古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:2022年

 古村治彦です。

 先日の中間選挙では、様々な選挙が実施された非白人、女性、LGBTQ+の人々がこれまでよりも多く立候補し選挙戦を戦った。その中には、「史上初」という言葉が付く当選者が多く出た。全員をご紹介することはできないが、良くまとまっている記事をご紹介する。

 全体で見れば、共和党ではドナルド・トランプ前大統領が支持した連邦議員選挙の候補者たちが150名近く当選した。共和党のエスタブリッシュメント派は戦々恐々としている。彼らはトランプ派の伸長を警戒し、「今回の選挙で共和党が予想を下回る結果しか得られなかったのはトランプのせいだ」と訴えている。しかし、それは自分たちの責任を回避する言論でしかない。

 民主党では進歩主義的な議員たちが新たに当選しているがその勢力は小さい。しかし、彼らの影響力は大きい。特に若い人々への影響は顕著だ。そうした中で、25歳の進歩主義派の候補者マックスウェル・フロストがフロリダ州で連邦下院議員に当選した。彼の動きはこれから注目だ。

 その他にも性的マイノリティの人々が当選しているということが注目を集めている。アメリカでは性的マイノリティに対する差別が根強いが、それでも少しずつ変化が起きている。

 選挙はアメリカ社会を移す鏡とも言える存在だ。アメリカの多様性は少しずつであるが、公職の構成も反映されつつある。翻って日本を顧みれば、その道のりはまだ遠いということになる。

(貼り付けはじめ)

サマー・リーがペンシルヴァニア州初のアフリカ系アメリカ人女性として連邦議員に当選(Summer Lee becomes first Black woman elected to Congress from Pennsylvania

シェヤン・M・ダニエルズ

2022年11月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/3727447-summer-lee-becomes-first-black-woman-elected-to-congress-from-pennsylvania/

2022年5月12日(木)、ペンシルヴァニア州連邦下院議員選挙第12区の民主党候補者指名を目指すサマー・リー州下院議員がピッツバーグでの選挙集会で演説をしている。この演説の後にバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)からの支持表明を受けた。民主党予備選挙は2022年5月17日(火)の予定だった

進歩主義派の民主党員サマー・リーが火曜日、連邦下院議員選挙に当選し、ペンシルヴァニア州初のアフリカ系アメリカ人女性として連邦議会に赴くことに決まった。

リーにとっては、歴史的な瞬間を作り出すのは2回目のこととなった。リーは、ハリスバーグ地区から初めてアフリカ系アメリカ人女性としてペンシルヴァニア州下院議員に当選した経歴を持つ。

リーはピッツバーグのダウンタウンで開催した投開票日の集会で「今回の選挙運動は、最も疎外された人々を優先し、この国で真の労働者階級の運動がどのようなものになるかを求めて戦った運動となった」と語った。

リーは、ペンシルベニア州第12選挙区で、引退を表明した民主党連邦下院議員の後任として、共和党のマイク・ドイルを破った。

リーは州下院議員を2期務めた弁護士で、労働組合の組織化を行う活動を行っていたこともある。彼女は州下院議員選挙で再選を果たした。来年には補欠選挙が行われる予定である。

リーの成功は、進歩主義的な人々にとって大勝利となる。来年議会に参加する1年生議員となるリーは、連邦議会で「スクアッド(the squad)」と呼ばれる進歩主義的な議員集団の最新のメンバーになることが期待されている。

この選挙区は民主党が圧倒的に優勢とされていたが、連邦下院共和党の選挙部門はこの選挙区に資金を注ぎ込み、先月末には6桁(10万ドル単位)の資金投入を行った。さそれに対して米国イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)傘下のスーパーPACは、リーの当選を阻止しようと100万ドル以上の資金を提供した。

AIPACの投開票日直前の支出は、現職の進歩主義的な連邦下院議員たちの怒りを引き起こした。アレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員(ニューヨーク州選出、民主党)やイルハン・オマル議員(ミシガン州選出、民主党)のような現職の進歩主義派連邦議員たちから怒りの声が上がった。2人は、AIPACが共和党の連邦議会支配のために働いていると非難し、オカシオ=コルテスはAIPACが「アメリカの民主政治体制の更なる不安定化(destabilizationに向けて働いている」とツイートした。

