古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ASEAN

 古村治彦です。

 2020年の新型コロナウイルス感染拡大で経済はスローダウンし、その後、経済が少しずつ回復する中で、2022年のウクライナ戦争が勃発し、エネルギー価格や食料価格の高騰により、経済が減速する可能性も出てきている。

 そうした中で、アジア地域の経済成長は続いているようだ。特に東南アジアは世界の成長エンジンと言われている。東南アジア諸国は体制の違いを脇に置いて東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asia NationsASEAN)を結成し、地域の安定を促進し、経済成長に邁進している。東南アジア諸国の経済成長率(予測も含む)は以下のグラフにある通りだ。

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ASEANの地図

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世界各地域の経済成長率(予測を含む)

 東南アジア諸国の中で経済的な大国はインドネシアである。インドネシアは世界で17番目の経済力を持つまでになっている。まだまだ世界的にはひよっこであるが、そのうちに順位をどんどんと上げていくだろう。資源やエネルギー価格の高騰もあり、税収も伸びているようだ。

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GDPのランキング

 ウクライナ戦争を受け、世界は西側諸国(the West)対それ以外の国々(the Rest)の対立構造になっている。西側諸国は先進国ばかりであるが、先進国は少子高齢化と国内の分断状況に苦しんでいる。そうした中で明るい未来への展望は開けない。それ以外の国々は新興諸国であり、これから伸びていくぞという希望が溢れている。

 このような世界構造を理解し、日本は衰退する西側にいるのだということを理解し、それを前提にして世界を見ていくことが肝心だ。このような魅力のない国を誰が攻めようと思うだろうか。占領してみたところで何の意味があるだろうか。日本などよそから見れば勝手に自滅していく国である。そのまま放っておいてもっと弱ってから何かすれば済む話だ。防衛力強化などは恐怖心を煽られて、お金をアメリカに貢ぐための口実に過ぎない。

(貼り付けはじめ)

アジア新興諸国の成長率が30年ぶりに中国を上回る(Emerging Asia growing faster than China for 1st time in 30 years

-アジア開発銀行は、インドネシアとフィリピンが明るい場所にいるが、インドとパキスタンは失速していると述べた

クリフ・ヴェゾン(日経スタッフライター)筆

2022年9月21日

『日経アジア』誌

https://asia.nikkei.com/Economy/Emerging-Asia-growing-faster-than-China-for-1st-time-in-30-years?utm_campaign=GL_asia_daily&utm_medium=email&utm_source=NA_newsletter&utm_content=article_link&del_type=1&pub_date=20220921123000&seq_num=2&si=d3f405dd-1c11-4b5c-a514-610716136630#

マニラ発。中国の新型コロナウイルス感染対策のロックダウンにより中国の経済成長は、30年以上ぶりに他のアジア新興諸国よりも鈍化した、とアジア開発銀行が新しい報告書の中で述べた。

水曜日に発表されたアジア開発銀行の最新レポートでは、中国の2022年の成長率予測が4月段階での5.0%から3.3%に引き下げられた。また、来年の予測も4.8%から4.5%に引き下げた。

ゼロ・新型コロナウイルス感染戦略のもと、他の国々が経済再開のために規制を緩めたにもかかわらず、地域最大の経済大国である中国は感染症対策としてロックダウンを実施した。

アジア開発銀行は、これらのロックダウンは、アジア地域が直面している他の経済的課題に拍車をかけていると述べている。その主な原因は、ロシアのウクライナ侵攻が長引き、世界の食料および燃料価格を押し上げ、先進国の金利引き上げを招いたことにある。

アジアの新興諸国全体の2022年の成長率は4.3%と、4月の予測値(5.2%)を下回る見込みだ。中国を除いたアジア地域の成長率は5.3%と予測されるとアジア開発銀行は発表している。

2023年については、アジア新興国地域の成長率は5.3%ではなく、4.9%と予測されている。

アジア開発銀行のチーフエコノミストであるアルバート・パーク氏は声明の中で、「アジアの新興諸国は回復を続けているが、リスクは大きく立ちはだかっている」と述べている。

パークは次のように述べている。「世界経済が大幅に悪化すれば、アジア地域の輸出需要は大きく損なわれる。先進諸国での予想以上の金融引き締めは、金融不安につながる可能性がある。また、中国の成長は、度重なるロックダウンと弱い不動産部門による課題に直面している」。

