古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:靖国神社

 古村治彦です。

 安倍晋三元首相とは日本政治にとってどんな存在であったか。憲政史上最長の在任期間を記録した安倍元首相は対米従属の深化と日本の海外での戦争を行う条件づくりに狂奔したと私は考える。国民が安倍政権下での国政選挙で自民党を勝たせ続けたことで、彼に正当性を与える結果になった。アベノミクスによって経済格差は拡大し、国民の平均年収も下がり続けた。日本は貧しくなり続けた。とても「国葬」にふさわしい人物ではないと考える。

 安倍元首相は根本的に大きな矛盾を抱える存在だった。それは、「極めて親米的でありながら、アメリカが嫌がる歴史修正主義に邁進した」ということである。アメリカからすれば、日本の防衛予算の増額やアメリカの軍需産業からの武器購入を進める、在日米軍への思いやり予算を増額する、自衛隊がアメリカ軍の下請けとして海外で戦争ができるように進める、ということは大変に「御意にかなう」ことであった。この点では「愛い奴」ということになる。

しかし、一方で、太平洋戦争に関して、アメリカが正しいとする史観に異議を唱える。アメリカから見れば、「フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領は真珠湾攻撃が実施されることを知っていて放置して日本から先に手を出させる形にした」ということは受け入れられない。安倍元首相が参拝してきた靖国人社の歴史資料館遊就館にはそのように展示されている。「日本はアジア諸国に良いことをした、中国や韓国にいつまでもごちゃごちゃ言われる筋合いはない」ということもアメリカからすれば目障りだ。こうした日本の右翼による主張を受け入れてしまえば、アメリカの正当性は揺らいでしまう。そして、日本の右翼(ネトウヨを含む)にとっての最大は皮肉にも当代きっての親米派安倍元首相ということになった。

 核武装、核シェアリングを言い出したことでアメリカは安倍元首相を見限ったのだろうと私は考える。「こいつはなかなか役に立ったけども、一枚めくればいつアメリカの正当性に挑戦してくるかもしれない、もしくはそうした勢力に担ぎ上げられてしまうかもしれない」「中国との対決ばかりを言う奴らを甘やかし過ぎたな」ということになったのだろう。

 安倍元首相の抱えた矛盾とは戦後日本が抱えた矛盾である。この矛盾を自分の中に抱えながらうまくバランスを取ることが現実的な保守政治家ということになる。安部元首相はそのバランスをうまく取れなくなっていたように思う。彼は親米派として葬られるのか、それとも歴史修正主義者として葬られるのか、後の世の歴史家たちがどう判断するのかが今から楽しみだ。

(貼り付けはじめ)

安倍晋三をめぐる数多くの矛盾(The Many Contradictions of Shinzo Abe

-日本の元首相はアメリカとの関係を緊密にしようとしながらも、日本による征服の正当性への信念に固執していた。

ハワード・W・フレンチ筆

2022年7月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/07/18/shinzo-abe-history-japan-diplomacy-contradictions/

最近暗殺された日本の元指導者安倍晋三との最初の緊密な出会いから彼が特別な政治家であることは私にとって明らかだった。批評家による「金属疲労」の患者の診断だけでなく、私のキャリアにおいて私が精通していた世界の舞台の基準でも特別な政治家だった。安倍元首相は、古ぼけた見た目の指導者たちが次々と交代し、批評家たちが「金属疲労(metal fatigue)」に苦しんでいると評価する国の基準からだけではなく、私がキャリアを通じて親しんできた国際舞台の基準からも、特別な政治家であった。

2000年代初頭、官房副長官として初めて見た安倍元首相には、既にダイナミズムと自信、そして野心のオーラが漂っていた。戦後間もない時期に強力な総理大臣を務めた岸信介の孫という、日本の保守政治の世界では最も高貴な血(blue blood)を引く人物だった。しかし、安倍首相を取り巻く権威の力は、継承されたものというより、むしろ彼個人の属性に近いように感じられた。

記者会見で、即興的かつ激しい言葉遣いで、自信たっぷりに話す姿にそれを感じた。また、2002年に北朝鮮の平壌で行われた小泉純一郎首相と金正日総書記の首脳会談では、より身近なところからそれを感じ取ることができた。

1970年代後半から1980年代初頭にかけて北朝鮮に拉致されたとされる日本人たちの運命や、北朝鮮で死亡した拉致被害者の遺骨の回収など、外交分野における最も困難な問題のいくつかを安倍元首相は自ら担当した。官房副長官という立場を考えれば、他の多くの政治家はスポットライトを浴びないように配慮しただろう。しかし、安倍元首相はカメラに映ることを楽しんでいるようで、注目を浴びすぎないようにすることが課題となった。

安倍元首相は、私が初めて取材した、私とほぼ同世代の世界のリーダーの1人である。2006年、戦後最年少の52歳で総理大臣に就任し、その野望を実現する。しかし、その最初の任期は、他の多くの先輩たちと同様、健康上の問題からわずか1年後に終了するという短いものとなってしまった。しかし、5年後の2012年に再び首相に返り咲き、2020年には歴代最長の首相としてその任を終えることができたのは、彼の並々ならぬ意欲の表れであったと言える。

このように、単独の銃撃犯の凶弾に倒れた稀代の政治家が体現することになる多くの深い矛盾を、私たちは既に見ることができる。安倍首相の夢は日本を近代的にすることであり、それは政治の近代化によって実現される。しかし、安倍首相が常に考えていたのは、より根本的かつ避けらないことだった。それは自分が率いる、長年にわたって日本を支配する自民党の立場を強化することだった。自民党(Liberal Democratic PartyLDP)は「リベラルでも民主主義でもない(neither liberal nor democratic)」という古くからの定説ほど、正確なものはない。

安倍首相は自民党の政権をほぼ維持し、更に強化することに成功したが、自民党は決して大胆な改革に熱心ではなかったし、それは安倍首相自身にも当てはまる面がある。例えば、安倍首相は「女性が輝く日本(a place where women shine)」を実現するために「ウーマノミクス(womenomics)」と名付けた公約を掲げた。経済的そして人口的に女性の社会進出は急務であり、賃金や地位の平等、更には国防軍への登用も必要だが、その進展は鈍く、自民党の有力政治家の中にはは公の場でしばしば下品な性差別を口にする人々も出ている。

