古村治彦です。
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ジョン・ボルトン回顧録 (仮)
 ドナルド・トランプ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたジョン・ボルトンの回顧録“
The Room Where It Happened”の日本語版は9月に発売される。アメリカでは既に中身の一部が報道され、議論を呼んでいる。トランプ政権側は「国家安全保障上の機密をばらすもの」として批判しているし、トランプ政権を批判する側は「これらの内容は本来は大統領弾劾手続きの時に議会で証言すべきものだったのに、金儲けのために証言を拒んだ」と批判している。

 内容はトランプ大統領が「危なっかしいど素人」で「無能」な人間で、汚い言葉である「頭の先までクソが詰まっている」人物であるということが事細かに書かれている。

ボルトンは、自身のカウンターパートである、谷内正太郎(やちしょうたろう、1944年-)国家安全保障局長・内閣特別顧問とよく会っている。それらのことを正確に記述しているので、本書は2016年以降の安倍政権下での日米関係史の資料ということになる。

特に北朝鮮との非核化をめぐる首脳会談の時期ということもあり、谷内は日本側の懸念をボルトンに伝えている。また、在日米軍の駐留コストの負担増額についても話をしている。また、安倍晋三首相のイラン訪問の前後、谷内はボルトンに対して、安倍首相のイランでの会談で話すべきポイントについても伝えている。ボルトンは、日本は同じ非核化という問題について、北朝鮮に対しては強硬姿勢(現実的な脅威として)、イランに対しては柔軟姿勢(石油のことがあるから)を取っているとしている。

 訳書は脚注や索引を入れれば700ページ近くになるのではないかと思う。それでも何があったのかを知るには興味深い一冊となるだろう。

(貼り付けはじめ)

ボルトンの暴露によってトランプは嘲りの対象に(Bolton exposé makes Trump figure of mockery

ナイオール・スタンジ筆

2020年6月17日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/503287-the-memo-bolton-expose-makes-trump-figure-of-mockery

ジョン・ボルトンにとって、トランプ大統領に対する最も効果的な武器は単純だが、荒々しいものである。それは嘲りだ。

『ニューヨーク・タイムズ』紙は水曜日午後、前国家安全保障問題担当大統領補佐官の最新刊の内容に詳しく報じた。その他のメディアもすぐにそれに続いた。最新刊の内容に関する詳細な紹介によってすぐに論争が起きた。

ボルトンの説明によると、ある時、トランプ大統領はフィンランドがロシアの一部なのかどうかを質問したことあったそうだ。トランプ大統領はイギリスが核兵器を保有していることを知らなかった。トランプ大統領は、エルトン・ジョンのCD「ロケットマン」にエルトン・ジョンのサインをつけたものを北朝鮮の指導者金正恩に送りつけたいと熱望していた。

トランプ大統領はあまりにも無謀で向こう見ずなので、国務長官だったレックス・ティラーソンと国防長官を務めたジェイムズ・マティスの後見が必要なほどだった、とボルトンは述べている。ボルトンはティラーソンとマティスについて、「大人の枢軸(the axis of adults)」と呼んだとされている。

ボルトンはトランプ大統領を馬鹿者と評したが、これは政治的に言えば、より鋭利なダーツの矢ということになるだろう。この言葉は、ウクライナをめぐる対応をはじめとする弾劾に値するトランプ大統領のその他の行動に対する深刻な批判よりも、政治的に見れば厳しいものとなるだろう。

多くの人々の注意を引きそうなエピソードとして、レックス・ティラーソンの次の国務長官となったマイク・ポンぺオと会談を持った際、ポンぺオはボルトンにある走り書きをしたメモを渡した。そこにはトランプ大統領について、「彼は頭の先まで糞が詰まった奴だ(He is so full of shit)」と書かれていた。

この発言は、かつてのトランプ政権内部にいた人々によって使われ、もしくは暴露される嘲りの山に新しい要素を一つ加えるだけに過ぎない。

ティラーソンはトランプ大統領を「くそったれの馬鹿野郎」と呼んだと言われている。ボブ・ウッドワードの著書『恐怖』では、法律家のジョン・ダウドはトランプ大統領を「くそったれの嘘つき野郎」と考えていたとし、元大統領首席補佐官ジョン・ケリーはトランプ大統領を「愚か者」だと見なしていた、と書かれている。ダウドとケリーはこのような描写を事実ではないと否定している。

トランプ政権内部や外部の支持者たちは、ボルトンの本の信憑性を貶めようと大変な努力をしている。これは、こうした人々がボルトンの本がもたらす危険性について認識していることを示すサインである。

