古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:PPP

 古村治彦です。

 

 今回は2018年の世界経済GDPについての記事をご紹介する。世界各国のGDPを大きさに比例させて、見やすくしたヴィジュアルがあり、「この国はこれくらいなのか」と興味を持ってみることが出来る。

 ここで使われているのは、購買力平価GDPと一般的なGDPだ。 

購買力平価(Purchasing Power Parity)は、為替レートは自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定されるという理論だ。有名なのは、ビックマック指数だ。これは世界各国に展開しているハンバーガーのマクドナルドで売っているビックマックの値段がいくらになっているのかを基準にして計算している。購買力平価GDPは各国の物価を計算に入れた為替レートの対ドルで計算をしたものだ。

2018gdpatppp001 

 購買力平価のレートと市場でのレートで米ドルと人民元を見てみると、人民元は実際以上に安く誘導されているということになる。購買力平価GDPで計算すると、2014年以降は、中国がアメリカを抜いて世界最大の経済大国ということになる。しかし、実際のレートで計算すると、アメリカが最大の経済大国であることは変わらない。

2018gdp001 

 中国も経済成長をし、物価が上がり、人々の生活水準も上がっていくとなると、通貨の力も強くなるし、そうなればいつまでも安い方向を維持することは難しい。日本がそうであったように、通貨の価値は上がっていく。対ドルで元高になっていく。
2019gdpppp002 

 中国の経済成長率が鈍化していると言っても6%以上を維持している。経済規模を考えると、アメリカは4%以上の経済成長をしなければ、中国に差を縮められる。アメリカの最近の経済成長率は2%台なので、中国が差を縮めている。

 日本を見てみれば一般的なGDPでは3位(5.79%)で4兆9700億ドル(約537兆円)、購買力平価GDPでは4位(4.02%)で5兆4800億ドル(約592兆円)である。購買力平価GDPの方が高いということは、円が安く誘導されているということを示している。日本は世界第2位の経済大国(1968年に当時の西ドイツを抜いて2位に)で、アメリカを凌駕すると言われていたバブル時代はもう30年も前の話で、それから衰退が続いている。

 世界経済の全体像をつかむということで今回ご紹介する記事は役立つものになっている。

(貼り付けはじめ)

購買力を考慮しながら世界経済を可視化する(Visualizing The World Economy When Purchasing Power is Taken into Account

2019年9月12日

https://howmuch.net/articles/the-world-economy-ppp-2018

異なる国々の経済を比べる際に、最も一般的な方法は「購買力平価(purchasing power parity)」を使うことだ。購買力平価(PPP)は世界各国の経済を「財のバスケット」内部の様々な価格を平準化することで比較することだ。言い換えるならば、購買力平価は、国家間の生産を比較する際に、生活水準の違い(1カートンのミルクの値段の違いなど)を考慮に入れるということだ。これを一歩進め、購買力平価GDPで世界各国のGDPを可視化する。このチャートでは、国際的なドルを使用する。これはアメリカ国内のドルの購買力と同じ購買力を持っている。

・購買力平価GDPの測定は、各国の経済を比較するために、市場の為替レートではなく、世界中の生活費のコストを考慮に入れている。

・2018年の世界の購買力平価GDPは136兆4800億ドルだ。

・アジア諸国は購買力平価GDPで世界の40%以上を占めている。

・米中両国は購買力平価GDPで世界の3分の1を占めている。

・今回の可視化に使われている情報は世界銀行からのものだ。最新の数値は2018年のものだ。各国のサイズは購買力平価GDPの大きさに比例している。各国は属する大陸で色分けされている。そして、世界の生産に対してとの地域がどれくらい寄与しているかがわかる。

●購買力平価GDPから見る世界トップ10

1. 中国:25兆3600億ドル(約2739兆円)[18.58%]

2. アメリカ:20兆4900億ドル(約2213兆円)[15.02%]

3.インド:10兆5000億ドル(約1134兆円)[7.69%]

4.日本:5兆4800億ドル(約592兆円)[4.02%]

5.ドイツ:4兆5100億ドル(約488兆円)[3.30%]

6.ロシア連邦:3兆9900億ドル(約431兆円)[2.92%]

7.インドネシア:約3兆4900億ドル(約377兆円)[2.56%]

8.ブラジル:約3兆3700億ドル(約364兆円)[2.47%]