しかしリーは、火曜日に彼女のパーティーに集まった人々に、彼女の勝利はペンシルヴァニアが大口寄付者のお金よりも強いことを示すと語った。

リーは次のように述べた。「私たちは、ダークマネーや外部の人々がペンシルヴァニア西部にやってきて、私たちにふさわしい代表のタイプを教えるようなことはさせない。何故なら、私たちのコミュニティは自分たちにとってふさわしい代表を選び出すために長い期間待ち続けたからだ」。

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火曜日夜に歴史を作った10名の候補者たち(Ten candidates who made history Tuesday night

シェイヤンヌ・M・ダニエルズ筆

2022年11月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/3726601-ten-candidates-that-made-history-tuesday-night/

火曜日の中間選挙の結果で、全米で史上初という言葉が付く候補者の当選がいくつも報告された。

過去最多のアフリカ系アメリカ人候補たちが党派を超えて選挙に立候補し、LGBTQの代表が躍進し、ジェンダーの壁が打ち破られた。

これから、今年の選挙でガラスの天井を打ち破った10名の候補者たちを紹介していく。

(1)ウェス・ムーア(Wes Moore

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アメリカ陸軍の退役軍人でベストセラー本の執筆者であるウェス・ムーア(民主党)は、メリーランド州初のアフリカ系アメリカ人州知事に選ばれた。ムーアは州知事に選ばれたアフリカ系アメリカ人としては3人目となった。彼はトランプが支持した保守派のダン・コックスを破った。

ムーアは7月の民主党予備選挙で10名の他の候補者を倒して民主党候補者となった。選挙運動では、オプラ・ウィンフリーのような有名人たちからの支持を得た。また、民主党所属知事協会から多くの資金提供を受けた。

全米最大級の反貧困団体の元CEOであるムーアの勝利で、知事公邸を青く染め上げた。

ムーアは副知事に、アルナ・ミラーを起用する予定である。インド生まれのミラーは、アジア系アメリカ人として初めて、また移民として初めてメリーランド州の副知事に選出された。

(2)マウラ・ヒーリー(Maura Healey

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マサチューセッツ州司法長官マウラ・ヒーリー(民主党)は、火曜日の夜、2つの壁を打ち破った。マサチューセッツ州初の女性知事、そして全米初のレズビアンを公表した知事として選出された。

ヒーリーは、トランプ前大統領の推薦を受け、2020年の選挙が盗まれたという虚偽の主張を繰り返していたジェフ・ディール前州下院議会議員(共和党)を破った。

選挙戦を通じて、ヒーリーはディールに対して、リードを維持したが、ディールは、引退する現職の共和党所属のチャーリー・ベーカー知事の推薦を取り付けることができなかった。

エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)と「ヒューマン・ライツ・キャンペイン(HRC)」は火曜日のヒーリーの当選を称賛した。HRCはツイートで、新しい州知事は「LGBTQ+コミュニティ全体にとってのロールモデルとなる」だろうと述べた。

(3)サラ・ハッカビー・サンダース(Sarah Huckabee Sanders

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元ホワイトハウス報道官サラ・ハッカビー・サンダース(共和党)はアーカンソー州知事に当選し、アーカンソー州初の女性知事となった。

トランプ人気が続くアーカンソー州で、元補佐官が、民主党候補のクリス・ジョーンズ、リバータリアン党候補のリッキー・デール・ハリントンを破っての当選が有力視されていた。

サンダースは昨年選挙戦を開始した際、アーカンソー州での選挙資金調達記録を更新し、火曜日までの世論調査ではジョーンズに対して2桁のリードを保っていた。

サンダースは元アーカンソー州知事マイク・ハッカビー(共和党)の娘であり、トランプ政権の有名な出身者の中で最も政治的に高位の選挙の当選者となった。

(4)マックスウェル・フロスト(Maxwell Frost

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民主党所属のマックスウェル・フロストは火曜日夜にZ世代初の連邦議員となった。

弱冠25歳のフロストは、フロリダ州選出の連邦上院議員選挙に出馬したヴァル・デミングス連邦下院議員(民主党)の後の議席を勝ち取った。彼は進歩主義的な政策を掲げて立候補し、「スクアッド」の最新メンバーになることが予想されている。「スクアッド」は非白人の進歩主義的な連邦下院議員たちのグループである。

勝利を宣言したツイートの中で、フロストは火曜日に「歴史は作られた」と書いた。

「フロリダ州民、Z世代、より良い未来に自分たちはふさわしいと考える全ての人たち、皆にとって、歴史が作られた。アメリカ合衆国議会において私の地元であるフロリダ州を代表する機会をいただけたことに感謝以上の言葉はない」とフロストはツイートした。

