古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

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 古村治彦です。

 今回は、シカゴ大学教授ジョン・J・ミアシャイマー教授のインタヴュー記事をご紹介する。ミアシャイマー教授は、このブログで良く取り上げるハーヴァード大学教授のスティーヴン・M・ウォルト教授と一緒に『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1』を書いた人物だ。また、日本語で読める文献としては、『新装完全版 大国政治の悲劇』『なぜリーダーはウソをつくのか - 国際政治で使われる5つの「戦略的なウソ」 (中公文庫) 』がある。国際関係論の中でもリアリズムという流れに属する学者だ。
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ミアシャイマー
 ミアシャイマーはウクライナ危機をアメリカの介入主義に責任があると断じている。ミアシャイマーは「2008年4月、ルーマニアのブカレストで開催されたNATOサミットで、NATOはウクライナとグルジアをNATOの一部にするだろうという声明を発表したのが、この問題の始まりだと考える。ロシアは当時、これを存亡に関わる危機(existential threat)と見なし、越えてはならない一線を明確に設定した。それでも、時間の経過とともに何が起こったかと言うと、ウクライナをロシアとの国境の西側の防波堤(bulwark)にするために、ウクライナを西側に入れるという方向に進んだ。もちろん、これにはNATOの拡大だけではない。NATOの拡大は戦略の中心ですが、EUの拡大も含まれるし、ウクライナを親米の自由主義民主政治体制国家(pro-American liberal democracy)に変える(turning)ことも含まれ、ロシアから見れば、これは存亡に関わる危機なのだ」と述べている。

 ロシアが軍事侵攻を行ったことは断罪されるべきだ。ウクライナの国民にしてみれば、ロシアの都合など私たちとは関係ないということになる。しかし、大きな勢力や大国の近くにある中小国は常にそれらの角逐に神経を尖らせ、どちらか一方に賭けるのではなく、常に両方とつながるということが生き残る秘訣だ。日本はどうだろうかと考えると、ため息しか出ない。

(貼り付けはじめ)

ジョン・ミアシャイマーはなぜウクライナ危機をアメリカの責任だと批判するのか(Why John Mearsheimer Blames the U.S. for the Crisis in Ukraine

-政治学者ジョン・ミアシャイマーは長年、プーティンのウクライナへの侵略は西側諸国の介入(Western intervention)によるものだと主張してきた。最近の出来事で彼の考えは変わったのだろうか?

アイザック・コテイナー筆

2022年3月1日

『ニューヨーカー』誌

https://www.newyorker.com/news/q-and-a/why-john-mearsheimer-blames-the-us-for-the-crisis-in-ukraine?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=onsite-share&utm_brand=the-new-yorker&utm_social-type=earned

政治学者のジョン・ミアシャイマー(John Mearsheimer)は、冷戦終結後のアメリカの外交政策に対する最も有名な批評家の一人である。ミアシャイマーは、スティーヴン・ウォルトと共著した著作『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』で最も良く知られているだろうが、大国間政治の主唱者だ。国家の安全を守るために、国家は敵対者を想定して事前に行動するとする国際関係論の一派であるリアリズムを信奉者である。ミアシャイマーは長年にわたり、アメリカがNATOの東方への拡大(to expand NATO eastward)やウクライナとの友好関係を推進した(establishing friendly relations with Ukraine)結果、核武装した大国間の戦争の可能性(likelihood of war between nuclear-armed powers)が高まり、ウラジミール・プーティンのウクライナに対する攻撃的な姿勢の下地(groundwork)ができたと主張してきた。実際、ロシアがクリミアを併合した後の2014年、ミアシャイマーは「この危機の責任の大半はアメリカとヨーロッパの同盟国が負っている(the United States and its European allies share most of the responsibility for this crisis)」と書いている。

今回のロシアによるウクライナ侵攻は、米露関係をめぐるいくつかの長年の議論を再燃させるものだ。プーティンは欧米の関与に関係なく旧ソ連圏内で積極的な外交政策を取るという批判が多いが、ミアシャイマーはプーティンを刺激したアメリカに責任があるとする立場を貫く。最近、私はミアシャイマーと電話で話した。ミアシャイマーとの会話の中で、今回の戦争は防げたのか(the current war could have been prevented)、ロシアを帝国主義的大国と考えることができるのか(whether it makes sense to think of Russia as an imperial power)、プーティンのウクライナに対する最終的な計画(Putin’s ultimate plans for Ukraine)などについて、長さと分かりやすさを重視して編集したものとなっている。

コテイナー:現在のロシアとウクライナの状況を見て、世界はどうしてこうなったのだと考えるか?

ミアシャイマー:2008年4月、ルーマニアのブカレストで開催されたNATOサミットで、NATOはウクライナとグルジアをNATOの一部にするだろうという声明を発表したのが、この問題の始まりだと考える。ロシアは当時、これを存亡に関わる危機(existential threat)と見なし、越えてはならない一線を明確に設定した。それでも、時間の経過とともに何が起こったかと言うと、ウクライナをロシアとの国境の西側の防波堤(bulwark)にするために、ウクライナを西側に入れるという方向に進んだ。もちろん、これにはNATOの拡大だけではない。NATOの拡大は戦略の中心ですが、EUの拡大も含まれるし、ウクライナを親米の自由主義民主政治体制国家(pro-American liberal democracy)に変える(turning)ことも含まれ、ロシアから見れば、これは存亡に関わる危機なのだ。

コテイナー:あなたは、「ウクライナを親米的な自由民主主義国家に変えること」と述べた。私は、アメリカがある場所を自由主義民主政治体制国家に「変える」ということに(“turning” places into liberal democracies)、あまり信頼や信用を置いていない。アメリカがそのようなことは実施するのは難しいと考えている。ウクライナが、ウクライナの人々が実際に本心から、親米的な自由民主主義国家に住みたいと言ったらどうするのか?

ミアシャイマー:ウクライナが親米的な自由主義的民主政治体制国家になり、NATOに加盟し、EUに加盟すれば、ロシアはそれを断固として容認しないだろう。もしNATOの拡大やEUの拡大がなく、ウクライナが単に自由主義的民主政治体制国家となり、アメリカや西側諸国と一般的に友好的であれば、おそらくそれで済ませることができるだろう。ここでは、3つの戦略が存在することを理解する必要がある。EUの拡大、NATOの拡大、そしてウクライナを親米的な自由主義的民主政治体制国家にすることだ。

コテイナー:NATOは誰を受け入れるかを決めることができる。しかし、2014年には多くのウクライナ人がヨーロッパの一部とみなされることを望んでいるように見受けられた。自由主義的民主政治体制国家になれないと言うことは、ほとんどある種の帝国主義(imperialism)のように思われる。

ミアシャイマー:それは帝国主義ではなく、大国間政治(great-power politics)だ。ウクライナのような国が、ロシアのような大国の隣に住んでいる場合、ロシアが何を考えているのか、注意深く観察しなければならない。棒で相手の目を突けば報復されるだろう。西半球の国々は、アメリカに関して、このことを十分に理解している。

コテイナー:本質的にモンロー・ドクトリン(Monroe Doctrine)だ。

ミアシャイマー:もちろんだ。西半球には遠い大国が軍隊を持ち込むことをアメリカから許されるような国は存在しない。

コテイナー:そうだ。しかし、西半球の国々(その多くは民主政治体制国家)が自分たちの外交政策を決めることをアメリカは許さないというのは、それが良いとも悪いとも言えるが、それは帝国主義ではないのか?私たちは本質的に、民主政治体制国家がどのように政策を決定し実施するかについて、アメリカに対してある種の発言権を持っていると私は考える。

ミアシャイマー:私たちが言えることは、冷戦時代には民主的に選ばれた西半球の国々の指導者たちをその政策に不満があるからということでアメリカが倒したことがある。これが大国の行動なのだ。

コテイナー:もちろん、アメリカはそのようなことを行った。しかし、そのような行動をするべきなのかについて私は疑念を持っている。外交政策について考える時、アメリカもロシアもそのような行動をしない世界を作ろうと考えるべきなのだろうか?

ミアシャイマー:それは世界が機能する方法ではない。そのような世界を作ろうとすると、アメリカが一極集中時代(unipolar moment)に追求した悲惨な政策に行き着く。私たちは自由主義的民主政治体制を構築するために世界中に手を出した。もちろん、主な対象は中東たったが、それがどれほどうまくいったかあなたは知っているはずだ。知っての通り、あまりうまくはいかなかった。

コテイナー:第二次世界大戦後の75年間、あるいは冷戦終結後の30年間のアメリカの中東政策は、中東に自由主義的民主政治体制国家を作ることだったと言い難いと私は考える。

ミアシャイマー:一極集中時代のブッシュ・ドクトリンがそうだったと思う。

コテイナー:イラクでそうだった。しかし、パレスチナ自治区やサウジアラビア、エジプト、その他の場所ではそうではなかったはずだが?

