古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:英語

 古村治彦です。

 

 「1つの言葉しか話せない人のことを何と言いますか?」「アメリカ人です」という冗談が外国にあります。日本人も同様でしょうが、英語の場合は、世界中に話者が多くいるので、日本以外に話者はあまりいない日本語しか話せない日本人よりはまだ世界中を旅行するときに便利でしょう。日本だけで暮らしていく場合には日本語だけで十分ではありますが。

 

 アメリカ国内で、特に白人が外国を話している人たちに因縁をつけ、トラブルになる出来事が増えているようです。たまにインターネット上にトラブルの様子を撮影した映像が拡散されています。「ドナルド・トランプ大統領時代になって、一気に排外主義が拡大した」という解釈もありますが、外国語嫌い、外国人嫌いはその前から連綿としてアメリカ文化の中に流れているものだと思います。サミュエル・ハンチントンの『分断されるアメリカ』(鈴木主税訳、集英社、2004年)は、アメリカの多文化主義に警告を発しています。

 

 アメリカでもヒスパニック系の数と人口に占める割合が大きくなっていく中で、スペイン語が公の場に出てくることは多くなっています。テキサス州出身の政治家たちはスペイン語を話すことが出来る場合もあります。ジョージ・W・ブッシュ元大統領も弟のジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は2人ともスペイン語を話すことが出来ます。今回の大統領選挙民主党予備選挙の有力候補ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)も国境の町エルパソ出身ということもあってスペイン語を話せます。そして、このブログで何度もご紹介しているピート・ブティジェッジは7か国語を話せる人物です。




 しかし、「1つの言葉しか話せない」ということがアメリカ人のアイデンティティになっているようで、外国語を聞くとイラっとくるようです。大都市で旅行者らしい人たちがそれらしい格好をして(ポーチをつけたり、外国語のガイドブックを持っていたり)、外国語を話すのは旅行者だからということで目くじらを立てる人はアメリカでもいないでしょう。

 

 アメリカ白人たちの多くが、旅行者の外国語に文句を言わないのに、アメリカで暮らしていると思われる人々が外国語を使うことに対して因縁をつけるというのは、元々が世界中からやってきた移民の国であるアメリカの成り立ちと矛盾するのではないかと思います。しかし、英語を話すことは、こうした白人たちにとっては、アメリカの歴史である専制と戦い、自由と平等(あくまで理念的なものですが)を勝ち取ったことを象徴しており、「お前たちはこの歴史を受け入れないのか、アメリカの価値観を受け入れる気がないのか」という気持ちになり、爆発してしまうのだろうと思います。

 

 また、ヒスパニック系の場合はカトリックということもあって貧乏人の子沢山というイメージもあり、また不法移民が多いという状況で、英語を話さない人間たちは、税金を納めないどころか、自分たちが納めた税金が原資の福祉を食いものにしている、フードスタンプや学校教育などをずるく利用している、という感情もあるのだと思います。


 非白人、特にヒスパニックで移民第一世代の人々は社会的な地位の高い、報酬の高い仕事に就ける訳ではありません。厳しい肉体労働や日雇い労働が主となります。そうした中で仲間同士で助け合うということになれば、英語を話す必要はないということになります。アメリカは社会体制として、理念としては自由と平等を謳いながら、実際には非白人に対する差別は構造として残り、住む場所も人種別で固定化されるなどしてきました。そして、こういう非白人マイノリティは安い労働力として利用されてきました。安い労働力を再生産するために、人種グループを固定化し、際立たせてきたということもあるでしょう。

 理念としての自由と平等などこうした人々からすれば何の感慨もないということになります。だからと言って、アメリカに反逆をするなどということもないのですから、目くじらを立てるのも狭量と言いたくなりますが、アメリカ白人のアメリカの国際的な地位と経済力の低下、国内的には多数派からの脱落などに対する恐怖心があるのだろうと思います。

 アメリカは現在割合は小さくなっていつまで続くかは分からないとは言え、世界一の経済大国であり、唯一の覇権国であることは間違いないところです。そうなれば、世界中から人々が押し寄せる、特に発展途上国や貧困国から移民が押し寄せるのは当然の話で、そうした人々全てにアメリカの歴史と英語を完全にマスターせよ、ということは不可能です。アメリカは変質を余儀なくされるということになります。

 

 アメリカで非白人が人口に占める割合がやがて5割を超え、将来的に6割に近づくということにもなっていくでしょう。英語が共通語にして公用語ということは変わらないでしょうが、やがて上記のような冗談は実態にそぐわない、そんな時代になっていくのではないかと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