(5)ベッカ・バリント(Becca Balint
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民主党所属のベッカ・バリントはヴァーモント州初の女性連邦下院議員、芸であることを公表した人物初の議員となった。ヴァーモント州は全米で最後の女性を連邦議会に送る州となった。

元教師のバリントは、民主党所属の現職連邦下院議員だったピーター・ウェルチが連邦上院議員選挙への出馬を決めたことで空席となった議席のために、共和党のリアム・マデン、リバータリアン党のエリカ・ルディック、その他3名の無所属候補を破った。

今年3月、バリントは本誌『ザ・ヒル』誌の「チェンジング・アメリカ」で、ゲイであることを公表した。そして、彼女の生活体験を反LGBT関連法で矮小化しようとする同僚と自分のアイデンティティーのバランスをどうとるかについて語った。

バリントは「チェンジング・アメリカ」の中で次のように語った。「私は、民主政治体制が当たり前にあるものだと漫然と考えてはいけないということを、家族の中で強く意識して育った。議会でも、教師時代でも、地域社会の一員としても、憎しみが定着しないように、またお互いを単純に見ないようにするために、顔を出して人々と厳しい話し合いをしなければならないと、いつも同僚を励ましきた」。

(6)アンナ・パウリナ・ルナ(Anna Paulina Luna

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共和党所属のアンナ・パウリナ・ルナは火曜日、フロリダ州連邦下院第13選挙区で議席を青から赤に染め直すことに成功した。

ルナはフロリダ州初のメキシコ系アメリカ人女性の連邦下院議員となり、連邦下院で共和党が議席を伸ばすことに貢献した。彼女はフロリダ州選出の12名のラティーノ系連邦議員に参加することになる。そのうちの10名はキューバ系、1名はプエルトリコ系、1名はエクアドル系である。

ルナはオバマ大統領の補佐官を務めたエリック・リンとの接戦を制した。ルナは、保守派のスターである、マット・ギーツ連邦下院議員(フロリダ州選出)とローレン・ボバート連邦下院議員(コロラド州選出)、「トーキング・ポインツ・USA」創設者チャーリー・カークから支持を受けた。

(7)ジェイムズ・ローズナー(James Roesener
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民主党所属のジェイムズ・ローズナーは、トランスジェンダーの男性として初めて州議会議員に選出された。ローズナーは、ニューハンプシャー州連邦下院第22選挙区第8地区を代表する。

ローズナーは、記録的な数のトランスジェンダーおよびノンバイナリーの候補者の一人であった。彼らの立候補は、全米で反LGBTQの法案が相次いで提出された時期に行われた。

「ヴィクトリー・ファンド」によると、トランスジェンダーであることを公表している州議会議員は全米で8名しかおらず、トランスジェンダーであることを公表している男性もわずか6名しか当選していない。

ヴィクトリー・ファンドの社長兼CEOであるアニス・パーカーは声明の中で次のように述べた。「トランスの人々、特にトランス男性は、あらゆるレヴェルの政府において、依然として深刻な存在感の欠如の状態にある。彼の勝利によって、より多くのトランスの人々が選挙に出馬するきっかけになると確信している。政府や社会のあらゆるレヴェルでトランスフォビア(嫌悪)が激化している今、ローズナーは歴史的な選挙戦を通じて信じられないほどの勇気を示した」。

(8)アンソニー・ブラウン(Anthony Brown

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メリーランド州で長年の政治家を務めてきたアンソニー・ブラウンが、州史上初のアフリカ系アメリカ人州司法長官に就任することが決定した。

メリーランド州連邦下院第5選挙区の代表(連邦下院議員)を務めたブラウンは、これまでメリーランド州副知事、州議会議員を務め、2014年に州知事選に出馬した。

ブラウンは極右の共和党候補者マイケル・ペロウトカとの選挙で勝利が有力視されていた。『ボルティモア・サン』紙によると、メリーランド州では1919年以以降、共和党所属の人物が州司法長官に選ばれたことはない。

ブラウンは、州司法長官事務局の公民権部門を拡大し、中絶の権利を守り、銃による暴力を減らすために努力すると述べた。

ブラウンは2日、2000人以上を前にした勝利宣言で、州司法長官に選ばれたことは「名誉であり責任を感じている」と述べた。

(9)サマー・リー(Summer Lee
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火曜日、民主党所属のサマー・リーはペンシルヴァニア州初の女性連邦議員となった。彼女はペンシルヴァニア州連邦下院第12選挙区を代表することになる。