ミアシャイマー:いや、そうではない。サウジアラビアもエジプトではそうではなかった。そもそもブッシュ・ドクトリンでは、イラクで自由主義的民主政治体制を実現できれば、それがドミノ効果(domino effect)を起こして、シリアやイラン、ひいてはサウジアラビアやエジプトといった国々が民主政治体制に転換すると考えていた。それがブッシュ・ドクトリンの基本的な考え方だった。ブッシュ・ドクトリンは、イラクを民主化するためだけに作られたわけではない。もっと壮大な構想(grander scheme)があった。

コテイナー:ブッシュ政権の責任者たちが、どれだけ中東を民主政治体制国家の集まりにしたかったのか、本当にそうなると思っていたのかは、議論の余地がある。私の考えでは、サウジアラビアを民主政治体制に転換しようという実際の熱意はほぼなかったということだ。

ミアシャイマー:そうだ、サウジアラビアに焦点を当てるというのは、あなたの立場からすると、容易な事例だと思う。サウジアラビアは石油のために私たちに対して大きな影響力を持っており、民主政治体制国家ではないことは確かだ。しかし、当時のブッシュ・ドクトリンは、中東を民主化できるという信念に基づいている。一朝一夕にはいかないかもしれないが、いずれは実現するはずだ。これがブッシュ・ドクトリンの基本信念だ。

コテイナー:私が言いたいのは「行動は言葉よりも雄弁である(actions speak louder than words)」ということだ。ブッシュの華々しい演説がどうであれ、アメリカの最近の歴史のどの時点でも、世界中の自由主義的民主政治体制を保証しようとする政策が取られてきたとは思えない。

ミアシャイマー:一極集中の時代にアメリカが取った行動と、これまでの歴史の中でアメリカが取った行動には大きな違いがある。アメリカの外交政策について、広範な歴史の流れの中であなたは語るが、その大きな流れについて私はあなたに同意する。しかし、一極集中の時期は、非常に特殊な時期だった。一極集中の時代、私たちは民主政治体制を広めることに深く関与していたと思う。

ウクライナについては、2014年まで、ロシアを封じ込める(containing Russia)ための政策としてNATOの拡大やEUの拡大を想定していなかったことを理解することが非常に重要だ。2014年2月22日以前、誰もロシアが脅威だとは本気で思っていなかった。NATOの拡大、EUの拡大、ウクライナやグルジアなどを自由主義的民主政治体制国にすることは、ヨーロッパ全域に広がる、東ヨーロッパと西ヨーロッパを含む巨大な平和地帯を作るためのものだった。ロシアを封じ込めることが目的ではなかった。しかし、このような大きな危機が発生し、私たちは責任を負わなければならなくなった。もちろん、私たちは自分たちを責めるつもりなど微塵もなく、ロシアだけを責めるつもりだった。そこで私たちは、ロシアが東欧への侵略を企んでいるというストーリーを作り上げた。プーティンは大ロシア、あるいはソヴィエト連邦の再興に関心を持っているというストーリーを作り上げた。

コテイナー:その時期とクリミア併合について話を移そう。古い記事を読んでいたら、「欧米の通説では、ウクライナ危機はほぼ全面的にロシアの侵略のせいとされている」とあなたは書いていた。「ロシアのプーティン大統領は、ソヴィエト帝国を復活させたいという長年の願望からクリミアを併合し、いずれはウクライナの他の地域や東欧諸国を狙うかもしれない」というのが通説だ。そして、あなたは「しかし、この説明は間違っている」と述べた。ここ数週間の出来事で、通説が思ったより真実に近かったと思うことはないか?

ミアシャイマー:いや、私は正しかったと考えている。2014年2月22日以前は、彼が侵略者だとは思っていなかったという証拠は明らかにあると思う。これは、私たちが彼を非難するために捏造した話なのだ。私の主張は、西側、特にアメリカがこうした厄災の主な原因であるということだ。しかし、アメリカの政策立案者は誰も、そしてアメリカの外交政策の確立者のほとんど誰も、その論旨を認めようとはせず、ロシアに責任があると言うだろう。

コテイナー:あなたはそれでロシアが併合して侵攻したと言うのか?

ミアシャイマー:その通りだ。

コテイナー:その論稿に非常に関心を持った。それは論稿の中で、プーティンがいずれウクライナの他の地域や東欧諸国を狙うかもしれないという考え方は間違っているとあなたが書いていたからだ。現在、プーティンはウクライナの他の地域を狙っているようだが、その当時は分からなかったとしても、後から考えると、その主張の方が正しいかもしれないと考えるか?

ミアシャイマー:ウクライナの他の地域を狙うというのは、細かいことを言うようだが、ウクライナ全土を征服し、バルト三国に目を向け、大ロシアやソ連の再興を目指すことを意味する。それが本当だという証拠は今のところ見当たらない。現在進行中の紛争の地図を見ても、彼が何をしようとしているのか、正確に把握することは困難だ。ドンバス地方を占領し、ドンバスを2つの独立国か1つの大きな独立国にするつもりであることは明らかなようだが、その先どうするつもりなのかは不明だ。つまり、プーティンはウクライナ西部には手を出さないように見える。

コテイナー:プーティンの爆弾が実際に降っているではないか?

ミアシャイマー:しかし、それは重要な問題ではない。重要な問題は以下の通りだ。「どの領土を征服し、どの領土に固執するのか?」というものだ。先日、クリミアから出てきた部隊がどうなるかについてある人と話したのだが、その人は、彼らは西に回ってオデッサを取ると考えると言っていた。最近、別の人と話したら、それはないだろうと言っていた。何が起こるかを分かることがあるだろうか? いや、何が起こるかは誰にも分からない。

コテイナー:プーティンがキエフを狙っているとは考えないか?

ミアシャイマー:いや、私はプーティンがキエフに侵攻意図を持っているとは考えない。彼は少なくともドンバスを、そしておそらく更にウクライナ東部の領土を奪おうと考えている。そして2つ目は、キエフに親ロシア政府、つまりモスクワの利益に同調する政府を設置しようと考えているだろう。

コテイナー:あなたはキエフを手に入れることに興味はないと私に言ったのではないか?

ミアシャイマー:いや、プーティンは体制転換(regime change)のためにキエフを手に入れることに興味があるということだ。分かるだろうか?

コテイナー:何がどう違うのか?

ミアシャイマー:キエフを永続的に征服することはないということだ。

コテイナー:ロシアに友好的な政府が樹立され、プーティンは何らかの発言権を持つということか?

ミアシャイマー:その通り。しかし、それはキエフを征服して保持することとは根本的に異なることを理解することが重要だ。私の言っている内容を理解できるか?

コテイナー:帝国の領地では、たとえ本国が実質的に支配していても、ある種の人物が形式的に王位に就いていることは、誰しも考えることではないか? そのような場所は征服されていることになるではないか?

ミアシャイマー:「帝国」という言葉の使い方に問題がある。この問題を帝国主義という観点から語る人がいることを私は承知していない。これは大国間政治であり、ロシアが望んでいるのは、ロシアの利益に同調するキエフの政権だ。最終的には、ロシアは中立的なウクライナと共存することを望んでおり、モスクワがキエフの政府を全面的に支配する必要はないと考える。親米的でなく中立的な政権を望んでいるだけかもしれないのだ。

コテイナー:「誰も帝国主義として語らない」とあなたは述べた。しかし、プーティンの演説では、特に「旧ロシア帝国の領土(territory of the former Russian Empire)」に言及し、それを失うことを嘆いている。プーティンが帝国主義について話しているではないか?

ミアシャイマー:あなたの発言内容は間違っていると考える。なぜなら、西側諸国のほとんどの人がそうしているように、あなたはプーティンの演説原稿の前半からのみ引用しているからだ。彼は「ソヴィエト連邦を恋しく思わない者は心がない(Whoever does not miss the Soviet Union has no heart)」と述べた。そしてその後で、「それを取り戻したいと思う者は考えが足りない(Whoever wants it back has no brain)」と続けたのだ。

コテイナー:プーティンはウクライナが本質的にでっち上げの国家(essentially a made-up nation)だと述べ、そして現在侵略しているように見える。そうではないか?

ミアシャイマー:分かった。それでは、この2つの出来事を合わせて、その意味を私に教えて欲しい。私はよく理解できないのだ。プーティンはウクライナがでっち上げだと確信している。私は彼に、「全ての国家はでっち上げである」と指摘したい。ナショナリズムを勉強している学者や学生たちなら誰でもそう言うはずだ。私たちは国家のアイデンティティという概念を作り上げた。あらゆる種類の神話(myths)で構成されている。だから、ウクライナについては、アメリカやドイツについてそうであるように、プーティンが正しいのだ。もっと重要なのは、ウクライナを征服して、大ロシアや旧ソヴィエト連邦の再興に組み込むことはできないということをプーティンが理解しているということだ。彼にはそれが不可能だ。プーティンがウクライナで行っていることは、大ロシアや旧ソ連の再興とは根本的に異なっている。彼は明らかにいくつかの領土を切り取っている。2014年にクリミアで起きたことに加え、ウクライナから領土を奪おうとしている。更に言えば、彼は間違いなく体制転換(regime change)に関心を持っている。その先に何があるのかは、彼がウクライナ全土を征服するつもりがないことを除けば、はっきりとしたことは言えない。そんなことをしようものなら、プーティンは極めて深刻な失態を犯すことになるだろう。

コテイナー:もしプーティンが大ロシアや旧ソ連の再興を試みようとしたら、私たちが目撃した事柄についての分析内容も変化すると考えているか?

ミアシャイマー:全くその通りだ。私の主張は、プーティンはソヴィエト連邦の再興や大ロシアを築こうとはしていない、ウクライナを征服してロシアに統合しようとはしていない、というものだ。プーティンは非常に攻撃的で、このウクライナの危機の主な原因は彼にあるというストーリーを私たちが作り出したということを理解することが非常に重要だ。アメリカや西側諸国の外交政策当局が作り出した議論は、プーティンが大ロシアや旧ソヴィエト連邦の再興に関心を抱いているという主張を中心に展開されている。ウクライナを征服し終えたら、バルト三国に目を向けるだろうと考えている人たちがいる。彼はバルト三国には向かわないだろう。まずもって、バルト三国はNATOのメンバーなのだから。

コテイナー:それは良いことか?

ミアシャイマー:そうではない。

コテイナー:あなたはNATOの一部だから侵攻しないということを理由の一つとして挙げている。しかし、ウクライナはNATOに加盟してはいけないとも述べているが?

ミアシャイマー:その通りだ。しかし、この2つは全く異なる問題だ。なぜこの2つを結びつけるのか分からない。私がNATOに加盟すべきだと考えることと、実際に加盟しているかどうかとは無関係だ。バルト三国はNATOに加盟している。北大西洋条約第5条で保証されている、それが全てだ。更に言えば、プーティンはバルト三国を征服することに関心があるという証拠を示したことはない。また、実際、彼はウクライナを征服することに関心があるという証拠を示したことはない。

コテイナー:プーティンが復活させたいのは、ソ連より前にあったロシア帝国のように思える。彼はソ連にとても批判的なようだが?