共和党支持の白人の約半数、民主党支持の白人の18%が公の場で外国語を聞くと気になると答えた(About half of white Republicans, 18 percent of white Democrats would be bothered to hear foreign language in public

 

アリス・フォーリー筆

2019年5月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/442749-about-half-of-white-republicans-18-percent-of-white-democrats?fbclid=IwAR3Z6KPCAMkJTVT2dO1hQ16H0uAuAmDq6rqu1qYA91nJZfq-GBsk0fpnOGQ&fbclid=IwAR1mam9-C3gkXQns36hbCIO4ZLcnoOPg0cJbmi8bsmTrj070Pk3nq15eyBI

 

ピュー・リサーチセンターが水曜日に発表した最新の世論調査の結果によると、アメリカ国内の共和党支持の白人の約半数が公の場で外国語を話す人がいると気に障ると答えた、ということだ。

 

世論調査の結果によると、調査に答えた共和党支持、もしくは共和党寄りの白人の47%が公の場で英語ではない言葉を話す人物がいると「いくらか」もしくは「大いに」気に障ると答えた、ということだ。一方、民主党支持、もしくは民主党寄りの白人の18%が気に障ると答えた。

 

民主党支持の白人の58%は公の場所で外国語を話す人たちがいても気にならないと答えた。共和党支持の26%は同様の答えをした。


 
こうした分類を別にすると、白人全体の31%が公の場所で外国語を話す人がいると気に障ると答えた。アフリカ系アメリカ人の24%、アジア系の24%、ヒスパニック系の14%も気に障ると答えた。


ヒスパニック系の68%は、公の場所で英語ではない言葉を話す人がいても気にならないと答えた。アジア系の約半分も同様の答えであった。アフリカ系アメリカ人の48%、白人の41%も気にならないと答えた。

 

ヒスパニック系については、アメリカ生まれではない人の場合は76%が気にならないと答え、アメリカ生まれの61%が気にならないと答えた。

 

最近、白人が公の場で英語以外の言葉を話す人たちに高圧的な態度を取りトラブルとなっている様子が撮影され、インターネット上で拡散される出来事が続いている中で、今回の調査は実施された。

 

今年初め、カリフォルニア州のガソリンスタンドで、従業員が、客に対してスペイン語を話したことで因縁をつけ、アメリカ市民であることを証明するように求めた様子が撮影され、その映像がインターネット上で拡散し、この従業員は解雇された。

 

昨年、ダンキン・ドーナッツも謝罪に追い込まれた。従業員がソマリア語を話す家族と口論になったが、その理由は家族が母国語を話していたからというものであった。

 

2018年5月、ニューヨーク市の弁護士が店員と客がスペイン語で会話しているところに詰め寄って、移民関税捜査局(ICE)に通報してやると脅す様子が撮影された映像がインターネット上で拡散し、この弁護士は激しい批判を浴びた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)





このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 『ニューヨーク・タイムズ』紙のウェッブサイト版の女性に関するページ「Women in the World(世界における女性たち)」に面白い記事が掲載されました。

 

 それは、「日本のファーストレイディーは、トランプとの会話を避けるために、英語がしゃべれないふりをしたのか?」というタイトルの記事です。記事の内容を以下にまとめてご紹介します。

 

(貼りつけはじめ)

 

Did Japan’s first lady pretend she doesn’t speak English to avoid talking to Trump?

 

2017/07/20

WITW Staff

http://nytlive.nytimes.com/womenintheworld/2017/07/20/did-japans-first-lady-pretend-she-doesnt-speak-english-to-avoid-talking-to-trump/

 

(貼りつけ終わり)

 

 ニューヨーク・タイムズ紙の政治記者マギー・ハーバーマンがドナルド・トランプ大統領にインタヴューを行い、その中で、先日のG20サミットの様子についてトランプが話をしました。G20サミットでは20各国の指導者たちと配偶者たちが集まり(40名)、その他にEUの最高幹部たちやIMFのラガルデ専務理事もいたので、50名ほどになった。世界各国からのメディアも来ていて、みんなでたくさんの写真を撮った。

 

 オペラを皆で見に行った、その後に夕食会となった。トランプ大統領の隣は、安倍昭恵夫人が座った。トランプ大統領は、「安倍首相も昭恵夫人も素晴らしい人たちだが、昭恵夫人は英語がしゃべれない」とインタヴューで述べています。ハーバーマン記者が「全く、ゼロ?」と驚くと、トランプ大統領は「ハローさえ言えないくらい」と答え、「その席にいるのは大変だったでしょう」とハーバーマン記者が質問し、「大変だった、だって、その席にどれくらい座っていたと思う?」とトランプ大統領は答え、「何時間もでしょう」とハーバーマン記者が言い、「1時間45分だった」とトランプ大統領が答えました。


donaldtrumpakieabeg20dinner001

 