9.イギリス:約3兆700億ドル(約332兆円)[2.25%]

10.フランス:約3兆700億ドル(約332兆円)[2.25%]

先月、私たちは現在のアメリカ・ドル表示の各国のGDPをイラストと示す可視化したものを発表した。このGDPは生活にかかるコストを入れていない。また、それぞれの国家の生産高を比較するために市場における為替レート使用している。世界の名目GDP(右側)と購買力平価GDP(左側)のいくつかの違いに気づくだろう。明らかなことは、アメリカは世界の名目GDPで最大のシェアを占めているが、中国は購買力平価GDPで最大のシェアを占めている。

世界銀行のデータは、アメリカの購買力平価GDPは、大恐慌時代以来毎年成長していることを示している。しかし、ここ10年間の拡大の後、アメリカの経済成長は鈍化している。しかし、雇用の成長によって経済の安定は保たれ、GDPは拡大し続けると見る専門家たちもいる。

同様に、中国の景気後退は国際的な関心を集めている。特に輸出量の減少に人々の目が向いている。中国の中央銀行は貸出を促進し、生産を増加させるために預金準備率を低下させることで対応を行っている。世界規模の景気後退を示す兆候はより多くなっている。日本とインドのような国々の経済指標は私たちに印象を残すことに失敗している。世界経済は成長を続けているが、様々な指標の動向は変化の兆しを示している。

世界経済のGDPと購買力平価GDPの違いについて読者の皆さんは驚いただろうか?コメント欄で教えて欲しい。

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世界の86兆ドル経済を一つのチャートで可視化する(The World’s $86 Trillion Economy Visualized in One Chart

2019年8月15日

https://howmuch.net/articles/the-world-economy-2018

世界のGDPは堅調に成長し、2018年には6.9%の成長率を記録した。全体で2017年の80兆2000億ドルから85兆8000億ドルに増加した。この成長の半分は世界最大の経済大国2か国から来ている。アメリカは20兆5000億ドル(2017年に比べて5.4%増)、中国は13兆6000億ドル(10%増)となった。しかし、世界規模での景気後退の恐怖は高まっている。世界第1位と第2の経済大国同士が経済における緊張関係を深刻化させていることがその原因となっている。

・アメリカは今でも世界最大の経済大国であり、世界のGDPの23.9%を占めている。

・中国は世界第2位の経済大国であるが、最近の四半期においては約30年間で最も遅い経済成長ペースを記録した。

・最新の世論調査で、経済学者の半分が来年までにアメリカ経済は後退すると予測している。

・アメリカと中国との間の貿易摩擦は解決しておらず、投資家たちは世界経済の成長について悲観的になっている。

・私たちのデータは世界銀行の2018年版世界GDP数値から取っている。それぞれの国はGDPの大きさで示されている。それぞれの国は地域別にまとめられ、色分けされている。2017年からどのように変化死体を見る場合には、HowMuch’s 2017 analysis of world GDP.をチェックして欲しい。

GDPから見る世界のトップ10

1. アメリカ:20兆4900億ドル(約2200兆円)[23.89%]

2. 中国:13兆6100億ドル(約1470兆円)[15.86%]

3.日本:4兆9700億ドル(約537兆円)[5.79%]

4.ドイツ:4兆ドル(約432兆円)[4.66%]

5.イギリス:2兆8300億ドル(約306兆円)[3.29%]

6.フランス:2兆7800億ドル(約300兆円)[3.24%]

7.インド:2兆7300億ドル(約295兆円)[3.18%]

8.イタリア:2兆700億ドル(約224兆円)[2.42%]

9.ブラジル:1兆8700億ドル(約202兆円)[2.18%]

10.カナダ:1兆7100億ドル(約185兆円)[1.99%]

アメリカと中国両国で世界GDPの約40%を占めている。それぞれ20兆5000億ドルと13兆6000億ドルを記録し、世界経済の23.9%と15.9%をそれぞれ占めている。両国の経済力と深刻化する緊張のために、私たちのアナリストたちは両国に注意を払っている。

