古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:選挙介入

 古村治彦です。

 2020年2月22日に実施されたアメリカ大統領選挙民主党予備選挙・ネヴァダ州党員集会の結果はバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)が圧勝という結果が出た。まだ最終結果が出ていないので、獲得代議員数は確定していない。2位にはジョー・バイデン前副大統領が入りそうだが、得票率ではサンダースの半分にも届かない状況だ。それでも持ち直したという評価になっているというのは、2019年を通じて隠し世論調査でトップを走ってきた候補者としては何とも情けない話だ。
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 サンダースの大躍進を苦々しく思っているのは、ドナルド・トランプ大統領や共和党側ではなく、民主党内の反サンダースの人々だ。民主党エスタブリッシュメント派と呼ばれる主流派の人々だ。

 2020年2月21日に『ワシントン・ポスト』紙が、アメリカ政府の情報機関が、2020年のアメリカ大統領選挙に介入するために、ドナルド・トランプ大統領とバーニー・サンダースを支援している、選挙介入をしている、と報じた。アメリカ大統領選挙の結果を、アメリカの有権者の考えではなく、ロシアの意向によって決められるなどということは、アメリカ国家の正当性の根幹を揺るがす大事件だ。

 ここで重要なのは、報道でサンダースの名前が挙がった点だ。「サンダースの大躍進の裏にはロシアの存在がある」と読み取る人も出てくるだろう。この報道は、トランプ大統領に対する攻撃であると同時に、サンダースへの攻撃ということになる。

 この報道に関しては、サンダースは、ロシアが選挙に介入しようとしているという情報を伝達されたことは認めたが、ロシアに対して「アメリカの選挙に手を触れようとするな」という警告を発した。

 アメリカはこれまで世界各国の選挙に介入したり、クーデターに関与したりしてきた。日本についても、自民党に選挙資金を提供したり、労働組合を懐柔したりすることで、安定的な一党支配体制を構築した。このことについては拙著『アメリカ政治の秘密』をお読みいただきたい。

 下の記事によると、サンダースはロシアの選挙介入に関する報道が出た後、それがワシントン・ポスト紙の報道だと知り、「good friends(本当に仲の良い友人たち)」と嫌味たっぷりに言い捨てたそうだ。これは、「ああ、なるほど、民主党内の私に反対する勢力が書かせたな、仲の良いワシントン・ポストを使ったな」というだ。そして、その後に、ロシアからの選挙介入を非難しつつ、民主・共和両党のエスタブリッシュメント派を名指しし、「あなたたちもロシア人と同じく、私たちを止めることはできない」とツイッター上で宣言した。
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 下の記事の著者クリス・シリーザは私の尊敬するアメリカの政治記者だが、彼は一連の動きに敏感に反応して、これはサンダースによる「宣戦布告」だと書いている。民主党内部の争いについてはこのブログでも何度も紹介しているが、私はシナリオによっては分裂もあると考える。象徴的な言葉を使えば、「オバマの党」と「サンダースの党」に分裂することになると考えている。世界中どこでもそうだが、急速な変化を望む人々(革命を求める人々をしておく)と漸進的な変化を望む人々(改良を求める人々としておく)がどうしても対立してしまう。

 今のアメリカは若者たち、ミレニアル世代(20代中盤くらいから30代後半くらいまで)とZ世代(18歳から20代中盤くらいまで)には、「自分たちは親や祖父母たちに比べて経済的、社会的に恵まれていない」「上の世代が決めた戦争の最前線に放り込まれるのは若い私たちだ」「アメリカの現制度はおかしいところが多い」という意識が強い。その現状への不満をうまく掬い取ったのがバーニー・サンダースだ。彼は1980年代から主要な主張は一切変わっていない。それを若者たちが「発見」したのだ。

 一方、1990年代に若者で今や中年になったX世代(現在の40歳から上くらい)は上の世代と同じく、穏健になっている。私もこの世代に属するが(日本で言えば団塊ジュニア世代となる)、1994年にアメリカ映画「リアリティ・バイツ」という映画が公開された。私は、主演の女優ウイノナ・ライダーに憧れたものだが、若者たちの日常の苦しさを描いた映画で、X世代を象徴する映画と当時言われた。「リアリティ・バイツ(Reality bites)」とは「日常が噛みついてくる」という意味だ。X世代はあれから25年経って、現実に噛み千切られて、すっかり丸くなった。世論調査を見ても、ジョー・バイデン支持の割合が高い。「何とかしようと思っても無駄さ、現実はとても厳しいものさ」という諦観があるのだと思う。民主党支持層には世代間の亀裂がある。大まかに言えば、若い人たちはサンダース支持、X世代から上は中道派ということになる。

 民主党は分裂への動きも含みながら大統領選挙予備選挙を進めていくことになる。繰り返しになるが、予備選挙の結果次第では、民主党は分裂するのではないかと私考えている。私が考える最悪のシナリオは、6月までの民主党予備選挙で宣誓済み代い議員獲得数でサンダースが1位になるが過半数には至らない、そこで7月の民主党全国大会の代議員による党の指名候補選挙で1回目の投票では誰も過半数を得ることができず、2回目の投票ということになり、特別代議員も参加しての選挙で、サンダース以外の候補者が過半数を獲得して党の指名候補となり、それに憤激したサンダース支持者たちが暴れるというものだ。