アメリカ・イスラエル公共問題委員会の政治活動委員会(PAC)である「ザ・ユナイテッド・デモクラシー・プロジェクト」がリーの相手である共和党候補者マイク・ドイルに選挙戦最終盤で資金を投入したが、サマー・リーが勝利を収めた。この動きは連邦議会の他の進歩主義派の議員たちから大きな怒りを引き出した。

リーは、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)、アイアナ・プレスリー連邦下院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)といった進歩主義派の議員たちから支持を受けた。リーは宣誓就任すれば、「スクアッド」の最新のメンバーとなるだろう。

(10)デリア・ラミレス(Delia Ramirez

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デリア・ラミレスは、イリノイ州連邦下院第3区を代表することになる。中西部の州から選出された初のラティーナ(ラティーノの女性形)系議員として歴史に名を刻む。

移民の両親の娘であるラミレスはキャリアを通じて、公共サーヴィスの指導的なポジションに就いていた。

ラミレスの勝利は、2020年の区割りで、この地区の有権者攻勢で圧倒的にヒスパニック系が多くなったことを受けたものだ。彼女は共和党のジャスティン・ブラウを破った。

ラミレスは火曜日に支持者たちを前にして、「私たちは今夜歴史を作った。私たちはガラスの天井を打ち破った」と語った。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 喪中のために新年のご挨拶は遠慮させていただきます。

 2021年は大変お世話になりました。ありがとうございます。本年2022年もよろしくお願い申し上げます。

 昨年はおかげさまで、久しぶりに単著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)と翻訳『ビッグテック5社を解体せよ』(ジョシュ・ホウリー著、徳間書店)を出版することができました。本年も何とか本が出せるように精進してまいりたいと存じます。

 皆さまにおかれましては、益々のお引き立てを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。本年が皆さまにとって素晴らしい年となりますよう、衷心より祈念申し上げます。

 

「あらたまの 年立ち返る 朝より 若やぎ水を くみ初めにけり」


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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今回の大統領選挙と同時に連邦上院議員の一部と連邦下院議員の選挙も実施された。連邦下院は2年ごとに全議員に対して選挙が実施される。選挙戦をやりながらの議員活動ということになって大変に消耗する。また、政治家になりたい人にとっては、2年ごとにチャンスが訪れるということで、挑戦しやすい。

 2020年の連邦下院議員選挙では、民主党が共和党から3議席を奪うも、10議席奪われ、共和党は11議席を奪い、3議席を失うということで、差し引きで民主党が222議席、共和党が207議席を確定させ、残り8議席がまだ確定しないという結果になっている。2019年1月から2021年1月までの任期では、民主党が232議席、共和党が197議席、リバータリアン党が1議席、欠員5議席となっていた。民主党は引き続き過半数を確保したが、多くの議席を失ったということになる。連邦上院は、共和党が50議席、民主党が48議席を確定させている。ジョージア州の2議席がどうなるかだが、民主、共和両党で分け合う形となる可能性が高く、そうなれば、共和党が過半数を握ることになる。

 民主党はホワイトハウスを奪還した(仮)と喜んでいるが、その前途は暗いものである。連邦上院は制度上共和党が有利である以上、連邦下院は何としても過半数を確保しなければならない。しかし、2022年の中間選挙で挽回できる可能性は低い。まず、中間選挙では大統領を出している与党の連邦議会での議席は減るのが通常だからだ。これにプラスして、民主党は自分たちの支持基盤とすべき、白人労働者階級とラティーノ系の有権者からの支持を集められていない。そうなれば、次の選挙は厳しいということになる。

 ジョー・バイデンが大統領になっても、彼が直面する課題はトランプ大統領と同じだ。新型コロナウイルス感染拡大を抑えながら、経済も回復させねばならない。ジョー・バイデンが大統領になれば、「自分は新型コロナウイルス感染対策を託されて当選した」ということを理由にして、罰則付きのマスク着用義務化を推進する可能性がある。このようなことが起きれば、「トランプを暴君だのなんだのと言っていたが、バイデンこそが自分たちの生活に介入してくる暴君ではないか」ということで、それこそ、民主党が手放してしまった有権者グループである、白人労働者階級とラティーノ系の激しい反発を招くだろう。