全米ビジネス経済学会は280名のビジネス経済学者を対象に調査を実施した。調査対象者の半数は来年末までにアメリカ経済は後退すると予測していると答えた。ゴールドマンサックスとJPモルガンに所属しているアナリストたちは2019年第二四半期の経済成長は2%以下に減速すると見ている。景気後退が予測される理由は何だろうか?経済学者たちは景気減速が予想される多くの要素を指摘している。現在のアメリカ経済において労働市場は堅調であったが、後退の兆候が見え始めている。連邦準備制度理事化による予想される金利引き上げも景気後退の兆候となっている。アメリカにおける経済格差の拡大もまた後退を示す要素となっている。1989年から2018年にかけてアメリカ国民の下半分は9000億ドルを失った。これは経済全体に大きな影響を与えている。

しかし、世界中の報道機関が報じている要素は関税が与える衝撃と中国とアメリカとの間での貿易戦争勃発の可能性である。米中両国の経済は既に影響を受けている。数字がそれを示している。中国の2019年第二四半期のGDP成長率は6.2%に鈍化した。この数字は1992年以降最も小さい成長率となった。今年7月の中国の工業生産高の成長率は、昨年に比べて4.8%に鈍化した。この数字は2002年2月以降で最も弱いペースとなった。アメリカと中国が貿易面での相違をすぐに乗り越えることが出来るか確かではない。そして、市場は長期の難局を示しているように見える。このように先行き非案の兆候はあるが、経済学者の中には景気後退が不可避だと確言できないとしている人々がいる。こういった人々は、オーストラリアとイギリスのような国々の経済は何十年単位で安定的に成長していると述べている。

各国や各地域のGDPについて読者の皆さんを驚かせたのはどんなことだろうか?アメリカもしくは中国は景気後退に向かって進んでいると考えるだろうか?景気後退は世界経済全体にどのような影響を与えるだろうか?コメント欄で考えを教えて欲しい。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回は、トランプ新政権の目玉政策であるインフラ整備についての古い記事をご紹介したいと思います。

 


 トランプは大統領選挙期間中に、アメリカの壊れつつあるインフラ整備を行うと公約に掲げていました。アメリカに行かれた方なら経験があると思いますが、高速道路が穴だらけで、自動車で走っていて振動が酷かったり、停電が起きたり、ということは良く起きます。アメリカ国民もこの状況には辟易しています。

 


 しかし、インフラ整備にはお金が必要となります。政府が行う公共事業ということになれば、財源は税金か公債ということになります。そうなれば、減税をするというトランプの公約と矛盾することになります。

 

 トランプは、インフラ整備の財源について、減税をして、その効果で民間投資が増えて、それがインフラ投資にまで波及すると主張しています。また、日本で言うところの、民間活力の活用も主張しています。

 

 そうした中で、今日、次のような記事が出ました。

 

(貼りつけはじめ)

 

米インフラ開発に年金資金 GPIFの活用案浮上

 

東京新聞 201722 1200

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017020201000817.html

 

 政府が10日に米ワシントンで開く日米首脳会談で提案する経済協力で、米国のインフラ開発に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の投資資金を活用する方向で調整していることが2日、分かった。経済協力では人工知能(AI)やロボットなどの研究開発協力などの分野も含めて、米国の数十万人の雇用創出につなげる事業を提案する方針だ。

 

 トランプ米大統領の関心が高い雇用問題への協力姿勢を示し、政権との関係強化を図る。環太平洋連携協定(TPP)の代替案として想定される2国間協定で、農産品や自動車などの分野での厳しい要求をかわす狙いもあるとみられる。

(共同)

 

(貼りつけ終わり)

 

 2月10日に行う日米首脳会談の「お土産」として、日本の年金資金をアメリカのインフラに投資する、という提案を行うというものです。利息などの条件次第でしょうが、アメリカとしては大歓迎でしょう。もっと言うと、「日本はアメリカにとっての最悪の敵であったのに、戦後はいろいろと助けてやって、世界第2位の経済大国にしてやった、育ててやったんだから、当然だ」ということになるでしょう。

 

 私たちの大事な年金のお金を日本国内に投資して、きちんと利益を出して回収するならばまだしも、外国のために出して、利益が出ないならまだしも、損をしたり、最悪返ってこないということになったら、目も当てられません。

 

 「日本はアメリカの属国である」という主張に対して、「そんなことはない、イクオールパートナーだ」と言いそうなのが現在の安倍政権の人々ですが、やっていることは、自ら進んでお金を出すという属国そのものの態度です。

 

