古村治彦です。

 今年の大統領選挙の民主党の候補者指名を確実にしているジョー・バイデン前副大統領がまた軽口を叩いてしまい、批判を浴びた。

 今回は、アフリカ系アメリカ人有権者に関する発言で、「私とトランプとどちらを支持するか迷っているような人は黒人ではない」というものだった。「アフリカ系アメリカ人だったら私と民主党を支持するのが当然だ」という傲慢な発言である。

 この発言が出たのは、アフリカ系アメリカ人コミュニティで人気の高いラジオ番組「ザ・ブレックファスト・クラブ」という番組でのことだった。歯に衣着せぬ毒舌で人気の司会者チャーラマーニュ・ター・ゴッドとのやりとりの中で出たものだ。チャーラマーニュ・ター・ゴッドが「私はあなたに批判的」という先制パンチを放ってインタヴューが始まって、丁々発止盛り上がった。予定の時間を過ぎてしまい、バイデンのスタッフが「もうそろそろ」と入った。

 バイデンは自宅の書斎からのリモート出演だったのだが、彼の後に妻ジル・バイデンが配信で使うことになっていた。そこで、スタッフが盛り上がっているところに割り込んだ。これに対して、司会者チャーラマーニュが「黒人メディアではそんなことはさせない」と軽口で言い、バイデンが「これは黒人メディアも白人メディアも関係ない、時間のこともあるし、どうしようかな」と応じた。

 そして、司会者チャーラマーニュが「番組のスタジオがあるニューヨークに来たら、必ずスタジオに来てくださいよ」「あなたには更に質問がある」と述べたのに対し、バイデンが上記発言を行ったという流れである。

 この発言に対しては共和党側と民主党の一部から批判が出た。「アフリカ系アメリカ人有権者にどのように投票せよと指示した」「トランプ大統領を支持するアフリカ系アメリカ人有権者の人種に関する純粋性(これはまた危険な考えであるが)に疑義を呈した」「白人エリート主義者の傲慢」といった非難の声が出ている。バイデンも小賢しい真似をしてしまったという後悔の念を表明した。

 一連の流れを見れば、バイデンがつい口を滑らせた、自分が長年良好な関係を築いてきたアフリカ系アメリカ人コミュニティ向け、相手は毒舌の司会者ということで、きわどいことを言ってしまった、ということであろう。アフリカ系アメリカ人コミュニティでは、差別を逆手に取って、差別語や蔑称を使って会話をする、軽口を叩き合うということがある。そして、アフリカ系アメリカ人ではない人を受け入れてそれを許す場合もあるが、このことは大変に微妙な問題であり、通常は気をつけておかねばならないことだ。

 バイデンとしては、予備選挙でサンダースに追いつめられていたところに、2月末のサウスカロライナ州での予備選挙で予想外の大勝利で流れを変え、一気に逆転し、指名獲得を確実にした。これにアフリカ系アメリカ人有権者の力が大きかったのは事実であり、これに対して、サンダース支持が多かったヒスパニック系が焦り、副大統領候補にはヒスパニック系の女性をという声も出ている。

 バイデンや民主党には「非白人、特にアフリカ系アメリカ人有権者は私たちに投票するのが当然だ」という固定観念があるのだろうが、優位と言われていたヒラリー・クリントンがドナルド・トランプに敗れた、しかも金城湯池のラストベルト、五大湖周辺州で敗れたということをもっと重く受け止めて、2016年からは固定観念は通じない時代になっているのだということを認識しなければ2020年も勝利はおぼつかないだろう。

 バイデンの年齢を重ねた割に、軽率な行動が多いというのは問題である。年齢や健康に加えて彼の行動や発言も不安要素であり、副大統領候補選びはより重要である。もしバイデンが当選すれば、そうした不安要素を抱える彼に何かあった時には大統領にならねばならない人物である。こうした不安が出てくるのはバイデンの不利な点だ。

(貼り付けはじめ)

