古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:討論会

 古村治彦です。

 大変遅くなったが、2回目(予定では3回目の)のアメリカ大統領選挙候補者討論会についての記事をご紹介する。

 私は「またトランプ大統領がやりたい放題で、途中でマイクの音を切られて怒って退席するんじゃないか」と考えていた。しかし、これは浅慮であり、短慮だった。トランプ大統領はバイデン前副大統領の発言を遮ることはほぼなく、司会者のクリステン・ウェルカーにも丁寧に接し、感謝の言葉さえ述べた。不良がちょっと良いことをすると、何かとてもよいことをしたように感じられる、あれと同じだ。もしくは、織田信長が舅の斎藤道三と会見するときの様子と同じだ。いつでもどこでも一本調子のバイデンに比べて、これで評価が高くなったと感じた。

 バイデン前副大統領は自分のキャラクターにはない姿を見せようと躍起になっていた。彼は何度も「カモン」を連発していたが、相手を攻撃し、激しい言葉を使う、ああいう姿は彼のキャラクターに合っていない。

 私が驚き、印象に残ったのは、トランプ大統領が何度か、バイデンの発言を聞きながら、うなずいたことだ。反対の意思を示す時は顔の表情を変えたり、首を振ったりしていたので、彼はバイデンの発言内容で考えに合う部分には同意を示していた。バイデンがトランプ大統領の発言内容に同意を示すようなことはなかった。トランプ大統領のうなずきを見ながら、私は、アメリカで今出現している「分裂」について考えざるをえなかった。

 現在のアメリカの分裂は、トランプ大統領が引き起こしたという論調だ。しかし、果たしてそうなのだろうか、と私は疑問を持つ。そもそも分裂が先にあり、その結果としてトランプ大統領が当選したと私は考えている。しかし、もっと言えば、民主党側の党派的な利益と狭量さのために、分裂を演出しているのではないか、と考えるようになった。

 副大統領候補者討論会の最後で、司会者が子供からの「どうして激しくいがみ合うのか」という質問が紹介された。ペンス副大統領は「激しく論戦を戦うのは共にアメリカのことを思ってのことで、終われば仲良くするんですよ」と答えたが、カマラ・ハリスは最後までバイデンの名前を繰り返すだけで、ペンスのような素晴らしい答えをすることはなかった。

 最後の討論会の勝者はトランプ大統領だと私は判定する。そして、選挙までの最後の日々、支持率にどのような影響を与えるかを注意深く見たいと思っている。既に討論会の効果は出始めている。

(貼り付けはじめ)

トランプ・バイデンの最後の討論会の5つのポイント(Five takeaways from the final Trump-Biden debate

ナイオール・スタンジ、ジョナサン・イーズリー筆

2020年10月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/522398-five-takeaways-from-the-final-trump-biden-debate

火曜日の夜、トランプ大統領とジョー・バイデン前副大統領は激しくも統制の取れた討論会でぶつかった。今回の討論会は11月3日の投開票日に向けて、有権者たちに候補者の考えを示す最後の機会を与えることになった。

トランプ大統領は先月末のクリーヴランドでの1回目の討論会で破壊的な姿勢を示したが、共和党関係者は選挙の結果に悪影響を与えるのではないかと懸念を持った。

討論会で何度も衝突があった。候補者たちはお互いに家族、人種、移民について激しい攻撃を行った。

2020年大統領選挙の最後の討論会のポイントについて書いていく。

(1)トランプ大統領はトーンを変えた(Trump changed his tone

トランプ大統領は火曜日夜に最高の態度を見せた。

今月初めの討論会での破壊的なパフォーマンスによって有権者たちの多くはテレビのスイッチを消したことだろう。しかし今回の討論会では、バイデンの発言に割り込むこともほとんどなく、司会者のNBCニュースのクリステン・ウェルカーに対して丁寧に接した。

大統領選挙候補者討論会運営委員会は全く別の結果になるだろうと考えて準備していた。委員会は、一人の候補者が直接受けた質問に対して答えをしている間に別の候補者に割り込まれないようにするため、それぞれの候補者のマイクの音声を着ることができるようにしていた。

トランプ大統領は今回の討論会でバイデンに対してより多くの時間を話させる心づもりだったようだ。トランプ大統領のアドヴァイザーたちが望んだ戦略はバイデンを混乱させるか、失言をさせようというものであった。

しかし、そのようなことは起きなかった。バイデンが明らかに動揺している場面もあったが、力強く反撃をしている場面もあった。国境で不法移民の親と子を強制的に離れ離れにさせるトランプ政権の政策に対しては声を震わせ感情をあらわにし反応した。

しかし、全体を通して、トランプ大統領の前回に比べて穏やかな態度はトランプ大統領に対する評価を上げることに貢献した。

トランプ大統領はより洗練され、良く準備をしているように見えた。彼はまたリラックスしているようにも見えた。それでも、バイデンが長年職業政治家としてワシントンにいたことや刑法改正への支持を取り上げて激しく攻撃した。刑法改正によってアフリカ系アメリカ人の投獄数がかなり増えることになった。

1回目の討論会はトランプ大統領の評価を下げることにあり、共和党の幹部たちは水面下でパニックに陥った。

共和党の連邦議員たちは今回の討論会を受け、自分たちの選挙の結果について少し楽観的になれることだろう。しかし、各種世論調査の結果では、共和党の連邦議員たちは11月3日において大量落選する危険性に直面している。

(2)両候補者がパンチの応酬(Both candidates landed punches

火曜日の夜、候補者それぞれが相手を押し込む場面を作った。それぞれの党を応援している人たちが自分の応援している候補者が明らかに勝利したと主張するのは当然のことだが、どちらに投票するか決めていない有権者にとって、今回の討論会でどちらが明確に勝利したかを決めるのは難しい。

いくつかの両者の違いが際立っている重要な分野において、引き分けであった。

例えば、新型コロナウイルス感染拡大について、バイデンはトランプが責任を取ることに失敗し、アメリカ国内で多くの死者を出したと攻撃した。しかし、トランプ大統領は、いつもに比べてより的を絞った形で防御し、ヨーロッパ諸国の多くが新型コロナウイルス感染拡大を経験していること、そして、バイデンと民主党がより広範囲な閉鎖(シャットダウン)を望んでいると述べた。

