アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

本日、2015年1月18日、海江田万里氏の辞任に伴う、民主党代表選挙の投開票が実施されました。立候補したのは、長妻昭元厚生労働大臣、細野豪志元民主党幹事長、岡田克也元民主党代表でした。1回目の投開票(党員・サポーター・地方議員票と国会議員・国政選挙立候補予定者票;国会議員のみ2ポイント)では過半数(ポイント制で760ポイントの過半数である381ポイント)を獲得した候補者はおらず、上位2名に入った細野氏と岡田氏の決選投票(国会議員132名+国政選挙立候補予定者1名)が行われ、岡田氏が逆転で代表に選ばれました。結果は以下の通りです。

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●第1回目の投開票

 

・長妻昭氏:党員サポーター・地方議員票:94ポイント+国会議員・立候補予定者:74ポイント(37名)⇒168ポイント

・細野豪志氏:202ポイント+96ポイント(48名)⇒298ポイント

・岡田克也氏:199ポイント+95ポイント(47名+1名:立候補予定者は1ポイント)⇒294ポイント

 

●決選投票

 

・細野豪志氏:120ポイント(60名)

・岡田克也氏:133ポイント(66名+1名)

・無効票:6票

 

 決選投票は国会議員と国政選挙立候補予定者1名の133名のうち、6名が無効票を投じ、立候補予定者が岡田氏に投票しました。細野氏は1回目よりも12名伸ばし、岡田氏は19名伸ばしました。無効票+両者が伸ばした分を足すとちょうど37となり、長妻氏に投票した国会議員票数と一致します。そして、以下の記事にあるように、赤松広隆前衆議院副議長が率いる旧社会党出身者グループである「サンクチュアリ」は岡田氏へと投票したことが明らかになっています。ここから、岡田氏へ投票した旧社会党出身者は19名ということが分かります。となると、残り18名に、大畠章宏前民主党幹事長が率いる旧鹿野道彦グループである「素交会」と棄権した6名が含まれるということになります。Wikipediaで調べてみると、素交会の所属の現役国会議員は12名です。となると、旧社会党系からの脱落者が6名出たということになります。下の記事によると、赤松氏は、「岡田氏の陣営とは事前に、決選投票となった場合には互いが連携することを決めていたとも明らかにした。その上で、長妻氏を支援していた国会議員のうち決選投票で岡田氏に投じたのは『最低でも25人』と語った」とあります。長妻氏を支持すると決めた「サンクチュアリ」と「素交会」では、「サンクチュアリ」は岡田氏陣営と、「素交会」は細野陣営と決選投票になった場合の取引ができていたのだろうと思います。

 

ここで良く分からないのが、「サンクチュアリ」と「素交会」の動きです。選挙では勝ち馬に乗るのが常道です。そこからすると、「2・3連合」を組む場合には、3位の勢力は全て2位を支援しなければいけません。3位につけた長妻氏の勢力が全て岡田氏支援に回れば、決選投票はもっと大差がついたでしょう。しかし、今回の代表選では、股裂き状態になりました。この股裂き状態がどうして起きたのかが疑問です。

 

 今回の代表選の大きな争点の一つは、野党再編になると私は思っていました。しかし、岡田氏が公開討論の場で、細野氏が昨年の総選挙での維新の党との連携の話を持ってきたことを暴露しました。野党再編に消極的な岡田氏は禁じ手を使ってまで自民党に対抗できる野党の結集を「邪魔」した格好になります。また、野党再編に消極的な、現状維持、「野党第一党でありさえすればよい」とする勢力が結集して岡田氏を代表に据えた訳ですが、この人たちの民主党に参加する前の所属政党が、奇しくも自民党、社会党(サンクチュアリ)、新党さきがけ(野田佳彦グループ:花斉会;前原誠司グループ:凌雲会;玄葉光一郎グループ:日本のグランド・デザイン」研究会)となりました。今回の代表選で勝利したのは、「現状維持を志向する、“民主党内55年体制”維持を目論む“自社さ政権”」的な勢力です。

 

 そして、この「城内平和」志向の勢力は結局、現在の巨大与党である自民党と公明党に対して、脅威を与えることはありません。そうなることで、かえって自公を利することになります。政治史的に言えば、55年体制下で、自民党と裏取引をして野党第一党の座を守っていた、社会党のようになってしまうでしょう。自公から社会保障などで多少の妥協を引き出して大喜びしてそれを喧伝するアホ野党に堕することになるでしょう。

 

 日本の不幸はまだしばらく続くことになりそうです。しかし、それでも私たちは、「よりましな」選択をしながら、粘り強く生き抜いていかねばなりません。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「<民主代表選>新代表に岡田氏選出 決選投票で細野氏制す」

 

毎日新聞 2015年1月18日

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150118-00000030-mai-pol

 

 海江田万里代表の後任を選ぶ民主党代表選は18日、東京都内のホテルで開かれた臨時党大会で投開票され、岡田克也代表代行(61)が細野豪志元幹事長(43)と長妻昭元厚生労働相(54)を破って新代表に選出された。

 

 事前に行われた党員・サポーターと地方議員の投票結果は細野氏202ポイント、岡田氏199ポイント、長妻氏94ポイント。党所属の衆参両院議員と次期参院選の公認内定者の投票結果は細野氏96ポイント、岡田氏95ポイント、長妻氏74ポイント。合計で298ポイントを獲得した細野氏が1位、294ポイントの岡田氏が2位、168ポイントの長妻氏が3位となり、過半数を獲得した候補者がいなかったため、上位2氏が決選投票に進んだ。

 

 決選投票は国会議員と公認内定者によって行われ、岡田氏が133ポイントを獲得し、細野氏の120ポイントを上回った。

 

 

●「民主代表選 赤松氏らのグループは決選投票で岡田氏」

 

産経新聞 2015年1月18日

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150118-00000551-san-pol

 

 民主党の赤松広隆前衆院副議長は18日、党代表選の決選投票で赤松氏らの旧社会党系グループは岡田克也氏に入れたことを明らかにした。赤松氏らのグループは長妻昭・元厚生労働相を支援していた。

 

 赤松氏は臨時党大会が開かれた都内のホテルで記者団に対し、集団的自衛権や原発再稼働という政策面や党運営のあり方で岡田氏に決めたとした。

 

 また、岡田氏の陣営とは事前に、決選投票となった場合には互いが連携することを決めていたとも明らかにした。その上で、長妻氏を支援していた国会議員のうち決選投票で岡田氏に投じたのは「最低でも25人」と語った。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)