アジア開発銀行は、今年の域内インフレ率が、前回予想の3.7%から4.5%に加速すると予想している。来年の物価上昇率は4.0%で安定すると予想されるが、それでも前回予想の3.1%より高くなる。

アジア開発銀行によると、インフレ率の上昇は南アジアの回復を阻害し、今年の成長率は7.0%から6.5%になると予測されている。南アジア最大の経済大国であるインドの成長率予測は7.5%から7.0%に引き下げられ、来年は7.2%と予測されている。

危機的状況にあるスリランカ経済は、今年8.8%縮小し、2023年には3.3%に縮小が緩和されると予測されている。パキスタンは、6月に終了した2022年の会計年度に6.0%成長したが、国際通貨基金が支援する同国の財政赤字を修正するための努力が経済活動を抑制するため、2023年には3.5%と遅いペースで拡大すると予測されている、とアジア開発銀行は述べている。

それでも、アジア地域の他の地域には明るい兆しがある。

東南アジアの今年の成長率予測は4.9%から5.1%に引き上げられ、2023年には5.0%の拡大が予測されている。

これは、東南アジア最大の経済大国であるインドネシアの内需が拡大し、5.0%から5.4%に成長すると予測されたことによる。フィリピンは6.0%から6.5%に拡大する見込みだ。

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インドネシアは2023年に経済成長率5.3%を目しており、財政赤字削減も視野に入っている(Indonesia eyes 5.3% growth, cuts to fiscal deficit in 2023

-来年度の予算計画では選挙と首都移転が優先事項になっている。

エルウィダ・マウリア(日経スタッフライター)筆

2022年8月16日

『日経アジア』誌

https://asia.nikkei.com/Economy/Indonesia-eyes-5.3-growth-cuts-to-fiscal-deficit-in-2023

ジャカルタ発。インドネシアは、火曜日に発表された2023年度予算案で、地政学的に厳しい状況にもかかわらず、政府は来年の国内総生産(GDP)成長率を5.3%と予測し、財政赤字を新型コロナウイルス大流行前の水準に戻すことを目指しており、経済の見通しには明るい兆しがある。

ジョコ・ウィドド大統領は、国会での国民演説で予算案を発表し、総支出は3041兆7000億ルピア(約2059億ドル)となっている。これは2022年の数字より2%低い。政府は、主に燃料補助金の急増により、今年は合計502兆ルピアになると発表した補助金支出の膨張を反映し、5月に引き上げられた数字である。

政府は来年の税収を大幅に増やし、今年より13%多い2016兆9000億ルピアを目標にしている。インドネシアは、ロシアのウクライナ侵攻により、パーム油や石炭など主要輸出品目の価格が高騰している。インドネシア財務省は先週、7月の時点で税収が1213兆ルピアに達し、2022年全体の目標のほぼ7割を達成したと発表した。これは、新型コロナウイルスの大流行以前から、同省が何年も収入目標を逃してきたことに続くものだ。

商品価格の高騰による歳入の押し上げは来年まで続かないと予想されるが、ウィドド大統領は、政府は引き続き、県レヴェルの課税ベースを広げ、法令遵守を向上させるための税制改革を推進すると述べた。

ウィドド大統領は「2023年の財政赤字は、GDPの2.85%、すなわち598兆2000億ルピアと計画されている」と述べた。

新型コロナウイルス感染拡大と経済の減速に対処するため、2020年にインドネシア議会は、国内総生産の3%と定められているインドネシアの財政赤字の法的上限を3年間停止することを承認した。上限の停止は来年までとなる。

今年の財政赤字はGDPの4.5%と予測されていたが、輸出と税収の高さにより、7月時点でインドネシアはGDPの0.57%に相当する黒字となった。

ウィドドは、2024年の大統領選挙、連邦議会議員選挙、地方選挙の準備に加え、ジャカルタからボルネオ島のヌサンタラへの首都移転計画を含む人的資本とインフラ整備が来年の政権の優先事項であることに変わりはないと述べた。

ウィドド大統領は次のように語った。「世界経済が不安定な中、インドネシア経済のファンダメンタルズは依然として強固である。一方で、私たちは警戒を怠らず、慎重に行動しなければならない。一方で、先進的なインドネシアを実現するために、国家の大きな課題への対応を継続しなければならない」。