トランプはバイデンについて「彼が言っているのは閉鎖ということだけです」と述べた。

トランプはバイデンに対して、息子ハンター・バイデンとハンターのビジネスについて圧力をかけようとした。しかし、バイデンは何も間違ったことはしていないと否定し、トランプ大統領が税金還付書類を提出していないことに言及し、大統領からの攻撃をかわした。

このパターンは火曜日の討論会で何度も繰り返された。討論会はトランプ大統領の基準ではあるが、極めて真っ当な討論会となった。

共和党と民主党は共に自分たちの候補者たちの最高の瞬間に集中するだろう。ボクシングの言葉で言えば、両者は堅実なジャブを当てたが、ノックアウトパンチは出せなかった。

(3)トランプはバイデン一家を追いかけている(Trump goes after Biden’s family

トランプ大統領はバイデン一家と彼のお金関係にスポットライトが当たるようにさせようとした。これは討論会が始まるずっと前に既に始まっていた。

トランプ大統領は討論会の会場にトニー・ボブリンスキーを特別に招待した。ボブリンスキーは元米海軍大尉で、ハンター・バイデンの海外でのビジネスの会計を管理していた時期がある人物だ。

ボブリンスキーは関係書類をFBIと連邦上院国土安全保障・政府問題委員会に提出するだろうと述べている。これらの書類はバイデンが副大統領としての政治的な影響力を利用して、ハンターの海外とのビジネス契約を締結させたことを示すものだと述べている。

メディアはこの疑惑を注意深く取り扱っている。トランプ選対は、ボブリンスキーが討論会の前にナッシュヴィルで発言ができるように調整することで、メディアが報じざるを得ないようにさせようと試みた。

トランプ大統領はとにかくどんな問題でも良いからバイデン一族に焦点が当たるように仕向けた。

バイデンは疑惑を否定し、外国からのお金は一銭ももらっていないと述べた。更に、彼の息子がやったことは全くもって公正なことであった、疑惑を持ち出しているのはロシアによる欺瞞情報作戦の一環だ、とも述べ、トランプ大統領自身の外国でのビジネスと税金の還付について人々の注意を向けさせようとした。

バイデンはカメラを見つめて「大事なことは、彼の家族や私の家族についてではなく、これをご覧になっている、皆さん自身の家族についてです。中流階級のご家庭ならば、今大変な状況を過ごしておられることと思います」と述べた。

バイデン一家に対する注目は終わっていない。トランプ大統領は11月3日の投開票日までの最後の戦いでバイデン一家についての問題を中心的なテーマにする意向であることは明らかだ。

共和党の幹部の中にはトランプ大統領のハンター・バイデンを手掛かりに攻めるという戦略について疑義を呈している人たちがいる。この人たちは、有権者は、雇用、経済、医療、新型コロナウイルス感染拡大について懸念を持っているのであり、ハンター・バイデンのビジネスについてではない、と主張している。

しかし、トランプ選対は、バイデンの好感度を下げるためにバイデンの性格やキャラクターについての疑問を呈することが必要だと確信しているようだ。各種世論調査では、2016年のヒラリー・クリントンに比べて、バイデンの方が好感度が高いという結果が出ている。

(4)クリステン・ウェルカーは司会者として輝いた(Kristen Welker shone as moderator

今回の選挙期間中の討論会の司会者たちは火曜日の夜まで素晴らしい時間を持てなかった。

フォックス・ニュースのクリス・ウォレスは1回目の討論会でコントロールができなかったと評価された。『USAトゥディ』紙のスーザン・ペイジは副大統領候補討論会で受け身過ぎだったと批判された。C-SPANのスティーヴ・スカリーは予定された2回目の討論会での司会をすることすらできなかった。スカリーは批判を受けたツイートについてハッキングされたものだと嘘をついたことでC-SPANはネットワークへの出演できなくなった。スカリーがネットワークへ出演できなくなったのは、トランプ大統領の新型コロナウイルス陽性が判明した後、討論会が彼とは関係ない理由でキャンセルとなった。

NBCニュースのウェルカーは討論会開催以前の期間、トランプ大統領から攻撃を受けた。

実際、ウェルカーはSNS上で幅広い評価を受けた。最後の討論会の司会ぶりで、ステージ上でもトランプ大統領自身からさえも評価された。

ウェルカーは討論がきちんと続くようにし、候補者たちが数々の政策で考えを述べるようにさせた。しかし、彼女は自身の存在を目立たせようとはせず、討論会のスターになろうとはしなかった。

ウェルカーはスムーズにかつプロフェッショナルなパフォーマンスを行った。大きなプレッシャーがある中で彼女のパフォーマンスは印象的なものであった。

(5)トランプ大統領は十分にやったか?(Did Trump do enough?

トランプ大統領のパフォーマンスは称賛を受けるだろう。特にトランプ大統領が極端に攻撃的な姿勢を見せることで、連邦議員選挙で共和党が議席を減らすだろうという懸念を持っている共和党幹部たちからは称賛を受けている。

しかし、トランプ大統領が大統領選挙の流れを変えるだけのパフォーマンスができたかどうかは疑問である。

トランプ大統領はリアルクリアポリティックスが出している全国規模の世論調査の数字の平均で、バイデンから8ポイントの差をつけられている。また、全ての激戦諸州でもバイデンにリードされている。

ナッシュヴィルでの討論会では、選挙戦を根本的に変化させるような瞬間を見ることはなかった。

より穏やかなかつ人間的な態度を取ったというだけで、トランプ大統領は1回目の討論会に比べて評価が高かった。大統領は末子のバロン君の新型コロナウイルス陽性についても言及した。

トランプ大統領が討論会の後半でバイデンについて、職業政治家として何十年も解決すると人々に約束し続けた問題が残っていることを指摘すれば、バイデンはトランプ大統領に対して感情的になって声を荒げるはずだった。

しかし、バイデンは大きな失言をしなかった。トランプ大統領はバイデンの失言を必要としていた。トランプ大統領が示した能力全てをもってしても、彼の支持率を引き上げることはできると考える理由は存在しない。

討論会終了直後に「クック・ポリティカル・レポート」のチャーリー・クックは次のようにツイートした。「トランプ大統領にとっての良いニュースは何かって?1回目の討論会の時と違って、彼は誰も傷つけなかった。悪いニュース?彼は10ポイントも引き離され、その状況を変えることはできなかった。選挙戦の情勢は変化なしだ」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 2020年10月15日(日本では16日)に、2階メイの大統領選挙候補者討論会がフロリダ州マイアミで開催予定だった。前回は司会者が候補者一対一の討論を仕切る形式であったが、2回目はタウンホールミーティング形式で実施される予定だった。タウンホールミーティング形式とは舞台上に候補者がおり、聴衆から質問を受けて答えるというスタイルだ。

