古村治彦です。

 

 アメリカ大統領選挙ですが、様相は、トランプ包囲網という形になっています。民主党が反トランプなのは選挙ですから当然ですが、トランプの女性に対する発言の録音テープが出て以降、共和党の連邦議員たちから、トランプへの支持撤回や選挙の辞退を求める声が相次いでいます。彼らとしては、選挙で無党派や女性票が大事なので、トランプ支持では勝てないという判断だ、ということを行動の正当化の論拠にしつつ、元々嫌いであったトランプを降ろす絶好の機会だと考え、このような行動に出ていると思います。

 

 しかし、これは、下の記事でもありますように一種の「クーデター」です。党大会で正式に指名された候補者を、法律違反や犯罪行為以外で引きずりおろそうという動きは異常なものです。こんな内紛劇を見せられて、共和党支持者たちはどう思うでしょうか。トランプを攻撃している連邦議員たちを応援するでしょうか。私は、共和党議員たちは、墓穴を掘ったと思います。彼らはトランプを落選させる動きに加担して、結局自分たちも落選の憂き目に遭うことになるでしょう。


 なぜなら、国民の一定数を占めるトランプ支持者にしてみれば、彼らはもはやヒラリーや民主党と一緒だからです。ヒラリーや民主党はまだ「自分たちはあなた方とは違いますよ」とはっきりと掲げて戦っていますが、同じ共和党で一度は支持したのに今頃になって撤回となると、裏切り行為となってしまいますから、ヒラリーや民主党よりも怒りの度合いが強くなります。

 現在のところ、大統領選挙の情勢は、現在(2016年10月14日)のところ8対2でヒラリーがリードという状況だと私考えます。私は個人として、トランプを支持したいと思いますが、現在の状況はかなり厳しいと判断せざるを得ません。
 

 共和党は内紛、内戦状態をアメリカ国民に見せてしまっていることで、大きなダメージを負うことになります。熱心な支持者以外の無党派層にはアピールしない政党となってしまいます。そうなれば、共和党の存続すら危うくなり、アメリカの二大政党制が大きく揺らぐことになります。これは全く別の話になりますが、二大政党制について考えると、制度自体が疲労を起こしているように思えます。そして、日本も「二大政党制を実現するために、小選挙区制を導入する」ということで、現在の選挙制度を導入しましたが、これも再考する必要があると思います。

 

 大統領選挙まで残り1カ月を切りました。また、第3回の大統領選挙討論会も19日に開催されます。この期間で、「オクトーバー・サプライズ」が起きるのかどうか、注目されます。

 

(貼り付けはじめ)

 

スクープ:トランプの選対本部長がライアンを政治的に破滅させたいと望んだ(Exclusive: Trump campaign CEO wanted to destroy Ryan

 

ジョナサン・スワン筆

2016年10月11日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/300445-exclusive-trump-campaign-ceo-wanted-to-destroy-ryan

 

ドナルド・トランプの選対本部長に就任した、右派のニュースサイト「ブライトバート」社の会長スティーヴ・バノンはブライトバート社のスタッフに対して、ポール・ライアン連邦下院議長(ウィスコンシン州選出、共和党)を政治的に破壊せよという命令を公然と下した。

 

ブライトバート社で働いているある人物によると、編集会議の席上、バノンは「ポール・ライアンは敵だ」と常に語っているということだ。

 

2015年12月、ライアンが下院議長に就任して数週間後、バノンはブライトバート社内のEメール(取材の過程で本誌が入手済み)の中で、2016年の春までにライアンを失脚させることがブライトバート社の中期的な目標だと書いている。

 

2015年12月1日のEメールで、ブライトバート社ワシントン支局長マット・ボイルはバノンに対して、ライアンが精神衛生システムの改善を計画しているという話は、ライアンに対して「橋を架ける」ための良い方法だと提案した。

 

バノンはこの考えを却下した。

 

バノンはボイルに対して、「私は精神衛生に関する問題については賛成なのだ。もっと別の良いネタを取ってくるように記者たちの尻を叩くんだ」と答えた。

 

ボイルは「分かりました。しかし、私たちがライアンを攻撃するためには良い手掛かりだと思います。私たちは長い長い戦いをやっているのですよ、スティーヴさん」と答えた。

 

バノンは、「長期的な目標は彼を貼るまでに失脚させることだぞ」と答えた。

 

バノンがライアンを嫌っていることは他の記事でも書かれている。しかし、ライアンを失脚させようとして期限まで決めている内容のEメールが出てきたのは初めてのことだ。

 

バノンは選対本部長としてトランプに助言を行っている。

 

2016年10月11日、トランプは、月曜日にこれ以上トランプを擁護しないとし、連邦下院選挙で出来るだけ多くの共和党員の当選に注力すると述べたライアン議長に対する一連のツイート攻撃を行った。

 

トランプは「我が党の脆弱で全く働きのない指導者、ポール・ライアンに対して、幹部会議で彼の党に対する忠誠心のなさに対して彼のスタッフたちが怒りの声を上げた」とツイートした。

