし、攻撃的な右と左対そうではない勢力という分け方にはある程度納得ができます。そして、右と左が極端派として一緒になり、リベラルと対峙するという構図を清沢は私に与えてくれました。



 私は、この構図は日本政治を理解する上で非常に重要だと思います。現在の状況に完全に当てはまるものではなくても、大きな示唆を与えてくれるものだと思います。



 現在の政治状況は、自民党が大きな勢力を持ち、公明党と共に与党となっています。野党側には元気がなく、共産党がある程度の活力を保っている状況です。日本維新の会やみんなの党は、安倍晋三首相が「責任野党」と呼んだように、自民党に大変強力的な姿勢を示しています。ここにリベラルな野党はいません。



これは2012年の衆議院銀選挙でリベラル政党が軒並み壊滅してしまったからです。この「リベラルの殲滅」を仕組んだのは、マイケル・グリーンであることは間違いのないところです。



 最近の選挙で安定して議席を確保し、微増させているのは共産党です。自民党に対する批判票を吸収する形で党勢を少しずつですが拡大させています。しかし、共産党が過半数を握って政権を掌握するということはないでしょう。



 ここで奇妙な「呉越同舟」「共存共栄」関係が生まれます。自民党がどんどん大きくなる。それによって、格差は拡大し、人々の生活は苦しくなります。すると、批判票が共産党に流れる。そして、自共の間には奇妙な相互依存関係ができます。自民党にしてみれば、批判票が共産党に流れることで、強力なリベラル野党の出現を防いでくれることになります。



 そして、ここで面白いことになるのですが、自共は共にリベラルの出現を阻止しようとして奇妙なランデブーを行うのです。その好例が今回の東京都知事選挙(2014年2勝ち9日投票)です。



 安倍晋三首相には国内に強力な反対勢力を持たないという状態になりました。私の考えでは、日本国内で安倍氏に少し動揺を与えられる反対勢力として、アメリカ大使館にいるキャロライン・ケネディ米駐日大使がいて、そのリベラル・カトリック人脈から、今回、細川護煕氏が突然、東京都知事選挙に出馬してきたと考えています。



 今話題の都知事選について考えてみます。舛添要一氏、田母神俊雄氏、宇都宮健児氏、細川護煕氏が有力な候補者となっています。自民党と公明党は舛添氏、日本維新の会の石原慎太郎系と自民党の一部は田母神氏、共産党は宇都宮氏、民主党は細川氏をそれぞれ支援しています。



 私は最初、宇都宮氏と細川氏が一本化してどちらかがどちらかの支援に回るくらいのことをしなければ、舛添氏が楽々と当選してしまうことになると考えていました。そうなるのなら、当選の可能性が高い細川氏が統一戦線の候補者となるべきだと考えました。しかし、細川氏も宇都宮氏も一本化の考えはないと言明されましたから、一本化がないのは残念だがしょうがないと考えあした。



 宇都宮氏陣営は、細川氏の出馬に関して文書をPDFファイル形式で発表していたり、細川氏の出馬が遅かったことを捉えて「後出しじゃんけんだ」という全く持って的外れな批判をしたり、と一番当選の可能性が高い舛添氏ではなく、細川氏を攻撃してきました。



 私は、主敵は誰なのか、自民党政権に大きなショックを与えるのは、舛添氏の落選ではないのかと考え、どうして宇都宮氏陣営は舛添氏に対して同じほどの熱心さで対峙しないのかと不思議で仕方がありませんでした。



 しかし、私は清沢の「極端派と自由派」という分け方を知り、合点がいきました。この都知事選でも「自共の共存共栄のためのリベラル潰し」が行われているのです。宇都宮氏個人は当選に向けて必死で選挙活動を展開されているでしょう、粘り強さが身上の方で、それこそ命がけの活動をなさっていると思います。しかし、彼の支援者や共産党はどうでしょう。