 しかし、10月上旬にドナルド・トランプ大統領とメラニア・トランプ夫人の新型コロナウイルス陽性反応という診断が出て、それ以降もホワイトハウスの高官たちの間で陽性者が出たこともあり、討論会運営委員会はヴァーチャル形式の討論会に変更予定という発表を行った。これに対して、トランプ大統領がそのような形式変更ならば討論会に出席しないと反発し、民主党のジョー・バイデン前副大統領は当初は出席意向だったが、トランプ大統領が出ないならば、自分も同日の別のイヴェントに出るということを表明していた。

 結局のところ、最終的に大統領候補者討論会運営委員会は2回目の討論会の中止を発表した。

 大統領候補者討論会運営委員会には元連邦議会議員などがメンバーで入り、民主党と共和党が同数の委員を出している。名誉議長には存命中の大統領経験者たちが就任する。この人たちは実質的には何もしていないだろうから、委員会の幹部会が重要な決定をしているだろう。

 1996年の大統領選挙で共和党の候補者となったボブ・ドール元連邦上院議員(カンザス州選出)がツイッターで、運営委員会が偏っている、運営委員会に参加している共和党側の委員が誰もトランプ大統領を支援していない、という投稿をした。

 運営委員会の委員になるような共和党側の元政治家はトランプ大統領を支持していない。トランプ大統領は共和党所属であるが、共和党内部の既存の政治家たちからは嫌われている。そのことが如術に表れている。トランプ大統領は既存政治に対するアメリカ国民の不満に乗って当選した。従って、共和党内部の主流派、エスタブリッシュメントもまた敵となる。そうした中で大統領選挙を戦わねばならない。

 トランプ大統領は討論会で混乱を招いており、敷衍していれば、トランプ大統領がアメリカ社会に分裂と混乱を招いている。そのような主張の先に、今回の討論会中止がある。これに対して私が言いたいのは、トランプ大統領がアメリカに分裂と混乱をもたらしたのではない、アメリカの分裂と混乱がトランプ大統領を生み出したのだ、ということだ。

(貼り付けはじめ)

討論会運営委員会は10月15日のトランプ・バイデン討論会を中止(Debate commission cancels Oct. 15 Trump-Biden debate

ジョーダン・ウイリアムズ筆

2020年10月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/520448-debate-commission-cancels-oct-15-debate

大統領選挙候補者討論会運営委員会(CPD)は10月15日に予定されていたトランプ大統領と民主党候補者のジョー・バイデンとの間での2回目の討論会を正式に中止した。この決定は、両候補者が共に討論会の形式についての論争が起きている中で、討論会開催予定日の別のイヴェントに出席する計画であることを示唆した後で発表された。

トランプ大統領が新型コロナウイルス陽性という結果を受けての医療面からの懸念から討論会運営委員会が討論会をヴァーチャル形式に変更するという計画を立てそれに対してトランプ大統領が拒否を表明したことで、「次週の討論会は変更された形で実施されるのかどうか」という懸念と論争が起きた。今回の中止決定発表はこうした論争に終止符を打った。

バイデン選対は最初討論会に参加する意思を継続して持っていると主張していたが、木曜日午後になって、トランプ大統領がヴァーチャル形式の討論会に参加しないということになり、バイデン選対はABCニュースが主催するペンシルヴァニア州でのタウンホールミーティング形式のイヴェントに出席する計画であることを発表した。

金曜日夜に大統領選挙候補者討論会運営委員会は声明を発表し次のように述べた。「10月15日に討論会が開催されないということは明確だ。そして、討論会運営委員会は10月22日に開催予定の最後の大統領候補者討論会の準備に関心を向けている」。

運営委員会は10月22日に予定されているテネシー州ナッシュヴィルにあるベルモント大学での討論会は開催予定であり、開催にあたっては医療的安全について考慮し、コロナウイルス対策ガイドラインを遵守すると述べている。

トランプ選対は来週開催予定の討論会は元々の計画通りに人々が出席しての形式にするようにとこれまでずっと主張してきた。しかし、先週になってトランプ大統領の新型コロナウイルス陽性という診断が下され、それ以降にトランプ大統領が陰性になったという検査結果の証明が出ていないことで、運営委員会の担当者たちは人々が出席する形での討論会の開催に疑問を呈してきた。

トランプ選対の広報担当ティム・マータウは本誌のコメント依頼に対して次のように答えた。「10月15日にマイアミで開催予定の討論会を中止する医療的な理由は存在しません。それは大統領が既に健康であり、討論会の準備ができているからです。ジョー・バイデンが元々同意していたように、大統領選挙候補者討論会を3回もすべきではないなどと考える理由は存在しません」。

マータウは続けて次のように述べている。「バイアスのかかった委員会がバイデンを守り続けることを止めるべきです。そして、大統領選挙の候補者2人の言葉を有権者が聞くことを妨げることを止めるべきです」。マータウは更に選挙戦は、「委員会の割り込みなし」にバイデンとの討論会がなされるようにすべきだとも述べている。

本誌はバイデン選対にコメントを求めているところだ。

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ボブ・ドールは委員会に属する共和党員たちが誰もトランプを支援していないと主張(Bob Dole claims no Republicans on debate commission support Trump

ジョーダン・ウイリアムズ筆

2020年10月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/520442-bob-dole-claims-no-republicans-on-debate-commission-support-trump

共和党所属の連邦上院議員(カンザス州選出)であったボブ・ドールは金曜日、ツイッターに投稿し、大統領選挙候補者討論会運営委員会の共和党側委員は誰もトランプ大統領を支援していないと主張した。

ツイッターへの投稿は次のようなものだ。「大統領選挙候補者討論会運営委員会は超党派であり、共和党側と民主党側の委員が同数所属している。私は委員会に属する共和党側の委員全員を知っており、そのほとんどは友人だ」。ドールは続けて、委員の誰もトランプを支援していないことを憂慮していると述べた。「バイアスがかかった討論会運営委員会は不公平だ」。

ドールのツイートは、トランプ大統領と側近たちが繰り返し委員会を非難している中で投稿された。大統領たちは、委員会は無党派であると述べているが、実際には民主党の候補者ジョー・バイデンを助けようとしていると非難している。こうした主張は、これから実施される予定の大統領選挙候補者討論会においていくつかの変更を委員会が実施しようとしている中で、起きている。

