古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:菅義偉

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。アメリカ政治と世界政治について詳しく分析しました。是非手に取ってお読みください。このブログを継続するため、本をご購読いただければ大変助かります。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 昨年からの自民党各派閥のパーティー券販売キックバック問題(裏金作り)は、複数の政治家と安倍派、二階派、岸田派の会計責任者の立件でひと段落となった。安倍派、二階派、岸田派、森山派、石破グループ(政策集団・勉強会として存続していた)は派閥解散、麻生派と茂木派は存続ということになった。菅義偉前首相を中心とする、無派閥という議員グループが大きな勢力となっている。現状は、旧派閥と新派閥の対立構造という形で捉えることができる。

 また、茂木派からは、小渕優子衆議院議員と青木一男参議院議員が退会を表明し、その後も参議院議員数名が退会した。田中角栄から竹下登、小渕恵三、橋本龍太郎と続く派閥において、「茂木敏充ではなく、小渕優子を首相にする」という意図を持った動きである。麻生派は今のところ大きな動きはないが、80歳を超えて失言も続く麻生太郎に引退してもらい、河野太郎を領袖とするという動きと、それに反対する動きが派内にはあるだろう。河野は菅義偉とも同じ神奈川県を地盤としている点で関係が良好であり、同じ神奈川県を地盤としている小泉進次郎も、以前の総裁選挙で河野太郎を支持したこともあり、河野太郎は、麻生派を継承もしくは分裂して、河野派となり、菅・小泉の神奈川グループの支援を受けるということも考えられる。

 安倍派に関しては、幹部の責任論がくすぶり続け、座長の塩谷立議員や五人衆と言われる幹部たちの離党や議員辞職についても語られている。自民党内部にそのような声がある。これは極めて重要な動きである。この議員たちは、自分たちが離党をしたり、議員を辞めたりする必要があるのかと憤慨しているだろうし、そもそも自分たちは派閥の慣例に従っただけのことで、それを作ったのは森喜朗元首相だと声に出して反論したいだろう。こうした安倍派の凋落の中で、福田達夫議員は新しい集団作りを目指すと発言した。福田派の結成ということになる。

 今回の派閥パーティー券販売をめぐる特捜検察の捜査にはアメリカの意図があっただろうということを推察し、そのことをこのブログでも書いた。そしうて、これまでの動きも合わせて考えると、私は、今回の派閥潰しの最終目標は森喜朗元首相の失脚であっただろうと考える。そして、合わせて、現在の自民党執行部の古い幹部たちの力を失わせ、新しい、若手たちの東洋を進めるということであっただろうと考えている。

 森喜朗という人物については、全くとらえどころがない、理解しがたい、日本の典型的な政治家として、アメリカは捉えていただろう。ロシアとの関係が深く(父親の代から)、清濁併せ呑むということで、アメリカ側としては御しにくいタイプの典型的な日本の政治家であった。今回、二階派も解散ということになり、二階俊博元幹事長も力を失い、引退を迫られることになるだろう。二階議員は中国との太いパイプを持つことで知られているが、アメリカにしてみれば、邪魔な存在ということで、森喜朗と二階俊博はまとめて失脚させられることになった。

 自民党の新しい実力者として、菅義偉がその地位に就くことになった。菅義偉議員は、安倍晋三政権の官房長官時代にアメリカを単独で訪問し、アメリカ側が首実検を済ませている。日本維新の会とも関係が深く、カジノ推進ということでアメリカの利益を推進する政治家である。アメリカとしては、森や二階に代わって、菅を実力者として据えるということにしたようだ。そして、派閥はご破算になって、新たに、河野派、福田派、小渕派、無派閥の小泉進次郎議員という、新しいリーダーたちを育成し、より直接的に、アメリカの意向が伝わり、実行されるような体制を構築しようとしていることになる。

 今回の動きは、アメリカ国内のジャパンハンドラーズの勢力変動の影響もあったと言えるだろう。安倍晋三を支持してきた、マイケル・グリーンがシドニー大学に移籍したことは、彼が左遷され、都落ちさせられたということである。そして、グリーンの後ろ盾を失った安倍晋三は首相の座を追われ、最終的には暗殺された。誰に暗殺されたか、このことは私の先生である副島隆彦先生の『愛子天皇待望論』(弓立社)に詳しいので、そちらを読んでもらいたい。

安倍晋三元首相と彼を取り巻く勢力は、統一教会に影響を受け、日本の歴史守勢主義を推し進め、核武装まで進めようとしていた。アメリカとしては、アメリカ軍にとって役立つ日本の防衛力強化は歓迎であるが、安倍晋三元首相はそれ以上のことをしようとした。彼はアメリカにべったりで、アメリカ従属路線の人物だと日本人である私たちは評価するが、アメリカ側からすれば、「靖国神社に参拝し、太平洋戦争での日本は正しかったと主張するカルト・オブ・ヤスクニであり、核武装まで主張する危なっかしい人物」となる。アメリカにとっては使い捨ての駒であり、どんなに栄耀栄華を誇っていても最後はポイッと捨てられる。

こうした動きを冷静にかつ冷酷に見てきたのが岸田文雄という人物の怖さである。岸田首相に関しては世間の評価は低いが、その粘り強さや下手(したて)に出ながら、いつの間にか相手を逆に締めているような動きには、政治家としての強さを感じる。岸田首相の対米レッドライン(最終防衛線)は、「金で済むことならば金を出す(防衛費の倍増のために増税はする)が、中国とぶつけられることはなんとしても回避する」ということだろう。国民生活の苦しさは日本の政治家であれば分かっているはずだが、「戦争をさせられるよりはずっと良い、何とか耐えてもらいたい」ということだと思う。書き散らしになって申し訳ないが、私の今に日本政治に関する考えを書いた。

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 以下の論稿は、10月31日の総選挙の前に、アメリカの外交専門誌『フォーリン・ポリシー』誌に掲載された日本政治分析の記事を紹介する。この記事では、安倍政権の功績を称え、岸田政権の行き先を不安視する内容だったが、結局、岸田文雄首相は政権基盤を固め、邪魔者だった甘利明には選挙で負けた責任を取らせて幹事長を辞任させることに成功した。また、これまでの人事では巧妙に麻生太郎と安倍晋三を外す動きを少しずつ進めている。