安倍首相は「~ノミクス(-nomics)」という言葉を好み、「アベノミクス(Abenomics)」として広く知られる自国の競争力強化を目指した一連の政策とさらに深い関わりを持っていた。確かに、長い間低迷していた株式市場は、安倍首相在任中に飛躍的に上昇したが、経済格差は彼の在任中に大幅に拡大した。また、韓国や中国など、産業が活発な近隣諸国に対抗するために、日本がどのような位置づけにあるのか、その判断ははっきりしないものとなっている。

純粋に政治的な観点からすれば、安倍首相の2期目の長期在任によって、首相に就任してはすぐに退陣する刹那的な自民党指導者たちが後を絶たないサイクルと決別できるかもしれないと思われた。しかし、安倍首相が選んだ後継者の菅義偉は、表現力に乏しく、目立たない人物で、2020年9月から翌年9月までしか在職しなかった。安倍元首相は、小泉政権時代の官房長官時代のように、ゴッドファーザーとして、また、常に政治の中心にいる黒幕(éminence grise、エミネンス・グライズ)として、最大限の影響力を培うことによって、日本政治における慢性的な短期交代がもたらす影響を緩和することを明らかに望んでいた。しかし、彼の死によって、その夢も消えた。

1980年代に5年間首相を務め、世界の指導者の中でも特にロナルド・レーガン元米大統領と親密な関係を築いた中曽根康弘以来、外交関係において安倍首相は少なくとも最も活発でダイナミックな日本の政治家であった。安倍元首相は、すぐに飛行機に乗り、精力的に個人として外交を行った。当時、当選したばかりのドナルド・トランプ米大統領とニューヨークのトランプタワーで面会した最初の外国首脳となり、ロシアのウラジミール・プーティン大統領とは他のどの国の首脳よりも多く面会した。

そして、その執念によって、中国の習近平国家主席の仰々しい安倍元首相への蔑視を克服した。2014年、北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議首脳会議で、ついに2人は初対面を果たした。この初対面の写真は名作で、いろいろな読み方ができる。私には、安倍首相が疲労困憊の表情とは裏腹に、「隣の巨人の強力な指導者とついに一騎打ちの機会を得た」という満足感に満ちているように見えるのに対し、習近平の顔は、まるで「この人と握手をさせられるなんて」と思っているような、羊のような顔をしているように見える。

しかし、結局のところ、安倍元首相の執念と人柄の強さは、日本に何をもたらしたのだろうか?

安倍元首相の死後、アメリカの外交・安全保障関係者の多くは、安倍元首相を讃えようと躍起になった。アメリカとの防衛同盟を強化し、アジア太平洋地域でより積極的で力強い存在となり、日本国憲法を改正し(戦後の日本占領中にアメリカ人たちによって書かれた)、そして何よりも、これらの各項目に関連するが、中国の台頭に対する防波堤としてより直接的にアメリカを支援しようとする彼の粘り強い努力を称えている。

しかし、外交分野ほど安部元首相が矛盾を残した分野は他にない。日本が安全保障を向上させるためにできる最善のことは、粘り強さと規律をもって韓国との深い和解を実現することであることは間違いない。しかし、安倍首相の家系は、特に戦犯としてかろうじて裁かれることを免れた岸信介の孫であることから、それが不可能であるように思われた。

安部元首相の夢は彼が韓国との「前向きな(forward-looking)」関係と彼の国の過去に対する謝罪のない態度を作り出すことだった。これは、彼と将来の日本の指導者が、日本の戦争での戦死者たちの霊が祀られている東京の靖国神社に参拝することができるという希望を決して捨てることを意味しなかった。靖国神社に祀られている死者の中には、20世紀の日本の帝国主義戦争で重要な役割を果たした戦争犯罪者たちが含まれている。

安倍元首相は、アメリカとの関係を緊密化する一方で、日本の征服の背後にある崇高な意図と正当性についての信念に固執した。したがって、戦後の東京裁判の違法性、ひいてはアメリカによる占領と、日本が攻撃的戦争目的を追求するための軍隊を保有することを永遠に禁止する、アメリカによって書かれた日本国憲法の非合法性についても確信を持っていた。しかし、安倍元首相を長く政権に留まらせた同じ日本国民が、そのような道を歩むことは決してなかった。安倍元首相は、いわゆる平和憲法の改正を推し進めたまま亡くなり、この点では不満の残る死を遂げた。

どの程度までアメリカとの同盟にこだわるかは、後世の日本人が決めることだろう。いずれにせよ、中国は日本にとってより大きな、そして当分の間は経済的にも軍事的にも強力な隣国であることに変わりはない。日本はアメリカよりも中国との貿易が多く、紛争になれば、ウクライナに侵攻したロシアを罰するためにアメリカやヨーロッパ諸国が主導しているような欧米諸国による対中制裁体制によって壊滅的な打撃を受けるだろう。アメリカが中国と撃ち合いになれば、日本は更に恐ろしい選択を迫られることになるだろう。ワシントンとの同盟を結んでいることで、中国のミサイルが日本の領土に降り注ぎ、海上で日本の船舶を沈めるような事態が起きるならば、その同盟には価値があるだろうか?