運営委員会の役員会議には共和党所属で連邦上院議員を務めたジョン・ダンフォース(モンタナ州選出)とオリンピア・スノウ(メイン州)が含まれている。存命中の大統領経験者は全員が名誉共同議長となっている。

トランプ大統領は木曜日、運営委員会が10月15日の討論会をヴァーチャル形式にするという決定について、これはバイデンを守るためのものだと述べた。今回の決定はトランプ大統領の新型コロナウイルス陽性の中でなされたものだ。

トランプ選対の責任者ビル・ステピエンもまた木曜日の決定を批判した。彼は「ジョー・バイデンを必死に守ろう」とするための「病的な」試みだと発言した。

最初の討論会でバイデンと司会者だったクリス・ウォレスに繰り返し割り込んだことを受け、運営委員会はより秩序立たせるために変更をしようとしているが、それを受けて、トランプ選対はこうした主張を繰り返してきた。トランプ選対は運営委員会がこうした変更をバイデンのためにやっていると非難している。

この時、ステピエンは、運営委員会は非党派の組織ではない、なぜなら委員会のメンバーの一定数が民主党側に肩入れし、トランプ大統領に対する批判を表明しているからだ、と主張した。

トランプ選対の上級顧問ジェイソン・ミラーは様々な変更は「単純にバイデン選対とバイデン選対を支援する運営委員会のメンバーたちによって進められた」と述べている。

本誌はバイデン選対にコメントを求めている。

(貼り付け終わり)

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領とメラニア夫人が新型コロナウイルス陽性反応で自主隔離、トランプ大統領は軽い症状が出てウォルター・リード陸軍病院に入院し、大統領として病院で執務を行うというニュースが駆け巡った。このことについては後ほど、記事をご紹介するが、今回は大統領選挙第1回討論会についての記事をご紹介したい。このことはすっかり吹き飛んでしまったようではあるが、かなり異例な討論会であったことは間違いない。

 2020年大統領選挙の民主、共和両党の候補者による第1回討論会がオハイオ州クリーヴランドで開催された。90分間の討論会は、プロレスの試合だった。

年齢の高い人たちにしか分からないたとえになって恐縮だが、ジャイアント馬場対タイガー・ジェット・シン(アブドラ―・ザ・ブッチャーでも可)のベルトをかけた試合で、シンが最初から大乱闘で、ジャイアント馬場は何とかルールを守って試合をしようとするも、シンの狂気攻撃で流血し、最後は怒って場外乱闘、両者リングアウトで無効試合、というところだった。どちらが勝った、負けたということは言えない試合だった。

確かに多くのテレビ局で討論会後に視聴者にアンケートを実施し、CNNでは「68%対27%」、CBSでは「48%対41%」でバイデン勝利ということになった。混乱を招いたのはトランプということで、そういう判定になったのだろう。
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トランプが場外乱闘を仕掛けてくるのは明白であり、それに対して、バイデンが冷静に対応しようとしていることは明らかだった。トランプはバイデンを苛立たせて失言を引き出そうとしたが、これはうまくいかなった。

バイデンはいわゆるカメラ目線で、有権者に語り掛けるという方式を取った。私はこれに対して違和感を持った。発言の際に何度も下を向いて原稿を確認するということが繰り返され、その間にトランプに割り込みを許していた。私にはバイデンの姿が弱弱しく映った。「いじめられっ子の優等生対いじめっ子のガキ大将」という構図で、バイデンの弱さが際立つことになってしまった。カメラ目線は何か救いを求めるような姿に映った。「クラスメイトのみんな、助けてよ」という風に。これで弱さが際立つことになってしまった。
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 面白いことに、アメリカ国内のスペイン語放送専門チャンネル「テレムンド」のアンケートでは、今回の討論会の勝者はトランプという判定の方が多かった。これは、バイデンの弱さを見て取った、スペイン語を話す視聴者が多かったということになる。バイデン陣営は、スペイン語話者を含む(ヒスパニックと呼ばれる)、ラティーノ系への働きかけを強めているが、テレムンドのアンケートの結果はバイデン陣営にとっては歓迎できないものである。

 CBSテレビは討論会の視聴者に対して「どのように感じたか」という質問をしたところ、69%が「イライラした(annoyed)」、31%が「面白かった(entertained)」、19%が「悲しかった(pessimistic)」、17%が「情報が多かった(informed)」という結果が出た。
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 「面白かった」「悲しかった」という反応は私が感じた反応そのままである。そもそも討論会だと思うから間違いで、プロレスの試合なのだと思えば、面白いという反応は当然に出てくる。また、悲しかったという反応も、いろいろなことを考えればそう思うだろうなということになる。こんな人たちしかアメリカ大統領になれないのか、国内問題だけを語るだけで、アメリカの世界唯一のスーパーパワーの矜持はどこに行ったのか、という思いを持った視聴者も多かったことが推察される。

私は、討論会を見ていて、「アメリカも終わっていくなぁ」という感想を持った。まず、討論会のテーマに外交も防衛も貿易も入っていなかった。全てが国内問題であった。アメリカは世界の超大国であり、アメリカ大統領は世界の指導者のはずだ。しかし、アメリカ以外の国々に住む人々に何もメッセージを発することができなかった。

また、数多くの人々が選挙戦に参加して、残り2人の候補者となった訳だが、この2人の70代の高齢者たちが元気なのは結構なことだが、何ら生産的な行為も出来ていないということはどういうことだ、民主党側はもっとましな候補者を立てることができなかったのか、ということを思えば、こりゃ駄目だ、ということになった。

もし私がアメリカ国民ならば、今回は棄権しただろう。アメリカ国民以外の日本人としてならば、トランプ大統領の方がまだまし、と考えている。しかし、自分がアメリカ国民ならば、「こんな人たちしか大統領になれないのか」と思えば、悲しさと呆れで棄権してしまうだろう。CBSの調査で「悲しかった(pessimistic)」と答えた19%に私は同調する。

今回の大統領選挙では全米各地の投票所や開票所では、トランプ支持派と反対派が集まって、小競り合いや衝突が起きるだろう。そのために軍隊まで派遣されるということになるだろう。アメリカはデモクラシー(民主政治体制)の理想を世界に輸出するという使命を自認してきた。しかし、その本家本元で衝突というような事態が起きれば、アメリカの掲げた理想は崩れてしまう。

