古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大によって世界各国、特に発展途上国で厳しい状況になっているようだ。以下に紹介する記事は世界銀行が発表した報告書を基にしているが、それによると、世界規模で、経済格差が広がっているということだ。それまでいくつかの点で改善が見られていたのに、それが逆行しているということだ。

 経済格差が拡大し、生活が苦しい、もしくは生活ができないという人の割合が高まっていけば、社会は不安定になる。社会の規範、ルールや法律を守ろうという意識がなくなっていく。それは社会学的に言えば、「急性アノミー(acute anomie)」となる。そうした社会になるコストを考えれば、政府による再分配や支援によって社会の安定を維持するコストの方が安くつくと思われる。

 アメリカでは高インフレーションが続き、生活に困窮する世帯も多く出ている。多くの場合、そうした世帯は貧困層に含まれており、低賃金の仕事に甘んじなければならない。また、雇用形態も不安定だ。そうした中で、インフレーション率を超えるほどの賃上げもないとなると、生活は苦しくなる。家賃やガソリン価格の高騰というのは生活に直接かつ深刻な悪影響を与える。民主党のバイデン政権にとっては、自分たちの支持基盤であるこうした人々の生活を何とかしなければ今年の中間選挙では敗北を喫するということになる。

 そのために、大型支出法案を連邦下院(民主党が僅差ではあるが過半数)で可決させたが、連邦上院(民主共和で50対50、ハリス副大統領の投票でかろうじて民主党が過半数)では、ジョー・マンチンの反対表明によって前途が厳しくなっている。民主党内の進歩主義派と中道派の争いも激しい。この法案が可決成立しなければ大型支出ができないということになる。そうなれば中間選挙で敗北は必至となり、連邦上下両院で共和党が過半数を握るということになる。そうなれば、政権運営は厳しさを増す。そうなれば、2024年の大統領選挙で、バイデンの再選は難しくなり(元々年齢もあって難しいところもある)、それどころか民主党が敗北して、ホワイトハウスを共和党に渡すということになる。

 2022年前半は世界全体で正念場ということになりそうだ。

(貼り付けはじめ)

報告:新型コロナウイルス感染拡大が世界規模の貧富の差の改善が逆行(Pandemic reversing gains in wealth gap globally: report

レクシ・ロナス筆

2022年1月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/589334-pandemic-reversing-gains-in-wealth-gap-globally-report

世界銀行が火曜日に発表した報告書によると、コロナウイルスの感染拡大により、世界規模の貧富の差についての改善が逆行しているということだ。

世界銀行は世界規模での収入格差は新型コロナウイルス感染拡大期間中に増大し、過去20年間で達成したいくつかの進歩を逆行させていることを発見した。

報告書によると、極度の貧困率(extreme poverty rates)が上昇し、低所得者層に偏って、重大な影響を及ぼしているということだ。

この貧富の差の拡大は、新型コロナウイルス感染拡大によって低技能労働者や低所得者の雇用と収入が失われたことに起因している。多くの雇用は、政府が義務付けた操業停止により、中小企業が休業や営業時間の短縮を余儀なくされたために失われた。

世界銀行は、過去数十年間に見られた他の感染症に比べれば、各国内の格差の拡大は小さいと述べている。この格差の影響は、より長期に及ぶ可能性がある。

新型コロナウイルスは、特に低所得世帯において、子どもたちが遠隔学習に適応しなければならないため、教育に混乱をもたらし、所得と教育の関連性から、何世代にもわたって後退する可能性があると報告されている。

世界的に見て、先進諸国の方が発展途上諸国より早く回復することになるだろうと報告書は述べている。

世界銀行グループ会長デイヴィッド・マルパスは次のように述べている。「"世界経済は新型コロナウイルス感染拡大、インフレーション、政策の不確実性に同時に直面しており、政府支出や金融政策は未知の領域に入っている。格差の拡大や安全保障上の課題は、特に発展途上国にとって有害だ。より多くの国々を好ましい成長軌道に乗せるためには、協調的な国際行動と各国の包括的な政策対応が必要である」。

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インフレーションが1982年以降で最高水準に(Inflation rises to highest level since 1982

アリス・フォーリー筆

2022年1月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/589333-inflation-rises-to-highest-level-since-1982

1年の終わりとなる12月に消費者物価は7%も上昇した。水曜日にアメリカ労働省は子の上昇は1982年以来最高水準を記録したと発表した。

アメリカ労働省が発表する消費者物価指数(consumer price indexCPI)は消費財とサーヴィスのインフレーション率を測定するものであるが、12月の1カ月間だけで0.5%の上昇となった。