私たちはこのような事態にならないことを願わなければならないが、希望は戦略ではない。私が2017年に出版した『天の下の全て:過去が中国の世界的権力の推進を形作るのにどのように役立つか(Everything Under the Heavens: How the Past Helps Shape China's Push for Global Power)』で主張したように、東アジアで戦争のリスクが最大になる時期は、今後数十年に及ぶというケースがある。その後、中国の人口動態が大きく変化し、北京はますます多くの富を国内の退職金や社会福祉に充て、近くて遠い海外での野望を後退させるだろう。

このようなシナリオの下では、安倍首相が掲げる日本のヴィジョンは、いくつかの論理のうちの1つに過ぎない。過去と折り合いをつけ、近隣諸国に接近する(アメリカに背を向けるという意味ではない)ことも、同様に明白な代替案であるように思われる。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり海外特派員を務める。最新刊は『;アフリカ、アフリカ人、そして近代世界の構築、1471年から第二次世界大戦まで』。ツイッターアカウント:@hofrench
(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

ダニエル・シュルマン
講談社
2015-10-28



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





 

 古村治彦です。

 

 2015年9月13日に中国の北京で抗日戦争勝利70周年行事が開催されました。アナクロニズム丸出しの軍事パレードも行われました。軍事パレードではオープンカーになったバスに乗った中国人民解放軍の八路軍に所属した年老いた男女の将兵たちから世界各国の軍隊の代表までが行進しました。アフリカや中央アジアの国々からの参加が多く、ロシア軍も参加していました。アフリカ各国の軍隊は中国人民解放軍による指導が行われているのでしょう。そして中央アジア諸国は旧ソ連に属していたので、ロシアとスタイルが似ていました。また大きく言えば、中国人民解放軍もソ連軍の指導を受けていた時期もあったので、全体として行進のスタイルはよく似ているものでした。あれは何故かオリンピックの開会式の選手団の行進を思わせるものでした。

 

 この行事に国連の藩基文事務総長が出席したことについて、日本国内で異論が出ているようです。「国連は中立な立場でいなくてはならない」というのがその理由です。しかし、この議論は国連の成り立ちを知らないゆえに出てくる主張です。国際連合・国連などと言いますが、これは英語ではUnited NationsUNというので、正確には「連合諸国(連合国)」と訳すべきです。中国語では「聯合国」となっているはずです。国連(UN)は第二次世界大戦の戦勝国クラブとして始まった国際機関です。

 

 その存立が戦争に勝利した国々の集まりにあることは、国連条項に敵国条項(Enemy Clauses)があることでも明らかです。「第53条第1項後段(安保理の許可の例外規定)には、第二次世界大戦中に「「連合国の敵国」だった国が、戦争により確定した事項に反したり、侵略政策を再現する行動等を起こしたりした場合、国際連合加盟国や地域安全保障機構は安保理の許可がなくとも、当該国に対して軍事的制裁を課すこと(制裁戦争)が容認され、この行為は制止できないとしている(Wikipediaから)」という条項があります。

 

 敵国条項は死文化しているとは言え、削除されている訳でありません。ですから、国連には様々な特徴がありますが、国連はあくまで戦勝国クラブであって、国連安全保障理事会の常任委員である五カ国、米英露仏中(台湾の中華民国から中国本土の中華人民共和国へ正統性が移動した)が中心の組織であるという基本は変わりません。

 

 ですから、国連事務総長が中国での抗日戦争勝利記念行事に出席したことくらいで目くじらを立てても仕方がない訳です。また、国際社会における日本の力も影響力も落ちている昨今、更には歴史修正主義者たちが政権を担っているなどと思われている現在において、対応を間違うと国際的に嫌われてしまうという危険もありますから、静かに「まぁどうぞ」というくらいがちょうど良いのではないかと思います。

 

 私は最近『靖国戦後秘史 A級戦犯を合祀した男』(毎日新聞「靖国」取材班、角川ソフィア文庫、2015年)を読みました。この本は1978年に靖国神社に、東京裁判でA級戦犯とされ処刑されたり、収監中に亡くなったりした人々14名が合祀されましたが、それを進めた当時の宮司・松平永芳氏(松平春嶽の孫)について書かれています。松平宮司の合祀の論理は、「日本の戦争は1952年にサンフランシスコ講和条約で独立するまでは戦争状態にあって、連合国に処刑された人々は軍事裁判で殺された人々であり、戦争状態によって亡くなった“戦死者”だ」というものです。重光葵氏と梅津美治郎が全権として出席し、署名した降伏文書を全く無視した話です。

 

 靖国神社は松平宮司が就任してから急激に「右傾化(靖国神社の元々の性格からすれば“正常化”)」していきました。松平氏の考えに根本には戦後の世界体制に対する反感と祖父・春嶽公にはなかった狭量の攘夷思想があったのだと思います。子爵家の生まれで海軍士官でしたが(本科の海軍兵学校には不合格となって海軍機関学校卒)、海軍士官が持つ広い世界観に欠けていた、「遅れてきた尊王家」「考えが足りない青年将校そのもの」といった人物です。

 

 靖国神社がこのように戦後の世界体制を否定する考えを露わにしたのがA級戦犯合祀であって、それ以降、昭和天皇も今上天皇も参拝していないというのは、「そういう考えの場所には行けない、行っては国民を危険に晒す」と考えたからだと思います。先ほどあげた国連条項には、「「連合国の敵国」だった国が、戦争により確定した事項に反したり、侵略政策を再現する行動等を起こしたりした場合、国際連合加盟国や地域安全保障機構は安保理の許可がなくとも、当該国に対して軍事的制裁を課すこと(制裁戦争)が容認され、この行為は制止できない」とあります。死文化しているとは言え、「靖国神社の見解を政府や国家を代表するような存在が支持している」と見なされることは大変危険なことです。

 

 抗日戦争勝利記念70周年行事に対して噛みつくことは、こうした危険を冒すかもしれない、非難の口実を与えるかもしれないと考え、慎重に行動することが重厚な保守です。しかし、現在はお勇ましい、頭が空っぽの自分は安全な場所にいて人には死にに行けと言って全く恥じることのないような人間たちが政権を担っている状況です。彼らが火遊びをしてスリルを楽しんでいることで国民が迷惑しています。彼らは戦時中の大本営作戦参謀と同じで、自分の私利私欲や楽しみのために国民から奪い取った税金、さらには国民の生命さえも使い散らかして恬として恥じない最低の人間たちです。

 

(ネット記事転載貼り付けはじめ)

 

●「国連は「中立性」を放棄したのではないか 潘事務局長が「抗日戦争勝利70周年」行事参加」

 

J-CASTニュース 2015年9月1日

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150901-00000006-jct-soci&p=1

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150901-00000006-jct-soci&p=2

 

 国連の潘基文(バン・ギムン)事務総長が中国・北京で201593日に開かれる「抗日戦争勝利70周年」の式典に参加することを発表し、日本側は「国連は中立であるべき」だと反発している。