 民主党にとってはサンダースがすんなりと宣誓済み代議員の過半数を獲得して民主党全国大会に進んで、1回目の投票でサンダースが党の指名候補になる方がまだ分裂の危険は少ないと思う。エスタブリッシュメント派も渋々従うだろうし、どうせサンダースでは選挙に勝てない、勝てなければ、「だから左に寄り過ぎては駄目なんだ」と言って、左派を追い出すか、おとなしくさせることができる。

 サンダースでは本選挙でトランプ大統領に勝てないというのは、よほどの失政がない限り、現職が有利ということもあるが、選挙の帰趨を決める重要な州であるフロリダ州で勝てないということもあるからだ。フロリダ州は2000年以降、勝利した側が全て取っている。フロリダ州の特徴は、成功して優雅な引退生活を送るために引っ越してきた老人たちが多いこと、キューバ革命の際にキューバから亡命してきた人々とその子孫が多く、反共意識が強いことがある。「社会主義」という言葉には反感を持つ。「資本主義自由市場経済」の勝利者であるアメリカで生まれ育ち、成功した人たちと、革命から逃れてきた人々、どちらもサンダースを支持する人たちは少ない。もちろん、これからのサンダースの選挙運動次第であるが、現在のところ、ひっくり返すところまで至っていない。また、中西部の五大湖周辺州では、共和党優位のインディアナ州と民主党優位のイリノイ州を除く、ペンシルヴァニア州(厳密には中西部には属さないが)、オハイオ州、ミシガン州、ウィスコンシン州の動向が重油だ。これらの州で勝利を収めねば、大統領への当選もない。今のところ、サンダースが固めているということもないようだ。こうしたことから、現在のところ、トランプ大統領の再選の可能性は高いということになる。

 民主党が勝手に内部闘争をしてくれている分には、トランプ大統領も「どうぞどうぞ好きなだけおやんなさい」ということになり、時々ちょっかいを出して、火に油を注ぐようなことをやればよい、高みの見物ということになる。

(貼り付けはじめ)

バーニー・サンダースが遂に民主党エスタブリッシュメント派に対して宣戦布告(Bernie Sanders just declared war on the Democratic establishment

クリス・シリーザ(CNN編集委員)筆Chris Cillizza

2020年2月22日

CNN

https://edition.cnn.com/2020/02/22/politics/bernie-sanders-2020/index.html

CNN発。金曜日の夜、バーニー・サンダースはこれまでの長年にわたる民主党エスタブリッシュメント派との戦いを公の場に暴露した。2020年の大統領選挙民主党予備選挙でのサンダースの勝利にロシアが貢献しようとしているというニュースが報じられて数時間後でありネヴァダ州での民主党党員集会の数時間前に、サンダースはツイートをしてエスタブリッシュメント派との戦いを宣言した。

金曜日の夜、サンダースはツイッターに次のように投稿(ツイート)した。「共和党エスタブリッシュメント派の皆さんへのニュースが入りました。民主党エスタブリッシュメント派の皆さんにもニュースがあります。そのニュースとは、彼ら(ロシア人)は私を止められない、というものです」。

なんてこった!

このツイートのタイミングは決して偶然ではないと思われる。

『ワシントン・ポスト』紙は金曜日午後、その支援がどれだけ明らかなのかは不明としながらも、サンダース選対はロシアがサンダースの勝利のために動いているというブリーフィングを受けたと報じた。

同日、サンダースは1カ月前にロシアの試みについて情報提供を受けたことを認めた。サンダースは次のように述べた。「ロシア、そしておそらく他の国々が、今回の大統領選挙に関与しようとしているという情報が私たちに伝えられました。私はロシアに対してメッセージを送ります。アメリカ国内のいかなる選挙にも手を出すな」。

サンダースは金曜日の夜のツイートの前に、選挙戦を取材している記者団に対して、ワシントン・ポスト紙の報道のタイミングには何かの意図があるのではないかという疑いを持っていると語った。彼はネヴァダ州の党員集会の直前だったことを指摘し、どのメディアが報じたのかと質問した。ワシントン・ポスト紙が報じたと知らされると、皮肉たっぷりに「誰かさんたちの素晴らしい友人たちだね」と言い残した。

その後、サンダースの広報担当マイク・キャスカはツイートの中で、トランプ政権の差し金を示唆した。キャスカは次のようにツイートした。「もしこのリークがバーニーを傷つけることを意図しないものだったなら、誰からも関心も集めることはなかっただろう。トランプ大統領が本選挙でバーニーと対決することに関して神経質になっているのは明らかだ」。

そして、サンダースは前述のようなツイートをした。これは明らかに、民主・共和両党のエスタブリッシュメント派と戦争状態にあるとサンダース自身が考えていることを明確にするものだった。予想通り、サンダースのツイートに対しては、多くの否定的な反応が、いわゆる党のエスタブリッシュメントから寄せられた。