来年の支出計画には、教育に608兆ルピア、社会的セーフティネットに479兆ルピア、インフラに392兆ルピア、保健医療に169兆8000億ルピアが含まれている。

来年の経済成長目標は、今年の政府目標である5.2%より若干高くなっている。東南アジア最大の経済大国であるインドネシアは、個人消費の改善と輸出の増加により、4月から6月にかけて5.44%成長し、アナリストの予測を上回り、今年1~3月の5.01%成長よりも高い伸びを示した。

来年のインフレイションは3.3%と予測されており、これは今年のインドネシア政府の3%目標よりも少し高いものだ。インドネシアの最近7年間における最高のインフレイションは今年7月の4.94%であった。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。
 ウクライナ戦争によって、ヨーロッパ地域を覆っていた偽善と「西側諸国(the West)対それ以外の世界(the Rest)」という分断が明らかになった。「○○(国名が入る)はウクライナだ」という粗雑な主張が展開され、「防衛のために防衛費の増額と装備の増強が必要だ」「先制攻撃を行えるようにすべきだ」という主張が雨後の筍のように出てきている。他人の不幸に便乗し、他人のふんどしで相撲を取る、なんとも恥ずべき主張だ。
 ウクライナ戦争を契機にして、核兵器保有を主張する政治家たちが北東アジア諸国、具体的には日本と韓国で出てきている。核兵器を保有していることでそれが抑止力となるという考えがその根底にあるが、果たしてそうだろうか。他国が攻撃してきて、進攻してきて、たとえば日本が核兵器を使用することができるだろうか。通常兵器で攻撃してきた相手に核兵器で応酬するというのは「過剰防衛」の謗りを免れない。核兵器は特に先進諸国にとって使えない最終兵器である。また、安全保障のジレンマという考え方がある。ある国(A国)が自国の防衛能力を増強すれば、隣国(B国)はそのことを脅威に感じ、こちらも更に防衛能力を引き上げる。そうなればA国はせっかく防衛能力を高めたのに、安心感が得られずに、更に防衛能力を高めるために無理をする。このような無理が続き、両国ともに破綻するということになる。
 アジア地域、特に東南アジアには東南アジア諸国連合(ASEAN)という素晴らしい枠組みがある。国家制度や経済制度が違う国々が集い、何か問題があれば拙速に断定などをせずに話し合う。このような制度こそが平和と安全を守るために重要だ。北東アジア地域の中国、韓国、北朝鮮、台湾、中国にもこのような枠組みを構築すべきだ。EUNATOのような偽善で過度な理想主義で粉飾された、本質的には戦争を誘発するような枠組みは必要ない。
 今回のウクライナ戦争を教訓は際限なき軍拡競争に走ることではない。外交と地域の枠組みによって平和と安定を守るということであるべきだ。
(貼り付けはじめ)
ウクライナはアジアに戦争を考えさせる(Ukraine Has Asia Thinking About War
-大規模な紛争の再来はアジア諸国の軍備増強につながる。

ウィリアム・チューン筆

2022年4月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/04/29/ukraine-russia-war-asia-china-military-defense-spending-geopolitics/?tpcc=recirc_latest062921

ロシアによるウクライナ侵攻に伴って、都市の破壊と市民に対する残虐行為が発生した。これによって世界の多くの国々にハードパワーの優位性を再認識させることになった。春。ブランズは『ブルームバーグ』誌に寄稿した論稿の中で、ロシアのウラジミール・プーティン大統領はポスト冷戦時代の考え方、すなわち大規模で暴力的な紛争は過去のものになったという考え方を崩壊させた。

ウクライナ戦争は、アメリカの学者アーロン・フリードバーグがかつて「大国間紛争のコックピット」と呼んだ、「インド太平洋地域が最も不安定な武力紛争のリスクにさらされている」という広範な認識も覆した。ロシアがこれまで土地の強奪や紛争の扇動を何度か行ってきたが、これまでパワーバランス(力の均衡)に大きな影響を与えることはなかったが、制度がしっかりしているヨーロッパは概して安全な場所と見なされてきた。ヨーロッパに比べ、インド太平洋は、EUNATOのような平和や安全を増進する制度がなく、アメリカ、中国、インド、日本、ロシア、朝鮮半島にある韓国と北朝鮮と世界トップ7の軍隊が集結し、南シナ海、台湾、朝鮮半島、尖閣諸島などいくつかの不安定なホットスポットがあって、更に危険な場所であると考えられてきた。