ミアシャイマー:どうだろうか、プーティンが旧ソ連に対して批判的かどうかは分からない。

コテイナー:プーティンは昨年書いた重要な論稿でもそう言ったし、最近の演説でもそう述べたが、ウクライナなどのソヴィエト共和国にある程度の自治を認めたことを本質的にソ連の政策の失敗だと述べている。

ミアシャイマー:しかし、私が以前にあなたにお知らせしたように、プーティンは「ソヴィエト連邦を恋しく思わない者は心がない」とも語っている。今の話とは少し矛盾している。つまり、プーティンは事実上、ソ連を恋しがっていると言っている訳だが? 彼はそう言っているのだ。ここで言っているのは、彼の外交政策だ。自問自答しなければならないのは、ウクライナにその能力があると考えるかどうかです。ウクライナはテキサスより小さなGNPしかない国だと分かっているはずだ。

コテイナー:国家というものは常々能力のないことをやろうとするものだ。「アメリカがイラクの電力システムをすぐに使えるようにできるなんて誰が思うんだ、アメリカ国内にだって同じような問題が山積しているのに?」とあなたは言うかもしれない。その通りだ。しかし、それでも私たちはそれができると考え、実行しようとして、失敗したのだ。そうではないか? ヴェトナム戦争でアメリカはやりたいことができなかった。それが、様々な戦争をしない理由だとあなたは言うだろうし、私もそう考える。しかし、だからと言って、私たちの能力について正しかった、もしくは合理的だったということにはならない。

私が言っているのは、ロシアの潜在的な力、つまり経済力の大きさについてだ。軍事力は経済力の上に成り立っている。本当に強力な軍隊を作るには経済的な基盤が必要だ。ウクライナやバルト諸国を征服し、東欧に旧ソ連や旧ソ連帝国を再興するには、大規模な軍隊が必要であり、それには現代のロシアが持っていない経済的基盤が必要となる。それでもロシアがヨーロッパの地域覇権(regional hegemony)を握ることを恐れる理由はない。ロシアはアメリカにとって深刻な脅威ではない。しかし、私たちは国際システムにおいて深刻な脅威に直面している。私たちは、同世代の競争相手に直面している。それは中国である。東欧における私たちの政策は、今日私たちが直面している最も危険な脅威に対処する私たちの能力を損なっている。

コテイナー:今、ウクライナに対してどのような政策を取るべきだと考えるか? また、中国政策が損なわれるようなことをしているのではないかという懸念はないだろうか?

ミアシャイマー:第一に、ヨーロッパから中国にレーザーのような方法で対処するための軸足を移すべきだろう。そして第二に、ロシアとの友好的な関係を構築するために時間をかけて取り組むべきだ。ロシアは中国に対する均衡連合(balancing coalition)の一員となる。中国、ロシア、アメリカという3つの大国が存在し、そのうちの1つである中国が同党の競争者となる世界において、アメリカが望むことは、ロシアを味方につけることだ。しかし、私たちが東欧で行った愚かな政策は、ロシアを中国の側に引き入れさせることになってしまった。これは力の均衡政治学入門のレッスンに反するものだ。

コテイナー:2006年に『ロンドン・レヴュー・オブ・ブックス』誌に掲載された、イスラエル・ロビーについてのあなたの記事を読み返してみた。あなたはパレスチナ問題について書いていたが、私はその内容に非常に同意する。「ここには道徳的な側面もある。アメリカ国内でのロビー活動のおかげで、占領地におけるイスラエルの占領政策を事実上容認することになり、結果としてパレスチナ人に対して行われた犯罪にアメリカが加担することになってしまった」とあなたは書いている。あなたは自分を道徳について語らないタフで堅苦しい老人のように思っているよう見える。私には、ここに道徳的な側面があることをあなたが示唆しているように思えた。現在ウクライナで起きていることに道徳的な側面があるとすれば、それについてはどう考えるか?

ミアシャイマー:国際政治におけるほとんど全ての問題には、戦略的な側面と道徳的な側面があると考える。その道徳的な側面と戦略的な側面が一直線に並ぶこともあると思う。つまり、1941年から1945年までナチスドイツのことを考えれば、理解できると思う。一方、戦略的に正しいことをしても道徳的に間違っているような、それらの矢印が反対方向を向いている場面もある。ナチスドイツと戦うためにソ連と同盟を結んだことは、それは戦略的には賢明な方策だったが、道徳的には間違った方策だったと私は考える。しかし、戦略的に仕方がないからそうするしかなかったのだ。言い換えれば、私があなたに言いたいのは、いざとなれば、戦略的配慮が道徳的配慮を圧倒するということだ。理想的な世界では、ウクライナ人が自分たちの政治体制を自由に選択し、自分たちの外交政策を選択することができれば素晴らしいことではあるのだが。

しかし、現実の世界では、それは不可能なことなのだ。ロシア人が自分たちに何を求めているのかに真剣に耳を傾けることがウクライナ人にとっての国益となるのだ。もし、根本的なところでロシアを疎外するようなことがあれば、大変なリスクを負うことになる。ウクライナがアメリカや西ヨーロッパの同盟諸国と協調していることが、ロシアにとって存亡に関わる危機であるとロシア側が考えるなら、それはウクライナに甚大な損害を与えることになる。もちろん、現在まさにそれが起こっている。従って、私の主張は、ウクライナにとって戦略的に賢明な戦略は、西側諸国、特にアメリカとの緊密な関係を断ち、ロシアに迎合しようとすることである、ということだ。もしNATOを当方に拡大してウクライナを含めるという決定がなければ、クリミアとドンバスは現在もウクライナの一部であり、ウクライナでの戦争もなかっただろう。

コテイナー:その忠告は、今となってはちょっと現実的ではないと思われる。現地の状況から見て、ウクライナがロシアを何とかなだめる時間はまだあるだろうか?

ミアシャイマー:私は、ウクライナ人がロシア人とある種の共存関係(modus vivendi)を築ける可能性は十分にあると考える。それは、ロシア側は、ウクライナを占領してウクライナの政治を動かそうとすると、大きなトラブルを招くことに気付きつつあるからだ。

コテイナー:つまり、ウクライナを占領するのは大変なことになるということか?

ミアシャイマー:その通りだ。だから私は、ロシアが長期的にウクライナを占領するとは思えないと言ったのだ。しかし、はっきりさせておきたいのは、少なくともドンバスは占領するだろうし、できればウクライナの最東部をこれ以上占領しないだろうと言いたい。ロシア人は頭が良いので、ウクライナの全土占領を行うことはないと考える。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 初代のアメリカ国務省政策企画本部長(Director of Policy Planning, Department of State)を務め、冷戦期のアメリカによる「ソ連封じ込め」を立案したジョージ・ケナン(George Kennan、1904-2005年、101歳で没)は、現在の状況を予測していたようだ。ケナンが有名になったのは外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』誌1947年7月号に著者名「X」で掲載された。
georgefkennan511
ジョージ・F・ケナン
The Sources of Soviet Conduct)」という論文だ。「X論文」と呼ばれている。この論文が冷戦期のアメリカの対ソ戦略「封じ込め(Containment)」の基礎となった。この論文はケナンが1946年2月に当時勤務していた註モスクワ米国大使館から8000語に及ぶ長文の電報でソ連分析と対応に関する文書を送ったことから、「ロングテレグラム(Long Telegram)」とも呼ばれている。「X論文」は『アメリカ外交50年 (岩波現代文庫) 』で読むことができる。

 第二次世界大戦後、ソヴィエト連邦が周辺諸国を衛星国(satellite states)に体制転換することに成功し、共産主義の拡大がアメリカを中心とする、自由主義、資本主義、民主政治体制の西側諸国の懸念となった。そうした中で、対ソ戦略をどのように策定するべきかということ大きな課題となった。世界大戦後でソ連にもアメリカにも直接対決する訳にはいかない。そうした中で、どのようにソ連に対処するべきかということが問題となった。

 ケナンは「ソ連を非軍事的な手段、つまり政治的、経済的手段を用いて、アメリカの死活的な国益にかかわる地域で封じ込めを行うべきだ」と主張した。ケナンは「ソ連邦の膨張傾向に対する長期の、辛抱強い、しかも断固として注意深い封じ込めでなければならない」「はるかに穏健で慎重な態度をとらなければならないように圧力をかけ、ゆくゆくはソヴィエト権力の崩壊かまたは漸次的な温和化」をもたらすことができる」と書いている。

 ケナンは冷戦後、NATOが東方拡大路線を取ったことについて、ほぼ引退同然であったが、最後のご奉公として、表舞台に出てきて、これは「致命的な誤り」だと喝破した。以下に貼り付けた論稿の通りだ。ケナンは「NATO拡大の決定は、ロシア世論の民族主義的(nationalistic)、反西欧的(anti-Western)、軍国主義的(militaristic)傾向を煽り、ロシアの民主政治体制の発展に悪影響を与え、東西関係(East-West relations)に冷戦の雰囲気を取り戻し、ロシアの外交政策を明らかに私たちの好みに合わない方向に導くと予想されるからである」と書いている。ケナンの指摘の通り、NATOの東方拡大が現在の状況を生み出したと言える。

(貼り付けはじめ)

論説:致命的な誤り(Opinion A Fateful Error

ジョージ・ケナン筆

1997年2月5日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/1997/02/05/opinion/a-fateful-error.html

1996年末、NATOをロシアの国境まで拡大することが、どうやらどこかで決定されたような印象を与えることになった。もしくはそのような状況が引き起こされた。1997年6月の首脳会議までにNATOの拡大を正式な決定ができないにもかかわらず、既に拡大が正式決定されているかのようである。

