古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:金正恩

 古村治彦です。

 

 『ウォールストリート・ジャーナル』紙が、トランプ政権幹部たちが北朝鮮に対する攻撃を検討したという報道を行ったということです。

 

 全面戦争ではなく、核兵器やミサイル関連施設に対する攻撃だそうで、これを「“鼻血”戦略(bloody nose strategy)」と呼ぶようです。刺し殺すとか、立ち上がれないくらいに殴りつけるということではなく、まず、先制攻撃的に鼻面を殴って相手の戦意を喪失させる、ということのようです。

 

 現在のところ、韓国と北朝鮮による南北交渉が行われ、平昌オリンピックに関しては、平和に開催されそうです。トランプ大統領も北朝鮮の選手団が参加することを歓迎する、という考えを表明しています。

 

 しかし、これで北朝鮮に対するアメリカ、そして中国の膺懲的な侵攻の可能性が亡くなったということは早計です。アメリカと韓国がここまで融和的な姿勢を見せてもなお核兵器とミサイルを放棄しない、アメリカを攻撃できると言い続ければ、それでは仕方がない、国連決議をもらって攻撃しよう、国際的な約束を破って大量破壊兵器を持つに至った北朝鮮は国際的な安全上の問題なので、膺懲するということになって、北朝鮮攻撃が起きる可能性があります。

 

 太平洋戦争直前の日米交渉において、アメリカ側はのらりくらり、日本側に融和的な姿勢を示したり、厳しい態度を示したりしながら、蛇の生殺しのようなことをしました。日本国内では結局、いくつかの考えに分裂し、最終的には一番強硬な手段が選択されるに至りました。追い込まれました。北朝鮮も同じ轍を踏まないということはありません。

 

 オリンピックまでは何もないと思いますが、北朝鮮が何らかの攻撃的なアクションを示すならば、事態はまた一気に緊張を増すでしょう。現在のような雪解けムードの後だけに、緊張感は一気に上がると思います。そうなれば不測の事態が起きてもおかしくありません。

 

 アメリカ軍が、あまり兵員が死傷しない形で北朝鮮攻撃ということになると、軍事産業や補給関連、食糧、衣服繊維、薬剤といった産業の株式が高騰するでしょう。アメリカはほぼ被害がなく、アメリカの企業にお金が落ちるということになりますから。日本は直接の被害のようなことがあれば、2011年の東日本大震災の時と同じような動きがあるのではないかと思います。今の日本株を買っているのは外国人投資家とGPIFです。外国人投資家からすれば、安くなったところで買って、大きく儲けると考えるでしょう。

 

 アメリカによる北朝鮮侵攻ということも頭に入れて今年の動きを考えるということが重要ではないかと思います。最悪の事態を考えていれば、少なくとも致命的な損失を負うことはないと思います。

 

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 古村治彦です。

 

 今回は2018年3月20日までにアメリカが北朝鮮を攻撃するという主張の論説をご紹介します。

 

 論稿の著者はジェイムズ・リカーズというアメリカ人です。弁護士で、金融の専門家のようです。1973年にジョンズホプキンズ大学を卒業し、1974年にジョンズホプキンズ大学ポール・ニッツェ記念高等国際問題研究大学院(SAIS)で修士号を取得、ニューヨーク大学法科大学院で法務博士号を取得しています。その後、ヘッジファンドのLTCMの幹部社員を務めるなど、長年にわたり金融業界で活動しているようです。

 

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 古村治彦です。

 

 北朝鮮情勢について、南北対話が始まり、冬季オリンピック開催中は米韓軍事演習を中止するということになっています。緊迫した情勢が少し緩んでいるようです。

 

 しかし、中国に目を向けると、北朝鮮に対して厳しい姿勢を取るようになっています。北朝鮮に対する原油、石油製品、鉄鋼などの輸出を制限するという発表を行っています。北朝鮮に対する締め付けを強化するということになります。北朝鮮にしてみれば、重要なライフラインである中国からの輸入が制限されるとなると死活問題になります。エネルギー資源は寒い冬を乗り越えるためには必要不可欠であり、そこを締め上げられるとなると厳しい状態に置かれてしまいます。

