古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:連邦下院

 古村治彦です。

 アメリカ連邦議会は新しいセッション(第118期)が始まった。始まって早々、連邦下院では新議長選出を巡って大騒ぎとなったことは日本でも報道され、記憶に新しいところだ。前回のセッションまで連邦議会共和党の少数党(共和党)院内総務を務めてきたケヴィン・マッカーシーが新しい下院議長に選出されることは通常であれば当然のことであった。 

しかし、共和党内から造反議員が出て、何度も何度も否決され、15回目の投票でようやく過半数の得票となり、新議長に選出された。その過程で議場ではつかみ合いの喧嘩騒ぎも起きた。民主党側からは造反してマッカーシーの議長就任に賛成票を投じた議員は出なかったので、今回の騒動は共和党内部の争いということになった。

 マッカーシー議員は2014年から連邦下院共和党の最高幹部であり、2014年から2019年までは連邦下院多数党(共和党)院内総務、2019年から2023年まで少数党(共和党)院内総務を務めた。ドナルド・トランプ政権下では、連邦議会で過半数を失って少数党となった共和党を指揮し、トランプ大統領と協力して議会運営に当たった。トランプ派と目される人物の1人である。

 共和党内でマッカーシー議員の議長就任に抵抗したのは、フリーダム議連(Freedom Caucus)のメンバーたちである。フリーダム議連とはティーパーティー運動が源流の議員連盟であり、「保守系」もしくは「リバータリアン系」と評される議員たちの集まりだ。彼らの考えを簡単に述べれば「反福祉・反税金・反大きな政府」ということになる。彼らの資金源となっているのがコーク・インダストリーズという巨大企業を率いるチャールズ・コークだ。コーク一族の歴史と動きについては拙訳『アメリカの真の支配者 コーク一族』(講談社)を是非お読みいただきたい。

 簡単に言えば、フリーダム議連のパトロンであるチャールズ・コークは反ポピュリズム、反トランプの立場を取っている。トランプのポピュリズムは、彼から見れば「貧乏人にバラマキを約束している」ということになる。トランプ派と目されるマッカーシーの議長職就任を妨害したい、もしくはフリーダム議連が議会活動で有利になるような条件を受け入れさせたい、ということでフリーダム議連を使って妨害活動としい活動を行ったということになる。コークとフリーダム議連は共和党内部のエスタブリッシュメント派とも対立しており、フリーダム議連、エスタブリッシュメント派、トランプ派という形で共和党は分裂しているということになる。フリーダム議連とエスタブリッシュメント派が共同してトランプ派をけん制し、トランプの大統領選挙での復活を阻止したいという動きになっている。そのために、フロリダ州のロン・デサンティス知事やニッキー・ヘイリー元国連大使の名前を、2024年の大統領選挙の共和党側の有力候補として主流メディアは出している。

 2023年、2024年のアメリカは、2024年の大統領選挙に向けて政治の季節となる。共和党内部の争いはますます激化するだろう。

(貼り付けはじめ)

5つのポイント:マッカーシーは如何にして連邦下院議長職を勝ち取ったか(Five takeaways: How McCarthy won the Speakership

イアン・スワンソン筆

2023年1月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/3803662-five-takeaways-how-mccarthy-won-the-speakership/

ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)が新しい連邦下院議長に就任した。この1週間、議場では15回もの投票が行われ、党内分裂が誰の目にも明らかな異常事態となった。

しかし、この騒動は、マッカーシー議員が分裂した共和党をどのように統率していくのか、また、政府予算や国の債務上限(debt ceiling)引き上げの時期が来た時、国にとってどのような意味を持つのか、それらについて疑問が生じている。

ここでは、これまで誰も見たことのないような狂騒のうちに誕生した連邦下院議長選挙について5つのポイントを紹介する。

(1)マッカーシーは反対派をけん制する(McCarthy picks them off

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第118期連邦議会で連邦下院議長に選出されたケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)が人々の歓声に応える。2023年1月7日。

マッカーシーはこの1週間、民主、共和両党の有権者や批評家たちから、連邦下院で最も大きな丘を登る能力を疑問視され、次々と批判されてきた。

マッカーシーに対する反対派は動じる気配もなく、次々と票を失う中で、彼が必要な過半数を獲得できるのかどうか、多くの人が疑問に思った。

マッカーシーの戦術のいくつかは成功しなかったし、批判されるには理由があった。

2023年1月2日の非公開の会議で反対派に圧力をかけても誰も動かず、マッカーシー議員が批判派に対して議長の座を獲得するに決まっていると話すと、ローレン・ベイバート議員(コロラド州選出、共和党)が「くそ野郎!」と叫ぶなど激しい票読みの始まりとなった。

1回目の投票で19人の共和党所属の議員たちがマッカーシーに反対票を投じ、3回目の投票でバイロン・ドナルド連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)が反対者に加わり、その数は20人に膨れ上がった。

しかし、マッカーシーはこの間、実にたくましく対応しており、火曜日には「次から次へと投票がある中で戦うことを恐れていない」と発言していたが、その通りとなった。

マッカーシーは「戦う準備はできている」と公言し、週半ばには反対勢力との取引に向け、味方の議員たちとともに水面下で猛烈に働きかけた。その努力が実り、金曜日には、12回目の投票で反対派20人のうち13人が賛成に代わり、14回目の投票では更に1票が反対派から賛成に変わるという劇的な投票が行われた。 

その数時間後、連邦下院の議場で歴史的な前代未聞の瞬間が訪れた。

(2)マット・ゲーツが注目を集めた瞬間(Matt Gaetz gets his moment)

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2023年1月5日(木)、第118期議会の3日目に連邦下院民主党の議員たちと話すマット・ゲーツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)

マッカーシーの政治的将来が、金曜深夜に近づくにつれ、マット・ゲーツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)の投票にかかるようになるとは、誰も予想しなかっただろう。

ゲーツ議員とマッカーシー議員との間の反目は、この1週間の投票の底流にあり、金曜日には、フロリダ州の共和党員であるゲーツは、マッカーシーを連邦下院議長職に就くために裏取引をしたと非難し、より個人的な反感が高まっているように見えた。

ゲーツはまた、「これは、計算し、集計し、絶対に回避できることをこの機関に課している人物の虚栄心の表れなのか?」と問いかけた。

しかし、マッカーシーは議長選挙で216票を確保し、あと1票で当選というところでゲーツの投票を待っていた。当時、マッカーシーが連邦下院で過半数を獲得するには217票が必要だった。

ゲーツは「賛否を示さない出席(present)」と発言した。結果として、マッカーシーが投票者の過半数を獲得するための基準を引き下がることになったが、ゲーツの投票では勝利するのに十分でなかった。

ゲーツと同席していたマッカーシーの信頼する盟友パトリック・マクヘンリー連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)を含む議場の共和党所属議員たちは、マッカーシーのマジックナンバーをまだ確保していないことにすぐには気づかず、立ち上がって拍手喝采を送った。

ゲーツは考えを変えなかった。ゲーツの投票は「賛意を示さない出席」だった。

当初、マッカーシーにとって完全な災難に見えたが、その味方は月曜日まで議会を閉会させる投票に動いた。しかし、その閉会投票が行われると、別の切り替えが行われた。どうやら、共和党側のマッカーシーを非難する最終グループの6人全員が「賛否を示さない出席」票を投じるという取引が成立したようだ。

マッカーシーと他の共和党議員たちは閉会日に票を入れ替え、新たに議長選の投票が行われ、マッカーシーは再び216票を獲得したが、今度はそれで十分であった。ゲーツをはじめとする4人の共和党議員がベイバート議員に加わって「賛否を示さない出席」票を投じたことで、マッカーシーが過半数を確保した。

ゲーツは政治的なショーマンであり、カメラに映る時間を多く獲得し、その中心的存在となった

(3)この人たちはどうやって付き合っていくんだろうか?(How are these people going to get along?

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2023年1月6日(金)に連邦下院議長選挙の14回目の投票が実施された後、マイケル・D・ロジャース連邦下院議員(アラバマ州選出、共和党)は、ローレン・ベイバート連邦下院議員(コロラド州選出、共和党)とマット・ゲーツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)から引き離されている。

1枚の絵は1000の言葉に匹敵する(百聞は一見に如かず、Sometimes a picture is worth a thousand words)ということがある。

リチャード・ハドソン連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)がマイク・ロジャース連邦議員(アラバマ州選出、共和党)の体をつかまえている写真(片手を肩に、片手を顎に置き、レスリングに近い動き)は、そうした写真の1つである。

この時のロジャースは、ゲーツと現在の自身の投票について話し合うか、彼の首を絞めるかのどちらかに興味があるように見えた。

この100年間、連邦下院議長の投票では見られなかった光景に、多くの共和党員たちが互いにどれほど不満と疲れと苛立ちを感じていたかを示す象徴となった。

今、連邦下院共和党は僅かな差で、この違いを埋めて、彼らがやりたいこと、監視、支出削減、国境警備強化のための戦い、これら全て行うために協力しなければならない。

1月15日の投票でマッカーシーが新議長に決まった後、団結をするようにと訴えられていた。

しかし、この連邦下院議長選出の戦いは、今後、法案や規則をめぐって共和党内で更なる争いが起こることを予感させるものでもある。

今週、マッカーシーが強いられた屈辱や、ゲーツなどの議員たちの行動に見られた大義名分に対して怨嗟の声が上がるだろう。

マッカーシーがこの騒動をどう処理するかは今後直面する厳しい試練の一つになるだろう。

(4)マッカーシーは勝利を収めるために多くのことを諦めた(McCarthy gave up a lot to win

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2023年1月6日(金)、連邦下院議長選挙の14回目の投票中のケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)。

連邦下院議長の座を勝ち取るために、マッカーシーは多くのルール変更と反対派への譲歩を提示しなければならなかった。特に、新議長の投票を強制することができる議長退任動議を1人の議員が出すことができるようにすることが重要だった。

マッカーシーと提携する委員会は、共和党の予備選挙における委員会の役割を制限すると述べ、保守派議員たちは、議場に提出される全ての法案を審議する連邦下院規則委員会を含む、より多くの委員会の割り当てを受けることになる。

マッカーシーはまた、歳出法案を公開規則で審議することに同意したが、これは実質的に基本的な予算措置の可決を得ることをかなり難しくするものである。

今週マッカーシーに反対していた共和党議員の多くは、政府支出(国内支出と国防総省の予算の両方)の削減を望んでいる。今回の規則改正は、理論的には彼らにそれを実行する力を与えることになる。