「デモクラシーは最善ではないが、次善の体制だ」という理念が壊れた先に何があるのか。中国の姿がますます大きく見える。20世紀末、「歴史の終わり」という議論で、「民主政治体制と資本主義が最終的に勝利した」という主張が華々しかった。あの時代は幸せだったのだとノスタルジーを感じている。民主政治体制も資本主義も変化し、衰退し、崩れ去っていく運命にあるのだろう。

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トランプ対バイデンの討論会での衝突についての5つのポイント(Five takeaways from Trump-Biden debate clash

リード・ウィルソン筆

2020年9月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/518893-five-takeaways-from-trump-biden-debate-clash?__twitter_impression=true

トランプ大統領とジョー・バイデン前副大統領との間の耳ざわりで無秩序な衝突は、アメリカ国民に対して、自分の選択肢について検討するための第1回目の機会となった。ホワイトハウスをめぐる戦いは現在までのところ、安定的に推移してきている。

コロナウイルス感染拡大のために、両者はぎこちない、そしておそらくやりたくない握手をしなくて済んだ。握手ができていたとしても、その後の討論会もやはり叫び声からスタートしたことだろう。

ミズーリ大学政治コミュニケーション研究所所長ミッチェル・マキニーは討論会終了直後、「我が国の歴史において最も無秩序で、攻撃に満ちた大統領選挙候補者討論会だった」と述べた。

クリーヴランドでの衝突についての5つのポイントをこれから挙げていく。

(1)トランプはチャンスを逸した(Trump missed a chance

トランプは今年の大統領選挙の3回の討論会の一つを無駄にした。現在、全国規模、激戦諸州での各種世論調査において劣勢に置かれている選挙戦を討論会によってかき回すことができたのだが、そのチャンスを逸した。

トランプは、バイデンと司会者クリス・ウォレスの発言に対して、休みなく割り込みを続けた。このために討論会はまとまりがなく、発言が良く分からないようになってしまった。しかし、トランプがバイデンに対して連続攻撃を行っても、バイデンにダメージを与えることができなかった。

トランプは討論会の中でウォレスに次のように述べた。「彼じゃなくて、あなたと討論をしているかのようだよ。しかし、それでもOKさ。驚きはしない」。

その後、バイデンを馬鹿者と呼んだ。トランプは「君に部分などどこにもないけどね、ジョー」と述べた。

トランプ大統領は、前任者たちに比べて、自身の大統領としての業績を挙げていくという伝統的な手法に頼らなかった。そして、トランプ大統領の熱狂的な支持者たちは、トランプ大統領がいつも通りに通常の政治のやり方を破壊することを支持している。しかし、トランプ大統領の相手に一撃を与えるパフォーマンスによって、トランプ大統領が選挙に勝利するために必要な有権者たちを説得することができなかった。

11月の選挙について構想を練っている共和党関係者たちは、トランプ大統領が自身の熱心な支持者たちにだけ集中していることに不満を募らせた。

しかし、2016年の大統領就任式以来の最大の聴衆を前にして、トランプは火曜日の夜を再びその少数の人々にだけ語りかける結果となった。

ミシガン大学の討論会担当部長アーロン・コールは次のように述べた。「トランプ大統領は二期目に向けて楽観主義と前向きな姿勢を促すことで、穏健的な有権者、都市部郊外の住む有権者たちを自身の支持に動かす必要がありました。しかし、トランプ大統領が示したのは、この国で起きている犯罪と人種間の緊張関係についての悲観的な将来でした」。

(2)バイデンは冷静さを維持した(Biden kept his cool

これまでの数カ月、民主党系のストラティジストたちは、バイデンが冷静さを失い、トランプの罠に引っかかるってしまうのではないか、特に彼の息子ハンター・バイデンに話が及んだ時にそうなるのではないかという懸念を持っていた。

トランプはハンター・バイデンを標的にして攻撃を仕掛けてきたが、これはここ数カ月の共和党が仕掛けてきたものと同じだった。ハンターのウクライナのガス会社とのかかわりから他国での投資事業についてまで攻撃されてきた。しかし、トランプは新しい深みにまで達した。彼はハンターの過去の薬物使用に踏み込んだ。

バイデンは、2008年から2020年までの間に、2度の副大統領候補者として一対一の討論会を経験しているヴェテランであり、また民主党大統領選挙予備選挙で更に多くの討論会を経験してきた。バイデンは今回の討論会で穏やかさを保っていたが、トランプの退役軍人と現役軍人たちを馬鹿にする発言を取り上げた時には怒りをにじませた。

彼の末息子について話が及ぶと、この致命的となるはずだったパンチをバイデンはうまくかわして、次のように述べた。

「私の息子は、多くの人々と同じく、アメリカ国内の多くの人々と同様に、麻薬使用に関する問題を抱えていました」。

マキニーは次のように述べた。「今晩の討論会で、ジョー・バイデンは大きな失言も失敗もしませんでした。もしそのようなことがあれば、トランプは、バイデンが年をとり過ぎていて、大統領を務めるのに不適格だと宣伝したことでしょう」。

(3)バイデンのカメラに向かい姿勢についての戦略(Biden’s to-camera strategy

候補者2人がそれぞれどこに目を向けていたかで、大きな違いがあった。

トランプは演壇につかまって寄りかかり、バイデンに目を向けて、攻撃の機会をうかがっていた。

バイデンは繰り返しカメラを見て、家でテレビを通じて視聴している有権者たちに発言を行った。

「皆さん、おうちにいらっしゃると思いますが、どれだけの数の皆さんが今朝起きて、テーブルの近く置いてある誰も座ることのない椅子に目を向けたことでしょう?その椅子に座るはずの人は新型コロナウイルスのために亡くなったのです」とバイデンは問いかけた。その後、バイデンはトランプについて次のように語った。「彼は皆さん方、アメリカ国民が必要としていることについて話したがりません」。

トランプは攻撃的な割り込みの勢いを鈍らせていったが、バイデンの発言は冴えを見せるようになっていった。上院議員を長く務め、自分を激しく非難する人物さえも友人と呼ぶバイデンが減益大統領を「馬鹿者」や「道化師」と呼んだ。そして、トランプの終わることのない一人語りに対応して、頭を振りながら「いいか、口を閉じていろよ」とさえ言い放った。

