ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 安倍晋三首相が今年の8月15日、日本のポツダム宣言受諾を昭和天皇がラジオを通じて国民に知らせ(玉音放送)、日本が太平洋戦争に敗れたことを宣言した日に発表する、節目となる70周年談話について、以下のような報道が出ました。戦後70周年談話に関する有識者会議である「21世紀構想懇談会」で、談話内容に関する報告書が出されました。その報告書では、談話の中身には、これまで節目節目の談話の中に盛り込まれてきた「謝罪」を盛り込まず、「積極的平和主義」による未来志向の内容にすべきということになったそうです。

 

 この報告書で言いたことを私なりにまとめると、「まず謝罪という言葉は使いたくないし(まだ生まれていなかった、もしくは子供だった私たちに何の関係がある?)、侵略という言葉だってできたら使いたくない(侵略という言葉を入れた方が良いとしたのは一応アメリカに対する配慮であってアジア諸国に向けてじゃない、ということを岡本行夫辺りが言っていそう)。ODAで対中国に役に立ちそうな東南アジアとかアフリカの発展途上国などにカネや原発をばらまいてやって(それなら西室さんの出身企業である東芝も儲かるでしょ)、それで未来志向ということで良いじゃねぇか」ということになります。

 

 ここまで身勝手な談話を発表することが「積極的平和主義」にかない、日本の国益にかなうことなのでしょうか。そもそも、この談話が記念する70周年とは、日本がポツダム宣言を受け入れて、戦争での敗北を認めたことの70周年です。それを「私たちは間違っていなかったのだから、侵略などしていなかったのだから謝らない」「今はカネを配ってやっているんだから文句を言うんじゃねぇ」となったら、それは居直りであり、世界の不信を招くことになります。ただでさえ、安保法制で「more active role in military(軍事面においてより積極的な役割を果たす=海外派兵までやる)」ということになっている訳です。

 

 私は、「21世紀構想懇談会」にはどんな人たちがいるのかが不思議だったので、その構成を見てみました。構成員は以下の人々です。なるほど、こうした人々ならばこんな身勝手極まりない報告書を出すよなと改めて実感しました。

 

(貼り付けはじめ)

 

20 世紀を振り返り 21 世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための

有識者懇談会(21 世紀構想懇談会)

・西室 泰三 日本郵政株式会社取締役兼代表執行役社長 【座長】・日本国際問題研究所会   

      長

・北岡 伸一 国際大学学長 【座長代理】

・飯塚 恵子 読売新聞編集局国際部長

・岡本 行夫 岡本アソシエイツ代表

・川島 真 東京大学大学院教授

・小島 順彦 三菱商事株式会社取締役会長

・古城 佳子 東京大学大学院教授

・白石 隆 政策研究大学院大学学長

・瀬谷ルミ子 認定NPO法人日本紛争予防センター理事長・JCCP M株式会社取締役

・中西 輝政 京都大学名誉教授

・西原 正 平和・安全保障研究所理事長

・羽田 正 東京大学教授

・堀 義人 グロービス経営大学院学長・グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー

・宮家 邦彦 立命館大学客員教授

・山内 昌之 東京大学名誉教授、明治大学特任教授

・山田 孝男 毎日新聞政治部特別編集委員

 

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/21c_koso/pdf/meibo.pdf

 

(貼り付け終わり)

 

 マイケル・グリーンやリチャード・アーミテージの息のかかった元外交官たち(岡崎久彦系でもある)やジャパン・ハンドラーズのトップに位置するリチャード・サミュエルズの日本における代理人である白石隆、アメリカがバックにいながら、日本国内では馬鹿右翼言論に終始している、堀義人といった人々が入っています。ジャパン・ハンドラーズは、アメリカ軍とアメリカ経済が縮小を余儀なくされている現状で、日本のお金と人員にその肩代わりをさせたいと考えており、その代理人たちがこの懇談会に入っています。彼らは「お勇ましい日本」を鼓舞させようとするでしょう。しかし、ジャパン・ハンドラーズにとって難しいのは、余りに日本の場形を舞い上がらせると、「日本は悪くなかった(アメリカに騙されて開戦させられた)」と言い出します。ですから、今回の報告書のように「謝罪という言葉はいらないけど、侵略という言葉は入れろ(そうしないと、アメリカが日本をやっつけた大義名分が立たない)」ということになります。

 

 戦後70年、2015年の夏はとても「危険な」夏になりそうです。

 

 

(新聞記事貼り付けはじめ)

 

●「21世紀懇 70年談話、謝罪盛らず 報告書「侵略」調整残す」

 

産経新聞 722()755分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150722-00000077-san-pol

 

 安倍晋三首相が8月に発表する戦後70年談話に関する有識者会議「21世紀構想懇談会」(21世紀懇、座長・西室泰三日本郵政社長)は21日、報告書のとりまとめに向けた最終会合を官邸で開いた。報告書では、70年談話には旧来の「謝罪」を盛り込まず、未来志向の文言に重点を置くべきだと提言するとみられる。ただ、先の大戦について「侵略」という文言を明記すべきだとの意見もあり、調整を急ぐ。西室氏らは8月初旬にも首相に報告書を提出する。

 

 会合では、西室氏と座長代理の北岡伸一国際大学長が取りまとめた素案が提示された。「20世紀の経験からくむべき教訓」「戦後の欧米や中国・韓国との和解の道」「21世紀の日本の国際貢献のあり方」といったこれまで6回にわたる議論を踏まえ、最後に国際貢献の推進や歴史教育の充実などの提言が盛り込まれた。

 

 会合では、提言に盛り込むべき内容や表現、「侵略」をめぐって委員から注文があったが、最終的には報告書作成を西室、北岡両氏に一任した。会合には首相と菅義偉(すが・よしひで)官房長官も出席した。

 

 西室氏は会合後、記者団に「首相が掲げる『積極的平和主義』の方向付けについて、われわれとしてまとまった考えを出せる段階に近づいたことに、首相のねぎらいの言葉があった」と述べた。

 

 これまでの21世紀懇の会合では、技術協力や政府開発援助(ODA)といった国際貢献に今後も取り組む決意を談話に盛り込むべきだとの意見が目立った。中韓との和解については、中韓の歩み寄りも不可欠だとの認識を共有し、談話では「謝罪」ではなく、未来志向の文言に重きを置くべきだとの意見が大勢を占めている。

 

 首相は報告書の内容を踏まえつつ、来月15日の「終戦の日」の前に70年談話を発表するとみられる。

 

 首相が21世紀懇を立ち上げたのは、自身が目指す未来志向の談話発表に向けて環境を整える狙いがあり、報告書を踏まえた未来志向の談話となる公算が大きい。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

(終わり)







メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31