 下に紹介する記事は、日本政治の実態を捉えているとは言い難い。しかし、「アメリカ側から見た日本政治の姿」という側面からは良く書けているということになる。安倍政権下での対米従属の深化は、アメリカ側からすれば、日本の手駒としての能力が上がったということである。将棋で言えば、「歩」程度だったが、「飛車」「角行」とまではいかないが、「香車」程度にはなったということである。これで「日本の使い勝手」が良くなったということになる。

 岸田文雄に首相が交代したことでアメリカは警戒感を持っていることだろうが、そこに、ともにハーヴァード大学ケネディ行政大学院で修士号を取得した、茂木敏光を自民党幹事長に配し、林芳正を外相に起用したことで、「アメリカには逆らいません」という姿勢を示すことで、アメリカの警戒感を和らげようとしている。また、ジョージタウン大学卒業の河野太郎も首相候補であることから、これからしばらくは、アメリカで教育を受けた人物たちが首相を務めることになるだろうということをアメリカにシグナルとして送っている。

 この論稿の筆者はアメリカで日本政治を研究する立派な学者であろうが、やはり日本にいないことで、日本分析は隔靴掻痒の感を否めない。安倍首相は偉かった、岸田首相は心配という単純な話では済まないのである。

(貼り付けはじめ)

日本の総選挙は岸田の運命を決めることになるだろう(Japan’s Lower House Elections Will Decide Kishida’s Fate

-「回転ドア」首相は国内と国外に影響を与えることだろう

ナオコ・アオキ筆

『フォーリン・ポリシー』誌

2021年10月29日

https://foreignpolicy.com/2021/10/29/japan-kishida-ldp-prime-minister-revolving-door-lower-house-elections/

日本の下院に当たる衆議院議員選挙が10月31日に実施される。これは新たに首相に就任した岸田文雄首相にとっては最初の大きなテストとなるだろう。彼は前任者である菅義偉が就任後1年で辞職したことを受けて今月初めに首相に就任したばかりだ。今回の首相交代によって首相交代のサイクルがとても早いように見えるかもしれないが、2012年12月から2020年9月までの約8年間、日本を率いた安倍晋三元首相の時代までは、ほぼ毎年、新しい首相が誕生するのが当たり前だった。

菅首相の辞任が、日本の首相の「回転ドア」の連鎖の始まりとなるのか、はたまた、岸田首相も同じ運命をたどるのか、判断するのは時期尚早だ。過去には、政治的な戦いやスキャンダルで辞任する首相もいたし、個人の健康上の理由で辞任する首相もいた。しかし、選挙の敗北の結果として辞任ということが多かった。日曜日の選挙は、岸田首相が権力の座に座り続けられるかどうかを測るリトマス試験紙ということになるだろう。

岸田首相がどれだけ続けられるかが問題ではないという人たちもいるだろう。血胸のところ、日本は法の支配(rule of law)を尊重し、自由で公正な選挙(free and fair elections)が実施され、人々の諸権利(civil rights)が守られている安定した民主政治体制(stable democracy)である。近年、欧米で大きな広がりを見せているポピュリズム(populism)の陥穽も、この国では回避されている。また、政策の策定や効果的な実施に大きな役割を果たす強力な官僚組織があることでも知られている。

しかし、日本の首相の在任期間が日本にとっても世界にとっても重要である複数の理由がある。

1994年以降、日本の政治改革によって、首相の権力は拡大している。同年の選挙改革によって、議会の選挙システムは中選挙区制(multi-seat constituencies)から小選挙区制(single-seat districts)と比例代表制(proportional representation)に代わった。これによって、一つの選挙区の中で、一つの政党が複数の候補者を出して勝利を収めることができなくなった。

これにより、過去70年間、日本の政治を支配してきた自民党内の力学が変化し、かつては選挙区で候補者を出し合っていた自民党の派閥(factions)の間の競争が緩和された。その結果、自民党内の派閥の領袖たちの影響力は低下し、首相が派閥の領袖たちの意向に左右されなくなり、少なくとも理論的には、総理総裁がより個人的な力を発揮できるようになった。

また、1990年代後半から始まった一連の行政改革により、官僚に頼らずに政策を始め、展開できる首相の法的権限が強化された。2001年には政策設計機能と内閣府の創設によって官房長官(Cabinet Secretariat)の力が強化された。内閣府は政策形成の点で首相を直接支援する機能を持っている。安倍政権は2013年に国家安全保障会議(National Security Council)を創設し、外交政策に関する首相の力を強化した。これは、政治の最高指導者の手に安全保障政策形成の力を集中させるものだ。

つまり、現在の日本の首相は、20年前の首相に比べて、国の方向性を決め、政策の優先順位を決定し、改革を実行できるより強い立場にある。

権限は強化されているが、短期でどんどん交代していく首相では、中期的もしくは長期的なヴィジョンを実現するのに十分な時間を持つことはできない。短い在任期間では、首相が国内政治システムの重要な利害関係者から支持を得て、法案を起草して可決し、優先順位の高い政策を実行することはできない。この現象は、遠くない過去に多くの例が存在する。

最近の日本の首相は就任後に自分自身の経済成長戦略をスタートさせてきた。2007年9月から2008年9月まで首相を務めた福田康夫はテクノロジー部門の技術革新を通じて成長を促進する計画を立てた。福田の後任麻生太郎の在任期間は1年弱だった。麻生派自身の「成長イニシアティヴ」を策定した。アジア全体の経済規模を2倍にするために、輸出主導型モデル(export-oriented model)から需要主導型モデル(demand-driven one)に転換することを目指した。しかし、世界的な金融危機に見舞われ、福田も麻生もともに大きな成果は得られなかった。

2009年から2012年にかけて、自民党は野党だった。この時期に出た民主党の首相3人もまた自身の経済プログラムを推進した。たとえば、2011年9月から2012年12月まで482日間在任した野田佳彦は、8カ年経済成長戦略をスタートさせた。この戦略の目的は、「日本再生(rebirth of Japan)」を達成することだった。この計画は、2011年3月に発生した福島第一原発事故の後に導入され、その目的は、医療や再生可能エネルギーのような分野で新しい産業と雇用を生み出すことであった。多くの目標の一つは、2020年までに、ガソリンと電気のハイブリッド、電気、天然ガスなど高燃費効率車が日本の全自動車の50%を占めるようにすることだった。しかし、その計画は頓挫してしまった。2020年の日本の新車販売台数のうち、これらの車の販売台数は36.2%にとどまった。この36.2%の内訳は、環境に優しい完全な電気自動車ではなく、ガソリンと電気のハイブリッド車が大半を占めている。