バイデンはアフリカ系アメリカ人からの支持についての発言を後悔している:「私はあんなにこざかしいことをしなければよかったのだが」(Biden regrets remarks about black support: 'I shouldn't have been such a wise guy'

ジョナサン・イーズリー筆

2020年5月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/499213-biden-regrets-remarks-about-black-support-i-shouldnt-have-been-such-a-wise?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ジョー・バイデン前副大統領は金曜日、金曜日の午前中にラジオ番組司会者チャーラマーニュ・ター・ゴッド(Charlamagne Tha God)に、トランプ大統領を支持するならば、「あなたは黒人ではない」と語ったことについて後悔していると述べた。

アフリカ系アメリカ人の実業家たちとの電話の中で、バイデンは午前中の発言は「思慮のないもの」だったと述べ、アフリカ系アメリカ人有権者の支持を当然のことだとか、アフリカ系アメリカ人有権者に対して誰に投票しなければならないとかを述べるつもりではなかったと釈明した。

バイデンは「私はそんなこざかしいことをしなければよかったのですが。あんな短慮なことをしなければよかったのですが」と述べた。

「私は自分が発言した内容を当然のことなどとはまったくもって考えていません。人種、宗教、背景に基づいて特定の投票にしなければならないなどと考えていません。アフリカ系アメリカ人でトランプ大統領は自分の投票に値する人物だと考えている人はいます。私は投票に値しないと考えますし、彼の記録に対抗して私の記録を出す準備はできています。しかし、それ以上ではありません。しかし、あいにくなことでした。あんな思慮のないことをすべきではありませんでした」。

民主党の大統領選挙候補者に内定しているバイデンは、人気のラジオ番組「ザ・ブレックファスト・クラブ」に出演したが、司会者のチャーラマーニュはアフリカ系アメリカ人コミュニティに影響を与える諸問題について更に議論を続けたいと述べた後に、議論を呼ぶ発言を行った。

バイデンは次のように応じた。「もっとたくさん質問があるって?そうですか、私があなたに言いたいことはね、私を支持するか、トランプを支持するか迷っているのならば、あなたは黒人ではない、ということです」。

共和党側、民主党の一部指導者たちは、バイデンの発言を非難した。バイデンが人々に対してどのように考えるべきかを指示し、アフリカ系アメリカ人の人種的純粋性について疑義を呈したと攻撃した。

バイデンの報道担当シモーネ・サンダースは当初、バイデンの発言を擁護した。バイデンの発言は「冗談としてなされた」ものだと述べ、バイデンにはアフリカ系アメリカ人有権者からの強力な支持があることを指摘した。アフリカ系アメリカ人有権者は、大統領選挙民主党予備選挙においてバイデンに復活の勝利をもたらした。

しかし、バイデンの発言はソーシャル・メディア上で議論を呼び、批判が高まっている中で、バイデンに対して釈明すべきというプレッシャーが大きくなっている。

オバマ政権下のホワイトハウスで副官のトップを務めたパトリック・ガスパードは、バイデンは「誰が十分に黒人であり、誰がそうではないかを決める」ための「位置にはいない」と述べた。

ミュージシャンのディデイはツイッター上でバイデンに対して、バイデンの発言は自分に「黒人の投票は自由ではない(black vote ain’t free)」ことを示したと書いた。

ティム・スコット連邦上院議員(サウスカロライナ州選出)や実業家でミシガン州において連邦上ン議員選挙に出馬しているジョン・ジェイムズといった共和党に属するアフリカ系アメリカ人たちはバイデンを非難した。

スコット議員は「民主党はこれまで、アフリカ系アメリカ人コミュニティから支持を得ることは当然だ、自分たちに同意しないアフリカ系アメリカ人は攻撃してよいと考えてきた」と述べた。