 

それから2時間後に「忠誠心のないR(ライアン)は、不正を働くヒラリーよりも更に始末に負えない。彼らは私たちを包囲しているが、勝ち方を知らない。私が勝ち方を教えてやる!」とツイートした。

 

トランプ選対に近いある人物は、バノンはライアンを攻撃しないようにと主張し、トランプは自分自身の考えでライアン攻撃を行った、ということだ。

 

しかし、投開票日までの残り数週間において、バノンが重要な役割を果たすであろうことは否定できない。

 

ブライトバート社の元社員は、バノンは常にライアンに対して怒っていたと語った。

 

バノンは、ライアンをエリートのグローバリスト勢力の指導者と考え、彼らは移民と貿易のために国境を開くことでアメリカを外国に売り渡そうとしていると考えている。

 

この人物は、「バノンは、ポール・ライアンについてアレックス・ジョーンズ級の偏執的考えを抱いている」と語った。アレックス・ジョーンズは右翼のラジオ司会者で、トランプ支持のウェブサイト「インフォウォーズ」を運営している陰謀論者だ。

 

この人物はバノンについて次のように語っている。「バノンはライアンに対して罵詈雑言を発し続けている。彼は、エリート主義者たちが世界政府の樹立を目論んでいるとし、ポール・ライアンがジョージ・ソロスやポール・シンガーと共にこの陰謀に加担していると考えている」。

 

本記事掲載にあたり、バノンにコメントを求めたが、返事はなかった。バノンと面識がある保守運等のある高名な人物は本紙の取材に対して、バノンのライアンに対する怒りは驚くべきことではないと語った。

 

この人物は「共和党への大口献金者と党の活動家たちの多くはもともとトランプを支持していなかったが、今はライアン議長に大変失望している。それは、我が国が大変重要な時期を迎えているのに、党の候補者を支持しないなどと表明したからだ」と語った。

 

バノンに近い別の人物は、カリフォルニア州選出の連邦下院議員ダナ・ローラバッカーに多くの共和党員がついていくことになるだろうと予測している。ローラバッカーは、ポール・ライアンがこれ以上トランプを擁護しないと述べたことについて、ライアンを「臆病者」と呼んだ。

 

バノンに近いある人物は、「ライアンにとって重要なのはアメリカの労働者とつながることではなく、既得権を持つ政治家クラスの一員としてウォール街とつながることなのだ」と語っている。

 

バノンの考えについてこの人物は更に次のように語っている。「アメリカ政治の全ての機関は、不正に満ち、そしてアメリカ国民の利益に反するように活動しているということが明らかにされている」。

 

この人物は続けて次のように語っている。「トランプはこの悪の帝国とたたかうために選挙を戦っている。選挙マシーンは全力でトランプに立ちはだかっている。そして、ポール・ライアンは悪の帝国の象徴なのだ。ヒラリー・クリントンもまたそうなのだ。更には主流派メディアとその味方もそうなのだ」。

 

ワシントンの共和党エスタブリッシュメントは、トランプとライアンとの間の「戦争」がどれほど汚いものとなるか、恐れを抱いている。バノンはそのトランプの側に控えている。

 

バノンは、トランプを引きずりおろそうとする計画の首謀者であったが、計画は失敗したと確信している。バノンがこのように考える理由として、ライアンが共和党をポピュリズムから遠ざけたいとしていること、ライアンが2020年の大統領選挙で共和党の候補者となる可能性を高めたいとしていることが挙げられる。

 

2016年7月、ライアンは予備選挙でウィスコンシン州の実業家ポール・ニーレンと激しく戦い、それをブライトバートが詳しく報じた。ブライトバートは、ウェブサイトに「ライアンは偽善者だ。それはジェーンズヴィルにある彼の大邸宅の周囲に“境界の壁”を建設しているからだ。それなのに、彼はアメリカの南の国境に壁を建設することに反対しているのだ」という記事を掲載した。

 

ライアンはイスラム教徒の入国禁止というトランプの計画に反対した時、ブライトバート社はそれを偽善だとして激しく非難した。その理由として、ライアンはアメリカ入国に際して「宗教テスト」を行わないように求めているが、彼自身は子供たちを入学に際して宗教テストを課しているカトリックの学校に通わせていることを挙げている。

 

ライアンは共和党の予備選挙では地滑り的勝利を収めて、共和党の下院議員選挙候補者となった。しかし、この時、ブライトバートは彼の追い落としのための材料を真剣に集めていなかった。バノンはブライトバート社のエース記者ボイルをウィスコンシン州ジェーンズヴィルに派遣して、ライアンの選挙戦について記事を書かせている。

 

2016年10月10日、ブライトバートはトップで次のような記事を掲載した。「決別の言葉:トランプの卑猥な発言を録音したテープは、共和党内部の反ドナルドのクーデターの一部だ。その証拠として、ポール・ライアンがトランプと一緒に舞台に出る前にこのテープが出たのは“偶然”ではない」。