この譲歩はマッカーシーの力を弱めることになりそうだが、彼は公の場で、この譲歩によって連邦下院議長が弱体化するとの見方を否定した。

(5)債務上限をめぐる戦いが注目の戦いだ(The debt ceiling fight is the battle to watch

andybiggs501 

2023年1月5日(木)、ワシントンの連邦下院議会で10回目の投票中に、ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)と話すアンディ・ビグス連邦下院議員(アリゾナ州選出、共和党)(右)。

連邦政府は歳入を上回る支出をしているため、連邦議会は長年にわたり、社会保障や医療保険から軍事費まであらゆる資金を調達するために、国の借入限度額を定期的に引き上げる必要がある。

債務上限を引き上げること自体は、新たな連邦政府支出の増加や承認にはならないが、連邦政府がより多く支出することを可能にする。

もし、債務上限が引き上げられなければ、連邦政府は支払いをすることができない。

2011年には、当時のバラク・オバマ大統領と共和党が過半数を握る連邦下院が何とか合意に至るまで、政府はデフォルト(default、債務不履行)に近い危険な状態に陥った。

次に債務上限を引き上げなければならないのは今年8月である。どのようになるかは誰にも分からないが、今後数カ月、ワシントンやウォール街では多くの神経がすり減ることになりそうだ。

今週、マッカーシーの議長選に反対していた共和党側議員の1人であるラルフ・ノーマン連邦下院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は水曜日、「マッカーシーは債務上限を引き上げるより、連邦政府を閉鎖することを望んでいるのだろうか?」と語った。ノーマンは更に「これは交渉の余地がない」とも述べた。

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マッカーシーの譲歩による連邦下院議長職獲得は驚きとなった(McCarthy concessions to win Speakership raise eyebrows

マイク・リリス、マイケル・シュニール、アル・ウィーヴァ―筆

2023年1月7日

『ザ・ヒル』

https://thehill.com/homenews/house/3803315-mccarthy-concessions-to-win-speakership-raise-eyebrows/

ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)は、歴史的な投票失敗の週を経て、議長の当選に必要な支持を得るために、反対派からの一連の要求に屈することを余儀なくされた。

ほとんどの共和党連邦議員たちはマッカーシーの譲歩の重要性を軽視しているが、この変更はマッカーシー自身の指導力を犠牲にして一般議員に権限を与えるものであり、連邦下院の統治機能を麻痺させかねないという懸念も出てきている。

特に、1人の議員が下院議長を追放するプロセスを開始できるようにする今回の変更は、保守派の強硬派グループがマッカーシーに圧力をかけて重要な必須法案を維持するために繰り返し使用することを恐れている民主、共和両党の議員に胸焼けを与えている。

その結果、連邦政府が閉鎖され、債務不履行に陥り、連邦下院の事業が急停止するリスクが高まると彼らは言う。

ドン・ベーコン連邦下院議員(ネブラスカ州選出、共和党)は、「これは恐ろしい決断だ」と述べた。

ベーコン議員は「1人でも議場から退席の動きを推し進めればまたやることになる。毎週こんなことをするのはいかがなものか?」と、マッカーシーの下院議員当選を数日遅らせた内部抗争を引き合いに出してこのように語った。ベーコン議員は「こういう人が何人かいると将来的にそうなるのではないかと思う。連邦下院議長が弱体化し、最小会派が強化されることになるのだ」と語った。

マッカーシーの保守派の批判者たちの中には、国の債務上限(連邦政府が債務を支払うためにお金を借りることを認める)を引き上げるいかなる動きも、社会保障やメディケアなどの国の権利プログラムの削減を伴わなければならないと要求している者もいる。そして、新しい連邦下院規則パッケージの条項では、債務上限引き上げについて別途投票を行うことが義務付けられている。

チップ・ロイ議員(テキサス州選出)は、木曜日に連邦議会議事堂で記者団に対して、「債務上限引き上げには具体的な支出制限が必要だと考えている」と語った。

マッカーシーの反対派で、今回の譲歩で最終的に支持に回ったスコット・ペリー連邦下院議員(ペンシルヴァニア州選出、共和党)も「何事もなく進められる債務上限引き上げはありえない、それは間違いない」と述べた。

この要求は、民主党側の議員たちからの反発を招いた。民主党議員たちは、国のセーフティネット・プログラムを守りたいが、マッカーシーが保守派の意向に従えば、連邦債務不履行のリスクが高まることを恐れているのだ。

民主党側のある議員は、「もし彼らが債務上限を設定したら私たちは終わりだ」と述べた。

今週の長丁場の交渉を通じて、中道派の共和党所属の議員たちにとってもう1つの大きな懸念は、保守派が小委員会の権限を自分たちのものにしようとすることで、この案は既に小委員会の席についている議員たちを激怒させた。

ベーコンはこれを「成功の見込みがない(non-starter)」だと形容した。特に小委員会の委員になるために努力してきた穏健派共和党員の間で怒りが広がっている。

ベーコンは次のように語った。「連邦下院議長職やそのようなものについて話すのであれば、彼らはまだそれを獲得しなければならない状況にあるのだ。私はそれを獲得していないにもかかわらず指導的役割を担わせるという、最も小さな議連に対するアファーマティブ・アクション同様だと考えている。私たちは共和党側の実力を基礎にしたシステム(merit-based system)を信じている」。

2013年から連邦下院議員を務めているアン・ワグナー議員(ミズーリ州選出、共和党)は、連邦下院議長職の「年功序列プロセス(seniority process)」だと強調した。

「誰もが年功序列のプロセスを経て、両委員会の役職や議長職などを獲得していかなければならないのだ」とワグナー議員は語った。

共和党が第118期連邦議会の開幕に際して採用したその他の変更点は、それほど議論の余地のないものである。その中には、全下院議員の任期制限を設けるための議場投票の保証、修正案の公開手続き、連邦政府機関に対する新たな権限を議会に与えるいわゆるホルマンルールの採用、議場に入る前に議員が法案を読むために丸3日間を必要とする72時間ルールなどが含まれる。

これらの変更は、全て過去の時点で採用されている。そして、ほとんどの共和党側議員たちは、マッカーシーが議員職の見返りに多くを捧げ過ぎたという説を否定している。

マージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党は)「そのようには感がない」と語った。グリーンは下院議長選でマッカーシーの最も有力な支持者の1人となった。

キャシー・マクモリス・ロジャーズ連邦議員(ワシントン州選出、ワシントン州選出)は、「これらの譲歩は私たちの話し合いで合意されたものであり、最終的には、より国民主導の立法過程につながると信じている。これは、より多くの権力と意思決定を議員に取り戻すことだ」と述べた。

ダン・クレンショー連邦下院議員(テキサス州選出、共和党)は、最初の規則パッケージの最小値である1人制と5人制の違いはほとんどないと述べ、1人制の空転動議についての懸念さえも軽視した。

クレンショー議員は「皆さん方はもう5人制で合意したのだろう。5人制と1人制で一体何が違うのか? 説明責任の問題だ。だから、みんなチームとして働こう、それが最善だ」と述べた。

マッカーシー自身も瀬戸際の交渉を擁護し、この重要な譲歩が彼を「弱い議長」にすることはないと断言している。

木曜日の夜、マッカーシー議員は記者団に対して、「これを恐れていたら、より弱い議長になるだけだ」と語った。「私は弱い議長になどならない」とも述べた。

マッカーシー議員は更に「前の議長を除いてはいつもそうだ。私はそれが結構なことだと思う」と付け加えて述べた。

しかし、民主党側は、カリフォルニア州選出の共和党議員であるマッカーシーが共和党右派対して提案したことは、彼の権威を低下させ、安定した統治を損なうと警鐘を鳴らしている。

前回と前々回の議会で下院議長として一人退席ルールを撤廃したナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、その復活を「馬鹿げたことだ」と評した。

前多数党(民主党)院内総務のステニー・ホイヤー議員(メリーランド州選出、民主党)は、この協定は共和党の極右勢力にあまりにも大きな力を与えるものだと述べた。

ホイヤ―議員は次のように述べた。「彼は私が予想した以上のものを与えたと思う。この協定は、共和党の小さな、意志を持った一派、共和党の否定的な一派、ほぼ一様に妨害的な一派に、彼らが持つべき以上の権威を与えることになると思う」。

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「クラブ・フォ・グロース」とコークはフリーダム議連に資金提供(Club for Growth and Koch nurtured Freedom Caucus

アイザック・アーンスドーフ筆

2015年10月22日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/story/2015/10/freedom-caucus-koch-club-growth-214973

最近、連邦下院をひっくり返した連邦下院保守派の反逆派の背後には、共和党の極右からおなじみの寄付者たちが何人か立っている。それが「クラブ・フォ・グロース(Club for Growth)」 とコーク・インダストリーズ(Koch Industries)だ。

非営利団体「センター・フォ・レスポンシヴ・ポリティックス(Center for Responsive PoliticsCRP)」と共同で行った本誌の分析によると、これらの強力な外部勢力は、ジョン・ベイナー連邦下院議長を追い出し、ケヴィン・マッカーシーが後継になることを阻止した共和党内グループである「連邦下院フリーダム連盟(House Freedom Caucus)」のメンバー37人の政治キャリアを育むのに一役買ってきた。

この分析によると、フリーダム議連のメンバーは、銀行や自動車ディーラーなど、伝統的に共和党候補を支持している業界から強い支持を受けてきた。しかし、議連のメンバー数は、共和党の重要な勢力として台頭し、時には保守的な原則をめぐって指導部と衝突する外部団体の影響力を示すものでもある。

各議員が報告した選挙運動およびリーダーシップPACへの寄付の金額を基に分析したところ、10万人の会員を持つ自由企業体制擁護団体「クラブ・フォ・グロース(Club for Growth)」の寄付額は177万ドルで、各議員が集めた総額1億7500万ドルの約1%に相当することが分かった。このクラブは、11人の議連メンバーにとって最大の寄付者であり、他のどの寄付者よりも多くのメンバーが寄付を受けた。