 自分たちの商売敵になりそうなリベラルの代表である細川氏を攻撃し、自共の安定した相互依存関係をこれからも維持していこうという戦略を取っているように見えます。自民党や安倍氏の圧政が続けば続くほど、彼らにとっては安定した支持や支援を得られるということで、これは「合理的な選択(ラショナル・チョイス)」と言えるでしょう。



 自民党にしてみれば、自分たちが動かなくても、宇都宮氏陣営が細川氏陣営を攻撃し、票を奪ってくれるのですからこんなに楽なことはありません。



 二正面作戦を強いられて、細川氏は苦戦するでしょう。そして、舛添氏が当選してしまうでしょう。そうなれば、自民党の圧政はしばらく続くことになります。これは国民の利益にかなうこととはとても言えません。



 「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉があります。マルクスが『資本論』の中で使った言葉です。私はこの文章を書きながら、この言葉を思い出しました。



(終わり)







 


 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 古村治彦です。

 

 今回は、東京都知事選挙について、過去のデータを振り返りつつ、妄想していきたいと思います。過去のデータは、ウィキペディアに掲載されているものを使います。

 

※ウィキペディアの「東京都知事選挙」についてのページのアドレスは以下の通りです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E7%9F%A5%E4%BA%8B%E9%81%B8%E6%8C%99

 

(貼り付けはじめ:少し加工を施しました)

 

2012(平成24)年1216日執行

 

※当日有権者数:10,619,652人 最終投票率:62.60%(前回比:+4.80ポイント)

 

候補者名 年齢 所属党派 新旧別 得票数 得票率 推薦・支持

・猪瀬直樹 66 無所属 4,338,936 65.27% 公明、維新支持・自民支援

・宇都宮健児 66 無所属 968,960 14.58% 日本未来の党、共産、社民、緑の党、

新社会党、東京・生活者ネットワーク支持

・松沢成文 54 無所属 621,278 9.35% なし

 

・笹川堯 77 都民のくらしを守る会 179,180 2.70% なし

・中松義郎 84 無所属 129,406 1.95% なし

・吉田重信 76 無所属 81,885 1.23% なし

・トクマ 46 幸福実現党 47,829 0.72% なし

・マック赤坂 64 スマイル党 38,855 0.58% なし

・五十嵐政一 81 無所属 36,114 0.54% なし

 

2011(平成23)年410日執行

 

※当日有権者数:10,505,848人 最終投票率:57.80%(前回比:+3.45ポイント)

 

候補者名 年齢 所属党派 新旧別 得票数 得票率 推薦・支持

・石原慎太郎 78 無所属 2,615,120 43.40% 都議会自民、公明 推薦

・東国原英夫 53 無所属 1,690,669 28.06% なし

・渡邉美樹 51 無所属 1,013,132 16.81% なし

・小池晃 50 無所属 623,913 10.35% 共産 推薦

 

・ドクター・中松 82 無所属 48,672 0.81% なし

・谷山雄二朗 38 無所属 10,300 0.17% なし

・古川圭吾 41 無所属 6,389 0.11% なし

・杉田健 43 新しい日本 5,475 0.09% なし

・マック赤坂 62 スマイル党 4,598 0.08% なし

・雄上統 69 東京維新の会 3,793 0.06% なし

・姫治けんじ 59 平和党核兵器廃絶平和運動 3,278 0.05% なし

 

2007(平成19)年48日執行[編集]

東京都庁舎前・東京都知事選挙横断幕詳細は「2007年東京都知事選挙」を参照

 

※当日有権者数:10,238,704人 最終投票率:54.35%(前回比:+9.41ポイント)

 

候補者名 年齢 所属党派 新旧別 得票数 得票率 推薦・支持

・石原慎太郎 74 無所属 2,811,486 51.06% 自民、公明 実質支援

・浅野史郎 59 無所属 1,693,323 30.75% 民主、社民、国民 実質支援

・吉田万三 59 無所属 629,549 11.43% 共産 推薦

 