民主党予備選挙での討論会では、この種の発言はバイデンに対しての攻撃となって返ってきたが、トランプに対してだと、驚きは少なった。

(4)討論会によって多くの人の考えが変わることはない(The debate is unlikely to change many minds

火曜日夜のごたごたによってまだ投票する候補者を決めていない有権者の数を減らしたが、その数はかなり少ないものである。

実際のところ、実際に投票に行くと考える有権者の数を減らすような結果になることは珍しい。共和党系の世論調査専門家フランク・ランツは討論会の開催時間中に、インターネット上で複数の有権者に集まってもらってグループ討論をしてもらった。その中で、誰に投票するかを決めていなかった有権者の中から、「自分は投票に行かないと決めた」と発言する人たちが複数出た、とランツは述べている。

ランツはツイッター上に次のように書きこんだ。「私は棄権するという有権者の反応を生み出すような討論会をこれまで見たことはありません」。

選挙戦の最終盤になって行われる討論会で有権者の考えが大きく変わるということはあまり起きていない。討論会の専門家たちは、人々がテレビをつけて討論会を見るのは、自分たちが選んだ候補者についてさらに支持の気持ちを高めることが必要なのでその補強のためだと指摘している。どちらの候補者に入れるかを決めるためではないのだ。

共和党全国委員会の広報部門の責任者を務めたダグ・ヘイは「大変に醜い討論会でしたが、討論会の中で選挙戦の基本的な流れを変わるようなことは何も起きませんでした。トランプは後れを取っており、バイデンを倒すためには、パンチを当てる必要がありましたが、彼にはできませんでした」と述べている。ちなみにヘイはトランプを支持していない。

火曜日の討論会の前でも、各種世論調査の結果を見ると、誰に投票するかについてまだ決めていないという有権者は少なかった。トランプ大統領に何か得意技があるとするならば、それは、世論を自分の言葉で巧みに表現することである。ホワイトハウスの現在の主であるトランプに対して、大変に好意を持つか、大変に嫌悪感を持つか、それ以外の艦上を持つアメリカ人はほとんどいない。

カタウバ・カレッジの政治学者マイケル・ビッツアーは次のように述べた。「1時間15分の間に常に割込みがある討論会をたとえうまく管理できていたとしても、これから説得可能な有権者はほとんどいません。その数少ない説得可能な有権者も、今回の討論会では、何も考えることができなくて、テレビを途中で消したことでしょう。既に誰に投票するかを決めているアメリカ人の大多数の中で、今回の討論会で投票する候補者を変えるような人はいるだろうかと疑問に思っています」。

(5)討論会が再び開催されるだろうか?(Will there be another debate?

討論会の最後がぐちゃぐちゃで終わり、上記の疑問が人々の間に生まれたけれども、この問いに対する答えは「イエス」である。

バイデン選対の副責任者ケイト・べディングフィールドは記者たちの電話取材に対して次のように答えた。「皆さん、私たちはこれからも討論会をやりますよ。これまでとはどれくらい違うやり方になるかについては分かりませんが。私たちは討論会には必ず出席すると申し上げます」。

ここ数カ月、バイデン陣営は早い段階から、頻繁に、記録に残る形で、バイデンは討論会の壇上でトランプと相まみえると発表してきているのに、トランプ陣営はバイデンが討論会に出てくるのかどうかという疑問を呈してきた。

トランプが討論会に出てこないということの方があり得そうだと人々は考えていた。2015年の共和党大統領選挙予備選挙の討論会で、トランプは司会者の選定に抗議するということで実際に討論会を欠席した。今年の大統領選挙に残った最後の2人の候補者のうち、実際に討論会を欠席したことがあるのはトランプだ。

しかし、実際のところ、どちらの候補者も、10月15日と10月22日に予定されている残り2回の討論会に出ない方が良いという考えにはならない。

トランプは現在のところ、全国規模と激戦諸州での各種世論調査でバイデンを追いかける展開になっている。そのために選挙戦を彼に有利な方向に再編しなければならない。そして、そのための時間は残されていない。バイデンは、彼自身の精神的な強さに疑念を呈するトランプに反撃をしなければならなかった。彼は保守的な言動から時に外れることがあっても、それを守り、支持者を増やさねばならない。

討論会はこれからも続くだろう。アメリカにその準備ができているかいないかに関係なく。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 宣伝になるが、『ザ・フナイ』2020年11月号に今回のアメリカ大統領選挙について拙文を掲載していただいた。このことは前々回のブログで紹介した。拙文の中で私は、「民主党のジョー・バイデンがかなり有利だと報道されているが、それは間違いだ」という点から、その論拠となる世論調査の結果を紹介するなどして、トランプ大統領再選がある、ということを主張した。
thefunai202011
ザ・フナイvol.157(2020年11月号)

 今回、ご紹介する記事は、偶然にも拙文の内容とよく似た内容になっており、私の主張が独りよがりの、論拠のないものではない、ということを伝えたいと思い、このブログでご紹介することにした。

 アメリカでも日本でも「全国規模の世論調査の結果で、民主党のジョー・バイデン前副大統領が共和党の現職、ドナルド・トランプ大統領を10ポイント近くリード」という報道がなされ、「バイデンが圧勝だな」という雰囲気作りがなされている。しかし、そもそも全国規模での世論調査で判断するのは間違いのもとだ。そのことは、2000年の大統領選挙、2016年の大統領選挙で、アル・ゴア、ヒラリー・クリントン(共に民主党)が全国規模での得票総数で勝利したのに、選挙人獲得数で敗北したことでも明らかだ。

 アメリカ大統領選挙は各州の獲得票数が多かった候補者が選挙人を総取りするという形式で行われるのだ(メイン州とネブラスカ州はそうではない)。単純に全米での得票総数で決まる訳ではない。だから、各州の動きを見ておかねばならない。しかし、選挙人が配分されている全米50州+ワシントンDCすべてを見る必要はなく、激戦州と言われる10程度を見ていればよい。

 下の記事では、「トランプの意外な強さ」が選挙戦の様相を複雑化させている、つまり、バイデンが勝利すると言いきれない要素がある、と述べている。それが、「経済運営に関してはトランプの方の評価が高い」「トランプ支持者は熱心な人が多いが、バイデン支持者はそうではない」というものだ。私も拙文(まだ暑い8月上旬の時点で書いた)でこの2点の重要性を取り上げた。

 バイデンが圧勝ということはないし、大統領選挙は終わってなどいない。

 あと1時間もしないで第1回目の討論会がオハイオ州クリーヴランドで開催される。『ニューヨーク・タイムズ』紙が、トランプが税金を少ない金額しか払っていなかった、もしくはラっていなかったという報道をした。討論会でのテーマは既に決まっていることは前回ご紹介したが、この税金問題を取り上げざるを得なくなる。これは、他の重要な問題についての時間を削るためのものだ。特に経済問題について時間を使わないようにするためのものだろう。