 

 潘氏は5月にもモスクワなど欧州各国で行われた第2次大戦終結記念行事に出席しており、北京の行事も同様の位置づけだというのが国連側の言い分だ。ただ、モスクワも北京も先進国首脳会議(G7)からの国家元首・首脳級の参加は皆無。世界的は「マイナー」だとも言える行事にあえて参加することへの疑問の声も出ている。今回の式典に西側の主要国で参加するのは韓国だけ。韓国の立場を支援した形にもなり、日本国内から国連の中立性をめぐる批判が高まるのは必至だ。

 

■菅官房長官「いたずらに特定の過去に焦点は当てるべきではない」

 

 国連は827日、潘氏が92日から6日にかけて習近平国家主席の招待に応じる形で訪中すると発表した。発表の表現を借りると、潘氏は「第2次世界大戦の終結を記念する行事」に参加するほか、国連の設立70周年、気候変動、持続可能な開発に関するサミットといった相互の関心事について議論するという。

 

 国連の発表内容は中立的だが、行事が対日批判色を帯びるのは明らかだ。潘氏が行事に参加することは、潘氏が中国側の主張を追認しているに等しいとも言え、日本政府は批判を強めている。

 

 菅義偉官房長官は831日の会見で、

 

  「国連には190か国以上が加盟しており、国連はあくまでも中立であるべきだと思う。(戦後)70年の今年、いたずらに特定の過去に焦点は当てるべきではないと考えている。あくまで自由、人権、法の支配、こうしたことを含めた国際社会の融和と発展、未来志向を強調するということこそ国連に求められているのではないか」

 

と述べた。大島理森衆院議長も同日、ニューヨークの国連本部で潘氏に会い、菅氏と同様の懸念を直接伝えた。潘氏は、こういった指摘について「留意する」と応じたという。

 

 この会談後に行われたドゥジャリク事務総長報道官の会見では、潘氏の訪中を、

 

  「すでにポーランド、ウクライナ、モスクワで行ってきたのと同様」

 

だと主張した。潘氏は57日にポーランドのグダニスク、58日にウクライナのキエフ、59日にロシアのモスクワで行われた記念行事に立て続けに出席している。北京もこれと同じ位置づけだという訳だ。訪中の意義については、

 

  「事務総長はこの機会を、過去を振り返り教訓に目を向け、これらの教訓に基づいた明るい未来に前進する機会にすることが大事だと考えている」

 

とも説明した。

 

(ネット記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)








 
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック




 古村治彦です。



 2014年1月21日、安倍晋三首相をアメリカのマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出、共和党)が訪問し、会談を行いました。下のウォールストリート・ジャーナル紙の記事の日本語版のタイトルは「米有力議員が安倍首相を訪問、揺れる日米関係で助っ人」(http://realtime.wsj.com/japan/2014/01/22/%E7%B1%B3%E6%9C%89%E5%8A%9B%E8%AD%B0%E5%93%A1%E3%81%8C%E5%AE%89%E5%80%8D%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%82%92%E8%A8%AA%E5%95%8F%E3%80%81%E6%8F%BA%E3%82%8C%E3%82%8B%E6%97%A5%E7%B1%B3%E9%96%A2%E4%BF%82%E3%81%A7/)となっています。



 助っ人というと、よくプロ野球の外国人選手に使われる言葉であり、また、やくざ映画などでは、義理と人情を大事にする高倉健さんが弱い方、負けると分かっている方のために戦いに行く時に使われる言葉です。外から援軍としてやって来るという意味のようです。



 それでは、今回のマルコ・ルビオ上院議員の訪問がそうした助っ人行為になるのでしょうか。ルビオ議員の訪問は、靖国神社参拝以来、アメリカ政府、議会関係者では最も上位の人物の訪問ということになります。次の大統領選挙では共和党の候補になり得る人物の一人として注目されています。ルビオ議員は、自衛隊強化(米軍の下請け化)と中国に対する牽制は支持しました。



 しかし、靖国神社参拝については、少なくともこの記事では支持するとも不支持とも書いていません。そこで何も言わなかったということは、米国務省の安倍首相の「失望」に対して、ルビオ議員は何も反対や疑義を持ってはいないということになります。上院議員の発言力は大変なものがありますが、彼はそれを行使して安倍首相の靖国参拝を支持するということはやっていません。これで何か「助っ人行為」になったのでしょうか。



 このブログでもご紹介した、アメリカ大使館の安倍首相による靖国神社参拝に関する声明の中の最後のtake noteの段落が重要になってきます。拙訳では、「安倍首相が過去に対して悔悟の念を表し、日本が平和構築のために関与していくことを改めて表明したことを私たちは注視している」となります。ルビオ議員は、「日本の平和構築のための関与」の部分を確認しに来たのです。



 戦後の世界体制はアメリカが作り上げたものです。アメリカが敵と決めればそれが世界の平和を乱す、世界共通の敵ということになります。そして、戦後世界の平和構築とは、アメリカの意向に沿ったものとなります。安倍首相は靖国神社参拝後、「平和構築に関与する」と発言しています。そうなると、靖国神社参拝で責めながら、同時に「平和構築の努力をするんだよね、ね?」ということで、日本には過度な負担が要求されるようになります。「だってやるって言ったじゃんね?」ということになります。



 ルビオ議員は笑顔のようでした。そして安倍首相も嬉しそうでした。しかし、その裏にあるのは、安倍氏への支持などではありません。自衛隊の米軍下請化、そして、中国への噛み付き犬係の役割の再確認というだけのことなのです。



(新聞記事転載貼り付けはじめ)



Rubio Offers Abe Reprieve From U.S. Diplomacy Woes



January 21, 2014, 5:44 PM

By Yuka Hayashi and Toko Sekiguchi

http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2014/01/21/rubio-offers-abe-reprieve-from-u-s-diplomacy-woes/



Associated PressU.S. Sen. Marco Rubio of Florida, left, shakes hand with Japanese Prime Minister Shinzo Abe before their talks in Tokyo, Jan. 21.