・黒川紀章 73 共生新党 159,126 2.89% なし

・ドクター・中松(中松義郎) 78 無所属 85,946 1.56% なし

・桜金造 50 無所属 69,526 1.26% なし

・内川久美子 49 無所属 21,626 0.39% なし

・外山恒一 36 無所属 15,059 0.27% なし

・高橋満 61 無所属 5,558 0.10% なし

・雄上統 65 無所属 4,020 0.07% なし

・山口節生 57 カント~ 3,589 0.07% なし

・高島龍峰(木村一成) 71 無所属 3,240 0.06% なし

・佐々木崇徳 64 無所属 2,845 0.05% なし

・鞠子公一郎 33 無所属 1,373 0.02% なし

 

(貼り付け終わり)

 

これらのデータで分かることは、まず一応国会に議席を持っている政党の支持、支援がある候補者たちがある程度の票数を獲得していることです。そうではない場合は、圧倒的な知名度があることが必要です。

 

そして、当選するためには最低でも260万票が必要なことです。投票率が上がれば、この数字も上がっていくでしょう。

 

前回の選挙の場合、有権者数は約1060万、投票率は約63%でした。これを掛け合わせると、投票総数は約637万票ということになります。

 

自公維新が推した猪瀬直樹氏が約434万票(約65.3%)、次点の宇都宮健児氏(ほぼ全てのリベラルな野党が推した)が約97万票(約14.6%)、無所属の松沢成文(元民主党所属国会議員、元神奈川県知事で一定の知名度あり)が約62万票(約9.4%)を獲得しました。

 

前回は長く続いた石原都政の継続性と顔が変わるということで投票率も上がりましたが、上がった分が全て猪瀬氏に流れたと思われる程に猪瀬氏への投票が多くなりました。

 

政治学の理論の一つである合理的選択論(Rational Choice Theory)で考えると、有権者は自己利益の最大化を考えます。もし、投票することよりも投票しないことが自分の利益になると考えれば、棄権します。また、投票する一票が死票になって欲しくないと考えます。わざわざ自分が当選するはずもないと考える候補に入れる人はいません。できるだけ、勝ち馬に乗りたいと考えるのが人情という訳です。

 

主義、主張、イデオロギーがはっきりある人たちにとっては、投票を通じての意思表示が自己利益になるのですが、ほとんどの人にはそんな強固な考えはありません。そうではありますが、バランスを取るという行動に出ることもあります。

 

 今回の場合、細川護煕元首相の出馬表明がない段階では、舛添要一元厚労相、宇都宮健児弁護士・元日弁連会長、田母神俊雄元航空幕僚長・元空将・軍事評論家の争いになると考えられていました。舛添氏を自公に民主が支援し、宇都宮氏を共産党、社民党が支援し、田母神氏を石原慎太郎元東京都知事を含む、維新のゾンビ議員たちが支援することになっていました。はっきり申し上げて、この構図では、舛添え氏が圧倒的に有利な状況でした。自公で基礎票が180万から200万。民主党まで入れれば200万は超えてくる数でした。宇都宮氏に各政党が最大限支援しても100万に届かずで、田母神氏はそこまでもないということになったでしょう。

 

 そうなると、勝ち馬に乗りたい普通の有権者たちは舛添氏に投票するか、「もう結果が分かっているのなら」ということで棄権してしまったことでしょう。

 

 ここに細川氏が小泉純一郎元首相と小沢一郎代議士・生活の党代表の支援を受けて出馬表明を行いました。ここでこの安定した構図に波乱が起きました。細川氏、小泉氏、小沢氏はそれぞれ毀誉褒貶が多い人物です。それぞれが批判し合う関係でありました。それが東京都知事選に向けて「脱原発」ということでタッグを組みました。

 

 これで何が起きるかということを思考実験してみます。脱原発(舛添氏も自分なりの脱原発を主張されているようです)系が固まって支援するはずだった宇都宮氏から細川氏へ支援を変える組織や人々が出てきました。これに対して、宇都宮氏を支援する組織や人々はこうした動きに反発して、より支援に力を入れ、宇都宮氏支持に力を入れることになります。舛添氏の方では、足元にくさびを打ち込まれた形になります。

 