クラブ・フォ・グロースの広報担当者ダグ・サクトルベンは、本紙の取材に対して、最近の連邦下院での共和党指導部の混乱について、フリーダム議連に責任はないと述べた。サクトルベン「私たちの問題は、フリーダム議連の問題ではない。彼らは、選挙で訴えたことや有権者が投票したことを守っている。問題なのは、エスタブリッシュメントと指導部だ」と発言した。

指導者争いの中で、クラブはベイナー議員傘下のPACから「自分たちの信じる原則を守るために」攻撃を受けている保守派議員たちへの支援を公に表明していた。

カンザス州ウィチタに本社がある石油・ガス複合企業のコーク・インダストリーズは、現在フリーダム議連と提携しているメンバーたちに長期にわたり、総額で59万9400ドルを献金してきた。同社のPACとコーク社の従業員からの個人献金を合わせると、カンザス州選出のティム・ヒュールスカンプ連邦下院議員にとっての第2位の献金者となった。しかし、今回の分析では、フリーダム議連メンバーへの全体では2番目に大きな寄付をするのに十分な資金をばらまいていることが分かった。今回の分析では、コーク兄弟が築き上げた政治団体の幅広いネットワークはカヴァー仕切れておらず、これらはまとめて共和党候補への主要な資金源として発展してきた。

コーク PACのスポークスマンであるケネス・P・スペインは、同団体はフリーダム議連だけでなく、たくさんの共和党所属の議員たちに寄付していると述べた。CRPがまとめたデータによると、2014年のサイクルで1080万ドルを寄付していた。

この1カ月間、宮廷内の陰謀(palace intrigue)の中で、メンバーの名前を秘密にしているフリーダム議連は、党のどの派閥、グループが連邦下院指導部を支配するかをめぐる争いで影響力のある勢力として浮上してきた。連邦下院議長候補と目されているポール・ライアン連邦下院議員は、フリーダム議連が賛同し、ベイナー議員に対して脅した手続き上の戦術を諦めることに同意する場合のみ、連邦下院議長の座を望むと述べた。

共和党内部のエスタブリッシュメント派は、フリーダム議連が共和党のビジネス界の同盟者を軽視し、ひいては党の資金調達と多数派拡大への努力を軽視していると見て、不満を募らせている。しかし、クラブ・フォ・グロースやコーク・インダストリーズのような反体制的な資金提供者たちとの結びつきは、この集団がそれなりの資金基盤を持っていることを示唆している。

アメリカ商工会議所(UCC)は、この強力な勢力を排除するため、予備選挙の挑戦者を支援すると宣言している。

ベイナーのスタッフからロビイストに転身したある人物は次のように述べている。「昔は、党組織や経済界がもっと大きな影響力を持っていた。今、フリーダム議連は、ワシントンのグループは自分たちに献金しないと言って、ワシントン以外からもっと金を集められる。経済界は、この人たちと話をして、関係を構築する方法を考えるべきだ。今、彼らは共和党の未来を担っているように見えるからだ」。

業種別では、フリーダム連邦の寄付者の7%が退職者、次いで医療従事者(5%)と分析されている。

『ポリティコ』誌とCRPの分析によると、このブロックで最も資金調達に成功したのはニューメキシコ州のスティーヴ・ピアース連邦下院議員で、キャリアを通じて1690万ドル(クラブ・フォ・グロースから34万7867ドル、コーク・インダストリーズから86000ドルを含む)を稼ぎ、現職下院議員の中で38位にランクされた。ニュージャージー州のスコット・ギャレット連邦下院議員は1360万ドル(コーク・インダストリーズから7万2500ドルを含む)で69位と続く。

この分析は、選挙運動へのハードマネーによる寄付のみを対象としており、これらのレースにおける候補者の賛否を問わない独立した支出は反映されていない。

フリーダム議連への献金者の上位5位は、アメリカ銀行協会、全米自動車販売店協会(連邦議会への寄付額ではトップクラス)、エヴリ・リパブリカン・イズ・クルーシャルPACEvery Republican is Crucial PACERICPAC)で、エリック・カンター連邦下院多数派(共和党)院内総務がヴァージニア州選出のデイヴ・ブラット連邦下院に失脚させられる前に協力していた諸団体である。

アメリカ銀行協会の連邦議会関係・政治問題担当のジェームズ・バレンティン執行副会長は次のように述べている。「アメリカ銀行協会は、新人議員から議会指導部、その間にいる全ての議員に至るまで、通路の両側の議員たち(民主、共和党両党)と協力してきた長い歴史がある。これらの議員の中には、偶然にも、全米の銀行にとって重要な数々の施策を支持している議員たちもいる」。

ケネス・P・ヴォーゲルはこの記事の作成に貢献した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 「ウクライナ疲れ(Ukraine fatigue)」という言葉がある。これは、ウクライナを支援する西側諸国で、ウクライナ支援の財政負担に対して、「物価高などで自分たちの生活も苦しいのに、いつまでウクライナ支援を続けねばならないのか、巡り巡って増税になるだけのことだろう」という考えが国民の間で広がっているというものだ。以前に紹介したヨーロッパ諸国の世論調査では、「正義(justice)を望むか、和平(peace)を望むか」という項目になっていたが、これも正義はウクライナ戦争と支援の継続、和平はウクライナ戦争の停戦をそれぞれ意味し、和平派が増えているということだ。これもウクライナ疲れということになる。

 ウクライナ支援の大部分はアメリカが担っている。アメリカからの資金と武器でウクライナは戦っている。アメリカからの支援が縮小されれば、ウクライナ軍の攻勢も止まってしまうという構図だ。

 これまで米連邦議会はバイデン政権から要求されたウクライナ支援に関しては可決成立させてきた。それどころか、米国防総省が提出した支援策の内容について、「これでは足りない」「この武器を入れた方が良いのではないか」ということで更に増額したり、武器の種類を増やしたりしてきた。これは、地元に軍事産業の工場がある議員たちがお手盛りで、地元にお金を落とすためにやっている。戦争は産業になっており、それによって儲かる、生活が成り立つということでもある。しかし、共和党のトランプ派の一部の議員たちや民主党の進歩主義派の議員たちはウクライナ支援に対して反対票を投じてきた。こうした議員たちは国内問題優先(アメリカ・ファースト)であり、海外の戦争にアメリカが関わるべきではないというアイソレイショニズムの考えを持っている。

 アメリカ中間選挙で、連邦下院では共和党が過半数を掌握した。トランプ派の候補者たちが多く当選した。民主党では進歩主義派の議員は少し増えた程度となった。連邦下院共和党はこれから党内に増えたトランプ派への対応が難しくなる。ウクライナ支援に賛成か、反対かという分裂線で考えれば、共和党の一部と民主党の一部、エスタブリッシュメント派が協力することになる。バイデン政権のウクライナ支援は安泰ということになる。しかし、これはアメリカ国民の「ウクライナ疲れ」を反映しないということになる。アメリカ国民の多くが望んでいるのは物価対策であり、ウクライナ戦争の停戦である。バイデン政権はこれからウクライナ政府に停戦に向けて圧力をかけるように、国民と連邦議員の一部から圧力をかけられることになるだろう。

(貼り付けはじめ)

アメリカ連邦議会からウクライナへ:私たちはまだあなた方を支援する(Congress to Ukraine: We’ve Still Got Your Back

-アメリカ連邦議員たちはウクライナに対する長期関与への疑念を払拭するため安全保障会議に集結する。

ロビー・グラマー筆

2022年11月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/21/ukraine-congress-war-russia-u-s-committed-republicans-democrats/?tpcc=recirc_latest062921

ノバスコシア州ハリファックス(カナダ)発。アメリカの中間選挙の数週間後、アメリカの超党派の連邦議員たちがカナダで開かれた国際安全保障会議に出席し、アメリカの同盟国にメッセージを発した。私たちは全てをウクライナに与える。

キエフやヨーロッパの他の地域では、中間選挙で共和党が僅差で勝利したことを受けて、ウクライナに対するアメリカの軍事支援の継続について懸念する声が出ている。共和党所属連邦議員の一部はウクライナへの支援を疑問視し、アメリカの武器供与、援助、支援を停止するよう求めている。しかし、他の連邦議員たちは、このシナリオが連邦議会の大多数の意見を代表していないと主張し、こうした主張に反発している。

連邦上院外交委員会の共和党側幹部委員であるジム・リッシュ連邦上院議員は、ウクライナの対ロシア戦争への支援継続について問われ、「これはおそらく、私が連邦議員になって以来、最も超党派的な問題の1つだろう。私たちは超党派でこれを行う義務がある。私たちはこの件では手を組んでいる」と答えた。

リッシュをはじめとする民主、共和両党の議員8人は、国家安全保障の指導者や専門家が毎年集まるハリファックス国際安全保障フォーラムで、ウクライナやカナダなどNATO諸国の要人らにメッセージを伝えた。

このメッセージは、少なくとも短期的には、ウクライナ人や他のNATO加盟諸国の間に残る疑念を和らげたようである。ヨーロッパ各国とウクライナ政府の高官たち5人は一部が匿名を条件にしてインタヴューに応じてこのように答えた。

しかし、2024年の大統領選挙サイクルが始まる中、アメリカ政治がどのようになるのか、特に戦争が何年も長引き、支援の費用が積み重なった場合、ウクライナやヨーロッパ各国の不安や恐れを和らげることはほとんどなかった。

「連邦議員たちは、私たちやウクライナが聞くべきメッセージ、つまり、彼らは皆、今ここで献身しているというメッセージを伝えてくれた」とあるヨーロッパの政府高官は匿名を条件に語った。ドナルド・トランプ前大統領が使用した「アメリカを再び偉大にする(Make America Great AgainMAGA)」というスローガンを指して、「2年経った今でも、私たちはトランプ後の二日酔いの状態にある。しかし、2024年以降に何が起こるのか、新たなトランプ派連合(MAGA coalition)が超党派のウクライナ支援を無効にできるのか」とこの政府高官は述べた。

ジョー・バイデン米大統領は今月、軍事・人道支援を含むウクライナへの緊急資金として370億ドルを連邦議会に要求した。これは、ウクライナ軍がロシア軍に次々と痛烈な勝利を収め、重要な港湾都市ケルソンを奪還した後の大規模な資金投入となった。