長年にわたり民主党のストラティジストを務めているジョー・ロックハートは「民衆党のエスタブリッシュメント派は私たちに公民権、参政権、重火器所持の禁止、社会保障とメディケアを与えてくれました」とツイートし、更に「議員、あなたはこれまでにいったい何を成し遂げましたか?」と投降した。

サンダースの大統領選挙出馬に関する限り、今回だけではなく2016年の時もそうだったが、民主党エスタブリッシュメント派と、サンダース、サンダース選対、支持者たちとの間は戦争状態にあることは公言されていなかったが明らかだった。

2016年のアメリカ大統領選挙民主党予備選挙は憎悪を深めただけに終わった。民主党全国委員会からハッキングされて暴露されたEメールによって、民主党全国委員会の複数のスタッフがヒラリー・クリントンに有利になるように不正を働いていたことが明らかになった。最終的にサンダースはヒラリー・クリントン支持を表明したが、選挙戦を通じて生じた悪感情は消え去ることはなかった。

今年公開されたドキュメンタリー映画の中でヒラリー・クリントンはサンダースについて次のように語った。「彼を好きな人間なんていません。誰も彼と一緒に働きたいと思いません。彼はこれまでに何も成し遂げたことがないんですよ。彼は職業政治家で、他の仕事をしたことがありません。彼の話す内容は馬鹿げたことばかりで、それに引き込まれてしまう人たちのことをかわいそうに思います」。

サンダースは今年1月、ヒラリーからの攻撃をことさら軽いものとして扱おうとした。しかし、彼は自分自身の中に怒りを貯めこみ続けているのは明らかだ。

そして、物事が更に悪くなったのは運営がうまくいかなかったアイオワ州での党員集会時であった。投票集計が絶望的に遅くなったが、それよりもサンダースにとって良くなかったのは、一般得票数ではサンダースが勝利を得ながら、代議員獲得数ではインディアナ州サウスベンド市前市長ピート・ブティジェッジが勝利を収め、結果に分裂があったことだ。こうした結果によって、サンダース自身と彼の支持者たちの脳裏には何かのたくらみが進行しているという考えが浮かんだ。彼らは何が進行しているのか、その裏に何があるのかを明確に分かっていなかったし、現在も分かっていない。しかし、何が確かにあるのだということは確信を持っている。だからサンダースは民主党に頼らずに自力で選挙組織を作り、選挙運動を展開しているのだ。確かに、サンダースは民主党エスタブリッシュメント派に反対する組織を作り上げているのだ。

明確にしておきたい。サンダースの行動も発言も間違っているということではない!長きにわたって民主党に属している政治のプロたちで、民主社会主義者を自認する人物を民主党の大統領選挙本選挙候補者に指名することで民主党が秋の選挙で大敗を喫することになると考えている人たちは本当にたくさんいる。

大統領選挙民主党予備選挙を戦っているサンダースのライヴァルたちはサンダースと民主党との間の薄い関係を問題にしようとしている。ブティジェッジは水曜日の夜にラスヴェガスで開催された討論会で「本当に民主党に属している人物を前に出すようにしましょうよ」と述べた。

金曜日の夜にサンダースが発信したツイートによって、今回の予備選挙を動かしている大きな構造と動きがより明らかになった。戦いの中心にはサンダースがいて、民主党エスタブリッシュメント派とサンダースはどちらが生き残るかの戦いをしている。これが全てだ。サンダースは既に発言し、宣戦布告をしている。民主党エスタブリッシュメント派はサンダースからの攻撃に対して、反撃し、勝利することができるだろうか?

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ大統領の「ロシア疑惑」について、ロバート・ムラー特別検察官の捜査が終わり、その概要をウィリアム・バー司法長官が書簡にして連邦議会に送付しました。その内容は、ロシア疑惑、ロシア疑惑捜査に対するトランプ大統領による司法妨害は共に立証されなかった、というものです。

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報告を受けた後のトランプ大統領
 

 ロシア疑惑とは、2016年の米大統領選挙において、ロシアが当選されると自分たちに都合の悪い民主党ヒラリー・クリントン候補を落選させようとし、共和党のドナルド・トランプ候補陣営と結託、共謀したのではないかという疑惑です。ロシアによる選挙介入はアメリカの複数の情報機関が行われていたと認める報告書を出しています。

 

 トランプ陣営幹部でロシア側と接触があった人物たちが複数いたことから、この問題が大きくなりました。マイケル・フリン国家安全保障問題担当大統領補佐官(当時)がロシア大使と会談を持っていたこと、それをトランプ大統領やペンス副大統領に報告していなかったことなどを理由に、就任早々解任されるということになりました。また、今回の件とは別件もほじくり返され、トランプ陣営の選対本部長(途中で解任)を務めたポール・マナフォートは逮捕されました。

 

 トランプ陣営がロシア側と一緒になってヒラリーを落選させるために動いた「共謀」を証明することは大変難しく、そもそも共謀を明確に立証することは困難でした。実際にムラー特別検察官は多くの人員を投入し1年以上かけて捜査しても確たる証拠は結局見つかりませんでした。