After a few weeks of rough sailing in his diplomatic dealings with Washington, Prime Minister Shinzo Abe received a much-needed reprieve Tuesday from an unlikely American visitor: Sen. Marco Rubio of Florida.



During his stop in Tokyo, the Republican senator visited Mr. Abe at his residence and offered assurances on two issues at the heart of Mr. Abe’s policy agenda: the senator’s support for Mr. Abe’s efforts to bolster Japan’s military and a rebuke of China’s aggressive territorial policy.



Mr. Rubio, the ranking member of the Senate Foreign Relations Committee’s East Asian and Pacific Affairs subcommittee, was the most senior member of the U.S. government to meet Mr. Abe since the Japanese leader’s visit to a controversial war shrine in late December set off the fury of Japan’s neighbors and upset officials in Washington.



I’m encouraged by and personally support your effort to reinvigorate the security capacity of your country, especially in light of illegitimate territorial claims made by some of your more adventurous neighbors,” Mr. Rubio told the prime minister at the beginning of their meeting.



The remarks were probably exactly what Mr. Abe wanted to hear from a prominent American lawmaker after the U.S.’s unusually harsh reaction to Mr. Abe’s shrine visit, describing it as “disappointing,” an action that “exacerbates tensions with Japan’s neighbors.”



Mr. Rubio’s visit comes amid growing interest in Japan among U.S. lawmakers, a phenomenon American officials attribute to rising security tensions in East Asia, as well as stirring of Japan’s economy after a long slump, triggered by Mr. Abe’s aggressive stimulus policy known as Abenomics.  Mr. Rubio’s visit will be followed by a visit later this month by Rep. Ed Royce, a California Republican and chairman of the House Committee on Foreign Affairs.



During last U.S. fiscal year ended Sep. 30, the number of the members of Congress who visited Japan more than doubled from the previous year to 28, according to the U.S. Embassy in Tokyo.



Furthermore, two House lawmakers started the first-ever caucus on Japan earlier this month to press the White House to  pursue Japan-related policies, such as the Trans-Pacific Partnership trade agreement. California Republican Devin Nunes and Texas Democrat Joaquin Castro are seeking other members to expand the bipartisan caucus.



The caucus is a welcome move for Tokyo amid concerns over the dearth of U.S. lawmakers who advocate for Japan. Such worries have grown since the death of Sen. Daniel Inouye in 2012 and the retirement of Sen. Jim Webb last year — two lawmakers who had actively engaged in relations with Japan.



Mr. Rubio is on an official visit to Asia this week, visiting South Korea and the Philippines, in addition to Japan. A little-known figure in Japan, Mr. Rubio was introduced by the local media as a young Republican leader who is among the party’s top candidates for the 2016 presidential race.



During his two-day stay in Japan, Mr. Rubio received a briefing from Japanese coast guard officials on China’s increased maritime activities around disputed islands in the East China Sea, visited the U.S. naval base in Yokosuka and met with Japan’s defense and foreign affairs chiefs.



Mr. Rubio received a briefing from Japanese coast guard officials on China’s increased maritime activities around disputed islands in the East China Sea, visited the U.S. naval base in Yokosuka and met with Japan’s defense and foreign affairs chiefs.



(新聞記事転載貼り付け終わり)



(終わり)


アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 



marcorubioabeshinzo001
「お控えなすって」と言っているようにも見えるが・・・
 


 


 


 


 


 


 




 

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック






 古村治彦です。



 今回は、2014年1月21日(全国の書店に行きわたるのに2日ほどかかります)に刊行いたします、私の2冊目の単著となります『ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側』(古村治彦著、PHP研究所、2014年)を皆様に宣伝をさせていただきます。



 本日(2014年1月10日)、見本(発売前に小数部の完成品ができます)ができ、私にも送られてきました。写真を見ていただくと分かりますが、この本のカヴァーの色は、赤っぽい色になっています。これは、「クリムゾン(crimson)」という色で、ハーヴァード大学のスクールカラー、シンボルカラーです。更に言うと、昨シーズン、日本のプロ野球で大旋風を巻き起こし、所属するパシフィック・リーグで初優勝し、その勢いのまま、日本シリーズで読売ジャイアンツを破って初の日本一に輝いた東北楽天ゴールデンイーグルスのシンボルカラーであり、もっと言えば、楽天グループのシンボルカラーです。このクリムゾンという色が本書のキーワードです。



 本書『ハーヴァード大学の秘密』は4部構成になっています。第一部は、「アメリカの代理人」養成所としてのハーヴァード大学、第二部は、アメリカの大学で学ぶということ、第三部は、ハーヴァード大学の知的パワーを象徴する学者たち、第四部は、ハーヴァード大学で真に教えたいこと、となっています。著者の私が言うのもなんですが、本書の肝となるのは最初の第一部と第四部です。





==========

【目次】



副島隆彦の推薦文



第一部 「アメリカの代理人」養成所としてのハーヴァード大学

第一章 ハーヴァード大学出身者の日本における人脈・最新版

    ―「クリムゾン・クラブ(Crimson Club)」が動かす現在の日本

第二章 ハーヴァード大学と日本

    ―戦前から戦後にかけて日本を動かしたハーヴァード大学人脈



第二部 アメリカの大学で学ぶということ

第三章 日本からアメリカへの留学の実態

    ―一大産業である留学

第四章 アメリカの大学の授業や制度、生活について

    ―これだけは読んでから、留学して欲しい



第三部 ハーヴァード大学の知的パワーを象徴する学者たち

第五章 サミュエル・ハンチントン

    ―リベラル派に喧嘩を売り続けた人生

第六章 ジョセフ・ナイ

    ―「アメリカの理想」に忠実なリベラル派



第四部 ハーヴァード大学で真に教えたいこと

第七章 共同体優先主義

    ―個人至上主義への危険な反発

第八章 合理的選択論(Rational Choice Theory

    ―自分が損をしないこと



あとがき



==========



第一部では、日本を動かす最高エリート層を形成する日本人ハーヴァード出身者たちのネットワークについて書いています。私はこれを「クリムゾン・クラブ(Crimson Club)」