ハリファックスでの会議でロイド・オースティン米国防長官は、アメリカのウクライナ支援は大西洋をまたぐ安全保障とアメリカ経済の健全性の両方にとって不可欠であり、ヨーロッパはアメリカにとって最大かつ最重要な貿易相手国の1つであることを強調した。オースティン長官は次のように述べている。「北米に住む私たちには、この問題を放置しておくという選択肢はない。アメリカとEUの貿易関係は世界最大規模である。だから、侵略者がヨーロッパに巨大な安全保障上の危機を作り出せば、アメリカ人やカナダ人の日常生活に打撃を与えることになる」。

このような主張が、物価が上昇し続けるアメリカ国民にどれだけ共鳴し続けるかは不明だ。複数の新しい世論調査の結果では、ウクライナ戦争に何百億ドルもの資金を投入し続けることで、アメリカの政治家たちが将来、有権者からの圧力に直面する可能性があるという初期的な警告となっている。特に西側諸国がインフレと格闘し、大きな世界経済の後退に備えている。

今月初めに発表された『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の世論調査によると、共和党支持の有権者の48%が、アメリカはウクライナ支援に過剰な努力をしていると考えており、3月の6%から上昇した。ハリファックス国際安全保障フォーラムとイプソス世論調査グループが行った別の世論調査では、88%のアメリカ人が、経済的に困難な時期には世界に目を向けず、内向きになるべきだと考えていることが明らかになった。

ドナルド・トランプ政権下でウクライナ特使を務めたカート・ヴォルカーは、有権者はヨーロッパが公正な負担を担っていないと考えれば、ワシントンは最終的にウクライナ支援にブレーキをかけるような政治的圧力に晒される可能性があると指摘する。

ヴォルカーは『フォーリン・ポリシー』誌に対して、「ヨーロッパが行動を共にし、ウクライナをもっと支援するようにならなければ、アメリカではそれが政治的な責任になる」と語った。また、2024年の大統領選挙サイクルで、アメリカの対ウクライナ支援をめぐる新たな議論が再燃するとの見通しも示した。

民主党のある有力議員は、アメリカの同盟諸国が「ウクライナ疲れ(Ukraine fatigue)」がワシントンに定着する懸念を共有するのは理解できると語った。連邦上院外交委員会のメンバーである民主党のクリス・クーンズ連邦上院議員は、「私は西側諸国がエチオピア疲れ(Ethiopia fatigue)になるのを見てきたし、西側諸国がソマリア疲れ(Somalia fatigue)になるのを見てきたし、西側諸国がアフガニスタン疲れ(Afghanistan fatigue)になるのを見てきた。歴史に基づけば、それは理解できる懸念である」。

「しかし、この会議に過去最大の議会代表団が参加した理由の1つは、ウクライナ人と会い、彼らの話を聞き、私たちの強力な支援を提供するためだ。私たちには、連邦下院と連邦上院、共和党と民主党があります。私たちの間には1インチの違いもない」と述べた。

このような安心感を与えるメッセージは、戦争が何年も長引いた場合にアメリカによるウクライナ支援が継続されるかどうかについて同盟諸国の信頼を損ねるような、連邦議会内部の小さなスキャンダルが相次いだ後に出された。その中には、バイデンにロシアとの直接外交を求める進歩主義的な議員たちの不器用な手紙や、ほんの一握りの親トランプの共和党所属の連邦議員たちがウクライナに「もう1ドルも」与えないことを誓った書簡も含まれていた。

ハリファックスの会議に出席した米連邦議員たちは、これらのコメントがメディアで大々的に取り上げられたことに不満を爆発させ、両党の大多数の議員たちのウクライナ支持を反映していないと述べた。

連邦下院外交委員会のメンバーである民主党のサラ・ジェイコブス連邦下院議員は外交政策について次のように語った。「最も挑発的なことを言っている1人か2人を取り上げるのは常に簡単だ。大体において、ウクライナが自衛するために必要なものを確保し続ける必要があるということは、幅広い超党派のコンセンサスがある」。

ジム・リッシュ議員も同じようなメッセージを発した。「ウクライナの闘争に関与することを躊躇している人はほんの一握りだ。その人たちは、あなたたちからたくさんのインクをもらっている。だから大多数に目を向けよう」。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交・国家安全保障記者。ツイッターアカウント:@RobbieGramer

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(終わり)

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 古村治彦です。

 アメリカ中間選挙の結果を受け、連邦下院で過半数を失った民主党は、連邦議会の新しい指導部(floor leaders)を選出した。その前に、指導部トップのナンシー・ペロシ連邦下院議長(カリフォルニア州選出、82歳)、序列2位のステニー・ホイヤー多数党(民主党)院内総務(メリーランド州選出、83歳)、序列3位のジム・クライバーン多数党(民主党)院内幹事(サウスカロライナ州選出、82歳)が任期いっぱいでの退任を発表した。ペロシは2002年に院内幹事に就任してから20年にわたり指導部におり、2011年からは連邦下院民主党のトップを務めた。今回本格的な指導部交代となった。

ここでアメリカ連邦議会の民主、共和両党の指導部の構成について書いておく。連邦上院の場合、民主、共和両党の指導部の序列は、(多数党・少数党)院内総務(Majority/Minority Leader)、(多数党・少数党)院内幹事(Majority/Minority Whip)、所属連邦上院議員会会長(Caucus Chair)となる。連邦下院の場合、過半数を握った政党から議長(Speaker)が出るが、この人がその政党指導部のトップとなる。序列2位が多数党院内総務、3位が多数党院内幹事、4位が所属連邦下院議員会会長となる。少数党の場合は、院内幹事が序列1位、院内総務が2位、所属連邦下院議員会会長が3位となる。指導部は法案の審議や議場での戦略、選挙を取り仕切る。大統領府(ホワイトハウス)との交渉も行う。

 今回、民主党指導部は大幅に若返った。前の指導部が全員80代だったが、今回一番若いアギラーは43歳だ。そして、多様性が反映される構成になった。トップのハキーム・ジェフリーズはアフリカ系アメリカ人初の議会指導部トップとなった。序列2位の院内幹事に就任予定のキャサリン・クラーク(59歳)は白人女性、序列3位の民主党所属連邦下院議員会会長に就任予定のピート・アギラー(43歳)はヒスパニック系である。

 民主党と共和党のぶつかり合いが来年の連邦議会から始まる。ドナルド・トランプ前大統領がかかわったとされる2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件についての連邦議会の特別パネルでの調査をめぐって、トランプ派が多くなった共和党側は反発するだろう。これはあくまで予想であるが、そうした国内問題から目を逸らさせるために、来年以降のアメリカ政治は表向き対中強硬姿勢を強めるだろう。民主、共和両党はこの点では一致点を見出しやすい。しかし、実態はアメリカの中国経済依存は深まっており、経済界と農業界(中国が穀物を輸入している)は中国との対立は避けたいところだ。そこのところの舵取りが連邦議会の指導部とホワイトハウスにとっては負担となるだろう。

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歴史的な投票により、民主党はペロシの後任としてジェフリーズを党の指導者に指名した(In historic vote, Democrats pick Jeffries to replace Pelosi as party leader

マイク・リリス、マイケル・シュニール筆

2022年11月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/3756296-in-historic-vote-democrats-pick-jeffries-to-replace-pelosi-as-party-leader/

連邦下院民主党は2日、来年の指導者(少数党院内総務)にハキーム・ジェフリーズ(Hakeem Jeffries)連邦下院議員(ニューヨーク州選出)を選出した。ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選手)の指導が20年続いた後で世代交代を示すとともに、ジェフリーズはアメリカ史上初のアフリカ系アメリカ人の連邦議会指導者となった。

この変化は驚くようなことではなかった。ペロシをはじめとする指導部が今月初めに指導的地位のトップ3から退くと発表した後、52歳のジェフリーズは、すぐに民主党指導部のトップ争いに加わってその地位を固めた、3人の次世代リーダーのうちの1人だった。

その他の2人、キャサリン・クラーク連邦下院議員(マサチューセッツ州選出)とピート・アギラー連邦下院議員(カリフォルニア州選出)は水曜日のそれぞれ新しい指導的な立場に投票によって選出された。クラークは来年、ステニー・ホイヤー連邦下院議員(メリーランド州選出)に後任として連邦下院民主党第2位(少数党院内幹事)の地位に就き、アギラーは、ジェイムズ・クライバーン連邦下院議員(サウスカロライナ州選出)が退任して空席となっている第3位の地位(民主党所属連邦下院議員会会長)に就く予定だ。

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2022年11月30日(水)、記者会見で連邦下院民主党指導者選挙のトップ3の結果について記者団に話すハキーム・ジェフリーズ下院議員(民主党)。

新指導部の面々はいずれも対立候補なしで当選した。水曜日の議事進行は選挙というより戴冠式だったという感がある。しかし、ペロシという歴史的人物をジェフリーズという別の人物に置き換えたことを歓迎する民主党の祝賀ムードは祝賀会程度では収まらない。

そしてペロシは、3人の新指導者たちが民主党の未来を担う活力あふれる人物たちであることを即座に讃えた。

「この指導者部の新顔は、私たち国の活力と多様性を反映しており、新しいエネルギー、アイデア、展望によって民主党内を活性化するだろう」とペロシ連邦下院議長は述べた。

ジェフリーズは、自分のリーダーシップの歴史的意義について考える時間はあまりないと述べ、その代わりに民主党の少数派への移行と、これから引き受ける「厳粛な責任(solemn responsibility)」に集中していると述べた。

火曜日の夜、連邦議会担当の少数の記者団を前にしてジェフリーズは「この重大かつ厳粛な瞬間の結果として、私たちができる最善のことは、身を粉にして、人々のためにできる限りの仕事に懸命に取り組むことだ」と述べた。

他の民主党連邦議員、特に連邦議会アフリカ系アメリカ人議員連盟(Congressional Black Caucus)の議員たちは、ジェフリーズの昇進を、公民権に関する長い間の厳しい闘いにおけるもう1つの大きな節目として喝采の声を挙げている。

連邦議員を32年務めているヴェテランで、アフリカ系アメリカ人議員連盟の影響力を持つメンバーであるマキシン・ウォーターズ議員(カリフォルニア州選出、民主党)は次のように語った。「アフリカ系アメリカ人として、今こそ真の多様性と包括性を求める時だというメッセージをこの国に送っている。そして、有能で指導力のある多くの有色人種の人々が存在する。ジェフリーズの党院内総務就任は有色人種やアフリカ系アメリカ人の大人や少年にとって、そのような高い地位を目指すことができる素晴らしいイメージになるだろう」。

