古村治彦です。

 

 今回は私の故郷、鹿児島県議会で起きたことを皆さんにご紹介したいと思います。

 

(事件の概要)

 

・2007年6月、当時中学3年生だった女性が所属している部活動の副顧問をしていた、通っていた中学校の校長に、部活動の練習後にドライブに誘われ、車内で「かわいいなあ」「嫁にしたいなあ」などと言われ、太ももを触られたり、キスをされたりした事件が起きました。

 

・2007年10月、当時中学3年生の女性が通っていた中学校の校長を強制わいせつ容疑で県警鹿屋署に告訴しました。任意で捜査が行われ、鹿児島地検は2009年2月に「立証は困難」として不起訴(嫌疑不十分)と判断しました。鹿児島検察審査会の「不起訴不当」議決を受け、地検は再捜査した上で2010年3月に再び不起訴(嫌疑不十分)となりました。

http://blog.livedoor.jp/damekyoshi/archives/1387748.html

 

・2010年6月、女性側が元校長と市を相手取り、計1500万円の損害賠償請求訴訟を鹿児島地裁に起こしました。元校長は「やっていない」と否認していく姿勢を示しました。2012年2月、鹿児島地裁は市に約67万円の支払いを命じる一方、元校長個人への請求を棄却しました。判決ではわいせつ行為を認定しましたが、計約1700万円の請求に対し、市に約67万円の支払いを命じました。元校長については「公務員の行為は公共団体が賠償の責任を負う」とする最高裁判例を引き、個人への請求を棄却しました。

http://blog.livedoor.jp/damekyoshi/archives/1781174.html

 

・2013年10月、最高裁は原告(元女子生徒側)の上告を棄却し、判決が確定しました。鹿屋市は遅延損害金を含めた約186万円を女性に支払いました。

http://blog.livedoor.jp/damekyoshi/archives/1948915.html

http://blog.livedoor.jp/damekyoshi/archives/1953753.html

 

・2014年2月、県は、「懲戒免職に相当する行為があった」と認定しましたが、判決が元校長の定年退職後に確定したために、元校長に退職金返納命令書を出しました。2014年6月20日の鹿児島県議会一般質問で、大園清信(おおぞのきよのぶ)県議会議員(自民党所属、鹿児島市・鹿児島郡区選出)が「(女子生徒の)小さな嘘から始まった冤罪事件」という発言を行いました。大園議員は「元校長は一貫して(わいせつ行為を)否定している。県教委は十分な調査をし、適切に対応したのか」と質問。「民事訴訟の判断が真実なのか大変疑問」と主張しました。大園議員は取材に「元校長は無実を訴え、退職金は返さないと言っている。生徒側の主張は疑問点が多い」と話した。生徒側への事実確認は「していない」と述べました。元生徒側は6月24日に大園議員に対して公開質問状を提出、大園議員は発言を撤回しました。

http://hisafumi-foot.blog.so-net.ne.jp/2014-06-24-5

 

(私の考え)

 

①私は2014年6月21日付の南日本新聞の記事のタイトル「鹿屋校長わいせつ「生徒のうそ」」が気になりました。この記事のタイトルだと、元女子生徒が嘘を言って、元校長を陥れたということになります。しかし、記事の内容とタイトルには乖離があり、そのようなことを大園議員は主張しているということになっています。タイトルの付け方が極端に下手なのか、そのような印象を読者に与えたいのか、南日本新聞の意図は分かりませんが、記事の内容に即したタイトル付けということを記者もデスクも勉強された方が良いのではないかと思います。

 

 南日本新聞で思い出すのは、鹿児島市役所の前にあった立派なビルなんですが、もっと鮮明に思い出すのは、南日本新聞には申し訳ないのですが、子供の頃、天文館に行くたびに見た「ペンの暴力 ペンのダニ 南日本新聞」という看板です。近くの乾物屋さんからの匂いと共にいまだにこの看板の文字を強烈に覚えています。子供心にオドロオドロシイ感じがしながら、大人の世界というのは大変なことがあるんだということを思いつつ、怖かったので周りの大人にもどうしてあんな看板があるのかということを聞けなかったことを覚えています。関係ない話で申し訳ありません。