ジェイムズは「私は、その中にはアフリカ系アメリカ人木組まれるが、他のすべてのアメリカ国民と同じく、自分自身のために考え、投票する権利を持っている」と述べた。

そして、トランプ選対はバイデンの発言を「人種差別的」で「非人間的」だと述べた。

トランプ選対の上級顧問で、トランプ陣営の「ブラック・ヴォイス」の指導者であるカトリーナ・ピアソンは「リベラル白人のエリート主義者たちは、どのアフリカ系アメリカ人はテーブルにつき発言をすることを許されるかを独占的に決定するという姿勢で首尾一貫している」と発言した。

=====

バイデンはチャーラマーニュ・ター・ゴッドに語った。:もしあなたが私を支持しないのなら、「あなたは黒人ではない」(Biden tells Charlamagne Tha God: If you don't support me 'then you ain't black'

ジョナサン・イーズリー筆

2020年5月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/499128-biden-tells-charlamagne-tha-god-if-you-dont-support-me-then-you-aint-black

ジョー・バイデン前副大統領は金曜日に人気のラジオショー「ザ・ブレックファスト・クラブ」で司会者のチャーラマーニュ・ター・ゴッドに対して、自分の人種についての記録を擁護した。この時、バイデンはチャーラマーニュに、あなたがトランプ大統領を支持するならば、「あなたは黒人ではない」と述べた。

インタヴューが始まって11分が過ぎて、バイデンのスタッフがインタヴューを終わらせようとした。それは、バイデンが自宅のオフィスからインタヴューに答えていたのだが、妻のジル・バイデンが自身の配信イヴェントのために使うことになっていからだ。しかし、バイデンはインタヴューの延長に同意した。

18分後、スタッフは再びインタヴューに口を挟んできた。チャーラマーニュは冗談交じりに次のように言った。「黒人メディアに対してそんなことはできませんよ」。

バイデンは腕時計を見ながら次のように答えた。「私は白人メディアであろうが黒人メディアであろうがやりますよ。私の妻は6時に行かなくちゃいけないものだから。おやおや、困ったことになったな」。

チャーラマーニュは「いいですか、バイデン副大統領、ニューヨークにいらしたら、私たちの番組に来ていただかなくちゃいけませんよ。11月までは時間がたくさんありますよ。私たちは多くの質問がありますからね」と述べた。

バイデンは次のように答えた。「質問がたくさんあるって?いいですか、私を支持するか、トランプを支持するかを決めるのに迷っているようならば、あなたは黒人じゃありませんよ」。

チャーラマーニュは「トランプ大統領には全く興味がないんですよ、だけど、アフリカ系アメリカ人コミュニティのために何かしたいとは思っていますよ」と述べた。

バイデンは次のように答えた。「私の記録を見て欲しいものですよ。私は25年間にわたり投票権法を拡大してきました。私は他の誰の追随も許さないくらいの記録を残していますよ。全米黒人地位向上協会(NAACP)は私が選挙に出る時はいつも推薦支持を出してくれています。いいですか、私の記録を見て下さい」。

チャーラマーニュのラジオショーは民主党の予備選挙期間中、候補者たちが出演したがる番組だった。しかし、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)をはじめ複数の候補者たちは、人種についての記録についてチャーラマーニュから激しく問い詰められたことでトラブルとなった。

バイデンは番組に初めて出演した。そして、インタヴューは時に激しい論争となり、ぎこちないものとなった。しかし、バイデンとチャーラマーニュは最後には穏やかな雰囲気となった。

チャーラマーニュは番組の初めにバイデンに「私はあなたに対して批判的ですよ」と述べた。

バイデンは「あなたがそうだってことは知っていますよ。私のことを知らないんでしょう」と返した。

チャーラマーニュはバイデンに対して、マリファナ解禁を支持しながら、合法化を支持しないのは何故かと説明して欲しいと述べた。

バイデンは次のように答えた。「科学者たちはマリファナが長期間にわたって脳に与える影響を理解しようとしています。私たちは、研究が終わるまで待つべきでしょう。これは科学の問題です」。