複数の政府高官は、家賃、中古車、トラックの価格上昇を 「季節調整済み全品目上昇の最大の要因 」と位置づけた。食品価格の上昇もまた、インフレーションの重要な原因として今回の最新報告書に記されたが、先月の0.5%の上昇率はここ数ヶ月に比べれば小さいものとなった。

家具・業務用品、アパレル、新車、医療の価格も12月に上昇したが、自動車保険と娯楽に関する価格は前月と同様に低下した。

エネルギー価格は、上昇が続いた後、12月に0.4%下落した。ガソリンと天然ガスの価格も低下した。

しかし、食料とエネルギーを除いた全品目の物価は先月0.6%上昇した。11月は0.5%上昇していた。労働省によると、12月はでこれらの物価が0.5%上昇したが、この9カ月間で少なくとも0.5%上昇したのは6回目であった。

バイデン政権は、物価上昇に直面する中、新型コロナウイルス感染拡大からの回復が進む中で、経済の力強い前進を誇示しようとしてきたが、今回のインフレレポートは、バイデン大統領が直面する課題のリストに問題が追加されることになった。

水曜日に発表した報告書は、年間インフレーション率が30年ぶりの高水準に達したことを示した11月の報告以来のものである。

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バイデンが、政権は物価上昇率の上昇を緩やかにするために「いくつか進歩を達成」していると発言(Biden says administration 'making progress' slowing rate of price increases

モーガン・チャルファント筆

2022年1月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/589385-biden-says-administration-making-progress-slowing-rate-of-price-increases?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ジョー・バイデン大統領は水曜日、インフレーションに関する最新のデータから、バイデン政権が「物価上昇率の鈍化において前進している」と発言したが、アメリカの各世帯のコストを下げるために更なる取り組みが必要であることを認めた。

バイデンは水曜日に発表した声明の中で次のように述べている。「「本日の報告書は、ガソリン価格と食品価格の下落により、主要なインフレーション率が先月より大幅に低下したことを示しており、物価上昇率の鈍化に向けた前進を実証している。同時に、この報告書は、物価上昇率が依然として高く、家計を圧迫していることから、我々がまだやるべきことがあることを強調している」。

労働省が発表した新しいデータによると、2021年12月の消費者物価は前年同月比で7%上昇し、1982年以来最も急速な上昇率を記録したとのことだ。最も物価が上昇したのは、家賃、中古車、トラックのカテゴリーであることが報告されている。

しかし、今回の報告書によると、12月のインフレーション率は11月より0.5%上昇し、前2カ月より低い数値となった。ホワイトハウスはこの統計を、物価上昇率が緩和され始めている兆候と強調している。

データによると、食料品の価格上昇率は前月より小さく、ガソリンと天然ガスのコストは低下しました。

この新しいデータは、予想されたことではあるが、バイデンにとっては難題ということになる。バイデン大統領は、コロナウイルスの感染拡大が続く中でも、雇用の増加は力強い経済回復の証拠であると賞賛しているが、物価の高騰に対するアメリカ人の懸念を和らげるのには苦労している。一方、共和党は、インフレーションを次の中間選挙の主要な争点にしようとしている。

バイデンは水曜日に発表した声明の中で次のように述べている。「インフレーションは、世界規模の景気低迷から脱却した先進国のほぼ全てで発生している問題である。アメリカは幸運にも、アメリカン・レスキュー・プランのおかげで、最も急速に経済が成長している国の一つであり、このことが物価上昇に対処し、強力で持続可能な経済成長を維持することを可能にしている。これが私の目標であり、日々その達成に向けて努力している」。

バイデン政権は、コストを抑えるために、港湾やトラックにおけるサプライチェインのボトルネックを緩和する措置をとっている。

水曜日の朝、CNNに出演したホワイトハウス経済諮問委員会のメンバー、ジャレッド・バーンスタイン氏は、政権の取り組みが成果を上げている証拠として、港で待機中のコンテナの減少と輸送コストの減少を挙げた。

2021年11月、バイデンはエネルギー関連コストの高水準と戦うために、5000万バレルの石油をアメリカ戦略的石油備蓄(Strategic Petroleum Reserve)から放出するという方策も実施した。

複数のホワイトハウス高官たちは、バイデンが主導している気候・社会政策法案、ビルド・バック・ベター法案の可決によって、アメリカの各世帯の医療費、育児費、その他のコストを下げることに貢献するとして、法案可決を促している。

しかし、ビルド・バック・ベター法案は現在連邦上院でとどまっている状態であり、立法化にむけての前途は明確になっていない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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