ジェフリーズの登場で、民主党はブルックリン出身者が連邦上下両院を率いることになる。中間選挙で民主党が上院の過半数を維持したので、チャールズ・シューマー(ニューヨーク州選出、民主党)が引き続き多数党院内総務となる見通しだ。

ジェフリーズは、連邦上院に移るまで20年近く連邦下院で過ごしたシューマーとは「素晴らしい関係」であると語った。しかし、ブルックリンの代表として連邦議会に参加し、議会指導部のトップに就任することに興奮を覚えるかと聞かれるとジェフリーズは控え目に答えた。

ジェフリーズは「ブルックリンで盛り上がっているようだ」と答えた。

シューマーはジェフリーズとの関係構築を待ち望んでいる。

「ペロシ議長としたように、ブルックリンの友人と共にと1日に4、6回話すのが今から待ち遠しい」と連邦上院民主党院内総務シューマーは水曜日の朝に議場で述べた。

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2022年11月30日(水)、連邦下院民主党指導部の上位3つのポジションの選出結果について記者会見するキャサリン・クラーク議員(マサチューセッツ州選出、民主党)。

2012年に連邦下院議員に初当選したジェフリーズは急速に出世の階段を駆け上がり、民主党が連邦下院の過半数を握った2019年に民主党所属連邦下院議員会会長の座に就いた。その後、キャサリン・クラーク(Katherine Clark)が彼と一緒に共同会長となり、2年前にピート・アギラー(Peter Rey Aguilar)が副会長として加わり、ペロシ、ホイヤー、クライバーンの「ビッグ3」が退任し、この3人が連邦下院民主党の手綱を取る立場になった。

しかし、クライバーンは来年序列第4位の地位に就くことを目指している。しかし、クライバーンにとって驚くべき事態が起きた。水曜日、デイヴィッド・シシリーン連邦下院議員(ロードアイランド州選出、民主党)が挑戦者としてレースに参戦することになったのだ。

クライバーンはアフリカ系アメリカ人議員連盟の有力メンバーであり、2006年以降、連邦下院民主党指導部で序列第3位の地位を保持し続けてきた。クライバーンはこれからも連邦下院民主党指導部内でアメリカ南部地域の代表を保持し続けるために行為の地位にとどまりたいと述べている。シシリーンは連邦議会LGBTQ+平等推進議連の共同委員長を務めている。連邦下院民主党指導部内のLGBTQ+メンバー2人、シーン・パトリック・マロニー連邦下院議員(ニューヨーク州選出)とモンデイル・ジョーンズ連邦下院議員(ニューヨーク州選出)がそれぞれ再選のための選挙に落選したことを受けて、シシリーンは指導部内に同性愛の人々の声を維持する必要があると述べた。

クライバーンとシシリーンの選挙は木曜日に実施される予定だ。
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2022年11月30日(水)、連邦下院民主党指導部のトップ3選出の結果について記者会見後、記者団と話すハキーム・ジェフリーズ議員(ニューヨーク州選出、民主党)。

民主党はまた、水曜日にテッド・リュー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)を来年の所属議員会副会長に選出した。また、首席選挙ストラティジストを選ぶ権限を議員会全体から奪い、その決定を指導部に委ねるという内部規則変更も採択した。

つまり、ジェフリーズは院内総務として、2024年の選挙に向けた民主党連邦議会選挙委員会(Democratic Congressional Campaign CommitteeDCCC)の責任者を任命する責任を負うことになるが、その時期については明言を避けた。

カリフォルニア州選出の2人の連邦下院議員であるアミ・ベラ議員とトニー・カルデナス議員がその座を争っている。

民主党は連邦下院の過半数を失ったが、世論調査や有識者の予測よりはるかに良い成績を収め、共和党は次期連邦議会でわずかな過半数にとどまり、党の優先事項のために落ち着きのない議会をまとめようとする共和党指導者の頭を悩ませることになった。中間選挙から1週間経過して、連邦下院民主党指導部の選出の投票が実施された。

ジェフリーズは連邦下院共和党トップのケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出)を強く批判してきた。特に2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件後、共和党のリーダーがトランプ前大統領に寄り添った後はそうだった。しかし今週、民主党側のトップリーダーの座に投票されることになったジェフリーズは、そうした緊張関係を軽減し、国を救うことに真剣な共和党員なら誰とでも協力する用意があると述べた。

ジェフリーズは「確かに、次期多数党(共和党)院内総務のスティーヴ・スカリスとはより交流を持っている。しかし、国のためにケヴィン・マッカーシーと協力することも可能だと考えている」と述べた。

ペロシは連邦下院の議場で人々が注目していた演説の中で、次期議会で指導的地位を求めないことを発表した。その翌日、ジェフリーズは連邦下院民主党指導部トップの座に正式に就くことになった。ペロシは20年以上とどまった連邦下院民主党指導部から離れるという歴史的な決定を行った。

その直後、ペロシ議長の補佐役であるホイヤーとクライバーンも、党のトップの座に留まることを望まないと発表し、新世代の民主党の政治家たちが党をリードする道が開かれた。

ジェフリーズは選出直後に「民主党は国民のために戦いに最善を尽くす。これはスローガンではなく、生き方である。私たちの戦いはまだ始まったばかりだ」と述べた。

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米下院民主党トップに初の黒人 指導部の世代交代進む

12/1() 13:48配信 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/6f7422e076719d367308b8b3afe39e9e8c7b6b1d

 米連邦下院の民主党は1130日、20231月からの新会期の党トップに東部ニューヨーク州選出のハキーム・ジェフリーズ氏(52)を選んだ。連邦上下両院で黒人が2大政党のトップを務めるのは初めて。約20年間にわたって下院民主党を率いてきたナンシー・ペロシ下院議長(82)は指導部からの引退を表明しており、懸案だった世代交代が進むことになる。

 ジェフリーズ氏は選出後の声明で「可能な時には共和党との妥協点を模索するが、過激主義には反対する」と述べた。118日の中間選挙で共和党が下院の過半数を奪還したため、新会期には少数派として臨むことになる。

 党下院ナンバー2の院内幹事には女性のキャサリン・クラーク氏(59)、ナンバー3の下院議員団長には中南米系のピート・アギラー氏(43)が選出された。院内総務を含めて対立候補はなく、役員経験者から順当に選出された。民主党の下院指導部は、ペロシ氏らトップ380代という現体制から大幅に若返ることになる。【ワシントン秋山信一】

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 2022年アメリカ中間選挙が終わった。まだ最終結果は確定していない。現在のところの確定した結果は以下の通りになっている。

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2022年11月10日現在の結果

 連邦下院(435議席)では共和党が過半数(218議席)を奪還すると見られているが、連邦上院(100議席)では接戦が続いており、共和党の過半数獲得(51議席)は微妙な情勢だ。議席数が50対50になれば、副大統領が議長役で1票を投じることになるので、民主党が過半数を獲得ということになる。
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民主、共和全体の支持率の推移(赤線は共和党)
 ジョー・バイデン大統領の支持率の低迷とインフレイション率の急上昇によって、中間選挙は共和党が優勢で、連邦上下両院で過半数を奪取するのではないかと見られていた。その後、民主党が支持率を回復し、連邦下院では過半数を失うが、連邦上院では何とか過半数(50議席以上)を維持できるのではないかと見られていた。

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バイデン大統領の支持率の推移(赤線は不支持率)
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アメリカのインフレ率

 共和党側では、ドナルド・トランプ前大統領が支持推薦した候補者たちが多数当選した。トランプはツイッター上に「1749敗だ」と投稿した。150名以上のトランプ派が当選したことは、バイデン政権の議会対策を難しいものとすることは間違いない。私は、現在も続いている連邦下院での2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件に関する特別委員会の活動は停滞するだけでなく、ジョー・バイデン大統領と息子ハンター・バイデンのウクライナ疑惑に関する調査が実施されるのではないかと見ている。この結果如何では、バイデン大統領の弾劾訴追まで進むものと考えている。

 ウクライナ戦争に関しては、民主党進歩主義派と共和党のトランプ派は共に早期停戦とロシアに対する制裁に反対する姿勢を示している。来年の連邦議会ではウクライナ戦争に関して、停戦に向けた動きが進む可能性がある。「アメリカ・ファースト」、「アイソレイショニズム(国内問題解決優先主義)」が出てくることになるだろう。

 今回の中間選挙の結果は、共和党側からすれば「赤い波(レッド・ウェイヴ)」を引き起こすまでの大勝利ということにはならず、民主党側からすれば、大敗北を避けることができたということで、民主党の粘り勝ちという評価になるようだ。共和党内を見てみれば、エスタブリッシュメント派にとっては議席が増えたことは喜ばしいが、トランプ派が大量にワシントンにやってくることは忌々しいということになる。トランプ派への対応を間違うと、民主党と対峙する以前に党内抗争を戦わねばならないということになる。共和党は分裂含みということになる。民主党もまた進歩主義派が影響力を持つことで分裂含みということになる。共和党内のトランプ派と民主党内の進歩主義派は共にポピュリズムということになり、ポピュリズムがワシントンを席巻するという状態が続くことになる。

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中間選挙の5つの重要なポイント(Five early takeaways from the midterms

ナイオール・スタンジ筆

2022年11月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3726836-five-early-takeaways-from-the-midterms/

水曜日の夜明けとともに、2022年の中間選挙はいくつかの決定的な結果を残した。

しかし、劇的な一夜を経て、既に明らかになっている教訓も存在する。

これから5つの重要なポイントを挙げていく。

(1)民主党にとっては予想よりも良い夜となった(A better night than expected for Democrats

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マギー・ハッサン連邦上院議員(ニューハンプシャー州選出、民主党)は、選挙前の数週間に共和党が期待を寄せていたドン・ボルデューの挑戦を退け上院の議席を維持した

専門家たちの一部や世論調査が予測した共和党の「赤い波」が実現しなかったことが明らかになり、民主党は火曜日、一晩中安堵のため息をついていた。

フロリダ州知事ロン・デサンティス(共和党)と連邦上院議員マルコ・ルビオ(共和党)の両候補の圧勝が予測された際に、共和党は夜明け前に最高水位を記録した。

しかし、そこからは共和党にとって下り坂となった。

最も劇的な結果は、これまでのところ、全米で最も注目されている連邦上院議員選挙の1つであるペンシルヴァニア州で、民主党のジョン・フェッターマンが共和党のメフメト・オズを破ったことだ。