自民党と公明党は、党本部を上げて舛添氏支援を行おうとしています。しかし、自民党内部には舛添氏に対するアレルギーがあります。自民党政権時は厚生労働大臣を務めながら、自民党が野党に転落すると除名処分となる離党を強行しました。また、自民党の支持者の中には、田母神氏を支援したいとする人たちがかなりいることも分かってきました。

 

自民党の支持層に細川と田母神でくさびを打ち込んでいく、そして、公明党の支持母体である創価学会の信者の皆さんの中には平和や原発問題についてかなり懸念を持っている方々もいらっしゃると聞いています。安倍氏に対するブレーキ役になるかもしれません。

 

さて、ここで、基礎票について考えてみたいと思います。前回の投票数が約637万でした。舛添氏の基礎票は180万から200万ということで圧倒的に有利な状況は変わりません。数十万票の票数を獲得しそうな候補が4名ですから、過半数を獲得する候補者は出にくいと考えられます。ですから200万台での争いとなるでしょう。

 

宇都宮氏は共産党の支援がありますから大体60万、細川氏は民主、社民などを合わせて恐らく60万くらいではないかと考えます。田母神氏は20万票くらいではないかと考えます。これにはあまり根拠はありませんが、最終的に50万票ほど獲得出来たら御の字ではないかと考えます。

 

宇都宮氏と細川氏はいかにしてそこから200万台に乗せていくかの勝負となります。無党派層への浸透と他陣営の切り崩しが大きなカギとなります。自民、公明から多くを切り離せるのは細川氏であると考えます。宇都宮氏は共産党の党員でもないし、公認候補でもないのですが、自民党の支持者層は宇都宮氏に投票しづらいと考えられます。既に細川氏支持を表明している自民党の地方議員も出ているという話です。

 

無党派層への浸透は宇都宮氏の方が一日の長があるように思われますが、小泉氏の動員力(ミーハーですが見てみたいと思う人は多いと思います)と小沢氏とその周辺の選挙活動のうまさはやはり大きなものがあります。

 

そう考えると、200万台に乗せていく力を持つのは細川氏であると考えます。それでも恐らく舛添氏を抜くことは難しいでしょう。舛添氏230万、細川氏200万、宇都宮氏150万、田母神氏50万ということになるでしょう。

 

舛添氏が敗れる場合というのは、投票率の上昇と自公の支持者の投票が低調である時ということになります。しかし、自公に加え、連合東京の支援もあるということで、楽々と200万票を越えてくるということで、舛添氏の有利さは変わらないでしょう。

 

しかし、細川氏の出馬までは、勝利の確立がほぼ100%であったものが、少し引き下げられているのではないかと思います。細川氏の出馬によって「2月9日の投票日までどうなるかは予断を許さない状況です」という表現が少しリアリティを持つようになりました。

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



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 古村治彦です。

 今回は都知事選挙について、私がここ数日考えたことを書きたいと思います。


 


 2014年2月9日に投票が行われる東京都知事選挙は主要な候補者たちの立候補表明が終わり、いよいよ本格化してきました。細川護煕元首相が立候補を表明して、舛添要一元厚労相がかなり有利だと思われていた都知事選挙の構図が少し変化するかなという印象があります。宇都宮健児元日弁連会長・弁護士や田母神俊雄元空将・軍事評論家も活発な動きを見せています。

 


 こうした中で、自民党と公明党が舛添要一氏の支援に本腰を入れるということになりました。最初は都連レベルでの支援を行い、党本部は直接関わらない(実質はそういう訳にはいかないと思いますが)ということになっていたようですが、党本部が動くということになりました。こういうことを書くと大変失礼ですが、宇都宮氏や田母神氏の出馬を受けても、「自公の組織票に舛添氏の個人の力があればそこまで本気にならなくても勝てるさ」という感じで動く気配を見せなかった自公が細川氏をターゲットにして動き始めてきました。

 