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ロバート・ムラー特別検察官
 

 ロシア疑惑の捜査に対して、トランプ大統領が司法妨害を行ったのではないかという疑惑については、ちょっと歯切れが悪いようです。「これについて有罪を構成するに足るだけの証拠がなかった」ということになりました。民主党側はこの点を突いていくことになるでしょう。しかし、それでもトランプ大統領を弾劾まで追い込むことは不可能になりました。ナンシー・ペロシ下院議長は今回の書簡が出る前から、弾劾はすべきではないということを述べて既に予防線を張っています。

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バー司法長官が連邦議会に送った書簡

 ロシアによるアメリカ大統領選挙への介入はあったでしょう。ロシアにしてみれば、「お前たちもソ連崩壊後、俺たちの国にいろいろと要らない、差し出がましい口をきいたよな」という感情もあり、「やり返しただけだ」ということになるでしょう。

 

また、SNSを使えば、「世論誘導」が出来る、ということも明らかになっています。拙著『アメリカ政治の秘密』でも書きましたが、2011年のアラブの春にはツイッター社やフェイスブック社が関わっていたことは明らかです。アカウントを持つ利用者の個人情報を持ち、書き込みの傾向などを簡単に割り出せるのですから、利用者の考えを誘導しつつ、あくまで「自分で考えた」と思い込ませることは簡単なことです。

 

 今回の捜査結果概要の書簡送付で、トランプ大統領は勝利を収めることが出来ました。弾劾も行われませんし、これまで批判をして来た人々に対して反撃が出来ます。2020年の大統領選挙に向けて好材料となります。これまで長い時間と資源をかけて、この結果と言うのはまさに「大山鳴動して鼠一匹」ということになりました。

 

(貼り付けはじめ)

 

ムラーはトランプに勝利を届けた:5つの要点(Mueller delivers a win for Trump — Five Takeaways

 

ナイオール・スタンジ筆

2019年3月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/435556-mueller-delivers-a-win-for-trump-five-takeaways?rnd=1553476550

 

日曜日、ホワイトハウスにとっては安心を、トランプの敵対者たちには不満が残った。ロバート・ムラー特別検察官による捜査結果の要約がウィリアム・バー司法長官から発表された。

 

22か月にわたる捜査は終了した。ここから要約に関する要点を紹介する。

 

(1)トランプにとっての大勝利

 

トランプ大統領にとって、バー司法長官が連邦議会に送った書簡以上の結果は望むことはできなかっただろう。それほどの最良の結果となった。

 

「共謀などない」、というのはトランプ大統領が一貫して主張してきたことだ、ロバート・ムラー特別検察官と彼のティームはこれに同意することになった。

 

バー司法長官が送った書簡によると、2016年の選挙に関し、「特別検察官の捜査ではトランプ選対、もしくはトランプ選対に関係を持ついかなる人もロシアと共謀も協力もしていない」ということであった。

 

捜査の中心的な疑いであるロシアとの共謀について疑いが晴らされたが、この疑惑は深刻に受け止められ、ムラーには捜査のために多くの資源が投入された。ムラーは19名の法曹関係者を起用し、40名のFBI捜査官の協力を受け、2800通以上の召喚状を発行した。

 

司法手続きへの妨害の可能性についての疑問に関しては、ムラーは明白に、疑いが晴れたのではないし、トランプ大統領が明確に罪を犯したということでもないと述べた。

 

ムラーはこの疑問をバー司法長官とロッド・ローゼンスタイン司法副長官に委ねた。ローゼンスタインは「集められた証拠では、大統領が司法妨害を行ったと断定するには不十分であった」と結論付けた。

 

民主党側はロシア疑惑について更に知りたいと望むだろう

 

フロリダで大統領専用機「エアフォースワン」に登場する直前、記者団に対して短く「完全な潔白の証明だ」と述べた。

 

連邦議会にいるトランプ大統領の味方は強気だ。

 

連邦議会においてトランプに忠実な議員の中の一人、マーク・メドウズ連邦下院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は「本日のバー司法長官の声明はこれまで続いてきた議論に終止符を打つものだ。共謀はなかった。妨害もなかった。これで終わりだ」。

 

ホワイトハウスのホーガン・ギドリー副報道官はワシントンに戻るエアフォースワンの中で、トランプ大統領は元気を回復して好調だと述べた。

 

ギドリーは記者団に対して「大統領の機嫌は大変良い。全てが明らかにされたことを大変喜んでいる」と述べた。

 

(2)民主党側は厳しい戦いに直面する

 

日曜日、民主党側は即座に反応を示した。民主党側は連邦議会で独自の捜査を継続するだろうと述べた。連邦下院では民主党が過半数を握っている。

 

連邦下院司法委員会委員長ジェロルド・ナドラー連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)はツイッター上で、司法委員会はバー司法長官の証人喚問を求めると書いた。ナドラーは、「司法省の内部の分裂と最終決定に関して大変懸念を持っている」とし、それらについて調査すると述べた。

 

連邦下院の情報諜報委員会と監督委員会はトランプ大統領に関連する諸問題について独自の調査を現在も行っている。

 