(貼り付けはじめ)

メモ:トランプの強さが選挙の様相を複雑化させている(The Memo: Trump's strengths complicate election picture

ナイオール・スタンジ筆

2020年9月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/517893-the-memo-trumps-strengths-complicate-election-picture

ジョー・バイデン前副大統領はホワイトハウスをめぐる戦いで明らかにリードをしている。しかし、民主党の候補者にとっていくつかの問題が表面化しつつある。

トランプ大統領は、伝統的に多くの有権者にとって最重要の問題である、経済運営の点で、劣勢をはね返す強さを見せている。多くの世論調査の結果で、トランプ支持者たちはバイデン支持者に比べて熱心に支持しているということも分かっている。

大統領候補者同士による討論会は3回実施される予定で、その日程も近づいている。来週火曜日に第一回目の激突が予定されている。これはバイデンにとって最大の試練となるだろう。また、バイデンのラティーノ系有権者からの支持についても疑問が出ている。ラティーノ系有権者は重要な激戦諸州の多くでカギを握る存在だ。

民主党内部で希望となっているのは、多くの物事が発生しており、それらのためにトランプが二期目を勝ち取ることが難しくなっているということだ。

アメリカ国内における新型コロナウイルスによる死者数は今週火曜日には20万を超えた。経済は最低の状態から回復しつつある。しかし、全国規模での失業率は通常よりも高いままであり、8月の時点で8.4%を記録した。

トランプ大統領の個人的な性格については、アメリカ国民から支持を得られるよりも、見放されることの方が多いという状態である。各種世論調査の数字によると、トランプ大統領は多くの問題、特に人種関係で有権者から厳しい評価を下されている。トランプ大統領の人種関係についての言動などは状況を悪化させており、それが選挙に影響を与えている。

今週水曜日に、ケンタッキー州在住のアフリカ系アメリカ人女性ブレオンナ・テイラーが今年3月に銃撃で殺害された事件に関連して、警官が1人だけが訴追されたということを受け手、更に多くの抗議活動が行われた。この警官はテイラーの殺害による告訴ではなく、テイラーの近隣住民を危険に晒したという件で訴追された。

しかし、これらトランプに対して逆風となるカードが多く出ている状況ではあるが、民主党内部には、党内に過度の楽観論が広がっていることに懸念を持っている。

ある民主党系のストラティジストは率直に次のように述べた。「選挙戦は既に終わりで、トランプは負けだろうと言う人たちがいるが、私はその時にこう考える。“一体何を言っているんだ?”と」。

最新の『ワシントン・ポスト』とABCニュースの共同世論調査の結果が今週水曜日に発表されたが、これは民主党関係者の神経を刺激した。世論調査が実施されたフロリダ州とアリゾナ州でトランプが僅差ではあるがリードしているという結果が出たのだ。

トランプはフロリダ州の選挙に必ず行くと答えた有権者の間で、バイデンに対して4ポイントのリードを確保し、アリゾナ州では1ポイントのリードであった。両方の結果は共に誤差の範囲内の数字ではあった。ワシントン・ポスト紙は、「これら2つの世論調査の結果は他の機関が行った同じ2つの調査の結果に比べて、トランプ大統領にとってより良いものとなった」と評価している。

しかし、こうした結果は、トランプの熱狂的な支持者たちに希望を与える、表面的に報道される数字だけでのことではない。

両州の有権者はトランプに対して経済運営について比較的高い評価を与えた。アリゾナ州では、登録済有権者のうちトランプの経済運営を評価したのは57%で、42%は評価しなかった。フロリダ州では、53%がトランプ大統領の経済運営を評価し、43%が評価しなかった。

両州における経済運営に関するトランプへの評価の数字は、両州におけるトランプの大統領としての仕事への支持率の数字よりもかなり高い数字となっている。

トランプに投票するつもりの有権者でそれを「隠して」おり、世論調査の調査員との面談で自身の支持候補を明確にしたくないという人たちがいる場合、彼らの存在は、トランプ大統領の2期目で自分たちの経済状態が更に良くなる考える人々の中に見つけることができるだろう。

ワシントン・ポスト紙とABCニュースの共同世論調査で、経済運営に対する評価に関しては他の世論調査の結果でも示されている。全国規模で選挙に必ず行くと答えた有権者を対象にした、キュニピアック大学の世論調査の結果が今週水曜日に発表されたが、トランプは経済に関して僅差であるがバイデンを49%対48%で上回った。トランプ大統領の大統領としての支持率は低いままで、支持率は43%、不支持率は53%だった。

キュニピアック大学の世論調査の結果では、バイデンはトランプに10ポイントの差をつけている。これが11月の選挙でも同様であれば、選挙の結果はほぼ地滑り的にバイデンの勝利ということになる。21世紀の大統領選挙において、総得票数で最も差が開いたのは2008年の大統領選挙であった。この時にはバラク・オバマはジョン・マケインに7ポイントの差をつけて勝利した。

また、有権者の熱意はトランプにとって希望が持てる、もう一つの指標である。アリゾナ州とフロリダ州におけるワシントン・ポスト紙とABCの共同世論調査では、トランプ支持の有権者の中で、「とても熱心だ」と答えた人の割合は、バイデンの支持者の中での熱心な支持者の割合に比べて、かなり高いことが分かっている。熱心な支持者の割合の差は、アリゾナ州では22ポイントに達し、一方でフロリダ州ではそこそこの7ポイント差となっている。

民主党の一部には、「バイデンがトランプに対して大差をつけていることを強調し過ぎないことが大事だ」とする声もある。

民主党系のストラティジストであるポール・マスリンは、2012年の共和党候補者だったミット・ロムニーとロムニー選対は、有権者の熱意によって当時のオバマ大統領に対して勝利を収めることができるだろうと確信していたと述べている。マスリンは次のように述べている。「私たちが学んでいることは、熱意というものを測定すること、そしてそれに頼ることは大変に難しいということです。しかし、ロムニー選対が説明していなかったのは、選挙戦において重要である5つか6つの州で、オバマ陣営は素晴らしい組織を持っていたということです。熱意という点では、10人のうち8人が選挙に行くと答えていたのですが、実際には全員が投票に行っていたのです」。