 

 また、習近平国家主席が中国人民解放軍に対して、「死を恐れるな」という異例の訓示を行ったという報道が気になります。ここまでの厳しい言葉遣いを軍に対してできるのは、権力を完全に掌握していて、軍との関係で習国家主席が優位に立っているということを示しています。彼が言う自民解放軍が「死を恐れず」に対処すべき国防の大問題は、対北朝鮮ということになります。北朝鮮が何らかの「暴発」をした場合に、人民解放軍が北朝鮮国内に侵攻するということだと思います。

 

 米朝間の緊張関係にばかり注目が集まりますが、北朝鮮問題は中国が対処すべき問題であり、そのための覚悟を中国は示していると思われます。今年中に中国人民解放軍が北朝鮮に侵攻するということが現実に起きる可能性が高い、ということになるでしょう。

 

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●「中国、北朝鮮への石油や鉄鋼などの輸出を制限」

1/5() 20:59配信 ロイター

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180105-00000072-reut-kr

 

[北京 5日 ロイター] - 中国商務省は、北朝鮮に対し原油、石油製品、鉄鋼などの金属類の輸出を制限すると発表した。6日から有効となる。国連は12月に新たな対北朝鮮制裁決議を採択していた。

 

(※原文記事など関連情報は画面右側にある「関連コンテンツ」メニューからご覧ください)

 

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●「「死を恐れるな」─中国・習主席、人民解放軍に対し異例の激励」

1/5() 19:22配信 AFP=時事

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180105-00000039-jij_afp-int

 

AFP=時事】中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は3日、自国軍に対し、アジアにおける地政学的な緊張が高まる中、戦備を整え、国家防衛に当たっては死を恐れてはならないと直截(ちょくせつ)な激励を行った。

 

 国営新華社(Xinhua)通信によると、習主席は同国北部の河北(Hebei)省に置かれた人民解放軍の中部戦区を視察した際、数千人規模の兵士らを前に、「苦難も死も」恐れてはならないと演説。

 

 さらに、ハイテク兵器の研究を強化して「実戦訓練」を実施するよう促し、「新時代の共産党および国民から課せられる任務を遂行するため、常に戦備を整えて臨戦態勢を取り、必ず勝利できる強力な精鋭部隊の創設」を求めたという。

 

 世界最大の軍隊に対する習氏の訓示内容は、翌4日夜になって公表された。国営メディアは、習主席から全軍へ向けられた異例の演説と報じている。

 

 習氏は昨年10月の中国共産党大会で、過去数十年間で最も強力な指導者としての地位を固めた。今回の演説や、多数の兵士や戦車を前にした画像には、絶対的指導者という新たに打ち出したイメージを強化する狙いがあるとみられている。【翻訳編集】 AFPBB News

 

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 古村治彦です。

 

 北朝鮮については、なかなか渡航できず、情報も制限されており、実態がつかみにくい国です。たまにテレビや雑誌で隠し撮りされた写真や映像が流れたり、脱北者の証言が報道されたりで、そういうものから私たちはそれぞれに北朝鮮のイメージを作っています。YouTubeにアメリカ人が観光で北朝鮮を訪れた際に隠し撮りした映像があり、私にとっては興味深いものでした。

 

 韓国の統計庁という政府機関が北朝鮮の統計指標を毎年発表しているそうです。2017年度版が昨年12月に発表になっているそうです。『東洋経済』誌の福田恵介記者が統計数字を日韓と比較しながら、分析記事を書いています。

 

 経済規模も小さく、国民一人当たりの所得も大変低いわけで、日本や韓国の数十分の1、百分の1という数字が並んでいるのですが、北朝鮮が3.9パーセントの経済成長をしている、出生率が1.93で韓国や日本よりも高いという数字は私にとって驚きでした。

 

 鉱業生産、石炭や鉄鉱石の生産は韓国よりも優位に立っているというのは当然ですが(日本統治時代に北部は工業、南部は農業に適しているのでそのように開発された)、石炭の生産によって火力発電に使う石油の代替が出来ているとなると、石油の禁輸の効果も薄れてしまうと思われます。