民主党側は行政府が説明責任を果たすようにするための重要な仕事を行っているのだと主張するだろう。それがその通りに進むのは良いが、それでは民主党側が抱えるより大きな問題の解決にはならない。

 

政権発足直後からのトランプ大統領に関する諸問題の調査の中で、ムラーによる捜査は主要なものとなってきた。一般の有権者たちにしてみれば、ムラーの捜査結果が最終的な結論だということになる。

 

そうなれば民主党側が更なる調査を独自に行うことは難しくなる一方で、トランプ大統領と彼の味方が、民主党側を政治的な野心を持って無駄なことをする人々と決めつけることはより容易になる。

 

民主党側が今回の捜査結果の上を行く、確実性の高い訴追を行う機会を作るためのハードルは急激に高くなった。

 

(3)司法妨害に関する疑問は残る

 

バー司法長官の書簡の中のトランプ大統領にとっての最大の問題は決定的なものとまでは言えないが、司法妨害の疑いに関連するムラーの捜査で明らかにされた事実や証拠が書簡の中では明確にかつ詳細に示されていないということだ。

 

バー司法長官の書簡ではこの点は不明確になっている。民主党側は早速この明確性と詳細さを欠いている点を捉え、更なる情報提供を求めている。

 

連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)と連邦上院少数党(民主党)院内総務チャールズ・シューマー連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は共同声明を発表し、その中で、バー司法長官の書簡について、「多くのことの答えているのと同じくらいに多くの疑問を生み出している」と述べた。

 

民主党側の要求は理にかなっている。

 

バー司法長官の書簡では、司法妨害について、ムラーは「伝統的な検察官の手法による判断を行わないと決定した」と述べている。続けて、「ムラーは、捜査を行った大統領の行動が司法妨害を構成するのかどうかについて、有罪、無罪、どちらの結論も導き出せなかった」とも述べている。

 

これが示しているのは、ムラーは、大統領の行為が少なくとも一般的な司法妨害となり得る証拠を見つけたということかもしれない。それでもバー司法長官とローゼンスタイン司法副長官は刑事事件としての裁判を維持できるだけの強力な証拠は存在しなかったと結論付けた。

 

CNNの法律関係アナリストマイケル・ゼルダンは本誌の取材に対して、ムラーが、捜査で集めた証拠によってトランプ大統領の「疑いが晴れ(exonerate)」てはいないと述べざるを得なかったことに注目し、これは「大変に奇妙な」ことだと指摘した。

 

ゼルダンは「検察官は通常、疑いが晴れる(exoneration)という言葉は使わない」と述べ、これは、ムラーのティームと司法省との間に同意できない点があるのだろうと示唆した。

 

トランプ大統領にとって、ムラーが公開していない情報が司法妨害についての疑いを更に高めるようなものでなくても、公開されることで政治的なダメージを与える可能性があるので、危険はまだ存在しているということになる。

 

(4)大統領弾劾の可能性はなくなった

 

ペロシ下院議長は今月初めに『ワシントン・ポスト』紙とのインタヴューの中で、トランプ大統領に対する弾劾にブレーキをかける発言を行い、驚きを与えた。

 

この時、ペロシ議長は弾劾を進めることを好まないと述べた。

 

その理由について、ペロシ議長は次のように述べた。「弾劾は国家を分裂させてしまうものであり、勢いよく進めるものではないし、疑問や躊躇なく進めるものではないし、党派争いの道具にすべきものでもない。私たちはこの道を進むべきではないと考えている。それはその道を進めばアメリカは分裂してしまうからだ」。

 

バー司法長官の書簡の内容は弾劾を進めるための最低限の条件に届いていない。トランプ大統領を2020年の大統領選挙で落選させるために、前回トランプ大統領に投票した無党派層とそこまで熱心ではないトランプ支持者たちを寝返らせるに足るだけの大きな衝撃にはなっていない。

 

トランプ大統領の政治上の運命は2020年の大統領選挙で決まり、その前に決まるということはない、ということがこれまでよりもより確定的になった。

 

(5)テレビに出ている識者たちが恥をかく

 

メディアに出ている熱心な反トランプの姿勢を取る識者や著名人たち、その中には法律の専門家たちも含まれているが、この人たちの多くはロシア疑惑に関する諸事実がひっくり返されることを願っているとしてもそれは無理のないことだ。

 

バー司法長官の書簡が送られた後にテレビをつける人たちは、そこに出ている識者たちが何とか面目を保とうとしている姿を見て驚くことだろう。

 

ムラーの捜査結果が出たことで、トランプ大統領と彼の家族を馬鹿だ、地味だ、単純だと見下す活発な動きが低下するだろうということは容易に予測できる。

 

トランプ大統領と彼の味方はこれから何日も何カ月も反メディアの太鼓をより大きな音で打ち鳴らすことだろう。この人々は2020年の大統領選挙投票日までメディアの過剰な報道を示す例としてムラーの話をし続けるだろうということは容易に想像できる。

 

日曜日夜に発表した声明の中で、ペンス副大統領は「アメリカにとって偉大な日」になったことを喜ぶと述べた。

 

ペンスは、民主党とそれに同調する不特定の「メディアの人々」が「根拠のない告発」を行ったという主張を行った。

 

