古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:2016年

 古村治彦です。

 アメリカン大学の歴史学の教授でアラン・リクトマン(Allan Lichtman、1947年―、73歳)という人がいる。この人物は1984年以降のアメリカ大統領選挙の結果を全て正確に予測していると主張している。アメリカでは「2016年の大統領選挙でトランプ勝利を予測した」としてメディアで引っ張りだことなった。
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アラン・リクトマン
 このリクトマン教授が「2020年の大統領選挙でバイデンが勝つ」と予測を出し、それを民主党の応援団『ニューヨーク・タイムズ』紙が嬉しそうに記事にしている。

 リクトマンは13項目の指標のイエスとノーの数で大統領選挙の予測をしている。彼はこの指標をソ連出身の地震学者ウラジミール・ケイレス・ボロック(1921-2013年、92歳で没)と共に作り、1984年に本にまとめて発表した。13項目は以下の通りだ。

 

1.       大統領選挙の中間選挙(大統領選挙の2年前の実施)の後、大統領を擁する党の連邦下院で保有する議席数が、その前の中間選挙の後よりも多い。

2.       大統領を擁する党の予備選挙で激しい競争がない。

3.       大統領を擁する党の候補者が現職大統領である。

4.       選挙結果に影響を与える有力な第三党もしくは無所属の候補者がいない。

5.       選挙期間中に景気後退が起きていない。

6.       大統領選挙までの4年間(大統領の任期)の1人当たりの実質経済成長がその前の8年間(大統領の任期2つ分)の平均成長率を超えている。

7.       現職大統領の政権が国家規模の政策の変更に影響を与えている。

8.       大統領の任期中に暴動など深刻な社会不安は存在していない。

9.       現職大統領の政権がスキャンダルを起こしていない。

10.現職大統領の政権が外交問題もしくは軍事問題で深刻な失敗をしていない。

11.現職大統領の政権が外交上もしくは軍事上で大きな成功を収めている。

12.大統領を擁する党の候補者がカリスマを備えているもしくは国民的英雄だ。

13.大統領を擁する党に挑戦する側の党の候補者がカリスマを備えていない、もしくは国民的英雄でもない。

 

 2016年の大統領選挙の時、リクトマンは「2、5、6、8、9、10、13がイエスとなり、他がノーとなるので、総得票数でヒラリーは勝てず、トランプが勝つ」と予測した。実際はどうだったかというと、ヒラリーは総得票数で勝利をしたが、選挙人獲得数ではトランプが勝利し、大統領になった。リクトマンは「トランプ当選を予測した男」としてメディアに引っ張りだことなった。

 リクトマンが「今年の大統領選挙ではジョー・バイデンが勝つ」という予測をしている、と民主党の応援団『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じたのは2020年8月5日だ。リクトマンは「2、3、4、7、10、13」の項目の答えがイエスで、後はノーだとして、イエスの数が少ないことから、「バイデンが勝つ」と予測している。ニューヨーク・タイムズ紙はこのことを嬉しそうに報じた。

 ここで注意をしなければならないのは、リクトマンの予測は「総得票数」に関するものだという点だ。リクトマンは2000年の大統領選挙で、ゴアが総得票数でブッシュに勝利すると予測した。確かに、ゴアは総得票数で勝利した。しかし、大統領になったのは、フロリダ州においてわずか数百票差で勝利し、選挙人獲得総数で上回ったブッシュだった。

 また、2016年の場合も、トランプが総得票数でヒラリーに勝利すると予測していたのだ。実際には、トランプは総得票数でヒラリーを下回ったが、選挙人獲得総数で勝利した。だから、リクトマンは予測を外したが、“総得票数“という言葉を入れなければ、「トランプ勝利を予測した人物」ということになる。

 また、上に挙げた指標を見れば、最後の2つはかなり主観的なしひょぅであることが分かる。カリスマであるとか、国民的英雄であるといったことは数値では測れない。人気や知名度ということでもないとなれば、これは恣意的なものとなってしまう。リクトマンは、ドナルド・トランプはカリスマを備えていないし、国民的英雄でもないとしているが、それは彼の意見である。

 いつもなら、「これは怪しい指標だ」と切り捨てるはずのニューヨーク・タイムズが「トランプ勝利を予測した大学教授」が「バイデン勝利を予測した」と喜び勇んで報じているところは何とも滑稽な話である。