 細川氏に出馬に対しては、全陣営が早速批判と非難を向けています。そして、宇都宮氏や田母神氏の支持者の皆さんの中にいる、細川氏にかなりの拒否反応を示す人たちがインターネット上で広範なテーマを取り上げて批判を展開しています。私はこうした動きは、結局のところ、主敵であるはずの舛添氏の当選に利するだけの行為であると私は考えます。マルクスは『資本論』の中で、「地獄への道は善き意図をもって舗装されている」という言葉を使っています。この言葉の意味については複数の解釈があるようなのですが、「良いと思ってやった行いが思いもよらず、全く意図しなかった悪い結果をもたらす」という意味で使われます。細川氏に対しての批判には正論があり、その通りだということがありますが、細川氏に対する批判を行ったからと言って、圧倒的に有利な舛添氏に打撃を与えられるかというとそれは難しい、ほぼ不可能ではないかと私は思います。

 


 こういうことを書いて気分を害される方もおられると思いますが、近親憎悪や内ゲバという言葉があります。戦後の左翼陣営の歴史を見てみると、自分たちの主目的の達成よりも、自分たちと元々は仲間であったが分裂したグループに対する攻撃に終始する、そして弱体化していくということがありました。また、急進的な主張(それはそれで素晴らしい内容のものではありましたが)をするあまりにかえって広範な人々の支持を得られなかったということがありました。今回もまた同じような失敗をして、主敵を利することになるのだろうと、私はここ最近悲観的になっています。

 


 ここで良く考えねばならないのは、自民党員、自民党から選挙に出ること(東京地区の地方自治体や国会議員の選挙)を考えていながら、元空将・軍事評論家の田母神俊雄氏を支援しようとしている皆さんです。自民党は最初、都連レベルで舛添要一氏を支援することにしていました。しかし、公明党が舛添氏の支援を決めたこともあり、また細川氏の出馬で危機感を覚えたのか、安倍晋三首相・自民党総裁が公明党の山口那津男代表と会見し、舛添要一氏の支援で一致しました。そして自民党は党本部を上げての支援ということになりました。

 


 自民党が田母神氏を支援する可能性はなくなりました。複数の当選者が出るなら支援ができるかもしれませんが、都知事は一人しかなれません。そうなると、自民党員、もしくは自民党から選挙に出たいと考えている人が田母神氏を支援することは自民党総裁、もしくは自民党本部の意向に反することになります。自民党の歴史を見てみると、総裁や党本部に反抗しても許されてきたということもありますから大丈夫だとは思いますが、自民党東京都連や公明党のことを考えると、そういう人たちは今後選挙の際にそこまでの支援が受けられるのか、そして東京から選挙に出ようとしてどうだろうか、ということになります。

 


 やはり今の自民党には公明党の組織票が必要なのでしょう。そして、田母神氏に共鳴してしまうような人たちは少し邪魔な存在なのかもしれません。しかし、そうした人たちをJ-NSCなどを通じて自民党支持者として陶冶してきたのは、自民党自身なのです。自民党にしてみれば、おとなしく、強い主張をすることなく、淡々といつもいつも自民党に無条件に投票してくれる人が重要であって、自分たちを強烈に支持してくれるが、時に大変批判的になり、党総裁や党本部の意向に反抗するような人はいらないということになります。

 


 私は偉大な政治学者であった故チャルマーズ・ジョンソン(Chalmers Johnson)が提唱した「ブローバック(Blowback)」という言葉を思い出します。これは2001年9月11日の同時多発テロの1年前に出された本の題名でもありますが、アメリカが対ソ連用に育てたアルカイーダが、結局アメリカに攻撃を加えることになったということをいみじくも言い当てたものでした。

 


 この都知事選が一つのポイントとなって、自民党が少し変化していくのではないかと思います。都知事選自体は、自民党と公明党の組織力やネットワーク力がフル回転ということになり、舛添要一氏が有利になったと思われます。反自公で統一戦線(United Front)、統一候補ができると面白い勝負になると私は考えていましたが、それも潰えました。安倍晋三首相に対する現実的な力を持つストッパーは国内勢力には存在しなくなるということになります。それでも、野党側からすれば、自民党と同じくここが一つのポイントとなって、野党再編や野党再建の動きが活発化することになると私は考えます。