 

 国連や日本による経済制裁を受けているのに、貿易が数千億円規模あって、経済成長率が3.9パーセントというのは私たちのイメージ外の北朝鮮の姿です。そして、食糧生産高は韓国と変わらない量であること(韓国は日本と同じく農産物を輸入している、できているということではありますが)、北朝鮮の人口が韓国の半分ですから、輸入が足りない、不足気味ではあっても一応食べていけているのだろうと推測されます。そうでなければ出生率が1.93で、人口増加もしているという数字は出てきません。

 

 そして、ご飯が食べることが出来て、出生率も高いということになると、これは、金正恩政権は安定していると言うことが出来ます。国民が金正恩の支配の正統性を認めているということになるでしょう。ご飯が食べられて、家族を形成できるとなると、北朝鮮国内で金体制を転覆させる勢力が力を持ちにくいということになります。

 

 このような状況では、金正恩政権を倒すこと、北朝鮮の統治システムを根本から作り直すことは難しいということになります。特に外国勢力がそのようなことをすれば、反感を生むだけということになるでしょう。ですから、アメリカは北朝鮮の体制転換までは考えていないと思われます。核兵器とミサイル開発を止めさえすれば、あの国がどうなろうが知ったことか、そこは中国とロシアが面倒を見ろよ、ということになります。

 

 中国とロシアにしてみれば、お荷物であることは事実ですが、北朝鮮があることで、米軍と国境で対峙しなくて済むというメリットもあります。ですから、中露両国はなんとかして北朝鮮情勢を軟着陸させたいと考えているでしょう。しかし、北朝鮮が中国に対して舐めた態度を取るようならば、膺懲ということがあるでしょう。その時にアメリカが中国に協力して地上軍の投入なしで、空爆、ミサイル攻撃で支援するということはあるのだろうと思います。

 

 しかし、北朝鮮を徹底的に破壊するという選択肢は米中露には存在しません。うまく北朝鮮を軟着陸させるという選択肢の実現のために、苦労しているということになるのでしょう。

 

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●「経済統計で見える「北朝鮮」の知られざる実像」

人口は韓国の半分、1人当たりGNI22分の1

 

2018年1月2日

福田 恵介 : 東洋経済 記者

『東洋経済』誌

http://toyokeizai.net/articles/-/203023

http://toyokeizai.net/articles/-/203023?page=2

http://toyokeizai.net/articles/-/203023?page=3

 

人口は韓国の半分、1人当たり国民総所得(GNI)22分の1――。韓国統計庁は201712月、「2017北朝鮮の主要統計指標」を発表した。

 

毎年12月、韓国政府は収集・推測したデータを基に、韓国と比較しながら前年の北朝鮮の経済分野などの統計を発表する。核実験とミサイル発射で日米など東アジア情勢をかきまわす北朝鮮。北朝鮮と言えば軍事面ばかり強調されるが、北朝鮮の経済・社会的姿がうかがえる統計だ。

 

今回発表された統計によると、2016年の人口は北朝鮮が2490万人(前年比12万人増)、韓国が5125万人(同23万人増)と、北朝鮮の人口は韓国のほぼ半分の規模だ。また、北朝鮮の出生率は1.94と、1.33の韓国を上回っている。

 

2016年の経済成長率は3.9%増

 

経済規模はどうか。2016年の北朝鮮の国民総所得(GNI、名目)は363730億ウォン(約3.8兆円)、1人当たりGNI146万ウォン(約15万円)で、前年比でそれぞれ1兆ウォン、7万ウォン増となっている。

 

韓国はそれぞれ16390665億ウォン(約172兆円)、3198万ウォン(約336万円)で、韓国と比べると北朝鮮の規模は45分の122分の1となる。日本の1人当たりGNIは約415万円(2015年)だ。また、経済成長率は北朝鮮は3.9%で、前2015年のマイナス1.1%から、一気にプラスへと回復したようだ。