上院議員のラファエル・ウォーノック(ジョージア州選出、民主党)は、元アメフト選手のハーシェル・ウォーカー(共和党)に対してやや有利な結果となっているようだが、12月の決選投票が避けられるかどうかはまだ分からない。

その他の結果も、軒並み民主党の希望を後押ししている。

マギー・ハッサン連邦上院議員(民主党)は、選挙戦の最終週に共和党が追い上げていたニューハンプシャー州での議席を維持した。

連邦下院では、エリッサ・スロトキン連邦下院議員(ミシガン州)をはじめ、民主党の落選予想リストに指定されていた有名議員が議席を確保した。連邦下院では、エリッサ・スロトキン(ミシガン州)、アビゲイル・スパンバーガー(ヴァージニア州)、マーシー・カプチャー(オハイオ州)など、民主党の落選予想リストに掲載された有名な政治家たちが何人も選挙に勝ち残った。

各州の知事選挙では、民主党が直前まで神経質になっていたミシガン州知事グレッチェン・ウィットマーとニューヨーク州知事キャシー・ホーチュルは圧勝した。

民主党が連邦下院の議席を減らすことは確実であり、過半数を失う可能性も十分ある。

しかし、これはバイデン大統領が率いる民主党が期待した通りの中間選挙結果であった。

今、厳しい問題に直面しているのは共和党である。

高いインフレ率とバイデン大統領の低い支持率という強力な追い風にもかかわらず、共和党は非常に僅かな利益しか得ることができなかった。

(2)フェッターマンが大勝利を収めた(Fetterman pulls off a huge victory

johnfetterman511
 
ペンシルヴァニア州連邦上院議員選挙で、ジョン・フェッターマン副知事が共和党のメフメト・オズを降した。民主党は安心のために大きなため息をつくことができた

水曜日の未明に確定したフェッターマンの勝利は民主党にとって大きな追い風となった。

この数週間、型破りな副知事フェッターマンのリードはどんどん縮まり、支持者は心配し通しだった。

特に、オズはフェッターマンの犯罪記録に対する攻撃で支持を得ていたようで、その中には州恩赦委員会の委員長として、在任中に以前よりはるかに多くの減刑を勧告したことが含まれていた。

5月に脳卒中を発症したフェッターマンは、10月に行われた両候補の唯一のテレビ討論会でも、訥々とした様子を見せていた。

しかし、頭を剃り上げ、パーカーを着たフェッターマンの勝利は、全米で最も分断の激しい激戦州においても、彼の主張する進歩主義的ポピュリズムが通用することを証明するものとなった。

この勝利は、純粋に数学的な意味でも民主党にとって必要不可欠なものとなった。

今回の選挙におけるペンシルヴァニア州の連邦上院議員の議席は、共和党のパット・トゥーミー連邦上院議員の引退によって空席になったものだった。

民主党は、アリゾナ州とネヴァダ州の2つの州(本稿執筆時点ではまだ集計中)を失ったとしても、共和党から奪ったこの議席によって、余裕を確保することができることになった。

(3)デサンティスがフロリダを赤く染める(DeSantis turns Florida red

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共和党にとって大きく失望させられる夜となったが、フロリダ州知事ロン・デサンティスは、再選勝利へ進んだ

フロリダ州知事ほど良い夜を過ごした共和党員は他にいなかった。

デサンティスの2期目への再選は予想されていた。しかも、その差は歴然としており、民主党の対立候補であるチャーリー・クリスト元連邦下院議員20ポイントほども引き離していた。

その背景には、4年前にデサンティスが1ポイント以下の差で知事職を獲得し、2年前にドナルド・トランプ前大統領が約3ポイント差で勝利したことがある。

2024年の大統領選挙に関心が移り始める中、彼の信頼性を証明するという意味では、まさにデサンティス知事にとってのブースターとして思惑通りの結果となった。その点では、火曜日の結果が、トランプにとってせいぜい凡庸な結果にとどまったことも、彼を助けたと言える。

デサンティスの勝利の他の輪郭のいくつかは特に重要で、特に、人口が多くヒスパニック系の多いマイアミ=デイド郡を押さえたことが大きい。

デサンティスは勝利演説で「政治地図を塗り替えた」と自画自賛したが、ヒスパニックの多い地域での勝利はそれが単なる誇張ではなかった理由の1つである。

マルコ・ルビオ連邦上院議員もヴァル・デミングス連邦下院議員(民主党)に約17ポイントの差をつけて圧勝した。

デサンティスとルビオによる2つの勝利の規模を見れば、フロリダが共和党優勢州になったことは明らかだ。

そして、「フロリダは全米最大の激戦地だ」という考え方はもはや通用しないことになった。

(4)連邦下院での共和党の過半数は良くても大きなものとはならないだろう(GOP House majority will be narrow at best

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連邦下院少数党(共和党)院内総務ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)は共和党が連邦下院の過半数を確保すると予想しているが、その差は予想より小さくなりそうだ

連邦下院少数党院内総務ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)が、当初終了予定だった1時間後に祝勝会の壇上に立ったが、詳細な物語を語った。

東部時間午前3時30分の時点で、共和党が連邦下院の過半数を奪取するという予測は、主要な報道機関からはまだ出ていなかった。

マッカーシーは聴衆に対して、「明日起きたら私たちが多数派で、ナンシー・ペロシが少数派になっている」と選挙の結果に自信を見せた。

彼が正しいことは、やがて証明されることだろう。しかし、共和党の連邦下院過半数奪取が、夜が更けても確定しないということは、この夜が共和党にとっていかに残念な夜であったかを物語っている。

また、たとえマッカーシー議員が連邦下院議長に就任するにしても、共和党が過半数を獲得しても民主党との差が小さい場合には、マッカーシーには大きな試練が待ち受けている。

このシナリオの場合、共和党の最も強硬なメンバーが非常に大きな影響力を持つことになり、それを利用することは間違いない。

水曜未明、マージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)は声明を発表し、「我が党が敗北しないよう、戦いをリードしていく」と主張した。

(5)民主党の2人のスターが消えてしまった(Two Democratic stars fade

staceyabrams522 

ステイシー・エイブラムスは、現職のジョージア州知事のブライアン・ケンプ(共和党)に2度目の知事選でも敗れ、今後、民主党内でのスター性が薄れる可能性がある。

民主党全体では、予想よりも上の結果が出たかもしれないが、2つの敗北が党全体を直撃した。

2つの敗北は共に州知事選でのことだった。ジョージア州ではステイシー・エイブラムスが現職のブライアン・ケンプ知事(共和党)に敗れ、テキサス州ではビトー・オルーク元連邦下院議員が現職のグレッグ・アボット知事(共和党)に敗北した。

これら2つの敗北という結果は予想されていたことで、エイブラムス、オローク両候補は世論調査の結果でかなりの差でリードされていた。

しかし、それでも、それぞれの候補者は、少し前まで、民主党の輝くスターと見られていた。

火曜日、エイブラムスがケンプに連敗し、オロークは2018年の連邦上院議員選挙でテッド・クルーズ上院議員(共和党)に敗れ、2020年の民主党大統領選挙予備選への挑戦を断念した後、3度目の敗北となったことを考えると、彼らの輝きは今ひどく損なわれることになった。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 アメリカの中間選挙(Midterm elections)が近づいてきた。連邦下院の全議席、連邦上院の一部、州知事の一部の選挙が実施される。現在のところ、連邦下院では共和党の過半数が確実、連邦上院では共和党が過半数を獲得できるかどうか微妙な状況となっている。以下の図の通りだ。

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連邦上院の状況
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連邦下院の状況

 今回の全国規模の選挙は「中間」という名前がついている通り、大統領選挙と大統領選挙の間に行われ、現職の大統領に対する「評価」がなされる選挙である。大統領選挙を期末試験と考えると、中間選挙は中間テストということになる。アメリカでも日本と同様にエネルギー価格と食料価格の高騰により、生活が苦しい人々が多く出ており、経済問題が選挙の焦点となっている。

 それ以外にも、今回の中間選挙には2024年の大統領選挙の前哨戦として、いくつかの重要なテーマが存在する。それらは、(1)民主党はラティーノ系有権者の支持を確保できるか、(2)ドナルド・トランプ前大統領以外の有力な大統領選挙候補者は出てくるか、(3)トランプはどれくらい躍進するか、(4)2016年にトランプを当選に導いたブルーカラー、労働者たちの支持はどこに向かうか、である。そして、2016年、2020年の大統領選挙で激戦州となった、フロリダ州、ジョージア州、ペンシルヴァニア州、オハイオ州、ウィスコンシン州、ネヴァダ州、アリゾナ州が焦点となる。これら、選挙の結果が大きく変わるパープルステイト(共和党の赤色と民主党の青色が混ざって紫となり、激戦であることを示す言葉)、スイングステイトに注目が集まる。

 今回の選挙戦では共和党予備選挙の段階で、トランプ前大統領が支持する候補者が躍進し、共和党のエスタブリッシュメント、主流派は戦々恐々としている。トランプ派はマイノリティではなく、共和党で大きな勢力となる。2024年の大統領選挙にトランプ前大統領が出馬するのか、もしくは彼が支援する候補者が出るのかということは大きな焦点となる。連邦議会の上下両院で過半数を獲得することになれば、共和党はジョー・バイデン政権と共和党に対してより対決的な姿勢で臨むことになるだろう。バイデン政権の政権運営は厳しいものとなる。

 民主党側では、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出)やアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出)が率いる進歩主義派の「ジャスティス・デモクラッツ」は勢力を少し拡大しそうであるが、トランプ派のように民主党を動かすほどにはならないだろう。民主党はホワイトハウスを抑え、連邦議会上下両院で過半数を占める与党であるが守勢となっている。大型の財政出動を行おうとしてきたが、党内に「ブルードック」と呼ばれる財政規律重視派を抱え、それもうまくいっていない。現状ではなかなか厳しい結果となるであろう。

 バイデン政権1期目後半の政権運営が厳しいものとなる場合、人々の関心を国内から国外に向けるために、外交と防衛分野で何かしら大きなことを起こそうとするだろう。その相手となるのは、中国とロシアということになる。しかし、ここで舵取りを間違うと、世界大戦を引き起こすということにもなりかねない。バイデンが次の2024年に大統領選挙に出馬できるかどうも焦点となる。これから注目である。

(貼り付けはじめ)