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要するにどういうこと トランプ政権のロシア疑惑を800文字以内で

 

2017124

http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-42218253

 

2016年米大統領選をめぐるロシア疑惑がトランプ政権に濃い影を落とし続けてきた。しかしなかなか厄介な話なので、あらためて短く整理してみた。

 

要するに

 

複数の米情報機関は、昨年の大統領選でドナルド・トランプ氏を勝たせようと画策したと結論している。果たしてトランプ陣営関係者がこのために、ロシアと結託したのかどうか、専任の特別検察官が調べている。

 

証拠は

 

トランプ選挙対策本部の複数の幹部が、ロシア政府関係者と接触していた。いくつかの面会については、当初公表されていなかった。

 

接触とは

 

マイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、政権発足前に駐米ロシア大使と会談していたことについて、連邦捜査局(FBI)に嘘をついた。フリン前補佐官はムラー検察官との司法取引に応じ、有罪を認めた。このため、政権幹部の有罪を裏付ける証拠を、前補佐官が持っているのではないかと、取り沙汰されるようになった。

 

大統領の長男、ドナルド・ジュニア氏は選挙期間中の昨年6月、ヒラリー・クリントン氏について「泥(不利な情報)」を持つというロシア人弁護士に面会していた。陣営の外交顧問だったジョージ・パパドプロス被告は、ロシア関係者との接触と面会の仲介についてFBIに嘘をついたと認めた。

 

ほかには誰が関与

 

大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナー上級顧問の関与も注目されている。元選対本部長のポール・マナフォート被告は、大統領選とは関係のない資金洗浄罪で起訴された。

 

そして大統領は

 

ロシア疑惑捜査の一部を指揮していたジェイムズ・コーミー長官を今年5月に解任してからというもの、大統領による司法妨害があったのかどうかが議論されている。これについては法律の専門家の間で、意見が割れている。

 

(英語記事 The Trump-Russia saga in 200 words

 

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ロシア疑惑文書の筆者、トランプ氏への恐喝懸念 議員が証言公開

 

20180110

http://www.bbc.com/japanese/42632824

 

「スティール文書」に関する証言を公開した民主党のダイアン・ファインスタン上院議員

「ロシア当局がドナルド・トランプ氏について決定的に不利な材料を入手している」という調査報告書、いわゆる「スティール文書」に関する米上院公聴会での証言内容が9日、民主党議員によって公開された。文書を作成した元英国情報部員のクリストファー・スティール氏が、トランプ氏がロシアに恐喝されているかもしれないと懸念していたことが、改めて示された。

 

民主党のダイアン・ファインスタイン上院議員(カリフォルニア州選出)は、「スティール文書」の作成を依頼したワシントンの調査会社「フュージョンGPS」の創業者グレン・シンプソン氏が昨年8月に上院司法委員会で証言した際の記録を公表した。シンプソン氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの調査報道記者を経て、「フュージョンGPS」を立ち上げた人物。

 

ファインスタイン議員は、シンプソン氏の依頼に基づき議事録を公開したと説明している。フュージョンGPSをめぐって「妙な憶測や誤情報」が飛び交っているため、証言内容を公表すべきと判断したという。

 

ファインスタイン氏は、トランプ陣営とロシア当局の共謀疑惑や司法妨害疑惑について、捜査や議会調査を妨げようとする「非常に心配な動き」があると懸念を示した。今月初めには、司法委員会のチャールズ・グラスリー委員長(共和党)が、スティール氏について刑事捜査すべきだと発言している。

 

ファインスタイン議員が公表した上院司法委員会の議事録は312ページに及ぶ。そのなかでフュージョンGPSのシンプソン氏は司法委に、スティール氏が20167月の時点で連邦捜査局(FBI)に、トランプ氏がロシアに恐喝されているかもしれないと、懸念を伝えていたと証言している。

 

議事録によるとシンプソン氏は非公開の公聴会で、トランプ氏や側近たちがロシア政府と個人的かつ金銭的につながっていると示す「スティール文書」の内容に自信を示したほか、文書が理由で殺害された人が1人いると証言した。

 

トランプ氏とロシアとの関係についての調査を出資したのは、ヒラリー・クリントン氏の陣営と民主党だったと言われている。ホワイトハウスや共和党関係者の多くは、「スティール文書」の内容に根拠はなく、選挙の対立候補に泥を塗ることだけを目的としたでっちあげだと非難している。

 

トランプ氏がロシア政府に脅されていたという主張を裏付ける証拠は、出てきていない。

 

しかしシンプソン氏は上院議員を前に、「(元英情報部員のスティール氏は)大統領候補が恐喝されているのかどうか、安全保障上の問題があるように見えると考えていた」と証言した。

 

シンプソン氏はさらに、「これが国家安全保障を脅かすのかどうか、クリス(スティール氏)はとても心配だと話していた。そして、この国の政府の誰かにこの情報を伝える義務があると思うと話していた」と証言した。

 

10時間にわたり証言したシンプソン氏は、文書の情報源について議員たちに聞かれても、なかなか答えようとしなかった。

 