 

核・ミサイル開発で北朝鮮に対する経済制裁が強化され、対外的な経済活動に制約を受けている北朝鮮だが、2016年の貿易総額(輸出額と輸入額の合計)は65億ドル(約7360億円)となっている。韓国は9016億ドル(約102兆円)で、北朝鮮の139倍の規模だ。北朝鮮の貿易総額のうち、輸出額は28億ドル(約3171億円)、輸入額は37億ドル(約4190億円)。ちなみに2016年の日本の貿易総額は約136兆円だった。

 

日本では食糧不足のイメージが続く北朝鮮の農業生産はどうか。2016年の食糧作物生産量は482万トン(前年比31万トン増)、韓国は471万トンとほぼ同レベルだ。そのうち、北朝鮮のコメ生産量は222万トン、トウモロコシは170万トンだ。北朝鮮が自給できる食糧作物生産量は550万~600万トンと言われている。食糧作物生産量のうち韓国はコメがほぼ9割を占めるが、北朝鮮ではトウモロコシも主食の一つとされている。

 

2017年秋から山形県や秋田県、石川県などの海岸に漂着する北朝鮮漁船が相次いでいる。北朝鮮の漁獲量をみると、2016年は101万トンで前年の93万トンより増えている。だが、韓国は325万トンで、3分の1の規模だ。日本は465万トン(2015年)水準である。

 

鉱工業統計では北朝鮮が優位に

 

北朝鮮が韓国を上回る数少ない経済データは、鉱工業関連統計だ。たとえば石炭生産量は北朝鮮が3106万トン(前年比357万トン増)、鉄鉱石は53万トン(同3.4万トン増)と、韓国の173万トン、4.5万トンよりはるかに多い。

 

朝鮮半島はもともと現在の北朝鮮である北部地方に地下資源が多く眠っている。また、1990年代後半からの経済難や自然災害で鉱山の生産活動が萎縮していたが、2010年以降、緩やかな経済回復を追い風に掘削など生産設備の更新も進んで生産活動が徐々に正常化したことが、増産の背景となっている。

 

だが、経済活動の基本となる電力生産量がふるわない。北朝鮮の発電設備容量は766万キロワットで韓国の14分の1。発電量も239億キロワット時で、韓国の23分の1水準だ。前2015年はそれぞれ743万キロワット、190億キロワット時で増加傾向にはあるが、十分な経済活動を行うには足りないことは、北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長も認めている事実だ。

 

20171012月に平壌を訪れた中国人や在日コリアンらに話を聞くと、「停電もほとんどなく、電力事情は悪くはなかった」と口をそろえる。最も簡単に入手できる石炭を燃料とする火力発電所を増やし、電力供給量を増やしていることもある。最近では、「石炭から原油を生産する石炭液化を積極的に進めている」という話も出てきた。しかし、経済制裁で原油やガソリンなどの石油関連製品の輸入が強く制限され始めており、2018年以降、発電事情がより厳しくなるとの見方が多い。

 

ユニークな統計も発表されている。携帯電話加入者数だ。北朝鮮での携帯電話加入者数は361万人で、10人に1.4台となり、まだ11台という状況ではない。北朝鮮では200812月ごろから移動通信事業が本格化したが、2009年の加入者は7万人だった。

 

その後、金党委員長政権が本格化した2012年以降、加入者数は増加。170万人から翌2013年は242万人に、2015年には324万人と300万台を突破した。平壌など都市部では携帯電話で通話する市民の光景は日常茶飯事となって久しい。

 

平壌市内には、日本のような携帯電話販売店も出現。北朝鮮で製造されているとされる「平壌」「アリラン」「チンダルレ(日本語でツツジ)」といったブランド名が付けられた携帯端末が販売されている。どのブランドも、現在はいわゆるガラケーとスマートフォンともに製造・販売されている。同時に、さまざまな携帯電話向けアプリも開発され、通信教育にも使用されているという。

 

韓国政府の意向が働く場合も

 