 また、経済対策については、大統領選挙前からバイデンには全く期待が集まっていない。だからと言って何もしない、何もできないということは許されない。しかし、次の中間選挙までに人々に期待に応えることができるかと言えば心もとないということになる。

 「トランプを倒した、やったやった」というバカ騒ぎの後には苦難が待っている。

(貼り付けはじめ)

メモ:民主党は2020年以降の警戒警報に直面している(The Memo: Democrats see warning signs beyond 2020

ナイオール・スタンジ筆

2020年11月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/the-memo/526608-the-memo-democrats-see-warning-signs-beyond-2020

民主党内の最も頭脳明晰な人々の中には警戒警報を受け取っている。民主党は大統領選挙当選者のジョー・バイデンのトランプ大統領に対する勝利を祝っているがそうした中で、警戒警報が出ていることに気付いている。

バイデンは今年の大統領選挙において総獲得票数で約600万票差をつけている。一方、リベラル派の政治専門家たちの中には、民主党にとって予想外の困難をもたらす人口動態学的な動向に当惑している人々がいる。

2つの事実が特に繰り返し述べられている。その2つとは、ラティーノ系有権者たちからの支持が予想よりも弱かったこと、大学教育を受けていない白人有権者たちの間での共和党支持の強さが継続していること、である。

選挙人獲得におけるバイデンの勝利、バイデン306名対トランプ232名は、おおむね満足できる結果であったが、ウィスコンシン州、ジョージア州、アリゾナ州といった激戦諸州で、大変な僅差であった。これらの州では全て1%以下の得票率の差であった。

有権者の間での教育という側面での分断は、民主党にとってマイナスになっている。2012年の大統領選挙でオバマ選対において内部の選挙予測モデルを担当したデータ・エクスパートのデイヴィッド・ショアがこのことを主張している。

ショアは本誌の取材に対して次のように答えた。「大学の学位を持っていない人々の間での支持が全く上がっていない事実は民主党にとって大変に悪い兆候です。それは道徳的な理由からではありません。その理由は、大学の学位を持っていない人々は都市以外の場所に居住し、地方は全ての選挙において人口に比べて多くの代表を出していることなのです」。“

ショアは続けて次のように述べた。「真実は、小選挙区制度であろうと、選挙人制度であろうと、連邦上院議員選挙制度であろうと、地方の各州に対してより議員や選挙人が配分されているということです。従って、民主党の現在の選挙対策のための連合は立法府における力をうまく生み出せないのです」。

大学教育を受けた白人有権者がトランプに対して反対する動きを行い、それが今年バイデンが勝利した主要な理由となった。2016年の時にはヒラリー・クリントンはここで敗れたのだ。

今回の大統領選挙の出口調査の結果、バイデンは白人の大学卒業生の有権者の間で、トランプに3ポイントの差をつけて勝利した。2016年の選挙の時には、ヒラリーは3ポイントの差をつけられて敗北した。

しかし、バイデンは民主党に対する白人の労働者階級の有権者たちからの支持の減少を目立たせた。今年の大統領選挙では、大学の学位を持たない白人有権者の間では、トランプ大統領に35ポイントの差をつけられて敗北した。この差は2016年の選挙でのヒラリーがつけられた差37ポイントよりも少し改善した。

デイヴ・“マッドキャット”・サンダースはヴァージニア州南西部を拠点にして活動している民主党系ストラティジストだ。サンダースは長年にわたり、民主党は地方に住む白人有権者たちから文化的に大きく乖離していると主張してきた。

サンダースは次のように述べている。「いつもいつも、“おいおい、田舎の奴らはまたまた自分たちの経済的利益に反する投票をしているぜ”ってことばかり聞く。しかし、どうしてそういう行動を取るのかについて誰も語ろうとはしないんだ。田舎の人たちにそのような行動を取らせる強力な利益が存在する。それが文化なんだよ」。

サンダースは、古い「ブルー・ドッグ」民主党員を例に挙げる。この人々は、「銃所有に賛成で、厚くキリスト教を信仰している」人々だとサンダースは定義している。このブルー・ドッグ民主党員がアイオワ州に多くいたならば、選挙に弱い、共和党所属の連邦上院議員ジョニ・アーンストを落選させることができただろうとサンダースは語っている。アーンストは選挙戦序盤の各種世論調査の結果、挑戦者のテレーザ・グリーンフィールドを追いかける展開であった。しかし、その後に差をつけ、最終的に7ポイントの差をつけて勝利した。