フュージョンGPSの顧問弁護士ジョシュア・レビー氏が質疑に割って入り、「シンプソン氏は情報源を慎重に守ろうとしている」と言い、さらに「この文書の公表によってすでに人が1人殺されている。この文書は誠実な仕事の成果で、そのせいで誰かに危害がもたらされるようなことがあってはならない」と述べている。

 

レビー弁護士は、誰が殺害されたのか公聴会で明らかにしなかった。

 

しかしCNNは消息筋の話として、弁護士は特定の人物について言及したのではなく、2016年大統領選後に複数のロシア人が謎の死を遂げていることを念頭に発言したのだと伝えた。

 

「スティール文書」には、トランプ氏がかつてモスクワのホテルで複数の売春婦といるところを撮影されていたなどの内容が含まれている。

 

トランプ氏は昨年111日の記者会見で、この指摘をばかげたことだと一蹴。自分はロシアにいる間は常に、ホテルが監視されているという認識で行動していたなどと話していた。

 

シンプソン氏の証言内容について、FBIはコメントしていない。

 

BBCを含め複数の報道機関が、201611月の大統領選以前に文書について説明を受けていた。しかし、ほとんどの報道機関は内容の裏付けがとれないため、記事にしなかった。

 

米オンラインメディア「マザー・ジョーンズ」が同年1031日に文書の存在について記事にした後、CNNが昨年1月に文書について報道。続いて米バズフィードが、文書の内容をそのまま公表した。

 

シンプソン氏が「スティール文書」以前にロシア企業による人権侵害と資金洗浄を調査した際に、その調査の対象となった米国の投資家ビル・ブラウダー氏は米紙ニューヨーク・タイムズに対して、「(シンプソン氏は)中傷キャンペーンのプロで、金のためなら何でも言う嘘つきだ」と非難している。

 

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ホワイトハウス、FBI「権力乱用」文書公表を承認

 

2018023

http://www.bbc.com/japanese/42928284

 

米司法省と連邦捜査局(FBI)がドナルド・トランプ米大統領に反して偏っている証拠だとして共和党幹部がまとめた文書について、ドナルド・トランプ米大統領は2日、機密扱い解除を承認した。これを受けて連邦議会は、4ページにおよぶ文書を公表した。民主党は、大統領がこれを口実に特別検察官や司法副長官を解任すれば、ウォーターゲート事件当時のような「憲政上の危機」につながると警告した。

 

問題の資料は、米下院情報委員会のデビン・ヌネズ委員長(共和党)のスタッフがまとめた文書(メモ)で、司法省が外国諜報活動偵察法(FISA)にもとづく監視活動権限を乱用し、大統領選のトランプ陣営関係者を不当に監視しようとしたと非難している。ヌネズ議員はトランプ氏の当選後、政権移行チームに参加していた。

 

FBI31日、メモの正確性が疑わしいため、公表について「深刻な懸念を抱いている」と、ホワイトハウスの方針に反対する異例の声明を出した。

 

民主党は、ヌネズ・メモはFBIによるロシア疑惑捜査の正当性を否定するのが狙いだと批判している。

 

ヌネズ・メモは大統領選のロシア疑惑に関するいわゆる「スティール文書」を根拠に、司法省とFBIがトランプ陣営関係者の盗聴監視許可を延長しようとしたと指摘する内容になっている。FBIが昨年3月にFISA裁判所から盗聴令状の延長を得ようとする際に、内容が立証されていない「スティール文書」がその根拠だと裁判所に伝えていなかったと、ヌネズ委員長は問題視している。

 

資料によると、監視対象はトランプ陣営の外交顧問だったカーター・ペイジ氏。同氏は昨年11月、下院情報委員会に対し、20167月のモスクワ訪問でロシア政府関係者と面会したと証言している。

 

スティール文書は、ワシントンの調査会社「フュージョンGPS」が元英国情報部員のクリストファー・スティール氏に作成を依頼したもの。費用の一部は、ヒラリー・クリントン氏の陣営と民主党が出資した。

 

ヌネズ議員の資料はさらに、スティール氏が司法省幹部に、トランプ氏を当選させてはならない、自分は「必死だ」と話していたと書き、一連の動きは「米国民を権力乱用から守るために設けられた司法手続きの懸念すべき破綻」を示していると指摘している。

 

ヌネズ・メモは最高機密扱いに指定されていたが、129日にヌネズ氏が委員長で共和党が多数を占める下院情報委員会が公表を採択し、文書をホワイトハウスに送付。トランプ大統領が2日、機密指定解除を承認した。

 

共和党の反応

 

ヌネズ・メモの公表を支持する共和党関係者は、FBIや司法省における不正行為と政治的偏向を明るみに出すものだと評価する。

 

トランプ大統領は2日、資料の内容について質問され、大勢が「自分を恥じるべきだ」と答えた。大統領はそれに先立ち、FBIや司法省の捜査を政治的に利用して共和党を傷つけようという動きがあると非難していた。

 

ヌネズ委員長は、司法省やFBIが国民の信頼を「深刻に損なった」ことを示すもので、改革のきっかけになるよう期待すると述べた。

 