同じパターンが外交政策でも繰り返されている。福田はこれから30年間のヴィジョンとして、太平洋に面した、環太平洋(Pacific Rim)の諸国のネットワーク化を進め、「太平洋を内海(inland sea)にする」ことを提唱した。このヴィジョンにおいて日本にとって重要政策とされたのは、インド洋において対テロ作戦に従事しているアメリカと外国の艦船に対する燃料補給業務を海上自衛隊に行わせることで、アメリカ主導のテロリズムの戦いに貢献することだった。皮肉なことに、皮肉なことに、福田は自民党が過半数を失った参議院で海上自衛隊の燃料補給業務の再可決法案を可決させることができずに辞任した。一方、麻生は「自由と繁栄の弧(arc of freedom and prosperity)」を議論した。これは、日本が同様の価値観を持つ国々と協力するというものだった。その基本概念は、現在の日本の外交政策にも生きているが、麻生の構想の名前で覚えている人はほぼいない。

安倍首相は約8年首相に在任し、強化された立場を完全に活用することで、これらの常識を覆した。最も注目すべきは、大規模な金融緩和、財政出動、構造改革を組み合わせた「アベノミクス」と呼ばれる経済成長プログラムである。アベノミクスは、日本経済の将来の軌道を根本的に変えるには至らなかったものの、デフレ脱却、失業率の低下、企業収益の向上を実現した。また、マーケティング的にも成功した。日本の首相の名前が、日本の専門家たちの少数グループだけに知られているだけでなく、世界中に知られている政策プログラムに付いているのは珍しいことだ。

経済に加えて、安倍派安全保障分野で成果を残した。日本の自衛隊の使命を拡大することで成果を残した。これらのステップをめぐっては論争が起きた。日本国憲法第9条は戦争を放棄している。これまでの数十年間、自衛隊の役割は増大しているが、安倍の改革は、特定の条件下での集団的自衛権の行使を日本に与えることで、重要な成果を上げた。

安倍首相が長期にわたり首相に在任したことで、日本の外交政策にも貢献した。安倍首相は、外交的そして概念的な構想を推進するために必要な諸外国の指導者との関係を構築する時間を得ることができた。この努力の成果の一つは、自由で開かれたインド太平洋というヴィジョンである。この考えは安倍首相が元々提唱したものだったが、トランプ政権によって採用され、2017年には完全なアメリカの戦略となった。

安倍政権下、2017年にアメリカが協議から脱退した後も、日本は地域の自由貿易協定である環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership)を主導した。アメリカが関与しない多極的な枠組みで日本が指導力を示したレアケースだった。

もちろん、安倍元首相の長期にわたった在任期間は、彼の政策目標が全て達成されたということを意味しない。とりわけ、また、1970年代から1980年代にかけて北朝鮮に拉致された日本人に関する問題や、北朝鮮の核・ミサイルの脅威の抑制について、北朝鮮との間で進展させることはできなかった。安倍首相はまた千島列島日本では北方領土と知られる千島列島をめぐるロシアとの領土問題についても何の進展もなかった。

また、首相の政治力を決める要因は、在任期間だけではない。国民からの支持もまた重要だ。安倍元首相は在任期間のほとんどで国民からの支持を享受した。安倍首相の外交・安全保障政策に対しては、中国をはじめとする地域の新たな課題に対処する必要性についての国内のコンセンサスが高まっていたことも追い風となった。

ここで2021年10月31日の選挙の話が出てくる。自民党の選挙結果によって、自民党が岸田を総裁に選んだことと岸田が挙げた公約に対する国民の支持の程度を測定することになるだろう。

現時点では、自民党が議席を増やすかどうかではなく、どれくらい議席を減らすかが問題となっている。最近の世論調査では、自民党の支持率が低下している。岸田首相は自民党の連立相手である公明党との間で衆議院の過半数を維持するという控えめな目標を掲げている。2021年10月14日に国会を解散する(dissolution)前、日本の下院にあたる衆議院465議席のうち、自民党は276議席を占め、公明党は29議席を占めている。岸田の掲げた目標を達成するためには、自民党は72議席を減らすことができる。最近の世論調査では、自公連立政権が過半数を維持する可能性が高いと言われているが、自民党が単独で過半数を維持できるかどうかは不確実である。

日曜日に自民党が予想以上の結果を出せば、党内での岸田首相の影響力が高まり、岸田首相が希望する政策を実行するための時間と場所が確保される可能性が高まる。良くない結果になれば、その可能性は低くなり、公明党の影響力は大きくなる。良くない結果となれば、来年夏の参議院選挙に向けて、自民党はまた新たな総理総裁選出を検討するきっかけにもなるだろう。どちらの結果になるにしても、岸田の仕事はより複雑になっていくだろう。

※ナオコ・アオキ:メリーランド大学国際・安全保障研究センター研究員、アメリカン大学の準教授を務めている。

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日本の選挙:岸田文雄首相は与党自民党の勝利を宣言(Japan election: PM Fumio Kishida declares victory for ruling LDP

BBC

2021年11月1日

https://www.bbc.com/news/world-asia-59110828

日本の岸田文雄首相は彼が率いる与党自由民主党(Liberal Democratic PartyLDP)の勝利を宣言した。

1カ月前に首相に就任したばかりの岸田氏にとって大勝利となった。彼が率いる自民党は衆議院(lower house)で233議席以上の議席を確保した。これは連立のパートナーである公明党の存在がなくても議会の過半数を占める数字だ。

自民党はこれまで数十年にわたり日本政治を支配してきたが、新型コロナウイルス感染拡大対策では批判を浴びた。

岸田首相の前任者菅義偉は就任1年で辞職することになった。

新型コロナウイルス感染者数拡大についての人々の懸念がありながらも東京オリンピック開催を推進し続けたことで自民党の支持率は低下し続けていた。そうした中で、菅首相の辞職が発表された。

64歳の岸田氏は長年にわたり首相の座を狙い続け、2012年から2017年まで外相を務めた。

自民党は465議席中276議席を占める形で総選挙を迎えた。

選挙戦序盤の世論調査では、自民党は過半数を占めるためには連立パートナーの公明党に頼らねばならないという結果が示されていたが、その予測は覆された。

自民党は261議席を獲得し、過半数の233議席を大きく上回った。公明党は32議席を獲得し、連立与党の議席数は合計で293議席となった。

日本の議会は、国会(National Diet)として知られている。国会は下院(lower)に当たる衆議院(House of Representatives)と上院(upper)に当たる参議院(House of Councillors)で構成される。

日曜日の投票はより優位な衆議院に関するものであり、参議院議員選挙は来年実施される。

月曜日、日経225は2.6%の上昇で終えた。投資家たちは自民党が過半数を大きく超えて議席を獲得したことについて、岸田首相の経済刺激策が議会をスムーズに通過するだろうということに賭けた。株価上昇はこのことを意味している。

選挙前、岸田首相は新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにして、世界第三位の経済を支援するために数十兆円規模の支出を行うことを約束した。

日曜日、岸田首相は公営放送であるNHKに出演し、その際、今年の終わりまでに更なる追加予算を策定する計画だと述べた。

●岸田文雄とはどんな人物?