今回の中間選挙の5つの選挙戦が2024年の選挙とそれ以降に対する教訓となるだろう(Five midterm races that will hold big lessons for 2024 and beyond

ナイオール・スタンジ筆

2022年11月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3713192-five-midterm-races-that-will-hold-big-lessons-for-2024-and-beyond/

選挙の投開票日まであと1週間となり、連邦上院の熾烈な争いの中でも、最も緊迫した複数のレースに注目が集まっている。

しかし、いくつかの選挙戦は、アメリカ政治の現状を知る上で重要なスナップショットを提供したり、2024年以降への教訓を提供したりと、別の意味でも重要である。

これからいくつかの重要な一対一の選挙戦について見ていく。

(1)ネヴァダ州とラティーノ系有権者たちの争奪戦(Nevada and the battle for Latino voters
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ネヴァダ州は、共和党が民主党から連邦上院の議席を奪う最大のチャンスとなる州だ。

現職のキャサリン・コルテス・マスト連邦上院議員(民主党)は、決して安泰とは言えない。最近の各種世論調査では、共和党の挑戦者であるアダム・ラクサルトがわずかに優勢となっている。月曜日の午後に発表されたリアル・クリア・ポリティックス(RealClearPoliticsRCP)の平均では、ラクサルトが1ポイントリードしているという状況だ。

レースがどちらの道に進むにせよ、政治の専門家たちは、ラティーノ系有権者たちの間での民主党支持の更なる低下、あるいは安定化の兆候を探るために、この結果に注目するだろう。

民主党は既に、フロリダ州南部やテキサス州のリオグランデヴァレーなど、国内の他の地域でラティーノ系支持の低下の兆しが見られることを懸念している。

コルテス・マストはアメリカ史上初のラティーノ系上院議員で、彼女の公約には包括的な移民制度改革への強い支持が含まれている。

祖父が連邦上院議員やネヴァダ州知事を務めたラクサルトは、共和党のテレビ広告で「国境の混乱(boarder chaos)」と称し、コルテス・マスト議員やバイデン大統領を非難している。

ラクサルトは、スペイン語の広告や「Latinos Con Laxalt」のイヴェントなど、ラティーノ系有権者たちに対して激しい支持獲得競争を行っている。彼は、「ラティーノ系有権者は経済成長と機会という共和党の公約に応えている」と主張する。

それでもコルテス・マストはラティーノ系有権者のほとんどを獲得するはずだが、ラティーノ系有権者の間での両者の獲得支持の差は極めて重要となるだろう。

過去2人の民主党大統領候補、2020年のバイデンと2016年のヒラリー・クリントンは、出口調査によると、ネヴァダ州でのラティーノ系有権者の支持率で、それぞれ26ポイント、31ポイント差をつけていた。

もしコルテス・マストがこれよりずっと小さい差しかつけられなければ、おそらく彼女にとって破滅を意味し、全米の民主党議員に混乱を引き起こすことになる。

(2)フロリダ州とデサンティスの2024年の希望(Florida and DeSantis’s 2024 hopes
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理論的には、フロリダ州のロン・デサンティス知事(共和党)は厳しい再選キャンペーンに直面していたかもしれない。

知事は様々な問題でリベラル派を激怒させ、最近の最も爆発的な例は、彼が組織したマサチューセッツ州マーサズ・ヴィンヤードへの移民を送る飛行機便だ。

デサンティスは学校での性教育の制限を定める法律を支持したが、それは別の批判を生み出した。デサンティスとバイデンはまた、新型コロナウイルス感染拡大をめぐって激しく対立した。

こうした状況にもかかわらず、デサンティスは民主党の対立候補であるチャーリー・クリスト前連邦下院議員を大きく引き離している。

クリストは元知事で、元共和党員だが、リアル・クリア・ポリティックスの平均ではデサンティスが12ポイント以上リードしている。

現職知事のデサンティスが圧勝すれば、2024年の大統領選挙への立候補の憶測が高まっている中、手ごたえを感じることになる。

デサンティスは、共和党の大統領選挙予備選挙でドナルド・トランプ元大統領に一矢報いることができる唯一の共和党員との見方が広がっている。トランプが出馬を見送った場合、デサンティスは即座に最有力候補に躍り出ることになるだろう。

フロリダ州は共和党優勢に傾き始めてはいるが民主党との差は僅かでしかない。2018年の州知事選挙でデサンティスは1ポイント以下の差で初当選し、2020年にはトランプがバイデンにおよそ3ポイント差をつけてフロリダ州を制した。

その中で、デサンティスが得票率で2桁の差をつけて勝利を収めれば、彼は2024年に全米で最も選挙に強い共和党員であると主張する上でそれを証明する強力なデータとなる。

デサンティスの強さを考えれば、デサンティスとトランプの間に緊張が高まるのは当然だ。

トランプは選挙の投開票日直前、2日前の11月6日にマイアミで集会を開く予定だ。民主党のヴァル・デミングス連邦下院議員が候補者になっている、連邦上院議員選挙において、再選を果たすと予想されるマルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出)もトランプ主催の集会に出席する予定だ。

複数のメディアは、デサンティスはこの集会に招待されていないと報じている。

(3)アリゾナ州と2020年大統領選挙否定論(Arizona and election denialism
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民主党は今回の選挙で、特に2020年の大統領選挙における選挙不正の虚偽の主張と、扇動的な言葉を好むトランプを争点にしようとしてきた。

今のところ、少なくとも民主党の支持層を超えて、その主張が多くの有権者たちに浸透することはなさそうだ。

その代表例が、アリゾナ州の共和党知事候補であるカリ・レイクだ。

熱心なトランプ支持者であるレイクは、2020年の大統領選挙は違法であると繰り返し主張している。彼女はまた、今年初めの自身の共和党予備選が何らかの形で汚染されている可能性を示唆した。それは彼女の予備選挙での勝利が明らかになるまで続いた。レイク最終的に「私たちは不正に勝った」と宣言した。

10月中旬、ABCニュースのジョン・カールとのインタヴューで、レイクは今年の選挙の結果を受け入れるかどうかについて、ひどく曖昧な態度を示した。

レイクは、もし敗北した場合、自分の敗北を認めるかどうかについてカールに質問され、「公正、正直、透明である限り」認めると答えた。

それでもレイクは、リアル・クリア・ポリティックスの平均で民主党の対立候補であるケイティ・ホッブス州務長官に4ポイント近く差を付けてリードしている。

レイクがリードしているのは、共和党予備選挙で彼女を支持したトランプとの親密さと、元TVニュースキャスターで鍛えたメディアスキルに助けられているからだ。

何より重要なのは、アリゾナ州におけるバイデンの支持率が低調で、9月下旬のマリスト大学実施の世論調査では、登録有権者の39%が支持、54%が不支持という結果になったことだ。

レイクの勝利は、トランプとトランプ主義にとって大きな追い風となるだろう。

また、レイクが勝利することは、アメリカの民主政治体制の道筋を懸念する民主党員たちなどの血を凍らせる結果ということになるだろう。

(4)オハイオ州とブルーカラー有権者からの支持強化を求める民主党の探求(Ohio and Democrats’ quest to shore up blue-collar support
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民主党にとって今年の数少ない明るい話題は、ティム・ライアン連邦下院議員(民主党)が共和党のJD・ヴァンスとの連邦上院議員選挙で、多くのワシントン政治専門家たちの予想以上に競争力を発揮したオハイオ州だ。

オハイオ州は数十年にわたり民主党にとって先導指標であったが、近年は急激に共和党に傾倒している。トランプ大統領は2016年、2020年ともに同州を約8ポイント差で制した。

ライアンは、世論調査の平均値でヴァンスに23ポイント以上離されないでついていっている。

ライアンは、ヤングスタウンエリアでの自身の平凡なルーツを強調し、特に「警察から予算をはく奪せよ(Defund the Police)」 という有害なテーマについて、自身が所属する民主党の進歩主義的な要素との違いを明確にすることで戦ってきた。

ライアンは「バイデンは2024年に大統領選挙に再出馬すべきだとは考えていない」とも発言しているのが特徴的だ。

ライアンが直面している逆風を考えると、いずれも勝利を切り開くには十分ではないかもしれない。

現在、リアル・クリア・ポリティックスの平均では2ポイント差、データ・世論調査サイト「ファイヴサーティエイト(FiveThirtyEight)」では、ヴァンスの勝率は80%近くとされている。

ライアンに近い人々は、ミッチ・マコーネル連邦上院院内総務(共和党)とつながりのあるスーパーPACがヴァンスを支援するために約2800万ドルを費やしたにもかかわらず、全米民主党がライアンにより多くの資金援助をしなかったことを不満に思っている。

いずれにせよ、ライアンが勝つにしても負けるにしても、他の民主党員たちは、ライアンが労働者階級の有権者にどれだけ受け入れられるか、この結果を鋭く観察することになる。

もしライアンが好成績を収めれば、今後の選挙戦の雛形(テンプレイト)となる可能性がある。

(5)ミシガン州と中絶権をめぐる戦い(Michigan and the fight over abortion rights
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ミシガン州知事選挙は現在のところ民主党が神経を尖らせている選挙の1つとなっている。

現職のグレッチェン・ウィットマー知事(民主党)は、共和党の対立候補チューダー・ディクソンが10月初旬に2桁つけられていたリードを少しずつ縮めているのを目撃している。

リアル・クリア・ポリティックスの平均ではウィットマーが4.2ポイントの差をつけてリードしている。最近のある世論調査では同率という結果が出た。

両候補者間の最も顕著な対立点の1つは人工妊娠中絶である。

ウィットマーは中絶の権利を断固として擁護し、ディクソンはウィットマーと正反対だ。

現職知事ウィットマーはこの問題について生々しい言葉で語っている。大学時代にレイプされ、その結果として妊娠するのではないかという恐怖を感じたことを公然と語っている。また、中絶の権利を守るための戦いを、成人した自分の2人の娘に言及して語っている。

対照的に、ディクソンは、レイプや近親相姦の場合でも中絶に反対する立場を示しており、ウィットマーの立場を「極めて過激だ」と評している。

ミシガン州では、中絶の権利を明記する州憲法改正案「プロポーザル3」に対して有権者が意見を述べる機会があるため、中絶問題は特に顕著になる。

世論調査では、ミシガン州民の多くは中絶が広く合法とされることを望んでいる。中絶権活動家たちは、夏に、より保守的なカンザス州で、自分たちの側(中絶合法化)がほぼ同等の票を獲得したことに注目している。