(貼り付けはじめ)

これまで数々の選挙の結果を正確に予測してきた歴史を持つ大学教授が「バイデンがトランプを倒す」と予測(Professor with history of correctly predicting elections forecasts that Biden will defeat Trump

マリナ・ピトフスキー筆

2020年8月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/510754-professor-with-history-of-correctly-predicting-elections-forecasts-that

これまでの大統領選挙の結果を正確に予測してきたアメリカン大学教授アラン・リクトマンが、民主党の大統領選挙候補者に内定している、ジョー・バイデン前副大統領が11月の大統領選挙でトランプ大統領を倒すと予測していると述べた。

リクトマンは2016年の選挙でトランプ勝利を予測した数少ない専門家の一人だ。大統領を軸として数十年にわたりアメリカ政治を観察してきたリクトマンは、ホワイトハウスを握っている党がそのままホワイトハウスを握り続けるかどうかを決めるのに役立つ、13項目の「キー・ファクター」からなるシステムを構築した。その項目には、「現職大統領が再選を目指して選挙運動を行っている」から「短期的、そして長期的な経済状態」まで含まれている。

リクトマン教授は水曜日に『ニューヨーク・タイムズ』紙によって発表されたヴィデオ映像による論説の中で、「これらの項目からトランプがホワイトハウスを失うことになると予測される」と述べた。

リクトマンは、1984年以降の全ての大統領選挙の勝者を正確に予測してきたと主張している。しかし、2000年の場合にはアル・ゴア前副大統領が勝利すると予測している。実際には、アル・ゴアは得票総数では勝利したが、ジョージ・W・ブッシュ前大統領が選挙人獲得総数で勝利した。

リクトマンのシステムによると、ジョー・バイデンに有利な項目は7つとなっている。2018年の中間選挙で民主党が議席を増やしたこと、現在も続いているコロナウイルス感染拡大の中での短期的そして長期的な経済への打撃、今年初めの警察によるジョージ・フロイド殺害事件によって爆発した「社会不安」が含まれている。

リクトマンはまた、今年初めのトランプ大統領への弾劾の試みを含むホワイトハウスの「スキャンダル」、大統領が外交もしくは軍事の面で成功を収めていないことも挙げている。リクトマンはまた、国民の多くにとって、トランプが「カリスマを持つ」候補者ではないと主張している。

トランプ大統領に有利な項目には、「ホワイトハウスを握っている党で予備選挙で競争がなかった」こと、トランプは現職大統領であること、第三党の挑戦者がいないことが挙げられる。リクトマンは、トランプが2017年に減税を行ったことなどから大きな政策変更が実行されたと指摘している。ホワイトハウスは外交もしくは軍事の面で失敗をしていない、バイデンは「人々を動かす、カリスマを持つ」人物ではないとも述べている。

しかしながら、リクトマンは、有権者に対する抑圧の試みが起きる可能性、2020年の選挙に対するロシアによる介入など、「13項目以外の要素が影響を与える」こともあると認めている。

リクトマンは「有権者の皆さん、皆さん次第なんです。我が国の民主政治体制の未来を決めるのは」と述べている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 

 昨日、参議院議員選挙の投票開票が行われました。結果は、自民党と公明党の政権与党が勝利を収めました。また、改憲に賛成・反対のくくりになると、今回の選挙の結果、改憲賛成ブロックが164(おおさか維新・日本のこころを大切にする会の非改選、無所属を含む)となり、改憲の発議に必要な参議院議員の3分の2を2議席超える結果になりました。

 

 民進党はほんの少しですが、無党派からの支持を獲得することに成功し、改選時は下回りましたが、前回よりは挽回しました。共産党は、例の「人殺し予算発言」が響いてそこまで党勢を拡大することはできませんでした。

 

 自公は設定した勝敗ライン61議席を超えたので、まずは勝利と言えます。皆で「アベノミクス選挙だ」と言っていたのですから、とりあえず「アベノミクスは民意の賛意を得た」と言うことが出来ます。”Japanese voters have bought Abenomics.”となりました。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

参院選

●「全121議席が確定」

 

毎日新聞2016711日 0613分(最終更新 711日 0646分)