(1)岸田氏は政治家一族の出身であり、彼の父親と祖父も政府に関与した。

(2)彼は1993年に議員に初当選した。2012年から2017年まで外相を務めたがこれは最長記録だ。

(3)2016年のバラク・オバマ大統領の広島(岸田氏の地元)訪問を調整した。広島は核爆弾による攻撃を受けた都市の一つだ。現職のアメリカ大統領による初訪問となった。

(4)名門の東京大学の入学試験に失敗した。これは多くが東京大学で学んだ彼の一族からは「恥(embarrassment)」と見られた。

(5)彼はお酒を飲むのを好む。外相時代にロシアのセルゲイ・ラブロフ外相に飲み比べを挑んだというエピソードは有名だ。

(貼り付け終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 菅義偉首相がホワイトハウスを訪問し、ジョー・バイデンとホワイトハウスで会談を行った。一体何のために、この時期にわざわざホワイトハウスくんだりまで行って、ハンバーガーも食べずに帰って来たのか。全くもって意味も意義も分からない会談だ。

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 この写真の異常さ、これが「新しい日常」「ニューノーマル」なのか。この寒々しさは、これまでの虚飾を取り払って、「日本がアメリカの属国である」ということをより鮮明に私たちに教えてくれる。ハンター、正剛という言葉に敏感な人ならば「お互いにバカ息子のために祟(たた)られますなぁ」という嘆きが聞こえてくるということもあるだろう。

 下の記事では、対中強硬の米国とそれに反対する日本、という構図になっており、「菅を呼びつけたのも、対中けしかけ、吠えかけ組の一番手だからであって、日米関係が世界で最重要の二国間同盟関係などという戯言(たわごと、ざれごと)のためではない」ということが理由となっている。アメリカの片棒、お先棒を担いで、中国に吠えかかるのがお前らの仕事だぞと、ガツンとやられてシュンとなって帰ってくるだけの話だった。

 日本でバイデンを熱烈に応援して、トランプを非難してきた知識人層は、このバイデン政権の凶暴・狂暴極まりない性格をどのように日本国民に説明し、自分たちの行動をどのように釈明するのか。あれだけ事故や事件で死者が出ると責任者を追及し、理由を精査するのだから、日中が衝突して死者が出た場合にはさぞ、明確な理由を探し、それが自分たちであれば、筆を折る、国公立大学の教授職や審議会の委員など公職から辞するくらいの態度を示してくれることだろう。

 菅首相としては、せめてバイデンの口から直接「東京オリンピックが楽しみだ。準備は順調に進んでいると聞いている。努力して欲しい」くらいのリップサーヴィスが欲しかったところだろうが、それすらなかった。菅首相が自分で「世界の団結の象徴として、大会の開催を実現する決意であることを大統領に伝えた。大統領からは、この決意に対する支持を改めて表明してもらった」と言うのが精いっぱい。これは自作自演とも言う。共同声明には「開催の努力を支持する」という文言が入ったと喜んでいるが、「ああそう、やる気なの。それなら何とか頑張りなさいね、出来るかどうかは知らんけど」ということでしかない。
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 結局何のための訪米だったのか。坂井学官房副長官が誰に配るのか知らないが、「バイデン・ハリスチョコ」やら「フルーツバー」「1ドルチョコ」をたくさん買い込んだことが唯一の収穫だったのではないか。しかしまぁ、終戦直後の「ギヴ・ミー・チョコレート」の時代じゃあるまいし、他に気の利いたお土産はなかったものか。問題はそこにはないが、ただただお金と燃料の無駄遣い、お土産を買って帰りましょうの物見遊山、官邸御一行様の「GOTOキャンペーン」でしかなかった。そして、属国の悲しみだけが際立つものとなった。

(貼り付けはじめ)

日米首脳ハンバーガー会談舞台裏…台湾明記で対中戦略は?バイデン政権内に不満も

4/17() 18:56配信

日本テレビ系(NNN

https://news.yahoo.co.jp/articles/f09f98776082d87cc9e72e80c0fd3c8d6b1e75f0

https://news.yahoo.co.jp/articles/f09f98776082d87cc9e72e80c0fd3c8d6b1e75f0?page=2

日米首脳は、ホワイトハウスの一室で、ハンバーガーを前に、マスクを着用したまま見つめ合っていた。

バイデン大統領が、初めての対面形式の会談相手として、菅首相を招いて行った日米首脳会談。共同声明では約半世紀ぶりに「台湾」を明記し、中国を強くけん制した。

「雰囲気はすごく良かった」と出席者が口を揃え、首相自身も「私と似ている」と“ベテラン政治家”同士の相性に手応えを語る一方、ある政府関係者からは「米中の事実上の軍拡競争に日本は巻き込まれている」との声も上がる。

いったい何が起きているのか。舞台裏を探った。(ワシントン支局長・矢岡亮一郎)

■食べない“ハンバーガー会談”

「いろいろ人生経験とかの話をして、ハンバーグ(注:ハンバーガー)も全く手をつけないで終わってしまった。それくらい熱中した」

会談終了後、菅首相は少し頬を緩めながら、バイデン大統領との「テタテ」と呼ばれる11の会談を振り返った。時間にしてわずか20分間。「たたき上げの政治家という共通点がある」と親近感を寄せるバイデン大統領とは、部屋に飾られた家族の写真を見ながら、孫などの話題で打ち解けたという。

「私と似ているような感じを受けたが、本人もそう思っているようで…」

とバイデン氏との信頼関係の構築に手応えを語った。しかし、この「食事に手をつけないランチ会」に至るまでには、紆余曲折があった。

■ホワイトハウス「幻の夕食会」

日本代表団ホテルに「坂井副長官のお土産」段ボール…「1ドルチョコ」も

「こんなにバタバタの首脳会談は初めてだ」

首相の訪米を翌々日に控えて、ある日本政府関係者はうめいた。ホワイトハウス側との調整が滞り、スケジュールは直前まで定まらなかった。今回、日本政府がこだわったのが、バイデン大統領、ハリス副大統領との食事会。特にバイデン大統領との「夕食会」開催に向けては最後まで粘り強く交渉を続けたというが、結局実現することはなかった。