大統領選挙と同時に、ワシントンの有力者が入れ替わるというタイミングで、NATO拡大が報じられたために、外部の人間にとってみれば、どうコメントをすれば良いのかは分からない。また、この決定がたとえ暫定的なものであっても、取り消すことはできないという保証が国民に与えられていることも、外部が意見を促すものではなかった。

しかし、ここには最も重要な点が存在する。そして、おそらく、私一人ではなく、ロシア問題に関して豊富な経験を持ち、ほとんどの場合、より新しい経験を持つ他の多くの人々が共有する見解を明らかにするのに遅くはないだろうと私は確信している。それは、率直に言えば、NATOの拡大は、冷戦後の全時代を通じて、アメリカの政策における最も致命的な誤り(the most fateful error of American policy in the entire post-cold-war era.)となるだろうということだ。

NATO拡大の決定は、ロシア世論の民族主義的(nationalistic)、反西欧的(anti-Western)、軍国主義的(militaristic)傾向を煽り、ロシアの民主政治体制の発展に悪影響を与え、東西関係(East-West relations)に冷戦の雰囲気を取り戻し、ロシアの外交政策を明らかに私たちの好みに合わない方向に導くと予想されるからである。さらに、スタート2協定をロシア下院で批准させ、核兵器の更なる削減を達成することが、不可能ではないにしても、はるかに難しくなる可能性もある。

もちろん、ロシアの行政機構の機能が極めて不透明で、ほとんど麻痺状態にある時、ロシアがこのような挑戦に直面することは不幸なことだ。しかも、その必要性が全くないことを考えると、二重に残念だ。冷戦の終結によってもたらされた希望に満ちた可能性の中で、なぜ東西関係の中心が、架空の、まったく予測できない、最もありえない将来の軍事衝突において、誰が誰と同盟し、暗に誰と敵対するかという問題にならなければならないのか?

もちろん、NATOがロシア当局と協議を行い、ロシアがNATO拡大の考えを容認し、納得できるようにすることを望んでいることは承知している。現状では、こうした努力の成功を祈るしかない。しかし、ロシアの新聞をまじめに読んでいる人なら、国民も政府もNATO拡大案が実現するのを待たずに既に反応していることに気づくだろう。

ロシアは、アメリカが「敵対的な意図はない」と断言しても、ほぼ納得しない。ロシアは、自国の威信[prestige](ロシアにとって常に最重要)と安全保障上の利益に悪影響を及ぼすと考えるだろう。もちろん、軍事的な既成事実(fait accompli)としてNATO拡大を受け入れるしかないだろう。しかし、ロシアはそれを西側からの反撃(rebuff)とみなし、自分たちの安全で希望に満ちた未来の保証を他の場所に求めるだろう。

NATOの同盟国16カ国が既に下した、あるいは黙認している決定を変えるのは、明らかに容易ではないだろう。しかし、この決定が最終的に下されるまでに数カ月かかる。おそらくこの期間を利用して、ロシアの意見や政策に既に与えている不幸な影響を緩和する方法で、提案されているNATO拡大を変更することができるだろう。

この記事は、1997年2月5日に全国版のセクションA、23ページに掲載された。

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●「(ひもとく)なぜウクライナか ロシアが侵す、宗教の断層線 下斗米伸夫」

朝日新聞 2022226 500

https://www.asahi.com/articles/DA3S15216118.html

 ロシア軍が24日、ウクライナに侵攻した。首都キエフなど各地を攻撃している。四半世紀前、米クリントン政権時代に始まったNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大問題は、最悪の結果を生みつつある。

 ■同盟拡大に警告

 米国内の論調は一枚岩ではなかった。2014年、ウクライナで、NATO加盟推進派が右派民族勢力と組んで治安部隊と衝突し、ヤヌコビッチ大統領が亡命するマイダン革命が起きた。当時のロシア大使マイケル・マクフォール氏ら早期加盟派は、プーチン大統領を批判する(『冷たい戦争から熱い平和へ』上・下、松島芳彦訳、白水社・各3960円)。他方、ソ連崩壊期の大使ジャック・マトロック氏や、ロシア大使経験のあるウィリアム・バーンズ中央情報局長官は慎重論を唱えていた。

 同盟拡大はロシアを挑発すると警告したのは、ソ連代理大使も務めた晩年のジョージ・ケナン氏だ。プーチンにはソ連を再建する意図はない、とクリントンのブレーン、ストローブ・タルボット国務副長官(当時)に説いた。ケナンの遺志を継ぐ歴史家アンドリュー・ベースビッチ氏は、ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長の側近が「我々は、米国にとっての敵でなくなるという恐ろしいことをやる」と語ったと書いた(『幻影の時代 いかに米国は冷戦の勝利を乱費したか』未邦訳)。今の米ロ対立は、元ロシア大使間の米米対立でもある。

 だが、東西和解の合意に抗して、クリントン政権が選んだのは同盟拡大というロシアを凍らせる選択だった。東欧移民票を自らの大統領選に利用するという短慮も今日の状況を招いた。

 ひ弱なロシアの民主化派が退潮すると、エリツィン大統領が後継者に選んだのは元NATO担当の情報将校だった。春秋の筆法で言えば、クリントンがプーチン政権を誕生させたのだ。

 実際、14年のマイダン革命は誰の得にもならない悲劇となった。比較政治の松里公孝は『ポスト社会主義の政治』で、西側がしかけた革命が暴力化することはわかりきっており、「憲政史に拭いようのない汚点」を残したと指摘する。プーチンはクリミア半島を併合、フルシチョフが渡した失地を回復したが、戦後ヤルタ体制=英米ロ関係を毀損(きそん)した。

 ■約30年前の予言

 なぜウクライナなのか。冷戦後、イデオロギーにかわって宗教が甦(よみがえ)る。同国は東方正教・イスラムと西欧キリスト教との断層線上だ。その線上で紛争がおこることを1993年に予言したのは、サミュエル・ハンチントン『文明の衝突』だ。北米の東欧ディアスポラ(離散した民)が紛争の触媒となると述べていた。米国務省に、ビクトリア・ヌーランド次官らロシア帝国移民系のネオコンが多いのは偶然だろうか。

 トルコなどイスラム要因も絡む。アフガニスタンは米ソ超大国の墓場となり、ユーラシアでは地殻変動が続く。1月には危機がカザフスタンに飛び火、ナザルバエフ体制が崩壊した。熊倉潤『民族自決と民族団結』は、ソ連の下で同国が疑似国民国家を懐胎してきたと指摘するが、腐敗体質が暴動を誘発した。ロシアやトルコなど地域大国が復活、その権威主義化が米国流の民主化革命の限界を示す。

 バイデン米大統領は、経済制裁の枠内で外交による解決を主張してきたが、事態はここに至った。米国のINF(中距離核戦力)条約破棄で、東西双方から見捨てられたゴルバチョフだが、彼の至言「核戦争に勝利者はない」が、交渉の原点に据えられたのは救いだ。危機はウクライナからヨーロッパへと広がりかねない。ロシアは停戦の上、再浮上したウクライナの国是である中立化などの外交交渉につくべきだ。

 ◇しもとまい・のぶお 神奈川大学特別招聘教授(ロシア・ソ連政治) 48年生まれ。近著に『ソ連を崩壊させた男、エリツィン』。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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 古村治彦です。

 今回は、ロシアのウクライナ侵攻を国際関係論(International RelationsIR)の諸理論でどのように分析できるのかという論稿をご紹介する。著者のスティーヴン・M・ウォルトは、ハーヴァード大学の国際関係論の教授だ。私も翻訳作業に関わった『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1』の共著者だ(もう一人の著者はジョン・J・ミアシャイマー)。

 ウォルトは国際関係論の中のリアリズムに属する学者だ。今回の論稿では、国際関係論の諸理論を使うと、今回のロシアによるウクライナ侵攻について、どのように分析ができるかということを紹介している。その諸理論は大きく分けて4つのセクションである。それらは、(1)リアリズムとリベラリズム、(2)誤認と誤算、(3)戦争終結と関与問題、(4)経済制裁である。詳しくは論稿を読んでいただきたい。今回のロシアによるウクライナ侵攻に関して言えば、リアリズムで分析する方がより納得できるように思われる。リアリズムの方が悲観的な分析だったり予測になったりすることが多いが、現実というのは概して、期待よりも厳しい結果で終わることが世の常だ。

 現在の状況を見れば、ウクライナが優勢という状況ではないが、今であればまだウクライナにとってまだましな条件での停戦合意が達成できる可能性がある。ウクライナ軍とウクライナ国民の必死の抵抗もあり、ロシア軍は予想外の苦戦となっている。ウクライナの優先力闘は歴史に残る。しかし、EUNATOに即時加盟が許されないことに加えて、西側はお義理の支援しかできていない。ウクライナの抵抗力がどれほど継続できるかであるが、これも厳しいと見なければならない。

ロシア軍を食い止めている今こそ、交渉によって少しでもウクライナ側にとって有利な条件を引き出す(ロシアには犠牲やコストがもっと高まると認識させながら)、ということしかないように思われる。戦争のステージがよりは快適で致命的な段階に進むと、条件はより悪くなる。ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領がより戦略的で、現実的であれば、今回のような事態にまで追い込まれることはなかったと私は考える。2つの勢力に挟まれた中堅国・小国は2つの勢力とつながって、両者の角逐を利用するしかない。昨年までであればそれも可能だった。その点では残念ながら、世界のヒーローとなっているゼレンスキー大統領は旧穀の政治家となる能力が欠如していたと言わざるを得ない。

 今となっては、西側からのロシア軍の攻勢を止めて大逆転できるだけの重要な支援(飛行禁止区域の設定や戦闘機の供与)がないとなれば、後は如何に少しでも良い条件を引き出すかの段階となっている。

(貼り付けはじめ)

ウクライナでの戦争分析のための国際関係論の諸理論のガイド(An International Relations Theory Guide to the War in Ukraine