 

 参院選は11日早朝に全121議席が確定した。自民党は56議席、公明党は14議席を獲得し、安倍晋三首相が勝敗ラインに設定した与党の改選過半数(61議席)を大きく上回った。憲法改正に前向きなおおさか維新の会は7議席を獲得し、同党などを加えた「改憲勢力」で参院(定数242)の3分の2を上回った。

 

 自民、公明、おおさか維新の3党など改憲勢力の非改選議席は88議席。参院で憲法改正の発議ができる3分の2(162議席)に達するには74議席が必要で、3党の議席はこれを上回る77議席に達した。これで衆参両院で改憲発議が可能となった。

 

 自民党は32ある1人区(改選数1)の21選挙区で勝利。比例代表でも2013年参院選を1上回る19議席を獲得したが、27年ぶりの単独過半数回復をかけた57議席には届かなかった。現職閣僚では岩城光英法相(福島選挙区)と島尻安伊子沖縄・北方担当相(沖縄選挙区)の2人が落選した。

 

 公明党は選挙区に過去最多の7人を擁立。全員を当選させるなど、改選9議席を大きく上回る14議席を獲得した。

 

 民進党は13年参院選(当時は民主党)の17議席を上回る32議席を獲得したが、改選46議席は割り込んだ。ただ、1人区は野党統一候補が11選挙区で勝利する健闘をみせた。

 

 おおさか維新の会は改選2議席を大きく上回る7議席を獲得。共産党は13年参院選に続いて東京選挙区で議席を得て、改選数から倍増の6議席を獲得した。社民党は比例代表で1議席を獲得したものの、吉田忠智党首は落選した。生活の党も比例代表1議席を獲得した。

 

(新聞記事点差貼り付け終わり)

 

 今回の参院選挙の争点は、公式的(自民党が設定しようとしたもの)には「アベノミクス、これをそのまま続けるか」ということですが、野党やメディアは「改憲が可能となる参院での改憲勢力が議席数の3分の2を占めるかどうか」という観点で報道しました。

 

 そもそも今回の参議院議員選挙では当初、衆議院の解散に伴う総選挙と同日選挙(ダブル選挙)になる可能性もありました。ところが、安倍首相は衆院解散を断念しました。この時点で、改憲に関しては及び腰である、と言うことが出来ます。2014年の総選挙と今回の参院選の争点は、アベノミクスでした。もちろん、2014年の選挙の後、安保法制を成立させましたので、争点でないことを平気でやるのは安倍政権の得意技です(「新しい判断」という言葉を安倍首相は使ってきました)。

 

 しかし、彼らの悲願の本丸である改憲に関しては衆議院、参議院それぞれの院で100名、50名の議員の賛成で発議が行われ、本会議で3分の2の議員の賛成で可決となり、国民投票にかけられます。この手続きについては、慎重さを期さなければなりません。いささかの瑕疵もあってはなりません。

 

 そうなると、まずは改憲の発議を行う前に、衆院解散を行って、直近の民意を問うことが憲政の常道です。今回はそのチャンスでした。しかし、安倍首相は衆院解散をしての同日選挙に踏み切れませんでした。それは、同日選挙にするとそれは「改憲」を大きく打ち出すことになり、そうなれば、いくらふがいない野党勢力と言ってもまとまる口実を与えてしまい、また選挙が盛り上がってしまい、衆院で改憲勢力で3分の2を取れない、自民党が解散前の議席を割り込むなんてことになってしまったら、安倍首相の責任問題に発展して、辞任ということになります。そうなれば、おじいちゃんを乗り越えるチャンスを失うことになります。

 

 私は今回の選挙結果は、「日本人の絶妙のバランス感覚が発揮されたもの」と考えます。野党がまとまって行動したことに評価を与えつつ、3分の2をほんの少し超える程度の議席(現在流行りの週刊文春のスクープで減らされることだってあり得ます)を与え、「ほれ、これで改憲ができるものならやってみろ」という態度を示したものと思います。

 

 私は、今回自民党と公明党を中心とする改憲ブロックが参議院で3分の2を少し超える議席を獲得したと言っても、改憲はかなり困難である、安倍首相が考えているような改憲はほぼ不可能であると考えます。それは国民投票で賛否を決めるまでの高いハードルがいくつもあるからです。