だが、韓国側が発表する北朝鮮統計には、注意も必要だ。その理由はまず、あくまでも韓国側の推計であることだ。北朝鮮は「敵国である米国に自国の状況を知らせるわけにはいかない」(朝鮮社会科学院経済研究所)という理由で、自国の統計を発表していない事情もあるが、韓国の情報機関などが情報分析などを土台に、これら統計を推計しているに過ぎない。韓国のある統一相経験者も「おおよそのトレンドがわかる統計」と述べるなど、その正確性については口を濁すほどだ。

 

さらに、韓国の時の政権における北朝鮮政策のスタンスによって、数字に手を加えられることもある。たとえば前述した経済成長率の場合、2015年のそれはマイナス成長と発表された。だが、2012年以降は平壌だけでなく全体的に北朝鮮経済が改善していることが実感できる状況だったのも事実で、けっしてマイナス成長とされるような要因を探すことは難しかった。

 

朴槿恵(パク・クネ)前政権は北朝鮮に対して厳しい政策スタンスを取っていたため、あえて低めの数字が発表された可能性もある。一方、20175月に発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は前政権よりも北朝鮮との対話を重視する方針であり、より温和な対北朝鮮政策を掲げている。そのような背景もあり、3.9%と前年比で大幅なプラス成長として発表されたのではないかとの見方もある。

 

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野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23



 古村治彦です。

 

 北朝鮮の最高指導者金正恩朝鮮労働党委員長が新年の挨拶を行い、その様子がテレビで放映されたということです。その中身は、「自分の机の上には核兵器発射のボタンがある」と述べながら、韓国での冬季オリンピックの成功を祈り、北朝鮮からの選手団が参加する用意があるということを表明するものでした。日本の報道では、核兵器発射のボタンの話ばかりが報道されているような印象がありますが、韓国との対話についての言及はとても重要であると思います。

 

 北朝鮮が核兵器とミサイル開発(共に旧ソ連、ロシアの支援を受けてのことでしょう)を推進し、現在、どの程度の実力を有するようになっているのかは未知数です。アメリカ領土を正確に狙い撃ちできるICBMを持っているのか、それに搭載できるだけの小型化された核兵器を所有しているのか、ということは分かりません。この分からなさが北朝鮮の力となり、交渉力となります。本来であれば、この分からなさをできるだけ高く売りつけて、何らかの約束、妥協、条件を引き出そうとするはずです。

 

 アメリカは北朝鮮がアメリカ領土を攻撃できる大量破壊兵器を製造するならば、武力行使もあり得るという立場を取りつつ、レックス・ティラーソン国務長官は交渉を優先するという立場を堅持しています。アメリカは明確な圧倒的な軍事力を背景に条件、譲歩を引き出そうとしています。

 

 金正恩は韓国に対して、対話の用意がある、オリンピックの成功を祈る、北朝鮮選手団が参加する用意があるという発言を行いました。これまでにない柔らかな内容の発言です。韓国側も早速対話の用意があり、オリンピックで北朝鮮選手団を歓迎するというシグナルを送っています。

 

 これはオリンピックが終わるまでは、朝鮮半島の緊張を高めることはないというメッセージであり、国際社会に対する宣言でもあります。このような発言があった以上、アメリカとしてもオリンピックまでは緊張を高めるわけにはいきません。

 

 昨年、米朝間で指導者同士が激しい言葉遣いの応酬をしたために、緊張が高まりすぎてしまったという反省もあっての今回の新年の挨拶になったと思います。

 

 激しい言葉遣いで相手をけん制しながら、自分の持っているカードを高く見せて、取引をするということになる訳ですが、激しい言葉遣いばかりをしていると、その言葉尻を相手にとらえられて、身動きが出来なくなります。

 

 太平洋戦争直前の日本を考えてみるとよくわかります。軍部も政府もアメリカと戦争するつもりなんか全くなく、日中戦争も終わらせたいと思っていました。しかし、意図しない方向、裏目裏目に事態は進んでいきました。メンツにこだわったこと、激しい言葉遣いで挑発的な言辞を繰り返したことで、自分たちを追い詰めていきました。