FBIの監視対象だったペイジ氏は、司法省に対する賠償訴訟でヌネズ・メモを証拠として使うと話した。

 

しかし、共和党の全員がヌネズ・メモ公表を支持しているわけではない。党重鎮のジョン・マケイン上院議員は、共和党の同僚たちがFBIや司法省を攻撃したことを鋭く批判し、トランプ氏が法の支配を損ねたと非難した。

 

マケイン議員はツイッターで、「FBIと司法省に対する最新の攻撃は、いかなるアメリカの利益にもならない。どの党にとっても、どの大統領にとっても。プーチンの利益になるだけだ」と書いた。

 

民主党の反応

 

民主党は、2016年大統領選でのロシア疑惑を捜査するFBIを貶めようとする「恥ずべき」行為だと反発している。

 

民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務は、「情報機関の情報源や活動手法を保護しなかったことで、(トランプ氏は)たった今、お友達のプーチンに花束を贈ったわけだ」と反発した。

 

さらに、チャック・シューマー上院院内総務、ペロシ下院院内総務をはじめ、他に8人の民主党幹部は共同声明で、この文書を「口実」に、ロシア疑惑を捜査しているロバート・ムラー特別検察官や、ムラー氏を任命したロッド・J・ローゼンスタイン司法副長官を更迭してはならないと警告した。

 

「そのような正当性のない行動は、ロシア疑惑捜査に関する司法妨害の試みとみなす」と民主党幹部は言明し、そのようなことになれば1970年代に当時のリチャード・ニクソン大統領がウォーターゲート事件をめぐり特別検察官を罷免しようとした時のような「憲政の危機」につながると念押ししている。

 

ホワイトハウスは後に、司法省に「変更はない」と言明し、ローゼンスタイン副長官は今後も職務を遂行するものと認識していると述べた。

 

ウォーターゲート事件では、ニクソン大統領が197310月に、事件を捜査していた特別検察官の解任を命じ、司法長官と司法副長官が辞任した後、後任の司法長官が特別検察官を解任した。このてんまつは、「土曜の虐殺」と呼ばれる。この後、連邦議会で大統領弾劾決議案の提出が相次ぎ、翌19747月になって、下院司法委員会が大統領を司法妨害で弾劾する委員会決議案を可決した。ニクソン氏は同年8月に辞任した。

 

FBIの反応

 

他方で、FBI職員連合の報道官はヌネズ・メモ公表に先立ち1日、「党派的政争」にかまけて自分たちの職務から目をそらしたことはないし、「今後もそのようなことは容認しない」と声明を出している。

 

昨年夏にトランプ氏に指名されたFBIのクリストファー・レイ長官も、文書の公表前に、公表に対する「深刻な懸念」を表明。さらに公表を受けて、職員にメールで、「口先でしゃべるのはたやすい。長続きするのは実際の仕事の内容だ。自分たちの職務を(政治から)独立して、かつ規則通りに遂行するという、全員共通の決意は揺るがない。私は諸君と共にある」と伝えた。

 

トランプ氏から昨年5月に解任されたジェイムズ・コーミー前FBI長官はツイッターで、ヌネズ・メモの公表を受けて、「それだけ? 不正直で誤解を招くメモが下院情報委員会を台無しにし、各情報機関との信頼を破壊し、FISA裁判所との関係を傷つけ、米国市民に関する機密捜査の内容を暴露するという許しがたい行為に及んだ。なんのために? 司法省とFBIは職務を遂行しなくてはならない」と書いた。

 

秘密は明らかになった。メモは公表され、その結果は……あらかた誰もが予想していた通りだった。

 

共和党作成の資料が言われていたほど衝撃的なものかどうかは、いまや悪名高い「スティール文書」をどう捉えているかによる。FBIFISA裁判所にカーター・ペイジ氏の盗聴監視令状を請求した際、「スティール文書」が『不可欠な」要素だったという、ヌネズ・メモの主張を信じるか。それとも、ヌネズ委員長たちがあえて省いた情報が、令状請求の根拠として実はあったのか。

 

ヌネズ・メモは、FBIはスティール氏の立場についてFISA裁判所に説明すべきだったと主張する。つまり、スティール氏がトランプ氏に否定的で、報道機関としきりに接触し、そもそも文書のための調査活動費が一部、民主党やクリントン陣営から出資されていたことなどだ。

 

しかし、そのような情報開示がされていたとして、それでFISA裁判所は令状発行を拒否しただろうか? 1978年に設置されて以来、FISA裁判所は何万という監視令状請求を受けてきたが、令状を認めなかったのはごくわずかだ。そして、2013年の時点ですでに複数の米情報機関から要注意人物として注目されていたペイジ氏に対する監視活動ひとつを理由に、ロシア疑惑捜査の全てを疑問視しても良いのかどうか。FBIのロシア疑惑捜査は、ペイジ氏への監視を始める数カ月前から始まっていた。20167月に始まったトランプ陣営の外交顧問だったジョージ・パパドプロス被告への捜査が発端となっているのだ。

 

こうした疑問に対する答えによって、このヌネズ・メモが爆弾だったのか、それとも不発弾だったのか、今後への影響が決まる。

 

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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