―どの理論が正当化され、どの理論が否定されるかについて考察する。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年3月8日

By Stephen M. Walt,

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/08/an-international-relations-theory-guide-to-ukraines-war/

世界は限りなく複雑であり、私たちは必然的に「世界はどのように動いているのか(how the world works)」ということについて、様々な信念や理論に基づいて、その意味を理解しようとする。全ての理論は単純化されたものであるため、国際政治に対する単一のアプローチを用いて、その時々に起こっている全てのことを説明したり、数週間後、数ヶ月後に何が起こるかを正確に予測したり、成功が保証されている正確な行動計画を提示したりすることはできない。しかし、ウクライナの悲劇がどのようにして起きたのか、現在起きていることのいくつかを説明し、複数の機会と潜在的な危険性について警告し、今後の広範な行動方針を示唆することは可能である。社会科学の最も優れた諸理論(the best social science theories)も粗雑(crude)であり、確立された規則(well-established regularities)にも常に例外(exceptions)があるため、賢明な分析者は複数の理論に目を向け、どの理論が私たちに何を教えてくれるのかについて一定の懐疑心(certain skepticism)を保ち続けるのである。

以上のことから、ウクライナの悲劇的な出来事について、よく知られた国際関係論(International RelationsIR)の諸理論は何を語っているのだろうか? どの理論が(少なくとも部分的には)正当(vindicated)であり、どの理論が不十分で(wanting)、危機が継続する中で重要な問題を浮き彫りにする可能性があるのだろうか? ここでは、この混乱について学者たちが何を語っているのか、一時的かつ不十分な包括的調査結果を紹介する。

●リアリズムとリベラリズム(Realism and Liberalism

私は客観的な観察者ではない。このような問題は国際政治におけるリアリズムに基づいた視点の永続的な妥当性(enduring relevance)を再確認させるものであることは明らかだ。最も一般的なレベルでは、全てのリアリズムに基づいた諸理論は、国家を互いに保護する機関や制度が存在せず、危険な侵略者が将来のある時点で自分たちを脅かすかもしれないと心配しなければならない世界について描いている。このような状況では、国家、特に諸大国(powers)は自国の安全保障について多くの懸念を持ち、力(power)を競わざるを得ない。残念ながら、こうした不安は時として国家に恐ろしい行動を取らせることがある。リアリズムを信奉する人々(realists)にとってみれば、ロシアのウクライナ侵攻は(2003年のアメリカのイラク侵攻は言うに及ばず)、大国が自国の安全保障の核心的利益が危ういと考える時、時として恐ろしく愚かな行動を取ることを思い知らされる。この教訓はそのような行動を正当化するものではないが、リアリズムを信奉する人々は道徳的な非難(moral condemnation)だけではそれを防ぐことはできないことを認識している。ハードパワー(hard power)、特に軍事力の妥当性をこれほど説得力のある形で示すものはないだろう。ポスト近代のドイツでさえ、そのメッセージを受け取ったようである。

残念なことに、この戦争はもう一つの古典的リアリズムの概念(concept)である「安全保障のジレンマ(security dilemma)」も示している。このジレンマは、ある国家が自国の安全性を高めるために取った措置が、しばしば他の国家の安全性を低下させることから発生する。A国は安全でないと感じ、同盟国を探したり、武器を買ったりする。B国はA国この動きを警戒し、それに対応する。お互いに疑惑が深まり、両国は以前より貧しく、安全でなくなってしまう。東欧諸国がロシアに対する長期的な懸念から、NATOに加盟したい(あるいはできるだけ加盟に近づけたい)と考えるのは、非常に合理的な行動だ。しかし、プーティン大統領に限らず、ロシアの指導者たちがこのような事態を憂慮した理由もまた容易に理解できるだろう。少なくともウクライナとグルジアに関しては、この賭けは失敗に終わったことは、今や悲劇的なまでに明らかである。

リアリズムのレンズを通してこれらの出来事を見ることは、ロシアの残忍で違法な行動を支持することではなく、単にそのような行動を、嘆かわしいが人間関係の中で繰り返される側面として認識することである。トゥキディデスからEH・カー、ハンス・J・モーゲンソー、ラインホールド・ニーバー、ケネス・ウォルツ、ロバート・ギルピン、ジョン・ミアシャイマーまでのリアリズムを信奉する人々は、世界政治の悲劇的な特性を非難する。それと同時に、ある国が他の国が重要利益と見なすものを脅かすときに生じる危険性などを含む、リアリズムが強調する国際政治にかかわる複数の危険性から目を背けてはいけないと警告を発している。リアリズムを信奉する人々が過度の理想主義的外交政策の傲慢さと危険性を強調してきたことは、決して偶然の産物ではない。理想主義的外交政策がヴェトナム戦争、2003年のイラク侵攻、NATOの単純な拡大路線を生み出した。しかし、悲しいことに、いずれの場合も、彼らの警告は無視され、その後の出来事によって正しさが証明されることになった。

ロシアの侵攻に対する極めて迅速な対応は、同盟政治(alliance politics)に対するリアリズム的な理解と一致する。価値観の共有は同盟をより強固で永続的なものにするが、集団防衛(collective defense)への真剣な関与は、主として共通の脅威に対する認識(perceptions of a common threat)から生まれる。脅威のレベルは、パワー(power)、近接性(proximity)、攻撃的能力(offensive capabilities)と攻撃的意図(aggressive intentions)を持つ敵対者の機能である。これらの要素は、冷戦時代にソヴィエト連邦がヨーロッパとアジアで強力な対ソ均衡連合(balancing coalition)に直面した理由を説明するのに大いに役立つ。ソ連は大規模な工業経済を持ち、その帝国は他の多くの国々と国境を接しており、その軍事力は大規模で主に攻撃作戦用に設計されていた。そして、ソ連は高度な修正主義の野心(すなわち、共産主義の普及)を持っているように見られた。今日のロシアの行動は西側諸国の脅威に対する認識を劇的に高め、その結果、ほんの数週間前にはほとんど誰も予想できなかったような均衡を保つ行動が見られるようになった。

対照的に、ここ数十年の欧米の外交政策に大きな影響を与えた主要な複数のリベラリズムに基づいた理論では、分析はうまくできないできている。政治哲学としての自由主義は、社会を構成するための立派な基礎であり、そのような価値観がまだ支配的な社会に住んでいることに、私は深く感謝している。また、欧米社会が権威主義的な衝動に駆られた後、自由主義の美点を再発見していることは心強い。しかし、世界政治へのアプローチや外交政策の指針としては、自由主義の欠点が再び露呈している。

過去と同様、国際法(international law)と国際制度(international institutions)は、大国の強引な行動に対して脆弱な障壁(weak barrier to rapacious great-power behavior)でしかないことが証明された。経済的な相互依存(economic interdependence)は、モスクワが結果として直面する相当なコストにもかかわらず、侵略開始を阻止できなかった。ソフトパワー(soft power)はロシアの戦車を止めることができなかったし、国連総会(U.N. General Assembly)が141対5(棄権35)で侵略を非難する大多数が賛成する投票を行ったとしても大した影響はないだろう。

私が以前にも述べたように、今回の戦争は、ヨーロッパで戦争はもはや「考えられない」(no longer “thinkable”)という信念と、それに関連してNATOを東に拡大すれば「平和地域(zone of peace)」はますます広がっていくという主張を打ち砕いた。誤解を恐れずに言えば、その夢は実現すれば素晴らしいことだが、その可能性は決して高くはなかったし、その追求の仕方が傲慢だったことを考えれば、なおさらである。驚くにはあたらないが、リベラル派の話を信じ喧伝していた人々は、今や全ての責任をロシアのプーティン大統領に押し付け、彼の違法な侵略がNATOの拡大とは全く関係がないことを「証明(proves)」していると主張したいのだ。また、西側諸国の政策の行く末を正しく予見していた専門家たちに対して、愚かな暴言を吐いている者もいる。こうした歴史の書き換えの試みは、誤りを認めたがらない、あるいは自らの責任を追及したがらない外交政策エリートの典型的な動きだ。

プーティンが侵略の直接的な責任を負っていることは疑いようもなく、彼の行動は私たちができる限りの非難を受けるに値する。しかし、ロシアの度重なる抗議と警告を無視し、その結果をほとんど考慮せずにヨーロッパで修正主義的なプログラム(revisionist program)を押し進め続けたリベラル派のイデオローグたちに罪はないとは言い切れない。彼らの動機は完全に善意であったかもしれないが、彼らが採用した政策が、彼らが意図し、期待し、約束したものとは正反対の結果を生み出したことは明らかだ。そして、「過去に何度も何度も警告を受けたなんてことはないのだ」と言うことは不可能なのだ。

制度の役割を強調するリベラリズムの諸理論は、今回の欧米諸国の迅速かつ驚くほど統一された対応を理解する上で、いくらか役に立つものだ。このような迅速な対応は、アメリカとNATOの同盟諸国が、特に鮮明で残酷な方法で挑戦されている一連の政治的価値(political values)を共有していることが一因である。更に重要なことは、もしNATOのような機関が存在せず、ゼロから対応を組織化しなければならなかったとしたら、これほど迅速で効果的な対応は考えにくいということだ。国際機関は、根本的な利害の対立を解決したり、大国が好き勝手に行動するのを止めたりすることはできないが、諸国家の利害がほぼ一致している場合には、より効果的な集団的対応(more effective collective responses)を促進することができる。

リアリズムは、私たちが現在直面している厳しい状況への全体的な指針としては最適かもしれないが、その全体の物語内容を語ることはできない。例えば、リアルタイムを信奉する人々は、大国の行動に対する強い制約(strong constraints)としての規範(norms)の役割を当然ながら軽視する。しかし、今回のロシアの侵攻に対する世界の反応を説明する上で規範は一定の役割を果たした。プーティンは武力行使に関する規範(国連憲章[U.N. Charter]など)のほとんどを踏みにじっており、それが世界の多くの国、企業、個人がロシアの行動を厳しく判断し、激しく反応した理由の一つである。国際規範に違反することを止めることはできないが、明確であからさまな違反は、その国の意図が他者からどのように判断されるかに必ず影響を与える。今後、ロシア軍がさらに残忍な行動をとれば、ロシアを孤立させ、排斥しようとする現在の努力はさらに強まるに違いない。