トランプの分断を招きやすい性格と現在の通常ではない状態は、火曜日の討論会で多くの視聴者がテレビの前に座ることになるだろうということが容易に予測される。トランプはバイデンの心を乱そうとするだろう。そして、トランプ選対は民主党側のミスにつけこむだろう。しかし、バイデンが無傷で切り抜けることができれば、これからの選挙戦は彼に有利に進むことになるだろう。

共和党系のストラティジストであるマット・ゴーマンは、今年の大統領選挙討論会はこれまでに比べて重要性が低い、その理由は有権者の多くは既に誰に投票するかを決めていると述べている。ゴーマンは、金曜日に亡くなった最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグの後任選びを巡る戦いは、民主、共和両党の基礎的な支持者たちの熱意で選挙の結果が決まってしまう場合には、重要な戦いになるとなるだろうと主張している。

ゴーマンは次のように述べている。「民主、共和両党の支持者で、候補者たちによって説得されるであろうという人はほとんどいません。私が最高裁をめぐる戦いがかなり重要である考える理由はこれです。左派はトランプ大統領に刺激を受けて活発化しています。しかし、右派は最高裁判事の構成のためにも大統領選挙がいかに重要かということを認識しています」。

選挙まで6週間に迫り、バイデンに有利な状況は明白だ。しかし、トランプ大統領が除外されているということでもないのだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 2020年アメリカ大統領選挙は最終盤を迎え、これから大統領選挙候補者討論会が3回、副大統領候補者討論会が1回開催される。バイデンが1対1の討論会を乗り切れるかどうか、が注目される。

トランプ攻撃も勢いを増しており、バイデンの応援団『ニューヨーク・タイムズ』紙では、トランプが税金を少額しか払っていなかった、全く払っていなかったという報道がなされた。最終盤で、バイデン支持の伸びに勢いがなく、トランプが重要州で追い上げている中で、なりふり構わない攻撃となっている。しかし、バイデンがそうした攻撃の勢いを活かせていない。

 新型コロナウイルス感染拡大は大統領選挙にも影響を与えている。有権者の関心は新型コロナウイルス感染拡大対策と経済にある。このブログでもご紹介したが、新型コロナウイルス感染拡大対応ではバイデンの方がうまくやるだろうという評価があり、一方で経済対策ならばトランプだという声が多い。

 アメリカ国内での新型コロナウイルス感染拡大によって死者数が20万を超えた。日本では人々の努力もあり、他国に比べてかなり低く抑えられているように思われる。また重篤化して死亡する人も少ないように思われる。アメリカで死者数が多いのはどうしてなのか、ということは検証されるべきことだが、私がアメリカに住んでいた経験から考えると、やはり国民皆保険ではない医療体制とそれに伴う生活習慣病を持つ人の数が多いということが挙げられると思う。

 新型コロナウイルス感染拡大においては、糖尿病や心臓疾患などの生活習慣病を持つ人々の重篤化率が高くなるという研究結果が出ている。こうした病気を持っていても、常日頃から節制し、きちんと治療や投薬をしていれば、重篤化する率は低くなると考えられる。

 アメリカでは無保険という状態の人も多く、また医療にお金がかかり、慢性的な疾患を放置してしまう人も多いのではないかと考えられる。そうなると、こうした病気をコントロールできない状態になり、新型コロナウイルスに感染すると重篤化して死亡してしまうということになるのだろうと思う。

 新型コロナウイルスはアメリカ型の国民皆保険ではない医療制度の問題点を突いているのではないかと思う。そして、これを解決するためには一朝一夕にはいかない。国民皆保険を社会主義的だという風潮も根強く残っている。

 経済については新型コロナウイルス感染をいかにしてコントロールしながら、人々の社会科活動をどれくらい以前の状態に戻すかということになる。これはアメリカだけにとどまらず、全世界の国々にとって共通の重要な課題である。

 更に言えば、最高裁判事の人事は左派、右派両方にとって重要だ。そのための大統領選挙ということでもある。同性愛結婚や妊娠中絶など社会的に重要な問題について、「アメリカ合衆国憲法にかなっているかどうか」ということを判断するのが連邦最高裁判所であり、9名の判事たちによる採決で判決が決まることになる。この時に、保守的な考えを持つ判事が多いのか、リベラルな人が多いのかで結果が変わってくる。今回の大統領選挙でもこの点は争点ということになる。

 もうすぐ開催される第1回の討論会ではどのようなことが起きるのか、注目される。

(貼り付けはじめ)

第1回目の大統領選挙候補者討論会はコロナウイルス、最高裁判事を取り上げる(First presidential debate to cover coronavirus, Supreme Court

モーガン・チャルファント筆

2020年9月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/517580-first-presidential-debate-to-cover-coronavirus-supreme-court

トランプ大統領と民主党候補者ジョー・バイデンは、新型コロナウイルス、最高裁についての質問と、大統領と副大統領在職中の記録について質問されることになる。来週、2020年大統領選挙における第1回の討論会で顔を合わせることになる。

フォックス・ニュースのアンカーであるクリス・ウォレスが第1回目の討論会の司会者である。ウォレスは火曜日、議題のリストを発表した。討論会では、経済、アメリカの各都市の人種と暴力、選挙が誠実に行われるかについての問題を取り上げるとウォレスを述べた。

討論会は9月29日に、ケイス・ウェスタン・リザーヴ大学とクリーヴランド・クリニックの共有キャンパスで開催される。有権者たちに対して、候補者たちを判断する機会を与えることになる。選挙まで2カ月を切った現在、バイデンはトランプを全国規模と各激戦州の各種世論調査でリードしている。

バイデンは、トランプ大統領のコロナウイルス対応について批判している。現在、アメリカ国内でのコロナウイルス感染による死者数は20万となった。バイデンはトランプによるコロナウイルス対応に対する批判を選挙戦の柱としている。トランプはウイルス対応について防衛をしつつ、暴力と破壊について特に取り上げている。ここ数カ月、アメリカ各地で、人種による不正義に対するデモ活動が行われ、それに伴って暴力と破壊が発生している。

トランプ、バイデン両候補者は最高裁についての質問に答えることになる。討論会の前に、トランプは欠員が出た最高裁判事を発表することになっている。金曜日にルース・ベイダー・ギンズバーグ判事が在職のまま亡くなり、空席となった。

これ以降の大統領選挙は10月15日と10月22日に開催される。ペンス副大統領とカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)による、副大統領候補者討論会は10月7日に開催される。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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