 このインフラ投資を取引材料にできるような「立派な」日本の国益を追求できる政治家を私たちは選び出さねばなりません。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプの社会資本計画について知っておくべき5つのこと(Five things to know about Trump's infrastructure plan

 

メラニー・ザノーナ筆

2016年11月20日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/transportation/306847-five-things-to-know-about-trumps-infrastructure-plan

 

ドナルド・トランプ次期大統領の巨大社会資本計画についての雑音が大きくなっている。

 

民主、共和両党の連邦議員たちの中には、連邦政府が交通システム整備予算を計上していないことを憤っている人々がいる。彼らはトランプと交通システム整備問題で協力できるという期待を持っている。この問題は来年、活発に動き出す、党派の違いを超えた問題となる可能性がある。

 

トランプは共和党の大統領選挙候補指名受諾演説をし、その中でアメリカの弱体化しつつある社会資本の再建を公約に掲げた。その後、建設会社の株価は高騰した、と『ウォールストリート・ジャーナル』紙は報じた。

 

トランプは、「私たちはインナーシティーの状況を改善し、高速道路、橋梁、トンネル、空港、学校、病院を再建しなければならない。社会資本を再建する、これは第一の課題だ。社会資本再建のために数百万の人々に働いてもらうつもりだ」と語った。

 

トランプの社会資本計画の詳細についてはいまだに明らかになっていないが、不動産王トランプは選挙期間中に、アメリカの機能不全を起こしている交通システムを如何に改善するかについていくつかの示唆を与えている。

 

これからトランプの社会資本に関するアイディアについて5つのポイントを挙げていく。

 

①トランプの計画は民間の資金に多くを依存している

 

先月、トランプ選対のウェブサイトに10ページの白書が掲載された。その中には、トランプの社会資本計画の基礎となるのは民間資金だと書かれている。

 

社会資本に関する提案の内容には、交通システムプロジェクトを支援したい民間の投資家たちに1370億ドル(約15兆円)の税額控除を行うというものがある。これによって、これからの10年間で1兆ドル(約110兆円)の社会資本投資が行われるようになるという予想が立てられている。

 

歴史的に見て、アメリカの社会資本は各州政府、各地方自治体が自分たちの税収、連邦政府の高速道路整備補助金、債券発行を組み合わせて資金をねん出してきた。

 

しかし、トランプの提案によると、民間部門の代りに政府が計画を行うと、社会資本の建設コストはより高くなり、建設期間もより長くなるということだ。

 

トランプ社会資本計画の概要で次のように述べられている。「トランプ社会資本計画は、民間部門に焦点を当て、財政赤字を出さずに、国家規模のインフラ整備の資金の大部分を調達できる」。更に次のように述べられている。「この革新的な資金確保手段によって、官民パートナーシップ、『ビルド・アメリカ』債権、その他の資金ねん出方法を補助することができる」。

 

②民間資金ではすべてのプロジェクトの資金を賄えない

 

トランプの民間資金活用計画を批判する人々は、民間の投資家たちは、投資コストを回収できる入場料や使用料を徴収できるプロジェクトのみに関心を持つに違いないと主張している。

 

従って、水道管の修繕、港湾の浚渫(たまった土砂の除去)、既存の道路や橋梁の改修のような重要な社会資本ではあるが入場料や使用料を徴収できないプロジェクトは、トランプの計画の下では、無視されてしまう可能性があると主張する。

 

連邦下院交通・社会資本委員会の幹部委員ピーター・デファジオ連邦下院議員(オレゴン州選出、民主党)は、「官民パートナーシップ(PPP)は、収入をあげられるプロジェクトだけに機能するものだ。全米高速道路網の大部分、橋梁の改修問題、輸送システムは収入を見込めない。そうなればPPPも機能しない」と発言している。

 

PPPによって、民間企業は輸送インフラ計画に入札し、落札後に建設を行い、一定期間、インフラの保有と意地を行えるようにする。その間に建設などにかかったコストを、利用料の徴取や州政府からの支払いで回収することができる。

 

連邦議会予算事務局は、民間からの出資を伴うPPPによって完成まで漕ぎ着けた高速道路計画の数は14に過ぎないと発表している。

 

輸送インフラ西部を主張する人々は、民間資金の投入は国家規模のインフラ整備にとってプラスになると主張しているが、資金調達に関しては、民間資金の投入以外にも様々な方法があるとも述べている。