と名付けました。具体的には、楽天の三木谷浩史会長兼社長を中心とする新経済連盟(新経連)に集う人々のネットワークについて書いています。また、今度の東京オリンピック招致成功に絡む人脈についても触れています。具体的には、早稲田大学スポーツ科学大学院教授の平田竹男氏を巡る人脈、そして、三木谷氏と平田氏をつなぐ線について書きました。この「クリムゾン・クラブ」がこれからアメリカの代理人として日本を動かしていくことになると私は考えます。そして、



 第一部では、最新の人脈の他に、戦前から戦後にかけての日本政治におけるハーヴァード大学人脈について書きました。私は、戦前には金子堅太郎を中心とするハーヴァード大学人脈があり、それが次に三木武夫、側近の松本瀧蔵に引き継がれたと考えています。戦後の日本とアメリカの関係で言えば、中曽根康弘・渡邉恒雄とヘンリー・キッシンジャーの関係が有名ですが、もう一つのラインとして三木武夫を中心とする線があったのではないかと考えます。そして、この2本のラインは一緒になり、三木武夫首相・中曽根康弘自民党幹事長のコンビで、アメリカの敵と認定された田中角栄を追い落としたのだというのが私の仮説です。



 第四部では、ハーヴァード大学政治学で教えられているもののうち、重要なものである共同体優先主義(Communitariansim)と合理的選択論(Rational Choice Theory)を取り上げて、説明しています。この2つの政治学上の重要な思想は、実はともに大変ユダヤ的であるということを私は指摘しました。共同体優先主義は、私の師である副島隆彦先生が見抜いたように、イスラエルの共同農場キブツの思想です。また共同体優先主義に分類される学者たちにはユダヤ系も多くいます。その代表が日本でも有名なマイケル・サンデル(Michael Sandel)ハーヴァード大学教授です。合理的選択論は、経済学の想定する経済的人間(economic man)を政治学に応用したもので(これを経済学の政治学に対する侵略と言って、経済学帝国主義と言う人もいます)、人間は「自己利益の最大化」のために行動するという前提で政治現象を分析していくものです。これも大変にユダヤ的な発想と言えます。こういったことを書くと、学問的ではないとして、アカデミックな世界では嫌われてしまいますが、私は敢えて書きました。



拙著『ハーヴァード大学の秘密』は、ハーヴァード大学をキーワードにして、このほかにも数多くのテーマを取り上げています。個々では紹介しきれないことをたくさん書きました。是非、多くの皆様にお読みいただきたいと思います。ここからは、現在の政治状況について書いていきたいと思います。



 私が『ハーヴァード大学の秘密』の最終的な推敲をしている2013年12月6日、キャロライン・ケネディ米大使が、楽天の本社を訪問し、三木谷氏と会談を行ったというニュースが入りました。私はこのことは大変重要だと直感的に思い、無理を言って、このことを本に入れてもらいました。キャロライン大使の動きは大変に重要ですが、そのことは後ほどにまとめて触れます。


carolinemikitani001
キャロライン・ケネディ大使(左)と三木谷浩史楽天会長兼社長



まず現在の政治状況を考えると、マイケル・グリーンが述べたように(2012年12月13日付東洋経済ONLINE「総選挙が「左派」に最後のとどめを刺す マイケル・グリーン氏が語る日本政治」ピーター・エニス http://toyokeizai.net/articles/-/12101)、「日本のリベラル系が殲滅」され、安晋三首相に抵抗できる勢力がいなくなりました。それで何が起きたかというと、安倍氏とその周辺が、アメリカの戦後世界を支配するための基礎となる正統性(legitimacy)を脅かす動きに出るようになったということです。それが、2013年12月26日の安倍晋三首相の靖国参拝です。靖国神社にA級戦犯として処刑された人々が合祀されたのは1978年、その目的は東京裁判史観を否定することでした。しかし、それは東京裁判を開いた連合国(アメリカがメインですが)に挑戦することでした。


abesinzoyasukuni001

安倍晋三首相の靖国神社参拝


 安倍首相の靖国神社参拝は、私がこのブログ内でも書きました通り(本ブログ2013年12月27日付 「分かっているようで分かっていないということになるのでしょうか」)、「アメリカの意図の読み間違い」であり、「アメリカに対する甘え(アメリカは一時的に怒っても、最後は許してくれる、だって日本は何と言ったってアメリカにとって大事な同盟国だし、ATMなのだから)」が引き起こしたものであると思います。ネオコンだろうがリベラルだろうが、「東条英機をはじめとするA級戦犯が祀ってある靖国神社(遊就館という太平洋戦争はアメリカが日本を圧迫し苛めたから起きたのだということを展示している博物館がある)に参拝するのは良いことでしょうか」と聞いて、「良いことですね」と大歓迎する人はアメリカ政府中枢に近いほどいないのではないかと思います。それは、アメリカの大義と戦後世界支配、世界覇権国の正統性を揺るがすことだからです。



 しかし、安倍首相には国内に対抗できる勢力がいない状況です。「リベラル」と言われた勢力は野党ではほぼ壊滅、自民党内の穏健派や保守本流系も静かになってしまった状況です。その結果、安倍氏と彼の周辺は誰にも実体のある反対や抵抗を受けることがなくなりました。そうして起こしたのが靖国神社参拝です。



 安倍氏を育て、盛り上げてきた、ジャパン・ハンドラーズは困ったことになったと思っているでしょう。安倍氏のために邪魔になるリベラルを黙らしてみたら、彼は自分たちに逆らうような行動をとるのですから(それが意図したものなのか、いわゆる「天然」なのかもよく分からないでしょう)。例えは適切かどうかわかりませんが、原子炉内の温度を適切に管理しようとしているのだが、暴走を抑えるための制御棒をなくしてしまったので、燃料棒が暴走して原子炉内の温度が上昇してしまうということに似ているのではないかと思います。