チャーラマーニュは「私たちはこれまで何十年も何十年も吸い続けてきたと思いますけどね」と答えた。

バイデンは笑いながら「いや確かに、私もマリファナを吸っている人をたくさん知っていますよ」と述べた。

チャーラマーニュはバイデンに対して、1980年代と1990年代に犯罪関連法案に賛成したことについて説明するように求めた。批判者たちはこの法案によってアフリカ系アメリカ人の投獄が増えたと訴えている。

チャーラマーニュはヒラリー・クリントン元国務長官が彼の番組に出演して、これらの法案を支持したことについて謝罪したと指摘した。そして、ヒラリーが大統領選挙に出馬した理由の一つはこれらへの償いであったと述べた。

バイデンは次のように語った。「彼女は間違いました。あれは犯罪に関する法案ではなく、麻薬規制と最低限の規制を行う機構に関する法案でした。しかし、私は反対しました」。

バイデンは番組中に繰り返しアフリカ系アメリカ人有権者の間で彼が大きな支持を得ている世論調査の結果に言及し、民主党予備選挙について指摘した。予備選挙では、アフリカ系アメリカ人有権者がバイデンを支持し、その結果として全米各地で大勝利を収め、結果として早い段階で党の指名を確実にした。

バイデンはオバマ前大統領を引き合いに出して、「私はこれまでの誰よりも、アフリカ系アメリカ人有権者の中でのより大きな支持を集めています。バラクよりもね」と述べた。

バイデンは「アフリカ系アメリカ人有権者は、自分たちでも述べているように、友人ですよ。私を躍らせてくれるんです。いいですか、冗談じゃないって話ですよ、まったく」と述べた。

共和党系のスーパーPACである「アメリカ・ライジング」は、バイデンの発言の様子を収めた映像を流し、保守派のソーシャル・メディアで映像のやり取りが激しくなった。

トランプ選対の上級顧問でトランプ支持の「ブラック・ヴォイス」の指導者であるカトリーナ・ピアソンは「リベラル白人のエリート主義者たちは、どのアフリカ系アメリカ人はテーブルにつき発言をすることを許されるかを独占的に決定するという姿勢で首尾一貫している」と述べた。

ピアソンは続けて次のように語った。「これらの人種差別的なそして非人間的な発言を受け、ジョー・バイデンが、アフリカ系アメリカ人男性と女性が独立心を持つことができず、自由に考えることができないと確信しているということがこれまで以上に明らかになった。バイデンは、77歳の白人男性である彼はアフリカ系アメリカ人がどのように行動すべきかを決定すべきだと確信しているのだ。バイデンは人種を使って恩着せがましい行動を続けてきた歴史を持っている。そして、本日、バイデンは再び、多くのアフリカ系アメリカ人有権者と私にとって、ジョー・バイデンが私たちの投票に値しない人物だということを証明したのだ」。

ティム・スコット連邦上院議員(サウスカロライナ州選出)は連邦上院で唯一のアフリカ系アメリカ人の連邦上院議員だ。スコット議員もまたバイデンを、アフリカ系アメリカ人にどのように投票すべきかを教え、保守的なアフリカ系アメリカ人有権者の人種的純粋性について疑義を呈したことについて非難した。

バイデン選対のアドヴァイザーであるシモーネ・サンダースはバイデンの発言を擁護した。

サンダースはツイッターで次のように書いた。「副大統領は彼のキャリアを通じてアフリカ系アメリカ人コミュニティと共に、そしてコミュニティのために戦ってきました。副大統領は民主党の指名を勝ち取った。コミュニティの人々の投票全てを獲得し、コミュニティの人々と会いました。これは今年の11月まで副大統領がやりたいことです」。

サンダースは続けて次のように書いた。「“ブレックファスト・クラブ”でのインタヴューの最後に行ったバイデン副大統領の発言の内容は冗談でした。しかし、副大統領が述べた内容を正確に思い出してみましょう。彼がアフリカ系アメリカ人コミュニティと協力してきたこれまでの記録とトランプ大統領の記録を区別しました。以上です」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側