ボルトンの本の出版前審査は論争を巻き起こしている。国家安全保障会議は内容のいくつかの変更を求めている。それは表向き国家安全保障を理由にしている。

ボルトンの弁護士チャック・クーパーは先週、『ウォールストリート・ジャーナル』紙に論説を掲載した。その中でクーパーは、「こうした動きは国家安全保障を口実にしてボルトン市を検閲しようという明白な試み」だと主張した。

火曜日、司法省は著作についてボルトンに対して民事訴訟を提起した。本のタイトルは『それが起きたその部屋』だ。訴訟提起過程で、司法省は本に対して大いなる宣伝をすることになってしまった。6月23日に発売されることになっているが、水曜日午後の時点で、アマゾンでベストセラーランキング第1位にランク付けされている。

勿論のことだが、ボルトンは反トランプ「ルネサンス」にとっての英雄ではない。タカ派の外交政策専門家であるボルトンが最初に全国的な注目を集めたのは、ジョージ・W・ブッシュ元大統領政権の時代だ。ボルトンはイラク戦争を主導した。

2005年、ブッシュ大統領(当時)がボルトンを米国国連大使に指名した時、連邦上院から人事承認を得られなかった。そこで連邦議会休会中に任命するということになった。

ボルトンがトランプ政権に参加したのは2018年4月からだったが、北朝鮮、イラン。アフガニスタンといった諸問題について、とランプ大統領よりも、より強硬なアプローチを好んだ。

2人の姿勢の違いは、9月になって決定的な争いへとつながった。ボルトンは、自分は辞任したのだと述べたが、トランプ大統領は、ボルトンを更迭したと述べた。

トランプの後援者たちはボルトンが本を書いた同期について疑義を呈することで、ボルトンの重要性を低めようとしている。「アメリカを再び偉大に(MAGA)」陣営とリベラル派が合意している点というのは大変に珍しいケースである。

民主党員の多くとその他のトランプへの批判者たちはボルトンを攻撃している。批判者たちは、ボルトンが今年初めの大統領弾劾の時期に証言を抵抗したが、それは本で金儲けをするためだった。一説にはボルトンは本の出版契約の段階で200万ドル(約2億①000万円)を手にしたと言われている。

ジム・ジョーダン連邦下院議員(オハイオ州選出、共和党)は連邦議員の中でも特にトランプを強力に支持している人物だ。ジョーダン議員は水曜日、ボルトンには「嫌らしい下心」を持っていると嘲った、とCNNの記者はツイートで報じた。

2016年大統領選挙でトランプ陣営に参加したジェイソン・ミラーは、2020年の選挙でも上級顧問として参加している。ミラーはハッシュタグ「#BookDealBolton」を使おうと呼びかけ、ボルトンは「アメリカの国家安全保障よりも本を売ることにしか関心を持っていない」と述べた。

ワシントンの共和党関係者たちも嫌悪感を示している。

過去の共和党の政権に参加したある人物は、ボルトンの本の詳細が表に出始めた先週本紙の取材に対して、元国家安全保障問題担当大統領補佐官ボルトンは「復讐」と「政権内部のゴシップ晴らし」をしたいだけだと述べた。

こうした見方への支持は、連邦下院情報・諜報委員会委員長アダム・シフ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)からも出ている。シフ議員は大統領弾劾手続きを進めた人物だ。

シフは、ボルトンが議会での証言に抵抗したことと、ボルトンのスタッフたちが証言に応じた「勇気」と対照させた。

シフは「ボルトンは作家ではあるかもしれないが、愛国者では断じてない」と批判した。

いずれにせよ、ボルトンに対する批判のいくつかはトランプ大統領への弾劾の時期に生まれた疑問をまた抱かせる。

大統領に対する弾劾はウクライナ問題に集中した。トランプ大統領は東ヨーロッパに対する米連邦議会が決めた援助についてそれを行うためにはジョーバイデンに対する捜査を行うように求めたのは明らかだ。しかし、ボルトンは同様の試みが中国に対して行われていたと主張している。

ボルトンは2019年6月のG20サミットについて書いている。この会議の席上、トランプは中国国家主席習近平に対して、2020年の大統領選挙で勝利できるように助けて欲しいと依頼した、としている。

『ワシントン・ポスト』紙によると、ボルトンは次のように書いている。「トランプ大統領は、選挙の結果において、農民の重要性と中国が大豆と小麦の購入量を増加することの重要性を強調した。私はトランプ大統領の発した言葉を正確に転載しようとしたが、政府による出版前の審査プロセスはそれを許可しなかった」。

多くのメディアはこの問題を中心に報道することになるだろう。

しかし、こうした描写への関心が高まっている中で、ボルトンの「トランプ大統領はど素人であり、無能力」という描写が人々の記憶に最も刻まれる点となるだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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