 

国民投票については総務省のウェブサイトが便利です。

 

※以下が総務省のウェブサイトのアドレスです↓

http://www.soumu.go.jp/senkyo/kokumin_touhyou/

 

 憲法改正の発議が衆議院では100名以上、参議院では50名以上の賛成で行われます。そして、両院の憲法審査会でそれぞれ審議が行われます。合同の審査会も可能です。そして、両院の本会議で採決が行われます。それぞれ3分の2以上の賛成で可決となります。これで国会が国民に対して憲法改正の発議を行ったということになります。

 

 この可決された日から60日から180日以内の日に国民投票が実施されます。国民投票の投票率によって効果が無効になるということはなく、単純に過半数で賛成、反対が決まります。その後、賛成となった場合には、内閣総理大臣は直ちに改正の手続きを行うということになっています。

 

 国民投票では、単純に「日本国憲法を改正することに賛成ですか?反対ですか?」という設問ではありません。改正する部分、部分それぞれに設問があって、「賛成・反対」に○をするという形になります。

 

 こうして見てくると、国民投票は単純な話ではありません。憲法改正の発議はまぁできます。その時に、どのように改正するかという案を出さねばなりません。日本国憲法は前文から第96条まであります。理論的には全部を変える・修正することは可能でしょうが、実際には無理な話です。設問の数や順番のこともあります。設問が50問などとなってしまったら、いつもの選挙のように立って丸を付けていくだけでも大変な苦痛になります。ですから、設問はできるだけ絞るということになるでしょう。自民党の憲法改正草案にはいろいろなことが書かれていますが、あれを全部1回でやるということは無理です。「この部分は良いけど、これは嫌」という人が大多数になるでしょう。

 

 そうなると、自民党の内部でまずどの変更や修正を優先するかで意見が分かれるでしょう。自民党は総裁一任ということにはなるでしょうが、その議論の過程で、様々な意見や批判が党内から出るでしょう。これは大きな痛手です。

 

 更には、公明党とも調整しなければなりません。公明党は今や看板だけになっているかもしれませんが、「平和の党・福祉の党」と謳っています。「加憲」ということを言って、ある意味で「逃げ」を打っている状況ですが、そこまできたら、肚をくくり、自党の運命を決めねばなりません。自民党の陰にいて補完勢力になって、批判の弾は自民党に受けさせるというオイシイ立場は終わりになります。公明党は、自民党に同調するのか、しないのかの踏み絵を踏まされます。そして、全国に約800万世帯にある創価学会の皆さんを説得しなくてはなりません。ここも大きな関門です。また、野党でも与党でもない「ゆ」党路線のおおさか維新や日本のこころを大切にする会の意向も問わねばなりません。これらは少数ですが、彼らが抜けてしまえば3分の2に響くのですから、かなりの要求を飲まねばなりません。政治家の最大の指名は選挙に勝つことですから、選挙協力という話も出るでしょうが、実際におおさか維新と争う自公の政治家たちからは不満が出るでしょう。衆議院では自公で3分の2ですが、参議院ではこれらを含んで3分の2から2議席出ただけのことです。

 

 自民党や公明党、その他の勢力から造反が出る可能性も高くなります。それに備えて、自公側は民主党の内部に手を突っ込むことになるでしょう。アクターが複雑に入り組んでいますから、そう簡単に、スムーズに憲法改正の発議が進むとは思いません。もちろん、野党は激しく抵抗するでしょうし、院外の街頭では、抗議活動が行われるでしょう。

 

 憲法改正の発議が両院の憲法審査会で通り、本会議で審議・可決されて国民投票になります。それから60日から180日以内に国民投票が実施されます。現在の世論調査の数字では、反対が上回っています。憲法に関する議論がメディアなどを通じても盛んになるでしょう。国民投票になった場合に、通常の選挙と同じ手法が使えるのかどうかが疑問です。自公は組織票固めに走るでしょう。この組織というのは利益団体であって、単純に言えば、国の予算を分け与えてもらう見返りに投票をする、選挙運動をするということになります。自公が「国民投票で自分たちの発議に賛成の票が多かった都道府県や市町村に予算を手厚く配分する」なんてことを言えば、「・公務員等及び教育者は、その地位を利用した国民投票運動をすることができません。・組織的に多数の者を対象に、投票に影響を与えるような利益を供与したり、利害関係を利用して誘導することは罰則の対象となります」という国民投票の規定に引っかかってしまいます。