ロシア・ウクライナ戦争の前から、冷戦終結後に衰退した軍事的な国家統治手段がアジアで復活しつつあることは、専門家の間で指摘されていた。これまでアジアでは、地域経済や地域制度の進化に注目が集まる一方で、ヨーロッパと同様に軍事力が地域の力学に果たす役割の重要性が過小評価される傾向があった。

現在、変化が起きつつある。ロシア・ウクライナ戦争は多くのアジア諸国が自国の防衛力の必要性を見直すきっかけとなっている。日本や韓国などのアメリカの正式な同盟諸国は、ロシアがウクライナに侵攻し、米英露が1994年のブダペスト覚書で約束した安全保障に関する合意を踏みにじっているにもかかわらず、アメリカがロシアと敵対することを拒否していることを正確に評価している。ソウルや東京から見ると、アメリカのエスカレートへの懸念は、NATO加盟諸国や日本、韓国といった条約上の同盟諸国を守る義務に優先するように見える。西側諸国の首都がエスカレートを恐れているのなら、なぜ同盟諸国を守ることに消極的にならざるを得ないのだろうか?

ロシア・ウクライナ戦争の前から、日本は中国の急速な軍拡と北朝鮮の核開発への懸念から、既に10年連続で防衛費を引き上げてきた。今、安倍晋三元首相は、ドイツの核シェアリング協定と同様に、日本国内でアメリカの核兵器を受け入れることを検討するよう提案し、古い議論を復活させた。安倍元首相は、ウクライナは1994年に核兵器を放棄したため、より強力で修正主義的な隣国ロシアに対して脆弱になってしまったと主張している。

韓国の防衛態勢の見直しは、韓国内の核兵器保有に対する意欲の高まりを反映している。

安倍首相の提案は、後任の岸田文雄首相によって即座に否定された。しかし、与党の自民党(LDP)内では一定の支持を得ている。自民党の意思決定機関(decision-making body)である総務会(General Council)の福田達夫総務会長は、この議論を「避けるべきでない」と述べた。自民党の高市早苗政務調査会長は、核兵器を持ち込まないというこれまでの鉄則についての議論について「抑制すべきではない」と述べた。自民党以外では、一部の保守系野党も核武装の選択肢を公に出すことを望んでいる。

韓国においても、政策立案者たちはアメリカの「核の盾」に依存し続けられるかどうかを懸念している。ユン・スギョル次期大統領は、韓国とアメリカの同盟関係の強化を公約に掲げ、先制攻撃のための能力開発を目指している。ソ・ウク国防相は、韓国は北朝鮮のミサイル発射台に対する攻撃を「正確かつ迅速に」実施することができると述べた。ユン次期大統領は、1991年に撤去されたアメリカの核兵器を韓国に戻すようアメリカに求める考えだと報じられている。その他の選択肢としては、核爆撃機や潜水艦の韓国への配備を求めることも考えられる。ユン次期大統領はまた、韓国に対弾道ミサイル防衛システムを追加配備すること(過去に中国の怒りを買った措置)や、ドナルド・トランプ前米大統領時代に中断していた年2回の米韓軍事演習(野外訓練を含む)の本格的な再開を要求している。

韓国の防衛態勢の見直しは、韓国において核兵器保有に対する意欲が高まっていることを反映している。今年2月の世論調査では、韓国人の71%が韓国独自の核開発を望み、56%がアメリカ軍による核兵器の再配備を支持している。大統領府政策企画委員会のチョ・ギョンファン委員は、ロシア・ウクライナ戦争は、「本当に危機に瀕している時には、頼るべきは自分の力しかない、自分で自分自身を守るしかないのだ」ということを思い知らされたと述べた。

台湾では、ロシアの侵攻に対するウクライナの執拗な抵抗によって、中国による水陸両用の侵攻のシナリオに新たな光を当てる結果になった。ウクライナの非対称戦法、例えば小型で携帯性に優れた対戦車ミサイル「ジャベリン」や対空ミサイル「スティンガー」は、台湾のアナリストが台湾軍の海・空における同様の戦術を強調するきっかけとなった。あるアナリストによると、トランプ政権発足後、台湾がアメリカから購入した18種類の武器のうち116種類は、高性能戦闘機や軍艦といった大規模なものではなく、こうした非対称能力の強化に重点を置いている武器だということだ。