●誤認と誤算(Misperception and Miscalculation

また、誤認(misperception)や誤算(miscalculation)の役割を考慮せずにこれらの事象を理解することは不可能だ。リアリズムの諸理論は、国家を、自国の利益を冷静に計算し、相対的な地位を向上させる機会をうかがう、多かれ少なかれ合理的な行為者(rational actors)として描く傾向があるため、ここではあまり役に立たない。その仮定がほぼ正しいとしても、政府や個々の指導者は不完全な情報(imperfect information)の中で活動しており、自らの能力、他者の能力や反応を簡単に見誤ってしまう可能性が存在する。情報が豊富であっても、心理的、文化的、あるいは官僚的な理由で認識や判断が偏ることがある。不完全な人間で満たされた不確実な世界では、物事を誤る方法はいくらでも存在するのだ。

特に、誤認に関する膨大な文献、特に故ロバート・ジャーヴィスの代表的な研究は、この戦争について多くのことを教えてくれる。プーティンがいくつかの側面で大きな誤算を犯したことは、今や明らかなようだ。西側のロシアに対する敵意を過大評価し(exaggerated)、ウクライナの決意を著しく過小評価し(underestimated)、自軍の迅速でコストのかからない勝利の能力を過大評価し、西側の反応を読み違えた(misread)。今回の場合に機能しているように見える恐怖感と自信過剰の混合こそは典型的な具体例となる。国家は、自分たちの目的を迅速かつ比較的低いコストで達成できると確信しない限り、戦争を始めないというのは、ほとんど真理と言える。長く、血なまぐさい、費用のかかる、そして敗北に終わりそうな戦争など誰も始めない。更に言えば、人間はトレードオフを扱うのが苦手なため、いったん戦争が必要だと判断すると、戦争を実行可能だと考える強い傾向がある。ジャーヴィスがかつて書いたように、「意思決定者が自分の政策を必要だと考えるようになると、その政策は成功すると信じるようになる。そのような結論に至るには他の人々が正しい情報の歪曲が必要であっても成功を確信する」可能性が高い。意思決定プロセス(decision-making process)から反対意見を排除してしまう(dissenting voices are excluded)と、この傾向は更に悪化する。その理由は、輪の中にいる全員が同じ欠陥のある世界観を共有している、もしくは部下が上司に間違っているかもしれないと言いたがらないことである。

人間は利益を得るよりも損失を避けるためにリスクを取るというプロスペクト理論(prospect theory)が、ここでも働いているのかもしれない。プーティンが、ウクライナが徐々にアメリカやNATOと協調していくと考えていたのなら(そう考える十分な理由があった)、取り返しのつかない損失(irretrievable loss)を防ぐことは、大きなサイコロを振る価値があるのかもしれない。同様に、帰属バイアス(attribution bias)(自分の行動は状況への対応とみなし、他人の行動はその基本的な性質に起因するとみなす傾向)もおそらく関係している。西側諸国の多くは、ロシアの行動を、プーティンの不愉快な性格の反映であり、決して西側諸国のこれまでの行動に対する反応ではないと解釈している。プーティンは、アメリカとNATOの行動は、生来の傲慢さ(innate arrogance)とロシアを弱体化させないという根深い願望からきており、ウクライナ人がロシアに抵抗しているのは幻惑されている(being misled)か、「ファシスト(fascist)」の影響下にあるからだと考えているようだ。

●戦争終結と関与問題(War Termination and the Commitment Problem

現代の国際関係論理論はまた、関与問題の広範な役割を強調している。無政府状態の世界(world of anarchy)において、国家は互いに約束を交わすことができるが、それが実行されるかどうかは確証がない。例えば、NATOがウクライナの加盟を永久に見送ると申し出ることができたが(戦争前の数週間はそうしなかったが)、プーティンはワシントンやブリュッセルがその約束を文書化してもNATOを信じていなかったかもしれない。条約は重要だが、結局は紙切れに過ぎない。

更に言えば、戦争終結に関する学術的な文献によれば、戦争当事者が予想を修正し、戦闘を終わらせようとしているときでさえ、関与問題が大きな障害となる。もしプーティンが明日にでもウクライナから撤退し、ロシア正教の聖書の束の上に手を置いて、ウクライナを永遠に放置すると誓ったとしても、ウクライナでもヨーロッパでもアメリカでも、プーティンの保証をそのまま受け取る人はほとんどいないだろう。また、内戦では利害関係のある外部の人間が平和的な解決(peace settlements)を保証することもあるが、この場合は、合意しても将来の違反者を処罰すると脅すことのできる外部勢力(external power)は存在しない。無条件降伏(unconditional surrender)をしない限り、戦争を終わらせるための協定は、当事者全てに十分な満足を与え、状況が好転し次第、協定を変更したり放棄したりしたいとひそかに願わないようにする必要がある。また、たとえ一方が完全に降伏したとしても、「勝者の平和(victor’s peace)」を押し付けることは、将来の報復主義(future revanchism)発生の種をまくことになりかねない。悲しいことだが、私たちは今日、いかなる種類の交渉による解決からも遠ざかっているように思われる。

更に言えば、フレッド・イクレの古典的な研究『全ての戦争は終わらなければならない(Every War Must End)』やサラ・クロコの『どんな代償を払う平和か?:指導者の責任と戦争終結をめぐる国内政治(Peace at What Price?: Leader Culpability and the Domestic Politics of War Termination)』など、この問題についての他の研究は、戦争終結を難しくしている国内の障害に注目している。愛国心(patriotism)、プロパガンダ(propaganda)、サンクコスト(sunk costs)、そして敵に対する憎悪の増大(ever-growing hatred of the enemy)の結合が、態度を硬化させ、合理的な国家が戦争停止を宣言した後も戦争を継続させるのである。この問題の重要な要素は、イクレが「タカ派の反逆(treasons of the hawks)」と呼んだものである。それは次のようなものだ。戦争終結に賛成する人々は、しばしば非国民あるいはそれ以上の存在として排除されるが、不必要に戦争を長引かせる強硬派(hard-liners)は、最終的に、彼らが守ろうとしている国家に対してより大きな損害を与えるかもしれない。「タカ派の反逆」という言葉について、モスクワにロシア語訳があるのかどうか私には分からない。しかし、この言葉をウクライナに当てはめると、失敗した戦争を始めた指導者は、自分たちの誤りを認めて戦争を終結させることを望まないか、できないかもしれない、という心配がある。もしそうなら、戦争の最初の決断に縛られない新しい指導者が現れて初めて、戦闘は終結することになる。

しかし、もう一つの問題がある。敗戦(defeat)と体制転換(regime change)に直面した独裁者たちは、「大逆転のためのギャンブル(gamble for resurrection)」に魅力を感じるかもしれない。外交政策に失敗した民主政治体制国家の指導者たちは、次の選挙で政権を追われることはあっても、その失敗や犯罪のために投獄やそれ以上の事態に直面することは、ほとんどない。これに対して独裁者たちが特に戦後の戦争犯罪の訴追(postwar prosecution for war crimes)を恐れる世界では、簡単に退陣する選択肢は存在しない。したがって、もし彼らが負けているならば、圧倒的な敗戦の可能性に直面しても戦い続けるか、エスカレートさせる動機がある。それは、運命を逆転させ、失脚、投獄、死を免れる奇跡を期待するためである。このような賭けが功を奏することもあれば(例:バッシャール・アル・アサド)、そうでないこともある(例:アドルフ・ヒトラー、ムアンマル・アル・カダフィ)。しかし、奇跡を期待して更なる行動を取るインセンティブは、戦争の終結を想像以上に難しくすることになるのだ。

これらの洞察は、私たちが何を望むかについて、非常に慎重であるべきだということを思い出させる。プーティンを罰し、屈辱を与えたいと思う気持ちは理解できる。しかし、核保有国の独裁的指導者を窮地に追い込むことは、彼の過去の行動がいかに凶悪であったとしても、極めて危険なことである。そのため、プーティンの暗殺を要求したり、一般のロシア人に対して立ち上がってプーティンを打倒しなければ責任を取らされると公言したりする西側諸国の人々は、危険なほどに無責任である。タレーランの忠告は覚えておくに越したことはない。「結局のところ、熱意がありすぎないことが大事だ(Above all, not too much zeal.)」。

●経済制裁(Economic Sanctions

経済制裁がどのように効果を発揮するかについて理解しようとしている人は誰でも、経済制裁に関する先行研究文献(literature on economic sanctions)も勉強しておく必要がある。一方では、先週行われた金融制裁(financial sanctions)は、アメリカが他の重要な経済大国と協調して行動する場合、特に「相互依存を武器にする(weaponize interdependence)」特別な能力があることを思い起こさせるものだ。他方で、相当量の真面目な学問研究の結果は、経済制裁が国家に迅速に軌道修正を強いることはほとんどないことを示している。トランプ政権のイランに対する「最大限の圧力(maximum pressure)」作戦の失敗も、その明らかな事例である。支配的なエリートは、通常、制裁の直接的な影響から隔離されている。プーティンは経済制裁が行われることをあらかじめ分かっていたであろうし、地政学的な利益(geopolitical interests)にはそれを甘受するだけの価値があると信じていたのだろう。プーティンは経済的圧力の速度と範囲に驚き、落胆したかもしれないが、モスクワがすぐに方針を転換するとは誰も思わないはずだ。