もしウィットマー知事がミシガン州で圧勝すれば、中絶問題の有効性を証明することになる。

しかし、もしレースが拮抗し続けるか、あるいは彼女が敗れるなら、選挙結果から得られる教訓は全く異なるものになるだろう。

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これら5つの選挙戦が連邦上院の過半数をどちらが制するかを決定することになるだろう(These five races will determine the Senate majority

マックス・グリーンウッド、アル・ウィーヴァー筆

2022年10月31日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3712941-these-five-races-will-determine-the-senate-majority/

連邦上院議員選挙は、有権者が投票に向かうまで残り1週間しかなく、誰が勝ってもおかしくない状況だ。

共和党は現状から1議席増を確保すれば良い状況だ。国内環境がますます共和党寄りになっていて、ジョージア州とネヴァダ州で共和党がリードしているとの調査結果もあり、その扉を叩いている最中だ。「ファイヴサーティエイト(FiveThirtyEight)」の最新予測によると、過半数をめぐる戦いは「デッドヒート(dead heat)」状態になっており、最後の数日間は有権者を投票に向かわせるための最後の全力疾走でのスパートを両党が行っている。

連邦上院の過半数を決めることになるだろう5つの選挙戦をこれから見ていく。

(1)アリゾナ州(Arizona
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このリストにある5州のうち、民主党がマーク・ケリー連邦上院議員の議席を維持する可能性はまだ高いが、共和党のブレイク・マスターズがここ数週間でその差を縮めてきている。

ケリー議員は、再選を目指す民主党現職議員の中で最有力とされてきたが、8月初旬の予備選で共和党候補が浮上した後、2ヶ月近くマスターズに対してかなりのリードを保っていた。その多くは、民主党の圧倒的な資金調達作戦の結果、広告の猛攻を行ったおかげだ。

しかし、ここ数週間で状況は一変し、ほとんどの調査でケリーのリードは誤差の範囲に収まっている。その理由の多くは、激戦州でのレースが自然に接戦になることと、共和党の州知事選挙候補カリ・レイクの存在が上院議員選挙の結果に影響することの2つであるとあるストラティジストは語っている。

全国の連邦上院選挙に携わっている民主党のある幹部は、「ケリーが扉をこじ開けるとは思うが、誰もが予想するよりも選挙戦は極めて厳しい」と述べた。

アリゾナ在住のある共和党幹部は本誌の取材に対し、月曜日に出た『ニューヨーク・タイムズ』紙とシエナ・カレッジの共同世論調査は「現実的」だとしながらも、現時点でマスターズが2、3ポイントの差をは予想の範囲内であるとし、逆転の可能性の原動力はレイクでも述べた。

このストラティジストは「レイクとマスターズが協力しているのは間違いない。彼女はティーム全体をゴールまで引っ張ろうとしている」と述べている。

最新のリアル・クリア・ポリティックスの平均によると、州知事選挙でレイク(共和党)はアリゾナ州務長官ケイティ・ホッブス(民主党)を3.8%ポイントリードしている。同様に、現職の連邦上院議員ケリー(民主党)はマスターズ(共和党)を2.4ポイント差でリードしている。

(2)ジョージア州(Georgia
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ラファエル・ウォーノック連邦上院議員(ジョージア州選出、民主党)は、共和党の対立候補ハーシェル・ウォーカーに対して優位に立っているように見えたが、元NFLのスター選手で初出馬のウォーカーは、連邦上院選挙の過程で個人的にも職業的にも多くの論争に巻き込まれている。

ウォーカーに関する最も衝撃的な事実の1つは、先月初め、『デイリー・ビースト』紙が報じたもので、ウォーカーが2009年に当時の恋人に中絶手術を受けさせるために金を支払ったという疑惑を詳細に報じたものだ。

しかし、ウォーカーは世論調査でこのスキャンダルからそれほど大きな打撃を受けていない。ウォーカーは、犯罪の増加や長引く経済的懸念について何度もウォーノック議員を非難し、スキャンダルについてほぼ嘘だと一蹴している。その結果、ウォーカーはウォーノックとの各種世論調査の差を着実に縮め、ファイヴサーティエイトの世論調査平均によると、現在1ポイント強の差でウォーノックがリードしている。

元州議会上院議員でジョージア州共和党委員長のチャック・クレイは、「実際問題、ウォーカーはこれまで見た中で最も多く攻撃されている。私たちがまだ知らないような恐ろしい話が潜んでいるのでなければ、彼はこれまでにかなり叩かれていると思う」と述べた。

ウォーノックとウォーカーのレースが特に不安定なのは、ジョージア州は、候補者が選挙に勝つために50%以上の得票を必要とする2つの州のうちの1つであるという事実だ。そして、今のところ、ウォーノックもウォーカーもその基準に達していない。

クレイは「ウォーカーは50%には達しないかもしれないが、全てのネガティブな要素が大きな影響を及ぼしているようには見えない。まだ迷っている最後の2、3パーセントの人たちに、全てがかかっている」と述べた。

(3)ネヴァダ州(Nevada
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再選を目指す民主党所属の連邦上院議員の中で、キャサリン・コルテス・マスト連邦上院議員(ネバダ州選出、民主党)は最も脆弱かもしれない。

民主党の選挙戦が最も盛り上がっていた時期でさえ、彼女は共和党のライバルである元州司法長官アダム・ラクサルトに対して、他の激戦区の民主党議員が持つような明確なリードを保ってこなかった。ニューヨーク・タイムズとシエナ・カレッジが月曜日に発表した新しい世論調査では、コルテス・マストとラクサルトは47%で拮抗している。

ネヴァダ州は、民主、共和両党にとって一連の課題を突きつけている。一方、民主党は近年、ネヴァダ州で連勝を続けており、2018年のディーン・ヘラー元連邦上院議員(ネバダ州選出)の落選とその2年後のジョー・バイデン大統領の勝利で頂点に立った。

他方、共和党がラティーノ系有権者の間で差を拡大していることは、民主党がネヴァダ州での勝利を推進するために長年頼ってきた支持基盤を削り取る可能性がある。また、ネヴァダ州は人口が流動的であるため、政治的に固定化することが特に難しい。

複数の連邦上院議員選挙に携わった経験を持つある民主党のストラティジストは、「ネヴァダ州は、色々な意味でつかみどころがない。ネヴァダ州は、私たちが見てきた様々な潮流やトレンドが集まる場所だ」と語った。

(4)ペンシルヴァニア州(Pennsylvania
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選挙戦最終週、メフメト・オズの背後にはしっかりと風が吹いているが、それが来週ジョン・フェッターマン副知事(民主党)を倒すのに十分かどうかはまだ分からない。

現段階では、明らかにオズ有利な状況である。オズの犯罪増加についての絶え間ない批判は、何ヶ月も前から有権者の共感を呼び、先週の討論会では、脳卒中のため苦戦を続けていたフェッターマンの恩恵に浴した。

しかし、オズの終盤の追い上げは、州司法長官ジョシュ・シャピロ(民主党)の支持者を知事選、特にフィラデルフィア近郊で十分に引き剥がせるかどうかにかかっている。シャピロは、任期満了のトム・ウルフ知事(民主党)の後任として、ダグ・マストリアーノ州上院議員(共和党)に対する最有力候補と目されている。

ミューレンバーグ大学政治学教授であるクリス・ボリックは、オズの最近のメッセージを分析して次のように述べた。「本当に厳しいレースで、このクロスオーヴァー集団(民主党支持から共和党支持へ移る人々)はインパクトがあるかもしれない。メフメト・オズはフェッターマンを叩きのめして自分を穏健派として売り込もうとしている。彼はトランプについて話しているのではない。マストリアーノのような軽薄な党派的なことは一切語っていない」。

ブリックは続けて「これはアピールだ。オズの売りは、彼は大丈夫だということだ。過激ではないということだ」と述べた。

リアル・クリア・ポリティックスの最新の調査平均によると、フェッターマンはまだ1.5ポイントリードしている。

誰が勝利しても、僅差で勝利する可能性が高く、選挙の夜には勝敗がつかず、次の連邦上院議員が決まるまで何日もかかる可能性が高まっている。リー・チャップマン州務長官代理(民主党)は先週、完全な結果を出すには「少なくとも数日かかるだろう」と述べた。

ペンシルヴァニア州のある共和党幹部は本誌の取材に対し、「もしこれが厳しい選挙だと言うならば、選挙の正当性が疑われるような、非常に危険なウサギの穴にまた入ることになるだろう。他の州では、このようなことが予定通りに行われているのを見ると、なぜペンシルヴァニア州ではできないのかという疑問が生じる」。

(5)ウィスコンシン州(Wisconsin
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2022年は全体的に厳しい政治環境にあるが、民主党はウィスコンシン州に目をつけ、論争の絶えない共和党現職のロン・ジョンソン連邦上院議員を有権者が納得して追い出してくれるかもしれないと考えた。

民主党側は、長期にわたる、時には厳しい予備選挙を経て、副知事のマンデラ・バーンズ(ウィスコンシン州、民主党)を指名した。初期の世論調査ではジョンソンが危ういとされていたが、バーンズも総選挙への出馬に苦戦し、彼を「急進左派」と決めつける攻撃に何週間も晒されることになった。

民主党は最後の数週間、バーンズに最後の追い風を吹かせようと、選挙戦に資金を注ぎ込んでいる。バラク・オバマ前大統領は、今でも民主党で最も人気のある人物の一人であり、週末にはウィスコンシン州で党勢を回復させるために奔走している。

また、ファイヴサーティエイトの平均値では、ジョンソンがバーンズに3.4ポイントの差をつけており、レースは依然として接戦であることは確かだ。それでも共和党は、バーンズの見込みが過大評価され、民主党はジョンソンの強さを過小評価していると主張する。

共和党系のストラティジストのダグ・ヘイは、今年初め、「候補者の質」を理由に同党の連邦上院選勝利の見通しを軽視したミッチ・マコーネル連邦上院少数党(共和党)院内総務(共和党)の言葉を引用して発言した。

ヘイは「候補者の質が重要だと言って、マコーネルを非難しようとした人もいた。しかし、それは民主党の側でも重要なことだ。これはマンデラ・バーンズがあれほど期待はずれだった理由の1つだ」と語った。

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