 

②大園県議は2014年6月25日に県議会の一般質問における発言を撤回しました。しかし、「発言は撤回するが、元校長の“無実”を信じて支援していく」と述べたそうです。また、鹿屋の元中学校長が勤務していた中学校のPTA関係者が元校長を支援していくということを表明しているようです。元中学校長と支援を表明されている人々は、県の退職金返納命令の撤回のために、県との間で裁判を起こすことが一番ではないかと思います。女子生徒との間には刑事事件にはなっておらず、民事訴訟では最高裁で棄却されて判決が確定している訳ですから、彼らは県(県教育委員会)を訴えて、返納命令所は撤回しろと主張すべきです。

 

 鹿児島県としては裁判の原告になれば、返納命令の正しさを証明するという作業をすることになるでしょう。民事訴訟で確定した判決がその根拠となるでしょう。更には、県教育委員会は元校長に聞き取り調査も行った上で処分を決めているということです。ですから、元校長と支援者の方々はよほど周到な準備をして訴訟をしなくてはならないでしょう。その際に希望したいことは、元女子生徒をこれ以上傷つけないで欲しいということです。

 

③そもそもの話として、「一般的に先生が女子生徒とドライブに行くという行為をするだろうか」という疑問が起きます。私が聞いた話では、元校長は女子生徒と二人きりでドライブに行ったということです。この行為が発覚後、中学校の教頭と担任教師が女子生徒の家に謝罪に行きました。その際、中学校長は同行を拒んだということです。その他にも色々と聞いていますが、これ以上は書かないでおきます。新聞記事で元校長は「わいせつな行為」は否定していると書いてありますが、ドライブ行為自体は否定していないようです。

 

 軽々しくドライブに行く、などという行為に及んだこと自体が教師にあるまじき行為です。教師と生徒との間には親しさや尊敬があるべきなのは当然ですが、そこでも一線を引かねばなりません。学校時代に皆さんも経験があると思いますが、同級生に対して、「あいつは勉強ができるから依怙贔屓されている」とか「あの人は家がお金持ちだから依怙贔屓されている」なんて考えたことがあると思います。そのほとんどは被害妄想だったりします。

 

しかし、教師側は依怙贔屓があったと思われないように慎重に行動します。そうしなければ学級経営がうまくいかず、クラスが崩壊してしまうことにもなるからです。また、依怙贔屓的な行為をしてしまい、「黙っておいて」と言っても、秘密が保たれることはありません。依怙贔屓された学生は優越感も手伝って、秘密を漏らしてしまうものです。ですから、依怙贔屓と取られる行為は本能的に避けるのが普通の教師です。二人でドライブ、など言語道断、教師失格です。

 

この元校長を支援する方々は、自分の娘や親族、知り合いの女子中学生から「今度の日曜日に校長先生と二人でドライブに行くんだ」と言われた時に、「そうなの、それは楽しみだね、行ってらっしゃい」と言えるでしょうか。「ええ、なんで?」と思わないでしょうか?そんな教師はおかしいとは思わないでしょうか?

 

④今回の大園議員の発言(既に撤回)には、担任教師が女子生徒の嘘を見抜けなかったと批判し、そして、組織の関与があるという発言もあったそうです。この組織とは鹿児島県教職員組合のことだと言われています。鹿教組批判をされるのは結構ですが、このような元女子生徒と元校長の人権も絡む微妙な問題を使っての組合批判は余りにも酷いものです。自分の主張のためなら何を使っても良いということにはなりません。また公開質問状に対してなんらまともに答えることもできずに撤回してしまうほどに根拠薄弱な主張というのは情けない限りです。

 

 私はこの問題を鹿児島に住む母から知らされました。地方議会を巡っては都議会の野次問題もありましたが、こうしたことは氷山の一角で多くの地方議会で様々な問題があるのだろうと思っていました。そうしたところ、実家の母から鹿児島県議会でもこんなことがあったのよ、ということを知らされ、悲しく思いながらこの文章を書きました。私の親族は教育関係者が多いということもあって、今回の問題はより迫るものがありました。まとまりに欠ける文章になりましたが、今の考えは自分なりにまとめることができたと思います。

 

(終わり)