これらの例は、現代の国際関係論がこれらの出来事の理解に貢献しうるものの表面をひっかいているに過ぎない。抑止力(deterrence)と強制力(coercion)に関する膨大な文献、水平(horizontal)・垂直(vertical)エスカレーションの力学(dynamics)に関する重要な著作、文化的要素(男らしさ[masculinity]の概念、特にプーティン自身のマッチョな「人格崇拝(personality cult)」を含む)を考慮することで得られるかもしれない洞察については言及していない。

要するに、国際関係の学術文献は、私たちが直面している状況について多くのことを語っている。しかし、残念なことに、知識のある学者が公共の場で考えを述べたとしても、権力の地位にある者は誰もそれに注意を払わないだろう。政治において、特に危機の時期において、時間は最も希少な資源である。ジェイク・サリヴァンやアントニー・ブリンケン、そして彼らの部下たちは、専門誌の『インターナショナル・セキュリティ』誌や『ジャーナル・オブ・コンフリクト・リゾリューション』誌のバックナンバーを読み返し、良い情報を見つけようとはしないのである。

また、戦争には独自の論理(logic)があり、言論の自由(freedom of speech)と開かれた議論(open debate)が維持されている社会であっても、様々な声をかき消す傾向のある政治的な力を解き放つのである。戦時中は利害が一致するため、公務員、メディア、市民は、固定観念にとらわれず、冷静かつ慎重に考え、誇張や単純化した決まり文句を避け、何よりも自分たちが間違っているかもしれない、別の行動が必要だという可能性にオープンであるべきなのである。しかし、ひとたび弾丸が飛び交い始めると、視野が狭くなり、マニ教的思考様式(Manichaean modes of thought)に急速に陥り、反対意見を疎外または抑圧し、ニュアンスを捨て、何が何でも勝利することに固執するのが常である。この過程は、プーティンのロシア国内でも進行しているようだが、西側諸国でも穏やかな形が見られる。結局のところ、これは酷い状況を更に悪化させるレシピとなるのだ。

(貼り付け終わり)
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 古村治彦です。

 ロシアによるウクライナ侵攻は2週間ほどが経過し、ロシア軍の苦戦、ウクライナ軍とウクライナ国民の必死の抵抗が伝えられながら、事態はウクライナ側にとっては好転していない状況となっている。ウクライナ軍とウクライナ国民の戦いは歴史に残るものだ。しかし、ウクライナ軍の装備や武器、練度をロシア軍と比較するならば、劣勢に立たされているのも事実だ。ウクライナ軍とウクライナ国民が必死に抵抗を続ける中で、ウクライナ政府は、EUNATOをはじめとする西側諸国からの局面を打開する支援を求めている。飛行禁止区域の設定、更にはより強力な武器の供与を求めている。しかし、それらはことごとく、撥ねつけられている。率直なことを言えば、西側諸国は口では頑張れ頑張れと調子の良いことを言いながら、ウクライナを見捨てている。

 西側諸国を口先だけと責めることは簡単だ。しかし、もしアメリカ軍の将兵が派遣され、ロシア兵と交戦し、双方に犠牲者が出る場合、事態をコントロールして無事に終わらせることが確実ではなく、事態がエスカレートするという可能性も十分に考えられ、そうなれば第三次世界大戦となり、核戦争にまで発展するということもあり得る。そのリスクを西側諸国は追うことはできない。何とも厳しいジレンマに陥ってしまうが、それでも世界大戦を回避する方向に進むのが慎重な判断ということになる。

 下に貼り付けた一連の記事を見れば、イギリスがとんだ頓馬っぷりを遺憾なく発揮していることは明らかだ。他の西側諸国は慎重に行動しているが、イギリスはぱーぱー口先だけで勇ましい。それでコモンウェルスだ、大英帝国だとは笑止千万でしかない。ウクライナのゼレンスキー大統領はイギリス議会でインターネットを通じて演説を行ったようだが、そのセリフはウィンストン・チャーチルの有名な演説の一節をオマージュしたもので、それほどにイギリスに気を遣って頼っているが、イギリスは口だけだ。昔からそうだ。現在の中東情勢にしても、イギリスが原因を作ったようなものだし、もっと言えば、イギリスが現在の世界の紛争のいくつかの原因を作っている。

 今回、戦闘機も供与できない、飛行禁止区域を設定することもできないとなれば、ウクライナ側の劣勢を逆転する方法を見つけることはかなり難しい。ロシア軍に出血を強要して時間を稼ぐということしかないが、そうなればどれほどの犠牲と破壊が生じるかということを考えると、勇ましいだけが国家指導者の姿勢ではない。交渉の条件と戦いの潮時、そして何よりも国民の犠牲を考慮し判断を下すしかない。残念なことだがウクライナのゼレンスキー大統領は西側から逆転のための支援は期待できない。その点は大統領自身も分かっていると思う。後は彼がどのように判断し、決断を下すかだ。

(貼り付けはじめ)

●「米、ウクライナへの戦闘機提供を断念 ロシアとの緊張高めると判断」

3/10() 6:30配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/32f69c7a5834c677d699293fe2c052e87166a885

 米国防総省のカービー報道官は9日、ポーランドが保有する旧ソ連製の戦闘機をウクライナに提供する計画への関与を断念する考えを表明した。ウクライナへの侵攻を続けるロシアとの緊張を高めるリスクが高いと判断したという。

【写真】ロシアの戦闘機。最新鋭の装備を持つのに、なぜ今も制空権を奪えないのか? 元米軍パイロットの分析は

 オースティン米国防長官が同日、ポーランドの国防相と協議し、米政府として戦闘機を提供する計画を「支持しない」と伝えた。ウクライナは戦闘機の提供を強く求めてきたが、これで計画は白紙となった。

 米国とポーランドの間では、ポーランドが保有する旧ソ連戦闘機「ミグ29」をウクライナに送る計画が検討されていた。だが双方とも、ウクライナへの提供役を担うことでロシアからの反発を呼ぶと懸念し、具体的な運搬ルートを決められずにいた。

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●「ウクライナ大統領、ポーランド戦闘機の早期供与訴え 独加は反対」

3/10() 1:28配信

AFPBB News

https://news.yahoo.co.jp/articles/4b7490a61b9beaa2d73a0d39f7b434d609308cfa

AFP=時事】ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は9日、同国に戦闘機を供与するというポーランドの申し出について、早急に結論を出すように西側諸国に求めた。ただドイツとカナダは、この提案について否定的な見方を示した。

 ゼレンスキー氏はメッセージアプリのテレグラム(Telegram)で配信した動画で、「いつ決めるのか? われわれは戦争中なのだ」と述べ、決断を急ぎ戦闘機を送るよう訴えた。

 欧米の同盟諸国は、ウクライナに対戦車ミサイルや対空ミサイルなどの兵器を供与しているが、戦闘機についてはロシアとの対立拡大を恐れて供与に踏み切っていない。

 ポーランドは、同国保有の旧ソ連製戦闘機「ミグ29MiG29)」を独南西部ラムシュタイン(Ramstein)にある米空軍基地を経由してウクライナに輸送し、見返りに米国製戦闘機「F16」を受け取る案を提示。だが米国は8日、この提案を拒否していた。

 ドイツのオラフ・ショルツ(Olaf Scholz)首相は9日、首都ベルリンでカナダのジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相と開いた共同記者会見で、戦闘機供与に反対の姿勢を表明。トルドー氏も、戦争を「拡大・悪化」させる恐れがあると警告した。【翻訳編集】 AFPBB News

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●「英「ポーランドを支援」 ウクライナへの戦闘機提供で」

3/8()  時事通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/40e553bc8c368962d1bc4351c475cf246605642e

 【ロンドン時事】英国のウォレス国防相は8日、ポーランドがウクライナに戦闘機を提供すると決定した場合はそれを支援すると明言した。

 ロシア軍の侵攻を受けるウクライナへの軍事支援をめぐっては、ポーランドが米国からF16戦闘機を取得する見返りに、旧ソ連製の航空機をウクライナに送る計画が検討されている。

 国防相はスカイニューズとのインタビューで、「ポーランドがどんな選択をしても支援する。同じ北大西洋条約機構(NATO)加盟国として、ポーランドの側に立つ」と表明。一方、ウクライナに戦闘機を供与すれば「ポーランドがロシアやベラルーシとの直接の戦闘に巻き込まれる可能性もある」と述べ、実施に当たっては細心の配慮を払う必要があるとの認識も示した。 

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●「ウクライナ大統領、西側諸国の「約束」不履行を非難」

3/8() 20:38配信

AFP=時事

https://news.yahoo.co.jp/articles/ef4a7bc265a6720e4064753eec6488bc9b5fdd15

AFP=時事】ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は8日、ロシアの攻撃からウクライナを防衛するため西側諸国が行った「約束」が守られていないと非難した。

 大統領はテレグラム(Telegram)で配信した動画で「13日間、われわれは約束を聞き続けてきた。13日間、防空支援を受けられる、航空機が提供されると言われ続けてきた」と述べた。

 状況の打開につながっていないことについて大統領は、「その責任は、13日間で決断を下せなかった西側諸国の人々」や、「ウクライナ領空をロシアの暗殺者から守れていない人々」にもあると指摘した。【翻訳編集】 AFPBB News

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 今回のロシアによるウクライナ侵攻について様々な分析がなされている。「冷戦の戦後処理の失敗」という分析があることは既にご紹介したが、その冷戦の戦後処理の失敗によって、第二次世界大戦後に作られた国際秩序が動揺しているとする分析記事をご紹介する。

 冷戦終結後、アメリカ一人勝ちの世界、超大国アメリカ一極体制(unipolar system)が構築された。1990年代の「歴史の終わり時代」は、資本主義とデモクラシーの優越性を過度に喧伝し、「アメリカ型のシステム」の拡散が盛んにおこなわれた。「世界中がアメリカのようになれば皆が幸せになれる」という無邪気な幻想がふりまかれた。