バイデン大統領自身、コロナ禍での対面の会談にはかなり慎重だとされる。会談中は「常時マスク着用」、しかも高性能のN95マスクの着用が義務づけられた。

この徹底ぶりはハンバーガーを前にしてなお、マスクを外さない一枚の写真によく表れている。

■台湾明記も…バイデン政権内に「落胆」

首脳会談では「N95マスクを常時着用」

首脳会談は、11のテタテ、少人数会合、拡大会合と3段階で計2時間半に及んだ。

今回の会談の最大の焦点は、共同声明に「台湾」の問題を明記するかどうかだった。そもそも日米首脳の共同文書に「台湾」が明記されれば、1969年の佐藤栄作首相とニクソン大統領以来、半世紀ぶりとなる。「台湾」の文言を盛り込みたいアメリカ側と、慎重な日本側との間で、事前調整はかなり難航したという。この対立構図を英紙フィナンシャル・タイムズが報じ、日本側が米側のリークを疑う場面もあった。

結局、共同声明には「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記された。日本政府の要請で後半に加えられたという「両岸問題の平和的解決を促す」という文言は、台湾問題に触れる場合の日本政府の定型見解で、外務省幹部は「この表現を後ろに付けることで、これまでの日本政府の姿勢と変わっていないというメッセージになる」と解説した。

一方で、あるアメリカ政府関係者は、「日本には共同声明でもっと強い表現に賛同して欲しかった」「落胆している」と不満を口にしている。

■日本「台湾明記」もなお米政府内に不満

「台湾の明記」を「内政干渉だ」とする中国は、共同声明に対し「強烈な不満と断固反対を表明する」と猛反発した。一方、アメリカ政府内には「台湾」を明記してなお、日本への不満が燻る。「日本は台湾有事への危機感が低い」との見方や、別のアメリカ政府関係者からは「日本は経済分野で中国と良い関係を保っていて、少しずるい」との声まで聞かれる。

アメリカが中国と貿易戦争をやって、経済面でも身を切る覚悟で向き合う中で、日本が尖閣など安全保障面で守ってもらおうというのは「不平等」との不満もあるようだ。

■菅首相「一番乗り」のワケ

菅首相訪米も「対中国のメッセージ」に

今回の菅首相の「一番乗り」は、日本重視と言えるのだろうか。ある日米外交筋はこう話す。

「バイデン大統領が菅首相を最初の会談相手に選んだのは、『日本』だからではない。対中国の最大の同盟国だからだ」

菅首相の訪米は、あくまでアメリカの対中国戦略の一環、一つのパーツとの位置づけだ。現にバイデン大統領は、同じタイミングで気候変動問題担当のケリー特使を中国に、台湾にも非公式の代表団を派遣して、台湾トップ蔡英文総統と会談させた。日米首脳会談に同席したブリンケン国務長官とオースティン国防長官は直前まで、欧州を歴訪していた。

バイデン政権は「同盟」を重視しながら、複合的かつ戦略的な外交を展開している。その中の一番重要なパーツとして、日本のトップを米国に招き、首脳会談を通じて「強固な同盟」、台湾などをめぐる厳しい姿勢を中国に見せつけた。

ある日本政府関係者は「ホワイトハウスは今回、バイデン大統領と菅首相が2人で並んでの会見にこだわった。発信したかったのだろう」と打ち明ける。

■日米今後は?「総論はいいが、各論に入ると…」

「ジョー」「ヨシ」が描く対中国戦略は

ある日本政府関係者は「日米は総論はいいが、各論に入ると立場の違いが露呈してくる」と交渉の難しさを語っている。今回の台湾をめぐる文言の調整は「各論の立場の違い」の一つのケースになった。

別の日本政府関係者は「日本はすでに米中の事実上の軍拡競争に巻き込まれている」と語った。今後も中国をめぐる情勢が厳しさを増す中で、アメリカに立場の違いでどう理解を得ていくのか。日本外交の力が試される。

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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今回は、古い記事であるが、安倍晋三前首相が退任を発表した直後に、アメリカ人識者によって発表された安倍政権の分析と評価を行った論稿を紹介する。マイケル・オースリンは、アメリカの首都ワシントンにある右派のシンクタンクであるアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)の上級研究員兼日本部長を務めている。

 この論稿の中で、オースリンは、安倍首相の経済政策はうまくいかなかったが、外交政策と安全保障政策においては成功を収めたと分析している。この「成功」とはずばり、対中国強硬路線だ。中国と対峙するために、インド、オーストラリア、東南アジア諸国との関係を深化させ、防衛協力も進めたとしている。安倍首相の「成功」とは、アメリカにとっての成功であって、日本の国益にかなっていたかどうか、ということは別の視点から見なくてはならない。

 この論稿の中で、オースリンは、この時点でははっきり決まっていなかった自民党の次期総裁(日本の首相)については数人の候補者を挙げるにとどまっていた。そして、オースリンは一つの懸念を表明している。それは、「安倍首相のようにうまく日本を統治しながら、アメリカとの同盟関係に深く献身できる(属国化を推進する)人物が出てくるのかどうか」ということだ。安倍首相時代、アメリカは日本について懸念を持つ必要はなかったが、これからはそうはいかない、これからは「安倍時代は良かったな(中国にとっては良くなかったな)」と思う日々がやってくると書いている。

 これを裏返して考えて見ると、「安倍首相のように、何でもアメリカの言いなりで、自ら進んで属国化を進める、そんな政治家はいない、いくら何でもそこまでする奴は常識外れのバカだ」ということになる。普通に考えれば、安倍首相がやったようなことはしないし、できないということだ。

 この論稿は安倍前首相の外交政策と安全保障政策を評価しているが、視点を考えれば「ほめ殺し」そのものだ。

 結局、日本の新しい首相には菅義偉前官房長官が選ばれた。官房長官時代に単独でアメリカ訪問をし(内閣の番頭格、首相の女房役という点からかなり異例)、マイク・ペンス副大統領との面談を行った。アメリカ側としては、こいつでいいや、安倍程期待できるか分からないが、安定しそうだし、安倍路線の継承と言っているのだから、ということになる。国会で施政方針演説を行う前に、ドナルド・トランプ大統領に早速お電話を差し上げて、ご挨拶もした。「菅はなかなか愛(う)い奴」ということになる。

