2014年4月にアメリカのオバマ・大統領が東アジアを訪問するという日程になっているようです。二週間前に「12月末の靖国参拝の影響で、4月のオバマ大統領の東アジアツアーで日本には立ち寄らないという話がある」という話を聞いていました。私は「まさかそんな。日本は同盟国ではないか」と思って、聞き流しました。


 そして、1月20日にTBSが以下のように報道しました。オバマ大統領の日本訪問が「国賓待遇」ではなく、「公式実務訪問」になったということです。天皇陛下との謁見や宮中晩餐会は行われないということです。2013年2月の安倍首相の訪米以降、日程の調整が続いていたということにも驚かされますが(アメリカの大統領の日程(一日一日)を貰うというのは大変なことなんだなと思いました)、やはり、昨年末に国賓待遇で調整が進んでいたものが、難しいということにあってレベルが格下げということにも驚かされました。


 前回のオバマ大統領の訪日は、2009年11月、2010年11月にそれぞれ、シンガポール、横浜で開催されたAPEC出席のついでという感じで実現しました。2009年大統領就任後の初来日時は、子供の時以来の鎌倉を訪問し、抹茶アイスを食べるパフォーマンスを行い、東京にあるサントリーホールで演説を行いました。2009年の訪日時は、皇居で午餐会に招かれ、天皇陛下に握手をしながら深々と頭を下げるオバマ大統領の写真が公開され、アメリカでも物議をかもしました。

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 2014年4月の訪日では、日本側がオバマ大統領を何とか国賓待遇で迎えたいとして、色々と動いていたようで、それが実現したところで急に実務訪問ということになり、宮中晩餐会もなく、天皇陛下も謁見なさらないということになりました。これは、駐日アメリカ大使館が出した声明で「失望した(disappointed)」という言葉を使われたことの重さがいみじくも証明されたことになります。こちらが「最高の待遇でお迎えしますのでどうぞいらしてください」とずっと言ってきていて、相手も「そうですか、じゃあお願いしましょうか」という感じであったものが、「いや、やはり結構です」ということになったというのは、やはり靖国神社参拝の影響があったと考えるのは自然です。


 私は、今回の国賓待遇ではない訪日に関して、ミシェル・オバマ夫人も難色を示したのではないかと思います。宮中晩餐会が開かれるとなると、やはり夫人のミシェルさんも大統領と一緒に訪日する必要が出てきます。せっかく夫人がいらっしゃって、今のところ訪日に関して健康面などで条件が合わないようには見えないのですが、訪日を嫌がるというのは、恐らく、頭の切れる弁護士同士であり、同性のキャロライン・ケネディ駐日アメリカ大使とも話をして、安倍晋三首相には会わないということをまず決めたのだと思います。そうなると、自分一人だけ国賓待遇で宮中晩餐会出席というのは天皇陛下・皇后陛下にも失礼になります。

 オバマ政権の特徴は、女性たちが外交の要職についていることです。スーザン・ライス国家安全保障大統領補佐官、サマンサ・パワー国連大使、そして、日本にはキャロライン・ケネディ大使がいます。こうした頭脳の切れが凄まじい女性たち、ミシェル夫人を加えますが、彼女たちに小手先の言辞は通用しませんし、本質を見抜かれてしまいます。彼女たちには安倍政権の本質が既に見抜かれ、日本に対する懸念は大きくなっていると思われます。こうしたことは前著『アメリカ政治の秘密 日本人が知らない世界支配の構造』(PHP研究所、2012年)に書きましたので、是非お読みください。


オバマ大統領が安倍首相に対して「消極的な態度」を示した訳ですが、これでもまだ、そんなに重要なことではないと言えるのかどうか、私は疑問を持っています。



 今のところは、「安倍晋三首相とその周辺」に対しての懸念だけで済んでいるのですが、キャロライン・ケネディ大使のツイッターやアメリカ大使館のfacebookのページにおける見るに堪えない、口汚い罵りの言葉が続いていくと、「日本人は安倍政権を支持している。確かにアメリカのジャパンハンドラーズがそのように仕組んだのだが、薬が効きすぎたようだ。反米がコントロールできなくなるようでは困る」ということになって、日米関係がもっとギクシャクしてしまうことになります。


 ですから、これ以上ギクシャクしないように、冷静になって、合理的な精神で、そして相手の立場に立って(外交は鏡のようなもので相手の態度は自分の態度を映しているものだという考えもあります)、自分たちを冷静に点検することが大事だと思います。それが安倍晋三首相やその周辺に出来るかどうか、私は不安を持っています。


(貼り付けはじめ)


●米大統領来日は国賓待遇にならず、靖国が影響か


2014年1月20日 TBS

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2107297.html


 4月に予定されているオバマ大統領の来日が、国賓待遇ではなく、宮中晩餐会も行われない方向であることが、JNNの取材で明らかになりました。アメリカ側が想定する日程では国賓待遇としての十分な時間がとれないためで、靖国をめぐる不協和音など、日米関係の昨今のあつれきが浮き彫りになった格好です。


  オバマ大統領の4月の訪日をめぐっては、去年2月、安倍総理が訪米した際、国賓として来日するよう要請し、去年の年末まではその方向で両国間で調整が続いていました。しかし、今回のオバマ大統領の日本滞在時間が当初の想定よりも短くなる見込みとなり、国賓として待遇する際、慣例となっている日本到着時の歓迎式典、天皇陛下との会見、宮中晩餐会などの行事を行うには十分でないとの判断から、国賓よりランクの下がる「公式実務訪問」とすることで最終調整が進められているということです。


 政府関係者によりますと、オバマ大統領のアジア歴訪をめぐっては、韓国にできるだけ長く滞在するよう朴槿恵(パク・クネ)大統領側が強く働きかけているということで、ここでも日韓のせめぎ合いが繰り広げられています。


 安倍総理の靖国参拝に関するアメリカの「失望」コメントやTPPの交渉難航など、日米関係がギクシャクしているだけに、政府としてはできるだけ国賓に準ずる形でオバマ大統領の来日を盛り上げたい考えで、検討が続けられています。(2011:12


(貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12