 その幻想を打ち砕いたのは2001年のアメリカ同時多発テロ事件だった。チャルマーズ・ジョンソンはこのアメリカへの攻撃を「ブローバック(blowback)」と呼んだ。アメリカの介入主義に対する、介入されて社会や経済を壊された側からの「反撃」だった。

 今回のロシアによるウクライナ侵攻もこの「ブローバック」という点からも分析ができる。冷戦終結後のロシアは徹底的に馬鹿にされ続けた。「お前らバカだから共産主義なんてやってよ、それで第二次世界大戦後には散々アメリカに迷惑をかけてよ、それで負けて様ねぇぜ」ということになった。ロシア人たちからしてみれば、ロシアの偉大さとソ連の過ちは別物だと言いたかっただろうが、ロシア人たちの言葉をまともに受け止める人などいなかった。ロシアは世界の半分を支配した共産主義帝国から解体され、経済力も落ちた。しかし、ソ連と共産主義は負けたが、ロシアは負けていないということでナショナリズムが勃興していった。ここでロシアのプライドもある程度尊重し、ロシアの程度に合わせた改革を西側が進めていればここまでの事態にはなっていなかっただろう。

 プーティン率いるロシアは第二次世界大戦後の秩序に挑戦する姿勢を取るようになった。世界の安定に対する不安要因という位置づけになった。そして、今回のウクライナ侵攻である。ウクライナ侵攻は世界を震撼させた。そして、NATOだ、EUだと対ロシアの地域的な国際機関を作っていてもいざとなれば全く役に立たないということを露呈させた。また、国連においては中露が安保理常任理事国である限り、実効性のある措置を取ることができないということも明らかになった。ロシアが暴発したという見方ではロシアにだけ責任があることになるが、ロシアを暴発させたという見方に立つと、ロシアをさんざん愚弄し、挑発し、不安感を与えてきた西側諸国にも今回の事態に対して責任があるということになる。

 中露との対決姿勢だけでは今回の事態、そしてこれから予想される厳しい状況を乗り切ることができない。中露をはじめとする国々を排除して国際社会を形成することはできない。西側諸国は外交におけるリアリズムへと進む方針を固め、戦略的に共存する道を模索する道を選ばねば、その先に待っているのは破滅である。

(貼り付けはじめ)

プーティンの戦争は西側にとって第二次世界大戦後の最大の試練なるのはどうしてか(Why Putin’s War Is the West’s Biggest Test Since World War II

―ロシアのウクライナ侵攻は、世界的なインパクトを最大限にするために計画されたものであることがよく分かる。

マイケル・ハーシュ筆

2022年2月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/02/24/russia-ukraine-war-west-world-war-2/

民主政治体制の西側諸国にとって、ロシアのウラジミール・プーティン大統領によるウクライナへの本格的な侵攻は、ナチス・ドイツが降伏して以来77年間、その力と誠実さが試される最大の試練である。それは、ロシアは核兵器を保有しており、プーティンは西側が反撃した場合、核兵器を使用する可能性も示唆しているからだ。ある意味、プーティンの作戦はアドルフ・ヒトラーよりも大きな試練になるかもしれない。

ブルッキングス研究所の欧州関係専門家コンスタンツェ・シュテルゼンミューラーは次のように述べた。「プーティンは、もし私たちがウクライナを助けようとするなら、核兵器を使うと脅した。これは事実上、冷戦後の取り決め(post-Cold War arrangement)の終わりを意味する。ウクライナへの攻撃は、ヨーロッパや大西洋を越えて、私たち全員への攻撃であることを理解しなければならない」。

第二次世界大戦後、アメリカとその同盟諸国は、再び大規模な戦争が起こらないようにするために、平和維持と経済に関する制度を導入した。この制度は80年近く、冷戦時代においても、かなり効果的に機能してきた。しかし、今、このシステムは最大の難題に直面している。それは、プーティンが国連安全保障理事会(the United Nations Security Council)の拒否権(veto)によって、国際連合(United Nations)を国際連盟(League of Nations)へといとも簡単に変えてしまおうとしているからだ。国際連盟は、1930年代にアドルフ・ヒトラーやイタリアのファシスト、ベニート・ムッソリーニが世界の舞台において嘲笑した、何の力も持たないただの話し相手だった。

シュテルゼンミューラーをはじめとする複数の専門家は、中国やインドなどこれまでプーティンに好意的だったいくつかの国々も含め、全ての大国はある種の態度を取ることを余儀なくされるだろうと確信している。中国やインドはこれまで、プーティンのウクライナやグルジアなどのロシアの周辺諸国への侵攻を批判することに消極的であった。ヨーロッパ諸国、特にドイツにとっては、重要なインフラ、特にエネルギー面でのロシアへの依存を見直す時期に来ている。

第二次世界大戦後の世界で起きた深刻な危機のほとんどは、プーティンが仕掛けた今回の出来事に比べれば、比較的小さな出来事のように見える。1956年、ソ連がハンガリーに侵攻した際、アイゼンハワー大統領は介入することなく、そのためにアメリカ国内で批判を浴びたが、当時の世界は東と西に大きく分かれていた。冷戦の真っ只中であり、孤立した東欧諸国をソ連が完全に支配していたため、ハンガリーへのロシアの侵攻を止める国際システムは存在しなった。1968年の「プラハの春」でも、ソ連はワルシャワ条約機構との共同作戦の体裁をとって、プラハを攻撃し、破壊した。

1990年、イラクの独裁者サダム・フセインがクウェートに侵攻した際、ジョージ・HW・ブッシュ大統領はフセインに対する国連安保理決議(U.N. Security Council resolutions)を使い、多国籍軍(multinational force)を動員し、フセインを国際社会から完全に孤立させた。ユーゴスラビアの独裁者スロボダン・ミロシェビッチはボスニアとコソボのイスラム教徒に対する大量虐殺を行ったが、この時はロシアが主に傍観し、コソボの場合は外交的解決に協力したくらいである。

結局、それぞれの危機は、酷いものだったが、限定されたものにとどまった。今回の危機はもっと広範囲に及ぶと思われる。元米国務省高官でハーヴァード大学の研究者であるジョセフ・ナイは、「隣国の領土を武力で奪わないという1945年以降の規範は過去に曲げられたこと(bent)があるが、今回はむしろ壊れている(broken)ように見える」と述べた。

1930年代のヒトラーとのもう一つの類似点は、プーティンが神話と事実を織り交ぜた妄想に基づいて行動していることだ。ナチスの独裁者ヒットラーは、ドイツ語圏の民族を統一し、ヴェルサイユ条約の不正を解消するという考えに基づいて、非武装化されたラインラントの占領やオーストリア・アンシュルス(ドイツとオーストリアの合邦国)のような初期の動きを正当化した。同様に、プーティンはウクライナやグルジアなどの旧ソ連圏のロシア語圏の民族の長い歴史や、NATOの旧ソ連圏への東方拡大について語ることを常にしている。

モスクワが大規模な攻撃を仕掛けてきたため、世界中の指導者たちが強硬な対応を行うと表明している。

プーティンはまた、ロシアを過去の帝国の偉大さ、全盛期のソビエト連邦のレヴェルにまで回復させるという彼の長年の野望を実現するための機が熟したと計算しているようだ。プーティンは2014年にクリミアを併合し、ウクライナのドンバス地方を一部占領した最初の侵攻以来、ロシアに対する制裁の効果を分析評価し、耐えられると判断したのだ。そして、今行動しなければ、ウクライナがNATO加盟という野望を実現し、北大西洋条約第5条により、西側諸国による軍事的対応を義務付けられるかもしれないと判断したようだ。

ロシア大統領プーティンも、ロシアがエネルギー輸出を除けば、中国など他の主要国に比べて世界経済への統合が進んでいないことを自覚しているはずだ。かつてジョン・マケイン連邦上院議員はロシアを「国の仮面をかぶったガソリンスタンド(gas station masquerading as a country.)」と揶揄した。

元米国国務副長官で、現在はジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究所(SAIS)の学長を務めるジェームズ・スタインバーグは、ロシアが経済的に比較的孤立しているため、「私たちの影響力ははるかに小さい。プーティンは、石油とガスが必要だから、いずれ人々が買い戻しに来ることを期待しているのだろう。彼はこのことについて考え抜いていると思う」と語った。

結局のところ、プーティンは核抑止力の他に、強力なサイバー能力を構築していることを知っている。2022年1月下旬、CNNはアメリカ国土安全保障省の情報速報について取り上げ、ロシアのウクライナ侵攻に対するアメリカやNATOの対応がロシアの「長期的な国家安全保障」を脅かすと見なされた場合、モスクワはアメリカ本土への大規模なサイバー攻撃で対応するかもしれないと報じている。CNNは、「ロシアは、アメリカのネットワークに対して、低レヴェルのサーヴィス拒否から重要インフラを標的とした破壊的な攻撃まで、さまざまな攻撃的サイバーツールを保持している」と報じている。

しかし、明るい兆しも見られる。ナショナリズムが多くの国々を巻き込み、国際協力が停滞している今、プーティンの攻撃は、ジョー・バイデン米大統領が就任後の主要目標の1つとした、民主的統一の必要性をあらためて認識させる機会となり得る。木曜日の発言でバイデン大統領は、アメリカとNATOの長期的な対応は、ロシアの指導者、企業、銀行に対する厳しい制裁を通じて、ロシアの軍事力と経済力を低下させることであると述べた。彼は、プーティンの侵攻を「世界平和を支える原理そのものへの攻撃(assault on the very principles that uphold the global peace)」と呼んだ。

現時点では、その考えが分からない男プーティンの行動に多くを依存し、彼が合理的に行動しているのかどうかという疑問も残る。しかし、少なくともプーティンンは、西側諸国と戦後の国際システムを、かつて試されたことのない限界まで追い詰めようとしている。スタインバーグは「これは第二次世界大戦以降に構築されたものの限界を認識するための警鐘(wake-up call)だ」と発言した。

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