 

2016年10月11日、バノンは本誌に対して、「ブライトバート社は草の根捕手運動の世界において、槍の穂先のような存在になっている」と語った。

 

バノンと長年にわたり一緒に働いてきたある人物は、バノンが共和党のエスタブリッシュメントをどれほど破壊するかについて過小評価をすることは馬鹿げたことだと述べている。

 

バノンと仲違いをしてブライトバート社を去ったベン・シャピロは「バノンは破壊のための道具のようなものだ」と語っている。

 

彼は更に次のように語っている。「バノンは常にすべてを燃やし尽くしたいと思っている。彼はポール・ライアンを打ち倒すための方法を何とか見つけようとしている。そして、彼はそれを最終的には成功させるだろう」。

 

トランプの火曜日のライアン攻撃ツイートについて質問され、ライアンのスポークスマンは次のように答えた。「ポール・ライアンは残り1カ月、民主党を倒すことに集中する。選挙を戦う全ての共和党員もまた選挙に集中すべきだ」。

 

ライアンの報道担当ザック・ローディは、ライアンが月曜日に連邦下院の共和党議員たちに対して、「彼は大統領選挙について妥協してはいない」と明確に述べたことを強調した。

 

ライアンはトランプ支持を維持しているのかと質問され、ローディは「現在まで彼の立場についての更新はない」と答えた。

 

こうしている間にも、戦いは激しさを増している。

 

バノンに近いある人物によると、バノンがトランプのために立てた戦略は、トランプに反対している共和党とエスタブリッシュメント・メディアを「迂回」して、アメリカの労働者に直接語りかけるというものであった。

 

これが正確に何を意味するのかは不明確だが、トランプの戦略の中に、バノンの影響を見て取ることが出来る。それは、日曜日の夜の討論会に、ビル・クリントン元大統領に性的な被害に遭ったと主張する女性たちを招待することであった。

 

トランプ陣営は「危険」というタイトルのコマーシャルを放映し始めた。このコマーシャルでは、ヒラリー・クリントンが咳をし、階段を上がるのに人の手を借り、SUVに乗る直前に倒れた姿を流している。

 

残りの数週間で、ある一つのことは確かだと言える。それは、トランプがブライトバート社のスタイルで選挙戦を戦うだろうということだ。トランプの傍らにはブライトバートを率いてきた人物がいるのだ。

 

シャピロは次のように語っている。「これは映画のキング・コングのシーンのようなものだ。共和党はキング・コングを捕えて、鎖につないでステージに上げている。それを見ている観客たちは全員、キング・コングの大変な力を恐怖しながら、舞台上を見ている」。

 

シャピロは最後に「キング・コングが鎖を壊して自由になったら、観客たちを踏み潰し始める」と語った。

 

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メラニア・トランプはスキャンダル後にトランプと一緒にテレビ出演を拒絶した(Report: Melania refused to do joint TV appearance with Trump after tape scandal

 

ニキータ・ヴラディミロフ筆

2016年10月9日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/300106-report-melania-trump-refused-to-do-a-joint-tv-appearance-with

 

ドナルド・トランプの過去の女性に対する卑猥な発言についてのスキャンダルが明らかにされた時、メラニア・トランプは夫と一緒にヴィデオに出演して声明を発表することを拒絶した、と『ニューヨーク・タイムズ』紙が日曜日に報じた。

 

金曜日に『ワシントン・ポスト』紙が2005年のテープについて報じた直後、ドナルド・トランプの選対はトランプ夫妻が一緒にカメラの前に出て、スキャンダルについて声明を発表するように提案した。

 

トランプ選対の匿名の人物がニューヨーク・タイムズ紙に語ったところによると、メラニア・トランプは夫と一緒にヴィデオに出て声明を発表することに関心を持たなかったということだ。

 

この一緒にヴィデオに出て声明を発表するというアイディアは、1992年に、ジェニファー・フラワーズがビル・クリントンと長年にわたり不倫関係にあったと告白したことを受けて、ビル・クリントン、ヒラリー・クリントンが一緒にCBSの番組「60ニミッツ」に出演したことを反映したものであった。

 

共和党の最高幹部やテープの会話で対象となったナンシー・オドネルからの更なる非難を受けて、メラニアと一緒に声明を発表するというアイディアはすぐに撤回されたとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

 

テープの中で、トランプはオドネルやその他の女性と関係を持とうとしていることについて私的な会話を展開していた。

 

トランプは次のように語った。「君も分かっているように、私は自然に美人を惹きつけてしまうんだよ。そしてすぐにキスをするのさ。磁石みたいな感じかな。ただキスをする。そしてそこからすぐに次に進む。スターだったら、女たちはさせるのさ。なんでもできる。女性器を掴むことだってね」。

 

トランプは彼の発言について公開されたヴィデオの中で謝罪した。そして、日曜日の討論会ではこの問題について再び発言することになる。

(貼り付け終わり) 

 


(終わり)