そこで重要な「制御棒」「対抗勢力」となるのが、昨年(2013年)秋に日本にやってきたキャロライン・ケネディ駐日アメリカ大使です。キャロラインが駐日本アメリカ大使に着任してから、日本政治が少しずつ動いているなという感じを私は持ってきました(結いの党の結党など)。このブログの中でも書きましたが(本ブログ2013年11月17日付 「新しく米駐日大使になったキャロライン・ケネディについて考えたこと」)、王族や貴族がいないアメリカで、ケネディ家は王族のようなものであり(私はボストン・ケネディ王朝と呼んでいます)、キャロライン・ケネディはその王女様(お姫様)です。



話は脱線します。ケネディ家はアイルランドからの移民であって、ボストンに昔からボストン・ブラーミンと呼ばれるWASPの上流階級からは恐らく「成り上がり者」と下に見られているでしょうが、ボストンはアイルランド移民の町でもあります。ボストンにある、アメリカのプロバスケットボールNBAのチームは、ボストン・セルティックス(Boston Celtics)と言いますが、セルティックスとは「ケルト人たち」の意味です。チームカラーはグリーン、クローバーがロゴです。バスケットボールは元々労働者たちが良く見るスポーツでした。そのため、そうしたボストン社会の下層階級を意識した名前がセルティックスなのです。また、昨シーズン、ワールドシリーズを制したボストン・レッドソックス(Boston Redsox、日本人の上原浩治投手、田澤純一投手が大活躍しました)が本拠地フェンウェイ・パーク(Fenway Park)で試合をし、勝ったら流される曲があります。「スウィート・キャロライン(Sweet Caroline)」という曲なのですが、これは幼いキャロライン・ケネディからインスピレーションを得て作られた曲です。この歌は今やボストンを代表する曲になっています。こうして見ると、私がキャロライン大使を王女様と呼ぶのもあながち的外れとは言えないだろうと私は思います。





 私はキャロライン大使に関しては王女様なのでお飾りだろうと考えていましたが、どうもそうではないようです。ここの点を私は間違いました。彼女は映画「スターウォーズ」に出てくる、レイア姫やアミダラ女王のように強い意志を持って行動する人物のようです。また、これは私の初めての単著『アメリカ政治の秘密 日本人の知らない世界支配の構造』でも書きましたが、オバマ政権の外交を担っているのは、スーザン・ライス(Susan Rice)大統領補佐官やサマンサ・パワー(Samantha Power)国連大使ヒラリー・クリントン系の女性たちで、いずれ劣らぬ正義感の強い人々です。

obamaricpower001
オバマ大統領、スーザン・ライス、サマンサ・パワー


アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 本ブログでもご紹介しましたが、駐日米大使館は、安倍晋三首相の靖国参拝に関して声明を発表し、その中で「失望した(disappointed)」という言葉を使いました。また、米国務省の報道官もこの言葉を繰り返しました。アメリカ大使館の声明に関して、色々な解釈をする人たちがいましたが、言葉通りに受け取るべきだったのです。キャロライン王女はご不満だったのです。このようなキャロライン王女に悪罵を投げつける人々(実際にアメリカ大使館のFBには異様な数の批判が書き込まれています)は、映画「スターウォーズ」で言えば、レイア姫を苛める銀河帝国軍の兵士たちと同じような存在として受け止められます。



 そして、最新の政治状況では、細川護煕元首相の都知事選挙出馬が最大の関心事となっています。東京の自民党は舛添要一元厚生労働大臣を支援するということになり、リベラル派、共産党と社民党は弁護士の宇都宮健児氏を推すことになりました。そして、軍事評論家で元航空幕僚長・元空将の田母神俊雄氏も出馬ということになり、石原慎太郎元東京都知事が支援することになりました。民主党は舛添氏の支援に回るかと思われましたが、細川氏の出馬で結論を先送りしています。



 私は昨日、細川氏が出馬の意思を固めたという話を聞いて、どうして今さら首相まで務めた人が選挙に出るんだ、学生野球の試合に引退したOBが出るようなものだ、と考えていました。しかし、昨晩ふと、これはアメリカの意向なのではないかと直感的に考えました。キャロライン大使が就任して以降、日本の政治が少しずつ動いていますが、それは安倍氏の支持ではなく、別の方向に動いていると感じていました。そして、細川氏の出馬も、キャロライン大使の意向なのではないかと考えて、それをツイッターでツイートしました。

hosokawamorihiko001
細川護煕



 細川氏の都知事選出馬は、かなり高い確率で、キャロライン大使の意向もあるのだということも分かってきました細川氏の奥さまである佳代子さんは、知的発達障害の人たちのためのスポーツ競技大会などを開催しているスペシャルオリンピックス(Special Olympics)を通じてケネディ家とつながりがあります。スペシャルオリンピックスは、ジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)元大統領の妹ユーニス・メリー・ケネディ・シュライバー(Eunice Kennedy Shriver)が1968年に始めました。そして、現在の理事長は、ケネディ元大統領の甥で、キャロライン・ケネディ大使のいとこのティモシー・ペリー・シュライバー(Timothy Perry Shriver)が理事長を務めています。日本のスペシャルオリンピックスは、細川佳代子さんが1993年に立ち上げたスペシャルオリンピックス・熊本が始まりとなっています。このように、細川家とケネディ家は国際的な社会活動を通じて繋がっています。こうした国際的なつながりは大変に重要です。この国際的なつながりとして、ヴァチカン(カトリック)も連なっているという話もあります。ケネディ家はアイルランド移民ですから、カトリックとの関係は深いし、オバマ政権の国連大使サマンサ・パワーはアイルランド生まれです。日本が、何か大きなものに包まれている、いや締められているそんな感じがしてきませんか。



 今回の細川氏の出馬には小泉純一郎元首相の支援があり、また、小沢一郎代議士・生活の党代表の働きかけがあったことが明らかになっています。こうして見ると、今回の細川氏の都知事選挙出馬は、安倍氏にブレーキを掛けるための、リベラル派(アメリカと日本の)の抵抗運動であると言えます。日本では実体のあるリベラルがいなくなってしまったために、戦う姫であるキャロラインが出てきているのだと思います。こうしたアメリカ側の意向が透けて見えるためか、自民党側では動揺が走っているようです。甘利明大臣の「殿ご乱心」発言はその慌てぶりを示しているものと言えまこす。