 

 また、組織の中でも色々な考えがあるでしょうから、「自民党がやることは何でもいいんだ」という人から「今回は従えないな」という人まで出ます。これは労組でもそうです。

 

 こうして見てくると、改憲の道のりは長く険しいということになります。「3分の2を取れば明日にも改憲だ!」ということにはなりません。今回の選挙の後でも改憲勢力は揃って死んだふりをしています。しかし、油断はできません。改憲勢力にとっては、今が最後のチャンスかもしれないのですから。衆議院議員の任期が2018年、次の参議院議員選挙は2019年です。それまでは確実に3分の2が確保されているのですから、このことは安倍首相にとっては大変魅力的でしょう。次の選挙ではどうなるかは分からないのですから。

 

両院で改憲勢力が3分の2を取ったという事実を踏まえて、まず私たちができることは、自民党の憲法草案を読む、その解説書(賛成・反対それぞれの立場)を読む、国民投票について知る、という極めて単純な話です。そして、改憲ブロックの中心である自民党と公明党があらゆる手段を用いてきても良いように準備をしておくことです。ですから、今回の選挙で「あいつが出たからダメだった」とか「頑張りが足りなかった」という批判はある程度までにして、反省するところはしっかり反省して、改憲ブロックに反対する、議会に議席を持つ人々と結び附き、また彼らをしっかり結び付けておかねばなりません。

 

(終わり)










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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は、2016年のアメリカ大統領選挙と政治思想の関係について書きたいと思います。2年後の他国の政治ショーについて書くのは鬼も笑わずに、呆れてしまうことでしょうが、ここが一つ争点になって欲しいという願いも込めて書きたいと思います。ただ、これは希望であり、実際にはそうならずに世界はもっと酷い状況になっていくんだろうと考えています。

 

 2014年の中間選挙が終わって、次はいよいよ2016年の大統領選挙です。現職のバラク・オバマ大統領はこの選挙には出馬できないので、全く新しいリーダーを選ぶことになります。あれだけ清新なイメージで、人々の圧倒的な支持を得て登場したオバマ大統領でしたが、6年を過ぎてぼろ雑巾のようになっています。しかし、2期を何とか務め上げることができるでしょうから、それだけでも大したものです。

 

 現在のところ、民主党ではヒラリー・クリントン前国務長官が次の大統領選挙の候補者として有力視されています。他にはいないような状況です。かろうじて現職のジョー・バイデン副大統領の名前も挙がっていますが、厳しい状況です。

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ヒラリー・クリントン 

 

 一方の共和党は、色々な名前が挙がっています。クリス・クリスティニュージャージー州知事、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事、マルコ・ルビオ連邦上院議員、ポール・ライアン連邦下院議員、ランド・ポール連邦上院議員などの名前が取りざたされています。人材が豊富そうに見えますが、帯に短し襷に長しで、2016年の大統領選挙でホワイトハウス奪還を目論む共和党としては、強力な敵手となるヒラリーに勝てる力を持つのは誰かを見極めかねているというのが現状だと思います。

 

 このブログの右側にある「カテゴリー」という欄に「アメリカ政治」というタイトルがあります。そこを押していただくと、このブログでご紹介したアメリカ政治関連の記事が出てきます。こちらをお読みいただけると、アメリカ政治についてより詳しくなることができます。

 

 私がこのブログでご紹介してきたアメリカ政治の記事をまとめ、自分なりに考えたことをこれから書きたいと思います。

 

 私が2012年に出しました『アメリカ政治の秘密 日本人が知らない世界支配の構造』(PHP研究所)で描き出しましたように、アメリカの外交政策の潮流には、「ネオコン派・人道的介入主義派(Neoconservatives/Humanitarian Interventionism)」と「現実主義派(Realists)」があります。ネオコン派は共和党、人道的介入主義派は民主党、現実主義派は民主、共和両党にまたがります。それぞれについて簡単に言うと、ネオコン派と人道的介入主義派は、「アメリカの理想を実現するために世界中に積極的に介入していく」と考える人たちであり、現実主義派は「無理をしないで、世界に出来るだけ介入しない」と考える人たちです。ネオコン派はイラク戦争時のジョージ・W・ブッシュ政権にたくさんの人々が参画していたので有名になりました。