その他の複数の措置も存在する。台湾のジョセフ・ウー外相は、アメリカの武器取引は更に発表されると述べた。国内では、台湾はミサイルの年間生産量を2倍以上にするつもりである。また、4ヶ月の徴兵期間を1年に延長する計画も存在する。

北東アジア地域に比べ、東南アジア諸国はウクライナ紛争を契機に軍事力を強化する動きは少ない。しかし、それでも、紛争時には外部からの支援よりも自助努力に頼るべきという考え方は、今回の戦争で後押しされているように見える。

シンガポールも戦略環境の変化を痛いほど実感している。リー・シェンロン首相は、ウクライナを自国のモデルと見ている。自国を守ろうとする意志は、「ウクライナ人が持ち続けているもので、この世界で自分たちの安全を守るために、シンガポール人が持たなければならないものだ」と記者たちを前にして語った。この発言は特定の国に向けられたものではないが、シンガポール軍は、島国への攻撃や、シンガポールが依存するシーレーンへの干渉を抑止することを目的としていると広く考えられている。アジアで最も高い一人当たりの国防費により、シンガポールの軍隊は既に東南アジアで最も優れた装備を保有している。

今年3月初め、シンガポールのン・エンヘン国防相は、シンガポール軍(SAF)が情報、サイバー能力、心理的防衛を組み合わせた新しいデジタル・インテリジェンス・サービスを立ち上げ、シンガポール軍をネットワーク化した部隊として再編成すると発表した。この決定はウクライナ情勢が原因ではないが、ロシアがウクライナで展開したようなハイブリッド戦争に対処するためにシンガポール軍を再構築すると述べた。

退任予定のフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領はプーティンを「個人的な友人」と呼んでいるが、ドゥテルテは3月、反米主義だった過去と決別し、ロシア・ウクライナ戦争がアジアに波及した場合にフィリピン軍の事施設の利用をアメリカに提案した。4月21日には、ドゥテルテはフィリピンの国軍と警察に対し、あらゆる事態に「備える」よう呼びかけた。

ヴェトナムは、モスクワとの良好な関係を持っていることから、ロシアを直接非難することを拒否している。しかし、ワシントンの出方次第では、ハノイがアメリカの言いなりになる可能性は十分にある。現在、ヴェトナムはロシア製戦闘機の購入を意図しており、アメリカによる制裁の対象になる可能性がある。フィリピンやインドネシアがロシアの武器購入計画を撤回したのと同じアメリカ制裁法に基づいているのだ。しかし、アメリカはヴェトナムが中国、特に南シナ海で対抗するために軍備を強化することに本質的な関心を持っており、ヴェトナムは安価なロシア製ジェット機を購入する意図を持っている。したがって、アメリカ・ヴェトナム合同軍事演習の再開に関連して制裁が免除される可能性もある。

アジア各国の政府は、アジア地域で戦争がすぐに起こるとは考えていない。しかし、中国は、例えば、南シナ海でグレーゾーンやハイブリッド戦法を用いることで、ロシアのやり方を模倣する可能性がある。南シナ海では、中国は既に自国の領有権主張について、ウクライナに関するロシアと同じような歴史物語を作り出している。アメリカのインド太平洋戦略に対する北京の主張は、NATOにウクライナへの攻撃を強いられたというモスクワの主張とも平行している。3月、中国の楽玉成外務次官は、NATOの拡大が戦争を引き起こしたというロシアの主張を支持し、米国のインド太平洋戦略は「ヨーロッパの東方拡大というNATO戦略と同じくらい危険だ。放っておけば、この地域は "奈落の底に突き落とされる」と述べた。ロシアがウクライナへの攻撃を正当化するために、このようなレトリックを用いたことを考えると、アジア各国の防衛強化への決意は強まっていく。

ヨーロッパは、ハードパワーの現実を残酷なまでに再認識させられた。アジアは、第二次世界大戦後、多くの紛争を経験しているので、そのような再認識は必要ない。しかし、アジアでも、ロシアの侵攻は、将来の紛争に備えるという新たな真剣さを各国政府に植え付ける結果となった。

※ウィリアム・チョン:ISEAS・ユソフ・イシャク研究所上級研究員兼研究所の論説ウェブサイト「フルクラム」編集長。「フルクラム」は東南アジアを専門としている。ツイッターアカウントは@willschoong
(貼り付け終わり)
(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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