 安倍路線とは日本の属国化論戦そのもので、アメリカを喜ばせるだけのことだ。

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安倍時代は終焉し、中国は元気づけられ、アメリカ政府は懸念を持つ(The Abe Era Ends, Cheering China, Concerning Washington

アメリカはほぼ10年間、日本について懸念を持つ必要はなかった。これからは懸念が始まってしまうことだろう。

マイケル・オースリン筆

2020年8月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/08/28/abe-japan-resignation-united-states-ally/

タイミングは偶然だっただろうが、安倍晋三首相が日本の首相の中で最長の在任記録を打ち立てた週に辞任を発表した。辞任の理由は2007年、最初の首相を短期間で辞任することになった原因と同じだ。それは慢性の潰瘍性大腸炎だ。支持率の低下、一向に改善しない経済状態、2016年に大阪の学校への土地売却をめぐるスキャンダルなどはあったが、安倍首相は2012年に権力の座に返り咲いてから、日本政治を支配した。そして、10年近くにわたり、安倍首相は日本をアメリカにとっての忠実な同盟国としての立場を堅持した。米中間の地政学的な競争がヒートアップしている中で、日本との同盟関係を失うことは、アメリカ政府にとっての懸念の種である。誰が安倍首相の後任になるか、日本が政治的な麻痺状態もしくは不安定状態に入るかどうか、後任が安倍首相と同等の外交政策と安全保障政策に対する熱意を持っているのか、これらの疑問は日本においてだけではなく、同盟諸国と競争相手にとって重要な疑問である。

首相として3期連続で人気を務め、約8年間にわたり日本政治のトップであったが、安倍氏が2012年に再び首相の座を手にしてした時、以下に日本が酷い状態であったかを思い出すのは難しい。安倍氏が2007年に一度目の首相を辞任してから、5名以上の首相が就任したが誰もが1年ほどで退任した。この時代には安倍氏が属する自由民主党が1955年の結党以来、初めて権力の座から滑り落ちた(1990年代初めに短期間野党に転落したことはあった)。首相として1期も持たずに退任するという失敗から、安倍氏は、1970年代と1980年代の日本でパワーブローカーであった田中角栄と中曽根康弘に匹敵する、日本における実力政治家となった。

安倍氏の父は外相を務め、祖父は岸信介であった。岸信介はアメリカによってA級戦犯として投獄されたが、1957年から1960年にかけて日本の首相となった。岸はそれから数十年間続くことになる自民党の選挙での優位性を作り上げた設計者の一人である。安倍氏は2012年以降、経済成長と外交・安全保障政策分野での積極性を通じて、彼の地位を固めた。安倍氏は日本の政治家特有の控えめなイメージを覆し、彼の経済政策についてアメリカ式のスローガンを打ち出した。安倍首相が首相の座に返り咲いた際、彼は「アベノミクス」をぶち上げた。有名な「三本の矢」という言葉も使われた。これは通貨発行の拡大、財政刺激、構造改革を指している。

アベノミクスは多くの目標を達成できなかった。2%のインフレーション・ターゲット、デフレーションの終息といったことは達成できなかった。それでも、安倍首相は環太平洋連携協定交渉に参加し、けん引すること、法人税の引き下げ、電力などの重要分野の規制緩和、日本における外国人労働者の増加、女性の勤労者数の増加(「ウイメノミクス」として知られる)で新しい地平を開いた。

日本の指導者としては大胆な施策であった、安倍首相の経済政策は、考慮が足りなかった、安倍首相の在任期間における二度にわたる消費税税率の引き上げと世界的な新型コロナウイルス感染拡大によって打撃を受けた。消費税引き上げは経済回復の航海から必要な推進力となる風を奪い取った。東芝やルノー・日産などで起きた企業統治に関する数々のスキャンダルは、ひとたびは「ジャパン・インク(日本株式会社)」と呼ばれたシステムの改革がいかに難しいかを改めて示すものとなった。ルノー・日産のスキャンダルでは、実業家カルロス・ゴーンの批判を巻き起こした逮捕とそれに続く日本からの脱出行で世界に知られることになった。しかし、多くの失敗はあったが、安倍首相は唯一、総合的な日本の経済改革計画を持つ人物であった。そして、彼は信頼性の高い他の選択肢がない中で、基本に立ち戻ることができた。

安倍首相の経済政策が世界的な基準によって比較的過激さを失わされることになったが、安倍首相は戦後の日本の指導者たちの中で、外交政策と安全保障政策をこれまでになく進めた。彼は平和主義の第9条を日本国憲法から取り除く形で憲法を変更しようと望むこと、また日本の戦争犯罪についての解釈について疑問を呈することで悪名を高めた。憲法9条では、日本は伝統的な軍事力の構築を禁止されている。それでも安倍首相は第二次世界大戦における日本の役割に関してこれまでになく明確な謝罪を表明し、パールハーバーを公式訪問し、広島にバラク・オバマ大統領を迎えている。

より具体的に言えば、安倍首相は日本の戦後の手かせを脱ぎ捨てた。彼は日本と同盟諸国との間の協力、日本企業が防衛生産と協調することを妨げてきた様々な法律を改定、もしくは廃棄した。そして、国家安全保障会議を創設し、毎年防衛予算を増額し続けた。安倍首相の在任期間中、日本は第二次世界大戦井以来の空母建設計画を立て、アメリカに次いで、世界第二位のF-35保有数を達成した。また、中国軍から遠隔の島嶼部を防衛するために陸海共同の部隊を新たに創設した。

アジア地域において、安倍首相は日本の外交関係を深化させた。特にインドとの関係を強化した。安倍首相とインドのナレンドラ・モディ首相は協力関係を構築した。安倍首相は、オーストラリア、更に東南アジア諸国との関係も強化した。安倍首相の前政策の基盤にあるのは、中国の台頭である。中国は日本にとって最大の経済的パートナーであるが、同時に日本の国益にとっての明白な脅威でもある。多くの場面を通じて、安倍首相がアジア諸国に送ったメッセージはシンプルなものだ、それは、日本は「非中国」であり、皆さんと貿易を行うことができ、地域における規範とルールを維持するために協力でき、皆さんを虐めたりしません、というものだった。