 

オバマ大統領とバイデン副大統領は現実主義派です。一方、ヒラリー・クリントンは人道的介入主義派です。ヒラリーは、「世界中で苦しんでいる人々のためにアメリカは軍事力を使ってでも積極的に介入すべきだ」と考える訳です。党派は異なりますが、ネオコン派も積極的介入=軍事介入という点で共通です。

 

 ジョージ・W・ブッシュ大統領のアフガニスタン侵攻とイラク戦争のせいで、2008年の選挙で、共和党はオバマの当選を許し、連邦上下両院選挙でも惨敗を喫しました。その結果、イラク戦争などを主導したネオコン派の人々は表舞台から姿を消すことを余儀なくされました。しかし、理由は違えど彼らと同じような結論に至るように考えるヒラリーがオバマ大統領の下、国務長官となりました。そして、アラブの春が起きました。しかし、リビアのベンガジでアメリカの大使が殺害されるという事件が起きました。これは揺り戻し、吹き戻し、ブローバックと呼ばれる現象です。それによってヒラリーは退任することになりました。

 

 現在のアメリカの外交姿勢は「弱腰」のように見えますが、話し合いを重視し、難しい相手でも単純に「敵認定」せずに、国際社会に迎え入れて問題を解決しようとしています。これが現実主義派のやり方なのです。しかし、華々しい結果をすぐに得られないので、人気は出ません。オバマ大統領も「リーダーシップの欠如」などと言われています。それに対して、ヒラリーにはリーダーシップと経験があると見なされているのです。

 

 しかし、ヒラリーが大統領になったらどうでしょう。ネオコン派と同じ結論になる彼女のことです、アメリカ軍をより積極的に中東に派遣するでしょう。それだけで済むでしょうか。東アジアも不安定要因が多い中で、更に緊張が高まる可能性があります。

 

 これに対して、民主党リベラルの一部では、民主党のバイデン大統領を何とか勝たせて、現実主義を継続させようという動きがあるようです。しかし、あくまで一部、少数派のことですから、これがうまくいくかどうか分かりません。そうなると、ヒラリーを大統領にさせないためには、共和党のネオコン派とは違う考えを持つ人物を対抗馬にすべきだという考えが出てきます。

 

 そのための候補がランド・ポールです。彼の父ロン・ポールが共和党所属の連邦下院議員でした。ロン・ポールはリバータリアンとして一貫した政治姿勢を貫きました。リバータリアニズムとは「政府は余計ないことをしないで最低限の機能だけを果たし、個人の自由と権利を最大限に尊重すべきだ」という思想です。リバータリアンたちは、軍隊についても「アメリカが世界の警察などしなくてよい、可哀そうな人たちがいるのは分かるがそれは彼らが解決すべき問題だ、アメリカ軍はアメリカに帰ってくれば良い」と主張します。ランド・ポールもそうした主張を穏健に行っています。

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ランド・ポール 

 

 ここに、民主党のリベラル派と共和党内の穏健なリバータリアンの連合ができる可能性があるのです。いや、既にできていて、リベラル・リバータリアニズム連合(Liberal-Libertarianism Alliance)について学術的な研究も進められているということです。リベラル・リバータリアン連合の戦略は、ヒラリーに対して、民主党の予備選ではバイデンをぶつけ、本選挙では共和党のランド・ポールをぶつけるという二段構えのものです。しかし、残念なことに、民主党リベラル派も共和党リバータリアンも少数派であるため、恐らくこの戦略がうまくいくことはなく、ヒラリーが大統領になってしまうでしょう。

 

 アメリカの財政赤字や経済状況が悪化すれば、アメリカ軍が世界に出ていくお金はなくなるのですが、アメリカには日本とサウジアラビアという2つのATMがあり、特に日本の場合は「無尽くん」です。従って、ヒラリーが大統領になれば、日本が貢ぐべきお金が増えていくことになります。

 

 こうしたことも考えながら、これから2年間の動きを注意深く見ていく必要があると思います。

 

(終わり)











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