 


 ここ数日、私が考えたことを取り留めもなく書きました。乱文で申し訳ありません。最後まで読んでいただいてありがとうございます。

※2014年1月17日午後6時5分。加筆します。細川氏擁立には自民党内部にくさびを打ち込むということではないかという考えが浮かびました。それは、ある自民党員の方が細川氏に投票するという発言をSNSで行っていたのを見たからです。私は自民党内部が一枚岩であるという前提で考えてきました。しかし、もともと自民党は寄り合い所帯のように、様々な考えの人たちがいた(いる)政党です。穏健派の人たちは目立たないが、確かにいます。

 谷垣禎一法相も穏健派というか、保守本流の宏池会の出身です。谷垣氏は自分が総裁の時に党を出た舛添氏に対して「個人的な思いはある」という発言をしています。これは「だけど党の決定に従う」と続くものですが、それなら「党の決定に従うこと」だけを述べればよいのです。ところがそうではないのはよほどの思いがあるし、もっと大きく言えば、安倍晋三首相に対しても含むところがあるのではないかと推測されます。

 こうして考えると、自公が本部として引き締めにかかっているのも、意外に党内にまとまりが欠けるところが見え始めているのではないかと私は考えています。そして、それが細川氏陣営が仕掛けた揺さぶり、打ち込んだくさびのせいなのだろうと考えます。そしてこのようなことを考えたのは、小沢一郎氏なのだろうとも考えています。


(新聞記事転載貼り付けはじめ)

●「主張に現実性ない…自民、党挙げ「対細川氏」」



2014年1月17日 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20140117-OYT1T00171.htm?from=top



 自民党が東京都知事選(23日告示、2月9日投開票)を巡り、党本部が前面に出る形で舛添要一元厚生労働相を支援する姿勢を鮮明にしている。



 小泉元首相が支援する細川元首相の主張が政府の方針と異なるため、国政が混乱しかねないとの判断から主戦論が一気に強まった。



 自民党の河村建夫選挙対策委員長は16日、党本部で開かれた東京都連幹部らの会合で「党本部を挙げた態勢の中で、勝利を目指して頑張っていこう」と呼びかけた。会合では、党として舛添氏を全面支援することを決めた。同党は16日、石破幹事長名で党所属の全国会議員に舛添氏への支援を呼びかけるメールを送った。今後は閣僚クラスを応援弁士として投入するほか、都議や区議、支持団体への働きかけを強める方針だ。



 自民党は当初、都連を主体とした舛添氏の支援態勢を想定していた。無党派層がかぎを握る都知事選は、党本部が出過ぎない方がいいとの判断もあった。しかし、「原発の即時ゼロ」を主張する小泉氏が、「脱原発」を争点に細川氏を支援する考えを示しているほか、細川氏自身がかつて2020年の東京五輪・パラリンピックの「返上論」を唱えていたことも判明。「細川氏の主張は現実性がない。都知事になれば、日本全体に悪影響が広がる」(幹部)との懸念が広がった。



20141171049  読売新聞)



●「舛添氏支援で自公党首が一致」



2014年1月16日 共同通信

http://news.nifty.com/cs/headline/detail/kyodo-2014011601001946/1.htm



 安倍晋三首相と公明党の山口那津男代表は16日、官邸で会談し、東京都知事選(23日告示、2月9日投開票)に立候補を表明した舛添要一元厚生労働相(65)を支援する方針で一致した。同じく出馬予定の細川護熙元首相(76)の陣営では、小泉純一郎元首相に続き、民主党の野田佳彦前首相や、脱原発を主張する菅直人元首相がブログで細川氏を支援する考えを相次いで表明した。



 脱原発や2020年東京五輪への準備、防災対策強化を争点とする首都のリーダー選びは告示まで1週間となり、各陣営は選挙準備を加速した。



 安倍首相は会談で山口氏に「協力して取り組もう」と呼び掛け、賛同を得た。



(新聞記事転載貼り付け終わり)



(終わり)






 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

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