安倍首相が権力の座に返り咲いた時期に、中国で習近平国家主席が権力を掌握したということもまた偶然の産物ということになる。両者は8年間にわたりつば競り合いを続けた。中国は日本が海外開発支援を通じて、経済関係と外交関係を拡大していることを注意深く観察してきた。これは習近平の進めている一対一路計画に対抗するものである。最近になって、安倍首相は、新型コロナウイルス感染拡大終息後のための基金をスタートさせた。これは、日本企業に対して中国を拠点にしている活動を移転させるためのものだ。世界規模の貿易における中国の役割を変更させるために制限された中国の分離を加速させる。

中国政府にとっての特別な脅威となったのは、安倍首相が進めた軍事力の近代化であった。安倍首相は領有権をめぐる争いがある尖閣諸島(釣魚島)周辺海域に対する中国の日常的な侵入を防衛した。それだけではなく、安倍首相はオーストラリア、インドとの安全保障協力関係を深化させた。そして、台湾との関係も表立ってではないが、緊密さを維持した。安倍首相の退任に中国政府はほっと一息つくであろうことは疑いようがない。そして、彼の後任が彼ほどのエネルギーを持っていないこと、インド太平洋地域、もしくは世界における日本の役割の拡大という彼の考えを共有していないことを願っていることだろう。

安倍首相の外交政策の中核はアメリカとの同盟関係であった。彼はオバマ政権と協力して日米同盟に関するガイドラインの見直しの成功を主導した。更にはその深化にも成功した。しかし、安倍首相はアメリカのドナルド・トランプ大統領と緊密に協力した点で人々の記憶に残ることになる。彼はトランプ大統領と独自の緊密な関係を構築した。安倍首相は日本のナショナリストというレッテル貼りをされたが、安倍首相は日本の安定と繁栄のためにはアメリカ政府との協力が致命的に重要であることを理解していた。安倍首相のトランプ大統領へのアプローチは、中国への対抗、アメリカがこれからも日本を北朝鮮から守り続けること、トランプ大統領が環太平洋連携協定からのアメリカの撤退を決めてからの血の二国間の関税引き下げを行うための二国間交渉といった点から行われた。

安倍首相は辞任を発表した記者会見の中で、領有に関して争いがある北方領土をロシアに返還させること、北朝鮮から拉致された人々の期間を確実なものにすることができなかったことについて後悔の念を表明した。北方領土は第二次世界大戦中にロシアに占領された島々である。安倍首相は憲法の変更ができなかったことについても言及した。彼はまた常に不完全な経済改革についても残念に思っているだろうし、デジタル金融、5G、サイバーセキュリティの面で日本が遅れていることにも懸念を持っているだろう。しかし、全体的に見て、この8年間、安倍首相はアジア地域で最も有能で成功を収めた指導者であった。安倍首相の最後の1年において、日本は新型コロナウイルス感染拡大危機に見舞われたが、安倍氏が首相に返り咲いた2012年に比べて、日本は国際社会において存在感を増し、アジア地域とその他の各地域でより重要な役割を果たすようになっている。

日本にとって最も重要な疑問は、誰が安倍氏の後継者となるか、彼の政策のうちの何を引き継ぐのかというものだ。自民党は国会で絶対多数を確保しており、石破茂元防衛大臣、岸田文雄元外務大臣、現職の河野太郎防衛大臣と菅義偉官房長官といった有力候補者たちから次の指導者を選ぶことになる。これからの数週間で、選挙で人々を惹きつけることができるか、そして安倍首相の政策を引き継げるかということがテストされることになる。

最近になっていくつかのトラブルがあったが、安倍氏は日本で最も人気のある政治家だった。そして、彼ができたレヴェルで権威を行使することができる人物もいなかった。中国政府、北朝鮮政府は共に安倍首相の後任は有名ではなく、地味で、アメリカ大統領とはそこまで緊密な関係を築くことがない人物になって欲しいと願っている。市場は次期首相がすでに実現している改革から後退し、日本の産業面での競争力を増加させるための方策を実施しないのではないかという懸念を持っている。

アメリカ人にとっても、日本における統治の安定に慣れ過ぎてしまっている。この安定はサプライズである。アメリカ政府が、日本の指導者が日米同盟に献身するのかどうか、国会において安定的に過半数を維持できるのか、世界第3位の経済大国という地位に見合った世界における役割を果たすための計画を持っているのか、について懸念することになるのはほぼ10年ぶりのことだ。日本国内で、そして海外の同盟諸国の中で、安倍時代は良かったと懐かしがられるようになるのはすぐであろう。

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 古村治彦です。

 菅義偉総理大臣が誕生した。安倍政権からの継続を旗印に、自民党役員や主要閣僚に大きな変更はない。大臣の横滑りや再登板も多く、目下の急務である新型コロナウイルス感染拡大と経済対策の両輪を回す政策を実行していくことになるだろう。新内閣の目玉は行政改革で、河野太郎前防衛大臣が行政改革担当大臣に横滑りとなった。河野大臣は若手の時は「ごまめの歯ぎしり」などと言っていたが、今やすっかりポスト菅、光景総理総裁の有力候補である。祖父河野一郎、父河野洋平が果たせなかった総理総裁(父洋平は自民党総裁までは達成した)に手が届く位置まで来た。

 下に掲載する記事は、アメリカが新型コロナウイルス感染拡大に対応するために、大規模な財政出動を行い、財政赤字を更に積み上げる、そうなると、ドルの価値が下落する、そして、相対的に円の価値が上がる(円高になる)、その結果として日本の輸出に影響が出る、という内容だ。アベノミクスで円安基調になって輸出が堅調であったものがそうではなくなると、菅新総理大臣は厳しい状況に直面することになる、ということだ。

 子の論稿から考えると、安倍晋三前首相は経済の難しいかじ取りをする前に政権を投げ出したのではないか。菅氏は行政改革やデジタル化という2000年からの20年でいまだに達成されない、お題目を唱えているだけだ。菅内閣の特徴は停滞と惰性となるだろう。安倍首相が再登板する際には、経済と外交が目玉だった。安倍内閣の功罪について分析も反省もないまま、とりあえず「継承」という言葉で糊塗しているが、実際は惰性と停滞だ。菅氏は警鐘を唱えている以上、アベノミクス、安倍政権下の財政政策と金融政策は堅持されることになる。麻生太郎副総理兼財務大臣(デフレ脱却担当とはお笑い草だ)が留任ということで、菅氏は麻生氏に経済のことは任せることになる。そうなれば今のまま何も変わらない。