 

 そうして考えると、北朝鮮は戦前の日本よりもしたたかで、柔軟であると思われます。細い塀の上を落ちないように歩いている、そんな感じです。私はぎりぎりのジェンガを崩さないように慎重にかつ大胆に抜いている、という譬えを使っています。

 

 しかし、そうした状況下で怖いのは突発的な事故で、それを意図的に起こすという人たちもいます。そうなった場合には予想もつかないことが起きる、そうなったら人間ではコントロールできない状況ということも生まれてしまいます。最悪のシナリオは、北朝鮮が暴発して、死なばもろともで核兵器やミサイルを打ちまくるということですが、これはあまりにも可能性が低いシナリオではないかと考えます。

 

 アメリカも北朝鮮も人間のコントロールできる範囲内で何とかしようと動いている、そのように見えます。

 

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●「核のボタンは自分の机の上に 金正恩氏、オリーブの枝も」

 

2018年1月1日 BBCニュース日本語版

http://www.bbc.com/japanese/42532301

 

北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は1日午前9時(日本時間同9時半)、テレビ放映された新年のあいさつで、米国が「戦争を決して始められないよう」に、自分の机には常に核兵器発射のボタンがあると述べた。

 

朝鮮中央テレビが放送した新年のあいさつで、金委員長は、米国全土がすでに北朝鮮の核兵器の射程圏内にあり、「これは脅しではなく、現実だ」と強調した。委員長はさらに、「核弾頭や弾道ミサイルを大量生産し、製造スピードを速めなくてはならない」と述べ、核・ミサイル開発事業の推進に意欲を示した。

 

しかしその一方で、自分には韓国と「対話の用意がある」とも述べ、韓国に対する友好の「オリーブの枝」ともとれる表現をした。

 

委員長は「2018年は北と南の双方にとって、大事な年になる。北は建国70周年を迎え、南は冬季五輪を開催する」と指摘。この表現は、過去1年間の敵対的な姿勢から大きく逸脱したものと受け止められている。

 

金氏はその上で、今年29日から韓国・平昌で予定される冬季五輪に選手団を送る可能性もあると、さらに友好姿勢を示唆した。韓国は以前から、北朝鮮選手団の出場を歓迎すると表明している。

 

「冬季大会に参加すれば、民族の団結を示す良い機会になる。大会の成功を願っている」と委員長は述べ、「両国の担当者が喫緊に会談し、その可能性を協議するかもしれない」と五輪出場に前向きな姿勢を示した。

 

金委員長の警告について記者団に聞かれたドナルド・トランプ米大統領は、「どうなるかこれから分かる」と答えた。トランプ氏は、フロリダ州の私邸リゾート「マール・ア・ラーゴ」で新年を迎えた。

 

北朝鮮が1129日に試射したミサイル「火星15」は、高度4475キロに達し、53分をかけて960キロ飛行した後、日本海に落下した。国際宇宙ステーションの10倍以上の高度で、通常の軌道で発射していれば13000キロ以上飛行した可能性がある。この場合、米本土全土が到達可能だったことになる。ただし、核弾頭をそれだけの距離にわたり運べるかは不明。

 

北朝鮮は、完全に実戦配備可能な核兵器を開発したと主張しているが、専門家の間ではまだ疑問視する声もある。

 

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●「韓国側、正恩氏の新年辞を歓迎 南北協議に応じる考え」

 

1/1() 17:15配信 朝日新聞デジタル

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180101-00000037-asahi-int

 

 韓国大統領府報道官は1日午後の記者会見で、平昌冬季五輪への北朝鮮代表団派遣を巡る南北協議に応じる考えを示した。報道官は、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の新年辞について「南北当局間の面会提案を歓迎する」と述べた。

 

 また、「北核(北朝鮮の核)問題を平和的に解決する」と強調。「半島問題の直接の当事者として南北が相対し、緊張緩和と平和定着の解決方法を見つけることを望む」と述べ、五輪問題だけでなく安全保障問題でも主導権を握りたい考えを示した。(ソウル=牧野愛博)

 

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