 私は『ハーヴァード大学の秘密』の第八章で、合理的選択論を取り上げました。この合理的選択論の重要な要素の一つが、プリンシパル(Principal)―エージェント(Agent)理論です。これは、「本人―代理人」理論と訳されます。プリンシパル(本人)は自分たちの利益を最大化するために、エージェント(代理人)を使います。これは政治の場面で色々な関係に見られます。有権者と政治家の場合は、有権者が本人となって、政治家が代理人となります。政治家と官僚(役人)の場合は、政治家が本人となって、官僚が代理人となります。問題は、代理人が本人の意向通りに動かない場合(これをエージェンシー・スラック、agency slackと言います)です。この場合、本人は代理人を変更するか(具体的には馘首)、意向通りに動くように誘導します。



 アメリカと日本の場合、アメリカの対日管理班(ジャパン・ハンドラーズ)が本人、日本の政治家が代理人となります。説明したように、代理人が本人の意向通りに動かないと、代理人は馘首になります。これまでもそうした例はありました。田中角栄は鳩山由紀夫といった人々はアメリカの意向に沿わなかったために潰されました。安倍氏だって例外ではありえません。安倍氏としては、「自分はアメリカの意向に従っている」と思っているかもしれません。しかし、そう考えているようでは、アメリカの複雑さ、大きさを全く理解していないということになります。安倍氏はネオコン派にくっついていれば安心と思っているかもしれませんが、アメリカはそこからシフトしたのです。そして何より、いくらネオコン派と言っても、靖国神社参拝については、安倍氏をそこまで徹底して弁護できないのです。アメリカの正義の前では、ネオコン派もリベラル派も一致しています。



 田中角栄氏はよく「石油問題でアメリカという虎の尾を踏んだのだ」と言われます。安倍氏も実は気づかないうちに「靖国問題でアメリカという虎の尾を踏んだのだ」と言うことになるのだと思います。



 今のうちはまだ、お灸的な感じで、都知事選で邪魔をされて、求心力を少し削がれると言ったところで済むのかもしれませんが、これからよほど自重して慎重に動かないと潰されてしまいます。二度目はないのです。We won’t give you a second!を突きつけられているというのが、私の今の政治状況に関する認識です。




(終わり)

  



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック






 古村治彦です。

 米外交誌『フォーリン・ポリシー』に掲載された、安倍晋三首相の靖国神社参拝に関して掲載された論文をご紹介いたします。

==========

安倍晋三の靖国神社参拝はワシントンとの関係を傷つけることになるか?(Will Shinzo Abe's Yasukuni Visit Hurt Relations in Washington?


http://blog.foreignpolicy.com/posts/2013/12/27/turkey_s_economic_enemies_corrupt_politicians_and_the_us_fed

アイザック・ストーン・フィッシュ(Isaac Stone Fish)筆

フォーリン・ポリシー誌

2013年12月28日


2013年12月26日(木)、日本の安倍晋三首相は靖国神社を参拝した。中国と韓国は安倍首相の靖国神社参拝を非難した。そして、東京にある駐日米大使館は厳しい言葉を使った声明を発表した。これは多くの人を驚かせた。米下院外交委員会のアドヴァイザーを務め、現在はSAISの米韓機構の訪問研究員を務めているデニス・ハルピンは、私に14名のA級戦犯が靖国神社に祀られていることは東アジアだけで論争を引き起こしている訳ではないことを次のように説明してくれた。


「東京にある靖国神社にはおよそ250万人の日本の天皇に命を捧げた魂が祀ってある。その中で全てのアメリカ人にとって際立った名前が一つだけある。それは東条英機である。」東条英機は日本帝国陸軍の将軍で戦時中に首相を務めた。彼は真珠湾に対する卑怯な攻撃を行うように命令を出した。この時、約2400名のアメリカ人が亡くなった。この数字は、2001年9月11日まで、アメリカ本土に対する攻撃で亡くなった数で最も大きいものだった。


 真珠湾攻撃は1941年12月7日に起きた。その翌日、フランクリン・ルーズヴェルトは衝撃を受けたアメリカ国民に向けて「今日私たちは屈辱の中で生きている」と語りかけた。その中には歴史的な出来事を忘れてしまう人たちもいるが、アメリカ人は東条英機が何を解放したかを忘れてはいないだろう。アメリカ人の中には真珠湾攻撃について

While they may be too young for Pearl Harbor, 現在を生きるアメリカ人のほとんどは、2001年9月11日の朝に起きた野蛮な攻撃とその後の国民の団結のことを覚えているはずだ。アメリカ人はオサマ・ビン・ラディンに敬意を表するのと同じことである、東条英機に敬意を表することを行う人物をアメリカ人は無視できるだろうか?

 

 「靖国神社に安倍晋三首相の前に参拝した首相は小泉純一郎だ。小泉純一郎は2006年にワシントンを訪問した時に、その代償を支払わされた。小泉はこの時のワシントン訪問の際にアメリカ議会で演説をするという計画を立てていた。私が当時仕えていた、ヘンリー・ハイド(共和党、イリノイ州選出)は米下院外交委員会の委員長を務めていた。ヘンリー・ハイド議員は、小泉がワシントン訪問の後に靖国神社参拝をする計画を持っていることを知った。ハイドは、「小泉がフランクリン・D・ルーズヴェルト大統領が“屈辱の日”演説を行った場所で小泉首相が演説を行い、東京に戻って東条英機に敬意を表することになったら、第二次世界大戦を覚えている世代の懸念を引き起こすことになるだろう」と述べた。小泉の米議会での演説は取り止めになって、小泉はそれを受け入れた。その代りとして、小泉は当時のジョージ・W・ブッシュ大統領と大統領専用機エアフォース・ワンに乗ってグレースランドを訪問した。小泉はエルヴィス・プレスリーの熱狂的なファンであった」


 安倍晋三首相は素晴らしい一年を過ごした。特に経済状況を改善させた。しかし、国際的に見て、安倍晋三首相は彼のナショナリズムで有目になってしまった。安倍首相の靖国神社参拝の決断は、アメリカにおける彼自身の立場を傷つけることになるだろうか?


(終わり)

 

 

 

 

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