古村治彦です。

 トランプ政権の「強硬な対中姿勢」について日本でも報道されている。先月末には、マイク・ポンぺオ国務長官は、歴代政権の対中政策、「関与政策」が失敗だったと批判する演説を行った。最近になって、中国のバイトダンス社が所有するティックトック社をめぐり、アメリカ国内でのサーヴィスをマイクロソフト社に売却するか、使用禁止にするかを迫る大統領令を出した。

 「アメリカが中国と戦おうとしている」「中国が世界から孤立」している中で、中国寄りと見られる発言をすれば、親中派と罵られる時代だ。しかし、そのような単純な頭での短慮では世界の現状を把握することはできない。

 トランプ政権には2つのラインがある。対中強硬派(封じ込め政策派)と対中現実派(関与政策派)だ。トランプ大統領はこの2つを競わせて、どちらかを選ぶこともあり、また、両方の折衷案を採用する場合もある。現在は強硬姿勢を示しておく方が、選挙対策として有利ということもあり、強硬派が目立つようになっている。

 封じ込め政策派・強硬派はマイク・ペンス副大統領、マイク・ポンぺオ国務長官、ピーター・ナヴァロ国家通商会議ディレクターであり、関与政策派・現実派は、ジャレッド・クシュナー上級補佐官、スティーヴン・ミュニーシン財務長官などだ。下の報道がなされてしばらくして、アメリカが仲介して、イスラエルとアラブ所長国連邦が国交正常化に向けて動き出すという発表があった。トランプ大統領がこの発表を行う際、後ろに控えていたのは、クシュナー、ミュニーシン、ロバート・オブライエン国家安全保障問題担当大統領補佐官だった。この案件はこのラインにやらせてうまくいった、ということをトランプ政権は示している。

 単純に勇ましいことや激しいことばかりを言っているようでは、国家運営はうまくいかない。それは太平洋戦争直前の日本がまさにそうだった。陸軍を押さえようと、陸軍の言うことを聞き過ぎて、かつ、自らアホのように中国との話し合いの可能性を潰して、ひとりよがりで、「南部仏印まで出て行ってもアメリカは戦争しないよね」と思い込んで、突き進んだら、気づいた時には自分たちの行動と言葉に縛られて、滅亡への途しか残っていない、そんなことになってしまった。

 常に複数の選択肢を残し、最悪を回避する、これが今の日本でも出来ているか、今の日本の指導者にできるかと言われて、自信を持って「はい、大丈夫」と言える人は多くないだろう。

 複数のラインを用意する、これはトランプ政権だけではないが、アメリカの強さ、ということになるのだろう。

(貼り付けはじめ)

ナヴァロ、ミュニーシンがティクトックをめぐり大統領執務室でトランプ大統領の面前で衝突した:ワシントン・ポスト紙(Navarro, Mnuchin clashed in front of Trump in Oval Office over TikTok: WaPo

J・エドワード・モレノ筆

2020年8月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/511192-navarro-mnuchin-clashed-in-front-of-trump-in-oval-office-over-tiktok

ホワイトハウスの貿易問題補佐官ピーター・ナヴァロと財務長官スティーヴン・ミュニーシンは木曜日、大統領令に署名する直前のトランプ大統領の面前で衝突した。大統領令は、ティクトックの親会社バイトダンス社に対して、45日以内にティクトックを売却するか、アメリカ国内でのてぃく特区の使用を禁止するかというものであった。

会議に出席していた補佐官たちが『ワシントン・ポスト』紙に語ったところによると、ミュニーシンはIT最大手マイクロソフト社によるティクトック買収を考慮することを求めたが、ナヴァロはティクトックのアメリカ国内での使用を完全に禁止することを求め、ミュニーシンが中国に対して宥和的過ぎると非難した。ナヴァロがトランプ大統領の面前での議論を主導した。

ワシントン・ポスト紙に語った関係者によると、2人のやりとりは「激しい戦い」だったと形容している。

トランプ大統領は、人気の高いソーシャルメディアをマイクロソフト社が買収することを支持した。

財務省は本誌からのコメントの要請に対応しなかった。

ワシントン・ポスト紙への声明の中で、ナヴァロは記事の基となったリークは「悪意に満ちて」おり、「誇張と事実ではない情報に満ちて」いると述べた。

ナヴァロはワシントン・ポスト紙への声明の中で次のように述べている。「トランプ政権の最大の強さは、大統領が決断に到達するために、強力な、多くの場合自身の考えとは反対の考えにも頼るところである。大統領の決定はアメリカ国民の最良の利益となるものだ」。

「異なる意見も受け入れるということは真実だ。だから、強いアメリカにとって、“大統領執務室で起きることは大統領執務の中にとどめられるべきだ”ということが重要なのだ。従って、私は誇張と誤った情報に満ちた、明らかに悪意に満ちたリークについてコメントしない」。

ティクトックをめぐる論争は、連邦議会とホワイトハウスが共に、ティクトックがアメリカ人ユーザーのデータを中国共産党と共有するのではないかという懸念を表明してから、激しくなっている。バイトダンス社は北京でビジネスを行っているが、ティクトックはアメリカに関するデータはアメリカ国内で保存していると主張している。

木曜日に大統領令を発する前に、トランプ大統領はてぃくっと区のアメリカ国内での使用を完全に禁止することを考えていると述べた。

木曜日の夜、トランプ大統領は大統領令を発した。その中で、アメリカ企業に対してバイトダンス社との取引を45日間禁止し、バイトダンス社とティクトックを切り離すことを求めた。

ティクトックは金曜日、トランプ大統領の大統領令を批判し、「大統領令は法律に則ったものではない」と発表した。そして、土曜日、ティクトックは来週のある時点でトランプ大統領を訴える計画であると発表した。

過去には、ミュニーシンとナヴァロはトランプ政権の貿易についての対応で意見を異にしたこともあった。

2018年、CNNは、米中貿易交渉が行われていた北京の政府庁舎の外の人々の見ている前で、ミュニーシンとナヴァロが「声を荒げ、罵り合っていた」と報じた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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