 

経営コンサルタント会社CG/LAインフラストラクチャ社の会長で取締役会議長ノーマン・アンダーソンは、「PPPをうまく運営・管理し、成功させることができれば、インフラ投資全体の増額につなげることができるようになる」と述べている。

 

③トランプは官僚主義的、形式主義の規制を撤廃したがっている(Trump wants to cut regulatory ‘red-tape’

 

トランプは社会資本計画の中で、建設プロジェクトの進行を遅らせている「山のような規制」に挑戦したいと述べている。

 

トランプ選対のウェブサイトには次のように書かれていた。「全米の社会資本プロジェクトは、終わりのない調査、後から後から出てくる規制、官僚制度、裁判のために年単位で計画が遅れていく。いつまでたっても完成しないのでは思ってしまう程だ。そのために納税者にかかる負担は増大し、経済競争力を持つために必要なレヴェルのインフラを利用できないという状況が起きている」。

 

様々な規制を撤廃することは、トランプのインフラ計画に対する連邦議会の保守派議員からの支持を集めるうえで重要になってくる。2009年にオバマ大統領が発表した経済刺激計画の中の「ショヴェルを手に持って」という輸送インフラ整備計画に反対した人々の反対理由は、そんなにうまくいくはずがない、スタートから失敗するというものだった。

 

トランプの提案には、トランプがお役所仕事を如何にして打破するのかについて詳細がかかれていない。

 

トランプは、ウェブサイト上で、インフラへの予算と改革を結び付けたいとしている。彼は、「許認可と予算を合理化し、インフラ整備システムを改良し、無用な仕事に対する予算をカットする」と書いている。

 

④トランプは計画が資金面で引き合うと考えている(Trump thinks the plan would pay for itself

 

トランプは、彼の社会資本計画の提案は、減税分と税収増加分が同額になり(revenue neutral)、それによって、計画は資金的に引き合うと考えている。

 

トランプの青写真は、民間投資家に対して減税を行っても、建設労働者たちに対して新たに発生する賃金と建設業者の上げる利益にかける税金の増加によって相殺される、としている。

 

「トランプ計画では、減税と税収との間で時間的な相違が大きくならないことが、政府予算にとって極めて重要になる」とトランプが示した計画の要約には書かれている。

 

しかし、コンペティティヴ・エンタープライズ・インスティテュートのある研究員は、計画の財政面については「疑わしい」と主張している。

 

トランプの最終的な計画が増税や公債発行を必要とする場合、この計画が連邦議会で承認されるかどうか難しい状況になるであろう。連邦議会は財政面では保守主義立場を堅持しているので、連邦議会は財政赤字を増やすような法律を通過させることはできないとトランプに対して既に警告を発している。

 

連邦下院フリーダム・コーカスに所属するラウル・ラブラドール連邦下院議員(アイダホ州選出、共和党)は、水曜日に開かれたヘリテージ財団主催のイヴェントに出席し、「トランプが財源を見つけるなど社会資本計画の資金のめどをつけなければ、私たち全員ではなくても、過半数の議員たちは反対票を投じることになるだろう」と発言した。

 

⑤トランプはアイディアを広く求めている、民主党側からも(Trump’s open to ideas — including from Democrats

 

トランプは社会資本予算に対する基本的な考えを作り上げているが、彼の計画は完成までには至っていない。

 

今週になって、トランプの政権移行ティームは、全米社会資本銀行設立の可否について調査検討すると発表した。全米社会資本銀行設立は民主党が長年主張してきていたが、連邦議会を共和党がコントロールしている状況では実現は不可能であった。

 

この発表によって、政権移行ティームは斬新な政策、たとえそれが民主党のものであっても、それを検討する姿勢を持っていることを鮮明に示した。

 

しかし、連邦議会では、共和党が、各企業が海外で保有している資金を本国に持ってきた際にそれに税金をかける、「本国送還」と呼ばれるプロセスとその税収を社会資本予算に使用するということを主張している。

 

連邦下院輸送予算小委員会委員長のマリオ・ディアズ=バラート連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)は次のように語った。「トランプ政権と協力できることを楽しみにしている。私は常に、アイディアが共和党側から出ようが、民主党側から出ようが気にせずに検討するという姿勢を貫いてきた。大事なことは、“それが良い考えであるかどうか”ということだ」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22
 
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