 安倍晋三前首相は良い時に辞めたということになる。これから経済の悪化がどんどん明らかにされていくが、それに対応するのは菅新政権だ。安倍晋三氏は大きな傷を負わずに、政権から退くことができて政治的な力を温存し、細田氏から派閥の領袖の地位を引き継いで、これから自民党内政治に大きな影響力を持っていく。キングメイカーとしてはもちろんだが、自分が再びキングとして登場するということも視野に入れているだろう。

 アメリカでもそうだが、日本でも新型コロナウイルス感染拡大対策と景気対策は車の両輪で、どちらもバランスよく行うべきだということになる。アメリカでじゃぶじゃぶとマネーが供給され続けるようになれば、ドル安ということになり、日本は円高となる。輸出業にとっては新型コロナウイルス感染拡大によって世界各国で内需が冷え込んでいるということも相まって厳しい状況となる。円高になれば輸入品の値段は下がる。それによって内需が拡大すればよいが、物価は上がりづらい。そうなれば政府と日銀のインフレ2%目標の達成は難しくなる。今年いっぱいは厳しい状況は続くし、来年はさすがに今年のようなことはないだろうが、回復は難しいだろう。

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菅氏は継続性を約しているが、それを実現することはかなり難しい(Suga Promises Continuity. But on Economics, He Can’t Possibly Deliver.

-円の価値が上がると、日本の新首相は輸出を守るために何か新しいことをしなければならなくなるだろう

クリス・ミラー

2020年9月15日

『フォリーン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/09/15/suga-abenomics-yen-weak-exports-strong-quantitative-easing/

日本憲政史上最長の在任期間となった安倍晋三首相が辞任を発表した時、それは一つの時代の終わりのようであった。安倍首相は日本政治をほぼ10年近く支配した。与党自民党内の様々な派閥を巧妙に動かし、野党からのプレッシャーをかわした。様々な汚職事件と影響力を行使したスキャンダルをほぼ無傷で乗り切った。最も印象的だったことは、アメリカのドナルド・トランプ大統領との関係をうまく維持した。トランプ大統領は大統領就任後しばらくの間アメリカ側が主導権を握るために日本を攻撃してばかりだったことを考えると、安倍首相の仕事は簡単なものではなかった。

安倍首相の後継首相である菅義偉は言ってみれば、大きな靴に自分の足を合わせねばならないことになった。安倍首相と同じく、菅氏も自身のキャリアのほぼ全てを政治の世界で過ごしてきた。これまでの8年間は安倍内閣の官房長官を務めた。しかし、安倍首相とは違い、菅氏は政治界一族の出身ではない(安倍首相の父は外務大臣を務めた)。菅氏は地味な農家の出身である。

安倍首相と菅氏が長年にわたり一緒に仕事をして来たという事実から考えると、これが2人の指導者の間で政策が継続されるという予測が立つ理由となる。菅氏は安倍政権の政策を立案するにあたり一定の役割を果たしたのだ。日本のメディアは、財務大臣と外務大臣を含む主要閣僚の多くは、菅氏が首相になっても留任すると報じている。

菅氏に対する最大の疑問は日本経済についてである。それは、新型コロナウイルス感染拡大によって深刻な景気後退に直面するであろう世界各国と同じである。日本は高い幹線レヴェルからは脱しているが、経済は深刻な打撃を受けている。菅氏にできることは何か?

安倍首相は「アベノミクス」と名付けた経済プログラムで人気を確立した。アベノミクスには3本の矢があった。それらは、金融緩和、財政出動の拡大、市場開放のための構造改革であった。実際には、安倍首相は彼自身が約束したほどには財政出動を行わず、その代わりに均衡予算を追求した。財政赤字は減少し(今年になるまで)、税金は上がった。しかし、もし他の人々が首相であったら、税金をもっと早く上げていただろう。構造改革に関して言えば、安倍首相は貿易のために更に日本を開くためにいくつかの方策を行った。しかし、安倍首相は勇ましい言辞ほどには革命的ではなかった。安倍首相は日本の中央銀行である日本銀行に圧力をかけて、新たな更なる金融緩和政策を実験的に実施させた。しかし、ここ数年、更なる急進的な方法は実行されていない。

菅氏は自身も立案に関与したアベノミクスの遺産に対しての意義を唱える様子は見せていない。しかし、アベノミクスは正反対の政策が同居する矛盾したセットになっている。菅氏が継続性を公約しても、アベノミクスは政策の方向性を示すものではない。コロナウイルス感染拡大に関連する景気後退に苦しむ企業や個人を支援するために日本政府がこれからも資金を投入するということについてはほぼ疑いようがない。菅氏は構造改革についても発言している。しかし、政治家にとって改革を約束することはたやすいが、それを実現することは困難である。

菅氏は金融政策において厳しい選択に迫られることになるだろう。日本は超金融緩和政策の多くを始めたが、これらは今や世界規模で実施されるようになっている。例えば、中央銀行による金融財産の大規模購入である量的緩和は2001年に日銀が始めた。アメリカ政府が2007年から2008年にかけての金融危機に対応するために子の量的緩和を試したのはそれから約10年後のことだった。日本銀行はマイナス金利、政府の借り入れコストのコントロールという実験を続けた。これらは長期的な超低金利を保証するものである。

金融緩和政策を採用し続けて20年が過ぎた。日本銀行は更なる資金投入は不可能だと確信している。しかし、アメリカ連邦準備制度は金融緩和を始めたばかりで、コロナウイルス感染拡大による景気後退を戦うための金融における道具立てを劇的に拡大するものである。アメリカの赤字は戦争をしていない時代としては前代未聞のレヴェルにまで達しつつある。この結果としてドルの価値が下がることが予想される。そして相対的に円の価値が上がる。通貨価値が上がることは日本にとっては良いことのように思われるが、菅氏に対しては大きな挑戦となる。通貨政策は日本においてこれまで議論が沸騰する問題であり続けた。日本では輸出大企業をはじめとする輸出業者が政治的な影響力を及ぼしてきた。アベノミクスの財政政策と金融政策は円の価値を下げた。それによって日本の輸出業者は利益を得た。ドルの価値が下がり続け、円の価値が上がり続け、日本の輸出業者の競争力が落ちる場合、菅氏は難しい選択を迫られることになるだろう。菅氏は安倍首相の政策の継続を約することはできる。しかし、菅氏がそのような約束をしたからといって、安倍首相と同じ結果をもたらすことができるという保証はない。

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