ラティーノ系の支持が集まらなかったことは、民主党の多くの政治家にとって困難をもたらすことになった。

2016年、トランプはラティーノ系有権者の内28%からの投票を獲得した。これに衝撃を受けた専門家たちが存在した。この数字は2012年の共和党の候補者ミット・ロムニーの数字よりも若干高いものであった。トランプの移民に対する厳しい言葉遣いにもかかわらず、数字が良かったのだ。今年の選挙ではトランプはこの数字をさらに上げ、32%の投票を獲得した。

メディアの関心はフロリダ州に集まった。フロリダ州の中で最もキューバ系アメリカ人の多いマイアミ・デード郡におけるバイデンの得票数は、4年前のヒラリー・クリントンの3分の1であった。

一方、トランプ大統領はテキサス州内のメキシコ国境に沿って存在するラティーノ系が人口の大多数を占める各郡で勝利を収めた。民主党はテキサス州内で連邦下院議員の議席数を増やすことができず、テキサス州下院議員選挙での結果は失望に終わった。

デビー・ムカーセル=パウエルはフロリダ州南部地域で、再選に失敗した民主党所属の女性連邦下院議員2人のうちの1人だ。民主党がラティーノ系からの支持を集められなかったことについて、民主党は「社会主義的だ」というレッテル貼りをされたからに過ぎないという責任転嫁について激しく批判した。

ムカーセル=パウエルは水曜日にツイッターに次のように投稿した。「私たちが敗北したことに関しては多くの要素があった。ラティーノ系を標的にした偽情報の拡散、経済再開に関連して失望し、経済状況を心配する有権者たち、“この人種の人なら民主党に入れるだろう”という人種アイデンティティについての考えを持つ全国規模の民主党といったものだ。ただ単に社会主義に対しての反感だけが理由ではない」。

リベラル派のシンクタンクであるセンター・フォ・アメリカン・プログレスの上級研究員レイ・テイシェイラも同様の分析を行っている。テイシェイラは特に、新型コロナウイルス対策に関連する新たな制限とそれによる経済における結果似た対するラティーノ系共同体内に存在する恐怖感を強調している。

テイシェイラは「ヒスパニック系の労働者階級の人々は経済について大変に敏感であるようです。そのことは民主党にとっては役立ちませんでした。こうした人々は自分たちの雇用、家族、収入、働けるかどうかについて大きな懸念を持ちっているのです」と語っている。

更に広く見て、テイシェイラは続けて、「民主党がヒスパニック系有権者に向けて良いだろうと考えて主張している公約は自分たちが思っているほどには良いものではないのですよ」と述べた。

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の大統領選挙選対の上級顧問を務めたチャック・ロッカは、「社会主義」という批判は誇張されたものだったと述べている。彼はフロリダ州のマイアミ・デード郡について「社会主義という言葉はアメリカのある一つの州のある一つの郡で重要でそれ以上ではないと思いますよ」と語った。

ロッカは次のように主張している。民主党は幹部クラスの中に、もしくは民主党と関係のあるスーパーPACの運営の中に、ラティーノ系とアフリカ系の人物が人口比に比べてかなり少ない状況であり、そのことのつけを支払っている状況だ。

ロッカは「戦略的な決定を行う際には、その場所にはラティーノ系もアフリカ系の人は誰もいないのです」と述べている。

トランプの退場が迫っている中で民主党は大いに安堵している。しかし、民主党は、選挙においてより効果的な有権者連合をどのように形成するかについてこれから数カ月間、激しい議論をしなければならない。

進歩主義派の人々の中には、民主党は草の根の支持者たちをより活性化する必要があると主張し、その考えを「基盤を固めて掴もう」というスローガンに集約している。

しかし、他の人々はショアと同様に、この考えにそこまで説得されている訳ではない。

ショアは次のように述べている。「民主党は議論を巻き起こす、挑発的な物事に力を注ぐ傾向があります。民主党は文化的に保守的な人々に投票して欲しいと望むならば、より穏健で、あまり議論を巻き起こさないようにする必要があります」。

ショアは「ほとんどの選挙で勝利しているのはどんな人かを見てみれば、最もうまくやっている人は、ほとんどの場合、穏やかな人物で、そういう人物が選挙に勝利しているのです」と述べている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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