 このインタヴューが出た後、昭恵夫人に対して、奇妙な評価が出てきました。昭恵夫人は先日の安倍首相の訪米に同行し、メラニア夫人と日本庭園を訪れたり、フロリダ州のマーアラゴ・リゾートで夫妻同士で夕食を楽しんだりしました。この時の様子は写真や映像に残されています。この時の様子から、「昭恵夫人が英語ができないというのはおかしい、この時にはちゃんと英語でコミュニケーションを取っている」ということになりました。

 

 そこで、アメリカ国内のフェミニストたちは、「昭恵夫人はトランプ大統領と話をしたくないために、英語ができないふりをした」という解釈をし、彼女は素晴らしいということになりました。

 

 私も昭恵夫人が聖心学園で教育を受けたという経歴を持っている以上、同世代の人々よりも英語や外国人に接する機会が多かったと考えますので、昭恵夫人が、「ハローも言えないほど」に英語ができないということは考えにくいと思います。また、立教大学大学院でミャンマーの教育に関する研究で修士号を取得し、ミャンマーも訪問していることを考えると(ミャンマーはイギリスの植民地であったことを考えると)、英語が全くできないというのはないと思います。

 安倍昭恵夫人が英語でスピーチを行っている映像も見ましたが、英語が全くできない人だとはとても思えませんでした。発音などは安倍首相よりも上手でした。あれだけきれいな発音なら、難しい議論はできないにしても、あいさつや楽しい会話はできると思います。


 

 しかし、G20の夕食会で、隣り合ったトランプ大統領と全く会話をしなかった、英語が出来ないふりをしたというのはおかしいと思います。また、彼女の人懐こい性格から考えて、たとえ言葉ができなくても、何とかコミュニケーションを取ろう、その場にいる人たちを楽しませようとするだろうことは容易に推測できます。

 

 ですから、昭恵夫人がトランプ大統領を約2時間もほったらかすということは考えにくいのです。しかし、実際にトランプ大統領はそう感じた、そして、彼女は英語ができないのだと考えたということです。

 

 なぜ昭恵夫人がトランプ大統領と話さなかったのか、ということが疑問として残ります。英語ができないからということはおそらく理由ではありません。それでは、フェミニストが言うように、女性蔑視をするトランプ大統領が嫌で話さなかったということがあるでしょうか。彼女は自分に批判的、敵対的な人たちとも話をしてきました。ですから、トランプ大統領が嫌いだから話さないということはないように思われます。

 

 昭恵夫人は2月以降、森友学園問題や秘書の業務に関して、大きな批判を受けてきました。そのために昭恵夫人の行動にメディアの関心も集まるようになりました。結果として、彼女の「天然」な行動も報道されるようになりました。

 

 また、安倍首相の訪米では、安倍首相自身はお酒を飲まないが、昭恵夫人はお酒をたしなむので、トランプ大統領夫妻との夕食の席上、一人でワインを飲み過ぎて、周囲をあきれさせたということも報道されました。緊張状態で、自分が頑張らねばと思うと、アルコールが回ってしまって、いつもよりも酔ってしまうのが速くなるということもあったとは思いますが、外交上の礼を失する行動であったということも言われました。また、昭恵夫人は誰に対しても物怖じしませんから、トランプ大統領に何かとんでもないことを言う可能性を周囲は心配したでしょう。

 

 従って、今回は昭恵夫人には特に厳しく、いつものように振る舞うのではなく、おとなしく、目立たないようにするよう、という注意がなされていたのでしょう。そして、その注意を忠実に守ろうとして、トランプ大統領をほおっておくということになったのだと思います。こう考えると、昭恵夫人は非常に不器用なように感じられます。

 

 しかし、もしこれが計算でなされたのだとすると大変な策士であると言わねばなりません。注意をした人々に対してやり返してやろう、鼻を明かしてやろうということで、わざとトランプ大統領を無視するような行動を取ったということになれば、大変な計算です。「私を押さえつけようとするなら、それに従いますよ」ということで、徹底的におとなしく、やり過ぎなほどにおとなしくして、かえって問題になるということになれば、今度は、おとなしくするように注意した人たちに「どうしてそういうことを言ったのだ」という批判が向かいます。

 

 「おとなしくしてほしい」という注意を逆手にとっての報復、ということになると、これはこれで大変なことです。

 

 真相が何かは分かりません。


 しかし、トランプ攻撃のために何でも使われるものだなぁと感心させられます。

 

(終わり)




アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