ダニエル・シュルマン
講談社
2015-10-28



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 2015年8月20日に告示される岩手県知事選挙に、自民党と公明党の全面支援を受けての立候補を予定していた平野達男参議院議員(元復興相)が立候補を取り止めると発表しました。今年の4月に平野氏が県知事選挙に立候補すると発表された時は、生活の党代表の小沢一郎代議士の地盤で、「小沢王国」とまで呼ばれた岩手県で、小沢系で現職知事の達増拓也氏が敗北するのではないかとまで言われていました。平野氏は東日本大震災でご家族が亡くなり、ご自宅も大きな被害を受け、政治的には復興大臣となり、復興に取り組みました。その実績もあり、県知事にふさわしいと考える県民も多くいると見られていました。

 

 しかし、先の仙台市議選での自民党の低調に加え、注目を浴びる県知事選挙でも、本日行われている埼玉県知事選挙と岩手県知事選挙で自民党が苦戦すると見られて、敗北を重ねることは政権にとって痛手となるという判断で、平野氏の立候補取り止めが進められたようです。埼玉で敗北、岩手で敗北、平野氏の辞任に伴う参院補選での敗北となれば、大きな痛手となりますので、何とか埼玉での敗北だけにとどめたいと自民党は考えているようです。

 

埼玉県知事選挙はいつも投票率が低く、低投票率の場合は組織を持っていることが有利に働きますし、自民党系の国会議員や地方議員も多くいるにもかかわらず、それでも勝てないということになると、自民党の状況は相当に深刻です。この自民党の退潮の原因は安保法制です。

 

 「地方選挙と国政問題は関係ない」と言いますが、国政問題が直接自分たちの生活に降りかかってくるということになると、それは切り離せない問題になります。そして、そういう問題が起きている時に、国政選挙があれば良いですが、そうではない場合に「意志表示」の手段として地方選挙が使われることになります。

 

 地方選挙では卿佐藤を除く与野党全て相乗りなんてことはよくあることですが、今回の埼玉県知事選挙はちょっと特殊ですが、岩手県知事選挙は与野党対決の構図になるはずでした。岩手県民はそこで投票という形で意思表示ができるはずでした。しかし、与党自民党が逃げ出してしまいました。あれだけ大々的に発表しておきながら。平野氏個人のことを考えると、これで自民党に魂を売って、恩を売ったことにはなりますが、県民を裏切ったことになります。これからの政治生命に大きな傷がついてしまいました。

 

 安保法制に対する国民の不安というものは数カ月で自民党をここまで追い詰めることになりました。自民党は敗北を免れるために、平野氏に出馬取り止めを依頼したそうですが、どちらにしても「負けは負け」です。しかも国会でこれだけの議員数を持つ巨大与党が、しっぽを巻いて国民の前から逃げ出してしまったという恥ずべき醜態を晒してしまいました。この出馬取り止め自体が自民党にとっては大きな痛手となりました。

 

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「岩手県知事選 安保審議の影響避けた自民 「連敗ドミノ」をブロック」

 

産経デジタル 2015年8月8日

http://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/150808/plt15080801140002-n1.html

http://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/150808/plt15080801140002-n2.html

 

 岩手県知事選(8月20日告示)に立候補を予定していた平野達男元復興相が7日に出馬を断念したのは、全面支援の構えを見せていた自民党が形成不利と見て「不戦敗」を選んだからだ。自民党は、平野氏出馬に伴う参院岩手選挙区の補選、今後の地方選での「連敗ドミノ」を警戒。安倍晋三政権へのダメージや来夏の参院選へ影響を、極力抑えたいとの思惑があった。

 

 「いろいろな方からアドバイスがあったが、最終的に判断したのは私だ」

 

 平野氏は7日、岩手県庁で記者会見し、決断の背景に、自民党側の“事情”があったことをにじませた。その上で平野氏は、「安全保障を争点とした選挙はしたくない」とも述べ、中央政界の与野党抗争に巻き込まれたことを悔しがった。

 

 生活の党と山本太郎となかまたちや民主党の支援を受け、3選を目指す現職の達増(たっそ)拓也氏に対し、自民党が白羽の矢を立てたのが平野氏だった。

 

 生活の党の小沢一郎代表は地元の岩手県に強固な地盤を持っており、自民党は知事選を「『小沢王国』岩手で小沢系の息の根を止める最終決戦」(党幹部)と位置づけ、党本部が中心になって県内の有力団体に支援を要請。公明党岩手県本部も平野氏支持を決めて準備を進めてきた。

 

しかし、この流れに待ったをかけたのが、国会での安保関連法案の審議の遅れだった。今国会の会期が岩手県知事選をまたぐ9月27日まで大幅延長され、知事選の投開票日と参院採決時期が重なる見通しとなったことで状況は変化した。

 

 また、安保関連法案への世論の反発で安倍内閣の支持率は急落。自民党は、昭和62年の参院岩手補選で同党候補が敗れ、当時の中曽根康弘政権が打撃を受けた「岩手ショック」の再来を警戒したのだ。

 

 さらに、9日投開票の埼玉県知事選でも自民党県連が支援する新人候補の苦戦が伝えられている。埼玉、岩手と県知事選に2連敗し、平野氏出馬に伴う参院岩手補選でも敗北する事態となれば、野党が勢いづくのは明らか。

 

 そうなれば、9月には安倍晋三首相が再選を目指す党総裁選もあるが、政権のイメージダウンは避けられない。野党優勢の流れが続き、今後の地方選でも負けが込めば、来夏の参院選にも暗雲が立ちこめかねないからだ。

 

 谷垣禎一幹事長は7日の記者会見で「知事選は国政の課題と連動する。そういうことも十分意識して全体の政治スケジュールを作らなければならない」と強調した。(山本雄史、豊田真由美)

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)







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2014-05-23